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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160038
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】船舶の姿勢制御装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/06 20060101AFI20221012BHJP
   B63B 1/28 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B63B39/06 B
B63B1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064530
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】石坂 仁
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 光男
(57)【要約】
【課題】船体の姿勢に基づいてフラップの揺動角度を制御することで船体の姿勢を一定に保つ上で有利な船舶の姿勢制御装置を提供する。
【解決手段】船体12の没水部の両側に支軸2210を介して回動可能に一対のフラップ22を設け、姿勢検出部26によって検出された船体12の姿勢を示す姿勢情報に基づいてフラップ制御部30がフラップ駆動部24を介して一対のフラップ22の揺動角度を船体12の揺れが抑制されるように制御するようにした。風波や海流、船体12の加速、減速、船体12の旋回などによって生じる船体12の揺れを効率よく抑制でき、航行中の船体12の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の姿勢を制御する船舶の姿勢制御装置であって、
船体の没水部の両側に支軸を介して回動可能に設けられた一対のフラップと、
前記一対のフラップを回動させるフラップ駆動部と、
前記船体の姿勢を示す姿勢情報を検出する姿勢検出部と、
前記姿勢情報に基づいて前記フラップ駆動部を介して前記一対のフラップの揺動角度を前記船体の揺れが抑制されるように制御するフラップ制御部と、
を備えることを特徴とする船舶の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記姿勢検出部は傾斜センサで構成され、
前記姿勢情報は、前記傾斜センサで検出された前記船体のピッチング角度であり、
前記フラップ制御部による前記一対のフラップの揺動角度の制御は、前記船体のピッチングを抑制するようになされる、
ことを特徴とする請求項1記載の船舶の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記姿勢検出部は傾斜センサで構成され、
前記姿勢情報は、前記傾斜センサで検出された前記船体のローリング角度であり、
前記フラップ制御部による前記一対のフラップの揺動角度の制御は、前記船体のローリングを抑制するようになされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載の船舶の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記船舶は動力船であり、
前記船首の水面からの高さを検出する船首高さ検出部を設け、
前記フラップ制御部は、前記高さが予め定められた上限しきい値を上回った場合に、前記船体の前上がり状態を抑制するように前記一対のフラップの揺動角度の制御を行なう、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の船舶の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記一対のフラップは前記船体の船尾寄りの箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載の船舶の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記船体は、前記船体から上方に離れた箇所にトーイング用のロープの前端が結合される結合部が設けられている、
ことを特徴とする請求項4または5記載の船舶の姿勢制御装置。
【請求項7】
前記船舶は帆船であり、
前記船首の水面からの高さを検出する船首高さ検出部を設け、
前記フラップ制御部は、前記高さが予め定められた下限しきい値を下回った場合に、前記船体の前下がり状態を抑制するように前記一対のフラップの揺動角度の制御を行なう、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の船舶の姿勢制御装置。
【請求項8】
前記一対のフラップは前記船体の船首寄りの箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項7記載の船舶の姿勢制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の姿勢制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は航行中、船体が前後方向の水平を保ち、かつ、船体が左右に傾かないように姿勢を制御する必要がある。
そこで、船体の没水部の両側に支軸を介して回動可能に設けられた一対のフラップが設けられた船舶が提供されている。
各フラップは、それぞれのフラップの揺動角度が調整されることで上方または下方への揚力を発生させて船体の姿勢を調整するものである。
上記船舶では、一対のフラップを揺動させるアクチュエータと、アクチュエータを手動により制御する制御装置とが設けられている。
