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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160131
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/00 20060101AFI20221012BHJP
   B23B 15/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B23B31/00 A
B23B15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064689
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(74)【代理人】
【識別番号】100126077
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 亮平
(72)【発明者】
【氏名】出野 真敏
【テーマコード(参考)】
3C032
3C045
【Fターム(参考)】
3C032FF13
3C045FA05
(57)【要約】
【課題】ワークの形状に応じたエジェクタピンを押し棒の前端に取り付ける作業性を向上させる。
【解決手段】工作機械(1)は、主軸(21)、把持機構22、押し棒23、エジェクタピン30、保持部材24、及び、押出機構(25)を備えている。保持部材24は、主軸中心線(AX2)を中心として押し棒23の外側に配置され、主軸中心線(AX2)を中心とした軸心位置に押し棒23を保持する。押出機構(25)は、保持部材24を通り抜けている押し棒23に前進方向D1への力を加えることにより、把持機構22から解放されたワークW1をエジェクタピン30で押し出す。保持部材24に通すことが可能なエジェクタピン本体40であって押し棒23の前端23aに対して取り外し可能に取り付けられるエジェクタピン本体40と、該エジェクタピン本体40の前端40aに対して取り外し可能に取り付けられる当て部材45と、を含む集合体31がエジェクタピン30として押し棒23の前端23aに取り付けられる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸中心線を中心として回転可能な主軸と、
該主軸の前端部においてワークを解放可能に把持する把持機構と、
前記主軸内に挿入され、前記ワークを押し出す前進方向、及び、該前進方向とは反対の後退方向へ移動可能な押し棒と、
該押し棒の前端に対して交換可能に取り付けられるエジェクタピンと、
前記主軸中心線を中心として前記押し棒の外側に配置され、前記主軸中心線を中心とした軸心位置に前記押し棒を保持する保持部材と、
該保持部材を通り抜けている前記押し棒に前記前進方向への力を加えることにより、前記把持機構から解放された前記ワークを前記エジェクタピンで押し出す押出機構と、を備え、
前記保持部材に通すことが可能なエジェクタピン本体であって前記押し棒の前端に対して取り外し可能に取り付けられるエジェクタピン本体と、該エジェクタピン本体の前端に対して取り外し可能に取り付けられる当て部材と、を含む集合体が前記エジェクタピンとして前記押し棒の前端に取り付けられる、工作機械。
【請求項2】
前記押し棒の前端には、前記集合体と、前記押し棒への取付部位から前記ワークに当たる部位まで前記保持部材に通すことが可能な一体型エジェクタピンと、が前記エジェクタピンとして交換可能に取り付けられる、請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸にワーク排出装置が設けられた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械として、正面主軸台と刃物台とで正面加工が行われたワークを背面主軸台と刃物台とで背面加工を行う旋盤が知られている。背面主軸台には、背面加工が行われたワークを排出するためのワーク排出装置が設けられている。
【0003】
特許文献1には、背面主軸にワーク排出装置を備える自動旋盤が開示されている。この自動旋盤は、背面主軸の前端部においてワークを解放可能に把持する把持機構を備えている。把持機構は、背面主軸に挿入された先端側コレットスリーブ(チャックスリーブ)及び後端側コレットスリーブ(押しスリーブ)、先端側コレットスリーブの内側に配置されたコレット、該コレットの後端と先端側コレットスリーブの後端近傍との間にある圧縮コイルばね、背面主軸の前端部に取り付けられたキャップ、後端側コレットスリーブの後端に係合した係合部を有する回動部材(爪部材)、主軸中心線方向へ移動することにより回動部材を回動させる作用スリーブ(シフター)、等を備えている。把持機構は、先端側コレットスリーブを前進させることによりコレットでワークを把持し、先端側コレットスリーブを後退させることによりコレットからワークを解放する。背面主軸には、エジェクタピンが取り付けられた押し棒が挿入されている。押し棒は、背面主軸とともに回転する回転体である。背面主軸の内部には、押し棒の外側に配置されて押し棒を軸心位置に保持する略円筒状前側保持部材及び環状後側保持部材が設けられている。前側保持部材は、先端側コレットスリーブ及び後端側コレットスリーブの内側に配置されている。後側保持部材は、背面主軸の内側に取り付けられている。自動旋盤は、前側保持部材及び後側保持部材を通り抜けている押し棒に前進方向への力を加える押出機構を備え、コレットから解放されたワークをエジェクタピンで押し出す。
【0004】
コレット、先端側コレットスリーブ、及び、エジェクタピンは、ワークの大きさや形状等に応じて交換される。押し棒を保持する略円筒状前側保持部材にエジェクタピンを通すことができる場合、背面主軸に挿入されていない状態の押し棒の前端にエジェクタピンを取り付け、後側保持部材が存在する背面主軸の前端からエジェクタピン及び押し棒を挿入してから、前側保持部材を取り付けた先端側コレットスリーブを背面主軸の前端から背面主軸に挿入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-30140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ワークに主軸中心線に沿って貫通した貫通穴がある場合、該ワークを背面主軸から押し出すためには、エジェクタピンの前端部の外径をワークの穴の内径よりも大きくする必要がある。貫通穴を有するワークを押し出すためにエジェクタピンの前端部の外径を略円筒状前側保持部材の内径よりも大きくする必要がある場合、エジェクタピン及び押し棒を背面主軸の前端から背面主軸に挿入した後において、前側保持部材を取り付けた先端側コレットスリーブを背面主軸の前端から背面主軸に挿入することができない。エジェクタピンの前端部の外径を極力大きくすることができるように、押し棒を極力太く設計し、前側保持部材の内径を極力大きく設計することが行われている。
ここで、背面主軸からキャップとコレットだけ取り外し、背面主軸内に押し棒だけを挿入した状態で背面主軸に先端側コレットスリーブ及び円筒状前側保持部材を背面主軸の前端から挿入し、前側保持部材を通り抜けた押し棒の前端にエジェクタピンを取り付ける場合を想定する。この場合、押し棒が最も前進していても押し棒の前端が先端側コレットスリーブ内にあるので、作業者は、先端側コレットスリーブ内で押し棒の前端にエジェクタピンを取り付ける作業を行う必要がある。この場合、エジェクタピンを取り付ける作業性が良くない。
一方、大きさや形状等が様々なワークを主軸からエジェクタピンで押し出す必要がある。
【0007】
尚、上述のような問題は、正面主軸からワークを押し出す旋盤や、旋盤以外の工作機械にも存在する。
本発明は、ワークの形状に応じたエジェクタピンを押し棒の前端に取り付ける作業性を向上させることが可能な工作機械を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の工作機械は、
