(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160083
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】容器詰め具材入り飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20221012BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20221012BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064611
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】清治 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 武
【テーマコード(参考)】
4B036
4B117
【Fターム(参考)】
4B036LE05
4B036LF01
4B036LH04
4B036LH10
4B036LH12
4B036LH22
4B036LH29
4B036LH30
4B036LK02
4B036LP01
4B036LP18
4B036LP19
4B117LE03
4B117LE10
4B117LG07
4B117LG24
4B117LK01
4B117LK12
4B117LK13
4B117LL04
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】さっぱりと飲むことができ、且つ飲用時の具材沈殿が抑制された容器詰め具材入り飲料、その製造方法等を提供する。
【解決手段】不溶性固形物である具材、および液体部により構成され、この液体部がコーンピューレを含有し、さらにこの液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下である容器詰め具材入り飲料とすることにより、前記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料であって、
前記液体部がコーンピューレを含有し、さらに前記液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下である、容器詰め具材入り飲料。
【請求項2】
前記液体部の25℃における比重が1.05g/L以下である、請求項1に記載の容器詰め具材入り飲料。
【請求項3】
前記液体部の前記粘度が100mPa・s以上である、請求項1または2に記載の容器詰め具材入り飲料。
【請求項4】
前記液体部が、さらに加工澱粉を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器詰め具材入り飲料。
【請求項5】
前記加工澱粉がリン酸架橋澱粉である、請求項4に記載の容器詰め具材入り飲料。
【請求項6】
前記具材が粒コーンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の容器詰め具材入り飲料。
【請求項7】
容器詰め粒入りコーンスープである、請求項6に記載の容器詰め具材入り飲料。
【請求項8】
缶飲料である、請求項1~7のいずれか1項に記載の容器詰め具材入り飲料。
【請求項9】
不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料の製造方法であって、
コーンピューレを含む前記液体部を調合する工程と、前記液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下となるように調整する工程と、を含む、容器詰め具材入り飲料の製造方法。
【請求項10】
不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料において、前記液体部にコーンピューレを含有させて、さらに前記液体部の25℃における粘度を500mPa・s以下とすることを特徴とする、容器詰め具材入り飲料におけるさっぱり感向上および具材沈殿抑制方法。
【請求項11】
不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料において、前記液体部に澱粉または加工澱粉との置き換えとしてコーンピューレを含有させて、前記液体部の25℃における粘度を500mPa・s以下とすることを特徴とする、容器詰め具材入り飲料の具材沈殿を抑制しつつ液体部の粘度を低減させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰め具材入り飲料、その製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