そして、船舶の操縦者は、航行中の船体の傾きに応じて制御装置を操作することで各フラップの揺動角度を調整し、船体の姿勢を一定に保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-111193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなフラップの揺動角度の調整は、操縦者が手動で行なうことから、操縦者の負担が大きく、また、操縦者の技量が低いとフラップを適切に調整することが難しく船体の姿勢を安定に保つ上で不利がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、船体の姿勢に基づいてフラップの揺動角度を制御することで船体の姿勢を一定に保つ上で有利な船舶の姿勢制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、船舶の姿勢を制御する船舶の姿勢制御装置であって、船体の没水部の両側に支軸を介して回動可能に設けられた一対のフラップと、前記一対のフラップを回動させるフラップ駆動部と、前記船体の姿勢を示す姿勢情報を検出する姿勢検出部と、前記姿勢情報に基づいて前記フラップ駆動部を介して前記一対のフラップの揺動角度を前記船体の揺れが抑制されるように制御するフラップ制御部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記姿勢検出部は傾斜センサで構成され、前記姿勢情報は、前記傾斜センサで検出された前記船体のピッチング角度であり、前記フラップ制御部による前記一対のフラップの揺動角度の制御は、前記船体のピッチングを抑制するようになされることを特徴とする。
また、本発明は、前記姿勢検出部は傾斜センサで構成され、前記姿勢情報は、前記傾斜センサで検出された前記船体のローリング角度であり、前記フラップ制御部による前記一対のフラップの揺動角度の制御は、前記船体のローリングを抑制するようになされることを特徴とする。
また、本発明は、前記船舶は動力船であり、前記船首の水面からの高さを検出する船首高さ検出部を設け、前記フラップ制御部は、前記高さが予め定められた上限しきい値を上回った場合に、前記船体の前上がり状態を抑制するように前記一対のフラップの揺動角度の制御を行なうことを特徴とする。
また、本発明は、前記一対のフラップは前記船体の船尾寄りの箇所に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記船体は、前記船体から上方に離れた箇所にトーイング用のロープの前端が結合される結合部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記船舶は帆船であり、前記船首の水面からの高さを検出する船首高さ検出部を設け、前記フラップ制御部は、前記高さが予め定められた下限しきい値を下回った場合に、前記船体の前下がり状態を抑制するように前記一対のフラップの揺動角度の制御を行なうことを特徴とする。
また、本発明は、前記一対のフラップは前記船体の船首寄りの箇所に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、船体の没水部の両側に支軸を介して回動可能に一対のフラップを設け、船体の姿勢を示す姿勢情報に基づいてフラップ制御部がフラップ駆動部を介して一対のフラップの揺動角度を船体の揺れが抑制されるように制御するようにした。
したがって、風波や海流、船体の加速、減速、船体の旋回などによって生じる船体の揺れを効率よく抑制でき、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
また、フラップ制御部による一対のフラップの揺動角度の制御を、船体のピッチングを抑制するように行なうと、船体のピッチングを効率よく抑制でき、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
また、フラップ制御部による一対のフラップの揺動角度の制御を、船体のローリングを抑制するように行なうと、船体のローリングを効率よく抑制でき、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
また、船舶が動力船である場合に、船首高さ検出部で検出された船首の水面からの高さが予め定められた上限しきい値を上回った場合に、フラップ制御部が船体の前上がり状態を抑制するように一対のフラップの揺動角度の制御を行なうようにすると、航行中に船体が浮遊物に乗り上げたり、あるいは、トーイング用のロープを牽引しつつ発進するといった場合に生じやすい船体の過剰な前上がり状態を確実にかつ効率的に抑制し、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
また、一対のフラップを船体の船尾寄りの箇所に設けると、船体の過剰な前上がり状態が発生した場合であっても、一対のフラップが水中に位置した状態を確保しやすく、一対のフラップによって発生する揚力によって船体の過剰な前上がり状態を確実にかつ効率的に抑制する上でより有利となり、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上でより有利となる。
また、船体から上方に離れた箇所にトーイング用のロープの前端が結合される結合部が設けられていると、トーイング用のロープを介して水上スキーヤーやトーイング遊具から加わる荷重によって船体が前上がり状態となりやすい場合であっても船体の過剰な前上がり状態を確実にかつ効率的に抑制し、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
また、船舶が帆船である場合に、船首高さ検出部で検出された船首の水面からの高さが予め定められた下限しきい値を下回った場合に、フラップ制御部が船体の前下がり状態を抑制するように一対のフラップの揺動角度の制御を行なうようにすると、航行中の追い風によって生じやすい船体の過剰な前下がり状態を確実にかつ効率的に抑制し、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
また、一対のフラップを船体の船首寄りの箇所に設けると、船体の過剰な前下がり状態が発生した場合であっても、一対のフラップが水中に位置した状態を確保しやすく、一対のフラップによって発生する揚力によって船体の過剰な前下がり状態を確実にかつ効率的に抑制する上でより有利となり、航行中の船体の姿勢を一定に保つ上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置が適用された船舶の側面図である。
図2】第1の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置が適用された船舶の平面図である。