主軸中心線を中心として回転可能な主軸と、
該主軸の前端部においてワークを解放可能に把持する把持機構と、
前記主軸内に挿入され、前記ワークを押し出す前進方向、及び、該前進方向とは反対の後退方向へ移動可能な押し棒と、
該押し棒の前端に対して交換可能に取り付けられるエジェクタピンと、
前記主軸中心線を中心として前記押し棒の外側に配置され、前記主軸中心線を中心とした軸心位置に前記押し棒を保持する保持部材と、
該保持部材を通り抜けている前記押し棒に前記前進方向への力を加えることにより、前記把持機構から解放された前記ワークを前記エジェクタピンで押し出す押出機構と、を備え、
前記保持部材に通すことが可能なエジェクタピン本体であって前記押し棒の前端に対して取り外し可能に取り付けられるエジェクタピン本体と、該エジェクタピン本体の前端に対して取り外し可能に取り付けられる当て部材と、を含む集合体が前記エジェクタピンとして前記押し棒の前端に取り付けられる、態様を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワークの形状に応じたエジェクタピンを押し棒の前端に取り付ける作業性を向上させる工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】加工室のドアが閉じている状態の旋盤の例を模式的に示す正面図である。
図2】加工室のドアが開いている状態の旋盤の例を模式的に示す正面図である。
図3】旋盤のドア装置の例を模式的に示す図である。
図4】旋盤の加工部の例を模式的に示す斜視図である。
図5】旋盤の電気回路の構成例を模式的に示すブロック図である。
図6】ワーク排出装置が設けられた背面主軸台の例を模式的に示す縦断面図である。
図7】ワーク排出装置が設けられた背面主軸台の要部を模式的に例示する縦断面図である。
図8】押し棒の前端に取り付け可能な様々なエジェクタピンの例を模式的に示す図である。
図9】押し棒の保持部材の内径Dh、当て部材の外径Dp、ワークの外径Dw、及び、ワーク穴の内径dwを模式的に例示する図である。
図10】背面主軸からキャップとコレットを外した状態でエジェクタピン本体に当て部材を取り付けた様子を模式的に例示する図である。
図11】刃物台テーブル及びスリーブホルダの例を模式的に示す斜視図である。
図12】参考例と比較したスリーブホルダのサイズを模式的に例示する図である。
図13】参考例と比較したスリーブホルダの内部を模式的に例示する縦断面図である。
図14図13のA1-A1の位置におけるスリーブホルダの断面図である。
図15】参考例と比較したカバー構造を模式的に例示する図である。
図16】外装部材から外装カバーが取り外されている状態の旋盤の例を模式的に示す斜視図である。
図17】外装部材に外装カバーが取り付けられた状態の旋盤の例を模式的に示す斜視図である。
図18】押し棒の保持部材の内径Dh、一体型エジェクタピンの外径De、ワークの外径Dw、及び、ワーク穴の内径dwを模式的に例示する図である。
図19】比較例において背面主軸からキャップとコレットを外した状態で押し棒に一体型エジェクタピンを取り付けた様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0012】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~19に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0013】
[態様1]
図6,7等に例示するように、本技術の一態様に係る工作機械(例えば旋盤1)は、主軸(例えば背面主軸21)、把持機構22、押し棒23、エジェクタピン30、保持部材24、及び、押出機構(例えばコイルばね25)を備えている。前記主軸(21)は、主軸中心線(例えば主軸中心線AX2)を中心として回転可能である。前記把持機構22は、前記主軸(21)の前端部21aにおいてワークW1を解放可能に把持する。前記押し棒23は、前記主軸(21)内に挿入され、前記ワークW1を押し出す前進方向D1、及び、該前進方向D1とは反対の後退方向D2へ移動可能である。前記エジェクタピン30は、前記押し棒23の前端23aに対して交換可能に取り付けられる。前記保持部材24は、前記主軸中心線(AX2)を中心として前記押し棒23の外側に配置され、前記主軸中心線(AX2)を中心とした軸心位置(例えば図6,7に示す位置)に前記押し棒23を保持する。前記押出機構(25)は、前記保持部材24を通り抜けている前記押し棒23に前記前進方向D1への力を加えることにより、前記把持機構22から解放された前記ワークW1を前記エジェクタピン30で押し出す。前記押し棒23の前端23aには、前記保持部材24に通すことが可能なエジェクタピン本体40であって前記押し棒23の前端23aに対して取り外し可能に取り付けられるエジェクタピン本体40と、該エジェクタピン本体40の前端40aに対して取り外し可能に取り付けられる当て部材45と、を含む集合体31が前記エジェクタピン30として取り付けられる。
【0014】
上記態様1では、エジェクタピン本体40を押し棒23の保持部材24に通すことができるので、主軸(21)に挿入されていない状態の押し棒23の前端23aにエジェクタピン本体40を取り付け、主軸(21)にエジェクタピン本体40及び押し棒23を主軸(21)の前端から挿入してから、主軸(21)に保持部材24等を主軸(21)の前端から挿入することができる。例えば、図6,7等に示すように把持機構22にチャックスリーブ209がある場合には、主軸(21)にエジェクタピン本体40及び押し棒23を主軸(21)の前端から挿入してから、保持部材24を取り付けたチャックスリーブ209を主軸(21)の前端から主軸(21)に挿入することができる。エジェクタピン本体40の前端40aが押し棒23の前端23aよりも前側にあるので、押し棒23が前進している状態でエジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を容易に取り付けることができる。図6,7等に示す例では、エジェクタピン本体40の前端40aがチャックスリーブ209よりも前側にあるので、押し棒23が前進している状態でエジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を容易に取り付けることができる。特に、押し棒23の保持部材24に当て部材45を通すことができなくても、エジェクタピン本体40及び押し棒23を保持部材24に通してからエジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を取り付けることにより、保持部材24に通すことができない当て部材45を保持部材24の前側に配置することができる。従って、上記態様1は、ワークの形状に応じたエジェクタピンを押し棒の前端に取り付ける作業性を向上させる工作機械を提供することができる。その結果、例えば、回転体である押し棒を従来よりも細く設計することができ、軽量化により回転体の振動を低減させることができ、さらに、押し棒の製造コストを低減させることができる。また、エジェクタピンの前端が摩耗しても当て部材だけの交換で済むので、ランニングコストを低減させることができる。
【0015】
ここで、主軸には、背面主軸、正面主軸、等が含まれる。
ワークには、加工が完了したワークすなわち製品も含まれる。
把持機構においてワークを把持する把持具には、コレット、爪、等が含まれる。
押出機構には、圧縮コイルばねといったばね、エアシリンダや電動シリンダといったシリンダ、等が含まれる。
エジェクタピン本体は、2以上に分割されていてもよい。当て部材も、2以上に分割されていてもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0016】
[態様2]