粒入りコーンスープ、具材入り中華スープ、具材入り野菜飲料などのような、缶容器やプラスチック製の成形容器等に容器詰めされた具材入り飲料が多く製造、販売されている。このような容器詰め具材入り飲料は、容器から直接飲むことができ、さらにその飲用時において具材を飲料の液体部とともに飲むことができる点が消費者に好まれている。よって、飲用時に具材が沈殿していると、容器から具材を液体部とともに飲むことが難しくなり、商品価値が低下してしまう可能性がある。したがって、容器詰め具材入り飲料では、通常、含まれる具材が液体部に分散して沈殿し難くなっていることが求められる。
【0003】
そのための技術として、例えば特許文献1には、不溶性固形物を含む液状食品において、粘性物質である寒天を0.001~0.5重量%添加することを特徴とする、不溶性固形物の分散法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粘性物質などによって具材入り飲料の液体部の粘度をより高くすると、飲用時などにおける具材の沈殿を抑制することができる一方で、さっぱりと飲むことができなくなる(スムーズに飲むことが難しくなる)場合があり、つまり飲料としてのさっぱり感が低下してしまう場合があった。そして、このようなさっぱり感が低下した飲料は、飲料の種類やコンセプトなどによっては好ましくないことがあった。
【0006】
そこで本発明は、さっぱりと飲むことができ、且つ飲用時の具材沈殿が抑制された容器詰め具材入り飲料、その製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、不溶性固形物である具材、および液体部により構成され、この液体部がコーンピューレを含有し、さらにこの液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下である容器詰め具材入り飲料とすることにより、さっぱりと飲むことができ、且つ飲用時の具材沈殿が抑制されたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の(1)~(11)である。
(1)不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料であって、前記液体部がコーンピューレを含有し、さらに前記液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下である、容器詰め具材入り飲料。
(2)前記液体部の25℃における比重が1.05g/L以下である、(1)に記載の容器詰め具材入り飲料。
(3)前記液体部の前記粘度が100mPa・s以上である、(1)または(2)に記載の容器詰め具材入り飲料。
(4)前記液体部が、さらに加工澱粉を含有する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の容器詰め具材入り飲料。
(5)前記加工澱粉がリン酸架橋澱粉である、(4)に記載の容器詰め具材入り飲料。
(6)前記具材が粒コーンである、(1)~(5)のいずれか1つに記載の容器詰め具材入り飲料。
(7)容器詰め粒入りコーンスープ(粒コーン入りコーンスープ)である、(6)に記載の容器詰め具材入り飲料。
(8)缶飲料(缶容器に容器詰めされた具材入り缶飲料)である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の容器詰め具材入り飲料。
(9)不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料の製造方法であって、コーンピューレを含む前記液体部を調合する工程と、前記液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下となるように調整する工程と、を含む、容器詰め具材入り飲料の製造方法。
(10)不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料において、前記液体部にコーンピューレを含有させて、さらに前記液体部の25℃における粘度を500mPa・s以下とすることを特徴とする、容器詰め具材入り飲料におけるさっぱり感向上および具材沈殿抑制方法。
(11)不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料において、前記液体部に澱粉または加工澱粉との置き換えとしてコーンピューレを含有させて、前記液体部の25℃における粘度を500mPa・s以下とすることを特徴とする、容器詰め具材入り飲料の具材沈殿を抑制しつつ液体部の粘度を低減させる方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、さっぱりと飲むことができ、且つ飲用時の具材沈殿が抑制された容器詰め具材入り飲料、その製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、不溶性固形物である具材、および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料であって、この液体部がコーンピューレを含有し、さらにこの液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下である容器詰め具材入り飲料(以下においては、これを「本発明の容器詰め具材入り飲料」ともいう)、その製造方法等である。
