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  • 特開-アンテナ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160123
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20221012BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01Q1/52
H05K9/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064669
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西薗 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小俣 順一
【テーマコード(参考)】
5E321
5J046
【Fターム(参考)】
5E321AA05
5E321AA23
5E321BB44
5E321CC16
5E321GG05
5E321GG11
5E321GH10
5J046AA05
5J046AA19
5J046AB03
5J046UA03
5J046UA08
(57)【要約】
【課題】低コスト化を実現することが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、直進性を有する高周波帯の電波を扱うアンテナ装置であって、所定壁を含んで構成される筐体と、所定壁と間隔をあけて、かつ、所定壁に対面して配置される基板と、基板における所定壁とは反対側の第1面に配置される平面アンテナ部と、基板における所定壁側の第2面に配置され、平面アンテナ部と電気的に接続される回路部と、所定壁の一部における、回路部と対向する位置に配置され、回路部から放射される不要波をシールドするシールド部材と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進性を有する高周波帯の電波を扱うアンテナ装置であって、
所定壁を含んで構成される筐体と、
前記所定壁と間隔をあけて、かつ、前記所定壁に対面して配置される基板と、
前記基板における前記所定壁とは反対側の第1面に配置される平面アンテナ部と、
前記基板における前記所定壁側の第2面に配置され、前記平面アンテナ部と電気的に接続される回路部と、
前記所定壁の一部における、前記回路部と対向する位置に配置され、前記回路部から放射される不要波をシールドするシールド部材と、
を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記シールド部材は、前記所定壁における前記回路部との対向部分を覆うように配置される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記シールド部材は、シート状に構成されている、
請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記基板は、グランドに接続される導体層を内部に有する、
請求項1~3の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記平面アンテナ部は、複数のアンテナ素子を含む、
請求項1~4の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記回路部は、高周波回路部と、前記平面アンテナ部と前記高周波回路部とを接続する配線部と、前記配線部に設けられるマッチング回路部とを含む、
請求項1~5の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記筐体における、前記基板を挟んで前記所定壁の反対側は、開放されている、
請求項1~6の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記電波は、ミリ波である、
請求項1~7の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波帯の電波を扱うアンテナ装置に設けられる回路部においては、高周波回路を含む回路部(例えば、マッチング回路等)や、高周波帯の信号の配線パターンの配線長等に起因して、共振が発生し、意図しない周波数帯で不要な電波の放射が発生するという問題が生じる。
【0003】
特許文献1には、回路部と対向して配置された湾曲形状のアンテナ部の裏側に、不要な電波を吸収可能な吸収部を設けた構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、箱形状のシールドケースと、シールドケースの開口部分を覆うように配置される基板とを有する構成が開示されている。この構成は、アンテナ部が配置された基板の裏側に回路部が設けられ、シールドケース内の全面に、回路部からの不要な電波をシールドする部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-196052号公報
【特許文献2】特開平11-17377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、アンテナ部として、湾曲可能な誘電体の素材を必要とするため、高コスト化するという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献2に記載の構成は、専用のシールドケースを設ける必要があるため、高コスト化するおそれがある。また、基板のサイズが大きくなると、それに応じて、専用のシールドケースをさらに大きくする必要が生じ、ひいてはさらに高コスト化するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、低コスト化を実現することが可能なアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアンテナ装置は、
