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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160062
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N35/02 G
G01N35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064573
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田川 欽一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 誠
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GB06
2G058GB08
2G058GB10
2G058GC01
2G058GC05
2G058GD05
2G058GD06
2G058GE03
2G058GE04
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】ユーザーが解除指示を忘れて物理的処置済みの検体容器が測定対象から除外されたままになることを避ける。
【解決手段】自動分析装置は、検体容器収容ユニットの各収容ポジションに収容された検体容器の検体識別情報を読み取るバーコードリーダと、吸引異常が発生した検体容器の検体識別情報を、異常発生情報の紐付けによって異常検体識別情報に設定する情報紐付け部と、バーコードリーダによる今回の読み取り結果に従って記憶部に記憶された、検体識別情報と収容ポジションとの対応付けデータと今回以前の読み取り結果に従って記憶部に記憶された対応付けデータとを用いて、異常検体識別情報が付された検体容器の移動の有無を判断し、検体容器の移動を有りと判断した場合に、異常発生情報の紐付けを解除するための処理を実行する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体容器をそれぞれ異なる収容ポジションに収容可能な検体容器収容ユニット、および、前記検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器から検体を吸引する吸引部を有し、前記吸引部で吸引した検体を測定する測定部と、
前記検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器に付された検体識別情報を読み取る読み取り装置と、
前記読み取り装置によって読み取られた前記検体識別情報と、この検体識別情報が付された前記検体容器の収容ポジションとを対応付けた対応付けデータを記憶するための記憶部と、
前記吸引部が前記検体を吸引するときに異常が発生した場合に、前記異常が発生した前記検体容器に付された前記検体識別情報を、異常発生情報の紐付けによって異常検体識別情報に設定する情報紐付け部と、
前記読み取り装置による今回の読み取り結果に従って前記記憶部に記憶された前記対応付けデータと今回以前の読み取り結果に従って前記記憶部に記憶された前記対応付けデータとを用いて、前記異常検体識別情報が付された検体容器の移動の有無を判断し、前記検体容器の移動を有りと判断した場合に、前記異常検体識別情報に対する前記異常発生情報の紐付けを解除するための所定の処理を実行する制御部と、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記読み取り装置が今回読み取った前記検体識別情報の中から、前記異常検体識別情報を抽出するとともに、抽出した異常検体識別情報が付された検体容器の移動の有無を判断し、前記検体容器の移動を有りと判断した場合に、前記所定の処理を実行する
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器に付された検体識別情報のうち少なくとも1つの検体識別情報が前記異常検体識別情報に設定されている状態で、ユーザーからの測定中断の指示に従って前記測定部の測定を中断し、その後、ユーザーからの測定再開の指示に従って前記測定部の測定を再開する前に前記読み取り装置で読み取った前記検体識別情報の中に、前記異常検体識別情報が存在しない場合に、前記異常検体識別情報が付された検体容器が前記検体容器収容ユニットから取り出されたと認識する
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記異常検体識別情報が付された検体容器が前記検体容器収容ユニットから取り出されたと認識した後に、ユーザーからの測定中断の指示に従って前記測定部の測定を中断し、その後、ユーザーからの測定再開の指示に従って前記測定部の測定を再開する前に前記読み取り装置で読み取った前記検体識別情報の中から、前記取り出されたと認識した検体容器に付されていた異常検体識別情報と同一の検体識別情報が抽出された場合に、前記検体容器の移動を有りと判断する
請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器に付された検体識別情報のうち少なくとも1つの検体識別情報が前記異常検体識別情報に設定されている状態で、ユーザーからの測定中断の指示に従って前記測定部の測定を中断し、その後、ユーザーからの測定再開の指示に従って前記測定部の測定を再開する前に前記読み取り装置で読み取った前記検体識別情報の中に、前記異常検体識別情報が存在し、かつ、その異常検体識別情報が付された検体容器の収容ポジションが、前記異常発生情報を紐付けたときの収容ポジションと異なる場合に、前記検体容器の移動を有りと判断する
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器に付された検体識別情報のうち少なくとも1つの検体識別情報が前記異常検体識別情報に設定されている状態で、ユーザーからの測定中断の指示に従って前記測定部の測定を中断し、その後、ユーザーからの測定再開の指示に従って前記測定部の測定を再開する前に前記読み取り装置で読み取った前記検体識別情報の中に、前記異常検体識別情報が存在し、かつ、その異常検体識別情報が付された検体容器の収容ポジションが、今回の測定中断前の測定中においては空きポジションであった場合に、前記検体容器の移動を有りと判断する
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器に付された検体識別情報のうち少なくとも1つの検体識別情報が前記異常検体識別情報に設定されている状態で、ユーザーからの測定中断の指示に従って前記測定部の測定を中断し、その後、ユーザーからの測定再開の指示に従って前記測定部の測定を再開する前に前記読み取り装置で読み取った前記検体識別情報の中に、前記異常検体識別情報が存在し、かつ、その異常検体識別情報が付された検体容器の収容ポジションに、今回の測定中断前の測定中においては前記異常検体識別情報とは異なる検体識別情報が対応付けられていた場合に、前記検体容器の移動を有りと判断する
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器に付された検体識別情報のうち少なくとも1つの検体容器に付された前記検体識別情報が前記異常検体識別情報に設定されている状態で、ユーザーからの測定中断の指示に従って前記測定部の測定を中断し、その後、ユーザーからの測定再開の指示に従って前記測定部の測定を再開する前に前記読み取り装置で読み取った前記検体識別情報の中に、前記異常検体識別情報が存在し、かつ、その異常検体識別情報が付された検体容器の収容ポジションが、前記異常発生情報を紐付けたときの収容ポジションと同じ場合に、前記検体容器の移動を無しと判断する
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記検体容器の移動を無しと判断した場合は、前記所定の処理を実行しない
請求項8に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記検体容器の移動を無しと判断した場合に、前記異常を解消するための物理的処置を施したか否かをユーザーに問い合わせ、前記問い合わせに対してユーザーが前記物理的処置を施したと回答した場合に、前記異常発生情報の紐付けを解除する
請求項8に記載の自動分析装置。
【請求項11】
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記異常発生情報の紐付けを解除した場合に、その旨を前記表示部に表示する
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記所定の処理は、前記異常発生情報の紐付けを解除する処理、または、前記異常発生情報の紐付けを解除するようユーザーに促す処理である
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記異常検体識別情報が付された前記検体容器から検体を吸引しないように前記測定部を制御する
請求項1に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、検体に含まれる成分を迅速かつ高精度に分析(測定)する装置であり、生化学検査や輸血検査など様々な分野で用いられている。自動分析装置は、検体を測定する測定部を備えている。測定部は、生体から採取した血液、尿などの検体を取り扱う。検体は検体容器に入れて測定部にセットされる。検体容器には、検体を識別するための情報である検体識別情報が割り当てられる。測定部では、各々の検体容器に付された検体識別情報を読み取ることにより、各々の検体容器に収容されている検体を識別する。
【0003】
測定部にセットされた検体容器内の検体は、分注用のプローブによって所定量だけ吸引される。その際、検体容器から所定量の検体を吸引できないといった異常(以下、「吸引ミス」ともいう。)が発生することがある。吸引ミスは、同じ検体容器で繰り返し発生する可能性が高い。同じ検体容器で吸引ミスが繰り返し発生することを避けるための方法として、2つの方法が考えられる。第1の方法は、いずれかの検体容器で吸引ミスが発生した後に測定部の測定を中断し、吸引ミスが発生した検体容器を測定部から取り出してから、測定部の測定を再開する方法である。第2の方法は、いずれかの検体容器で吸引ミスが発生した後に測定部の測定を中断し、吸引ミスが発生した検体容器内の検体を測定対象から除外する操作を実施してから、測定部の測定を再開する方法である。
【0004】
特許文献1には、試料容器から反応容器への試料の分注が正常に実行されたかどうかを検知する分注検知機構を有する複数の分注ユニットを備える自動分析装置に関する技術が記載されている。また、特許文献1には、いずれかの分注ユニットの分注検知機構が異常を検知した場合、異常が発生した試料に関し、登録されている試料情報に分注異常が発生した旨の情報を付加し、分注異常が発生した旨の情報をもつ試料に関しては、他の分注ユニットでの分注が実行されないように制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-10363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記第1の方法には、吸引ミスが発生した検体を収容する検体容器(以下、「吸引ミス検体容器」ともいう。)を測定部から探し出して取り出す作業が面倒であるという欠点があった。また、上記第2の方法には、吸引ミス検体容器内の検体を測定対象から除外するために、測定再開後に測定対象とする検体のみを操作画面上でマウス操作等により指定する必要があり、そのための操作が面倒であるという欠点があった。
