(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160052
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】床
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
E04F15/16 C
E04F15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064558
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】519428122
【氏名又は名称】株式会社Magic Shields
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平山 洋介
(72)【発明者】
【氏名】下村 明司
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 太紀
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA44
2E220BA03
2E220DA02
2E220DA19
2E220EA03
2E220GA02X
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA26X
2E220GB01X
2E220GB23Y
2E220GB32X
2E220GB34X
2E220GB39X
2E220GB43X
2E220GB43Y
(57)【要約】
【課題】床としての基本的な機能を損なうことなく、性質の異なる床材からなる床を提供することを目的とする。
【解決手段】剛性の異なる少なくとも3種類の部分を有する床であって、部分Aと、前記部分Aよりも高い剛性を持つ部分Bと、前記部分Aと前記部分Bの間に配される部分Cと、から構成され、前記部分Cは、前記部分Aに近いほど剛性が高く、前記部分Bに近いほど剛性が低いこと、を特徴とする、床、が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の異なる少なくとも3種類の部分を有する床であって、
部分Aと、
前記部分Aよりも高い剛性を持つ部分Bと、
前記部分Aと前記部分Bの間に配される部分Cと、
から構成され、
前記部分Cは、前記部分Aに近いほど剛性が高く、前記部分Bに近いほど剛性が低いこと、
を特徴とする、床。
【請求項2】
前記部分Cの前記部分Aに接する部分は、前記部分Aの剛性から所定値以内の第1の剛性を有し、
前記部分Cの前記部分Bの接する部分は、前記部分Bの剛性から所定値以内の第2の剛性を有すること、
を特徴とする、請求項1に記載の床。
【請求項3】
前記部分Cは、第1素材と、第1素材より剛性の低い第2素材と、の少なくとも2種類の素材からなり、
前記部分Cにおける、前記部分Aに近い部分と、前記部分Bに近い部分とで、鉛直方向に、前記第1素材と前記第2素材の厚みが変化すること、
を特徴とする、請求項1または2に記載の床。
【請求項4】
前記部分Cの剛性は、直線的、または段階的、または曲線的、またはそれらの二つ以上の組み合わせで変化すること、
を特徴とする、請求項3に記載の床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者や高齢者等が転倒した際の怪我を防ぐため、衝撃を吸収するマットや床材が提案されている。
【0003】
特許文献1には、簡単な組成で、優れた衝撃吸収性とキャスター走行性を確保し、更に歩行性に優れる床材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される技術は、衝撃吸収機能のある床材を部屋全面に施工する場合には均一な歩行性、衝撃吸収性などを担保できる。しかしながら、例えばベッド脇や階段下、トイレなど、連続する空間の一部に衝撃吸収性を持たせたいというニーズなどに対しては、特性の異なる床材を隣接させて施工することになり、ユーザにとって躓きや、床材同士の接触による床材の破損などの課題が生じる。
【0006】
本開示は、このような背景を鑑みてなされたものであり、床としての基本的な機能を損なうことなく、性質の異なる床材からなる床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示において、剛性の異なる少なくとも3種類の部分を有する床であって、部分Aと、前記部分Aよりも高い剛性を持つ部分Bと、前記部分Aと前記部分Bの間に配される部分Cと、から構成され、前記部分Cは、前記部分Aに近いほど剛性が高く、前記部分Bに近いほど剛性が低いこと、を特徴とする、床、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、床としての基本的な機能を損なうことなく、性質の異なる床材からなる床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例の床1の一部分の垂直断面図である。
