(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160115
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】溶剤系遮熱性機能膜および溶剤系遮熱性機能膜を設けてなる構造物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20221012BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221012BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20221012BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221012BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 Z
B05D5/00 Z
B05D7/24 303B
B05D7/24 303H
B05D5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064654
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519037876
【氏名又は名称】NCK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392007566
【氏名又は名称】ナトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 嘉高
(72)【発明者】
【氏名】丹下 真也
(72)【発明者】
【氏名】田口 道之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓弥
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA09
4D075AC54
4D075AC57
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB60Z
4D075BB91Z
4D075BB92Y
4D075CA02
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4D075CA32
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4D075EA05
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4D075EC24
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4J038CG141
4J038DL031
4J038HA166
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4J038KA03
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4J038PB05
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】遮熱性能に優れるだけではなく、基材表面に対する密着性、耐候性、耐摩耗性、耐塩水性、さらに耐酸性及び耐アルカリ性を有し、表面硬度が高い溶剤系遮熱性機能膜を提供する。
【解決手段】溶剤系塗料に球状金属酸化物粒子を配合した溶剤系塗料組成物を塗布・硬化してなる溶剤系遮熱性機能膜であって、被膜を形成した際に球状金属酸化物粒子が膜表面に偏在し分散することを特徴とする溶剤系遮熱性機能膜。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状金属酸化物粒子を含有し、前記球状金属酸化物粒子が膜表面側に偏在していることを特徴とする、溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項2】
前記球状金属酸化物粒子が、シリカおよび/または酸化アルミニウムを主成分とし、表面改質された真球状の粒子である、請求項1に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項3】
前記溶剤系遮熱性機能膜が、前記球状金属酸化物粒子を含有する溶剤系塗料組成物を構造物表面に塗布、硬化して製造された膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項4】
前記球状金属酸化物粒子以外の不揮発分の質量を100質量部とした場合に、該球状金属酸化物粒子の含有量が5質量部以上35質量部以下である溶剤系塗料組成物からなることを特徴とする、請求項3に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項5】
硬化後の膜の厚さが40μm以上100μm以下であり、表面硬度が鉛筆硬度2H以上5H以下である、請求項1~4のいずれかに記載の溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項6】
前記塗布の方法は、スプレー塗布、ローラ塗布、静電塗布または刷毛塗布である、請求項3に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項7】
前記硬化の方法は、自然乾燥または高温強制乾燥である、請求項3に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項8】
前記構造物の素材が、金属、プラスチック、ガラス、セラミック、セメントおよび木材からなる群より選択される1つである、請求項3~7のいずれかに記載の溶剤系遮熱性機能膜。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の溶剤系遮熱性機能膜を最外層に設けてなることを特徴とする構造物。
【請求項10】