【0007】
また、同じ検体容器で吸引ミスが繰り返し発生することを避けるための他の方法として、吸引ミス検体容器から読み取った検体識別情報に対して、検体吸引時に異常(吸引ミス)が発生した旨の情報である異常発生情報を紐付けておき、ユーザーから異常発生情報の紐付けを解除するよう指示(以下、「解除指示」という。)があるまでは、異常発生情報を紐付けた検体識別情報が付された検体容器から検体を吸引しないように制御する方法(以下、「第3の方法」という。)も考えられる。
【0008】
第3の方法によれば、吸引ミス検体容器を測定部から探し出して取り出す手間や、測定対象とする検体のみを操作画面上でマウス操作等により指定する手間を省くことができる。ただし、第3の方法には、次のような課題がある。
まず、吸引ミスが発生した検体容器に関しては、その検体容器をユーザーが測定部から取り出して、吸引ミスを解消するための物理的処置を施すことにより、吸引ミスの再発を抑制することができる。また、ユーザーは、物理的処置を施した検体容器を測定部に戻した場合は、その検体容器に付された検体識別情報に関して、異常発生情報の紐付けを解除するよう指示することにより、物理的処置を施した検体容器を測定対象に含めることができる。しかしながら、ユーザーが解除指示を忘れてしまった場合は、物理的処置済みの検体容器が測定対象から除外されたままになる。このため、解除指示を忘れた検体容器の検体については、測定部の測定を再開しても測定結果が得られないという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、ユーザーが解除指示を忘れてしまって、物理的処置済みの検体容器が測定対象から除外されたままになることを避けることができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る自動分析装置は、複数の検体容器をそれぞれ異なる収容ポジションに収容可能な検体容器収容ユニット、および、検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器から検体を吸引する吸引部を有し、吸引部で吸引した検体を測定する測定部と、検体容器収容ユニットに収容された各々の検体容器に付された検体識別情報を読み取る読み取り装置と、読み取り装置によって読み取られた検体識別情報と、この検体識別情報が付された検体容器の収容ポジションとを対応付けた対応付けデータを記憶するための記憶部と、吸引部が検体を吸引するときに異常が発生した場合に、異常が発生した検体容器に付された検体識別情報を、異常発生情報の紐付けによって異常検体識別情報に設定する情報紐付け部と、読み取り装置による今回の読み取り結果に従って記憶部に記憶された対応付けデータと今回以前の読み取り結果に従って記憶部に記憶された対応付けデータとを用いて、異常検体識別情報が付された検体容器の移動の有無を判断し、検体容器の移動を有りと判断した場合に、異常検体識別情報に対する異常発生情報の紐付けを解除するための所定の処理を実行する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザーが解除指示を忘れてしまって、物理的処置済みの検体容器が測定対象から除外されたままになることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る自動分析装置の構成例を模式的に示す概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る自動分析装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図3】検体識別情報と収容ポジションとを対応付けて記憶部に記憶した例を示す図である。
図4】本発明の実施形態における自動分析装置の処理動作を説明するためのフローチャート(その1)である。
図5】本発明の実施形態における自動分析装置の処理動作を説明するためのフローチャート(その2)である。
図6】測定部の測定中に表示部に表示される操作画面の一例を示す図である。
図7】測定部の測定を中断している間に表示部に表示される操作画面の一例を示す図である。
図8】第1の具体例におけるユーザーの処理手順を示すフローチャートである。
図9】第2の具体例におけるユーザーの処理手順を示すフローチャートである。
図10】第3の具体例におけるユーザーの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
<自動分析装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る自動分析装置の構成例を模式的に示す概略斜視図である。
本実施形態においては、自動分析装置が生化学分析装置である場合を例に挙げて説明するが、本発明に係る自動分析装置は生化学分析装置以外の分析装置に適用してもよい。生化学分析装置は、血液や尿などの検体に含まれる生体成分を分析する装置である。また、本発明に係る自動分析装置は、生化学分析機能と電解質分析機能とを兼ね備えた分析装置に適用してもよい。
【0015】
図1に示すように、自動分析装置1は、検体を測定する測定部10と、制御装置40と、を備えている。測定部10は、検体容器収容ユニット2と、希釈容器収容ユニット3と、第1試薬容器収容ユニット4と、第2試薬容器収容ユニット5と、反応容器収容ユニット6と、を備えている。また、測定部10は、サンプル希釈ユニット7と、サンプリングユニット8と、希釈撹拌装置9と、希釈洗浄装置11と、第1分注ユニット12と、第2分注ユニット13と、第1反応撹拌装置14と、第2反応撹拌装置15と、多波長光度計16と、恒温槽17と、反応容器洗浄装置18と、を備えている。
【0016】
検体容器収容ユニット2は、軸方向の一端が開口した略円筒状に形成されている。検体容器収容ユニット2には、複数の検体容器21と、複数の希釈液容器22とが収容されている。検体容器収容ユニット2は、複数の検体容器21をそれぞれ異なる収容ポジションに収容するターンテーブル2aと、複数の希釈液容器22をそれぞれ異なる収容ポジションに収容するターンテーブル2bとを有している。ターンテーブル2aは、検体容器収容ユニット2の外周側に配置され、ターンテーブル2bは、検体容器収容ユニット2の内周側に配置されている。ターンテーブル2a,2bの各々は、図示しない駆動機構によって周方向に回転可能に支持されている。また、ターンテーブル2a,2bの各々は、図示しない駆動機構により、周方向に所定の角度範囲ごとに、所定の速度で回転する。
【0017】
検体容器21は、血液、尿、血清などの検体を収容する容器である。複数の検体容器21の各々には、検体を識別するための検体識別情報が付されている。検体識別情報は、個々の検体を区別するために、検体ごとに割り当てられる情報である。検体容器21には、たとえば、検体識別情報が印刷されたシールが貼り付けられる。検体識別情報は、検体を識別可能な情報であれば、どのような情報でもよい。検体識別情報は、たとえば、複数の文字を組み合わせた文字列情報によって構成される。検体識別情報を構成する文字は、数字のみでもよいし、記号のみでもよいし、英字のみでもよいし、他の文字のみでもよいし、任意の二種以上の文字を組み合わせたものでもよい。すなわち、検体識別情報を構成する文字の種類および文字の組み合わせは任意に変更可能である。
【0018】
検体識別情報が印刷されたシールには、検体識別情報の他に、検体識別情報の識別子が印刷される。識別子は、予め決められた規則に従って検体識別情報を生成可能で、且つ、予め決められた方式で読み取り可能なものであれば、どのようなものでもよい。識別子の一例としては、検体識別情報を符号化したコード情報を挙げることができる。コード情報は、このコード情報の元(符号化前)の情報である検体識別情報を復号処理によって生成可能な情報である。コード情報は、たとえば、バーコードによって構成される。バーコードは、光学的に読み取り可能なコード情報の一例である。ただし、コード情報は、光学的に読み取り可能な情報に限らず、他の方式、たとえば磁気的に読み取り可能な情報であってもよい。
【0019】
本実施形態においては、一例として、検体識別情報は文字列情報によって構成され、検体識別情報の識別子は一次元のバーコードによって構成されるものとする。また、各々の検体容器21には、バーコードと文字列情報とを並べて印刷したシールが貼り付けられるものとする。
【0020】
検体容器収容ユニット2には、バーコードリーダ50が固定されている。バーコードリーダ50は、検体容器21に付された検体識別情報の識別子であるバーコードを読み取る。バーコードリーダ50は、バーコードを光学的に読み取るバーコードスキャナによって構成される。バーコードリーダ50の読み取り窓(図示せず)は、検体容器収容ユニット2の半径方向内側を向いて配置されている。バーコードリーダの読み取り窓とは、バーコードに向かって照射される光と、バーコードから反射した光とを通過させるための窓である。
【0021】
ここで、バーコードリーダによるバーコードの読み取り原理について簡単に説明する。
まず、バーコードリーダは、バーコードを光学的に読み取り、その読み取り結果として得られるアナログ信号をデジタル信号に変換する。次に、バーコードリーダは、変換したデジタル信号をバーコードの規格に従って復号処理することにより、バーコードの元の情報である文字列情報、すなわち検体識別情報を生成する。このことから、検体容器21に付されたバーコードを読み取ることは、検体容器21に付された検体識別情報を読み取ることと実質同一である。すなわち、バーコードリーダ50は、検体容器収容ユニット2に収容された各々の検体容器21に付された検体識別情報を読み取る読み取り装置に相当する。
【0022】
バーコードリーダ50は、検体容器収容ユニット2の外周面にネジ等で固定されている。すなわち、バーコードリーダ50は、固定式のバーコードリーダである。検体容器収容ユニット2に検体容器21をセットする場合は、バーコードの印刷面が検体容器収容ユニット2の半径方向外側を向くように検体容器21をセットする。これにより、検体容器収容ユニット2に収容された検体容器21がターンテーブル2aの回転によってバーコードリーダ50の近傍に配置された場合に、バーコードリーダ50の読み取り窓に対してバーコードの印刷面が対向(正対)した状態になり、この状態で検体容器21のバーコードがバーコードリーダ50によって読み取られる。
【0023】
次に、ターンテーブル2aの回転移動を利用したバーコードの読み取り動作について説明する。
バーコードリーダ50は、ターンテーブル2aに複数の検体容器21が収容されている状態で、ターンテーブル2aが回転移動することにより、複数の検体容器21の各々に付されたバーコードを自動で順に読み取るとともに、読み取ったバーコードの情報から検体識別情報(文字列情報)を生成する。バーコードリーダ50によるバーコードの読み取りは、制御部41からインターフェイス部45を介してバーコードリーダ50へと送られる読み取り指示信号に従って、ターンテーブル2aの収容ポジションごとに行われる。制御部41は、たとえば、ターンテーブル2aの回転軸に取り付けられたロータリーエンコーダ(不図示)の出力信号を、インターフェイス部45を介して取り込むことにより、ターンテーブル2aの回転角度位置を検出する。ターンテーブル2aが有する複数の収容ポジションは、ターンテーブル2aの円周方向において、それぞれ異なる回転角度位置に設定されている。このため、制御部41は、ターンテーブル2aの回転中にターンテーブル2aの回転角度位置を検出し、検出した回転角度位置がいずれかの収容ポジションに対応する回転角度位置に達するごとに、バーコードリーダ50に読み取り指示信号を送る。したがって、ターンテーブル2aに合計M個の収容ポジションが設けられている場合は、ターンテーブル2aが1回転(360度回転)する間に、バーコードの読み取りが合計M回行われる。これにより、ターンテーブル2aに収容されたすべての検体容器21のバーコードをバーコードリーダ50によって自動で読み取ることができる。