【
図2】本実施例の高剛性部分10と低剛性部分20を並べた床の上を歩いたときの模式図である。
【
図3】本実施例の部分30の垂直断面図の一例である。
【
図4】本実施例の部分30を設置した際の床1の垂直断面図の一例である。
【
図5】本実施例の床1の上を歩いたときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、以下のような構成を備える。
[項目1]
剛性の異なる少なくとも3種類の部分を有する床であって、
部分Aと、
前記部分Aよりも高い剛性を持つ部分Bと、
前記部分Aと前記部分Bの間に配される部分Cと、
から構成され、
前記部分Cは、前記部分Aに近いほど剛性が高く、前記部分Bに近いほど剛性が低いこと、
を特徴とする、床。
[項目2]
前記部分Cの前記部分Aに接する部分は、前記部分Aの剛性から所定値以内の第1の剛性を有し、
前記部分Cの前記部分Bの接する部分は、前記部分Bの剛性から所定値以内の第2の剛性を有すること、
を特徴とする、項目1に記載の床。
[項目3]
前記部分Cは、第1素材と、第1素材より剛性の低い第2素材と、の少なくとも2種類の素材からなり、
前記部分Cにおける、前記部分Aに近い部分と、前記部分Bに近い部分とで、鉛直方向に、前記第1素材と前記第2素材の厚みが変化すること、
を特徴とする、項目1または2に記載の床。
[項目4]
前記部分Cの剛性は、直線的、または段階的、または曲線的、またはそれらの二つ以上の組み合わせで変化すること、
を特徴とする、項目3に記載の床。
【0011】
<実施の形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<概要>
本発明の実施の形態による床1は、複数の性質の異なる部分を有する。
図1は、一例として、床1の一部を横から見た図であり、床1の基本構成要素を示す。
【0013】
本実施形態の床1は、高剛性部分10と、高剛性部分10よりも低い剛性の低剛性部分20と、その間に配される部分30と、表面部40と、を有する。なお、表面部40を有さない構成であってもよい。
【0014】
本実施形態の高剛性部分10は、人が通常の生活や事業等の活動を行うことを前提として用いる床である。高剛性部分10は、一例として、木材、モルタル、OAフロアなどの床下地が含まれる。また、高剛性部分10は、当該床下地の上にフローリング、タイル、大理石等の石が施工済みの床であって、リフォームなどによって当該床を部分的に取り除いたものでもよい。この場合、取り除いた部分に衝撃吸収性のある床材を配し、それらの上にビニルシートなどを配して床を形成する。
【0015】
本実施形態の低剛性部分20は、衝撃吸収性を有する床である。低剛性部分20は、一例として、少なくともその一部にエストラマー系、スポンジ、ウレタン、ゴムなどの衝撃吸収性を有する素材を含んでいるもので良いが、これらに限定されない。また、低剛性部分20は、前述した素材で形成されていなくても、衝撃を吸収する構造等の機構を備えるものでもよい。低剛性部分20は、その上で転倒した際に、変形することによって衝撃を吸収する。なお、低剛性部分20は、その上部を通常の状態で歩行した際にも、わずかに変形しうる。低剛性部分20は、通常の歩行時は高剛性部分10と同程度の剛性を有し、転倒時など、急激に衝撃が加わる、または狭い面積に衝撃が加わるなどしたときだけに高剛性部分10よりも剛性が低くなるように設計されたものでもよい。なお、低剛性部分20は、衝撃吸収性を有さなくてもよい。
【0016】
本実施形態の表面部40は、歩行面であり、直接表面に露出していることから、接触する面としての感触、度重なる歩行や物品の設置などへの一定の耐久性、設置場所のデザインや購入者の嗜好に応える意匠性、その他、防滑性、耐火性、耐水性、耐傷性、メンテナンス性などの機能を備えてもよい。転倒衝撃時の変形に耐えうる、上述した機能を有した材料からなり、例えば、塩化ビニル等からなるクッションフロア、タイル、カーペット、コルク、長尺シートなどの素材でよいが、これらに限定されない。
【0017】
図2は、本実施形態の高剛性部分10と、低剛性部分20は、互いに接する形で配された場合に、低剛性部分20上を歩行した際に起こる事象を説明するものである。低剛性部分20は人の歩行による上部からの圧力や、転倒時の急な衝撃により変形しうるため、
図2のAで示した場所のように、低剛性部分20は、高剛性部分10に押し付けられるように力を受ける。このため、高剛性部分10と低剛性部分20は、長期間の使用によって、破損等のリスクが高まる。また、高剛性部分10と、低剛性部分20を互いに接する形で配した上に、表面部40を配した場合、低剛性部分20の変形と併せて表面部40も変形し、これが何度も起こることにより、
