(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160077
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】電極箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20221012BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20221012BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C25D7/06 G
H01G13/00 391Z
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064603
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】衣川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 隆弘
【テーマコード(参考)】
4K024
5E082
5H017
【Fターム(参考)】
4K024AB06
4K024BA01
4K024BB09
4K024BC02
4K024GA16
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE39
5H017AA02
5H017AA03
5H017BB06
5H017BB14
5H017BB15
5H017BB16
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017HH03
(57)【要約】
【課題】片面にめっき層が形成された電極箔の生産性向上が図られる電極箔の製造方法を提供する。
【解決手段】この電極箔の製造方法は、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとを重ね合わせてワークWを形成する重ね合わせ工程と、ワークWにおいて第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士をそれぞれ接合する接合工程と、接合工程を経たワークWにめっき処理を行い、第1の金属箔11Aの第2面11bと第2の金属箔11Bの第2面11bとにめっき層12をそれぞれ形成する形成工程と、形成工程を経たワークWにおいて第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとを分離する分離工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の第1の金属箔及び長尺の第2の金属箔をそれぞれ搬送しながらめっき処理を行う電極箔の製造方法であって、
前記第1の金属箔及び前記第2の金属箔のそれぞれは、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有しており、
前記第1の金属箔の第1面と前記第2の金属箔の第1面とを重ね合わせてワークを形成する重ね合わせ工程と、
前記ワークにおいて、第1の金属箔及び前記第2の金属箔の幅方向の一端部同士及び他端部同士をそれぞれ接合する接合工程と、
前記接合工程を経た前記ワークにめっき処理を行い、前記第1の金属箔の第2面と前記第2の金属箔の第2面とにめっき層をそれぞれ形成する形成工程と、
前記形成工程を経た前記ワークにおいて、前記第1の金属箔の前記第1面と前記第2の金属箔の前記第1面とを分離する分離工程と、を備える電極箔の製造方法。
【請求項2】
前記形成工程を経た前記ワークにおいて、前記一端部同士の接合部分及び前記他端部同士の接合部分を除去する除去工程を、前記分離工程の前に備える請求項1記載の電極箔の製造方法。
【請求項3】
前記重ね合わせ工程では、前記第1の金属箔と前記第2の金属箔とを圧延して前記ワークを形成する請求項1又は2記載の電極箔の製造方法。
【請求項4】
前記重ね合わせ工程では、前記第1の金属箔の前記第1面と前記第2の金属箔の前記第1面とを長尺の芯材を介して重ね合わせて前記ワークを形成する請求項1~3のいずれか一項記載の電極箔の製造方法。
【請求項5】
前記接合工程では、前記第1の金属箔及び前記第2の金属箔の幅方向の一端部同士及び他端部同士を、当該一端部同士及び当該他端部同士の間に前記芯材を挟み込まない状態でそれぞれ接合する請求項4記載の電極箔の製造方法。
【請求項6】
前記芯材として、前記第1の金属箔及び前記第2の金属箔よりも厚さの大きい芯材を用いる請求項4又は5記載の電極箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極箔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置を構成する電極箔は、例えば金属箔の片面にめっき層を形成することによって製造される。めっき層の形成には、例えばフープめっきと呼ばれる手法が用いられる。フープめっきでは、長尺の金属箔の母材をリールから繰り出し、リールによって所定の速度で搬送される母材にめっき処理を施すことで、金属箔の母材に連続的にめっき層を形成することができる。