直進性を有する高周波帯の電波を扱うアンテナ装置であって、
所定壁を含んで構成される筐体と、
前記所定壁と間隔をあけて、かつ、前記所定壁に対面して配置される基板と、
前記基板における前記所定壁とは反対側の第1面に配置される平面アンテナ部と、
前記基板における前記所定壁側の第2面に配置され、前記平面アンテナ部と電気的に接続される回路部と、
前記所定壁の一部における、前記回路部と対向する位置に配置され、前記回路部から放射される不要波をシールドするシールド部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るアンテナ装置を示す側断面図である。
図2】基板を第1面側から見た図である。
図3】基板を第2面側から見た図である。
図4】筐体を底壁側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置100を示す側断面図である。
【0013】
図1に示すように、アンテナ装置100は、高周波帯の電波を物体に向けて送波し、かつ、物体から反射された電波を受波可能な装置であり、例えば、駐車ロットに入庫および出庫する車両の存在を検出するパーキングセンサーに設けられる。高周波帯の電波は、例えばミリ波である。
【0014】
本実施の形態のアンテナ装置100の構造を説明するにあたり、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。アンテナ装置100は、例えばX方向が、駐車ロットに入庫した車両における左右方向、Y方向が当該車両における前後方向(入出庫方向に対応)、Z方向が当該車両における上下方向となるように搭載される。
【0015】
アンテナ装置100は、筐体110と、基板120と、平面アンテナ部130と、回路部140と、シールド部材150とを有する。
【0016】
筐体110は、例えば、Z方向の+側を開放した箱状の樹脂部材で構成されており、矩形状の底壁111と、底壁111の各辺から立ち上がる4つの側壁112とを有する。底壁111は、本発明の「所定壁」に対応する。
【0017】
基板120は、誘電体で構成されたプリント基板であり、グランドに接続される導体層121を内部に有する。基板120は、底壁111に設けられたボス等の配置部(不図示)において、底壁111と間隔をあけて、かつ、底壁111に対面して(具体的には平行に)配置されている。基板120は、ネジ等によって配置部に締結されることで、筐体110内に固定される。
【0018】
平面アンテナ部130は、基板120における底壁111とは反対側の第1面120Aに配置されるアンテナ素子であり、基板120の導体層121とともにマイクロストリップアンテナの構成要素となる。
【0019】
図2に示すように、平面アンテナ部130は、送波用のアンテナ素子131と、受波用のアンテナ素子132とを含んでいる。送波用のアンテナ素子131は、基板120のY方向の-側の端部寄りの位置に配置され、受波用のアンテナ素子132は、基板120のY方向の+側の端部寄りの位置に配置されている。
【0020】
送波用のアンテナ素子131および受波用のアンテナ素子132は、2つずつ設けられている。送波用のアンテナ素子131および受波用のアンテナ素子132のそれぞれは、基板120に形成された、異なるビアホールに配置されるビア122に接続される。
【0021】
図1に戻り、回路部140は、基板120における底壁111側の第2面120Bに配置され、平面アンテナ部130と電気的に接続される。図3に示すように、回路部140は、例えば配線部141と、マッチング回路部142と、高周波回路部143とを有する。
【0022】
配線部141は、第1面120Aに配置される平面アンテナ部130と、マッチング回路部142および高周波回路部143とを電気的に接続する配線パターンである。配線部141は、送波用のアンテナ素子131と高周波回路部143とを接続する1つと、受波用のアンテナ素子132と高周波回路部143とを接続する1つとを有する。
【0023】
配線部141における一方側の端部は、第1面120Aの平面アンテナ部130とビア122を介して接続されており、配線部141における他方側の端部は、高周波回路部143に接続されている。
【0024】
マッチング回路部142は、例えば平面アンテナ部130と高周波回路部143との間のインピーダンスを整合させる回路であり、配線部141における、ビア122と高周波回路部143との間に設けられている。マッチング回路部142は、配線部141よりも幅の広い正方形状に構成されている。
【0025】
高周波回路部143は、例えば高周波信号の発振、増幅、変調、周波数変換等の信号処理を行う高周波集積回路を含む。高周波回路部143は、基板120の略中心部に配置されている。
【0026】
図1に戻り、シールド部材150は、例えば銅製のテープ等、導電性のシート部材であり、回路部140から放射される不要な電波(不要波)をシールドする。
【0027】
回路部140においては、例えば、マッチング回路部142や配線部141の配線長等に起因して、意図しない周波数で共振が発生して、不要な電波の放射が起こる場合がある。例えば、マッチング回路部142において不要な電波の放射が起こる場合について説明する。
【0028】
マッチング回路部142のY方向の長さをW、X方向の長さをLとした場合、以下の式(1)、(2)における周波数で共振して、マッチング回路部142がアンテナ素子のように作用して不要な電波が放射される。
【0029】
f=c/(2W√(εr))・・・(1)
f=c/(2L√(εr))・・・(2)
【0030】
fは共振周波数、cは光の速度、εrは基板120の比誘電率である。