前記構造物は、屋外または日光に曝される環境で使用されるものである、請求項9に記載の構造物。
【請求項11】
前記構造物が、番重、エアコンの室外機、分電盤、コンテナ、テント生地、自動車、自転車、鉄道車両、宅配ボックス、屋根、パラボラアンテナ、公園の遊具、ベンチ、またはヘルメットである、請求項9または10に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射および輻射熱を反射する溶剤系遮熱性機能膜および当該溶剤系遮熱性機能膜を設けてなる構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー資源価格の高騰、地球温暖化問題への懸念から、各国において省エネルギーの推進が行われている。省エネルギーを達成する方法の一つとして、建築物の屋根や外壁などに用いられ、輻射熱を抑制することができる遮熱性機能膜が注目されている。日差しによる建物の屋根や外壁の温度上昇を抑制することができれば、(エアコンを使用することなく)室温の上昇を抑えることが可能となり、夏場の省エネルギーの達成が期待できる。
建築物以外にも、内部への熱侵入の影響を受ける構造物がある。例えば物流に用いられるコンテナ類、薬品等の貯留タンク、分電盤等の屋外電気機器BOX全般等に遮熱性機能膜を設ければ、内部への熱侵入量の削減が期待できる。また遮熱性機能膜によって表面温度を低減させる事で、例えば公園のベンチや遊具等、人が触れる部位の温度を低減させ、温度痛感、低温火傷の発生を避ける事ができる。
【0003】
日射および輻射熱の遮熱性に優れた機能膜としては、例えば、特許文献1の熱遮蔽塗料からなる膜がある。しかし、特許文献1の熱遮蔽塗料は水系塗料であることから、低温または高湿度の条件下においては乾燥に長い時間を要し、得られる膜は耐候性、耐摩耗性、耐久性に劣る。さらに樹脂からなる構造物に用いることができない等、構造物の種類が限定されるといったデメリットを有していた。この事は、構造物に使用する遮熱性機能膜としては致命的である。
一方、特許文献2には溶剤系の遮熱塗料を用いた遮熱工法が記載されている。しかし、特許文献2の工法においては、十分な遮熱性を得るためには複数の層を積層塗布することが必要であり、より簡便な工程で得られる遮熱性機能膜が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2006/104290号公報
【特許文献2】特開2003-238897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より一層の省エネルギーの観点から、従来に増して遮熱性の高い機能膜が求められている。本発明の目的は、あらゆる素材に適用することが可能で、耐候性、耐摩耗性、耐塩水性に優れ、かつ、高い熱遮蔽性をもつ機能膜、および機能膜を設けてなる構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定の球状金属酸化物粒子を溶剤系塗料に配合することで、乾燥後の機能膜の熱遮蔽性を高めるだけでなく、表面硬度が高い機能膜が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。
本発明は以下に示すとおりである。
<1>球状金属酸化物粒子を含有し、前記球状金属酸化物粒子が膜表面側に偏在していることを特徴とする、溶剤系遮熱性機能膜。
<2>前記球状金属酸化物粒子が、シリカおよび/または酸化アルミニウムを主成分とし、表面改質された真球状の粒子である、前記<1>に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
<3>前記溶剤系遮熱性機能膜が、前記球状金属酸化物粒子を含有する溶剤系塗料組成物を構造物表面に塗布、硬化して製造された膜であることを特徴とする、前記<1>または<2>に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
<4>前記球状金属酸化物粒子以外の不揮発分の質量を100質量部とした場合に、該球状金属酸化物粒子の含有量が5質量部以上35質量部以下である溶剤系塗料組成物からなることを特徴とする、前記<3>に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
<5>硬化後の膜の厚さが40μm以上100μm以下であり、表面硬度が鉛筆硬度2H以上5H以下である、前記<1>~<4>のいずれかに記載の溶剤系遮熱性機能膜。
<6>前記塗布の方法は、スプレー塗布、ローラ塗布、静電塗布または刷毛塗布である、前記<3>に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
<7>前記硬化の方法は、自然乾燥または高温強制乾燥である、前記<3>に記載の溶剤系遮熱性機能膜。
<8>前記構造物の素材が、金属、プラスチック、ガラス、セラミック、セメントおよび木材からなる群より選択される1つである、前記<3>~<7>のいずれかに記載の溶剤系遮熱性機能膜。
<9>前記<1>~<8>のいずれかに記載の溶剤系遮熱性機能膜を最外層に設けてなることを特徴とする構造物。
<10>前記構造物は、屋外または日光に曝される環境で使用されるものである、前記<9>に記載の構造物。
<11>前記構造物が、番重、エアコンの室外機、分電盤、コンテナ、テント生地、自動車、自転車、鉄道車両、宅配ボックス、屋根、パラボラアンテナ、公園の遊具、ベンチ、またはヘルメットである、前記<9>または<10>に記載の構造物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の溶剤系遮熱性機能膜は、構造物表面に対する密着性、耐候性、耐摩耗性、耐塩水性、さらに耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、高い表面硬度を有する。さらに本発明の溶剤系遮熱性機能膜は、太陽光、特に近赤外線を反射する性能を有し、優れた遮熱性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の鋼板の表面温度の変化を示すグラフ
【
