(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160136
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20221012BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20221012BHJP
H01F 17/04 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
H01F27/29 P
H01F17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064696
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】田久保 悠一
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利典
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA12
5E070CB13
5E070CB17
5E070CB18
5E070CB20
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる積層コイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1は、素体2と、コイル5と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、第一接続導体6と、第二接続導体7と、を備える。コイル5は、コイル5の一端を有すると共に主面2c側に配置されている第一コイル部8と、コイル5の他端を有すると共に主面2d側に配置されている第二コイル部9と、を含む。第一接続導体6と第二コイル部9との間の距離L2は、第一接続導体6と第一コイル部8との間の距離L1よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されて形成されていると共に、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有し、一方の前記主面が実装面である素体と、
前記素体内に配置されており、一対の前記主面の対向方向に沿ってコイル軸が延在しているコイルと、
前記コイルに接続されていると共に、前記実装面に配置されている第一端子電極及び第二端子電極と、
前記素体内において前記対向方向から見て前記コイルの外側に配置され、前記対向方向に延在していると共に、他方の前記主面側に位置している前記コイルの一端と前記第一端子電極とを接続している第一接続導体と、
一方の前記主面側に位置している前記コイルの他端と前記第二端子電極とを接続している第二接続導体と、を備え、
前記コイルは、当該コイルの前記一端を有すると共に他方の前記主面側に配置されている第一コイル部と、当該コイルの前記他端を有すると共に一方の前記主面側に配置されている第二コイル部と、を含み、
前記第一接続導体と前記第二コイル部との間の最短距離は、前記第一接続導体と前記第一コイル部との間の最短距離よりも大きい、積層コイル部品。
【請求項2】
前記第一コイル部と前記第二コイル部とは、径が異なっており、
前記対向方向から見て、前記第一コイル部と第二コイル部の外縁の一部が重なっている、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記対向方向から見て、前記第一端子電極と前記第二コイル部とが重なっていない、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記第一接続導体と前記コイルとの間の距離は、使用時における前記第一接続導体と前記コイルとの間の電位差に基づいて設定されており、
前記電位差が大きい位置では、当該位置よりも前記電位差が小さい位置に比べて、前記距離が長くなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品として、たとえば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の積層コイル部品は、複数のユニットが積層された積層体を備え、ユニットは、複数の基材層が積層され、かつ、第一主面と第二主面を有し、ユニットは、第一主面に、基材層の少なくとも1層以上の深さの溝が形成され、少なくとも1つのユニットは、溝の底部に、第二主面に至る孔が形成され、溝および孔に、それぞれ、導電体が充填され、複数のユニットが積層されることによって、隣接する一方のユニットの孔に充填された導電体と、隣接する他方のユニットの溝に充填された導電体とが接続され、積層体の内部に、導電体が、ユニットの積層方向を軸として螺旋状に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層コイル部品では、特性の向上を図るために、コイルの径を大きくすることが望まれる。しかし、接続導体が素体内に配置されている構成では、コイルの径を大きくすると、接続導体とコイルとの間の距離が短くなる。これにより、コイルと接続導体とにより形成される浮遊容量(寄生容量)が大きくなり得る。コイルと接続導体との間に発生する浮遊容量が大きくなると、コイルの特性において、自己共振周波数(SRF:Self-Resonant Frequency)が低くなると共にQ(Quality factor)値も低くなる。
【0005】
本発明の一側面は、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る積層コイル部品は、複数の絶縁体層が積層されて形成されていると共に、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有し、一方の主面が実装面である素体と、素体内に配置されており、一対の主面の対向方向に沿ってコイル軸が延在しているコイルと、コイルに接続されていると共に、実装面に配置されている第一端子電極及び第二端子電極と、素体内において対向方向から見てコイルの外側に配置され、対向方向に延在していると共に、他方の主面側に位置しているコイルの一端と第一端子電極とを接続している第一接続導体と、一方の主面側に位置しているコイルの他端と第二端子電極とを接続している第二接続導体と、を備え、コイルは、当該コイルの一端を有すると共に他方の主面側に配置されている第一コイル部と、当該コイルの他端を有すると共に一方の主面側に配置されている第二コイル部と、を含み、第一接続導体と第二コイル部との間の最短距離は、第一接続導体と第一コイル部との間の最短距離よりも大きい。
【0007】
積層コイル部品では、第一端子電極と第二端子電極との電位差が最大となる。電位差が大きい導体同士が対向すると、浮遊容量が形成される。積層コイル部品では、第一端子電極に接続されている第一接続導体は、上記対向方向に沿って延在している。この構成では、第一接続導体とコイルとの電位差によって、第一接続導体とコイルとの間に浮遊容量が形成される。特に、第二端子電極側に接続されるコイルと第一接続導体との間には、浮遊容量が形成され易い。そこで、積層コイル部品では、第一接続導体と第二コイル部との間の最短距離を、第一接続導体と第一コイル部との間の最短距離よりも大きくしている。これにより、積層コイル部品では、第一接続導体との電位差が大きい第二コイル部が、第一コイル部よりも第一接続導体から離れて配置される。そのため、積層コイル部品では、第一接続導体と第二コイル部との間に形成される浮遊容量を低減することができる。また、積層コイル部品では、第一コイル部の径は大きくすることができる。そのため、コイルのインダクタンスを大きくすることができる。以上のように、積層コイル部品では、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる。
【0008】
一実施形態においては、第一コイル部と第二コイル部とは、径が異なっており、対向方向から見て、第一コイル部と第二コイル部の外縁の一部が重なっていてもよい。この構成では、第一コイル部と第二コイル部との外縁の一部を重ねることで、第一接続導体と第二コイルとの間の距離を確保しつつ、第二コイル部の径を大きくすることができる。
【0009】
一実施形態においては、対向方向から見て、第一端子電極と第二コイル部とが重なっていなくてもよい。この構成では、第一端子電極と第二コイル部との間に浮遊容量が形成されることを抑制できる。
【0010】
一実施形態においては、第一接続導体とコイルとの間の距離は、使用時における第一接続導体とコイルとの間の電位差に基づいて設定されており、電位差が大きい位置では、当該位置よりも電位差が小さい位置に比べて、距離が長くなっていてもよい。この構成では、電位差に応じて距離が設定されるため、浮遊容量の低減を図れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第二実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、第三実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図7に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、第四実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図14】