図3】第1の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置が適用された船舶の背面図である。
図4】第1の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置の動作説明図であり、(A)は船舶が発進して前上がり状態となった状態、(B)はフラップの調整後の状態、(C)は船体の姿勢が安定した状態を示す。
図5】第1の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図6】第1の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置による船体のピッチングおよびローリングを抑制する場合の動作について説明するフローチャートである。
図7】第1の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置による船体の前上がり状態を抑制する場合の動作について説明するフローチャートである。
図8】第2の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置が適用された船舶の側面図である。
図9】第2の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置が適用された船舶の平面図である。
図10】第2の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置が適用された船舶の正面図である。
図11】第2の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置の動作説明図であり、(A)は船舶が前下がり状態となった状態、(B)はフラップの調整後の状態、(C)は船体の姿勢が安定した状態を示す。
図12】第2の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図13】第2の実施の形態に係る船舶の姿勢制御装置による船体の前下がり状態を抑制する場合の動作について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、本実施の形態に係る船舶について説明する。
実施の形態では、船舶が船外機を動力源とする動力船であり、トーイングスポーツに用いられるスポーツボートである場合について説明する。
トーイングスポーツとは、例えば、ウェイクボードや水上スキーのように、持ち手(ハンドル)の付いたロープをスポーツボートに取り付けて航行し、スポーツボートの後部で持ち手を握った人が板状の滑走具に乗り曳航されながら水面を滑るスポーツや、チューブやバナナボートなどのトーイング遊具に連結されたロープをスポーツボートに取り付けて航行し、スポーツボートの後部でトーイング遊具に人が乗り曳航されながら水面を滑るスポーツである。
【0009】
図1図3に示すように、船舶10Aは、船体12と、船外機14と、転舵アクチュエータ(不図示)と、操船制御装置16と、姿勢制御装置18(図5参照)とを含んで構成されている。
船体12は、船体12の船首12A寄りの箇所に設けられた操作台1202と、操作台1202の後方に配置され操縦者が着座する操船席1204と、船体12の船尾12Bを仕切り船体幅方向に延在するトランサム1206(船尾板)と、牽引タワー1208とを含んで構成されている。
なお、図中符号1201は、操縦者以外の乗員が着座する座席を示す。
本実施の形態では、牽引タワー1208は、船体12の前後方向の中間部で船体12の幅方向の両側の側壁部にわたって上方に凸のアーチ状に形成されている。
牽引タワー1208の延在方向の中央部が最も高位となっており、この高位となった箇所に、トーイング用のロープ20の前端が着脱可能に結合される取付部1210が設けられている。
したがって、取付部1210は、船体12から上方に離れた箇所、言い換えると、船体12の重心から上方に離れた箇所に位置している。
トーイング用のロープ20とは、水上スキーヤーを牽引したり、あるいは、チューブやバナナボートなどのトーイング遊具を牽引するためのロープである。
なお、トーイング用のロープ20が取り付けられる取付部1210が船体12の上方に離れた箇所に設けられているのは、トーイング用のロープ20が取付部1210を中心に左右に移動する際に、このロープ20が船体12上の構造物、船外機14、船体12に乗船した人などと干渉しないようにするためである。
【0010】
船外機14は、船体12を推進させるものである。
図1に示すように、船外機14は、カバー1402と、エンジン1404と、動力伝達機構1406と、プロペラ1408とを含んで構成されている。
カバー1402は、エンジン1404と動力伝達機構1406を収容するものであり、トランサム1206の船体幅方向の中央に船体12の上下方向に延在する転舵軸Zを中心に揺動可能に結合されている。
エンジン1404は、船体12を推進させる推進力を発生させる駆動源である。
【0011】
動力伝達機構1406は、エンジン1404の駆動力をプロペラ1408に伝達するものであり、また、プロペラを正転、反転、停止させるシフト機構を備えている。
【0012】
転舵アクチュエータは、後述する操船制御装置16から与えられるハンドル1604の操作角信号に基づいて、図2に示すように、船外機14を転舵軸Z周りに揺動させることで船外機14の転舵角(船体12の中心線CLに対するプロペラ1408の軸心XLがなす角)を変更させるものである。
【0013】
操船制御装置16は、イグニッションスイッチ1602、ハンドル1604、スロットルレバー1606の操作に応じて船外機14の制御を行なうものであり、具体的には、船外機14の始動、停止、船外機14による推進力の調整、船外機14の転舵角の調整を行なうものである。
【0014】
イグニッションスイッチ1602は船外機14の始動、停止を行なうためのものである。
ハンドル1604は、船舶10Aの操舵を行なうために回転されるものである。
ハンドル1604の操作角に応じて操船制御装置16が転舵アクチュエータを駆動して転舵角の調整がなされる。
スロットルレバー1606は、船外機14の出力調整を行なうためのものである。