【0011】
まず、本発明の容器詰め具材入り飲料について説明する。
本発明の容器詰め具材入り飲料は、不溶性固形物である具材と、液体部と、により構成された飲料が容器詰めされた(容器に充填された)ものである。そして、この詰められた容器から直接飲む(容器に口を付けてそのまま飲む)ことが可能な具材入り飲料である。なお、詰められた容器とは別の容器(例えばコップなど)に移されてその容器から飲用される飲料などの、他の飲用形態によって飲用される具材入り飲料を完全に除外するものではないが、詰められた容器から直接飲用される具材入り飲料(飲用時の攪拌などがしにくいもの)であると、本発明の効果がより発揮され易いため好適である。
【0012】
そして、具材入り飲料の具体的な構成としては、例えば、具材入りスープ(ポタージュ、チャウダー、中華スープ、野菜スープなど)、具材入り和風汁、具材入り野菜飲料などが例示される。しかしながら、具材入り飲料の構成もこれらに限定されるものではなく、コーンピューレを液体部に含む構成であれば、これら以外の具材入り飲料であっても良い。以下に、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部および具材について詳細に説明する。
【0013】
<液体部>
本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部には、具材の沈殿を抑制するための必須成分として、コーンピューレが含まれる。つまり、この液体部は、コーンピューレを必須の原材料として用いて調合される。
【0014】
このコーンピューレは、粒コーンが摩砕機(ブレード式摩砕機(アーシェル社製のコミトロールなど)、石臼式摩砕機(増幸産業社製のマスコロイダーなど)、剪断式粉砕機(チョッパーなど)、クラッシャー等)などによって摩砕処理または粉砕処理されたピューレ状のものであり、水分を70~90質量%含む。なお、この水分は、加水されて摩砕処理または粉砕処理されたコーンピューレの場合には、その加水量を除いた水分である。そして、摩砕処理または粉砕処理後に裏ごしなどがされて粒度が調整されたものであっても良い。また、限定されるものではないが、本発明の効果がより発揮され易いことから、このコーンピューレのメジアン径(摩砕または粉砕粒子のメジアン径、d50)は600μm以下であるのが好ましく、550μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのがさらに好ましい。さらに、このコーンピューレは、摩砕処理または粉砕処理後にホモゲナイザー、ホモミキサー等によりホモゲナイズ処理がされたものであっても良い。そして、このようなコーンピューレが冷凍されたものを融解して原材料として用いることもできる。
なお、このコーンピューレのメジアン径(d50)は、粒度分布を体積基準で測定するレーザー回折・散乱式粒度分布測定法に基づいて求めたものである。
【0015】
また、このコーンピューレに用いられるコーンの品種は、特段限定はされないが、液体部が好ましい甘味となることから、スイート種(普通甘味種)またはスーパースイート種を用いるのが非常に好適である。また、このコーンの産地については特段限定されない。
【0016】
本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部におけるコーンピューレの含有量(配合量)は、液体部の25℃における粘度が後述する範囲内となるように、その産地や性状(メジアン径、粘度)などを考慮して適宜調整することができ、限定されるものではないが、例えば、30g/L以上であって良く、40g/L以上であって良く、50g/L以上であって良く、60g/L以上であって良い。また、上限も同様に限定されるものではないが、例えば、300g/L以下であって良く、280g/L以下であって良く、250g/L以下であって良く、230g/L以下であって良く、200g/L以下であって良い。ここで、このコーンピューレの含有量は、液体部1Lを調合するために原材料として使用するコーンピューレの質量、つまり配合量である。なお、液体部におけるコーンピューレの含有量が少なすぎると、具材沈殿抑制効果が発揮されにくくなる傾向がある。また、液体部におけるコーンピューレの含有量が多すぎると、液体部の粘度が高くなり易い傾向がある。
【0017】