【0024】
次に、空きポジションにおけるバーコードの読み取り動作について説明する。
ターンテーブル2aが有する複数の収容ポジションのうち、一部の収容ポジションは、検体容器21が収容(セット)されていない空きポジションとなることがある。その場合、バーコードリーダ50は、空きポジションについてもバーコードの読み取りを行う。詳しく説明すると、検体容器収容ユニット2の内部には、ターンテーブル2aの全周にわたって空きポジション専用のバーコード(以下、「専用バーコード」ともいう。)が設けられている。専用バーコードは、ターンテーブル2aのいずれかの収容ポジションが空きポジションである場合に、空きポジションを通してバーコードリーダ50により読み取られる。専用バーコードは、ターンテーブル2aが有するすべての収容ポジションに共通のバーコードである。つまり、いずれの収容ポジションが空きポジションになっていても、空きポジションを通して読み取られる専用バーコードは共通である。バーコードリーダ50は、空きポジションを通して専用バーコードを読み取った場合は、その読み取り結果に基づくデジタル信号を復号処理することにより、空きポジション専用の検体識別情報(文字列情報)を生成する。専用バーコードは、空きポジションとなっている収容ポジションに検体容器21をセットすると、バーコードリーダ50から見て検体容器21の陰に隠れる。つまり、専用バーコードは、収容ポジションにセットされる検体容器21によって遮蔽される位置に配置されている。したがって、バーコードリーダ50は、収容ポジションが空きポジションとなっている場合は専用バーコードを読み取り、収容ポジションに検体容器21がセットされている場合は、検体容器21に付されたバーコードを読み取ることになる。
【0025】
なお、バーコードリーダ50によるバーコードの読み取り動作は、ターンテーブル2aに複数の検体容器21が収容されている場合(すべての収容ポジションに検体容器21が収容されている場合を含む)に限らず、ターンテーブル2aに検体容器21が1つしか収容されていない場合、あるいはターンテーブル2aに検体容器21が1つも収容されていない場合にも実行可能である。
【0026】
希釈液容器22は、通常の希釈液とは異なる特別な希釈液を収容する容器である。通常の希釈液とは、後述する希釈分注プローブの内部に満たされた液体(たとえば、生理食塩水)をいう。つまり、測定部10で使用される希釈液には、通常の希釈液と、これとは異なる特別な希釈液とがある。
【0027】
複数の検体容器21は、検体容器収容ユニット2の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。また、複数の検体容器21は、検体容器収容ユニット2の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。
【0028】
複数の希釈液容器22は、検体容器収容ユニット2の半径方向において、複数の検体容器21よりも内側に配置されている。複数の希釈液容器22は、検体容器収容ユニット2の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。また、複数の希釈液容器22は、検体容器収容ユニット2の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。
【0029】
なお、測定部10の構成としては、上述した特別な希釈液を、検体容器収容ユニット2に配置された希釈液容器22から供給するだけでなく、希釈分注プローブが吸引可能な位置に置かれた容器等から特別な希釈液を供給する構成になっていてもよいし、希釈容器23に直接、特別な希釈液を供給する構成になっていてもよい。また、検体容器収容ユニット2の半径方向における複数の検体容器21の配置は、2列に限らず、1列でもよいし、3列以上でもよい。この点は、複数の希釈液容器22についても同様である。
【0030】
希釈容器収容ユニット3は、検体容器収容ユニット2の周囲に配置されている。希釈容器収容ユニット3は、軸方向の一端が開口した略円筒状に形成されている。希釈容器収容ユニット3には複数の希釈容器23が収容されている。希釈容器収容ユニット3は、複数の希釈容器23をそれぞれ異なる収容ポジションに収容する希釈ターンテーブル3aを有している。希釈ターンテーブル3aは、図示しない駆動機構によって周方向に回転可能に支持されると共に、その駆動機構により、周方向に所定の角度範囲ごとに、所定の速度で回転する。
【0031】
複数の希釈容器23は、希釈容器収容ユニット3の周方向に並べて配置されている。希釈容器23には、希釈検体が収容される。希釈検体は、検体容器21から吸引されて希釈された検体である。
【0032】
第1試薬容器収容ユニット4は、軸方向の一端が開口した略円筒状に形成されている。第1試薬容器収容ユニット4には、複数の第1試薬容器24が収容されている。第1試薬容器収容ユニット4は、複数の第1試薬容器24をそれぞれ異なる収容ポジションに収容する第1試薬ターンテーブル4aを有している。第1試薬ターンテーブル4aは、図示しない駆動機構によって周方向に回転可能に支持されている。複数の第1試薬容器24は、第1試薬容器収容ユニット4の周方向に並べて配置されている。
【0033】
第1試薬容器24は、第1試薬を収容する容器である。複数の第1試薬容器24の各々には、第1試薬を識別するための試薬識別情報が付されている。試薬識別情報は、個々の第1試薬を区別するために、第1試薬ごとに割り当てられる情報である。第1試薬容器24には、たとえば、試薬識別情報が印刷されたシールが貼り付けられる。試薬識別情報が印刷されたシールには、試薬識別情報の他に、試薬識別情報を符号化したコード情報が印刷される。試薬識別情報とコード情報の詳細および具体例については、前述した検体識別情報の場合と同様であるため説明を省略する。
【0034】
第1試薬容器収容ユニット4には、バーコードリーダ51が固定されている。バーコードリーダ51は、第1試薬容器24に付された試薬識別情報の識別子であるバーコードを読み取る。バーコードリーダ51は、バーコードを光学的に読み取るバーコードスキャナによって構成される。バーコードリーダ51の読み取り窓(図示せず)は、第1試薬容器収容ユニット4の半径方向内側を向いて配置されている。バーコードの読み取り原理については前述したとおりである。また、バーコードリーダ51によるバーコードの読み取り動作は、前述したバーコードリーダ50によるバーコードの読み取り動作と同様であるため説明を省略する。
【0035】
バーコードリーダ51は、第1試薬容器収容ユニット4の外周面にネジ等で固定されている。すなわち、バーコードリーダ51は、固定式のバーコードリーダである。第1試薬容器収容ユニット4に第1試薬容器24をセットする場合は、バーコードの印刷面が第1試薬容器収容ユニット4の半径方向外側を向くように第1試薬容器24をセットする。これにより、第1試薬容器収容ユニット4に収容された第1試薬容器24が第1試薬ターンテーブル4aの回転によってバーコードリーダ51の近傍に配置された場合に、バーコードリーダ51の読み取り窓に対してバーコードの印刷面が対向(正対)した状態になり、この状態で第1試薬容器24のバーコードがバーコードリーダ51によって読み取られる。第1試薬ターンテーブル4aの回転移動を利用したバーコードの読み取り動作や、空きポジションにおけるバーコードの読み取り動作については、検体容器収容ユニット2の場合と同様であるため説明を省略する。
【0036】
第2試薬容器収容ユニット5は、軸方向の一端が開口した略円筒状に形成されている。第2試薬容器収容ユニット5には、複数の第2試薬容器25が収容されている。第2試薬容器収容ユニット5は、複数の第2試薬容器25をそれぞれ異なる収容ポジションに収容する第2試薬ターンテーブル5aを有している。第2試薬ターンテーブル5aは、図示しない駆動機構によって周方向に回転可能に支持されている。複数の第2試薬容器25は、第2試薬容器収容ユニット5の周方向に並べて配置されている。
【0037】
第2試薬容器25は、第2試薬を収容する容器である。複数の第2試薬容器25の各々には、第2試薬を識別するための試薬識別情報が付されている。試薬識別情報は、個々の第2試薬を区別するために、第2試薬ごとに割り当てられる情報である。第2試薬容器25には、たとえば、試薬識別情報が印刷されたシールが貼り付けられる。試薬識別情報が印刷されたシールには、試薬識別情報の他に、試薬識別情報を符号化したコード情報が印刷される。試薬識別情報とコード情報の詳細および具体例については、前述した検体識別情報の場合と同様であるため説明を省略する。また、バーコードリーダ52によるバーコードの読み取り動作は、前述したバーコードリーダ50によるバーコードの読み取り動作と同様であるため説明を省略する。
【0038】
第2試薬容器収容ユニット5には、バーコードリーダ52が固定されている。バーコードリーダ52は、第2試薬容器25に付された試薬識別情報の識別子であるバーコードを読み取る。バーコードリーダ52は、バーコードを光学的に読み取るバーコードスキャナによって構成される。バーコードリーダ52の読み取り窓(図示せず)は、第2試薬容器収容ユニット5の半径方向内側を向いて配置されている。バーコードの読み取り原理については前述したとおりである。
【0039】
バーコードリーダ52は、第2試薬容器収容ユニット5の外周面にネジ等で固定されている。すなわち、バーコードリーダ52は、固定式のバーコードリーダである。第2試薬容器収容ユニット5に第2試薬容器25をセットする場合は、バーコードの印刷面が第2試薬容器収容ユニット5の半径方向外側を向くように第2試薬容器25をセットする。これにより、第2試薬容器収容ユニット5に収容された第2試薬容器25が第2試薬ターンテーブル5aの回転によってバーコードリーダ52の近傍に配置された場合に、バーコードリーダ52の読み取り窓に対してバーコードの印刷面が対向(正対)した状態になり、この状態で第2試薬容器25のバーコードがバーコードリーダ52によって読み取られる。第2試薬ターンテーブル5aの回転移動を利用したバーコードの読み取り動作や、空きポジションにおけるバーコードの読み取り動作については、検体容器収容ユニット2の場合と同様であるため説明を省略する。
【0040】
反応容器収容ユニット6は、検体容器収容ユニット2および希釈容器収容ユニット3の周囲に配置されている。より具体的に記述すると、反応容器収容ユニット6は、検体容器収容ユニット2および希釈容器収容ユニット3と、第1試薬容器収容ユニット4および第2試薬容器収容ユニット5とによって囲まれる空間に配置されている。反応容器収容ユニット6は、軸方向の一端が開口した略円筒状に形成されている。反応容器収容ユニット6には、複数の反応容器26が収容されている。反応容器収容ユニット6は、複数の反応容器26をそれぞれ異なる収容ポジションに収容する反応ターンテーブル6aを有している。反応ターンテーブル6aは、図示しない駆動機構によって周方向に回転可能に支持されると共に、その駆動機構により、周方向に所定の角度範囲ごとに、所定の速度で回転する。