【0003】
フープめっきに関する技術としては、例えば特許文献1に記載のめっき装置がある。この従来のめっき装置は、長尺の導電性基板にめっき層を形成する装置である。このめっき装置では、めっき液が充填されためっき槽内に不溶性陽極が配置され、めっき槽内で不溶性陽極と対向するように導電性基板がリールで搬送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電装置の低コスト化の観点から、片面にめっき層が形成された電極箔の生産性向上が要求されてきている。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、片面にめっき層が形成された電極箔の生産性向上が図られる電極箔の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る電極箔の製造方法は、長尺の第1の金属箔及び長尺の第2の金属箔をそれぞれ搬送しながらめっき処理を行う電極箔の製造方法であって、第1の金属箔及び第2の金属箔のそれぞれは、第1面及び第1面と反対側の第2面を有しており、第1の金属箔の第1面と第2の金属箔の第1面とを重ね合わせてワークを形成する重ね合わせ工程と、ワークにおいて、第1の金属箔及び第2の金属箔の幅方向の一端部同士及び他端部同士をそれぞれ接合する接合工程と、接合工程を経たワークにめっき処理を行い、第1の金属箔の第2面と第2の金属箔の第2面とにめっき層をそれぞれ形成する形成工程と、形成工程を経たワークにおいて、第1の金属箔の第1面と第2の金属箔の第1面とを分離する分離工程と、を備える。
【0008】
この電極箔の製造方法では、互いに重ね合わせた第1の金属箔及び第2の金属箔に対してめっき層をそれぞれ形成した後に第1の金属箔と第2の金属箔とを分離することで、片面にめっき層が形成された2枚の電極箔を同時に得ることができる。これにより、片面にめっき層が形成された電極箔の生産性向上が図られる。
【0009】
形成工程を経たワークにおいて、一端部同士の接合部分及び他端部同士の接合部分を除去する除去工程を、分離工程の前に備えていてもよい。これにより、分離工程において、第1の金属箔の第1面と第2の金属箔の第1面とを容易に分離することができる。
【0010】
重ね合わせ工程では、第1の金属箔と第2の金属箔とを圧延してしてワークを形成してもよい。これにより、第1の金属箔の第1面と第2の金属箔の第1面との密着性が向上し、接合工程において第1の金属箔及び第2の金属箔の幅方向の一端部同士及び他端部同士が離間することによる接合不良の発生を抑制できる。
【0011】
重ね合わせ工程では、第1の金属箔の第1面と第2の金属箔の第1面とを長尺の芯材を介して重ね合わせてワークを形成してもよい。この場合、2枚の金属箔間に芯材が介在することで、ワークの強度が一層高まるため、めっき層を形成する際の金属箔の歪みや破れの発生をより確実に抑制できる。
【0012】
接合工程では、第1の金属箔及び第2の金属箔の幅方向の一端部同士及び他端部同士を、当該一端部同士及び当該他端部同士の間に芯材を挟み込まない状態でそれぞれ接合してもよい。これにより、分離工程において、第1の金属箔の第1面と第2の金属箔の第1面とを芯材から容易に分離することができる。また、芯材が金属箔と接合されないことで、芯材の再利用も可能となる。
【0013】
芯材として、第1の金属箔及び第2の金属箔よりも厚さの大きい芯材を用いてもよい。これにより、ワークの強度が一層高まるため、めっき層を形成する際の金属箔の歪みや破れの発生をより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、片面にめっき層が形成された電極箔の生産性向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電極箔の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図1に示した電極箔の製造方法を実現する製造装置を示す模式図である。
【
図3】重ね合わせ工程を経たワークの状態を示す断面図である。
【
図5】接合工程を経たワークの状態を示す断面図である。
【
図6】形成工程を経たワークの状態を示す断面図である。
【
図8】分離工程を経たワークの状態を示す断面図である。
【