図8等に例示するように、前記押し棒23の前端23aには、前記集合体31と、前記押し棒23への取付部位(例えば雄ねじ部33)から前記ワークW1に当たる部位(例えば当て部34)まで前記保持部材24に通すことが可能な一体型エジェクタピン32と、が前記エジェクタピン30として交換可能に取り付けられてもよい。例えば、ワークW1が細い場合、ワークW1を把持する把持具(例えばコレット213)の内径を小さくする必要があるので、エジェクタピン30を一体型エジェクタピン32にする方が設計し易い。押し棒23の保持部材24に一体型エジェクタピン32を通すことができる場合、主軸(21)に挿入されていない状態の押し棒23の前端23aに一体型エジェクタピン32を取り付け、主軸(21)に一体型エジェクタピン32及び押し棒23を主軸(21)の前端から挿入してから、主軸(21)に保持部材24等を主軸(21)の前端から挿入することができる。この場合、エジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を取り付ける作業が不要となる。例えば、図6,7等に示すように把持機構22にチャックスリーブ209がある場合には、主軸(21)に一体型エジェクタピン32及び押し棒23を主軸(21)の前端から挿入してから、保持部材24を取り付けたチャックスリーブ209を主軸(21)の前端から主軸(21)に挿入することができる。エジェクタピン本体40と当て部材45を含む集合体31に加えて一体型エジェクタピン32も押し棒23の前端23aに取り付けることができるので、本態様は、ワークの形状に応じたエジェクタピンを押し棒の前端に取り付ける作業性をさらに向上させる工作機械を提供することができる。
【0017】
(2)工作機械の構成の具体例:
図1~5は、工作機械の例として旋盤1を模式的に例示している。図1は、加工室C1のドア3が閉じている状態の旋盤1を模式的に例示する正面図である。図2は、加工室C1のドア3が開いている状態の旋盤1を模式的に示す正面図である。図1,2において、加工室C1及び主軸台室C2の範囲が破線で示されている。図3は、旋盤1のドア装置300を模式的に例示する図であり、加工室C1を覆う外装2の一部の図示を省略して旋盤1を右から見た図である。図4は、旋盤1の加工部を模式的に例示する斜視図である。図4に模式的に示す刃物台テーブル51は、図11に例示する延出部51e及びガイド取付部51gが省略されている。図5は、旋盤1の電気回路の構成を模式的に例示するブロック図である。
【0018】
図1~4等において、符号D81は上方向を示し、符号D82は下方向を示し、符号D83は左方向を示し、符号D84は右方向を示し、符号D85は手前方向を示し、符号D86は奥方向を示している。尚、これらの方向は、図1に示す旋盤1を見る方向を基準としている。符号X1,Y1,Z1,X2,Z2は、制御軸を示している。
尚、本明細書において参照される図面は、本技術を説明するための例を示しているに過ぎず、本技術を限定するものではない。各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右を逆にしたり、回転方向を逆にしたり等することも、本技術に含まれる。方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。
【0019】
図1~5に示す旋盤1は、加工室C1においてワークW1の加工の数値制御を行うNC(数値制御)装置70を備えるNC旋盤である。図1,2に示すように、旋盤1の正面には、入力部81と表示部82を有する操作部80、及び、この操作部80の右にある開閉可能なドア3を備えている。加工室C1を覆う外装2は、ドア3の形状に合わせられた開口2opを有している。旋盤1の内部には、ドア3が開くと解放される加工室C1、及び、加工室C1の左にある主軸台室C2が設けられている。ドア3は、図3に示すドアレール4に案内されて開閉する。ドア3とドアレール4を含むドア装置300の詳細は、後述する。図2には、加工中のワークW1にクーラントを供給するクーラント供給部5が示されている。クーラントには、オイル等の液体を使用可能である。
【0020】
旋盤1は、図4に示すように、正面主軸台10、背面主軸台20、くし形刃物台50、等を備える主軸移動型旋盤である。
正面主軸台10は、主軸中心線AX1を中心として回転可能な正面主軸11が組み込まれ、Z1軸方向へ移動可能である。図4に示すZ1軸方向は、主軸中心線AX1に沿った水平方向である。正面主軸11は、メインスピンドルとも呼ばれる。正面主軸11は、前端部に把持具としてコレット12を備え、該コレット12によりワークW1を解放可能に把持し、ワークW1とともに主軸中心線AX1を中心として回転可能である。加工前のワークW1が例えば円柱状(棒状)の長尺な材料である場合、正面主軸11の後端からコレット12にワークW1が供給されてもよい。この場合、ワークW1をZ1軸方向へ摺動可能に支持するガイドブッシュ15が正面主軸11の前側に配置されてもよい。むろん、旋盤1にガイドブッシュ15が無くても、本技術を適用可能である。
【0021】
正面加工後のワークW1は、正面主軸11から背面主軸21に引き渡される。背面主軸台20は、主軸中心線AX2を中心として回転可能な背面主軸21が組み込まれ、Z2軸方向及びX2軸方向へ移動可能である。図4に示すZ2軸方向は、主軸中心線AX2に沿った水平方向である。図4に示すX2軸方向は、主軸中心線AX2と直交する水平方向である。主軸中心線AX2が主軸中心線AX1に一致する時、背面主軸21は正面主軸11に対向する位置にある。背面主軸21は、サブスピンドルや対向主軸とも呼ばれる。背面主軸21は、前端部に把持具としてコレット213を備え、該コレット213によりワークW1を解放可能に把持し、正面加工後のワークW1とともに主軸中心線AX2を中心として回転可能である。正面加工後のワークW1は、背面加工により製品となり、図6等に例示するワーク排出装置100により背面主軸21から押し出されて排出される。背面主軸21は、ワーク排出装置100が組み込まれる主軸の例である。
【0022】
くし形刃物台50は、ワークW1を加工するための複数の工具T1が取り付けられた金属製の刃物台テーブル51を備え、X1軸方向及びY1軸方向へ移動可能である。図4に示すX1軸方向は、主軸中心線AX1,AX2と直交する水平方向である。図4に示すY1軸方向は、主軸中心線AX1,AX2と直交する鉛直方向である。
尚、「直交」は、厳密な90°に限定されず、誤差により厳密な90°からずれることを含む。また、X1軸とY1軸とは交差していれば直交していなくてもよく、Y1軸とZ1軸とは交差していれば直交していなくてもよく、Z1軸とX1軸とは交差していれば直交していなくてもよい。さらに、X2軸とY1軸とは交差していれば直交していなくてもよく、Y1軸とZ2軸とは交差していれば直交していなくてもよく、Z2軸とX2軸とは交差していれば直交していなくてもよい。X2軸方向は、X1軸方向からずれた方向でもよい。
【0023】
刃物台テーブル51は、Z1軸方向へ貫通した開口OP1を有し、ワークW1をZ1軸方向へ通過させる。刃物台テーブル51は、背面主軸台20の方を向いた面51zに金属製のスリーブホルダ60が取り付けられた上部51a、奥方向D86へ突出した工具T1が複数取り付けられた手前側鉛直部51c、手前方向D85へ突出した工具T1が複数取り付けられた奥側鉛直部51d、及び、手前側鉛直部51cの下部と奥側鉛直部51dの下部とを繋いでいる下部51bを備えている。くし形刃物台50は、複数の工具T1がワークW1を取り囲むように構成された刃物台である。スリーブホルダ60は、刃物台テーブル51への取付部61、工具ユニットU1の保持部62、及び、取付部61から保持部62に繋がる連絡部63を備えている。複数の工具T1には、突っ切りバイトT2を含むバイト、ドリルT3、回転工具T4、等が含まれる。刃物台テーブル51の上部51aに取り付けられたスリーブホルダ60には、複数の工具ユニットU1が取り付けられている。図4に示す工具ユニットU1はドリルT3を備えるドリルユニットであるが、工具ユニットU1はドリルユニットに限定されない。スリーブホルダ60と刃物台テーブル51の詳細は、後述する。くし形刃物台50は、加工室C1において、正面主軸11のコレット12に把持されているワークW1の正面加工を工具T1で行い、正面主軸11のコレット12と背面主軸21のコレット213とに把持されているワークW1の突っ切り加工を突っ切りバイトT2で行い、背面主軸21のコレット213に把持されているワークW1の背面加工を工具T1で行う。