【0041】
複数の反応容器26は、反応容器収容ユニット6の周方向に並べて配置されている。反応容器26には、希釈容器23からサンプリングした希釈検体と、第1試薬容器24からサンプリングした第1試薬と、第2試薬容器25からサンプリングした第2試薬とが注入される。そして、この反応容器26内において、希釈検体、第1試薬および第2試薬が撹拌され、反応が行われる。
【0042】
サンプル希釈ユニット7は、検体容器収容ユニット2および希釈容器収容ユニット3の近傍に配置されている。サンプル希釈ユニット7は、希釈分注プローブ7aを備えている。希釈分注プローブ7aは、図示しない第1駆動部により、検体容器収容ユニット2および希釈容器収容ユニット3の軸方向である上下方向に移動可能に支持されている。また、希釈分注プローブ7aは、検体容器収容ユニット2および希釈容器収容ユニット3の開口と略平行をなす方向、すなわち水平方向に沿って回動可能に支持されている。そして、希釈分注プローブ7aは、水平方向に沿って回動することにより、検体容器収容ユニット2と希釈容器収容ユニット3との間を往復移動する構成となっている。なお、希釈分注プローブ7aが検体容器収容ユニット2と希釈容器収容ユニット3との間を移動する場合、この希釈分注プローブ7aは、図示しない洗浄装置を通過する。
【0043】
ここで、サンプル希釈ユニット7の希釈分注プローブ7aの動作について説明する。
まず、サンプル希釈ユニット7の希釈分注プローブ7aは、検体容器収容ユニット2における開口の上方の所定位置に移動する。次に、希釈分注プローブ7aは、検体容器収容ユニット2の軸方向に沿って下降する。これにより、希釈分注プローブ7aの先端側(下端側)の部分が、検体容器21の内部に挿入される。このとき、希釈分注プローブ7aは、検体容器21に収容されている検体を、図示しないポンプの作動により、所定量だけ吸引する。すなわち、希釈分注プローブ7aは、検体容器収容ユニット2に収容された各々の検体容器21から検体を吸引する吸引部として機能する。次に、希釈分注プローブ7aは、検体容器収容ユニット2の軸方向に沿って上昇する。これにより、希釈分注プローブ7aの先端側の部分が、検体容器21の内部から引き上げられる。
【0044】
次に、希釈分注プローブ7aは、水平方向に沿って所定量だけ回動することにより、希釈容器収容ユニット3における開口の上方の所定位置に移動する。次に、希釈分注プローブ7aは、希釈容器収容ユニット3の軸方向に沿って下降する。これにより、希釈分注プローブ7aの先端側の部分が、所定の希釈容器23の内部に挿入される。この状態で、希釈分注プローブ7aは、先ほど吸引した検体と、サンプル希釈ユニット7自体から供給される所定量の希釈液(たとえば、生理食塩水)とを希釈容器23内に吐出する。その結果、希釈容器23内では、検体が所定倍数の濃度に希釈されて、希釈検体が生成される。その後、希釈分注プローブ7aは、洗浄装置によって洗浄される。なお、上述した特別な希釈液で検体を希釈する場合は、まず、希釈分注プローブ7aにより特別な希釈液の吸引および吐出を順に行い、次いで、希釈分注プローブ7aにより検体の吸引および吐出を順に行うことにより、希釈検体を生成する。この場合、希釈分注プローブ7aにより特別な希釈液および検体を順に吸引したのち、希釈容器23に希釈液および検体を合わせて吐出することで希釈検体を生成してもよい。
【0045】
ここで、検体容器収容ユニット2の任意の収容ポジションに収容されている検体容器21から希釈分注プローブ7aが検体を吸引するときに、予め決められた所定量の検体を吸引できないなどの異常が発生することがある。検体吸引時の異常(吸引ミス)は、たとえば、フィブリンクロットと呼ばれる血餅の析出、あるいは、検体容器21における検体の残量不足などが原因で発生する。このような異常は、同じ検体容器21で繰り返し発生する可能性が高い。サンプル希釈ユニット7は、希釈分注プローブ7aによって検体を吸引するときに異常が発生したか否かを検知する異常検知センサ55を有している。
【0046】
異常検知センサ55は、検体吸引時に発生する異常の内容に応じて複数設けてもよい。たとえば、異常検知センサ55は、血餅の析出が原因で発生する異常については、希釈分注プローブ7aの内圧を測定し、測定した内圧(負圧)が許容値を下回った場合に、異常が発生した旨の信号を出力する。また、異常検知センサ55は、検体容器21における検体の残量不足が原因で発生する異常については、検体容器21に希釈分注プローブ7aを挿入したときに検体の液面高さを検出し、検出した液面高さが許容高さを下回った場合に、異常が発生した旨の信号を出力する。
【0047】
サンプリングユニット8は、希釈容器収容ユニット3と反応容器収容ユニット6との間に配置されている。サンプリングユニット8は、サンプリング分注プローブ8aを備えている。サンプリング分注プローブ8aは、図示しない第2駆動部により、希釈容器収容ユニット3および反応容器収容ユニット6の軸方向である上下方向に移動可能に支持されている。また、サンプリング分注プローブ8aは、希釈容器収容ユニット3および反応容器収容ユニット6の開口と略平行をなす方向、すなわち水平方向に沿って回動可能に支持されている。そして、サンプリング分注プローブ8aは、水平方向に沿って回動することにより、希釈容器収容ユニット3と反応容器収容ユニット6との間を往復移動する構成となっている。
【0048】
サンプリング分注プローブ8aは、希釈容器収容ユニット3にセットされた希釈容器23から希釈検体を吸引すると共に、吸引した希釈検体を、反応容器収容ユニット6にセットされた反応容器26内に吐出する。希釈容器23から希釈検体を吸引する場合は、サンプリング分注プローブ8aの先端側の部分が希釈容器23内に挿入される。また、反応容器26内に希釈検体を吐出する場合は、サンプリング分注プローブ8aの先端側の部分が反応容器26内に挿入される。
【0049】
第1分注ユニット12は、第1試薬容器収容ユニット4と反応容器収容ユニット6との間に配置されている。第1分注ユニット12は、第1分注プローブ12aを備えている。第1分注プローブ12aは、図示しない第3駆動部により、反応容器収容ユニット6の軸方向である上下方向に移動可能に支持されている。また、第1分注プローブ12aは、反応容器収容ユニット6の開口と略平行をなす方向、すなわち水平方向に沿って回動可能に支持されている。そして、第1分注プローブ12aは、水平方向に沿って回動することにより、第1試薬容器収容ユニット4と反応容器収容ユニット6との間を往復移動する構成となっている。
【0050】
第1分注プローブ12aは、第1試薬容器収容ユニット4にセットされた第1試薬容器24から第1試薬を吸引すると共に、吸引した第1試薬を、反応容器収容ユニット6にセットされた反応容器26内に吐出する。第1試薬容器24から第1試薬を吸引する場合は、第1分注プローブ12aの先端側の部分が第1試薬容器24内に挿入される。また、反応容器26内に第1試薬を吐出する場合は、第1分注プローブ12aの先端側の部分が反応容器26内に挿入される。
【0051】
第2分注ユニット13は、第2試薬容器収容ユニット5と反応容器収容ユニット6との間に配置されている。第2分注ユニット13は、第2分注プローブ13aを備えている。第2分注プローブ13aは、図示しない第4駆動部により、反応容器収容ユニット6の軸方向である上下方向に移動可能に支持されている。また、第2分注プローブ13aは、反応容器収容ユニット6の開口と略平行をなす方向、すなわち水平方向に沿って回動可能に支持されている。そして、第2分注プローブ13aは、水平方向に沿って回動することにより、第2試薬容器収容ユニット5と反応容器収容ユニット6との間を往復移動する構成となっている。
【0052】
第2分注プローブ13aは、第2試薬容器収容ユニット5にセットされた第2試薬容器25から第2試薬を吸引すると共に、吸引した第2試薬を、反応容器収容ユニット6にセットされた反応容器26内に吐出する。第2試薬容器25から第2試薬を吸引する場合は、第2分注プローブ13aの先端側の部分が第2試薬容器25内に挿入される。また、反応容器26内に第2試薬を吐出する場合は、第2分注プローブ13aの先端側の部分が反応容器26内に挿入される。
【0053】
希釈撹拌装置9は、希釈容器収容ユニット3の周囲に配置されている。希釈撹拌装置9は、図示しない撹拌子を備えている。撹拌子は、希釈容器23の内部に挿入され、そこに収容されている検体と希釈液とを撹拌する。
【0054】
希釈洗浄装置11は、上述した希釈撹拌装置9と共に、希釈容器収容ユニット3の周囲に配置されている。希釈洗浄装置11は、サンプリングユニット8によって希釈検体が吸引された後の希釈容器23を洗浄する。希釈洗浄装置11は、図示しない複数の希釈容器洗浄ノズルを有している。複数の希釈容器洗浄ノズルは、図示しない廃液ポンプと、図示しない洗剤ポンプとに接続されている。
【0055】
希釈洗浄装置11による希釈容器23の洗浄工程は、次のような手順で行われる。
まず、希釈洗浄装置11は、希釈容器洗浄ノズルを希釈容器23の内部に挿入して廃液ポンプを駆動することにより、希釈容器23内に残留する希釈検体を希釈容器洗浄ノズルによって吸い込む。また、希釈洗浄装置11は、希釈容器洗浄ノズルによって吸い込んだ希釈検体を、図示しない廃液タンクに排出する。
【0056】
次に、希釈洗浄装置11は、洗剤ポンプを駆動することにより、希釈容器洗浄ノズルに洗剤を供給すると共に、供給した洗剤を希釈容器洗浄ノズルから希釈容器23の内部に吐出する。この洗剤の吐出によって希釈容器23の内部が洗浄される。その後、希釈洗浄装置11は、希釈容器23に残留する洗剤を希釈容器洗浄ノズルによって吸引した後、希釈容器23の内部を乾燥させる。以上で、希釈容器23の洗浄が完了する。
【0057】
第1反応撹拌装置14、第2反応撹拌装置15および反応容器洗浄装置18は、反応容器収容ユニット6の周囲に配置されている。第1反応撹拌装置14は、図示しない撹拌子を有し、この撹拌子を反応容器26の内部に挿入することにより、希釈検体と第1試薬とを撹拌する。これにより、希釈検体と第1試薬との反応が、均一かつ迅速に行われる。なお、第1反応撹拌装置14の構成は、希釈撹拌装置9の構成と同一である。このため、第1反応撹拌装置14の構成に関する説明は省略する。
【0058】
第2反応撹拌装置15は、図示しない撹拌子を有し、この撹拌子を反応容器26の内部に挿入することにより、希釈検体と第1試薬と第2試薬とを撹拌する。これにより、希釈検体と第1試薬と第2試薬との反応が、均一かつ迅速に行われる。なお、第2反応撹拌装置15の構成は、希釈撹拌装置9の構成と同一である。このため、第2反応撹拌装置15の構成に関する説明は省略する。
【0059】
多波長光度計16は、反応容器収容ユニット6の周囲に、反応容器収容ユニット6の外壁と対向するように配置されている。多波長光度計16は、反応容器26の内部に注入され、かつ、第1試薬および第2試薬と反応した希釈検体に対して、光学的測定を行う。多波長光度計16は、希釈検体の反応状態を検出するための光度計であり、希釈検体を検出(測定)対象として得られる「吸光度」という数値データを出力する。多波長光度計16が出力する吸光度の数値データは、検体中の様々な成分の量に応じて変化するため、この数値データから各成分の量を求めることができる。
【0060】
恒温槽17は、反応容器収容ユニット6にセットされる反応容器26の温度を一定に保持する。これにより、反応容器26に収容される液体が一定の温度に保持される。
【0061】