【0031】
本実施の形態のように、ミリ波のような高周波帯の信号周波数を扱う場合、信号周波数のn倍の高調波が発生した際、マッチング回路部142がアンテナ素子のように作用することがある。nは任意の自然数である。
【0032】
例えば、信号周波数が24GHzである場合に、マッチング回路部142のWが800μm、εrが3.7であると、式(1)より、共振周波数が約97GHzとなる。この場合、24GHzの4倍の高調波である、96GHzの信号が発生した際、マッチング回路部142がアンテナ素子のように作用する可能性が高くなる。
【0033】
シールド部材150は、底壁111の一部における、回路部140と対向する位置に配置される。ミリ波のような高周波帯の周波数の場合、電波の直進性が高く回り込みにくい性質を有するので、回路部140から不要な電波が放射されても、回路部140と対向する位置にシールド部材150が配置されているので、不要な電波がシールド部材150でシールドされる。
【0034】
このようにすることで、不要な電波が減衰され、ひいては不要な電波が筐体110から放射されることを低減することができる。
【0035】
また、図4に示すように、シールド部材150は、底壁111における回路部140との対向部分を覆うように配置される。図4は、筐体110を、底壁111側から見た図である。底壁111における回路部140との対向部分は、基板120に垂直な方向(Z方向)から見て、回路部140の全てと重なる部分である。
【0036】
このようにすることで、直進性の高い高周波帯の電波が回路部140から放射されても、底壁111における回路部140との対向部分がシールド部材150で覆われているので、不要な電波を確実にシールド部材150でシールドすることができる。
【0037】
また、シールド部材150が、底壁111の一部にのみ設けられているので、シールド部材を筐体の内部の全体に設ける構成と比較して、シールド部材150を筐体110の大きさに合わせて準備する必要がない。
【0038】
そのため、アンテナ装置100の構成を全体として簡素化することができるので、低コスト化に寄与することができる。
【0039】
ところで、特許文献2のように、専用のシールドケースを設ける構成であると、基板の大きさに合わせた、シールドケースを別途準備する必要があるため、高コスト化する。
【0040】
それに対し、本実施の形態では、底壁111の一部である、回路部140との対向部分にシールド部材150を設けるのみであるので、例えば既存の筐体を用いて、本実施の形態に係るアンテナ装置100を構成することができる。つまり、本実施の形態では、専用のシールドケースを準備する必要がないので、低コスト化を実現することができる。
【0041】
また、アンテナ素子として、基板120に配置される平面アンテナ部130を用いるので、例えば特許文献1に記載のアンテナ部における湾曲可能な誘電体の素材のような、特殊な素材を用いる必要がない。その結果、全体として簡素な構成とすることができ、ひいては低コスト化を実現することができる。
【0042】
また、筐体110における基板120を挟んで底壁111の反対側は開放されているので、平面アンテナ部130から放射される電波を遮るものは何もない。つまり、本実施の形態では、アンテナ装置100の放射特性に影響を与えることなく、回路部140からの不要な電波の放射を低減することができる。また、筐体110における基板120を挟んで底壁111の反対側が開放されているので、例えば既存の筐体110に蓋部材が存在する場合には、基板120を内部に入れた上で、蓋部材を筐体110に取り付けてアンテナ装置として用いることができる。つまり、本実施の形態では、既存の筐体をアンテナ装置に適用することができるので、低コスト化を実現することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態では、シールド部材が導電性の素材であったが、本発明はこれに限定されず、磁性体のシート部材や、電波吸収シートであっても良い。
【0044】
また、上記実施の形態では、シールド部材がシート状に構成されていたが、本発明はこれに限定されず、板状等、シート状に構成されていなくても良い。
【0045】
また、上記実施の形態では、送波用のアンテナ素子と、受波用のアンテナ素子とを有する構成であったが、本発明はこれに限定されず、送波用のアンテナ素子および受波用のアンテナ素子の何れかを有する構成であっても良い。
【0046】
また、上記実施の形態では、回路部がマッチング回路部を含んでいたが、本発明はこれに限定されず、回路部が位相調整用回路部を含んでいても良い。
【0047】
また、上記実施の形態では、高周波帯の電波としてミリ波を例示したが、本発明はこれに限定されず、直進性を有する限り、ミリ波以外のものであっても良い。
【0048】
また、上記実施の形態では、アンテナ装置がパーキングセンサーに設けられていたが、本発明はこれに限定されず、パーキングセンサー以外の装置に設けられていても良い。
【0049】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記実施の形態で説明した各部の形状、サイズ、個数および材料はあくまで一例であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るアンテナ装置は、低コスト化を実現することが可能なアンテナ装置として有用である。
【符号の説明】
【0051】
100 アンテナ装置
110 筐体
111 底壁
112 側壁
120 基板
120A 第1面
120B 第2面
121 導体層
122 ビア
130 平面アンテナ部
131 送波用のアンテナ素子
132 受波用のアンテナ素子
140 回路部
141 配線部
142 マッチング回路部
143 高周波回路部
150 シールド部材
図1
図2
図3
図4