図3】実施例3のコンテナ車の温度変化を示すグラフ
【
図4】実施例4のヘルメットの温度変化(表面)を示すグラフ
【
図5】実施例4のヘルメットの温度変化(裏面)を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の溶剤系遮熱性機能膜について詳しく説明する。なお、本発明の溶剤系遮熱性機能膜は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0010】
<溶剤系遮熱性機能膜>
本発明の溶剤系遮熱性機能膜は、溶剤系塗料および球状金属酸化物粒子を含有する溶剤系塗料組成物を構造物表面に塗布したのちに硬化することによって得られる膜である。
溶剤系塗料組成物を塗布する方法としては、スプレー塗布、静電塗布、ローラ塗布または刷毛塗布等の公知の手段を用いることができ、また、硬化方法は、自然乾燥または高温強制乾燥(80℃以上100℃以下)のいずれの方法で硬化することが可能である。したがって、構造物の素材の種類および求められる性能を考慮して塗布・硬化の方法を選択することができる。
本発明の溶剤系遮熱性機能膜は薄膜であっても高い硬度を有する。具体的には、硬化後の厚さは40μm以上100μm以下、好ましくは60μm以上80μm以下であり、表面硬度は鉛筆硬度2H以上5H以下である。
【0011】
<溶剤系塗料組成物>
上記の溶剤系塗料組成物は、上述したように、溶剤系塗料および球状金属酸化物粒子を含有する。
球状金属酸化物粒子の配合量は、球状金属酸化物粒子以外の不揮発分の質量を100質量部とした場合に、該球状金属酸化物粒子の含有量は5質量部以上35質量部以下である。球状金属酸化物粒子の配合量が5質量部未満である場合には、十分な熱遮断性能が得られない。
また、その他必要に応じて、防錆剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の塗料組成物用の慣用の添加剤や、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール等の多価アルコールを添加することができる。
【0012】
<溶剤系塗料>
本発明において使用される溶剤系塗料は、有機溶剤と樹脂とを含有する。配合量は、有機溶剤を100質量部とした場合に、樹脂は15質量部以上250質量部以下であることが好ましい。250質量部を超えると、塗料の粘性が高くなり塗工しにくい。15質量部未満であると、密着性が低下し、硬化後の耐久性が悪くなる。
前記有機溶剤としては、炭化水素系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤等の溶剤を揮発性・樹脂溶解度・球状金属酸化物粒子の分散性を勘案の上で用いることができ、また、複数種を混合して用いても良い。
前記樹脂としては、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリカーボネート樹脂等の樹脂を用いることができる。
また、一液型の塗料、二液型の塗料のいずれも用いることができるが、耐久性および密着性が高いことから、二液型の塗料が好ましい。
【0013】
<球状金属酸化物粒子>
本発明において使用される球状金属酸化物粒子は、塗料組成物中で溶剤に沈殿せず分散し、表面に浮遊した状態を保つことができる球状金属酸化物粒子であることが重要である。この球状金属酸化物粒子の性質により、遮熱性機能膜を形成した際に、膜表面に球状金属酸化物粒子が偏在し、高い硬度と優れた平滑性を有する溶剤系遮熱性機能膜を得ることができる。
球状金属酸化物粒子は、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどを主成分とする粒子を用いることができるが、遮熱性能及び成膜時の美観の観点から、シリカおよび/または酸化チタンであることが望ましい。
本発明において使用される球状金属酸化物粒子の形状は、分散安定性、および成膜時の表面の平滑性の観点から、真球状であることが好ましい。具体的には、真球度が0.7以上であることが望ましく、0.8以上であることがより望ましい。ここで、本明細書中における「真球度」とは、SEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(真球度)={4π×(面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には画像処理装置を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。
球状金属酸化物粒子の粒径は小さいほど分散安定性に優れ、乾燥後には平滑性・可撓性に優れひび割れにくくなるため好ましい。具体的には、体積平均粒径が0.05μm以上2μm以下であり、0.1μm以上0.6μm以下であることが好ましく、0.2μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。
また、前記の球状金属酸化物粒子は、真密度が2.0g/cm3以上4.5g/cm3以下である。真密度が2.0g/cm3未満である場合には吸湿性が高くなり好ましくない。また、真密度が4.5g/cm3を超えると塗料組成物中で沈殿するため、膜表面に球状金属酸化物粒子を配置させることができない。
【0014】
本発明の球状金属酸化物粒子は分散安定性を保つために表面改質された粒子であることが好ましい。また、表面改質された球状金属酸化物粒子を用いる代わりに溶剤系塗料組成物に分散剤を添加しても良いし、表面改質された粒子と分散剤を併用しても良い。