反応容器洗浄装置18は、検査が終了した反応容器26の内部を洗浄する装置である。反応容器洗浄装置18は、図示しない複数の反応容器洗浄ノズルを有している。複数の反応容器洗浄ノズルは、上述した希釈容器洗浄ノズルと同様に、図示しない廃液ポンプと、図示しない洗剤ポンプとに接続されている。なお、反応容器洗浄装置18による反応容器26の洗浄工程は、洗浄対象が異なる以外は、上述した希釈洗浄装置11による希釈容器23の洗浄工程と同様である。このため、反応容器洗浄装置18による反応容器26の洗浄工程に関する説明は省略する。
【0062】
図2は、本発明の実施形態に係る自動分析装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置40は、制御部41と、記憶部42と、表示部43と、入力操作部44と、インターフェイス部45と、情報紐付け部46と、各部(41~46)を相互に接続するバス48と、を備えるコンピュータである。制御装置40には、インターフェイス部45を介して、測定部10と、3つのバーコードリーダ50,51,52と、異常検知センサ55とが接続されている。なお、図2においては、説明の便宜上、測定部10と、3つのバーコードリーダ50,51,52と、異常検知センサ55とを別々に示しているが、3つのバーコードリーダ50,51,52と、異常検知センサ55とは、測定部10に付属する機器である。具体的には、バーコードリーダ50は検体容器収容ユニット2に付属し、バーコードリーダ51は第1試薬容器収容ユニット4に付属し、バーコードリーダ52は第2試薬容器収容ユニット5に付属し、異常検知センサ55はサンプル希釈ユニット7に付属する。
【0063】
制御部41は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、を有する。制御部41は、CPUがROMからRAMへと読み出したプログラムを実行することにより、測定部10を含む自動分析装置1全体の処理および動作を制御する。
【0064】
記憶部42は、たとえば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成される。記憶部42は、制御部41が自動分析装置1の処理および動作を制御する際に参照するデータ、パラメーターなど各種の電子情報を記憶する。記憶部42に記憶されるデータには、測定部10で行われる各種の処理、たとえば、生化学分析のための測定処理や、保守処理などに用いられるデータが含まれる。また、記憶部42は、バーコードリーダ50を用いて読み取られた検体識別情報と、この検体識別情報が付された検体容器21の収容ポジションとを対応付けたデータである対応付けデータを記憶するために用いられる。
【0065】
表示部43は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどによって構成される。表示部43には、測定部10での測定によって得られる測定データや、この測定データに基づく解析結果などが表示される。また、表示部43には、各種の設定画面や操作画面、測定部10の状態を示すステータス画面、エラーや警告を含むアラーム画面など、様々な画面が表示される。
【0066】
入力操作部44は、自動分析装置1に対してユーザーが各種のデータを入力するために操作する部分である。入力操作部44は、たとえば、図示しないキーボード、マウス、タッチパネル等によって構成される。入力操作部44によって入力されたデータは、制御部41に取り込まれると共に、必要に応じて記憶部42に記憶される。
【0067】
インターフェイス部45は、測定部10から出力される各種のデータを受け取るとともに、受け取ったデータを制御部41に与える。測定部10から出力されるデータには、測定部10での測定によって得られる測定データなどが含まれる。また、インターフェイス部45は、制御部41から各種の制御データを受け取るとともに、受け取った制御データを測定部10に与える。このように、制御部41と測定部10との間でインターフェイス部45が制御データの受け渡しを行うことにより、制御部41は、測定部10の各部の動作を制御することができる。
【0068】
また、インターフェイス部45は、各々のバーコードリーダ50,51,52や異常検知センサ55から出力されるデータを個別に受け取るとともに、受け取ったデータを制御部41に与える。各々のバーコードリーダ50,51,52から出力されるデータには、バーコードの元の情報である検体識別情報(文字列情報)などが含まれ、異常検知センサ55から出力されるデータには、検体吸引時に異常が発生した旨の信号が含まれる。また、インターフェイス部45は、制御部41から各種の制御データを受け取るとともに、受け取った制御データを各々のバーコードリーダ50,51,52に個別に与える。このように、制御部41と各バーコードリーダ50,51,52との間でインターフェイス部45が制御データの受け渡しを行うことにより、制御部41は、各々のバーコードリーダ50,51,52の動作を制御することができる。また、測定部10に付属する3つのバーコードリーダ50,51,52は、制御部41から個別に与えられる読み取り指示信号に従ってバーコードの読み取り動作を実行する。また、インターフェイス部45は、制御部41から各種の制御データを受け取るとともに、受け取った制御データを異常検知センサ55に与える。このように、制御部41と異常検知センサ55との間でインターフェイス部45が制御データの受け渡しを行うことにより、制御部41は、異常検知センサ55の動作を制御することができる。
【0069】
情報紐付け部46は、希釈分注プローブ7aが検体を吸引するときに異常が発生した場合に、異常が発生した検体容器21に付された検体識別情報に対して、異常発生情報を紐付ける。そして、情報紐付け部46は、異常が発生する前に検体容器21に付されていた検体識別情報を、異常発生情報の紐付けによって異常検体識別情報に設定する。情報紐付け部46が異常発生情報を紐付けた検体識別情報は、異常発生情報の紐付けを解除するまで異常検体識別情報として取り扱われる。また、異常発生情報が紐付けられていない検体識別情報は、正常検体識別情報として取り扱われる。
【0070】
情報紐付け部46は、たとえば制御部41からの指示に従って検体識別情報に異常発生情報を紐付ける。その場合、制御部41は、希釈分注プローブ7aが検体を吸引するときに異常が発生したか否かを、異常検知センサ55から異常が発生した旨の信号が出力されたか否かによって判断する。具体的には、制御部41は、異常検知センサ55から異常が発生した旨の信号が出力された場合は、検体吸引時に異常が発生したと判断し、異常検知センサ55から異常が発生した旨の信号が出力されない場合は、検体吸引時に異常が発生しなかった、つまり希釈分注プローブ7aによる検体の吸引が正常に行われたと判断する。また、制御部41は、希釈分注プローブ7aが検体を吸引するときに異常が発生したと判断すると、異常が発生した検体容器21が収容されている収容ポジションの識別情報(本形態例ではポジション番号)と、その収容ポジションに収容されている検体容器21からバーコードリーダ50が事前に読み取った検体識別情報とを組にして情報紐付け部46に送ることにより、異常発生情報の紐付けを情報紐付け部46に指示する。
【0071】
そうすると、情報紐付け部46は、制御部41からの指示を受けた検体識別情報に対して異常発生情報を紐付ける。その際、情報紐付け部46は、異常が発生した検体容器21に付された検体識別情報に対して、たとえばフラグを立てることによって異常発生情報を紐付ける。これにより、フラグが立っている検体識別情報は、異常発生情報が紐付けられた検体識別情報すなわち異常検体識別情報として取り扱われる。また、フラグが立っていない検体識別情報は、異常発生情報が紐付けられていない検体識別情報すなわち正常検体識別情報として取り扱われる。なお、正常検体識別情報には、フラグを立てた後にフラグを降ろした検体識別情報も含まれる。
【0072】
続いて、検体識別情報と収容ポジションとを対応付けた対応付けデータを記憶部42に記憶する場合の具体的な処理内容について説明する。
まず、説明の前提として、検体容器収容ユニット2のターンテーブル2aには合計80個の収容ポジションが設けられ、これらの収容ポジションに1番から80番までの番号が割り当てられているものとする。また、バーコードリーダ50による検体識別情報(バーコード)の読み取りは、1番の収容ポジションから開始し、80番の収容ポジションで終了するものとする。
【0073】
そうした場合、制御部41は、バーコードリーダ50が1つの収容ポジションで検体識別情報を読み取るたびに、バーコードリーダ50によって読み取られた検体識別情報と、この検体識別情報が付された検体容器21の収容ポジションとを対応付けて記憶部42に記憶(書き込み)する。これにより、バーコードリーダ50が1番から80番までのすべての収容ポジションで検体識別情報の読み取りを行った場合、記憶部42には、1番から80番までの収容ポジションと、各ポジションでバーコードリーダ50が読み取った検体識別情報との対応付けを示す対応付けデータが記憶される。
【0074】
記憶部42は、収容ポジションと検体識別情報とを対応付けて記憶するための記憶領域を有し、この記憶領域にたとえばテーブル形式で対応付けデータが記憶される。具体的には、記憶部42の記憶領域には、図3に示すようなテーブル47が用意されている。テーブル47は、記憶部42が有する記憶領域の一部を利用して作成されるものである。テーブル47は、収容ポジションの番号を書き込むためのフィールド47aと、検体識別情報を書き込むためのフィールド47bと、フラグの状態を書き込むためのフィールド47cとを有している。フィールド47aには、検体容器収容ユニット2のターンテーブル2aが有する収容ポジションの番号が、1番から80番まで書き込まれている。フィールド47bには、ターンテーブル2aの各収容ポジションでバーコードリーダ50を用いて読み取られる検体識別情報が書き込まれる。
【0075】
たとえば、7番の収容ポジションに検体容器21が収容され、この検体容器21に付されたバーコードをバーコードリーダ50が読み取って生成した検体識別情報が仮に「AAAAAA」であったとすると、制御部41は、7番の収容ポジションに検体識別情報「AAAAAA」を対応付けて記憶する。また、10番の収容ポジションに検体容器21が収容され、この検体容器21に付されたバーコードをバーコードリーダ51が読み取って取得した検体識別情報が仮に「BBBBBB」であったとすると、制御部41は、10番の収容ポジションに検体識別情報「BBBBBB」を対応付けて記憶する。また、20番の収容ポジションが空きポジションになっていて、この空きポジションを通して見える専用バーコードをバーコードリーダ51が読み取って取得した検体識別情報が仮に「ZZZZZZ」であったとすると、制御部41は、20番の収容ポジションに検体識別情報「ZZZZZZ」を対応付けて記憶する。なお、空きポジションに対応付けて記憶される検体識別情報は、すべて共通の情報「ZZZZZZ」となる。
【0076】
また、図3において、フィールド47cに書き込まれるフラグの状態は、デフォルトでオフ状態となる。デフォルトとは、新規に検体容器収容ユニット2に収容された検体容器21からバーコードリーダ50を用いて読み取った検体識別情報をテーブル47に記憶した場合をいう。フィールド47cに書き込まれたフラグの状態がオフ状態になっている検体識別情報は、フラグが立っていない検体識別情報、つまり正常検体識別情報として取り扱われる検体識別情報である。また、フィールド47cに書き込まれたフラグの状態がオン状態になっている検体識別情報は、フラグが立っている検体識別情報、つまり異常検体識別情報として取り扱われる検体識別情報である。