図14は、第五実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
[第一実施形態]
図1及び
図2を参照して、第一実施形態に係る積層コイル部品を説明する。
図1は、第一実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図2は、
図1に示す積層コイル部品の側面図である。
図1及び
図2に示されるように、第一実施形態に係る積層コイル部品1は、素体2と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、コイル5と、第一接続導体6及び第二接続導体7と、を備えている。
図1及び
図2では、説明の便宜上、素体2を破線で示している。
【0015】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、外面として、一対の端面2a,2bと、一対の主面2c,2dと、一対の側面2e,2fと、を有している。端面2a,2bは、互いに対向している。主面2c,2dは、互いに対向している。側面2e,2fは、互いに対向している。以下では、主面2c,2dの対向方向を第一方向D1、端面2a,2bの対向方向を第二方向D2、及び、側面2e,2fの対向方向を第三方向D3とする。第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は互いに略直交している。
【0016】
端面2a,2bは、主面2c,2dを連結するように第一方向D1に延在している。端面2a,2bは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。主面2c,2dは、端面2a,2bを連結するように第二方向D2に延在している。主面2c,2dは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。側面2e,2fは、主面2c,2dを連結するように第一方向D1に延在している。側面2e,2fは、端面2a,2bを連結するように第二方向D2にも延在している。
【0017】
主面2d(一方の主面)は、実装面であり、たとえば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基材、又は積層電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面である。端面2a,2bは、実装面(すなわち主面2d)から連続する面である。
【0018】
素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第一方向D1における長さ及び素体2の第三方向D3における長さよりも長い。素体2の第一方向D1における長さは、素体2の第三方向D3における長さよりも長い。すなわち、本実施形態では、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fは、長方形状を呈している。素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第一方向D1における長さは、素体2の第三方向D3における長さと同等であってもよいし、これらの長さよりも短くてもよい。
【0019】
なお、本実施形態で「同等」とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0020】
素体2は、複数の素体層(絶縁体層)10a~10k(
図3参照)が第一方向D1において積層されてなる。つまり、素体2の積層方向は、第一方向D1である。具体的な積層構成については後述する。実際の素体2では、複数の素体層10a~10kは、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。素体層10a~10kは、たとえば磁性材料(Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料等)により構成されている。素体層10a~10kを構成する磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。素体層10a~10kは、非磁性材料(ガラスセラミック材料、誘電体材料等)から構成されていてもよい。
【0021】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、素体2に設けられている。第一端子電極3は、第一端子電極層18k(
図3参照)によって構成されている。第二端子電極4は、第二端子電極層19k(
図3参照)によって構成されている。第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、素体2の主面2dに配置されている。第一端子電極3と第二端子電極4とは、第二方向D2において互いに離間して素体2に設けられている。具体的には、第一端子電極3は、素体2の端面2a側に配置されている。第二端子電極4は、素体2の端面2b側に配置されている。
【0022】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、長方形状(矩形状)を呈している。第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、長手方向が第三方向D3に沿い、短手方向が第二方向D2に沿うように配置されている。
図2に示されるように、第一端子電極3及び第二端子電極4は、主面2dよりも突出している。すなわち、本実施形態では、第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれの表面は、主面2dと面一ではない。
【0023】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれには、電解めっき又は無電解めっきが施されることにより、たとえばNi、Sn、Auなどを含むめっき層(不図示)が設けられてもよい。めっき層は、たとえばNiを含み第一端子電極3及び第二端子電極4を覆うNiめっき膜と、Auを含み、Niめっき膜を覆うAuめっき膜と、を有していてもよい。
【0024】
コイル5は、素体2内に配置されている。コイル5は、複数のコイル導体層12b~12h(
図3参照)によって構成されている。複数のコイル導体層12b~12hは、互いに接続されて、素体2内でコイル5を構成している。コイル5のコイル軸は、第一方向D1に沿って設けられている。コイル導体層12b~12hは、第一方向D1から見て、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。複数のコイル導体層12b~12hは、導電材料(たとえば、Ag又はPd)により構成されている。コイル導体層12b~12hは、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0025】
コイル5は、第一コイル部8と、第二コイル部9と、を含んでいる。第一コイル部8は、複数のコイル導体層12b~12dによって構成されている。第一コイル部8は、素体2の主面2c側に配置されている。第一コイル部8は、第一接続導体6に接続されるコイル5の一端を有する。第一コイル部8は、第一接続導体6に接続されている。第二コイル部9は、複数のコイル導体層12e~12hによって構成されている。第二コイル部9は、素体2の主面2d側に配置されている。第二コイル部9は、第二接続導体7に接続されるコイル5の他端を有する。第二コイル部9は、第二接続導体7に接続されている。
【0026】
第一接続導体6は、素体2内に配置されている。第一接続導体6は、第一端子電極3とコイル5とを接続している。第一接続導体6は、スルーホール導体である。第一接続導体6は、第一方向D1に延在し、第一端子電極3とコイル5の一端とに接続されている。具体的には、第一接続導体6の第一方向D1における主面2c(他方の主面)側の端部は、コイル5において主面2c側に位置する一端に接続されている。第一接続導体6は、複数の第一接続導体層14c~14j(
図3参照)によって構成されている。第一接続導体6は、第一方向D1から見て、コイル5の外側に配置されている。具体的には、第一接続導体6は、第一方向D1から見て、角部に配置されている。より具体的には、第一接続導体6は、端面2aと側面2eとが成す角部に配置されている。第一接続導体6は、延在方向(第一方向D1)に直交する断面(第二方向D2及び第三方向D3に沿った断面)が円形状を呈している。すなわち、第一接続導体6は、円柱状を呈している。円形状には、たとえば、真円、楕円などが含まれる。
【0027】
第二接続導体7は、素体2内に配置されている。第二接続導体7は、第二端子電極4とコイル5とを接続している。第二接続導体7は、スルーホール導体である。第二接続導体7は、第一方向D1に延在し、第二端子電極4とコイル5の他端とに接続されている。具体的には、第二接続導体7の第一方向D1における主面2c側の端部は、コイル5において主面2d側に位置する他端に接続されている。第二接続導体7は、複数の第二接続導体層16i,16j(
図3参照)によって構成されている。第二接続導体7は、第一方向D1から見て、角部に配置されている。より具体的には、第二接続導体7は、端面2bと側面2fとが成す角部に配置されている。すなわち、第二接続導体7は、第一接続導体6と対角に配置されている。第二接続導体7は、延在方向(第一方向D1)に直交する断面(第二方向D2及び第三方向D3に沿った断面)が円形状を呈している。すなわち、第二接続導体7は、円柱状を呈している。