スロットルレバー1606が中立範囲に位置した場合、船外機14が停止し船舶10Aが停止する。
スロットルレバー1606が前進範囲に位置した場合、船舶10Aを前進させ、前方への傾倒角度に応じてエンジン1404の回転数を調整し、船舶10Aの航行速度を調整する。
スロットルレバー1606が後進範囲に位置した場合、船舶10Aを後進させ、後方への傾倒角度に応じてエンジン1404の回転数を調整し、船舶10Aの航行速度を調整する。
なお、操船制御装置16は、本実施の形態のように単一のスロットルレバー1606を備えるものの他、スロットルレバーとシフトレバーとの2つの操作レバーを備えるものであってもよい。
その場合は、スロットルレバーによってエンジン1404の回転速度を調整し、シフトレバーにより動力伝達機構のシフト機構を切り換えてプロペラ1408を正転、反転、停止させることになる。
【0015】
図5に示すように、姿勢制御装置18は、一対のフラップ22と、フラップ駆動部24と、姿勢検出部26と、船首高さ検出部28と、フラップ制御部30とを含んで構成されている。
図1図3に示すように、一対のフラップ22は、船体12の左右側部に設けられた左フラップ22L、右フラップ22Rである。
一対のフラップ22は、船体12の長さ方向に細長の同形同大の矩形板状を呈している。
図2に示すように、各フラップ22は、船体12の前後方向の前方に位置する前縁2202と、後方に位置する後縁2204と、それら前縁2202と後縁2204の両端を接続する一対の側縁2206とを備えている。
図1に示すように、本実施の形態では、一対のフラップ22は、トランサム1206のうち喫水線よりも下方に位置する部分、すなわち、船体12の没水部に設けられており、各フラップ22は、船体12の幅方向の中心から等間隔をおいて船外機14を挟んだ箇所に支軸2210を介して取り付けられている。
詳細には、一対のフラップ22は、その前縁2202に一体回転可能に結合された支軸2210が船体12の没水部の両側にそれぞれ設けられた軸受1210を介してそれぞれ独立して回動可能に設けられており、各フラップ22の支軸2210は船体12の幅方向に延在する同一軸線上を延在している。
各フラップ22は、水中で支軸2210回りの揺動角度が調整されることで上方あるいは下方に向かう揚力を発生させ、この揚力によって船体12の姿勢を変化させるものである。
なお、フラップ22の形状は、水中で揚力を発生させることができればよく、その形状は矩形板状に限定されず、従来公知の様々な形状が採用可能である。
【0016】
フラップ駆動部24は、一対のフラップ22のそれぞれを独立して回動させるものである。
本実施の形態では、フラップ駆動部24は、油圧シリンダ2402と、油圧ポンプ(不図示)とを含んで構成されている。
図1に示すように、油圧シリンダ2402は、シリンダ本体2402Aと、シリンダ本体2402Aから出没するピストンロッド2402Bを備えている。
図1図2に示すように、シリンダ本体2402Aの基端は、フラップ22の支軸2210の上方に位置するトランサム1206の箇所に支軸2410と軸受2411を介して揺動可能に支持され、ピストンロッド2402Bの先端は、支軸2412と軸受2413を介してフラップ22の上面に揺動可能に支持されている。
油圧ポンプは、船体12内に搭載され、不図示の配管を介して作動油を油圧シリンダ本体2402Aに対して給排することでピストンロッド2402Bを伸長、収縮させることでフラップ22の揺動角度を変化させる。
なお、フラップ駆動部24は、フラップ22を支軸2210回りに揺動させることができればよく、フラップ駆動部24として、電気シリンダを用いたり、あるいは、モータとモータの回転駆動力によってフラップ22を揺動させる動力伝達機構を用いるなど従来公知の様々なアクチュエータが使用可能である。
【0017】
姿勢検出部26は、船体12の姿勢を示す姿勢情報を検出するものである。
船体12は、航行中、波や風の影響を受けて動揺し、あるいは、船体12の加速、減速、船体12の旋回などにより動揺し、その結果、船体12の姿勢が変化する。
そして、船体12が前後に傾くように揺れることをピッチング、船体12が左右に傾くように揺れることをローリングという。
本実施の形態では、姿勢検出部26は、船体12のピッチング角度およびローリング角度を検出する傾斜センサを用いている。
ここで、ピッチング角度とは、船体12の中心線CLと直交し水平方向に延在するピッチング軸回りの角度であり、ローリング角度とは、船体12の中心線CL(ローリング軸)回りの角度である。
ピッチング角度が0度であれば、船体12は船体12の前後方向での傾きがない状態である。
ピッチング角度が正の値または負の値で大きくなるほど船体12の前後方向の傾きが大きくなる。
ローリング角度が0度であれば、船体12は船体12の幅方向(左右方向)での傾きがない状態である。
ローリング角度が正の値または負の値で大きくなるほど船体12の幅方向の傾きが大きくなる。
傾斜センサとして、静電容量を用いたものや、加速度センサを用いたものなど従来公知の様々な傾斜センサが使用可能である。
【0018】
図1に示すように、船首高さ検出部28は、船首12Aの水面WSからの高さΔhを検出するものであり、水面WSから上方に離間した船首12A部分に設けられている。
本実施の形態では、船首高さ検出部28は、超音波を水面WSに発信し、水面WSで反射された反射波を受信し、反射波を受信するまでの時間によって距離を測定する超音波センサを用いている。
なお、このような船首高さ検出部28として、レーザー光を水面WSに発信し、水面WSで反射された反射波を受信し、反射波を受信するまでの時間によって距離を測定するレーザー光センサ、電磁波を水面WSに発信し、水面WSで反射された反射波を受信し、反射波を受信するまでの時間によって距離を測定するミリ波レーダーセンサなど従来公知の様々な距離センサを用いることができる。
【0019】
フラップ制御部30は、マイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータは、CPUと、制御プログラムなどを格納・記憶するROMと、制御プログラムの作動領域としてのRAMと、各種データを書き換え可能に保持するEEPROMと、姿勢検出部26、フラップ駆動部24等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されている。