図2のBで示した場所のように、高剛性部分10の端部に、表面部40が何度も押し付けられる力が加わり、表面部40の破損のリスクが高まる。
【0018】
本実施形態の部分30は、高剛性部分10と低剛性部分20の間に配される。部分30は、一例として、少なくとも2種類の素材を有する。
図3は、部分30の一例を示す図である。部分30は、一例として、低剛性部分20と接する面積の大きい軟部分31と、高剛性部分10と接する面積の大きい剛部分32と、を有する。
図4は、本実施形態の床1の一例を示した図である。
【0019】
本実施形態の部分30において、高剛性部分10に近い部分は高剛性部分10と同じ程度、または近い程度の剛性を持つ。言い換えれば、高剛性部分10の剛性と、部分30の、高剛性部分10に近い部分の剛性との差は、所定値以内となる。なお、部分30において、高剛性部分10に近い部分は、
図5におけるCで示した場所の表面部40が、部分30に上部から力が加わった際に、高剛性部分10の端部に押し付けられない程度の変形量であればよい。または、高剛性部分10に近い部分は、
図5におけるCで示した場所の表面部40が、部分30に上部から力が加わった際に、高剛性部分10の端部に押し付けられたとしても、表面部40が破損しない程度の変形量であればよい。
【0020】
本実施形態の部分30において、低剛性部分20に近い部分は低剛性部分20と同じ程度、または近い程度の剛性を持つ。言い換えれば、高剛性部分10の剛性と、部分30の、低剛性部分20に近い部分の剛性との差は、所定値以内となる。なお、部分30において、低剛性部分20に近い部分の剛性は、低剛性部分20または。部分30に上部から力が加わった際に、同程度変形すればよい。
【0021】
本実施形態の部分30は、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、剛性が線形に下がるように構成される。
【0022】
本実施形態の軟部分31と剛部分32は、その接点を両面テープや接着剤などで固定してもよいが、これら固定法に限定されない。
【0023】
本実施形態の部分30は、
図5に示したように、その上をユーザが歩行した際に、高剛性部分10に近い部分は高剛性部分10と所定値以内の剛性を持つため、あまり変形することがない。このことにより、
図5のCで示した部分のように、高剛性部分10の端部に、表面部40が何度も押し付けられる力が加わりにくく、表面部40の破損のリスクを低減、または破損の程度を少なくすることができる。また、その上をユーザが歩行した際に、低剛性部分20に近い部分は低剛性部分20と所定値以内の剛性を持つため、低剛性部分20と同程度変形する。このことにより、ユーザがほとんど違和感なく、高い歩行性をもたらすことができる。また、
図5のE及びFに関しては、部分30が隣り合う他の部分との剛性が所定値以内であることから、変形の程度も同程度であり、それぞれが何度も接することで互いが損傷するリスクを低減、または損傷の程度を少なくすることができる。
【0024】
本実施形態の軟部分31は、一例として、その一部または全体がエストラマー系、スポンジ、ウレタン、ゴムなどの衝撃吸収性を有する素材からなるが、これら素材に限定されない。また、本実施形態の軟部分31は、構造を用いて衝撃吸収性を持たせてもよい。
【0025】
本実施形態の剛部分32は、一例として、その一部または全体が木材、タイル、石、プラスチック、アクリル、金属等の高い剛性を持つ素材からなるが、これらの素材に限定されない。
【0026】
図3のh11は、0mm以上でよく、高剛性部分10の端部と表面部40が押し付けられて損傷が生じるリスクを低減できる。また、
図3のh11は、1mm以上であれば、剛性の変化を構成し、歩行時において、高剛性部分10との剛性の変化を目立たなくすることができる。さらに、
図3のh11は、2mm以上であれば、より歩行性に支障が出ない構成を取ることができる。なお、
図3のh21は、隣り合う高剛性部分10と高さを揃える長さであればよい。
【0027】
図3のh22は、0mm以上でよく、低剛性部分20との剛性の変化を目立たなくすることができる。また、
図3のh22は、1mm以上であれば、隣り合う低剛性部分20と接触し、水平方向へのずれを抑えることができる。なお、
図3のh22は、隣り合う低剛性部分20と高さを揃える長さであればよい。
【0028】
図3のL13と、L23は同じ長さでよい(製造上の僅かな長さの違いは生じ得る)。L13は、10mm以上でよく、高剛性部分10の端部と表面部40が押し付けられて損傷が生じるリスクを低減し、または損傷の程度を低減できる。また、L13は、その上部を歩行時に、高剛性部分10または低剛性部分20に、足の一部が掛かるサイズ(一例として、30mm以上、100mm以下であるが、これに限定されない)であることが望ましく、これにより安定した歩行性を有する。