【0028】
図3は、
図1に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
図3に示されるように、積層コイル部品1は、複数の層La,Lb,Lc,Ld,Le,Lf,Lg,Lh,Li,Lj,Lkを備えている。積層コイル部品1は、たとえば、主面2c側から順に、層La~Lkが積層されることにより構成されている。
【0029】
層Laは、素体層10aにより構成されている。
【0030】
層Lbは、素体層10bと、コイル導体層12bと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10bには、コイル導体層12bに対応する形状を有し、コイル導体層12bが嵌め込まれる欠損部Rbが設けられている。素体層10bと、コイル導体層12bとは、互いに相補的な関係を有している。
【0031】
層Lcは、素体層10cと、コイル導体層12cと、第一接続導体層14cと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10cには、コイル導体層12c及び第一接続導体層14cに対応する形状を有し、コイル導体層12c及び第一接続導体層14cが嵌め込まれる欠損部Rcが設けられている。素体層10cと、コイル導体層12c及び第一接続導体層14cの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0032】
層Ldは、素体層10dと、コイル導体層12dと、第一接続導体層14dと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10dには、コイル導体層12d及び第一接続導体層14dに対応する形状を有し、コイル導体層12d及び第一接続導体層14dが嵌め込まれる欠損部Rdが設けられている。素体層10dと、コイル導体層12d及び第一接続導体層14dの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0033】
層Leは、素体層10eと、コイル導体層12eと、第一接続導体層14eと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10eには、コイル導体層12e及び第一接続導体層14eに対応する形状を有し、コイル導体層12e及び第一接続導体層14eが嵌め込まれる欠損部Reが設けられている。素体層10eと、コイル導体層12e及び第一接続導体層14eの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0034】
層Lfは、素体層10fと、コイル導体層12fと、第一接続導体層14fと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10fには、コイル導体層12f及び第一接続導体層14fに対応する形状を有し、コイル導体層12f及び第一接続導体層14fが嵌め込まれる欠損部Rfが設けられている。素体層10fと、コイル導体層12f及び第一接続導体層14fの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0035】
層Lgは、素体層10gと、コイル導体層12gと、第一接続導体層14gと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10gには、コイル導体層12g及び第一接続導体層14gに対応する形状を有し、コイル導体層12g及び第一接続導体層14gが嵌め込まれる欠損部Rgが設けられている。素体層10gと、コイル導体層12g及び第一接続導体層14gの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0036】
層Lhは、素体層10hと、コイル導体層12hと、第一接続導体層14hと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10hには、コイル導体層12h及び第一接続導体層14hに対応する形状を有し、コイル導体層12h及び第一接続導体層14hが嵌め込まれる欠損部Rhが設けられている。素体層10hと、コイル導体層12h及び第一接続導体層14hの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0037】
層Liは、素体層10iと、第一接続導体層14iと、第二接続導体層16iと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10iには、第一接続導体層14i及び第二接続導体層16iに対応する形状を有し、第一接続導体層14i及び第二接続導体層16iが嵌め込まれる欠損部Riが設けられている。素体層10iと、第一接続導体層14i及び第二接続導体層16iの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0038】
層Ljは、素体層10jと、第一接続導体層14jと、第二接続導体層16jと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10jには、第一接続導体層14j及び第二接続導体層16jに対応する形状を有し、第一接続導体層14j及び第二接続導体層16jが嵌め込まれる欠損部Rjが設けられている。素体層10jと、第一接続導体層14j及び第二接続導体層16jの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0039】
層Lkは、素体層10kと、第一端子電極層18kと、第二端子電極層19kと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層10kには、第一端子電極層18k及び第二端子電極層19kに対応する形状を有し、第一端子電極層18k及び第二端子電極層19kが嵌め込まれる欠損部Rkが設けられている。素体層10kと、第一端子電極層18k及び第二端子電極層19kの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0040】
欠損部Rb~Rkの幅(以下、欠損部の幅)は、基本的に、コイル導体層12b~12h、第一接続導体層14c~14j、第二接続導体層16i,16j、第一端子電極層18k及び第二端子電極層19kの幅(以下、導体部の幅)よりも広くなるように設定される。素体層10b~10kと、コイル導体層12b~12h、第一接続導体層14c~14j、第二接続導体層16i,16j、第一端子電極層18k及び第二端子電極層19kとの接着性向上のために、欠損部の幅は、敢えて導体部の幅よりも狭くなるように設定されてもよい。欠損部の幅から導体部の幅を引いた値は、たとえば、-3μm以上10μm以下であることが好ましく、0μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0041】
図2に示されるように、積層コイル部品1では、第一接続導体6と第二コイル部9との間の距離L2は、第一接続導体6と第一コイル部8との間の距離L1よりも大きい(L2>L1)。言い換えれば、第一接続導体6と第一コイル部8との間の距離L1は、第一接続導体6と第二コイル部9との間の距離L2よりも小さい(L1<L2)。すなわち、第二コイル部9は、第一コイル部8よりも第一接続導体6から離間して配置されている。距離L1は、第一接続導体6と第一コイル部8(コイル導体層12b~12d)との最短距離である。距離L2は、第一接続導体6と第二コイル部9(コイル導体層12e~12h)との最短距離である。なお、
図2では、距離L1及び距離L2を一例として便宜的に示しており、実際の最短距離とは異なり得る。
【0042】
第一コイル部8と第二コイル部9とは、径が異なっている。第一コイル部8の径は、第二コイル部9の径よりも大きい。言い換えれば、第二コイル部9の径は、第一コイル部8の径よりも小さい。第一コイル部8のコイル軸と、第二コイル部9のコイル軸とは、一致していない。第二コイル部9のコイル軸は、第一コイル部8のコイル軸よりも端面2b側に位置している。第一コイル部8と第二コイル部9とは、素体2の端面2b側の縁が第一方向D1において一致している。具体的には、第一方向D1から見て、第一コイル部8を構成するコイル導体層12bの一部と、第二コイル部9を構成するコイル導体層12e及びコイル導体層12hの一部とが重なっている。
【0043】
第二コイル部9は、第一方向D1から見て、第一端子電極3と重ならない。すなわち、第二コイル部9は、第一端子電極3の上方に位置していない。具体的には、第一方向D1から見て、コイル導体層12e~12hは、第一端子電極3と重ならない。
【0044】
実施形態に係る積層コイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0045】
まず、上述の素体層10a~10kの構成材料及び感光性材料を含む素体ペーストを基材(たとえばPETフィルム)上に塗布することにより、素体形成層を形成する。素体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。続いて、たとえばCrマスクを用いたフォトリソグラフィ法により素体形成層を露光及び現像し、後述の導体形成層の形状に対応する形状が除去された素体パターンを基材上に形成する。素体パターンは、熱処理後に素体層10a~10kとなる層である。つまり、欠損部Rb~Rkとなる欠損部が設けられた素体パターンが形成される。なお、本実施形態の「フォトリソグラフィ法」とは、感光性材料を含む加工対象の層を露光及び現像することにより、所望のパターンに加工するものであればよく、マスクの種類等に限定されない。