【0024】
旋盤1は、背面主軸21のコレット213に把持されているワークW1の背面加工を行う背面加工用刃物台59を備えていてもよい。図4に示す背面加工用刃物台59には、X2軸方向へ並べられた複数の工具T1(例えばドリルT3)が取り付けられている。背面主軸台20がX2軸方向へ移動することにより、背面加工用刃物台59は移動しなくても、背面加工に使用される工具T1を切り替えることができる。さらに、旋盤1は、タレット刃物台等の刃物台を備えていてもよい。
【0025】
正面主軸台10、背面主軸台20、及び、くし形刃物台50の移動は、図5に示すNC装置70により制御される。図5に示すNC装置70は、プロセッサーであるCPU(Central Processing Unit)71、半導体メモリーであるROM(Read Only Memory)72、半導体メモリーであるRAM(Random Access Memory)73、時計回路74、I/F(インターフェイス)75、等を備えている。図5では、操作部80、正面主軸台駆動部DR1、正面主軸回転駆動部DR2、コレット駆動部DR3、くし形刃物台駆動部DR4、背面主軸台駆動部DR5、背面主軸回転駆動部DR6、コレット駆動部DR7、等のI/FをまとめてI/F75と示している。ROM72には、加工プログラムPR2を解釈して実行するための制御プログラムPR1が書き込まれている。ROM72は、データを書き換え可能な半導体メモリーでもよい。RAM73には、オペレーターにより作成された加工プログラムPR2が書き換え可能に記憶される。加工プログラムは、NCプログラムとも呼ばれる。CPU71は、RAM73をワークエリアとして使用し、ROM72に記録されている制御プログラムPR1を実行することにより、各部の動作を制御する。操作部80は、入力部81及び表示部82を備え、NC装置70のユーザーインターフェイスとして機能する。入力部81は、例えば、オペレーターから操作入力を受け付けるためのボタンやタッチパネルから構成される。表示部82は、例えば、オペレーターから操作入力を受け付けた各種設定の内容や旋盤1に関する各種情報を表示するディスプレイで構成される。オペレーターは、操作部80や外部のコンピューター(不図示)を用いて加工プログラムPR2をRAM73に記憶させることが可能である。
【0026】
正面主軸台駆動部DR1は、NC装置70からの指令に従って正面主軸台10をZ1軸方向へ移動させる。正面主軸回転駆動部DR2は、NC装置70からの指令に従って正面主軸11を主軸中心線AX1周りに回転させる。コレット駆動部DR3は、NC装置70からの指令に従って正面主軸11の把持機構(コレット12を含む。)を駆動する。くし形刃物台駆動部DR4は、NC装置70からの指令に従ってくし形刃物台50をX1軸方向及びY1軸方向へ駆動する。背面主軸台駆動部DR5は、NC装置70からの指令に従って背面主軸台20をZ2軸方向及びX2軸方向へ移動させる。背面主軸回転駆動部DR6は、NC装置70からの指令に従って背面主軸21を主軸中心線AX2周りに回転させる。コレット駆動部DR7は、NC装置70からの指令に従って背面主軸21の把持機構22(図6参照)を駆動する。
【0027】
(3)ワーク排出装置の具体例:
図6,7に例示するように、背面主軸21には、背面加工後のワークW1、すなわち、製品を背面主軸21から押し出して排出するワーク排出装置100が組み込まれている。図6は、ワーク排出装置100が設けられた背面主軸台20を模式的に例示する縦断面図である。図7は、図6に示す背面主軸台20の前側を拡大した模式的な縦断面図である。
図6,7に示すワーク排出装置100において、ワークW1を押し出す前進方向D1は左方向D83であり、前進方向D1とは反対の後退方向D2は右方向D84である。尚、ワーク排出装置100の説明において、左方向D83の側を前側と説明し、右方向D84の側を後側と説明することがある。
【0028】
図6,7に示す背面主軸台20は、背面主軸21が回転可能な状態で設置されたハウジング201を備えている。非回転体であるハウジング201と回転体である背面主軸21との間には、軸受205,206(例えばボールベアリング)が設けられている。背面主軸21は、主軸中心線AX2に沿って貫通した貫通穴21hを有している。
背面主軸21には、該背面主軸21の前端部21aにおいてワークW1を解放可能に把持する把持機構22、及び、ワーク排出装置100が組み込まれている。把持機構22は、チャックスリーブ209、押しスリーブ211、コレット213、コイルばね215、キャップ216、爪部材219、シフター221、レバー223、アクチュエータ225、等を備えている。図5に示すコレット駆動部DR7は、アクチュエータ225を中心としてコレット213を動作させる駆動部である。ワーク排出装置100は、押し棒23、エジェクタピン30、略円筒状の保持部材24、環状の後側保持部材26、コイルばね25、等を備えている。保持部材24は、後側保持部材26よりも前側にあり、前側保持部材ともいえる。コイルばね25は、押出機構の例である。
【0029】
背面主軸21の貫通穴21hには、チャックスリーブ209及び押しスリーブ211が前進方向D1及び後退方向D2へ移動可能な状態で配置されている。チャックスリーブ209の後端は、押しスリーブ211の前端に突き当たっている。チャックスリーブ209及び押しスリーブ211は、主軸中心線AX2に沿って貫通した貫通穴を有する筒形状であり、該貫通穴に押し棒23の保持部材24を配置させ押し棒23を通すことが可能である。チャックスリーブ209の貫通穴には、コレット213及びコイルばね215が配置されている。チャックスリーブ209の内側面には、コレット213の外側面のテーパ部213bに合わせたテーパ部209aが前端部において設けられ、コイルばね215の後端と係合する係合部209bが後端近傍において設けられている。背面主軸21の前端部21aには、コイルばね215に押されているコレット213を保持するキャップ216が取り付けられている。
【0030】
コレット213は、前端からテーパ部213bにかけて複数の箇所(例えば3箇所)にすりわりを有している。コレット213のテーパ部213bがチャックスリーブ209のテーパ部209aに押されると、コレット213はワークW1を把持する。チャックスリーブ209のテーパ部209aがコレット213のテーパ部213bを押す力が緩められると、コレット213はワークW1を解放する。コレット213の後端とチャックスリーブ209の係合部209bとの間に配置されたコイルばね215は、圧縮コイルばねであり、コレット213に前進方向D1への力を加え、チャックスリーブ209に後退方向D2への力を加える。
【0031】
背面主軸21の外周には、複数の箇所(例えば2箇所)に爪部材219が設けられ、これらの爪部材219よりも前側にシフター221が設けられている。各爪部材219は、略円筒状の押しスリーブ211の後端が突き当たっている係合部219a、及び、シフター221の外側面のテーパ部221aに対して滑ることが可能な状態で接している摺接部219bを備えている。各爪部材219は、主軸中心線AX2から摺接部219bまでの距離が変わるように軸部材220を中心として回動可能である。シフター221は、前進方向D1及び後退方向D2へ移動可能である。このシフター221には、軸受222を介してレバー223が連結されている。レバー223は、軸部材227を中心として回動可能である。レバー223には、軸部材224を介してアクチュエータ225が連結されている。アクチュエータ225には、電動シリンダ、エアシリンダ、油圧シリンダ、等を用いることができる。
【0032】
