(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160122
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】スロープ搭載車両
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20221012BHJP
B60R 3/02 20060101ALI20221012BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20221012BHJP
B60P 1/43 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
B60R3/00
B60R3/02
B60J5/06 A
B60P1/43 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064667
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡留 宏将
(72)【発明者】
【氏名】大矢 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 勲
(72)【発明者】
【氏名】石田 直也
(72)【発明者】
【氏名】伊達 智啓
(72)【発明者】
【氏名】西 佑司
(72)【発明者】
【氏名】錦邉 健
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AC01
3D022AC02
3D022AC04
3D022AD02
3D022AE08
3D022AE11
3D022AE13
(57)【要約】
【課題】車両の乗降口の下側から車両外方へスロープが展開する際に、スロープが、乗降口の近くにいる人に近づくことを回避できるようにする。
【解決手段】車体側部のドア32の外面に設けられ、操作されることによってドア32が開かれるドア開ボタン20と、車両乗降口15の下側から展開可能に設けられたスロープ42と、車両乗降口15よりも前側又は後側の車体側面に設けられ、操作されることによってドア32が開かれると共にスロープ42が展開されるドア・スロープ開ボタン24と、スロープ42の展開を制御する制御装置と、を備えるスロープ搭載車両10である。制御装置は、ドア・スロープ開ボタン24の操作によりスロープ42の展開動作が行われている間に、ドア開ボタン20が操作された際には、スロープ42の展開動作を停止する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部のドアの外面に設けられ、操作されることによって前記ドアが開かれるドア開ボタンと、
車両乗降口の下側から展開可能に設けられたスロープと、
前記車両乗降口よりも前側又は後側の車体側面に設けられ、操作されることによって前記ドアが開かれると共に前記スロープが展開されるドア・スロープ開ボタンと、
前記スロープの展開を制御する制御装置と、
を備えるスロープ搭載車両であって、
前記制御装置は、
前記ドア・スロープ開ボタンの操作により前記スロープの展開動作が行われている間に、前記ドア開ボタンが操作された際には、前記スロープの展開動作を停止する、
ことを特徴とするスロープ搭載車両。
【請求項2】
請求項1に記載のスロープ搭載車両において、
前記ドアは、車両前後方向に移動するスライドドアであり、
前記ドア開ボタンは、操作面が車両前後方向に延びる静電容量式ボタンである、
ことを特徴とするスロープ搭載車両。
【請求項3】
請求項1に記載のスロープ搭載車両において、
前記ドアは、車両前後方向に移動するスライドドアであり、
前記ドア開ボタンは、操作面が車両前後方向に延びる機械式ボタンである、
ことを特徴とするスロープ搭載車両。
【請求項4】
請求項1に記載のスロープ搭載車両において、
前記ドアは、車両前後方向に移動するスライドドアであり、
前記ドア開ボタンは、操作面が前記ドアの外面全体に設けられた静電容量式ボタンである、
ことを特徴とするスロープ搭載車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロープ搭載車両に関し、特に、車両の乗降口の下側から車両外方へ展開するスロープを有するスロープ搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