【0077】
制御部41は、検体容器収容ユニット2の各収容ポジションに収容された検体容器21内の検体を、収容ポジション(検体容器21)ごとに測定部10で順に測定する場合に、収容ポジションに対応付けて記憶部42に記憶されている検体識別情報にフラグが立っているかどうかを、収容ポジションごとに確認する。そして、制御部41は、ある収容ポジションに対応付けて記憶されている検体識別情報のフラグがオン状態になっている場合は、この検体識別情報が付された検体容器21を測定対象から除外する。たとえば図3に示すように10番の収容ポジションに対応付けて記憶されている検体識別情報のフラグがオン状態になっていて、図示しない9番および11番の収容ポジションに対応付けて記憶されている検体識別情報のフラグがいずれもオフ状態になっている場合、制御部41は、9番の収容ポジションに収容されている検体容器21から検体を吸引した後、10番の収容ポジションに収容されている検体容器21を飛ばして、11番の収容ポジションに収容されている検体容器21から検体を吸引する。つまり、制御部41は、10番の収容ポジションに収容されている検体容器21から検体を吸引しないように、ターンテーブル2aの回転を制御する。
【0078】
このように、検体容器収容ユニット2に収容された複数の検体容器21のうち、いずれかの検体容器21から検体を吸引するときに異常が発生した場合、情報紐付け部46は、異常が発生した検体容器21からバーコードリーダ50が読み取った検体識別情報に対して異常発生情報を紐付けて異常検体識別情報とする。そして、制御部41は、測定部10の測定中に、異常検体識別情報が付された検体容器21から検体を吸引しないように測定部10を制御する。これにより、検体識別情報に対する異常発生情報の紐付けが解除されないかぎり、測定部10は、異常が発生した検体容器21を測定対象から除外して測定を実施する。このため、同じ検体容器21で異常(吸引ミス)が繰り返し発生することを避けることができる。
【0079】
<自動分析装置の処理動作>
続いて、本発明の実施形態における自動分析装置1の処理動作について、図4および図5のフローチャートを参照しつつ説明する。図示した処理動作は、制御部41の制御下で行われる。
【0080】
まず、制御部41は、ユーザーから測定開始の指示があったか否かを確認する(ステップS1)。ユーザーは、検体容器収容ユニット2のターンテーブル2aの各収容ポジションに1つずつ検体容器21をセット(収容)し、測定を希望するすべての検体容器21をターンテーブル2aに収容し終えた段階で、表示部43の操作画面をマウス等で操作することにより、測定開始を指示する。ユーザーによる測定開始の指示は、入力操作部44から制御部41へと送られる。また、ユーザーは、測定開始を指示する場合に、表示部43の操作画面をマウス等で操作することにより、検体容器収容ユニット2に収容したすべての検体容器21について測定を実施するように指示することもできるし、一部の検体容器21についてのみ測定を実施するように指示することもできる。
【0081】
次に、制御部41は、ユーザーから測定開始の指示があると、検体容器収容ユニット2に収容されているすべての検体容器21を対象に、バーコードリーダ50による検体識別情報の読み取りを実行する(ステップS2)。その場合、制御部41は、ターンテーブル2aを回転させ、この回転中に、ターンテーブル2aの各収容ポジションでバーコードリーダ50に検体識別情報を読み取らせる。これにより、検体容器21が収容された収容ポジションでは、検体容器21に付されたバーコードがバーコードリーダ50によって読み取られ、その読み取り結果に基づく検体識別情報がバーコードリーダ50によって生成される。また、検体容器21が収容されていない収容ポジション、すなわち空きポジションでは、空きポジション専用のバーコードがバーコードリーダ50によって読み取られ、その読み取り結果に基づく空きポジション専用の検体識別情報がバーコードリーダ50によって生成される。バーコードリーダ50によって読み取られた検体識別情報は、インターフェイス部45を通して制御部41に取り込まれる。これにより、制御部41は、ターンテーブル2aの各収容ポジションでバーコードリーダ50が読み取った検体識別情報を取得することができる。
【0082】
次に、制御部41は、上記ステップS2における検体識別情報の読み取り結果に従って、検体識別情報と収容ポジションとを対応付けて記憶部42に記憶する(ステップS3)。これにより、記憶部42のテーブル47(図3参照)には、検体識別情報と収容ポジションとを対応付けたデータ、すなわち対応付けデータが記憶される。対応付けデータは、ユーザーからの測定開始の指示に従って測定部10の測定を開始する前に、その都度、記憶部42に記憶される。検体識別情報と収容ポジションとを対応付けて記憶部42に記憶する場合の具体的な処理内容については、前述したとおりである。
【0083】
次に、制御部41は、測定部10の各部を動作させて測定を開始する(ステップS4)。測定中に行われる測定部10の各部の動作には、ターンテーブル2a,2bの回転動作、
希釈ターンテーブル3aの回転動作、第1試薬ターンテーブル4aの回転動作、第2試薬ターンテーブル5aの回転動作、反応ターンテーブル6aの回転動作、サンプル希釈ユニット7の分注動作、サンプリングユニット8の分注動作、希釈撹拌装置9の撹拌動作、希釈洗浄装置11の洗浄動作、第1分注ユニット12の分注動作、第2分注ユニット13の分注動作、第1反応撹拌装置14の撹拌動作、第2反応撹拌装置15の撹拌動作、多波長光度計16の検出動作などが含まれる。
【0084】
次に、制御部41は、測定部10の測定中に、異常検知センサ55が異常の発生を検知したか否かを判断する(ステップS5)。異常検知センサ55は、いずれかの収容ポジションに収容された検体容器21の検体を希釈分注プローブ7aによって吸引するときに異常が発生すると、その収容ポジションで異常の発生を検知し、その旨の信号を出力する。このため、制御部41は、異常検知センサ55から異常が発生した旨の信号が出力された場合は、ステップS5でYESと判断してステップS6の処理に進み、異常検知センサ55から異常が発生した旨の信号が出力されない場合は、ステップS5でNOと判断してステップS8の処理に移行する。
【0085】
ステップS6において、情報紐付け部46は、制御部41からの指示に従って検体識別情報に異常発生情報を紐付ける。具体的には、情報紐付け部46は、異常検知センサ55が異常の発生を検知した収容ポジションに対応付けて記憶部42に記憶されている検体識別情報に対し、その検体識別情報のフラグをオフ状態からオン状態へと切り替えることにより、異常発生情報を紐付ける。オン状態の検体識別情報は、異常発生情報の紐付けが解除されるまで、異常検体識別情報として取り扱われる。
【0086】
次に、制御部41は、測定部10の測定中に表示部43に表示される操作画面内で、異常の発生を検知した収容ポジションの表示を変更する(ステップS7)。たとえば図6に示すように、ターンテーブル2aの図形とターンテーブル2bの図形を操作画面に表示している状況で、ターンテーブル2aの1番の収容ポジションに収容された検体容器21から検体を吸引するときに異常が発生した場合、制御部41は、1番の収容ポジションの表示を、他の収容ポジションとは異なる表示に変更する。また、図示はしないが、1番の収容ポジションに収容されている検体容器21から読み取った検体識別情報に対し異常発生情報を紐付けた旨のメッセージを操作画面に表示してもよい。これにより、操作画面を見たユーザーは、異常が発生した検体容器21を収容している収容ポジションが、いずれの収容ポジションであるかを特定(把握)することができる。
【0087】
次に、制御部41は、ユーザーから測定を実施するよう指示されたすべての検体容器21の検体について測定を終了したか否かを判断する(ステップS8)。このとき、制御部41は、検体の測定を終えていない検体容器21がターンテーブル2aに残っている場合はステップS8でNOと判断してステップS9の処理に移行する。
【0088】
ステップS9において、制御部41は、ユーザーから測定中断の指示があったか否かを確認する。そして、制御部41は、ユーザーから測定中断の指示を受けていない場合は、上記ステップS5の処理に戻って測定部10の測定を継続し、ユーザーから測定中断の指示を受けた場合は、ステップS10の処理に進む。
【0089】
ステップS10において、制御部41は、測定部10の測定を中断する。測定部10の測定を中断すると、測定部10の各部の動作が停止する。その際、検体容器収容ユニット2では、ターンテーブル2aの回転動作が停止する。また、サンプル希釈ユニット7は、検体容器収容ユニット2からの検体容器21の取り出し作業、および、検体容器収容ユニット2への検体容器21の追加作業の邪魔にならないよう、検体容器収容ユニット2の上方空間から水平方向にずれた位置(退避位置)で停止する。
【0090】
その後、制御部41は、ユーザーから測定再開の指示があったか否かを確認する(ステップS11)。測定部10の測定を中断している間、制御部41は、表示部43の操作画面に、たとえば図7に示すように測定再開ボタン58を表示する。ユーザーによる測定再開の指示は、図7に示す操作画面上でユーザーがマウス操作等によって測定再開ボタン58を押下することにより行われる。また、ユーザーは、制御部41が測定部10の測定を中断している間、検体容器収容ユニット2から検体容器21を取り出したり、検体容器収容ユニット2に検体容器21を追加したりすることが可能となる。また、ユーザーは、測定再開を指示する場合に、表示部43の操作画面をマウス等で操作することにより、検体容器収容ユニット2に収容したすべての検体容器21について測定を実施するように指示することもできるし、一部の検体容器21についてのみ測定を実施するように指示することもできる。
【0091】
次に、制御部41は、ユーザーから測定再開の指示があると、検体容器収容ユニット2に収容されているすべての検体容器21を対象に、バーコードリーダ50による検体識別情報の読み取りを実行する(ステップS12)。
次に、制御部41は、上記ステップS12における検体識別情報の読み取り結果に従って、検体識別情報と収容ポジションとを対応付けて記憶部42に記憶する(ステップS13)。
【0092】
なお、ステップS12の処理は、上述したステップS2の処理と同様に行われ、ステップS13の処理は、上述したステップS3の処理と同様に行われる。また、検体識別情報と収容ポジションとを対応付けたデータである対応付けデータは、ユーザーからの測定再開の指示に従って測定部10の測定を再開する前に、その都度、記憶部42に記憶される。また、記憶部42に記憶される対応付けデータは、バーコードリーダ50を用いて検体識別情報の読み取りを行うたびに最新のデータに更新される。また、更新前に記憶部42に記憶されていた対応付けデータは、少なくとも所定の期間だけ記憶部42に記憶保持される。所定の期間は、検体容器収容ユニット2に対する検体容器21の取り出しおよび追加の確認、ならびに、検体容器21の移動の有無の確認が済むまでの期間である。
【0093】