CPUは、上記制御プログラムを実行することによりフラップ制御部30として機能する。
フラップ制御部30は、姿勢検出部26によって検出された姿勢情報であるピッチング角度およびローリング角度に基づいてフラップ駆動部24を介して一対のフラップ22の揺動角度を船体12の揺れが抑制されるように制御するものである。
具体的には、フラップ制御部30による一対のフラップ22の揺動角度の制御は、船体12のピッチングおよびローリングを抑制するようになされる。
例えば、船体12のピッチングにより船体12が前方に至るにつれて上方に変位する姿勢となった場合には、フラップ制御部30は、一対のフラップ22が後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなるようにフラップ22の揺動角度を制御し、これにより一対のフラップ22によって上方に向かう揚力を発生させて船尾12Bを上方に変位させ、ピッチング角度が0度に近づくように船体12の姿勢を制御する。
また、船体12のピッチングにより船体12が前方に至るにつれて下方に変位する姿勢となった場合には、フラップ制御部30は、一対のフラップ22が後方に至るにつれて上方に変位する傾きとなるようにフラップ22の揺動角度を制御し、これにより一対のフラップ22によって下方に向かう揚力を発生させて船尾12Bを下方に変位させ、ピッチング角度が0度に近づくように船体12の姿勢を制御する。
【0020】
また、船体12のローリングにより船体12が左向きに傾いた姿勢となった場合は、左フラップ22Lが後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなり、右フラップ22Rが後方に至るにつれて上方に変位する傾きとなるようにフラップ22の揺動角度を制御し、これにより、左フラップ22Lにより上方に向かう揚力を発生させ、右フラップ22Rにより下方に向かう揚力を発生させ、ローリング角度が0度に近づくように船体12の姿勢を制御する。
また、船体12のローリングにより船体12が右向きに傾いた姿勢となった場合は、左フラップ22Lが後方に至るにつれて上方に変位する傾きとなり、右フラップ22Rが後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなるようにフラップ22の揺動角度を制御し、これにより、左フラップ22Lにより下方に向かう揚力を発生させ、右フラップ22Rにより上方に向かう揚力を発生させ、ローリング角度が0度に近づくように船体12の姿勢を制御する。
また、船体12にピッチングとローリングの双方が生じる場合には、フラップ制御部30は、上記のフラップ22の揺動角度の制御を組み合わせて行なう。
【0021】
また、フラップ制御部30は、船首高さ検出部28によって検出された船首12Aの高さΔhが予め定められた上限しきい値を上回った場合に、船体12の前上がり状態を抑制するように一対のフラップ22の揺動角度の制御を行なう。
船首12Aの高さΔhが上限しきい値を上回る状態とは、航行中に船体12が水面WSに浮遊する浮遊物に乗り上げたり、あるいは、牽引タワー1208の取付部1210にトーイング用のロープ20が取り付けられた状態で船舶10Aが発進した際に発生し、船体12の姿勢が過剰に前上がり状態となる。
このような過剰な前上がり状態となる現象は特に帆船よりも動きやすい、言い換えると、航行速度を加速、減速しやすく、あるいは、旋回性能が高い動力船において顕著であり、特に、船体12が小さく軽量な小型船舶においては、船体12が浮遊物に乗り上げた場合、および、水上スキーヤー等の牽引を開始した場合に、船体12の姿勢が過剰に前上がり状態となりやすい。
船体12の姿勢が過剰に前上がり状態となり、その際に船首12Aの高さΔhが高くなるほど船体12の姿勢が不安定となり、浸水や転覆のおそれがあるので、船体12の前上がり状態が発生したならば、速やかに船体12の前上がり状態を抑制することが船体12の安定を保つ上で重要となる。
そのため、フラップ制御部30は、図4(A)に示すように、船首12Aの高さΔhが予め定められた上限しきい値を上回った場合に、フラップ制御部30は、図4(B)に示すように、一対のフラップ22が後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなるようにフラップ22の揺動角度を制御し、これにより一対のフラップ22によって上方に向かう揚力を発生させて船尾12Bを上方に変位させ、図4(C)に示すように、船体12の前上がり状態を抑制するように一対のフラップ22の揺動角度の制御を行なう。
したがって、上限しきい値は、船体12の前上がり状態により浸水や転覆のおそれが生じない程度の低めの値に設定しておく必要がある。
【0022】
なお、船体12の前上がり状態は、姿勢検出部26によって検出されるピッチング角度によってもある程度検出できるが、ピッチング角度のみでは水面WSに対する船首12Aの高さΔhがどの程度高くなっており、船体12の姿勢がどの程度不安定になっているかを正確に把握する上で十分とは言えない。
したがって、船首高さ検出部28によって船首12Aの高さΔhを検出し、その高さΔhが上限しきい値を上回ったことをもってフラップ22の揺動角度を制御することが船体12の姿勢を確実にかつ効率よく安定化させる上で有利となる。
【0023】
次に、姿勢制御装置18の動作について図6に示すフローチャートを参照して説明する。
船舶10Aは航行しているものとする。
フラップ制御部30は、姿勢検出部26で検出される姿勢情報としてのピッチング角度およびローリング角度を受け付ける(ステップS10)。
次いで、受け付けたピッチング角度およびローリング角度に基づいて船体12のピッチングおよびローリングが抑制されるようにフラップ駆動部24を介して一対のフラップ22の揺動角度を制御し(ステップS12)、ステップS10に戻り同様の動作を繰り返す。
これにより、船体12はピッチングおよびローリングが抑制された安定した姿勢を保持することができる。
【0024】
次に、姿勢制御装置18の動作について図7に示すフローチャートを参照して説明する。
予め、船舶10Aは、牽引タワー1208の取付部1210にトーイング用のロープ20の前端が結合され、ロープ20の後端に設けられた持ち手を水上スキーヤーが把持しているか、あるいは、ロープ20の後端に人が乗ったトーイング遊具が取り付けられている場合について詳細に説明する。