表面改質された粒子は、表面改質剤により球状金属酸化物粒子を表面処理することにより得られる。表面改質剤としては、シランカップリング剤、ジシラザン化合物、カルボン酸化合物、またはチタンカップリング剤等を用いることができる。前記シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、メチルトリクロロシラン等のクロロシラン化合物、テトラアセトキシシラン等のアシロキシシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン化合物、またはトリメチルシラノール等のシラノール化合物が挙げられる。また、前記ジシラザン化合物としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザンが挙げられる。前記カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸類が挙げられる。前記チタンカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネートが挙げられる。
溶剤系塗料組成物に添加することのできる分散剤としては、高分子型分散剤、界面活性剤型分散剤、または無機型分散剤を用いることができる。高分子型界面活性剤として具体的には、ポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸等の油性分散剤を用いることができる。界面活性剤型分散剤は主にアニオン性、カチオン性、ノニオン性に分類され、要求特性に応じて適宜好適な種類、配合量を選択して使用することができる。無機型分散剤としては、ポリリン酸塩系分散剤が挙げられる。
【0015】
<構造物>
本発明の溶剤系遮熱性機能膜を設けてなる構造物は、その最外層の溶剤系遮熱性機能膜が近赤外線の波長を反射して優れた遮熱性能を発揮するため、直射日光が当たる条件で使用した場合であっても表面温度が上昇しにくい。また、上述したように、表面硬度が高く、耐摩擦性に優れるだけではなく、溶剤系塗料をベースにしているため、構造物表面に対する密着性、耐候性、耐塩水性にも優れており、雨風に曝される屋外条件での使用に適している。そのような条件下で使用され、且つ、温度が上昇しないことが好ましい構造物の例としては、番重、エアコンの室外機、分電盤、コンテナ、テント生地、自動車、自転車、鉄道車両、宅配ボックス、屋根、パラボラアンテナ、公園の遊具、ベンチ、またはヘルメットなどが挙げられるが、構造物はこれらに限定されるものではなく、本発明の溶剤系遮熱性機能膜は金属、プラスチック、ガラス、セラミック、セメント、木材等、あらゆる種類の素材からなる様々な構造物に適用することが可能である。
また、本発明の溶剤系遮熱性機能膜は、薄膜化と球状金属酸化物の偏在により、熱伝導度も高いため、構造物内部に発熱体がある場合には、最外層表面温度を低く保持しながら、内部熱を放出することができ、構造物の内部を好適な条件に保つための機能膜としても適用できる。
【実施例0016】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0017】
(塗料の調整)
表面改質された球状シリカ粒子を含む溶剤系塗料の主剤100質量部に対して硬化剤20質量部を加え、さらにシリコンアクリルシンナー5質量部を少しずつ加えながら低速回転の撹拌機で3分間撹拌して溶剤系塗料組成物を調整した。球状シリカの含有量は、不揮発性成分100質量部に対して15質量部であった。
【0018】
実施例1
前記の溶剤系塗料組成物をダル鋼板に120μmの厚さでローラを用いて塗布し、自然乾燥させて薄膜を形成したものを実施例の試験試料とした。比較例として、球状金属酸化物粒子を配合しない溶剤系塗料を用いて同様の試験材料を作成した。
各試験試料に対して、アイランプ150W形 RF110V135Wを用いて、照度18,000lxで光を照射し、内部および表面の温度の経時変化を1分おきに測定した。結果を表1および
図1に示す。
【0019】
【0020】
実施例2
前記の溶剤系塗料組成物を、屋外に設置されたエアコンの室外機に100μmの厚さで塗布し、硬化して、遮熱性機能膜を有する室外機とした。この室外機の天板表面、電装部について、日中の温度変化を測定し、機能膜を有さない室外機について同条件で測定した温度と比較した。結果を
図2に示す。
【0021】
実施例3
前記の溶剤系塗料組成物を、冷凍コンテナ車のコンテナの表面に塗布・硬化した。このコンテナ車を屋外に停車し、コンテナ内部および屋根部分の温度を24時間測定した。比較例として、未塗装であり機能膜を有さないコンテナ車で同様に測定を行った。結果の一部(午前7時から午後7時の間)を
図3に示す。
【0022】
実施例4
前記の溶剤系塗料組成物を、ヘルメットの外側表面に塗布した。このヘルメットにアイランプ写真用(PRF500W)フラッドを用いて照射距離:80cm、照度:5500lux、2.86mV=197.2W/m
2の条件で光を照射し、表面(外側)と裏面(内側)の温度を20分間測定した。なお、比較例として、未塗装であり機能膜を有さないヘルメットを用いて同様の測定を行った。結果を
図4および
図5に示す。
【0023】
実施例5
前記の溶剤系塗料組成物を、SPCC-SD鋼板に80μmの厚さで塗布して硬化し、溶剤系遮熱性機能膜を有するサンプルとした。水系塗料であるアドグリーンコートをSPCC-SD鋼板に100μmの厚さで塗布・硬化して水系遮熱性機能膜を有するサンプルとした。これらのサンプルについて、下記の項目について試験を行った。結果を表2に示す。
表面光沢:JIS K 5600-4-7 鏡面光沢度
硬度 :JIS K 5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)(20℃-20日後)
耐水性 :JIS K 5600-6-2 耐液体性(水浸せき法)(240時間浸漬)
耐酸性 :5%硫酸水溶液(240時間浸漬)
耐アルカリ性:5%水酸化ナトリウム水溶液(240時間浸漬)
耐塩水性:JIS K 5600-7-1 耐中性塩水噴霧性(スクラッチ入り240時間)
耐候性 :サンシャインウェザーメーター(1500時間)
【0024】
本発明の溶剤系遮熱性機能膜は、構造物に耐薬品性、可撓性、表面硬度、表面安定性並びに熱遮断性を付与することができるため、建築物の屋根や外壁に好適に用いることができるだけでなく、屋外で太陽光に曝されることによって温度が上昇することが好ましくない様々な構造物に適用可能である。具体的には、エアコンの室外機、野球ヘルメット、液化ガスタンク、コンビニ食品通函、輸送用コンテナ、宅配ボックス、自動車等への適用が可能である。