図9】(a)は、変形例に係る電極箔の製造方法を実現する製造装置の要部を示す模式図であり、(b)は、変形例において接合工程を経たワークの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る電極箔の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る電極箔の製造方法を示すフローチャートである。この電極箔の製造方法によって製造される電極箔は、例えばニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の蓄電装置を構成する部材である。蓄電装置は、例えば電気自動車、ハイブリッド車、或いはフォークリフトといった産業車両のバッテリとして用いられる装置である。電極箔は、金属箔11の一面側にめっき層12を形成することによって構成される(
図8参照)。ここでは、金属箔11がアルミニウム箔であり、めっき層12が銅めっきである場合を例示する。このような金属箔11で構成された電極箔は、一面側に負極活物質層を塗工し、他面側に正極活物質層を塗工することにより、バイポーラ電極として構成され得る。
【0018】
図1に示すように、電極箔の製造方法は、2枚の金属箔11,11を重ね合わせる重ね合わせ工程(ステップS01)と、金属箔11,11の幅方向の両端部同士とをそれぞれ接合する接合工程(ステップS02)と、金属箔11,11の接合体の両面にめっき層12をそれぞれ形成する形成工程(ステップS03)と、金属箔11,11の幅方向の両端部同士の接合部分を除去する除去工程(ステップS04)と、金属箔11,11を分離する分離工程(ステップS05)とを備えている。
【0019】
図2は、
図1に示した電極箔の製造方法を実現する製造装置を示す模式図である。
図2に示す製造装置1は、繰出リール2から巻取リール3までの間で長尺の金属箔11を搬送しながらめっき処理を行う、いわゆるフープめっき(リールtоリール)方式の電解めっき装置である。繰出リール2と巻取リール3との間の金属箔11の搬送経路には、金属箔11に必要な張力を加えながら搬送を補助する複数の搬送リール4のほか、一対の圧延リール5,5と、一対の給電リール6A,6Bと、めっき槽7と、一対の分離リール8,8とが配置されている。
【0020】
製造装置1では、一対の繰出リール2A,2B及び一対の巻取リール3A,3Bが設けられている。繰出リール2Aからは、巻取リール3Aに向けて長尺の第1の金属箔11Aが繰り出される。繰出リール2Bからは、巻取リール3Bに向けて長尺の第2の金属箔11Bが繰り出される。第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bは、それぞれ第1面11a及び第2面11bを有している(
図3参照)。第1の金属箔11Aの幅F1及び第2の金属箔11Bの幅F2は、ここでは等幅となっている。
【0021】
一対の圧延リール5,5では、ステップS01の重ね合わせ工程が実施される。圧延リール5,5は、上下に配置されている。圧延リール5,5間に第1の金属箔11Aと第2の金属箔11Bとが搬送されることにより、
図3に示すように、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとが重ね合わせられ、2枚の金属箔11によるワークWが形成される。
【0022】
圧延リール5,5とめっき槽7の前段の給電リール6Aとの間のワークWの搬送経路には、
図2及び
図4に示すように、接合装置14が配置されている。接合装置14では、ステップS02の接合工程が実施される。本実施形態では、接合装置14は、ロータリ式の超音波溶着装置15であり、ワークWを厚さ方向に加圧しながら超音波を発振するホーン16と、ホーン16の受け治具となるアンビル17との対を有している。ホーン16及びアンビル17の対は、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の一端部11c,11cと他端部11d,11dとのそれぞれを挟み込むように、ワークWの幅方向に離間してそれぞれ配置されている。
【0023】
この超音波溶着装置15により、圧延リール5,5を通過したワークWでは、
図4及び
図5に示すように、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士がそれぞれ連続的に接合される。ここでは、ホーン16及びアンビル17の対がワークWの幅方向に離間してそれぞれ配置されているため、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の中央部分は接合されず、一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士のみが連続的に接合される。一端部11c,11c同士の接合部分13Aの幅F3及び他端部11d,11dの接合部分13Bの幅F4は、特に制限はないが、例えば第1の金属箔11Aの幅F1及び第2の金属箔11Bの幅F2の1/1000~1/100程度とすることが好適である。
【0024】