さらに、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部には、コーンピューレとともに加工澱粉が含まれていると、コーンピューレの産地等の違いによる効果の微差などを調整でき、具材沈殿抑制効果をより高めやすいため好適である。この加工澱粉とは、澱粉に対して、化学的加工、物理的加工、および酵素的加工から選ばれる少なくとも1つの加工処理が施されたものであり、食用であれば特に制限されないが、例えば、酸化澱粉、アセチル化酸化澱粉、酢酸澱粉、リン酸架橋澱粉等の化学的加工が施された加工澱粉や、湿熱処理澱粉等の物理的加工が施された加工澱粉などが具体例として挙げられる。特に、コーンピューレの具材沈殿抑制効果を高め易く且つレトルト殺菌に対する耐性も高いことから、リン酸架橋澱粉(リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群から選ばれる1以上)を液体部に含有させるのがより好適である。
また、この加工澱粉に使用される澱粉の種類(由来)も限定されるものではないが、穀類澱粉、イモ類澱粉、豆類澱粉などが例示される。より具体的には、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、もち米澱粉などが挙げられる。
【0018】
本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部における加工澱粉の含有量(配合量)も、コーンピューレを含む液体部の25℃における粘度が後述する範囲内となるように適宜調整すれば良く、限定されるものではないが、例えば、5g/L以上であって良く、10g/L以上であって良く、15g/L以上であって良い。また、上限も同様に限定されるものではないが、例えば、40g/L以下であって良く、35g/L以下であって良く、30g/L以下であって良く、25g/L以下であって良い。ここで、この加工澱粉の含有量も、液体部1Lを調合するために原材料として使用する加工澱粉の質量、つまり配合量である。なお、液体部における加工澱粉の含有量が少なすぎると、コーンピューレによる具材沈殿抑制効果を高めにくくなる傾向がある。また、液体部における加工澱粉の含有量が多すぎると、液体部の粘度が高くなり易い傾向がある。
【0019】
また、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部における、コーンピューレと加工澱粉との比率(配合量の質量比)は、コーンピューレが加工澱粉と等量であるかあるいは加工澱粉より多く含まれる構成であると好適であり、特に、加工澱粉の配合量1質量部に対して、コーンピューレの配合量を1~40質量部、さらには1.2~10質量部、さらには1.5~5質量部含む構成であると好ましい。具材の沈殿抑制効果(コーンピューレと加工澱粉との相乗効果)をより高め易いからである。
【0020】
そして、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部は、前述したコーンピューレおよび加工澱粉に加えて、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲内において、スープなどの飲料に慣用されている原材料をさらに含有させることができる。このような原材料としては、食塩(精製塩など)、糖類(砂糖、液糖など)、澱粉類(加工処理が施されていない澱粉類)、乳製品(生乳、脱脂乳、クリームなど)、乳等を主要原料とする食品、エキス類(畜肉エキス、水産エキス、野菜エキス、果実エキスなど)、コーンピューレ以外のピューレ類(野菜ピューレ、果実ピューレなど)、香辛料、油脂類、調味料(グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなど)、甘味料、香料、酸化防止剤、乳化剤、酸味料(クエン酸、リンゴ酸など)、着色料(カラメル色素、クチナシ色素など)、加工澱粉以外の増粘剤(キサンタンガムなど)等が挙げられる。そして、これらの原材料には、具材としての形態を有さない不溶性の固形分(例えば香辛料の微粒子など)が含まれていても良い。また、必要に応じて、水(純水など)を使用しても良い。
【0021】
なお、液体部の25℃における粘度が後述するような範囲においては、液体部の原材料として上記した澱粉、加工澱粉、あるいは他の増粘剤を使用するだけでは具材沈殿を抑制することは難しい。したがって、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部には、これらが含まれる場合でも、前述したコーンピューレを含有させることが必要である。そして、このコーンピューレを含有させることにより、澱粉などの使用量を低減させても具材沈殿を抑制することができる。例えば、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部では、澱粉または加工澱粉の一部あるいは全部をコーンピューレに置き換えたもの(澱粉または加工澱粉の配合量を従前の設定から減量し、その減量分以上のコーンピューレを含有させたもの)とすることもできる。また、このコーンピューレを含む液体部は、具材沈殿を抑制可能な添加物をさらに含有させる必要もない。