次に、制御部41は、検体容器21の取り出しおよび追加を確認するための照合処理を行う(ステップS14)。具体的には、制御部41は、前回のバーコードリーダ50の読み取り結果に従って検体識別情報と収容ポジションとを対応付けたデータ(以下、「前回対応付けデータ」という。)と、今回のバーコードリーダ50の読み取り結果に従って検体識別情報と収容ポジションとを対応付けたデータ(以下、「今回対応付けデータ」という。)とを照合する。そして、制御部41は、前回対応付けデータに含まれる検体識別情報のうち、今回対応付けデータに含まれない検体識別情報があれば、この検体識別情報が付された検体容器21は検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識する。ただし、制御部41は、検体容器21が検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識しただけでは、検体容器21の移動を有りと判断しない。また、制御部41は、今回対応付けデータに含まれる検体識別情報のうち、前回対応付けデータに含まれない検体識別情報があれば、この検体識別情報が付された検体容器21は検体容器収容ユニット2に追加されたと認識する。なお、前回対応付けデータに含まれる検体識別情報のフラグは、前回の検体識別情報の読み取りから今回の検体識別情報の読み取りまでの間に、異常検知センサ55が異常の発生を検知すると、その時点でオフ状態からオン状態に変更される。
【0094】
制御部41は、上記ステップS14の照合処理の結果として、検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識した検体容器21に関する情報、および/または、検体容器収容ユニット2に追加されたと認識した検体容器21に関する情報を、表示部43の操作画面に表示してもよい。検体容器21に関する情報とは、たとえば、収容ポジションの番号、検体識別情報などである。これにより、操作画面を見たユーザーは、測定中断期間を利用してユーザーが実施した検体容器21の取り出し作業や追加作業が適切に行われたかどうかを確認することができる。
【0095】
次に、制御部41は、上記ステップS10で測定部10の測定を中断するまでの測定中に異常発生情報を紐付けた検体識別情報(異常検体識別情報)が、今回対応付けデータの中に存在するか否かを判断する(ステップS15)。異常検体識別情報が付された検体容器21をユーザーが測定中断期間に検体容器収容ユニット2から取り出した場合は、その異常検体識別情報が今回対応付けデータの中に存在しないため、ステップS15でNOと判断してステップS16の処理に進み、それ以外はステップS15でYESと判断してステップS16の処理をスキップする。
【0096】
なお、ユーザーが測定中断期間を利用して検体容器収容ユニット2から取り出すことができる検体容器21には、異常検体識別情報が付された検体容器21だけでなく、正常検体識別情報が付された検体容器21も含まれる。また、ユーザーは、測定中断期間を利用して検体容器収容ユニット2に検体容器21を追加することも可能である。検体容器収容ユニット2に追加可能な検体容器21には、新規の検体容器21だけでなく、以前に検体容器収容ユニット2から取り出された検体容器21も含まれる。このような検体容器21の取り出しおよび追加の確認は、上記ステップS14の照合処理によって行われ、上記ステップS15の判断処理は、上記ステップS14の照合処理結果に基づいて行われる。
【0097】
次に、制御部41は、測定中に異常発生情報を紐付けた検体識別情報のうち、今回対応付けデータの中に存在しない検体識別情報が付された検体容器21については検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識する(ステップS16)。このとき、制御部41は、検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識した検体容器21の検体識別情報(異常検体識別情報)を、今回対応付けデータとは別に、取り出し済み検体識別情報として記憶部42に記憶しておく。
【0098】
検体容器21の取り出しを制御部41が認識する具体的な状況としては、たとえば次のような状況が考えられる。
まず、上記ステップS10で測定部10の測定を中断する前に、上記ステップS6で異常発生情報を紐付けた検体識別情報が「001」であったと仮定する。ユーザーは、測定部10の測定を中断している間、検体識別情報「001」が付された検体容器21を検体容器収容ユニット2から取り出し、その後で測定再開を指示する。そうすると、バーコードリーダ50は、識別情報「001」が付された検体容器21が検体容器収容ユニット2に収容されていない状態で、検体識別情報の読み取りを行うことになる。このため、ステップS13で記憶部42に記憶される検体識別情報(今回対応付けデータ)の中には、「001」の検体識別情報が存在しない。よって、ステップS16において、制御部41は、測定中に異常発生情報を紐付けた検体識別情報「001」が付された検体容器21は、検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識する。
【0099】
次に、制御部41は、上記ステップS13で記憶部42に記憶された検体識別情報の中から、異常発生情報を紐付けた検体識別情報、すなわち異常検体識別情報を抽出する(ステップS17)。本実施形態において、異常検体情報を紐付けた検体識別情報とは、フラグがオン状態になっている検体識別情報である。このとき、上記ステップS13で記憶部42に記憶された検体識別情報の中に、異常検体識別情報が存在しない場合、あるいは、異常検体識別情報が存在しても、そのすべてを抽出済みである場合は、検体識別情報が抽出されない。また、上記ステップS13で記憶部42に記憶された検体識別情報の中に、まだ抽出されていない異常検体識別情報が複数存在する場合は、そのうちの1つが抽出される。
【0100】
次に、制御部41は、上記ステップS17で検体識別情報が抽出されたか否かを判断し(ステップS18)、検体識別情報が抽出された場合はステップS19の処理に進む。
【0101】
ステップS19において、制御部41は、ステップS17で抽出された検体識別情報が付された検体容器21の移動の有無を判断する。検体容器21の移動の有無は、上記ステップS14の照合処理結果と、その後のステップS15~S18の処理結果とに基づいて、次のように判断する。
まず、ステップS17で抽出された検体識別情報が、この検体識別情報を抽出する以前に、検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識した検体容器21に付された検体識別情報、すなわち取り出し済み検体識別情報と同じである場合は、検体容器21の移動を有りと判断する。また、ステップS17で抽出された検体識別情報に対応付けられた収容ポジションが、今回の測定中断前の測定中に異常発生情報を紐付けた検体識別情報に対応付けられていた収容ポジションと異なる場合は、検体容器21の移動を有りと判断する。また、ステップS17で抽出された検体識別情報に対応付けられた収容ポジションが、今回の測定中断前の測定中においては空きポジションであった場合は、検体容器21の移動を有りと判断する。また、ステップS17で抽出された検体識別情報に対応付けられた収容ポジションに、今回の測定中断前の測定中においては上記ステップS17で抽出された検体識別情報とは異なる検体識別情報が対応付けられていた場合は、検体容器21の移動を有りと判断する。それ以外は、検体容器21の移動を無しと判断する。
【0102】
次に、制御部41は、検体容器21の移動を有りと判断した場合(ステップS19でYESと判断した場合)は、上記ステップS17で抽出された検体識別情報に対する異常発生情報の紐付けを解除する(ステップS20)。たとえば、上記ステップS17で抽出された検体識別情報が、図3に示す検体識別情報「BBBBBB」であった場合、制御部41は、検体識別情報「BBBBBB」のフラグをオン状態からオフ状態に変更する。
【0103】
なお、ステップS20の処理は、異常発生情報の紐付けを解除するために制御部41が実行する所定の処理に相当する。この場合、異常発生情報の紐付けの解除は制御部41によって自動的に行われる。このため、ユーザーは、異常発生情報の紐付けを解除するための操作を行う必要はない。したがって、ユーザーの操作の手間を省くことができる。
【0104】
ただし、所定の処理は、異常発生情報の紐付けを解除する処理に限らず、異常発生情報の紐付けを解除するようユーザーに促す処理であってもよい。具体的には、制御部41は、所定の処理として、異常発生情報の紐付けを解除するようユーザーに促すメッセージを表示部43の画面に表示する処理を実行してもよい。この場合、ユーザーは、表示部43の画面に表示されるメッセージを見て、異常発生情報の紐付けを解除するための操作を行い、制御部41は、ユーザーの操作を入力操作部44から受け付けて異常発生情報の紐付けを解除する。これにより、ユーザーが解除指示を忘れてしまって、物理的処置済みの検体容器21が測定対象から除外されたままになることを避けることができる。この効果は、異常発生情報の紐付けを制御部41が自動で解除する場合にも得られる。
【0105】
物理的処置の一例としては、フィブリンクロットによる異常を解消するために、フィブリンクロットを除去して再遠心する処置、あるいは、検体の残量不足による異常を解消するために、生体から再採血する処置などが考えられる。物理的処置は、吸引時に発生した異常を解消ための処置であれば、どのような処置であってもよい。
【0106】
次に、制御部41は、異常発生情報の紐付けを解除した旨を表示部43に表示する(ステップS21)。表示部43に表示する内容は、異常発生情報の紐付けを解除した検体識別情報が付された検体容器21が、いずれの収容ポジションに収容されている検体容器21であるかをユーザーが特定できる内容であれば、どのような内容であってもよい。たとえば、図7に示す操作画面において、異常発生情報の紐付けを解除した検体識別情報が付された検体容器21が、1番の収容ポジションに収容されている検体容器21である場合は、1番の収容ポジションの表示を、他の収容ポジションと同じ表示、すなわちデフォルトの表示に戻す。また、図示はしないが、1番の収容ポジションに収容されている検体容器21に関して、検体識別情報に対する異常発生情報の紐付けを解除した旨のメッセージを表示してもよい。これにより、ユーザーは、自動分析装置1の内部処理によって異常発生情報の紐付けが解除されたことを知ることができる。また、ユーザーは、異常発生情報の紐付けを解除した検体識別情報が付された検体容器21が、いずれの収容ポジションに収容されている検体容器21であるかを把握することができる。
【0107】
これに対し、制御部41は、検体容器21の移動を無しと判断した場合(ステップS19でNOと判断した場合)は、ステップS20の処理をスキップする。この場合、制御部41は、上述した所定の処理を実行しない。つまり、制御部41は、異常発生情報の紐付けを解除しない。
【0108】
その後、制御部41は、ステップS17の処理に戻る。そして、制御部41は、ステップS17で検体識別情報が抽出されなかった場合は、ステップS18の処理からステップS22の処理へと移行する。
【0109】
ステップS22において、制御部41は、測定部10の各部を動作させて測定を再開する。測定部10の測定を再開すると、測定部10の各部が動作を再開する。
【0110】
次に、制御部41は、ステップS22の処理からステップS5の処理へと戻る。その後、制御部41は、ユーザーから測定を実施するよう指示されたすべての検体容器21の検体について測定を終えた場合は、ステップS8でYESと判断して一連の処理を終える。
【0111】