【0029】
(実施例)
本実施例における部分30について説明する。本実施例における、軟部分31について、h11は3mm、h12は20mm、L13は50mmである。本実施例における、剛部分32について、h21は17mm、h22は0mm、L23は50mmである。本実施例における軟部分31はスポンジで構成し、剛部分32は木材で構成した。軟部分31と剛部分32は接着剤で接着し、剛部分32を、設置する面にねじで固定した。本実施例における部分30の剛性は、
図3に一例を示すように直線的に変化するよう構成した。
【0030】
他の実施形態の部分30は、
図6に一例を示すように、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、剛性が段階的に下がるように構成されていてもよい。このとき、
図6には一例として3段階としたが、2段階でもよいし、より多段階であってもよい。また、
図7に一例を示すように、剛部分32が備える溝部分に、軟部分31が挿入される形で、剛性が変化するように構成されていてもよい。なお、部分30の途中で、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、部分的に剛性が高まる部分があってもよい。
【0031】
また、他の実施形態の部分30は、
図8に一例を示すように、剛性の異なる部分が隣り合うように配されていてもよい。この場合、部分30は、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、剛性が異なる複数の部分が並ぶことで、剛性が段階的に下がるように構成される。なお、
図7には一例として3つの部分(33a、33b、33c)で構成される部分30を記載した。ここで部分33aは高剛性部分10と同じ、または高剛性部分10の剛性と比較して所定値以内の剛性であり、部分33bは、部分33aよりも低い剛性であり、部分33cは部分33bよりも低い剛性である。また、部分33cは、低剛性部分20と同じ、または低剛性部分20の剛性と比較して所定値以内の剛性である。なお、
図7には一例として3つの部分(33a、33b、33c)で構成される例を記載としたが、2つの部分で構成されていてもよいし、より多くの部分で構成されていてもよい。なお、部分30の途中で、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、部分的に剛性が高まる部分があってもよい。
【0032】
他の実施形態の部分30は、
図9に一例を示すように、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、剛性が曲線的に下がるように構成されていてもよい。なお、部分30の途中で、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、部分的に剛性が高まる部分があってもよい。
【0033】
他の実施形態の部分30は、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、剛性が直線的、段階的、曲線的に変化する部分が混在していてもよい。なお、部分30の途中で、高剛性部分10に近い部分から、低剛性部分20に近い部分に向かうに方向に、部分的に剛性が高まる部分があってもよい。
【0034】
他の実施形態の部分30は、
図10に一例を示すように、水平に積層されたものでもよい。この場合、部分30の剛性は、高剛性部分10と、低剛性部分20の剛性の、中間であればよい。
【0035】
他の実施形態の部分30は、
図3におけるL13とL23の長さが異なるものでもよい。その場合、部分30の両端は、高剛性部分10の端部に、表面部40が何度も押し付けられないように構成されていればよい。具体的には、部分30の両端は、例えば、隣り合う高剛性部分10と、低剛性部分20と接するように構成されていればよい。
【0036】
他の実施形態の部分30は、両端の高さが異なるものでもよい。その場合、部分30の両端は、高剛性部分10の端部に、表面部40が何度も押し付けられないように構成されていればよい。具体的には、部分30の両端は、例えば、隣り合う高剛性部分10と、低剛性部分20と同じ高さ(製造上のずれは生じ得る)であればよい。
【0037】
他の実施形態の部分30は、少なくとも一つの部分からなり、当該部分を形成する材料を不均一に配することで、剛性を変えるように構成されていてもよい。
【0038】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 床
10 高剛性部分
20 低剛性部分
30 部分
31 軟部分
32 剛部分
40 表面部