【0046】
一方、上述のコイル導体層12b~12h、第一接続導体層14c~14j、第二接続導体層16i,16j、第一端子電極層18k及び第二端子電極層19kの構成材料、及び感光性材料を含む導体ペーストを基材(たとえばPETフィルム)上に塗布することにより導体形成層を形成する。導体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。続いて、たとえばCrマスクを用いたフォトリソグラフィ法により導体形成層を露光及び現像し、導体パターンを基材上に形成する。導体パターンは、熱処理後にコイル導体層12b~12h、第一接続導体層14c~14j、第二接続導体層16i,16j、第一端子電極層18k及び第二端子電極層19kとなる層である。
【0047】
続いて、素体形成層を基材から支持体上に転写する。素体形成層は、熱処理後に層Laとなる層である。
【0048】
続いて、導体パターン及び素体パターンを支持体上に繰り返し転写することにより、導体パターン及び素体パターンを第三方向D3において積層する。具体的には、まず、導体パターンを基材から素体形成層上に転写する。次に、素体パターンを基材から素体形成層上に転写する。素体パターンの欠損部に、導体パターンが組み合わされ、素体形成層上で素体パターン及び導体パターンが同一層となる。更に、導体パターン及び素体パターンの転写工程を繰り返し実施し、導体パターン及び素体パターンを互いに組み合わされた状態で積層する。これにより、熱処理後に層Lb~Lkとなる層が積層される。
【0049】
続いて、素体形成層を基材から、導体パターン及び素体パターンの転写工程で積層した層上に転写する。素体形成層は、熱処理後に層Laとなる層である。
【0050】
以上により、熱処理後に積層コイル部品1を構成する積層体を支持体上に形成する。続いて、得られた積層体を所定の大きさに切断する。その後、切断された積層体に対し、脱バインダ処理を行った後、熱処理を行う。熱処理温度は、たとえば850~900℃程度である。必要に応じて、熱処理後に第一端子電極3及び第二端子電極4に電解めっき又は無電解めっきを施し、めっき層を設けてもよい。
【0051】
積層コイル部品1では、第一端子電極3と第二端子電極4との電位差が最大となる。電位差が大きい導体同士が対向すると、浮遊容量が形成される。積層コイル部品1では、第一端子電極3に接続されている第一接続導体6は、第一方向D1に沿って延在している。この構成では、第一接続導体6とコイル5との電位差によって、第一接続導体6とコイル5との間に浮遊容量が形成される。特に、第二端子電極4側に接続されるコイル5と第一接続導体6との間には、浮遊容量が形成され易い。そこで、積層コイル部品1では、第一接続導体6と第二コイル部9との間の距離L2を、第一接続導体6と第一コイル部8との間の距離L1よりも大きくしている。これにより、積層コイル部品1では、第一接続導体6との電位差が大きい第二コイル部9が、第一コイル部8よりも第一接続導体6から離れて配置される。そのため、積層コイル部品1では、第一接続導体6と第二コイル部9との間に形成される浮遊容量を低減することができる。また、積層コイル部品1では、第一コイル部8の径は大きくすることができる。そのため、コイル5のインダクタンスを大きくすることができる。以上のように、積層コイル部品1では、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる。
【0052】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一コイル部8と第二コイル部9とは、素体2の端面2b側の外縁が第一方向D1において一致している。この構成では、第一接続導体6と第二コイル部9との間の距離を確保しつつ、第二コイル部9の径を大きくすることができる。
【0053】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一方向D1から見て、第一端子電極3と第二コイル部9とが重ならない。この構成では、第一端子電極3と第二コイル部9との間に浮遊容量が形成されることを抑制できる。
【0054】
[第二実施形態]
続いて、
図4及び
図5を参照して、第二実施形態に係る積層コイル部品を説明する。
図4は、第二実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図5は、
図4に示す積層コイル部品の側面図である。
図4及び
図5に示されるように、第二実施形態に係る積層コイル部品1Aは、素体2と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、コイル5Aと、第一接続導体6及び第二接続導体7と、を備えている。
図4及び
図5では、説明の便宜上、素体2を破線で示している。
【0055】
素体2は、複数の素体層20a~20k(
図6参照)が第一方向D1において積層されてなる。
【0056】
コイル5Aは、素体2内に配置されている。コイル5Aは、複数のコイル導体層22b~22h(
図6参照)によって構成されている。複数のコイル導体層22b~22hは、互いに接続されて、素体2内でコイル5Aを構成している。コイル5Aのコイル軸は、第一方向D1に沿って設けられている。コイル導体層22b~22hは、第一方向D1から見て、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。複数のコイル導体層22b~22hは、導電材料(たとえば、Ag又はPd)により構成されている。コイル導体層22b~22hは、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0057】
コイル5Aは、第一コイル部8Aと、第二コイル部9Aと、を含んでいる。第一コイル部8Aは、複数のコイル導体層22b~22dによって構成されている。第一コイル部8Aは、素体2の主面2c側に配置されている。第一コイル部8Aは、第一接続導体6に接続されるコイル5Aの一端を有する。第一コイル部8Aは、第一接続導体6に接続されている。第二コイル部9Aは、複数のコイル導体層22e~22hによって構成されている。第二コイル部9Aは、素体2の主面2d側に配置されている。第二コイル部9Aは、第二接続導体7に接続されるコイル5Aの他端を有する。第二コイル部9Aは、第二接続導体7に接続されている。
【0058】
図6は、積層コイル部品の分解斜視図である。
図6に示されるように、積層コイル部品1Aは、複数の層LAa,LAb,LAc,LAd,LAe,LAf,LAg,LAh,LAi,LAj,LAkを備えている。積層コイル部品1Aは、たとえば、主面2c側から順に、層LAa~LAkが積層されることにより構成されている。
【0059】
層LAaは、素体層20aにより構成されている。
【0060】
層LAbは、素体層20bと、コイル導体層22bと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20bには、欠損部RAbが設けられている。層LAcは、素体層20cと、コイル導体層22cと、第一接続導体層24cと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20cには、欠損部RAcが設けられている。
【0061】
層LAdは、素体層20dと、コイル導体層22dと、第一接続導体層24dと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20dには、欠損部RAdが設けられている。層LAeは、素体層20eと、コイル導体層22eと、第一接続導体層24eと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20eには、欠損部RAeが設けられている。
【0062】
層LAfは、素体層20fと、コイル導体層22fと、第一接続導体層24fと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20fには、欠損部RAfが設けられている。層LAgは、素体層20gと、コイル導体層22gと、第一接続導体層24gと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20gには、欠損部RAgが設けられている。
【0063】
層LAhは、素体層20hと、コイル導体層22hと、第一接続導体層24hと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20hには、欠損部RAhが設けられている。層LAiは、素体層20iと、第一接続導体層24iと、第二接続導体層26iと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20iには、欠損部RAiが設けられている。
【0064】
層LAjは、素体層20jと、第一接続導体層24jと、第二接続導体層26jと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20jには、欠損部RAjが設けられている。層LAkは、素体層20kと、第一端子電極層28kと、第二端子電極層29kと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層20kには、欠損部RAkが設けられている。