図5に示すNC装置70がレバー223を図6中反時計回りに回動させるようにアクチュエータ225を駆動させると、シフター221は、右方向D84へ移動し、摺接部219bが主軸中心線AX2から離れる向きに各爪部材219を回動させる。これにより、各爪部材219の係合部219aは、押しスリーブ211及びチャックスリーブ209を左方向D83へ押し、テーパ部209a,213bを介してコレット213を締め付け、コレット213にワークW1を把持させる。
一方、NC装置70がレバー223を図6中時計回りに回動させるようにアクチュエータ225を駆動させると、シフター221は、左方向D83へ移動する。すると、コイルばね215がチャックスリーブ209及び押しスリーブ211を介して各爪部材219の係合部219aを右方向D84へ押す。各爪部材219は摺接部219bが主軸中心線AX2に近付く向きに回動し、コレット213の締め付けからワークW1が解放される。
【0033】
押し棒23は、図8に例示するように前端23aにエジェクタピン30が交換可能に取り付けられ、チャックスリーブ209及び押しスリーブ211の内側において背面主軸21内に挿入され、前進方向D1及び後退方向D2へ移動可能である。押し棒23は、エジェクタピン30を取り付けるための雌ねじ部23dを前端23aに有し、さらに、主軸中心線AX2に沿った押し棒23の長手方向の途中位置において筒状の保持部材24に通すことができない太径部23cを有している。押し棒23において、太径部23cよりも前側にある挿通部位23eは、筒状の保持部材24に通すことが可能である。太径部23cよりも後側にある後側部位23fは、背面主軸21の内側に取り付けられた環状の後側保持部材26に通されている。後側部位23fの外側には、太径部23cに前進方向D1への力を加えるコイルばね25が配置されている。
【0034】
図7に示すエジェクタピン30は、エジェクタピン本体40と当て部材45との集合体31である。交換可能なエジェクタピン30の詳細は、後述する。
【0035】
チャックスリーブ209と押しスリーブ211の内側には、略円筒状の保持部材24が配置されている。保持部材24は、主軸中心線AX2を中心として押し棒23の外側に配置され、主軸中心線AX2を中心とした軸心位置に押し棒23を保持する。押し棒23の軸心位置は、図6,7に示すように、主軸中心線AX2に押し棒23の中心が合う位置である。保持部材24の後端には、コイルばね25により前進方向D1への力が加えられている押し棒23の太径部23cが引っ掛かっている。保持部材24の外側面は、主軸中心線AX2に沿った保持部材24の長手方向の途中位置(係合部24c)よりも前側においてチャックスリーブ209の貫通穴に挿入されている。保持部材24は、例えば螺合によりチャックスリーブ209に取り付けられる。図6,7に示す係合部24cは、保持部材24の外側面においてチャックスリーブ209の後端に合わせられる部分である。係合部24cよりも前側において保持部材24がチャックスリーブ209に取り付けられていることにより、コイルばね25から太径部23cを介して前進方向D1への力が加えられた保持部材24がチャックスリーブ209と押しスリーブ211の内側にとどまる。
【0036】
押し棒23の後側部位23fの外側に配置されたコイルばね25は、Z2軸方向において押し棒23の太径部23cと背面主軸21の係合部21cとの間に存在する圧縮コイルばねである。すなわち、コイルばね25の前端は太径部23cに突き当たり、コイルばね25の後端は係合部21cに突き当たっている。コイルばね25は、保持部材24を通り抜けている挿通部位23eを有する押し棒23に前進方向D1への力を加えることにより、把持機構22から解放されたワークW1をエジェクタピン30で押し出す。
【0037】
図8は、押し棒23の前端23aに取り付け可能な様々なエジェクタピン30を模式的に例示している。
取り付け可能なエジェクタピン30には、エジェクタピン本体40と当て部材45との集合体31、及び、一体型エジェクタピン32が含まれる。尚、集合体31の概念には集合体31A,31Bが含まれ、エジェクタピン本体40の概念にはエジェクタピン本体40Aが含まれ、当て部材45の概念には当て部材45A,45Bが含まれる。本具体例は、集合体31と一体型エジェクタピン32とが交換可能に押し棒23の前端23aに取り付けられるという特徴を有する。
【0038】
集合体31のエジェクタピン本体40は、筒状の保持部材24に通すことが可能であり、押し棒23の前端23aに対して取り外し可能に取り付けられる。エジェクタピン本体40は、押し棒23の前端23aにある雌ねじ部23dと螺合する雄ねじ部41を後端40bに有し、当て部材45の雄ねじ部46と螺合する雌ねじ部42を前端40aに有している。
集合体31の当て部材45は、エジェクタピン本体40の前端40aに対して取り外し可能に取り付けられる。当て部材45は、エジェクタピン本体40の前端40aにある雌ねじ部42と螺合する雄ねじ部46を後端45bに有し、ワークW1に当たる当て部47を前端45aに有している。図8に示す当て部47は、押し棒23の挿通部位23eの外径よりも大きい外径を有している。
【0039】
一体型エジェクタピン32は、後端32bから前端32aまで筒状の保持部材24に通すことが可能である。一体型エジェクタピン32は、押し棒23の前端23aにある雌ねじ部23dと螺合する雄ねじ部33を後端32bに有し、ワークW1に当たる当て部34を前端32aに有している。すなわち、一体型エジェクタピン32は、押し棒23への取付部位(雄ねじ部33)からワークW1に当たる部位(当て部34)まで保持部材24に通すことが可能である。
【0040】
押し棒23の前端23aには、図8に示す集合体31Aが取り付けられてもよい。集合体31Aは、前端40aに雄ねじ部43を有するエジェクタピン本体40A、及び、雄ねじ部43と螺合する雌ねじ部48を有する当て部材45Aを含んでいる。雄ねじ部43と雌ねじ部48とにより、当て部材45Aは、エジェクタピン本体40の前端40aに対して取り外し可能に取り付けられる。
また、押し棒23の前端23aには、図8に示す集合体31Bが取り付けられてもよい。集合体31Bは、ねじSC1の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部42を前端40aに有するエジェクタピン本体40、及び、ねじSC1の雄ねじ部を通すねじ挿通穴49を有する当て部材45Bを含んでいる。当て部材45Bは、ねじSC1によりエジェクタピン本体40の前端40aに対して取り外し可能に取り付けられる。
【0041】
ところで、一体型エジェクタピン32の当て部34は、押し棒23の挿通部位23eの外径よりも大きい外径にすることが困難である。図18を参照して、その理由を説明する。
【0042】
図18は、略円筒状の保持部材24の内径Dh、一体型エジェクタピン32の外径De、ワークW1の外径Dw、及び、ワーク穴W1hの内径dwを模式的に例示している。ワーク穴W1hは、ワークW1の少なくとも後端に形成された穴であり、図18に示す例では主軸中心線AX2に沿って貫通した貫通穴である。図18の下部は、一体型エジェクタピン32が取り付けられた押し棒23を保持部材24に通す様子を模式的に例示している。
図18に示すようにワークW1にワーク穴W1hがある場合、ワークW1を背面主軸21から押し出すためには、一体型エジェクタピン32の当て部34の外径Deをワーク穴W1hの内径dwよりも大きくする必要がある。ワーク穴W1hを有するワークW1を押し出すために当て部34の外径Deを保持部材24の内径Dhよりも大きくする必要がある場合、一体型エジェクタピン32が取り付けられた押し棒23が存在する状態で、保持部材24を取り付けたチャックスリーブ209を背面主軸21の前端から背面主軸21に挿入することができない。一体型エジェクタピン32を使用する場合において、当て部34の外径Deを極力大きくするためには、押し棒23の挿通部位23eを極力太く設計し、保持部材24の内径Dhを極力大きく設計する必要がある。