続いて、測定部10の測定中に異常検知センサ55が異常の発生を検知し、この検知結果に基づいて情報紐付け部46が検体識別情報に異常発生情報を紐付けた後に、ユーザーが行う処理(操作、作業等)の手順について、2つの具体例を挙げて説明する。
【0112】
(第1の具体例)
図8は、第1の具体例におけるユーザーの処理手順を示すフローチャートである。
まず、ユーザーは、測定中断の指示を出す(ステップS100)。測定中断の指示は、表示部43の操作画面に表示される測定中断ボタン(不図示)をユーザーがマウス操作等で押下することによって行われる。
次に、ユーザーは、測定部10の測定中に異常検知センサ55が異常の発生を検知した検体容器21を、測定部10の中断期間を利用して検体容器収容ユニット2から取り出す(ステップS101)。
次に、ユーザーは、ステップS101で取り出した検体容器21を検体容器収容ユニット2に戻すことなく、測定再開の指示を出す(ステップS102)。測定再開の指示は、操作画面に表示される測定再開ボタン58(図7参照)をユーザーがマウス操作等で押下することによって行われる。
次に、ユーザーは、ステップS101で取り出した検体容器21に物理的処置を施す(ステップS103)。
次に、ユーザーは、測定中断の指示を出す(ステップS104)。
次に、ユーザーは、ステップS103で物理的処置を施した検体容器21を、測定部10の中断期間を利用して検体容器収容ユニット2の任意の収容ポジションに戻す(ステップS105)。
次に、ユーザーは、測定再開の指示を出す(ステップS106)。
【0113】
このようなユーザーの処理手順に対し、制御部41は、上記図4および図5に示すフローチャートに従って次のような処理を行う。
まず、制御部41は、ユーザーからの測定中断の指示に従って測定部10の測定を中断し(ステップS9,S10)、その後、ユーザーからの測定再開の指示に従って測定部10の測定を再開する前にステップS12でバーコードリーダ50を用いて読み取った検体識別情報の中に、異常検体識別情報が存在しない場合(ステップS15でNOと判断した場合)に、異常検体識別情報が付された検体容器21が検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識する(ステップS16)。
次いで、制御部41は、上述のように異常検体識別情報が付された検体容器21が検体容器収容ユニット2から取り出されたと認識した後に、測定部10の測定を再開する(ステップS22)。これにより、再開後の測定では、異常検体識別情報が付された検体容器21が測定対象から除外されるため、同じ検体容器21で吸引ミスが繰り返し発生することを避けることができる。
続いて、制御部41は、ユーザーからの測定中断の指示に従って測定部10の測定を中断する(ステップS9,S10)。
次に、制御部41は、ユーザーからの測定再開の指示に従って測定部10の測定を再開する前にステップS12でバーコードリーダ50を用いて読み取った検体識別情報の中から、上記ステップS16で取り出しを認識した異常検体識別情報と同一の検体識別情報が抽出された場合に、検体容器21の移動を有りと判断して異常発生情報の紐付けを解除する(ステップS17~S20)。
これにより、ユーザーが物理的処置を施した検体容器21を検体容器収容ユニット2に戻して測定再開を指示する場合に、ユーザーが解除指示を忘れた場合でも、再開後の測定では、物理的処置済みの検体容器21を測定対象に含めることができる。
【0114】
(第2の具体例)
図9は、第2の具体例におけるユーザーの処理手順を示すフローチャートである。
まず、ユーザーは、測定中断の指示を出す(ステップS200)。
次に、ユーザーは、測定部10の測定中に異常検知センサ55が異常の発生を検知した検体容器21を検体容器収容ユニット2から取り出す(ステップS201)。
次に、ユーザーは、測定部10の測定を中断した状態のもとで、先ほどのステップS201で取り出した検体容器21に物理的処置を施す(ステップS202)。
次に、ユーザーは、ステップS202で物理的処置を施した検体容器21を検体容器収容ユニット2に戻す(ステップS203)。このとき、ユーザーは、物理的処置済みの検体容器21を、元(取り出し前)の収容ポジションとは異なる収容ポジション(以下、「別ポジション」ともいう。)に戻す。
次に、ユーザーは、測定再開の指示を出す(ステップS204)。
【0115】
このようなユーザーの処理手順に対し、制御部41は、上記図4および図5に示すフローチャートに従って次のような処理を行う。
まず、制御部41は、ユーザーからの測定中断の指示に従って測定部10の測定を中断する。(ステップS9,S10)。
次に、制御部41は、ユーザーからの測定再開の指示に従って測定部10の測定を再開する前にバーコードリーダ50を用いて読み取った検体識別情報の中に、異常検体識別情報が存在し、かつ、その異常検体識別情報が付された検体容器21の収容ポジションが、異常発生情報を紐付けたときの収容ポジションと異なる場合に、検体容器21の移動を有りと判断して異常発生情報の紐付けを解除する(ステップS17~S20)。
これにより、ユーザーが物理的処置を施した検体容器21を検体容器収容ユニット2に戻して測定再開を指示する場合に、ユーザーが解除指示を忘れた場合でも、再開後の測定では、物理的処置済みの検体容器21を測定対象に含めることができる。
【0116】
(第3の具体例)
図10は、第3の具体例におけるユーザーの処理手順を示すフローチャートである。
まず、ユーザーは、測定中断の指示を出す(ステップS300)。
次に、ユーザーは、測定部10の測定中に異常検知センサ55が異常の発生を検知した検体容器21を検体容器収容ユニット2から取り出すことなく、測定再開の指示を出す(ステップS301)。
【0117】
このようなユーザーの処理手順に対し、制御部41は、上記図4および図5に示すフローチャートに従って次のような処理を行う。
まず、制御部41は、ユーザーからの測定中断の指示に従って測定部10の測定を中断する(ステップS9,S10)。
次に、制御部41は、ユーザーからの測定再開の指示に従って測定部10の測定を再開する前にバーコードリーダ50を用いて読み取った検体識別情報の中に、異常検体識別情報が存在し、かつ、その異常検体識別情報が付された検体容器21の収容ポジションが、異常発生情報を紐付けたときの収容ポジションと同じ場合に、検体容器21の移動を無しと判断する(ステップS17~S19)。
これにより、中断前の測定中に異常検体識別情報が付された検体容器21が存在し、この検体容器21をユーザーが検体容器収容ユニット2から取り出さずに測定再開を指示した場合は、再開後の測定でも、異常検体識別情報が付された検体容器21を測定対象から除外することができる。
【0118】
なお、上記図9に示すフローチャートのステップS203において、ユーザーは、物理的処置済みの検体容器21を別ポジションに戻す必要があるが、その際に、誤って元の収容ポジションに戻してしまう可能性がある。その場合は、異常検体識別情報が付された検体容器21の収容ポジションが、異常発生情報を紐付けたときの収容ポジションと同じポジションになる。このため、制御部41は、検体容器21の移動を無しと判断する(ステップS17~S19)。したがって、再開後の測定では、物理的処置済みの検体容器21が測定対象から除外されたままになってしまう。このような不都合を解消する手段として、制御部41は、検体容器21の移動を無しと判断した場合(ステップS19でNOと判断した場合)に、次のような処理(不図示)を行うことが好ましい。
【0119】
まず、制御部41は、移動を無しと判断した検体容器21に対して物理的処置を施したか否かをユーザーに問い合わせる。次に、制御部41は、上記の問い合わせに対してユーザーが物理的処置を施したと回答した場合は、異常発生情報の紐付けを解除してから測定部10の測定を再開し、それ以外は異常発生情報の紐付けを解除することなく測定部10の測定を再開する。これにより、ユーザーが物理的処置済みの検体容器21を誤って元の収容ポジションに戻してしまった場合でも、再開後の測定では、物理的処置済みの検体容器21を測定対象に含めることができる。また、ユーザーが物理的処置を施していない検体容器21を元の収容ポジションに戻した場合には、再開後の測定でも、異常検体識別情報が付された検体容器21を測定対象から除外することができる。
【0120】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る自動分析装置1において、制御部41は、バーコードリーダ50による今回の読み取り結果に従って記憶部42に記憶された対応付けデータと今回以前の読み取り結果に従って記憶部42に記憶された対応付けデータとを用いて、異常検体識別情報が付された検体容器21の移動の有無を判断する。そして、制御部41は、検体容器21の移動を有りと判断した場合に、異常検体識別情報に対する異常発生情報の紐付けを解除するための所定の処理を実行する。これにより、ユーザーが解除指示を忘れてしまって、物理的処置済みの検体容器が測定対象から除外されたままになることを避けることができる。
【0121】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0122】
たとえば、上記実施形態においては、検体容器21の取り出しおよび追加を確認したり、検体容器21の移動の有無を判断したり、異常検体情報の紐付けを解除したりするための処理、すなわち図4のステップS14~S21の処理を、ステップS22で測定部10が測定を再開する前に行うようにしているが、本発明はこれに限らず、ステップS4で測定部10が測定を開始する前に上記同様の処理を行うことも可能である。その場合は、図4のステップS3の後で且つステップS4の前に、ステップS14~S21の処理を行い、ステップS18でNOと判断した段階で、測定部10の測定を開始すればよい。また、前回の測定を終了した時点(ステップS8でYESと判断した時点)で、最新の対応付けデータや取り出し済み検体識別情報などが記憶部42に記憶されている場合は、それらの情報を次回の測定まで記憶部42に記憶しておき、ユーザーから次回の測定開始が指示された場合に、前回の測定終了時から記憶部42に記憶保持してある上記情報と、次回の測定開始前のステップS3で記憶部42に記憶される対応付けデータとを用いて、検体容器21の移動の有無を判断すればよい。
【0123】
また、上記実施形態においては、検体容器21に付された検体識別情報を読み取る読み取り装置の一例としてバーコードリーダ50を挙げたが、読み取り装置はバーコードリーダ50に限らない。たとえば、検体容器21には、検体識別情報を構成する文字列情報が印刷されたシールが貼り付けられ、読み取り装置は、その文字列情報を公知の文字認識技術により直接読み取る構成であってもよい。つまり、読み取り装置は、検体容器21に付された検体識別情報を読み取ることができる装置であれば、どのような装置であってもかまわない。
【0124】
また、制御部41は、上記図4および図5に示すフローチャートに従って異常発生情報の紐付けを解除するが、これに加えて、ユーザーからの解除指示に従って異常発生情報の紐付けを解除する機能を有してもいてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1…自動分析装置
2…検体容器収容ユニット
7a…希釈分注プローブ(吸引部)
10…測定部
21…検体容器
41…制御部
42…記憶部
43…表示部
46…情報紐付け部
50…バーコードリーダ(読み取り装置)
図1
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図9
図10