スロープ搭載車両は、歩道、道路等から車椅子、ベビーカー、大型キャリーカート等が車両内へ容易に乗り入れできるように、車両から歩道、道路等に展開するスロープを有している(例えば特許文献1参照)。スロープは、車両乗降口の下側から車両外方へ展開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スロープ搭載車両には、車体側部の乗降口の下側から展開するスロープを備えるものがある。この車両では、乗降口を閉じるドアの外面に、操作されることで当該ドアが開かれるドア開ボタンが設けられ、乗降口よりも前側又は後側の車体側面に、操作されることで当該ドアが開かれると共にスロープが展開されるドア・スロープ開ボタンが設けられている。
【0005】
このような車両では、ある人がドア・スロープ開ボタンを操作することでスロープの展開動作が開始された際に、スロープが、車両の乗降口の近くにいる別の人(例えばドア開ボタンでドアを開けようとしていた人)に近づいてしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、車体側部にある乗降口の下側から車両外方へスロープが展開する際に、スロープが、乗降口の近くにいる人に近づくことを回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスロープ搭載車両は、車体側部のドアの外面に設けられ、操作されることによって前記ドアが開かれるドア開ボタンと、車両乗降口の下側から展開可能に設けられたスロープと、前記車両乗降口よりも前側又は後側の車体側面に設けられ、操作されることによって前記ドアが開かれると共に前記スロープが展開されるドア・スロープ開ボタンと、前記スロープの展開を制御する制御装置と、を備えるスロープ搭載車両であって、前記制御装置は、前記ドア・スロープ開ボタンの操作により前記スロープの展開動作が行われている間に、前記ドア開ボタンが操作された際には、前記スロープの展開動作を停止する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るスロープ搭載車両において、前記ドアは、車両前後方向に移動するスライドドアであり、前記ドア開ボタンは、操作面が車両前後方向に延びる静電容量式ボタンである、としてもよい。
【0009】
本発明に係るスロープ搭載車両において、前記ドアは、車両前後方向に移動するスライドドアであり、前記ドア開ボタンは、操作面が車両前後方向に延びる機械式ボタンである、としてもよい。
【0010】
本発明に係るスロープ搭載車両において、前記ドアは、車両前後方向に移動するスライドドアであり、前記ドア開ボタンは、操作面が前記ドアの外面全体に設けられた静電容量式ボタンである、としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スロープ展開動作中に、車両乗降口の近くにいる人がドア開ボタンを操作することでスロープの展開動作を停止することができるため、スロープがその人に近づくことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の車両の斜視図であり、人がドア開ボタンを操作する様子を示す。
【
図2】
図1に示す車両のドアが開いた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す車両のドア・スロープ開ボタンを人が操作する様子を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す車両のドアが開くと共にスロープが展開した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示す車両において、ドア開ボタンによりスロープの展開動作が停止される様子を示す斜視図である。
【
図6】ドアとスロープに関する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態を図面に従って説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であって、車両の仕様等に合わせて適宜変更が可能である。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の方向および向きを表す語句は、車両に関する方向および向きを表す。
【0014】
図1は、実施形態に係る車両10の斜視図であり、人70がドア開ボタン20(後述)を操作する様子を示す。
図2は、ドア開ボタン20により車両10のドア32が開いた状態を示す斜視図である。
【0015】
車両10は、略直方体の電気自動車であって、自動運転によって公道を走行する車両である。車両10は、不特定多数の乗員が乗り合うバスとして利用される。ただし、車両10の利用形態は、適宜、変更可能である。例えば、車両10は、各種商品を陳列販売する小売店、飲食物を調理提供する飲食店等の店舗として用いられてもよい。また、車両10は、事務作業又は顧客との打ち合わせ等を行うためのオフィスとして用いられてもよい。また、車両10は、顧客又は荷物を輸送するタクシー、運送用車両等として用いられてもよい。車両10の利用シーンは、ビジネスに限らず、例えば、個人の移動手段として用いられてもよい。