【0065】
図5に示されるように、積層コイル部品1Aでは、第一接続導体6と第二コイル部9Aとの間の距離L2は、第一接続導体6と第一コイル部8Aとの間の距離L1よりも大きい。言い換えれば、第一接続導体6と第一コイル部8Aとの間の距離L1は、第一接続導体6と第二コイル部9Aとの間の距離L2よりも小さい。すなわち、第二コイル部9Aは、第一コイル部8Aよりも第一接続導体6から離間して配置されている。距離L1は、第一接続導体6と第一コイル部8A(コイル導体層22b~22d)との最短距離である。距離L2は、第一接続導体6と第二コイル部9A(コイル導体層22e~22h)との最短距離である。なお、
図5では、距離L1及び距離L2を一例として便宜的に示しており、実際の最短距離とは異なり得る。
【0066】
第一コイル部8Aにおいて、第一接続導体6とコイル導体層22dとの間の距離は、第一接続導体6とコイル導体層22cとの間の距離よりも大きい。すなわち、第一端子電極3、第一接続導体6、コイル5、第二接続導体7及び第二端子電極4の経路において、第二端子電極4側のコイル導体層22dの方が、コイル導体層22cよりも第一接続導体6から離れて配置されている。第二コイル部9Aにおいて、第一接続導体6とコイル導体層22gとの間の距離は、第一接続導体6とコイル導体層22fとの間の距離よりも大きい。すなわち、上記経路において、第二端子電極4側のコイル導体層22gの方が、コイル導体層22fよりも第一接続導体6から離れて配置されている。
【0067】
積層コイル部品1Aでは、積層コイル部品1Aの使用時に生じる電位差に基づいて、第一接続導体6と、第一コイル部8Aのコイル導体層22c,22dとの距離が設定されている。具体的には、積層コイル部品1Aは、第一接続導体6との電位差が大きいほど、第一接続導体6との間の距離が大きくなるように、第一接続導体6とコイル導体層22c,22dとの距離が設定されている。第一接続導体6とコイル導体層22dとの電位差は、第一接続導体6よりコイル導体層22cとの電位差よりも大きい。これにより、積層コイル部品1Aでは、第一コイル部8Aにおいて、第一接続導体6とコイル導体層22cとの間の距離、及び、第一接続導体6とコイル導体層22dとの間の距離の順に大きくなる。同様に、積層コイル部品1Aでは、第二コイル部9Aにおいて、第一接続導体6とコイル導体層22fとの間の距離、及び、第一接続導体6とコイル導体層22gとの間の距離の順に大きくなる。
【0068】
第一コイル部8Aと第二コイル部9Aとは、径が異なっている。第一コイル部8Aの径は、第二コイル部9Aの径よりも大きい。言い換えれば、第二コイル部9Aの径は、第一コイル部8Aの径よりも小さい。第一コイル部8Aのコイル軸と、第二コイル部9Aのコイル軸とは、一致していない。第二コイル部9Aのコイル軸は、第一コイル部8Aのコイル軸よりも端面2b側に位置している。第一コイル部8Aと第二コイル部9Aとは、素体2の端面2b側の縁が第一方向D1において一致している。具体的には、第一方向D1から見て、第一コイル部8Aを構成するコイル導体層22bの一部と、第二コイル部9Aを構成するコイル導体層22e及びコイル導体層22hの一部とが重なっている。
【0069】
第二コイル部9Aは、第一方向D1から見て、第一端子電極3と重ならない。すなわち、第二コイル部9Aは、第一端子電極3の上方に位置していない。具体的には、第一方向D1から見て、コイル導体層22e~22hは、第一端子電極3と重ならない。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Aでは、積層コイル部品1と同様に、第一接続導体6と第二コイル部9Aとの間の距離L2を、第一接続導体6と第一コイル部8Aとの間の距離L1よりも大きくしている。これにより、積層コイル部品1Aでは、第一接続導体6との電位差が大きい第二コイル部9Aが、第一コイル部8Aよりも第一接続導体6から離れて配置される。そのため、積層コイル部品1Aでは、第一接続導体6と第二コイル部9Aとの間に形成される浮遊容量を低減することができる。また、積層コイル部品1Aでは、第一コイル部8Aの径は大きくすることができる。そのため、コイル5Aのインダクタンスを大きくすることができる。以上のように、積層コイル部品1Aでは、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる。
【0071】
本実施形態に係る積層コイル部品1Aでは、積層コイル部品1Aの使用時に生じる電位差に基づいて、第一接続導体6と第一コイル部8Aのコイル導体層22c,22dとの距離、及び、第一接続導体6と第二コイル部9Aのコイル導体層22f,22gとの間の距離が設定されている。第一接続導体6とコイル導体層22dとの電位差は、第一接続導体6よりコイル導体層22cとの電位差よりも大きい。そのため、第一コイル部8Aにおいて、第一接続導体6とコイル導体層22dとの間の距離は、第一接続導体6とコイル導体層22cとの間の距離よりも大きい。また、第一接続導体6とコイル導体層22gとの電位差は、第一接続導体6よりコイル導体層22hとの電位差よりも大きい。そのため、第二コイル部9Aにおいて、第一接続導体6とコイル導体層22gとの間の距離は、第一接続導体6とコイル導体層22fとの間の距離よりも大きい。この構成では、電位差に応じて距離が設定されるため、浮遊容量の低減を図れる。
【0072】
[第三実施形態]
続いて、
図7及び
図8を参照して、第三実施形態に係る積層コイル部品を説明する。
図7は、第三実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図8は、
図7に示す積層コイル部品の側面図である。
図7及び
図8に示されるように、第三実施形態に係る積層コイル部品1Bは、素体2と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、コイル5Bと、第一接続導体6及び第二接続導体7と、を備えている。
図7及び
図8では、説明の便宜上、素体2を破線で示している。
【0073】
素体2は、複数の素体層30a~30k(
図9参照)が第一方向D1において積層されてなる。
【0074】
コイル5Bは、素体2内に配置されている。コイル5Bは、複数のコイル導体層32b~32h(
図9参照)によって構成されている。複数のコイル導体層32b~32hは、互いに接続されて、素体2内でコイル5Bを構成している。コイル5Bのコイル軸は、第一方向D1に沿って設けられている。コイル導体層32b~32hは、第一方向D1から見て、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。複数のコイル導体層32b~32hは、導電材料(たとえば、Ag又はPd)により構成されている。コイル導体層32b~32hは、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0075】
コイル5は、第一コイル部8Bと、第二コイル部9Bと、を含んでいる。第一コイル部8Bは、複数のコイル導体層32b~32fによって構成されている。第一コイル部8Bは、素体2の主面2c側に配置されている。第一コイル部8Bは、第一接続導体6に接続されるコイル5Bの一端を有する。第一コイル部8Bは、第一接続導体6に接続されている。第二コイル部9Bは、複数のコイル導体層12g,12hによって構成されている。第二コイル部9Bは、素体2の主面2d側に配置されている。第二コイル部9Bは、第二接続導体7に接続されるコイル5Bの他端を有する。第二コイル部9Bは、第二接続導体7に接続されている。
【0076】
図9は、積層コイル部品の分解斜視図である。
図9に示されるように、積層コイル部品1Bは、複数の層LBa,LBb,LBc,LBd,LBe,LBf,LBg,LBh,LBi,LBj,LBkを備えている。積層コイル部品1Bは、たとえば、主面2c側から順に、層LBa~LBkが積層されることにより構成されている。
【0077】
層LBaは、素体層30aにより構成されている。
【0078】
層LBbは、素体層30bと、コイル導体層32bと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30bには、欠損部RBbが設けられている。層LBcは、素体層30cと、コイル導体層32cと、第一接続導体層34cと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30cには、欠損部RBcが設けられている。
【0079】
層LBdは、素体層30dと、コイル導体層32dと、第一接続導体層34dと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30dには、欠損部RBdが設けられている。層LBeは、素体層30eと、コイル導体層32eと、第一接続導体層34eと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30eには、欠損部RBeが設けられている。
【0080】
層LBfは、素体層30fと、コイル導体層32fと、第一接続導体層34fと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30fには、欠損部RBfが設けられている。層LBgは、素体層30gと、コイル導体層32gと、第一接続導体層34gと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30gには、欠損部RBgが設けられている。