接合部分13Aの幅F3及び接合部分13Bの幅F4を第1の金属箔11Aの幅F1及び第2の金属箔11Bの幅F2の1/1000以上とすることで、接合部分13A及び接合部分13Bの破断を抑制でき、分離工程以前での第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとの分離を好適に抑制できる。また、接合部分13Aの幅F3及び接合部分13Bの幅F4を第1の金属箔11Aの幅F1及び第2の金属箔11Bの幅F2の1/100以下とすることで、後に除去される接合部分13A及び接合部分13Bの面積を十分に抑えられ、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの大部分を有効利用できる。
【0025】
一対の給電リール6A,6B及びめっき槽7では、ステップS03の形成工程が実施される。給電リール6A,6Bは、いずれもめっき槽7の外側(液面の上方)に配置されている。接合工程を経たワークWは、一方の給電リール6Aによってめっき槽7内に搬送される。ワークWは、めっき槽7の底部側に配置された搬送リール4,4によって搬送方向が反転し、めっき槽7外に搬送される。めっき槽7外に搬送されたワークは、他方の給電リール6Bによって巻取リール3側に搬送される。
【0026】
めっき槽7内には、めっき液21が充填されている。めっき液21としては、例えば硫酸銅やピロリン酸銅を含む溶液が用いられる。また、めっき槽7内には、一対の陽極22A,22A及び一対の陽極22B,22Bが配置されている。陽極22A,22Bは、例えば白金或いは白金めっきチタンなど、めっき液21に対する不溶性を有する金属材料によって形成されている。陽極22A,22Aは、給電リール6Aから一方の搬送リール4までのワークWの搬送方向に沿って延在し、第1の金属箔11Aの第2面11b及び第2の金属箔11Bの第2面11bのそれぞれと対向する。陽極22B,22Bは、他方の搬送リール4から給電リール6BまでのワークWの搬送方向に沿って延在し、第1の金属箔11Aの第2面11b及び第2の金属箔11Bの第2面11bのそれぞれと対向する。
【0027】
陽極22A,22Aと給電リール6Aとには、不図示の電源からの電圧が印加される。また、陽極22B,22Bと給電リール6Bとには、同電源からの電圧が印加される。これにより、ワークWと陽極22A,22Bとの間にそれぞれ電位差が生じ、ワークWに対して電解めっきが施される。ワークWでは、形成工程の前に重ね合わせ工程及び接合工程が実施されているため、第1の金属箔11Aの第1面11a及び第2の金属箔11Bの第1面11aがめっき液21に触れることがない。したがって、形成工程を経たワークWには、
図6に示すように、第1の金属箔11Aの第2面11bと第2の金属箔11Bの第2面11bとにめっき層12がそれぞれ同時に形成される。
【0028】
めっき層12の形成の後、不図示の洗浄装置及び乾燥装置にワークWが搬送され、洗浄工程・乾燥工程が実施される。洗浄装置及び乾燥装置と分離リール8,8との間のワークWの搬送経路には、
図2及び
図7に示すように、切断装置25が配置されている。切断装置25では、ステップS04の除去工程が実施される。本実施形態では、切断装置25は、ロータリカッターであり、円盤状のスリット上刃26及びスリット下刃27の対を有している。スリット上刃26及びスリット下刃27の対は、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の一端側及び他端側にそれぞれ配置されている。ここでは、スリット上刃26及びスリット下刃27の対は、一端部11c,11c同士の接合部分13Aの内側縁及び他端部11d,11d同士の接合部分13Bの内側縁に対応してそれぞれ配置されている。この切断装置25により、一端部11c,11c同士の接合部分13A及び他端部11d,11d同士の接合部分13BがワークWから除去される。
【0029】
一対の分離リール8,8では、ステップS05の分離工程が実施される。分離リール8,8と巻取リール3Aとの間、及び分離リール8,8と巻取リール3Bとの間では、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの搬送経路が互いに異なっている。これにより、
図8に示すように、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとが分離される。めっき層12が第2面11bに形成された第1の金属箔11Aは、巻取リール3Aによって巻き取られ、めっき層12が第2面11bに形成された第2の金属箔11Bは、巻取リール3Bによって巻き取られる。巻き取り後、めっき層12付きの金属箔11を所望のサイズにカットすることにより、蓄電装置を構成する電極箔が得られる。
【0030】