【0016】
車両10は、車体下部の骨格を形成するベースフレーム11と、ベースフレーム11に取り付けられた車両駆動ユニット12と、ベースフレーム11の上側に設けられて、車室の床を形成する床下パネル13(
図2参照)と、車体上部の外郭を形成するボデー14とを備える。車体の一方側の側部には、乗降口15が形成されている。乗降口15は、前後方向の略中央にあり、車両走行時はドア32により閉じられている。また、車両10は、乗降口15の下側から車両外方に展開するスロープ42(
図4参照)を備える。スロープ42は、格納状態では、ベースフレーム11と床下パネル13の間の隙間に位置する。
【0017】
ドア32は、スライドドアであり、後述するボタン操作により、前方側ドア32が前方に移動すると共に、後方側ドア32が後方に移動することで、車両乗降口15が開かれる。ドア32の外面には、操作されることでドア32が開かれるドア開ボタン20が設けられている。ドア開ボタン20は、静電容量式ボタンであり、金属製の検出パネル21を備える。ドア開ボタン20は、検出パネル21に人70の指等が触れることで生じる静電容量変化を捉えることで、人70によるボタン操作を検出する。検出パネル21は、子供や車椅子に乗った人でも触れることができるように比較的低い位置に設けられている。検出パネル21は、前後の各ドア32に設けられており、各検出パネル21の操作面は、ドア32の前後方向の幅全体に延びている。なお、
図1に示す検出パネル21は、細長く延びる楕円状を有しているが、検出パネル21の形状は例えば細長く延びる矩形状等であってもよく、限定されない。例えば、各検出パネル21の操作面の横幅は、少なくとも各ドア32の幅の半分以上を占めるとしてもよい。
【0018】
乗降口15よりも後側の車体側面には、操作されることでドア32が開かれると共にスロープ42が展開されるドア・スロープ開ボタン24が設けられている。
図3は、人72がドア・スロープ開ボタン24を操作する様子を示す斜視図であり、
図4は、ドア・スロープ開ボタン24によりドア32が開くと共にスロープ42が展開した状態を示す斜視図である。ドア・スロープ開ボタン24は、人72の指等により押されることでスイッチが閉じられ、または、開かれて、ボタン操作が検出される形式のボタン(押しボタン形式のボタン、または機械式ボタンとも言う)である。なお、ドア・スロープ開ボタン24は、ドア開ボタン20のような静電容量式ボタンであってもよい。ドア・スロープ開ボタン24は、子供や車椅子に乗った人でも押すことができるように比較的低い位置に設けられている。なお、ドア・スロープ開ボタン24は、乗降口15よりも前側の車体側面に設けられていてもよい。
【0019】
スロープ42は、
図4に示すように、例えば3つのスロープ板42A、42B、42Cを含む。ドア・スロープ開ボタン24が押下された際には、まず、スロープ板42Aが繰り出され、次にスロープ板42Bが、繰り出し済みのスロープ板42Aにガイドされながら繰り出され、さらにスロープ板42Cが、繰り出し済みのスロープ板42Bにガイドされなら繰り出される。そして、スロープ板42Cの先端が歩道又は道路に接すると、スロープ42の展開動作が完了する。
【0020】
車両10が停車又は駐車している際に、スロープを使用しない人70(以下、スロープ不使用者70と言う、
図1参照)は、ドア開ボタン20をタッチしてドア32を開くことで、車両10内に乗り込むことになる。また、車両10が停車又は駐車している際に、スロープを使用する人72(以下、スロープ使用者と言う、
図3参照)は、ドア・スロープ開ボタン24を押下して、ドア32を開くと共にスロープ42が展開する(繰り出す)ことで、車椅子、ベビーカー、大型キャリーカート等とともに車両10内に乗り込むことになる。
【0021】
ここで、
図5に示すように、スロープ使用者72がドア・スロープ開ボタン24を押下することでスロープ42の展開動作が開始された場合に、乗降口15の近くにスロープ不使用者70等の人がいて、スロープ42がその人に向かってくることがある。本実施形態の車両10では、この際、人がドア開ボタン20をタッチすることで、スロープ42の展開動作を緊急停止させることができる。すなわち、ドア開ボタン20が、スロープ42の展開動作中は、ドア32を開くボタンとして機能するわけではなく、スロープ42の展開動作を停止させるボタンとして機能する。
【0022】