【0081】
層LBhは、素体層30hと、コイル導体層32hと、第一接続導体層34hと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30hには、欠損部RBhが設けられている。層LBiは、素体層30iと、第一接続導体層34iと、第二接続導体層36iと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30iには、欠損部RBiが設けられている。
【0082】
層LBjは、素体層30jと、第一接続導体層34jと、第二接続導体層36jと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30jには、欠損部RBjが設けられている。層LBkは、素体層30kと、第一端子電極層38kと、第二端子電極層39kと、が互いに組み合わされることにより構成されている。素体層30kには、欠損部RBkが設けられている。
【0083】
図10に示されるように、積層コイル部品1Bでは、第一接続導体6と第二コイル部9Bとの間の距離L2は、第一接続導体6と第一コイル部8Bとの間の距離L1よりも大きい。言い換えれば、第一接続導体6と第一コイル部8Bとの間の距離L1は、第一接続導体6と第二コイル部9Bとの間の距離L2よりも小さい。すなわち、第二コイル部9Bは、第一コイル部8Bよりも第一接続導体6から離間して配置されている。積層コイル部品1Bでは、第二コイル部9Bを構成するコイル導体層32gにおいて、第一接続導体6と対向する部分を斜辺としている。これにより、積層コイル部品1Bでは、第一接続導体6と第二コイル部9Bとの間の距離L2を、第一接続導体6と第一コイル部8Bとの間の距離L1よりも大きくしている。距離L1は、第一接続導体6と第一コイル部8B(コイル導体層32b~32f)との最短距離である。距離L2は、第一接続導体6と第二コイル部9B(コイル導体層32g,32h)との最短距離である。なお、
図10では、距離L1及び距離L2を一例として便宜的に示しており、実際の最短距離とは異なり得る。
【0084】
第一コイル部8Aと第二コイル部9Aとは、径が略同等である。第一コイル部8Bのコイル軸と、第二コイル部9Bのコイル軸とは、略一致している。第一方向D1から見て、第一コイル部8Bを構成するコイル導体層22bの一部と、第二コイル部9Aを構成するコイル導体層22e及びコイル導体層22hの一部とが重なっている。
【0085】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Bでは、積層コイル部品1と同様に、第一接続導体6と第二コイル部9Bとの間の距離L2を、第一接続導体6と第一コイル部8Bとの間の距離L1よりも大きくしている。これにより、積層コイル部品1Bでは、第一接続導体6との電位差が大きい第二コイル部9Bが、第一コイル部8Bよりも第一接続導体6から離れて配置される。そのため、積層コイル部品1Bでは、第一接続導体6と第二コイル部9Bとの間に形成される浮遊容量を低減することができる。また、積層コイル部品1Bでは、第一コイル部8Bの径は大きくすることができる。そのため、コイル5Bのインダクタンスを大きくすることができる。以上のように、積層コイル部品1Bでは、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる。
【0086】
本実施形態に係る積層コイル部品1Bでは、第二コイル部9Bを構成するコイル導体層32gにおいて、第一接続導体6と対向する部分を斜辺としている。これにより、積層コイル部品1Bでは、第一接続導体6と第二コイル部9Bとの間の距離L2を、第一接続導体6と第一コイル部8Bとの間の距離L1よりも大きくしている。この構成では、第二コイル部9Bの径を大きくすることができる。そのため、積層コイル部品1Bでは、特性の向上を図ることができる。
【0087】
[第四実施形態]
続いて、
図11及び
図12を参照して、第四実施形態に係る積層コイル部品を説明する。
図11は、第四実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図12は、
図11に示す積層コイル部品の側面図である。
図11及び
図12に示されるように、第四実施形態に係る積層コイル部品1Cは、素体2と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、コイル5Cと、第一接続導体6C及び第二接続導体7Cと、を備えている。
図11及び
図12では、説明の便宜上、素体2を破線で示している。
【0088】
素体2は、複数の素体層40a~40k(
図13参照)が第一方向D1において積層されてなる。
【0089】
コイル5Cは、素体2内に配置されている。コイル5Cは、複数のコイル導体層42b~42h(
図13参照)及び複数のスルーホール導体43a~43hによって構成されている。複数のコイル導体層42b~42hは、スルーホール導体43a~43hによって互いに接続されて、素体2内でコイル5Cを構成している。コイル5Cのコイル軸は、第一方向D1に沿って設けられている。コイル導体層42b~42hは、第一方向D1から見て、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。複数のコイル導体層42b~42hは、導電材料(たとえば、Ag又はPd)により構成されている。コイル導体層42b~42hは、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0090】
コイル5Cは、第一コイル部8Cと、第二コイル部9Cと、を含んでいる。第一コイル部8Cは、複数のコイル導体層42b~42dによって構成されている。第一コイル部8Cは、素体2の主面2c側に配置されている。第一コイル部8Cは、第一接続導体6Cに接続されるコイル5Cの一端を有する。第一コイル部8Cは、第一接続導体6Cに接続されている。第二コイル部9Cは、複数のコイル導体層42e~42hによって構成されている。第二コイル部9Cは、素体2の主面2d側に配置されている。第二コイル部9Cは、第二接続導体7Cに接続されるコイル5Cの他端を有する。第二コイル部9Cは、第二接続導体7Cに接続されている。
【0091】
第一接続導体6Cは、素体2内に配置されている。第一接続導体6Cは、第一端子電極3とコイル5Cとを接続している。第一接続導体6Cは、スルーホール導体である。第一接続導体6Cは、複数の第一スルーホール導体層44c~44j(
図13参照)によって構成されている。
【0092】
第二接続導体7Cは、素体2内に配置されている。第二接続導体7Cは、第二端子電極4とコイル5Cとを接続している。第二接続導体7Cは、スルーホール導体である。第二接続導体7Cは、複数の第二スルーホール導体層46i,46j(
図13参照)によって構成されている。
【0093】
図13は、積層コイル部品の分解斜視図である。
図13に示されるように、積層コイル部品1Cは、複数の層LCa,LCb,LCc,LCd,LCe,LCf,LCg,LCh,LCi,LCj,LCkを備えている。積層コイル部品1Cは、たとえば、主面2c側から順に、層LCa~LCkが積層されることにより構成されている。
【0094】
層LCaは、素体層40aにより構成されている。
【0095】
層LCbは、素体層40b上にコイル導体層42bが設けられて構成されている。層LCcは、素体層40c上にコイル導体層42cが設けられると共に、第一スルーホール導体層44cが設けられて構成されている。コイル導体層42bと第一スルーホール導体層44cとは、スルーホール導体43aによって接続されている。コイル導体層42bとコイル導体層42cとは、スルーホール導体43bによって接続されている。
【0096】
層LCdは、素体層40d上にコイル導体層42dが設けられると共に、第一スルーホール導体層44dが設けられて構成されている。コイル導体層42cとコイル導体層42dとは、スルーホール導体43cによって接続されている。
【0097】
層LCeは、素体層40e上にコイル導体層42eが設けられると共に、第一スルーホール導体層44eが設けられて構成されている。コイル導体層42dとコイル導体層42eとは、スルーホール導体43dによって接続されている。
【0098】
層LCfは、素体層40f上にコイル導体層42fが設けられると共に、第一スルーホール導体層44fが設けられて構成されている。コイル導体層42eとコイル導体層42fとは、スルーホール導体43eによって接続されている。
【0099】
層LCgは、素体層40g上にコイル導体層42gが設けられると共に、第一スルーホール導体層44gが設けられて構成されている。コイル導体層42fとコイル導体層42gとは、スルーホール導体43fによって接続されている。
【0100】
層LChは、素体層40h上にコイル導体層42hが設けられると共に、第一スルーホール導体層44hが設けられて構成されている。コイル導体層42gとコイル導体層42hとは、スルーホール導体43gによって接続されている。
【0101】
層LCiは、素体層40iに第一スルーホール導体層44i及び第二スルーホール導体層46iが設けられて構成されている。コイル導体層42hと第二スルーホール導体層46iとは、スルーホール導体43hによって接続されている。
【0102】