【0022】
そして、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部は、コーンピューレを含むコーンスープ、あるいはコーンピューレおよび加工澱粉を含むコーンスープであると、本発明の効果が発揮され且つ香味が優れたものとなり易いため非常に好適である。なお、この「コーンスープ」とは、コーン(例えばコーンピューレなど)を主原料とし且つコーンの香味を有する液状スープであり、後述する粘度の範囲内においてとろみが付与されたコーンポタージュスープも包含される。また、「主原料」とは、水以外の使用原材料のうち最も配合量が多い原材料であることを意味する。
【0023】
そして、上記のような原材料を用いた本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部は、25℃における粘度が500mPa・s以下となるようにする。これにより、さっぱりと飲むことができる飲料となるからである。なお、この25℃における粘度は、450mPa・s以下であるのが好ましく、400mPa・s以下であるのがより好ましく、350mPa・s以下であるのがさらに好ましい。そして、本発明の容器詰め具材入り飲料は、液体部の25℃における粘度がこのような範囲でありながら、含有するコーンピューレあるいはコーンピューレおよび加工澱粉によって飲用時における具材の沈殿が抑制されていることが特徴である。
なお、この粘度は、市販のB型粘度計(例えば東機産業社製のTVB-10、No2ローター)を用い、温度を25℃、回転数を30rpm、測定時間を1分として測定した値である(以下においても同様である)。
【0024】
また、この液体部の25℃における粘度の下限は、100mPa・s以上であるのが好ましく、120mPa・s以上であるのがより好ましく、125mPa・s以上であるのがさらに好ましく、130mPa・s以上であるのがさらに好ましく、135mPa・s以上であるのがさらに好ましく、140mPa・s以上であるのがさらに好ましい。具材の沈殿をより抑制し易く、特に液体部が加工澱粉を含まない構成の場合においてこの効果がより発揮され易いからである。
【0025】
さらに、本発明の容器詰め具材入り飲料の液体部は、比重(25℃における比重)が1.05g/L以下であるのがより好ましく、1.043g/L以下であるのがさらに好ましい。また、この液体部の比重は1.04g/L未満であっても良く、1.035g/L以下であっても良い。液体部の甘味やカロリーの増加を抑制し易く、それにより、本発明の容器詰め具材入り飲料のさっぱり感をより向上させ易いからである。つまり、液体部の比重を上記範囲内とすることにより、本発明の容器詰め具材入り飲料は、よりスムーズに飲み易いものとなる。そして、本発明の容器詰め具材入り飲料は、液体部の比重がこのような範囲であり、且つ25℃における粘度が上記のような範囲であっても、含有するコーンピューレあるいはコーンピューレおよび加工澱粉によって飲用時における具材の沈殿が抑制されていることが特徴である。
なお、この液体部の比重は、液体部の25℃における単位体積(L)あたりの質量(g)であり、例えば市販の比重計(京都電子工業社製の密度比重計等)やメスフラスコなどによって測定される。
【0026】
<具材>
本発明の容器詰め具材入り飲料に含まれる不溶性固形物である具材は、具材としての形態を有するものであれば限定されないが、例えば、野菜類(粒コーン、人参、ポテト、カボチャなど)、豆類(大豆、小豆など)、穀類(米、麦など)、きのこ類(しいたけ、まいたけ、マッシュルームなど)、海藻類(わかめ、こんぶなど)、畜肉加工品(肉そぼろ、肉ダイスなど)、水産加工品(つみれ、練り物など)、果実類(りんご、パインアップルなど)等、あるいはこれらのいずれか1以上が任意の大きさ(例えばダイス状など)に切断されたものが示される。さらには、寒天、アルギン酸ナトリウムなどのゲル化剤を用いた成形物や、カプセルなどであっても良い。
【0027】
また、この具材の形状や大きさも特に限定されるものではない。具材の形状としては、例えば、立方体(略立方体、ダイス状)、直方体(略直方体)、球体(略球体)、楕円体(略楕円体)、不定形形状等が挙げられる。具材の大きさとしては、最大長さ(その形状における表面の2点間の最長直線距離)が2mm以上30mm以下、さらには2mm以上25mm以下、さらには2mm以上20mm以下の大きさが例示され、例えば、立方体の場合、一辺の長さが2mm以上20mm以下、球体の場合、直径の長さが2mm以上20mm以下などの大きさが挙げられる。
【0028】