図6は、スライドドア32とスロープ42に関する、車両の機能ブロック図である。車両10は、ドア開ボタン20と、ドア・スロープ開ボタン24と、ドア装置30と、スロープ装置40と、制御装置50とを備える。ドア開ボタン20は、検出パネル21と、検出パネル21に人が触れた際の静電容量変化を検出する検出回路22とを含む。
【0023】
ドア装置30は、スライドドア32と、スライドドア32を開閉させるアクチュエータであるドア開閉機構31とを含む。スロープ装置40は、スロープ42と、スロープ42を展開及び格納させるアクチュエータであるスロープ展開格納機構41とを含む。制御装置50は、メモリ54と、メモリ54に記憶されたプログラムに従って動作するプロセッサ52とを含む。制御装置50には、ドア開ボタン20の検出回路22と、ドア・スロープ開ボタン24と、ドア開閉機構31と、スロープ展開格納機構41とが電気的に接続されている。
【0024】
制御装置50は、ドア・スロープ開ボタン24が押下された際には、ドア開閉機構31を制御してスライドドア32を開かせると共に、スロープ展開格納機構41を制御してスロープ42を展開させる。また、制御装置50は、ドア開ボタン20がタッチされた際には、まず、スロープ42が展開動作中であるか否かを確認する。そして、制御装置50は、スロープ42が展開動作中でない場合にはドア開閉機構31を制御してスライドドア32を開かせる。一方、制御装置50は、スロープ42が展開動作中である場合にはスロープ展開格納機構41を制御してスロープ42の展開動作を停止させる。なお、車両10は、車室内にドア閉ボタン(不図示)とスロープ格納ボタン(不図示)とを備え、制御装置50は、ドア閉ボタンが操作された際にはドア開閉機構31を制御してスライドドア32を閉じさせ、スロープ格納ボタンが操作された際にはスロープ展開格納機構41を制御してスロープ42を格納させる。
【0025】
以上説明したスロープ搭載車両10によれば、
図5に示すように、スロープ使用者72がドア・スロープ開ボタン24を押下することでスロープ42の展開動作が開始された際に、乗降口15の近くにいるスロープ不使用者70等の人がドア開ボタン20を操作することでスロープ42の展開動作を緊急停止させることができる。そのため、スロープ42が、乗降口15の近くにいる人、動物、物等へ近づくことを回避することができる。
【0026】
なお、ドア・スロープ開ボタン24が押下された際には、前後のドア32のそれぞれが、前方、後方に移動していくため、ドア開ボタン20が、乗降口15の前後方向の中央付近にいる人から遠ざかっていく状態となる。しかし、本実施形態では、ドア開ボタン20の操作面が、前後の各ドア32に前後方向に延びるように設けられているため、乗降口15の前後方向の中央付近にいる人でも、比較的容易にドア開ボタン20にアクセスすることができ、スロープ42の展開動作を緊急停止させることができる。
【0027】
なお、以上で説明したドア開ボタン20は静電容量式ボタンであったが、ドア開ボタン20は、押しボタン形式のボタン(機械式ボタン)であってもよい。例えば、前後の各ドア32に、ドア32の前後方向の幅全体に延びるように長尺の押下操作面を配置した機械式ボタンを設けてもよい。
【0028】
また、以上で説明したドア開ボタン20の操作面は、各ドア32の前後方向の幅全体に延びるように設けていたが、ドア開ボタン20の操作面は、各ドア32の前後方向の幅の一部分に設けてもよい。
【0029】
図7は、別の実施形態に係る車両10Aである。車両10Aは、以上で説明した車両10に対して、ドア開ボタン20A(静電容量式ボタン)の検出パネル21Aの範囲が異なっており、その他は同じ構成である。
図7の車両10Aでは、スライドドア32の外面全体に、ドア開ボタン20A(静電容量式ボタン)の検出パネル21Aの操作面を設けている。これにより、乗降口15の近くにいる人が、さらに容易にドア開ボタン20A(検出パネル21A)の操作面にアクセスすることができ、スロープ42の展開動作を緊急停止させ易くなる。なお、検出パネル21Aを設ける範囲は、例えば、ドア32外面の下半分や、下1/3以下の部分としたり、ドア32の窓の領域を除く部分としたり、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0030】
10,10A 車両(スロープ搭載車両)、11 ベースフレーム、12 車両駆動ユニット、13 床下パネル、14 ボデー、15 乗降口(車両乗降口)、20,20A ドア開ボタン、21,21A 検出パネル、22 検出回路、24 ドア・スロープ開ボタン、30 ドア装置、31 ドア開閉機構、32 スライドドア(ドア)、40 スロープ装置、41 スロープ展開格納機構、42 スロープ、42A,42B,42C スロープ板、50 制御装置、52 プロセッサ、54 メモリ、70 人(スロープ不使用者)、72 人(スロープ使用者)。