層LCjは、素体層40jに第一スルーホール導体層44j及び第二スルーホール導体層46jが設けられて構成されている。層LCkは、素体層40kに第一端子電極3及び第二端子電極4が設けられて構成されている。
【0103】
図12に示されるように、積層コイル部品1Cでは、第一接続導体6Cと第二コイル部9Cとの間の距離L2は、第一接続導体6Cと第一コイル部8Cとの間の距離L1よりも大きい。言い換えれば、第一接続導体6Cと第一コイル部8Cとの間の距離L1は、第一接続導体6Cと第二コイル部9Cとの間の距離L2よりも小さい。すなわち、第二コイル部9Cは、第一コイル部8Cよりも第一接続導体6から離間して配置されている。距離L1は、第一接続導体6Cと第一コイル部8C(コイル導体層42b~42d)との最短距離である。距離L2は、第一接続導体6Cと第二コイル部9C(コイル導体層42e~42h)との最短距離である。なお、
図12では、距離L1及び距離L2を一例として便宜的に示しており、実際の最短距離とは異なり得る。
【0104】
第一コイル部8Cと第二コイル部9Cとは、径が異なっている。第一コイル部8Cの径は、第二コイル部9Cの径よりも大きい。言い換えれば、第二コイル部9Cの径は、第一コイル部8Cの径よりも小さい。第一コイル部8Cのコイル軸と、第二コイル部9Cのコイル軸とは、一致していない。第二コイル部9Cのコイル軸は、第一コイル部8Cのコイル軸よりも端面2b側に位置している。第一コイル部8Cと第二コイル部9Cとは、素体2の端面2b側の縁が第一方向D1において一致している。具体的には、第一方向D1から見て、第一コイル部8Cを構成するコイル導体層42b及びコイル導体層42dの一部と、第二コイル部9Cを構成するコイル導体層42e及びコイル導体層42hの一部とが重なっている。
【0105】
第二コイル部9Cは、第一方向D1から見て、第一端子電極3と重ならない。すなわち、第二コイル部9Cは、第一端子電極3の上方に位置していない。具体的には、第一方向D1から見て、コイル導体層42e~42hは、第一端子電極3と重ならない。
【0106】
続いて、積層コイル部品1Cの製造方法について説明する。
【0107】
絶縁性樹脂及び溶剤などを混合して、スラリーを用意する。用意したスラリーを、ドクターブレード法によって基材(たとえば、PETフィルムなど)上に塗布して、素体層40a~40kとなるグリーンシートを形成する。次に、グリーンシートにおけるスルーホール導体43a~43h、第一スルーホール導体層44b~44j及び第二スルーホール導体層46i,46jの形成予定位置に、レーザー加工によって貫通孔を形成する。
【0108】
続いて、第一の導電性ペーストをグリーンシートの貫通孔内に充填する。第一の導電性ペーストは、導電性金属粉末及びバインダ樹脂などを混合して作製される。続いて、グリーンシートの上に、各コイル導体層42b~42hとなる導体を設ける。このとき、導体は、貫通孔内の導電性ペーストと接続される。
【0109】
続いて、グリーンシートを積層する。ここでは、導体が設けられた複数のグリーンシートを基材から剥がして積層し、積層方向に加圧して積層体を形成する。このとき、各コイル導体層42b~42hとなる各導体が積層方向に重なるように、各グリーンシートを積層する。
【0110】
続いて、体グリーンシートの積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。続いて、グリーンチップから、各部に含まれるバインダ樹脂を除去した後、このグリーンチップを焼成する。これにより、素体2が得られる。
【0111】
続いて、素体2の主面2dに対して第二の導電性ペーストを設ける。第二の導電性ペーストは、導電性金属粉末、ガラスフリット及びバインダ樹脂等を混合して作製される。続いて、熱処理を施すことにより第二の導電性ペーストを素体2に焼付けて、第一端子電極3及び第二端子電極4を形成する。必要に応じて、第一端子電極3及び第二端子電極4に電解めっき又は無電解めっきを施し、めっき層を設けてもよい。以上の工程により、積層コイル部品1Cが得られる。
【0112】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Cでは、積層コイル部品1と同様に、第一接続導体6Cと第二コイル部9Cとの間の距離L2を、第一接続導体6Cと第一コイル部8Cとの間の距離L1よりも大きくしている。これにより、積層コイル部品1Cでは、第一接続導体6Cとの電位差が大きい第二コイル部9Cが、第一コイル部8Cよりも第一接続導体6Cから離れて配置される。そのため、積層コイル部品1Cでは、第一接続導体6Cと第二コイル部9Cとの間に形成される浮遊容量を低減することができる。また、積層コイル部品1Cでは、第一コイル部8Cの径は大きくすることができる。そのため、コイル5Cのインダクタンスを大きくすることができる。以上のように、積層コイル部品1Cでは、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる。
【0113】
[第五実施形態]
続いて、
図14及び
図15を参照して、第五実施形態に係る積層コイル部品を説明する。
図14は、第五実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図15は、
図14に示す積層コイル部品の側面図である。
図14及び
図15に示されるように、第五実施形態に係る積層コイル部品1Dは、素体2と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、コイル5Dと、第一接続導体6D及び第二接続導体7Dと、を備えている。
図11及び
図12では、説明の便宜上、素体2を破線で示している。
【0114】
素体2は、複数の素体層50a~50k(
図16参照)が第一方向D1において積層されてなる。
【0115】
コイル5Dは、素体2内に配置されている。コイル5Dは、複数のコイル導体層52b~52h(
図16参照)及び複数のスルーホール導体53a~53hによって構成されている。複数のコイル導体層52b~52hは、スルーホール導体53a~53hによって互いに接続されて、素体2内でコイル5Dを構成している。コイル5Cのコイル軸は、第一方向D1に沿って設けられている。コイル導体層52b~52hは、第一方向D1から見て、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。複数のコイル導体層52b~52hは、導電材料(たとえば、Ag又はPd)により構成されている。コイル導体層52b~52hは、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0116】
コイル5Dは、第一コイル部8Dと、第二コイル部9Dと、第三コイル部10Dと、を含んでいる。第一コイル部8Dは、複数のコイル導体層52b~52dによって構成されている。第一コイル部8Dは、素体2の主面2c側に配置されている。第一コイル部8Dは、第一接続導体6Dに接続されるコイル5Dの一端を有する。第一コイル部8Dは、第一接続導体6Dに接続されている。第二コイル部9Dは、複数のコイル導体層52g,52hによって構成されている。第二コイル部9Dは、素体2の主面2d側に配置されている。第二コイル部9Dは、第二接続導体7Dに接続されるコイル5Dの他端を有する。第二コイル部9Dは、第二接続導体7Dに接続されている。第三コイル部10Dは、複数のコイル導体層52e,52fによって構成されている。第三コイル部10Dは、第一コイル部8Dと第二コイル部9Dとの間に配置されている。第三コイル部10Dの一端は、第一コイル部8Dに接続され、第三コイル部10Dの他端は、第二コイル部9Dに接続されている。
【0117】
第一接続導体6Dは、素体2内に配置されている。第一接続導体6Dは、第一端子電極3とコイル5Dとを接続している。第一接続導体6Dは、スルーホール導体である。第一接続導体6Dは、複数の第一スルーホール導体層54c~54j(
図16参照)によって構成されている。
【0118】
第二接続導体7Dは、素体2内に配置されている。第二接続導体7Dは、第二端子電極4とコイル5Dとを接続している。第二接続導体7Dは、スルーホール導体である。第二接続導体7Dは、複数の第二スルーホール導体層56i,56j(
図16参照)によって構成されている。
【0119】
図16は、積層コイル部品の分解斜視図である。
図16に示されるように、積層コイル部品1Dは、複数の層LDa,LDb,LDc,LDd,Lde,LDf,LDg,LDh,LDi,Ldj,LDkを備えている。積層コイル部品1Dは、たとえば、主面2c側から順に、層LDa~LDkが積層されることにより構成されている。
【0120】
層LDaは、素体層50aにより構成されている。
【0121】
層LDbは、素体層50b上にコイル導体層52bが設けられて構成されている。層LDcは、素体層50c上にコイル導体層52cが設けられると共に、第一スルーホール導体層54cが設けられて構成されている。コイル導体層52bと第一スルーホール導体層54cとは、スルーホール導体53aによって接続されている。コイル導体層52bとコイル導体層52cとは、スルーホール導体53bによって接続されている。
【0122】
層LDdは、素体層50d上にコイル導体層52dが設けられると共に、第一スルーホール導体層54dが設けられて構成されている。コイル導体層52cとコイル導体層52dとは、スルーホール導体53cによって接続されている。
【0123】