フラップ制御部30は、船首高さ検出部28で検出される船首12Aの高さΔhを受け付ける(ステップS20)。
次いで、受け付けた船首12Aの高さΔhが予め定められた上限しきい値を上回ったか否かを判定する(ステップS22)。
ステップS22の判定が否定ならば、ステップS20に戻り同様の動作を繰り返す。
ステップS22の判定が肯定ならば、船体12の前上がり状態を抑制するように一対のフラップ22の揺動角度の制御を行ない(ステップS24)、ステップS20に戻り同様の動作を繰り返す。
具体的に説明すると、図4(A)に示すように、牽引タワー1208の取付部1210にトーイング用のロープ20の前端が結合された状態で、停止状態の船舶10Aが発進する。
すると、トーイング用のロープ20から牽引タワー1208の取付部1210に人やトーイング遊具の荷重が急に作用することにより、船体12は船首12Aが船尾12Bよりも持ち上がって前上がり状態となる。
ここで、ステップS22の判定が肯定となったならば、図4(B)に示すように、船体12の前上がり状態を抑制するように一対のフラップ22の揺動角度の制御がなされる(ステップS22)。すなわち、一対のフラップ22が後方に至るにつれて下方に変位する傾斜となるように、一対のフラップ22の揺動角度の制御がなされる。
その結果、図4(C)に示すように、船体12の過剰な前上がり状態が抑制され、船体12はほぼ水平状態となる。
この後は、ステップS20に戻り同様の動作が繰り返してなされる。
【0025】
上述した図6図7のフローチャートで示す制御動作がフラップ制御部30により連続して繰り返して実行されることにより、船体12のピッチング、ローリングが抑制され、また、船体12の過剰な前上がり状態が抑制される。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態の姿勢制御装置18によれば、船体12の没水部の両側に支軸2210を介して回動可能に一対のフラップ22を設け、姿勢検出部26によって検出された船体12の姿勢を示す姿勢情報に基づいてフラップ制御部30がフラップ駆動部24を介して一対のフラップ22の揺動角度を船体12の揺れが抑制されるように制御するようにした。
したがって、風波や海流、船体12の加速、減速、船体12の旋回などによって生じる船体12の揺れを効率よく抑制でき、航行中の船体12の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、姿勢情報が傾斜センサで検出された船体12のピッチング角度であり、フラップ制御部30による一対のフラップ22の揺動角度の制御は、船体12のピッチングを抑制するようになされるので、船体12のピッチングを効率よく抑制でき、航行中の船体12の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、姿勢情報が傾斜センサで検出された船体12のローリング角度であり、フラップ制御部30による一対のフラップ22の揺動角度の制御は、船体12のローリングを抑制するようになされるので、船体12のローリングを効率よく抑制でき、航行中の船体12の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、船舶10Aは動力船であり、フラップ制御部30は、船首高さ検出部28で検出された船首12Aの水面WSからの高さΔhが予め定められた上限しきい値を上回った場合に、船体12の前上がり状態を抑制するように一対のフラップ22の揺動角度の制御を行なうようにした。
したがって、航行中に船体12が浮遊物に乗り上げたり、あるいは、トーイング用のロープ20を牽引しつつ発進するといった場合に生じやすい船体12の過剰な前上がり状態を確実にかつ効率的に抑制し、航行中の船体12の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、一対のフラップ22は船体12の船尾12B寄りの箇所に設けられているので、船体12の過剰な前上がり状態が発生した場合であっても、一対のフラップ22が水中に位置した状態を確保しやすく、一対のフラップ22によって発生する揚力によって船体12の過剰な前上がり状態を確実にかつ効率的に抑制する上でより有利となり、航行中の船体12の姿勢を一定に保つ上でより有利となる。
【0031】
また、本実施の形態では、船体12は、船体12から上方に離れた箇所にトーイング用のロープ20の前端が結合される結合部が設けられているので、トーイング用のロープ20を介して水上スキーヤーやトーイング遊具から加わる荷重によって船体12が前上がり状態となりやすい場合であっても船体12の過剰な前上がり状態を確実にかつ効率的に抑制し、航行中の船体12の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に図8から図13を参照して第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、本発明に係る姿勢制御装置18が動力船に適用された場合について説明したが、第2の実施の形態では、姿勢制御装置18が帆船に適用された場合について説明する。
なお、以下では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を簡略化し、異なる部分について重点的に説明する。
図8から図10に示すように、船舶10Bは帆船(ヨット)であり、帆(セール)で受けた風を推進力に変えて走る船舶であり、本実施の形態では、1人から2人で操船するディンギー型ヨットである場合について説明する。
船舶10Bは、船体32と、マスト34と、ブーム36と、セール38(帆)と、ティラー40(舵)と、センターボード42と、姿勢制御装置44(図5参照)とを含んで構成されている。
船体32の船首32A寄りの箇所からマスト34が起立され、マスト34の下部からマスト34と直交する方向にブーム36が設けられ、セール38がマスト34とブーム36との間に設けられている。
マスト34はその軸線回りに回動可能に船体32に支持されており、操縦者がセール38の向きを操作することによって操船を行なう。
また、ティラー40は船体32のトランサム1206に揺動可能に支持され、操縦者がティラー40を操作することで操舵がなされる。