【0043】
ここで、図19に示す比較例のように、保持部材24の内径Dhよりも大きい外径Deの当て部934を前端932aに有する一体型エジェクタピン932を押し棒23の前端23aに取り付けることを想定する。この場合、図19に示すように、背面主軸21からキャップ216とコレット213だけを外し、押し棒23がチャックスリーブ209及び保持部材24に挿入された状態で、押し棒23の前端23aに一体型エジェクタピン932を取り付けてから、背面主軸21にコレット213とキャップ216を取り付ける必要がある。ここで、図19に示すように、押し棒23は、太径部23cが保持部材24の後端に突き当たる位置までしか前進することができない。押し棒23が最も前進していても、押し棒23の前端23aはチャックスリーブ209内にある。このため、作業者は、チャックスリーブ209内で押し棒23の前端23aに一体型エジェクタピン932を取り付ける作業を行う必要がある。従って、一体型エジェクタピン932を取り付ける作業性が良くない。
【0044】
本具体例では、図9に例示するように、保持部材24の内径Dhよりも小さい外径のエジェクタピン本体40の前端40aに、保持部材24の内径Dhよりも大きい外径Dpの当て部材45が取り付けられる。エジェクタピン本体40と当て部材45とを含む集合体31が押し棒23の前端23aに取り付けられているので、ワークW1の形状に応じたエジェクタピン30を押し棒23の前端23aに取り付ける作業性が向上する。図9は、略円筒状の保持部材24の内径Dh、当て部材45の外径Dp、ワークW1の外径Dw、及び、ワーク穴W1hの内径dwを模式的に例示している。
図9に示すようにワークW1にワーク穴W1hがある場合、ワークW1を背面主軸21から押し出すためには、当て部材45の外径Dpをワーク穴W1hの内径dwよりも大きくする必要がある。ワーク穴W1hを有するワークW1を押し出すために当て部材45の外径Dpを保持部材24の内径Dhよりも大きくする必要がある場合、当て部材45を筒状の保持部材24に通すことができない。本具体例のワーク排出装置100は、図10に例示するように、背面主軸21からキャップ216とコレット213だけを外した状態でエジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を取り付けることができる。
【0045】
図10に示す例では、背面主軸21に挿入されていない状態の押し棒23の前端23aにエジェクタピン本体40を取り付け、背面主軸21にエジェクタピン本体40及び押し棒23を背面主軸21の前端から挿入してから、保持部材24を取り付けたチャックスリーブ209を背面主軸21の前端から背面主軸21に挿入することができる。太径部23cが保持部材24の後端に突き当たる位置まで押し棒23が最も前進すると、エジェクタピン本体40の前端40aがチャックスリーブ209の前端よりも前側に出る。これにより、押し棒23が前進している状態でエジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を容易に取り付けることができる。筒状の保持部材24に当て部材45を通すことができなくても、エジェクタピン本体40及び押し棒23を保持部材24に通してからエジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を取り付けることにより、保持部材24に通すことができない当て部材45を保持部材24の前側に配置することができる。従って、本具体例は、ワークW1の形状に応じたエジェクタピン30を押し棒23の前端23aに取り付ける作業性を向上させることができる。
【0046】
また、ワークW1が細い場合、ワークW1を把持するコレット213の内径を小さくする必要があるので、エジェクタピン30を一体型エジェクタピン32にする方が設計し易い。筒状の保持部材24に一体型エジェクタピン32を通すことができる場合、背面主軸21に挿入されていない状態の押し棒23の前端23aに一体型エジェクタピン32を取り付け、背面主軸21に一体型エジェクタピン32及び押し棒23を主軸(21)の前端から挿入してから、保持部材24を取り付けたチャックスリーブ209を背面主軸21の前端から背面主軸21に挿入することができる。この場合、エジェクタピン本体40の前端40aに当て部材45を取り付ける作業が不要となる。エジェクタピン本体40と当て部材45を含む集合体31に加えて一体型エジェクタピン32も押し棒23の前端23aに取り付けることができるので、本具体例は、多様なワークW1に対して柔軟な対応が可能であり、経済性が良好である。
【0047】
以上より、集合体31を取り付け可能な押し棒23は、エジェクタピン30を取り付けるための取付部を前端23aに形成することができる太さがあればよい。本具体例は、押し棒23の外径よりも大きい内径dwを有するワーク穴W1hを有するワークW1を当て部材45で押し出して排出することが可能となる。回転体である押し棒23を従来よりも細く設計することができるので、軽量化により回転体の振動を低減させることができ、さらに、押し棒23の製造コストを低減させることができる。また、エジェクタピン30の前端が摩耗しても当て部材45だけの交換で済むので、ランニングコストを低減させることができる。さらに、ワーク穴W1hを有するワークW1だけでなく様々な異径部品にも柔軟に対応することができる。
【0048】
尚、エジェクタピン本体40に対する当て部材45の取り付け構造は、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合に限定されない。また、エジェクタピン本体40は2以上に分割されていてもよく、当て部材45も2以上に分割されていてもよい。さらに、ワーク排出装置100は、背面主軸21に組み込まれることに限定されず、正面主軸11に組み込まれてもよい。
【0049】
(4)ドア装置の具体例:
本具体例の旋盤1は、図1~3に示すドア装置300に特徴を有している。尚、ドア装置300の説明において、手前方向D85を前方向、すなわち、手前側を前側として説明し、奥方向D86を後方向すなわち、奥側を後側として説明する。
図1~3に示す外装2は、略水平な天井部2a、及び、該天井部2aの前縁から下がっている前面部2bを有している。外装2は、天井部2aから前面部2bにかけて開口2opを有している。ドア装置300に含まれるドア3は、外装2に取り付けられ、図1に示すように開口2opを閉塞する閉位置と、図2,3に示すように開口2opを開放する開位置とに変化可能である。ドア装置300に含まれるドアレール4は、開口2opの左右両側に設けられ、図3に示すように、天井部2aに概ね沿った上側レール部340、及び、前面部2bに概ね沿った前側レール部350を含んでいる。各上側レール部340は、前側の水平部341と後側の傾斜部342を含んでいる。水平部341は前側レール部350との接続部から奥方向D86へ延び、傾斜部342は水平部341の後端から上側レール部340の後端まで奥方向D86よりも若干下向きに延びている。各前側レール部350は、上側の急傾斜部351と下側の鉛直部352を含んでいる。急傾斜部351は上側ドア310との接続部から下方向D82よりも若干前向きに延び、鉛直部352は急傾斜部351の下端から前側レール部350の下端まで下方向D82へ延びている。
【0050】
図1,3に示すように、ドア3は、閉位置において天井部2aに合わせられる上側ドア310、閉位置において前面部2bに合わせられる下側ドア320、及び、ドア3を開く操作を補助するダンパ330を備えている。
【0051】
上側ドア310は、開口2opのうち天井部2aに対応する部分に合わせられた略矩形板状であり、後縁部に設けられた回動部311において天井部2aに対して回動可能に繋がっている。回動部311の回転軸は左右に向いているので、上側ドア310は、回動部311を中心として前縁部が上下するように回転可能である。