さらに、本発明の容器詰め具材入り飲料では、この具材の比重(25℃における比重)が前述した液体部の比重よりも大きい場合であっても、具材沈殿抑制効果が発揮されることが特徴である。例えば、液体部の比重が1.05g/L以下である場合に、比重が1.05g/L超の具材を含んでいても、この具材の沈殿抑制効果が発揮される。そして、この具材の比重は、1.06g/L以上であっても良く、1.07g/L以上であっても良い。また、具材の比重の上限も限定されるものではないが、1.10g/L以下であっても良く、さらには1.08g/L以下であっても良く、さらには1.07g/L以下であっても良く、さらには1.06g/L以下であっても良い。
なお、この具材の比重は25℃における単位体積(L)あたりの質量(g)であり、具材(必要であれば前処理(破砕、摩砕など)をした具材)を用いてメスフラスコなどにより測定される値である。
【0029】
なお、前述したコーンピューレを含む液体部との香味の相性や、本発明の効果がより発揮され易いことなどから、この具材は粒コーンであるのが好適であり、さらに、具材が粒コーンであり且つ前述した液体部がコーンスープである構成、つまり本発明の容器詰め具材入り飲料が粒入りコーンスープ(粒コーン入りコーンスープ飲料)であるとさらに好適である。そして、この粒コーンの品種についても、前述したコーンピューレと同様の理由から、スイート種またはスーパースイート種を用いるのが好適である。
【0030】
本発明の容器詰め具材入り飲料における具材と液体部との含有比率は、具材と液体部との香味のバランスや、飲み応え、飲み易さ、製造適性などの観点から適宜設計すれば良いが、例えば、飲用時の状態における質量比として、具材:液体部=1:5~65となるように設計するのが好ましく、具材:液体部=1:7~37とするのがより好ましく、具材:液体部=1:9~18とするのがさらに好ましい。粒入りコーンスープ缶などに代表される缶入りの飲料製品(内容量190g)で例示すると、具材(粒コーンなど)の量は1缶当たり3~30gが好ましく、5~25gがより好ましく、10~20gがさらに好ましい。
【0031】
そして、本発明の容器詰め具材入り飲料は、このような液体部および具材が容器に詰められた(充填された)ものであるが、保存や流通の簡便性などの観点から、容器に充填されて密封されたものであるのが好ましく、さらに殺菌処理された常温流通可能な容器詰め具材入り飲料であるのがより好ましい。密封された常温流通可能な容器詰め具材入り飲料としては、レトルト殺菌処理された缶飲料(スチール缶入り、アルミ缶入り等)などが例示されるが、レトルト耐性を有するプラスチック製の成型容器などに充填密封されてレトルト殺菌されたものであっても良い。なお、限定されるものではないが、本発明の容器詰め具材入り飲料が上記の缶飲料(缶容器に容器詰めされた具材入り缶飲料)であると、缶から直接飲用した時に具材が缶の底部に残存し難く、好適なものとなる。特に、飲み口を有する缶から直接飲用される缶飲料(飲用時の攪拌などがよりしにくい缶飲料)の場合には、本発明の効果がより発揮され易い。また、本発明の容器詰め具材入り飲料は、加熱殺菌処理されて容器に詰められたチルド流通用の容器詰め具材入り飲料(例えば飲み口を有するプラスチック製の成型容器に詰められた具材入り飲料など)であっても良い。
【0032】
次に、本発明の容器詰め具材入り飲料の製造方法について詳細に説明する。
【0033】
本発明の容器詰め具材入り飲料は、コーンピューレを含む液体部を調合する工程と、この液体部の25℃における粘度が500mPa・s以下となるように調整する工程と、を含む方法で製造することができる。なお、これらの工程が、1つの工程において同時に行われる(同じ工程となっている)方法であっても良い。また、コーンピューレを含む液体部を調合する工程では、コーンピューレとともに前述した原材料を用いて液体部を調合することができる。そして、これら以外に、比重調整工程や、容器詰め具材入り飲料の製造において慣用されている工程(均質化工程、殺菌工程など)を含む方法とすることができ、また、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、さらに任意の工程を含むことができる。そして、具材および液体部の容器への充填方法(容器充填工程、密封工程など)も、公知の方法により行うことができる。
【0034】
例えば、粒入りコーンスープ缶を製造する場合、コーンピューレに水、食塩、砂糖、調味料、加工澱粉などを加えて粘度を調整してから加熱処理(加熱撹拌処理)し、必要であれば均質化処理を行ってコーンスープ調合液を調合し、スチール缶などの缶容器に具材である粒コーンとともにこのコーンスープ調合液を充填し密封(巻締め)を行う。そして、これを公知のレトルト殺菌条件、例えば120~130℃、4~60分間の条件などによりレトルト殺菌して常温流通可能な状態とすることもできる。
【0035】