センターボード42は、船体32の船底の前後方向および幅方向の中央部から下方に突設されて水中に位置し板状を呈している。
センターボード42は、船舶10Bが帆走する際、風の力で発生する推進力のうち、横流れする力を打ち消す作用を奏するものである。
【0033】
図12に示すように、姿勢制御装置44は、一対のフラップ46と、フラップ駆動部48と、姿勢検出部26と、船首高さ検出部28と、フラップ制御部50とを含んで構成されている。
図8図10に示すように、一対のフラップ46は、船体32の長さ方向に細長の同形同大の矩形板状を呈している。
一対のフラップ46は、船体12の左右側部に設けられた左フラップ46L、右フラップ46Rである。
図9に示すように、各フラップ46は、船体32の前後方向の前方に位置する前縁4602と、後方に位置する後縁4604と、それら前縁4602と後縁4604の両端を接続する一対の側縁4606とを備えている。
本実施の形態では、一対のフラップ46は、船体32の左舷および右舷の船首32A寄りでかつ喫水線よりも下方に位置する部分、すなわち、船体32の没水部に設けられており、各フラップ46は、支軸4610を介して船体32の箇所に取り付けられている。
したがって、一対のフラップ46は船体32の没水部の両側に支軸4610を介してそれぞれ独立して回動可能に設けられている。
フラップ46は、その前縁4602寄りの箇所が支軸4610と一体回転可能に結合され、支軸4610は、船体32の内部に設けられた不図示の軸受部で回転可能に支持され、船体32の幅方向に延在している。
第1の実施の形態と同様に、フラップ46は、水中で支軸4610回りの揺動角度が調整されることで上方あるいは下方に向かう揚力を発生させ、この揚力によって船体32の姿勢を変化さセール38ものであり、フラップ46の形状は、矩形板状に限定されず、従来公知の様々な形状が採用可能である。
【0034】
フラップ駆動部48は、一対のフラップ46のそれぞれを独立して回動させるものである。
本実施の形態では、フラップ駆動部48は、船体32に設けられた不図示のモータと、モータの回転駆動力を支軸4610に伝達する不図示の動力伝達機構とを含んで構成されている。
【0035】
姿勢検出部26は、船体32の姿勢を示す姿勢情報を検出するものであり、第1の実施の形態と同様に、姿勢検出部26は、船体32のピッチング角度およびローリング角度を検出する傾斜センサを用いている。
【0036】
船首高さ検出部28は、船首32Aの水面WSからの高さΔhを検出するものであり、水面WSから上方に離間した船首32A部分に設けられ、第1の実施の形態と同様に、超音波センサを用いていが、船首高さ検出部28として、レーザー光センサ、ミリ波レーダーセンサなど従来公知の様々な距離センサを用いることができることは第1の実施の形態と同様である。
【0037】
フラップ制御部50は、第1の実施の形態と同様に、姿勢検出部26によって検出された姿勢情報であるピッチング角度およびローリング角度に基づいてフラップ駆動部48を介して一対のフラップ46の揺動角度を船体32の揺れが抑制されるように制御するものである。
具体的に説明すると、フラップ制御部50による一対のフラップ46の揺動角度の制御は、船体32のピッチングおよびローリングを抑制するようになされる。
例えば、船体32のピッチングにより船体32が前方に至るにつれて上方に変位する姿勢となった場合には、フラップ制御部50は、一対のフラップ46が後方に至るにつれて上方に変位する傾きとなるようにフラップ46の揺動角度を制御し、これにより一対のフラップ46によって下方に向かう揚力を発生させて船首32を下方に変位させ、ピッチング角度が0度に近づくように船体32の姿勢を制御する。
また、船体32のピッチングにより船体32が前方に至るにつれて下方に変位する姿勢となった場合には、フラップ制御部50は、一対のフラップ46が後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなるようにフラップ46の揺動角度を制御し、これにより一対のフラップ46によって上方に向かう揚力を発生させて船首32Aを上方に変位させ、ピッチング角度が0度に近づくように船体32の姿勢を制御する。
【0038】
また、船体32のローリングにより船体32が左向きに傾いた姿勢となった場合は、左フラップ46Lが後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなり、右フラップ46Rが後方に至るにつれて上方に変位する傾きとなるようにフラップ46の揺動角度を制御し、これにより、左フラップ46Lにより上方に向かう揚力を発生させ、右フラップ46Rにより下方に向かう揚力を発生させ、ローリング角度が0度に近づくように船体32の姿勢を制御する。
また、船体32のローリングにより船体32が右向きに傾いた姿勢となった場合は、左フラップ46Lが後方に至るにつれて上方に変位する傾きとなり、右フラップ46Rが後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなるようにフラップ46の揺動角度を制御し、これにより、左フラップ46Lにより下方に向かう揚力を発生させ、右フラップ46Rにより上方に向かう揚力を発生させ、ローリング角度が0度に近づくように船体32の姿勢を制御する。
また、船体32にピッチングとローリングの双方が生じる場合には、フラップ制御部50は、上記のフラップ46の揺動角度の制御を組み合わせて行なう。
【0039】
また、フラップ制御部50は、第1の実施の形態と異なり、船首高さ検出部28で検出された船首32Aの高さΔhが予め定められた下限しきい値を下回った場合に、船体32の前下がり状態を抑制するように一対のフラップ46の揺動角度の制御を行なうものである。
船首32Aの高さΔhが下限しきい値を下回る状態とは、航行中にセール38が強い追い風を受けた際に発生し、船体32の姿勢が過剰に前下がり状態となる。
特に、船体32が小さく軽量な帆船においては、セール38が強い追い風を受けた場合に、船体32の姿勢が過剰に前下がり状態となりやすい。
船体32の姿勢が過剰に前下がり状態となると、その際に船首12Aの高さΔhが低くなるほど船体32の姿勢が不安定となり、浸水や転覆のおそれがあるので、船体32の前下がり状態が発生したならば、速やかに船体32の前下がり状態を抑制することが船体32の姿勢を一定に保つ上で重要となる。