前側ドア320は、開口2opのうち前面部2bに対応する部分に合わせられた略矩形板状であり、上縁部に設けられた回動部321において上側ドア310の前縁部に対して回動可能に繋がっている。前側ドア320は、下縁部において左右外側へ突出した一対のスライダ324を備えている。各スライダ324は、ドアレール4内に挿入され、ドアレール4に沿ってスライド可能である。回動部321の回転軸は左右に向いており、一対のスライダ324は左右に向いた回転軸として機能するので、ドア3は、図3に示すように回動部321で折り畳み可能である。前側ドア320は、さらに、閉位置のドア3から加工室C1を見るための透明な窓322、及び、ドア3を開閉する操作を行うための把手323を有している。
【0052】
ダンパ330は、上側ドア310の回動部311から若干前側且つ下側の固定位置において回動可能な基端部331、及び、上側ドア310において回動部311から前縁部までの途中位置の部分に対して回動可能に繋がっている先端部332を有している。ドア3が閉位置から開位置に切り替わるとダンパ330が伸び、ドア3が開位置から閉位置に切り替わるとダンパ330が縮む。ダンパ330は、上側ドア310に対してダンパ330が伸びる向きに力を加えるので、全体としてドア3が開く方向に力を加える。
【0053】
比較例として上側レール部340の全体が水平である場合、前側ドア320のスライダ324が上側レール部340において図3に示す傾斜部342に対応する途中位置にあると、ドア3の自重によりスライダ324が上側レール部340内において手前方向D85へ移動してしまう。これにより、ドア3が開ききらない半開きの状態となり、加工室C1におけるガイドブッシュ15やくし形刃物台50等といった加工部のメンテナンスの作業性が低下する。ドア3を開位置に保持する堰止め部品を追加することは、ドア装置300のコストアップに繋がる。
【0054】
図1~3に示すドア装置300の上側レール部340は、水平部341の後端から奥方向D86よりも若干下向きに延びている傾斜部342を含んでいる。前側ドア320のスライダ324が傾斜部342の途中位置にあると、スライダ324が傾斜部342に誘導されて後側へ移動する。これにより、図3に示すようにドア3が完全に開いた開位置となり、加工室C1におけるガイドブッシュ15やくし形刃物台50等といった加工部のメンテナンスの作業性が向上する。
【0055】
(5)スリーブホルダと刃物台テーブルの具体例:
図11は、刃物台テーブル51及びスリーブホルダ60を工具T1等が取り付けられていない状態で模式的に示す斜視図である。図12は、参考例のスリーブホルダ860と比較した本具体例のスリーブホルダ60のサイズを模式的に例示する図である。図13は、参考例のスリーブホルダ860と比較したスリーブホルダ60の内部を模式的に例示する縦断面図である。図14は、図13のA1-A1の位置におけるスリーブホルダ60の断面図である。
【0056】
図11に示す刃物台テーブル51は、上部51aに上方向D81へ延出した延出部51eを有している。延出部51eの上端には、図5に示すくし形刃物台駆動部DR4に含まれるボールねじを取り付けるための取付部51fが設けられている。前述のボールねじは、刃物台テーブル51をY1軸方向へ移動させるための構成要素である。手前側鉛直部51c及び奥側鉛直部51dにおいて正面主軸台10に対向する面、すなわち、スリーブホルダ60が取り付けられた面51zとは反対側の面には、それぞれ、くし形刃物台駆動部DR4に含まれるリニアガイドを取り付けるために凹んだガイド取付部51gが形成されている。前述のリニアガイドは、刃物台テーブル51をY1軸方向へ移動させるための構成要素である。従って、各ガイド取付部51gは、Y1軸方向に沿って周りよりも薄くされた部位であり、上部51aよりも薄い。
刃物台テーブル51は、手前側鉛直部51cと奥側鉛直部51dとの間隔よりも上部51aと下部51bとの間隔の方が広い開口OP1を有している。
【0057】
図11~14に示すスリーブホルダ60は、金属製であり、刃物台テーブル51の上部51aに取り付けられる取付部61、複数の工具ユニットU1を保持する保持部62、及び、取付部61から保持部62に繋がる連絡部63を備えている。取付部61は、刃物台テーブル51の上部51aにあるねじ穴(不図示)と螺合するねじ(不図示)を通すねじ挿通穴61aを複数有している。図11,12には、連絡部63を囲むように4箇所のねじ挿通穴61aを有する取付部61が示されている。保持部62は、左方向D83及び右方向D84へ突出するように工具ユニットU1が挿入される保持穴62aを複数有している。図11,12には、5箇所の保持穴62aを有する保持部62が示されている。図13に示すようにZ1軸方向への力F1が工具ユニットU1に加わると、連絡部63に撓ませる力が加わることになる。連絡部63は、図14に示すように横断面八角形の外形を有している。図13に示すように、スリーブホルダ60は、取付部61と連絡部63とに跨がっている中空部64を有している。取付部61は、刃物台テーブル51に取り付けられる面に中空部64に繋がっている開口61opを有している。図14に示すように、連絡部63における中空部64の横断面の形状は、連絡部63の外形に沿った八角形である。
【0058】
便宜上、連絡部63の外面を横断面八角形の辺に合わせた面63a~63hに分けることにする。ここで、面63aは上側の面であり、面63eは下側の面であり、面63gは手前側の面であり、面63cは奥側の面であり、面63bは面63aと面63cとの間にあり、面63dは面63cと面63eとの間にあり、面63fは面63eと面63gとの間にあり、面63hは面63gと面63aとの間にある。
【0059】
図12,13に示す参考例のスリーブホルダ860は、金属製であり、刃物台テーブル51の奥側鉛直部51dにおいて背面主軸台20の方を向いた面51zに取り付けられる。スリーブホルダ60と比較するため、図12,13ではスリーブホルダ860の向きがスリーブホルダ60に合わせて変えられている。スリーブホルダ860は、複数のねじ挿通穴861aを有する取付部861、複数の保持穴862aを有する保持部862、及び、取付部861から保持部862に繋がる連絡部863を備えている。取付部861及び連絡部863は、ほぼ中実である。
ここで、工具ユニットU1の中心軸方向から見たときに保持部62に最も近いねじ挿通穴61aから最も遠い保持穴62aの中心までの距離をL1とし、工具ユニットU1の中心軸方向から見たときに保持部862に最も近いねじ挿通穴861aから最も遠い保持穴862aの中心までの距離をL9とする。刃物台テーブル51の開口OP1はX1軸方向よりもY1軸方向の方が広いため、本具体例のスリーブホルダ60における距離L1は、参考例のスリーブホルダ860における距離L9よりも長い。
【0060】
スリーブホルダ60を刃物台テーブル51の上部51aに取り付ける必要がある場合、以上の理由により、L1>L9とする必要がある。また、L1>L9とする必要があるのは、不図示のクーラント吐出ユニットとの干渉を回避するためでもある。取付部61及び連絡部63をほぼ中実にすると、スリーブホルダ60が参考例のスリーブホルダ860よりも重くなる。参考例のスリーブホルダ860と比較したとき、スリーブホルダ60の固有振動数が低くなって加工時に好ましくない振動が生じ易くなる。また、くし形刃物台50の加減速時にくし形刃物台駆動部DR4の軸送りモーターにかかる負荷が増大する。
【0061】
そこで、本具体例のスリーブホルダ60は、図13に示すように取付部61及び連絡部63に中空部64を形成することにより、参考例のスリーブホルダ860と同程度の重量にされている。これにより、スリーブホルダ60の固有振動数が高くなって加工時に好ましくない振動が生じ難くなる。また、くし形刃物台50の加減速時にくし形刃物台駆動部DR4の軸送りモーターにかかる負荷が軽減される。
【0062】