以上説明したように、この電極箔の製造方法では、互いに重ね合わせた第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bに対してめっき層12をそれぞれ形成した後に第1の金属箔と第2の金属箔とを分離することで、片面にめっき層12が形成された2枚の電極箔を一度のめっき処理で得ることができる。これにより、片面にめっき層が形成された電極箔の生産性向上が図られる。また、この電極箔の製造方法では、2枚の金属箔11を重ね合わせることでワークWの強度が高まるため、めっき層12を形成する際の金属箔11の歪みや破れの発生を抑制できる。第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士をそれぞれ接合するため、箔間(第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとの間)にめっきが回り込むことを防止できる。これらの不具合が発生することを抑制することで、不具合を修正するための工程の追加が不要となり、電極箔の製造に要する時間の短縮化が一層図られる。
【0031】
この電極箔の製造方法では、一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士を接合するため、電極箔として用いられる第1の金属箔11Aの中央部分及び第2の金属箔11Bの中央部分には、接合や分離の影響が及ばない。また、この電極箔の製造方法では、ワークWにマスキングを施す必要もなくなるため、マスキング工程が不要となり生産性が向上することに加え、マスキング材をワークWに設ける際の金属箔11の破れやマスキング材を除去した後の接着剤等の残存などが生じることも避けられる。さらに、活物質層が塗工されて蓄電装置に組み込まれ得る電極箔の中央部分では、接合及び分離によるめっき層12の損傷が抑制される。このため、片面にめっき層12を備える電極箔の製造において、めっき層12が損傷することに起因する電極箔の品質低下を抑制しつつ、片面にめっき層が形成された電極箔の生産性向上が図られる。
また、例えばマスキング材や接着剤等の別の部材によって一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士を接合する場合、製造コストが増加するだけでなく、貼り付けの際に第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bに位置ずれが生じるおそれがある。一方、本実施形態では、一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士を超音波溶着によって接合している。このため、接合のための別の部材によって製造コストが増加することを抑制し、且つ貼り付けの際に第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bに位置ずれが生じることを抑制できる。また、貼り付けのために第1の金属箔11Aの第2面11bと第2の金属箔11Bの第2面11bとが別の部材によって覆われることが無いため、めっき処理面を最大限に確保することが可能となる。
【0032】
本実施形態では、一端部11c,11c同士の接合部分13A及び他端部11d,11d同士の接合部分13Bを除去する除去工程を分離工程の前に備えている。これにより、分離工程において、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとを容易に分離することができる。本実施形態では、一対の分離リール8,8を用いて分離工程を実施している。分離リール8,8を用いた手法は、手作業等の他の手法に比べて簡便であり、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bに変形が生じることも抑制できる。
【0033】
本実施形態では、重ね合わせ工程において、第1の金属箔11Aと第2の金属箔11Bとを圧延してワークWを形成している。これにより、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとの密着性が向上し、重ね合わせ工程に続く接合工程において、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士が離間することによる接合不良の発生を抑制できる。したがって、めっき層12を形成しない第1面11a側にめっきが回り込むことを一層確実に防止できる。
【0034】
また、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとの密着性が向上することで、例えば給電リール6A,6B等を通過する際の第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの変形を抑制できる。ワークWでは、第1の金属箔11Aと第2の金属箔11Bとが重ね合わせられている。このため、例えば給電リール6Aに沿ってワークWが搬送される際、給電リール6A側の金属箔11(ここでは第2の金属箔11B)と、当該金属箔11に重なる金属箔(ここでは第1の金属箔11A)とでは、給電リール6A,6Bを通過する際の径に僅かな差が生じる。第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとの密着性を向上させることで、リールを通過する際の第1の金属箔11Aと第2の金属箔11Bとの間の浮きを抑制でき、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの変形を好適に抑制できる。