そのため、フラップ制御部50は、図11(A)に示すように、船首32Aの高さΔhが予め定められた下限しきい値を下回った場合に、フラップ制御部50は、図11(B)に示すように、一対のフラップ46が後方に至るにつれて下方に変位する傾きとなるようにフラップ46の揺動角度を制御し、これにより一対のフラップ46によって上方に向かう揚力を発生させて船首32Aを上方に変位させ、図11(C)に示すように、船体32の前下がり状態を抑制するように一対のフラップ46の揺動角度の制御を行なう。
したがって、下限しきい値は、船体32の前下がり状態により浸水や転覆のおそれが生じない程度の低めの値に設定しておく必要がある。
【0040】
なお、船体32の前下がり状態は、姿勢検出部26によって検出されるピッチング角度によってもある程度検出できるが、ピッチング角度のみでは水面WSに対する船首12Aの高さΔhがどの程度低くなっており、船体12の姿勢がどの程度不安定になっているかを正確に把握する上で十分とは言えない。
したがって、船首高さ検出部28によって船首32Aの高さΔhを検出し、その高さΔhが下限しきい値を下回ったことをもってフラップ46の揺動角度を制御することが船体32の姿勢を確実にかつ効率よく安定化させる上で有利となる。
【0041】
次に、姿勢制御装置44の動作について説明する。
フラップ制御部50による姿勢情報としてのピッチング角度およびローリング角度に基づく一対のフラップ46の揺動角度の制御については、第1の実施の形態で説明した図6のフローチャートと概ね同様であるため、その説明を省略し、船体32の過剰な前下がり状態が発生した場合の動作について図13に示すフローチャートを参照して説明する。
フラップ制御部50は、船首高さ検出部28で検出される船首32Aの高さΔhを受け付ける(ステップS30)。
次いで、受け付けた船首32Aの高さΔhが予め定められた下限しきい値を下回ったか否かを判定する(ステップS32)。
ステップS32の判定が否定ならば、ステップS30に戻り同様の動作を繰り返す。
ステップS32の判定が肯定ならば、船体32の前下がり状態を抑制するように一対のフラップ46の揺動角度の制御を行ない(ステップS34)、ステップS30に戻り同様の動作を繰り返す。
具体的に説明すると、図11(A)に示すように、セール38に後方から強い追い風が当たることにより、船体32は船首32Aが船尾32Bよりも下がって前下がり状態となる。
ここで、ステップS32の判定が肯定となったならば、図11(B)に示すように、船体32の前下がり状態を抑制するように一対のフラップ46の揺動角度の制御がなされる(ステップS32)。すなわち、一対のフラップ46が後方に至るにつれて下方に変位する傾斜となるように、一対のフラップ46の揺動角度の制御がなされる。
その結果、図11(C)に示すように、船体32の過剰な前下がり状態が抑制され、船体32はほぼ水平状態となる。
この後は、ステップS30に戻り同様の動作が繰り返してなされる。
【0042】
上述した図6図13のフローチャートで示す制御動作がフラップ制御部50により連続して繰り返して実行されることにより、船体32のピッチング、ローリングが抑制され、また、船体32の過剰な前下がり状態が抑制される。
【0043】
以上説明したように第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、第2の実施の形態では、船舶10Bは帆船であり、フラップ制御部50は、船首高さ検出部28で検出された船首32Aの水面WSからの高さΔhが予め定められた下限しきい値を下回った場合に、船体32の前下がり状態を抑制するように一対のフラップ46の揺動角度の制御を行なうようにした。
したがって、航行中に追い風がセール38に当たった場合に生じやすい船体32の過剰な前下がり状態を確実にかつ効率的に抑制し、航行中の船体32の姿勢を一定に保つ上で有利となる。
【0044】
また、第2の実施の形態では、一対のフラップ46は船体32の船首32A寄りの箇所に設けられているので、船体32の過剰な前下がり状態が発生した場合であっても、一対のフラップ46が水中に位置した状態を確保しやすく、一対のフラップ46によって発生する揚力によって船体32の過剰な前下がり状態を確実にかつ効率的に抑制する上でより有利となり、航行中の船体32の姿勢を一定に保つ上でより有利となる。
【0045】
なお、実施の形態では、船舶が比較的小型なスポーツボート(動力船)やディンギー型ヨット(帆船)である場合について説明したが、本発明は、小型の船舶に限定されるものではなく、観光船、クルーザ、レジャー用ボート、競艇で用いられるモータボート、競技用のパワーボート、大型のヨットなど従来公知の様々な船舶に適用可能であり、船舶の種類、総トン数、用途は任意である。
【符号の説明】
【0046】
10A 船舶(動力船)
10B 船舶(帆船)
12 船体
12A 船首
12B 船尾
1202 操作台
1204 操船席
1206 トランサム
1208 牽引タワー
1210 軸受
14 船外機
1402 カバー
1404 エンジン
1406 動力伝達機構
1408 プロペラ
16 操船制御装置
1602 イグニッションスイッチ
1604 ハンドル
1606 スロットルレバー
18 姿勢制御装置
20 トーイング用のロープ
18 姿勢制御装置
22 一対のフラップ
22L 左フラップ
22R 右フラップ
2202 前縁
2204 後縁
2206 側縁
2210 支軸
24 フラップ駆動部
2402 油圧シリンダ
2402A シリンダ本体
2402B ピストンロッド
2410 支軸
2412 支軸
26 姿勢検出部
28 船首高さ検出部
30 フラップ制御部
32 船体
32A 船首
32B 船尾
34 マスト
36 ブーム
38 セール(帆)
40 ティラー(舵)
42 センターボード
44 姿勢制御装置
46 フラップ
46L 右フラップ
46R 左フラップ
4602 前縁
4604 後縁
4606 側縁
4610 支軸
48 フラップ駆動部
50 フラップ制御部
WS 水面
Δh 船首の水面からの高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13