また、チルド流通される容器詰め粒入りコーンスープを製造する場合には、上記と同様に調合したコーンスープ調合液を、加熱処理後の品温を保ったまま粒コーンとともにプラスチック製の成形容器などに充填するホットパックを行っても良い。
【0036】
以上のような構成である本発明の容器詰め具材入り飲料は、液体部の粘度が比較的低く維持されているためさっぱりと飲むことができ、さらに、コーンピューレを含む液体部により具材の沈殿が抑制されているため飲用時において容器から具材と液体部とをともに飲み易く、非常に好適である。
【0037】
なお、本発明は、不溶性固形物である具材および液体部により構成された飲料が容器詰めされた容器詰め具材入り飲料において、この液体部にコーンピューレを含有させて、さらにこの液体部の25℃における粘度を500mPa・s以下とすることを特徴とする、容器詰め具材入り飲料におけるさっぱり感向上および具材沈殿抑制方法を提供するものであるとも言える。また、上記容器詰め具材入り飲料において、液体部に澱粉または加工澱粉との置き換えとして(これらの減量分以上の)コーンピューレを含有させて、液体部の25℃における粘度を500mPa・s以下とすることを特徴とする、容器詰め具材入り飲料の具材沈殿を抑制しつつ粘度を低減させる方法を提供するものであるとも言える。
【0038】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0039】
(実施例1)
下記表1に示す含有量(配合量)となるように各原材料を水に混合分散および攪拌して、飲料の液体部となる各種スープ調合液を得た。そして、得られた各スープ調合液を92℃となるまで加温し、この品温が保たれた各スープ調合液176gと、具材となるIQF粒コーン(Individual Quick Frozen(個別急速冷凍)粒コーン、比重1.0675g/L)14gと、をスチール缶容器に充填して巻締めを行った。さらに、これらを120~130℃、4~60分間の条件によってレトルト殺菌を行うことにより、サンプル1~14の粒コーン入り缶飲料(内容量190g)を作製した。
なお、上記した粒コーンの比重は、粒自体の比重とほぼ同等なものとして、粒コーンをピューレ化して25℃において200mlのメスフラスコで比重測定を行ったときの値である。
【0040】
次いで、レトルト殺菌を行ってから24時間後以降に、各サンプルを良く振ってから開缶し、収容されている粒コーン入り飲料を全て透明なプラスチックカップ(12オンス)へ注ぎ込んで載置した。そして、このプラスチックカップの外側面において、注ぎ込まれた粒コーン入り飲料の液面から20mm下側の位置に、10~20mmの間隔をあけて3箇所に印(液面と略平行な線)を付けた。さらに、プラスチックカップ内の粒コーン入り飲料を粒コーンが分散するようにスパテラで5回ほど混合してから、上記の3箇所の印の部分にそれぞれ粒コーンを1粒配置し、それから5分後にそれぞれの粒コーンが沈んだ距離(印からの下側方向の距離)を測定して、粒コーンの沈殿の度合い(沈殿抑制)を評価した。
【0041】
なお、沈殿抑制評価は以下に示す基準により行った。
◎:3箇所の粒コーンが全て10mm以内の沈殿
〇:3箇所のうち少なくとも1箇所の粒コーンが10mm以内の沈殿であり、且つ3箇所の粒コーンが全て20mm未満の沈殿
×:3箇所のうち少なくとも1箇所の粒コーンが20mm以上の沈殿
【0042】
また、各サンプルの液体部(レトルト殺菌処理後の液体部)の25℃における粘度(mPa・s)を、B型粘度計(東機産業社製のTVB-10、No2ローター、回転数30rpm、測定時間1分)により測定した。さらに、サンプル6およびサンプル10の液体部については、200mlのメスフラスコを用いて25℃における比重(g/L)も測定した。これらの結果を下記表1に示した。
【0043】
【0044】
なお、上記表1中における各原材料の詳細な内容は以下の通りである。
・加工澱粉1:ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、タピオカ澱粉由来
・加工澱粉2:リン酸架橋デンプン、もち米澱粉由来
・加工澱粉3:ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、タピオカ澱粉由来(加工澱粉1とはリン酸架橋度(形成されたリン酸エステル結合の数)が異なる)
・加工澱粉4:ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、馬鈴薯澱粉由来
・加工澱粉5:ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ワキシーコーン澱粉由来
・冷凍コーンピューレ1:メジアン径500μm、アメリカ産
・増粘剤:キサンタンガム(サンエース、三栄源エフ・エフ・アイ社製)
【0045】