また、スリーブホルダ60の軽量化による剛性の低下を抑制するため、図12に示すように本具体例の取付部61の幅w1が参考例の取付部861の幅w9よりも広くされている。ここで、幅w1は、工具ユニットU1の中心軸方向から見たときに取付部61から保持部62に向かう方向と直交する方向における取付部61の長さである。幅w9は、工具ユニットU1の中心軸方向から見たときに取付部861から保持部862に向かう方向と直交する方向における取付部861の長さである。尚、工具ユニットU1の中心軸方向から見たときに取付部61から保持部62に向かう方向における取付部61の長さは、ほぼ同じである。w1>w9であることにより、工具ユニットU1の中心軸方向から見たときに本具体例の取付部61は参考例の取付部861よりも面積が大きくなっている。
【0063】
さらに、刃物台テーブル51において、本具体例のスリーブホルダ60が取り付けられる上部51aは、ガイド取付部51gを有する奥側鉛直部51dよりも厚い。これにより、本具体例のスリーブホルダ60が上部51aに取り付けられた刃物台テーブル51は、参考例のスリーブホルダ860が奥側鉛直部51dに取り付けられた刃物台テーブル51よりも剛性が高くなっている。
【0064】
尚、刃物台テーブル51の上部51aに取り付けられたスリーブホルダ60の連絡部63の外形が横断面四角形である場合、連絡部63によりワークW1(図4参照)にクーラントを供給し難くなることがある。本具体例の連絡部63は、外形が横断面八角形であり、特に、下側を向いた斜めの面63d,63fを有している。このため、ワークW1にクーラントを供給する時に連絡部63が邪魔とならず、ワークW1にクーラントを供給し易い。
【0065】
以上説明したように、スリーブホルダ60が上部51aに取り付けられた刃物台テーブル51は、重量の増加が抑制され、良好な剛性を有する。なお上記スリーブホルダ60は金属により構成したが、スリーブホルダにカーボン素材やセラミックなどより軽量で剛性の高い素材を用いてもよい。
【0066】
(6)加工室のカバー構造の具体例:
旋盤1は、図1,2に示す加工室C1において、クーラント供給部5からクーラントをワークW1に供給しながらワークW1を刃物台、例えば、くし形刃物台50及び背面加工用刃物台59で加工する。一方、主軸台室C2には、正面主軸台駆動部DR1に含まれる軸送りモーターやくし形刃物台駆動部DR4に含まれる軸送りモーターが配置されている。クーラントが加工室C1から主軸台室C2に侵入することを抑制するため、主軸台室C2に刃物台カバー等が配置され、加工室C1に外装カバー等が配置される。
【0067】
図15は、参考例のカバー装置700と比較した本具体例のカバー構造400を模式的に例示する図である。図16は、外装部材410から外装カバー420が取り外されている状態の旋盤1を模式的に例示する斜視図である。図17は、外装部材410に外装カバー420が取り付けられた状態の旋盤1を模式的に例示する斜視図である。
【0068】
図15~17に示す本具体例のカバー構造400は、図1,2に示す外装2の一部を構成する外装部材410、加工室C1に配置された外装カバー420、及び、主軸台室C2に配置された刃物台カバー430を含んでいる。刃物台カバー430は、加工室C1と主軸台室C2との境界部において主軸台室C2側に配置されている。外装カバー420は、外装部材410にねじSC2で取り付けられ、加工室C1と主軸台室C2との境界部において加工室C1側に配置されている。外装部材410には、ねじSC2を通すためのねじ挿通穴としての長穴411を有している。ねじSC2と螺合する雌ねじ部は、外装カバー420自体にあってもよいし、ナットにあってもよい。
【0069】
図15の下部に示す参考例のカバー装置700は、加工室C1に配置されたカバー部720が一体化された外装部材710、及び、主軸台室C2に配置された刃物台カバー730を含んでいる。外装部材710は構成部品が多いため、寸法誤差が大きくなる。そのため、Z1軸方向におけるカバー部720と刃物台カバー730との間のCL9を大きくせざるを得ない。加工室C1から主軸台室C2にクーラント及びワークW1の切粉が侵入することを抑制するためにカバー部720と刃物台カバー730との重なり代740を大きくしているが、隙間CL9からクーラント及びワークW1の切粉が主軸台室C2に侵入してしまう。
【0070】
本具体例のカバー構造400は、Z1軸方向における外装カバー420と刃物台カバー430との間の隙間CL1を参考例の隙間CL9よりも少なくする現合調整手段を備えている。図15,17に示すように、外装部材410は、ねじSC2を通すためのねじ挿通穴としてZ1軸方向において長い長穴411を現合調整手段として有している。これにより、外装部材410に対する外装カバー420の取り付け位置をZ1軸方向において調整することができ、Z1軸方向における外装カバー420と刃物台カバー430との間の隙間CL1を参考例の隙間CL9よりも少なくすることができる。従って、本具体例のカバー構造400は、隙間CL1からクーラント及びワークW1の切粉が主軸台室C2に侵入することを抑制することができる。なお、ねじSC2を通すためのねじ挿通穴は、長穴411以外にも、楕円形の穴やねじよりやや広めの丸穴等、ねじSC2の固定位置が調整可能な穴であればよい。
【0071】
(7)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、旋盤は、主軸移動型旋盤に限定されず、正面主軸台10が移動しない主軸固定型旋盤でもよいし、背面主軸台20がZ2軸方向へ移動せずに正面主軸台10がZ1軸方向へ移動する旋盤でもよい。さらに、背面主軸台を備えていない旋盤にも、本技術を適用可能である。
旋盤における駆動対象の移動方向は、上述した具体例に限定されない。
【0072】
(8)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、ワークの形状に応じたエジェクタピンを押し棒の前端に取り付ける作業性を向上させることが可能な工作機械等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1…旋盤(工作機械の例)、2…外装、3…ドア、4…ドアレール、
10…正面主軸台、11…正面主軸、12…コレット、15…ガイドブッシュ、
20…背面主軸台、
21…背面主軸(主軸の例)、21a…前端部、21h…貫通穴、
22…把持機構、
23…押し棒、23a…前端、23c…太径部、23d…雌ねじ部、23e…挿通部位、
24…保持部材、24c…係合部、
25…コイルばね(押出機構の例)、
26…後側保持部材、
30…エジェクタピン、31,31A,31B…集合体、
32…一体型エジェクタピン、32a…前端、32b…後端、
33…雄ねじ部(取付部位の例)、34…当て部(ワークに当たる部位の例)、
40,40A…エジェクタピン本体、40a…前端、40b…後端、
41…雄ねじ部、42…雌ねじ部、43…雄ねじ部、
45,45A,45B…当て部材、45a…前端、45b…後端、46…雄ねじ部、
47…当て部、48…雌ねじ部、49…ねじ挿通穴、
50…くし形刃物台、
51…刃物台テーブル、51a…上部、51c…手前側鉛直部、51d…奥側鉛直部、
60…スリーブホルダ、61…取付部、62…保持部、63…連絡部、64…中空部、
100…ワーク排出装置、
209…チャックスリーブ、211…押しスリーブ、213…コレット、
215…コイルばね、216…キャップ、219…爪部材、221…シフター、
223…レバー、225…アクチュエータ、
300…ドア装置、310…上側ドア、320…前側ドア、330…ダンパ、
340…上側レール部、341…水平部、342…傾斜部、350…前側レール部、
400…カバー構造、
410…外装部材、411…長穴、420…外装カバー、430…刃物台カバー、
AX1,AX2…主軸中心線、
C1…加工室、C2…主軸台室、
D1…前進方向、D2…後退方向、
D81…上方向、D82…下方向、D83…左方向、D84…右方向、
D85…手前方向、D86…奥方向、
W1…ワーク、W1h…ワーク穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図19