【0035】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、重ね合わせ工程において第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとを直接重ね合わせているが、
図9(a)に示すように、繰出ローラ2Cから長尺の芯材31を繰り出し、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとを長尺の芯材31を介して重ね合わせてもよい。
【0036】
芯材31は、例えば金属等の導電材料によって箔状に形成されている。芯材31は、樹脂等の非導電材料によって箔状に形成されたものであってもよい。ここでは、芯材31の形成材料は、金属箔11と同じアルミニウムが用いられている。芯材31の形成材料を金属箔11の形成材料と同じにすることで、芯材31と金属箔11との接触面での腐食の発生を防止できる。芯材31の厚さT3は、第1の金属箔11Aの厚さT1及び第2の金属箔11Bの厚さT2よりも大きくなっていることが好ましい。
【0037】
このような手法によれば、2枚の金属箔11間に芯材31が介在することで、ワークWの強度を高めることができる。また、芯材31の厚さT3を第1の金属箔11Aの厚さT1及び第2の金属箔11Bの厚さT2よりも大きくする場合には、ワークWの強度を更に高めることが可能となる。これにより、めっき層12を形成する際の金属箔11の歪みや破れの発生をより確実に抑制できる。
【0038】
芯材31を用いる場合、芯材31の幅F5は、第1の金属箔11Aの幅F1及び第2の金属箔11Bの幅F2(
図5参照)よりも僅かに小さくなっていてもよい。この場合、
図9(b)に示すように、接合工程において、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの幅方向の一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士を、当該一端部11c,11c同士及び当該他端部11d,11d同士の間に芯材31を挟み込まない状態でそれぞれ接合することができる。芯材31は、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bに対して接合されない状態で、接合部分13A及び接合部分13Bによって袋状となった第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの内側に保持される。
【0039】
このような手法によれば、分離工程において、第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面Bとを芯材31から容易に分離することができる。また、芯材31が第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bと接合されないことで、芯材31の再利用も可能となる。分離工程を経た芯材31は、例えば巻取リール3A,3Bとは別の巻取リールを用いて回収することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、超音波溶着によって一端部11c,11c同士の接合部分13A及び他端部11d,11d同士の接合部分13Bを形成しているが、接合工程で採用する接合方法は、超音波溶着に限られるものではない。例えば接着剤、熱圧着、レーザ溶接といった他の接合方法を用いて一端部11c,11c同士の接合部分13A及び他端部11d,11d同士の接合部分13Bを形成してもよい。
【0041】
重ね合わせ工程では、接合工程で影響が生じない程度に第1の金属箔11Aの第1面11aと第2の金属箔11Bの第1面11aとの間の隙間を十分に抑えられているのであれば、必ずしも第1の金属箔11Aと第2の金属箔11Bとを圧延する必要はない。また、重ね合わせ工程と接合工程とを同時に実施してもよい。この場合、例えば圧延リール5,5を省略し、ホーン16及びアンビル17によって重ね合わせ工程及び接合工程を同時に実施すればよい。形成工程におけるめっき処理の手法も、電解めっきに限られるものではなく、無電解めっき等の他の手法を用いてもよい。
【0042】
接合工程では、一端部11c,11c同士及び他端部11d,11d同士以外の部分に接合部分を形成してもよい。また、除去工程は、必ずしも実施しなくてもよい。この場合、第1の金属箔11A及び第2の金属箔11Bの全幅を電極箔として用いることができ、電極箔の製造時に無駄になる材料を削減できる。
【符号の説明】
【0043】
2…繰出リール、3…巻取リール、11A…第1の金属箔、11B…第2の金属箔、11a…第1面、11b…第2面、11c…一端部、11d…他端部、12…めっき層、13A,13B…接合部分、31…芯材、W…ワーク。