この結果から、液体部に加工澱粉とともにコーンピューレが含まれるサンプル(サンプル2、4、6、9、10、12、および14)は、液体部の粘度が500mPa・s以下でありながら粒コーンの沈殿が抑制された粒コーン入り缶飲料(粒入りコーンスープ缶)であることが示された。そして、これらのサンプルは、いずれもさっぱりと飲むことができる飲料であった。一方、液体部にコーンピューレが含まれないサンプル(サンプル1、3、5、7、8、11、および13)は、粒コーンの沈殿が十分に抑制できないことも示された。つまり、比較的低粘度である液体部における具材の沈殿抑制には、コーンピューレを含有させることが必要であることが明らかとなった。また、サンプル8~10の結果から、加工澱粉との置き換えとしてコーンピューレを含有させると(加工澱粉に対するコーンピューレの比率を増加させると)、この粒コーンの沈殿抑制効果がより発揮されることも明らかとなった。
【0046】
さらに、サンプル6および10の液体部の比重データから、この粒コーンの沈殿抑制効果は、液体部の比重が上昇したことによるものではないことも示された。また、他のサンプル(サンプル2、4、9、12、および14)の液体部の比重についても、各原材料が単体で含まれる水溶液のレトルト殺菌後の比重データから、いずれも液体部の25℃における比重が1.035g/以下であると推定されるため、同様であると推定された。
【0047】
(実施例2)
下記表2に示す含有量(配合量)となるように各原材料を用いた以外は実施例1と同様にして、サンプル21~29の粒コーン入り缶飲料(内容量190g)を作製した。そして、これも実施例1と同様にして粒コーンの沈殿の度合い(沈殿抑制)を評価し、さらに、各サンプルの液体部の25℃における粘度も同様に測定した。これらの結果を下記表2に示した。
【0048】
【0049】
なお、上記表2中における冷凍コーンピューレ2、3の詳細な内容は以下の通りである。また、加工澱粉3および冷凍コーンピューレ1は、実施例1と同じものである。
・冷凍コーンピューレ2:メジアン径350μm、ニュージーランド産
・冷凍コーンピューレ3:メジアン径350μm、タイ産
【0050】
この結果から、液体部にコーンピューレおよび加工澱粉を含有させたサンプル22~29は、含有するコーンピューレの産地やメジアン径が異なっていても、同様に、液体部の粘度が500mPa・s以下でありながら粒コーンの沈殿が抑制された粒コーン入り缶飲料(粒入りコーンスープ缶)となることが示された。そして、これらのサンプルはいずれもさっぱりと飲むことができる飲料であった。一方、液体部の粘度が500mPa・s超であるサンプル21(加工澱粉を含むがコーンピューレを含まないサンプル)は、さっぱりと飲むことができないものであった。
【0051】
(実施例3)
下記表3に示す含有量(配合量)となるように各原材料を用いた以外は実施例1と同様にして、サンプル31~33の粒コーン入り缶飲料(粒入りコーンスープ缶、内容量190g)を作製した。なお、使用した冷凍コーンピューレ1は実施例1と同じものである。そして、これも実施例1と同様にして粒コーンの沈殿の度合いを評価し、さらに、各サンプルの液体部の25℃における粘度を測定した。また、サンプル31および33の液体部の25℃における比重も同様に測定した。これらの結果を下記表3に示した。
【0052】
【0053】
この結果から、サンプル31~33は、加工澱粉を含有していない構成であっても粒コーンの沈殿が抑制された粒コーン入り缶飲料(粒入りコーンスープ缶)となっていることが示された。また、この粒コーンの沈殿抑制効果は、液体部の比重が上昇したことによるものではないことも明らかとなった。さらに、これも同様に、これらのサンプルはいずれもさっぱりと飲むことができる飲料であった。
【0054】
(実施例4)
粒コーンの代替具材として、6.4mmポテトダイス、10mm人参ダイス、または、10mmかぼちゃダイス(いずれも数値は一辺の長さを表す)を用いて、実施例1と同様に具材入り缶飲料(コーンスープ缶)を作製した。具体的には、まず含有量(配合量)として、加工澱粉1が12g/L、冷凍コーンピューレ1が90g/L、グラニュー糖が40g/L、および精製塩が6.5g/Lとなるように水に混合分散および攪拌してスープ調合液を得た。そして、得られたスープ調合液を92℃となるまで加温し、この品温が保たれたスープ調合液176gと、上記したいずれかの具材14gと、をスチール缶容器に充填して巻締めを行った。さらに、これらを120~130℃、4~60分間の条件によってレトルト殺菌を行うことにより、3種類の具材入り缶飲料(内容量190g)を作製した。
【0055】
次いで、実施例1と同様にして、各具材の沈殿の度合いを評価した。また、これらの液体部の25℃における粘度についても、実施例1と同様の方法により測定した。
この結果、いずれのサンプルも液体部の25℃における粘度は265mPa・sでありさっぱりと飲むことができ、また、いずれの具材も、粒コーンと同様に沈殿が抑制されている(沈殿抑制評価が◎である)ことが明らかとなった。