層LDeは、素体層50e上にコイル導体層52eが設けられると共に、第一スルーホール導体層54eが設けられて構成されている。コイル導体層52dとコイル導体層52eとは、スルーホール導体53dによって接続されている。
【0124】
層LDfは、素体層50f上にコイル導体層52fが設けられると共に、第一スルーホール導体層54fが設けられて構成されている。コイル導体層52eとコイル導体層52fとは、スルーホール導体53eによって接続されている。
【0125】
層LDgは、素体層50g上にコイル導体層52gが設けられると共に、第一スルーホール導体層54gが設けられて構成されている。コイル導体層52fとコイル導体層52gとは、スルーホール導体53fによって接続されている。
【0126】
層LDhは、素体層50h上にコイル導体層52hが設けられると共に、第一スルーホール導体層54hが設けられて構成されている。コイル導体層52gとコイル導体層52hとは、スルーホール導体53gによって接続されている。
【0127】
層LDiは、素体層50iに第一スルーホール導体層54i及び第二スルーホール導体層56iが設けられて構成されている。コイル導体層52hと第二スルーホール導体層56iとは、スルーホール導体53hによって接続されている。
【0128】
層LDjは、素体層50jに第一スルーホール導体層54j及び第二スルーホール導体層56jが設けられて構成されている。層LDkは、素体層50kに第一端子電極3及び第二端子電極4が設けられて構成されている。
【0129】
図15に示されるように、積層コイル部品1Dでは、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間の距離L2は、第一接続導体6Dと第一コイル部8Dとの間の距離L1よりも大きい。言い換えれば、第一接続導体6Dと第一コイル部8Dとの間の距離L1は、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間の距離L2よりも小さい。すなわち、第二コイル部9Cは、第一コイル部8Cよりも第一接続導体6から離間して配置されている。また、第一接続導体6Dと第三コイル部10Dとの間の距離L3は、第一接続導体6Dと第一コイル部8Dとの間の距離L1よりも大きく、且つ、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間の距離L2よりも小さい(L1>L3>L2)。
【0130】
積層コイル部品1Dでは、積層コイル部品1Dの使用時に生じる電位差に基づいて、第一接続導体6Dと、第一コイル部8D、第二コイル部9D及び第三コイル部10Dと、の距離L1,L2,L3が設定されている。具体的には、積層コイル部品1Dでは、第一接続導体6Dとの電位差が大きいほど、第一接続導体6Dとの間の距離が大きくなるように、第一接続導体6Dと、第一コイル部8D、第二コイル部9D及び第三コイル部10Dと、の距離L1,L2,L3が設定されている。電位差は、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間で最も大きくなり、第一接続導体6Dと第一コイル部8Dとの間で最も小さくなる。電位差は、第一接続導体6Dと第一コイル部8Dとの間、第一接続導体6Dと第三コイル部10D、及び、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間の順で大きくなる。これにより、積層コイル部品1Dでは、第一接続導体6Dと第一コイル部8Dとの間の距離L1、第一接続導体6Dと第三コイル部10Dとの間の距離L3、及び、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間の距離L2の順に大きくなる。
【0131】
距離L1は、第一接続導体6Dと第一コイル部8D(コイル導体層52b~52d)との最短距離である。距離L2は、第一接続導体6Dと第二コイル部9D(コイル導体層52g,52h)との最短距離である。距離L3は、第一接続導体6Dと第三コイル部10D(コイル導体層52e,52f)との最短距離である。なお、
図15では、距離L1、距離L2及び距離L3を一例として便宜的に示しており、実際の最短距離とは異なり得る。
【0132】
第一コイル部8D、第二コイル部9D及び第三コイル部10Dは、径が異なっている。第一コイル部8Dの径は、第二コイル部9Dの径及び第三コイル部10Dの径よりも大きい。第三コイル部10Dの径は、第二コイル部9Dの径よりも大きい。第一コイル部8Dのコイル軸と、第二コイル部9Dのコイル軸と、第三コイル部10Dのコイル軸とは、一致していない。第二コイル部9Dのコイル軸は、第一コイル部8Dのコイル軸及び第三コイル部10Dよりも端面2b側に位置している。第三コイル部10Dのコイル軸は、第一コイル部8Dの第一コイル部8Dよりも端面2b側に位置している。
【0133】
第一コイル部8D、第二コイル部9D及び第三コイル部10Dは、素体2の端面2b側の縁が第一方向D1において一致している。具体的には、第一方向D1から見て、第一コイル部8Dを構成するコイル導体層52b及びコイル導体層52dの一部と、第二コイル部9Dを構成するコイル導体層52hの一部と、第三コイル部10Dを構成するコイル導体層52fの一部とが重なっている。
【0134】
第二コイル部9D及び第三コイル部10Dは、第一方向D1から見て、第一端子電極3と重ならない。すなわち、第二コイル部9D及び第三コイル部10Dは、第一端子電極3の上方に位置していない。具体的には、第一方向D1から見て、コイル導体層52e~52hは、第一端子電極3と重ならない。
【0135】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1Dでは、積層コイル部品1と同様に、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間の距離L2を、第一接続導体6Dと第一コイル部8Dとの間の距離L1及び第一接続導体6Dと第三コイル部10Dとの間の距離L3よりも大きくしている。これにより、積層コイル部品1Dでは、第一接続導体6Dとの電位差が大きい第二コイル部9D及び第三コイル部10Dが、第一コイル部8Dよりも第一接続導体6Dから離れて配置される。そのため、積層コイル部品1Dでは、第一接続導体6Dと第二コイル部9Dとの間に形成される浮遊容量を低減することができる。また、積層コイル部品1Dでは、第一コイル部8Dの径は大きくすることができる。そのため、コイル5Dのインダクタンスを大きくすることができる。以上のように、積層コイル部品1Dでは、浮遊容量の発生を抑制し、特性の向上が図れる。
【0136】
本実施形態に係る積層コイル部品1Dでは、積層コイル部品1Dの使用時に生じる電位差に基づいて、第一接続導体6Dと、第一コイル部8D、第二コイル部9D及び第三コイル部10Dと、の距離L1,L2,L3が設定されている。具体的には、積層コイル部品1Dでは、第一接続導体6Dとの電位差が大きいほど、第一接続導体6Dとの間の距離が大きくなるように、第一接続導体6Dと、第一コイル部8D、第二コイル部9D及び第三コイル部10Dと、の距離L1,L2,L3が設定されている。この構成では、電位差に応じて距離が設定されるため、浮遊容量の低減を図れる。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0138】
上記実施形態では、第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれが長方形状を呈している形態を一例に説明した。しかし、第一端子電極3及び第二端子電極4の形状はこれに限定されない。
【0139】
上記実施形態では、第一接続導体6,6C,6Dと第二接続導体7,7C,7Dとが対角の位置に配置されている形態を一例に説明した。しかし、第一接続導体6,6C,6Dと第二接続導体7,7C,7Dとは、他の位置に配置されていてもよい。
【0140】
上記実施形態では、第一接続導体6,6C,6D及び第二接続導体7,7C,7Dが円柱状を呈する形態を一例に説明した。しかし、第一接続導体6,6C,6D及び第二接続導体7,7C,7Dの形状はこれに限定されず、三角柱状、角柱状などであってもよい。
【0141】
上記実施形態では、コイル5が複数のコイル導体層12b~12hで構成され、第一コイル部8がコイル導体層12b~12dによって構成され、第二コイル部9がコイル導体層12e~12hによって構成されている形態を一例に説明した。しかし、コイル5を構成するコイル導体層の数は上述した値に限られない。また、第一コイル部8を構成するコイル導体層と第二コイル部9を構成するコイル導体層の数は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、コイル5は、他のコイル部を含んでいてもよい。コイル5A,5B,5C,5Dについても同様である。
【符号の説明】
【0142】
1,1A,1B,1C,1D…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c…主面(他方の主面)、2d…主面(一方の主面)、2e,2f…側面、3…第一端子電極、4…第二端子電極、5,5A,5B,5C,5D…コイル、6,6C,6D…第一接続導体、7,7C,7D…第二接続導体、8,8A,8B,8C,8D…第一コイル部、9,9A,9B,9C,9D…第二コイル部、10a~10k,20a~20k,30a~30k,40a~40k,50a~50k…素体層(絶縁体層)、L1,L2,L3…距離。