IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図1
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図2
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図3
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図4
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図5
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図6
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図7
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図8
  • 特開-チップカバーおよび工作機械 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160137
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】チップカバーおよび工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
B23Q11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064698
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 稔尚
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 崇純
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011DD02
3C011DD03
(57)【要約】
【課題】クロスレールに追従して昇降する昇降カバーの構造を一層簡素化できるチップカバーおよび工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械1は、ワークが載置される載物テーブル3と、載物テーブル3の上方で昇降可能なクロスレール5と、クロスレール5に支持された主軸ヘッド7と、を有する。チップカバー10は、クロスレール5と交差しかつ水平な開閉方向に移動可能な開閉カバー13と、開閉カバー13のクロスレール5との交差部分に形成された切欠き131と、切欠き131に沿って昇降可能かつ切欠きを閉塞可能な昇降カバー14と、昇降カバー14をクロスレール5に追従して昇降させる連結機構140と、を有する。連結機構140は、昇降カバー14に設置されたカバー側連結部材と、クロスレール5に設置されたクロスレール側連結部材(ハンガーレール15)と、を有し、カバー側連結部材とクロスレール側連結部材とは開閉方向へ相対移動自在である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置される載物テーブルと、前記載物テーブルの上方で昇降可能なクロスレールと、前記クロスレールに支持された主軸ヘッドと、を有する工作機械に設置され、前記クロスレールと交差しかつ水平な開閉方向に移動可能な開閉カバーと、前記開閉カバーの前記クロスレールとの交差部分に形成された切欠きと、前記切欠きに沿って昇降可能かつ前記切欠きを閉塞可能な昇降カバーと、前記昇降カバーを前記クロスレールに追従して昇降させる連結機構と、を有するチップカバーであって、
前記連結機構は、前記昇降カバーに設置されたカバー側連結部材と、前記クロスレールに設置されたクロスレール側連結部材と、を有し、前記カバー側連結部材と前記クロスレール側連結部材とは前記開閉方向へ相対移動自在に連結されていることを特徴とするチップカバー。
【請求項2】
請求項1に記載したチップカバーにおいて、
前記クロスレール側連結部材は、前記クロスレールに固定されて前記開閉方向に延びるガイドレールであり、
前記カバー側連結部材は、前記昇降カバーに固定されかつ前記ガイドレールに移動自在に係合されたスライダであることを特徴とするチップカバー。
【請求項3】
請求項2に記載したチップカバーにおいて、
前記スライダは、前記クロスレールに沿った方向へ延びるブラケットであることを特徴とするチップカバー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載したチップカバーにおいて、
前記昇降カバーは、複数の板状部材を有し、
最上段の前記板状部材には前記カバー側連結部材が固定され、
最下段の前記板状部材は前記開閉カバーに係止可能であり、
最上段および最下段を除く前記板状部材は、上段の前記板状部材の下端部が下段の前記板状部材の上端部に係止可能であることを特徴とするチップカバー。
【請求項5】
請求項4に記載したチップカバーにおいて、
前記昇降カバーには、複数の前記板状部材に沿って上下に伸縮可能な補助フレームが設置されていることを特徴とするチップカバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載したチップカバーにおいて、
前記昇降カバーは、上縁に沿って庇が形成されていることを特徴とするチップカバー。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載したチップカバーにおいて、
前記載物テーブルの正面側に設置された正面カバーと、前記載物テーブルの側面側に設置されかつ前記クロスレールと交差方向に延びる側面カバーと、を有し、前記開閉カバーは、前記側面カバーに沿って移動可能に設置されていることを特徴とするチップカバー。
【請求項8】
ワークが載置される載物テーブルと、前記載物テーブルの上方で昇降可能なクロスレールと、前記クロスレールに支持された主軸ヘッドと、を有する工作機械であって、
前記クロスレールと交差しかつ水平な開閉方向に移動可能な開閉カバーと、前記開閉カバーの前記クロスレールとの交差部分に形成された切欠きと、前記切欠きに沿って昇降可能かつ前記切欠きを閉塞可能な昇降カバーと、前記昇降カバーを前記クロスレールに追従して昇降させる連結機構と、を有するチップカバーを備え、
前記連結機構は、前記昇降カバーに設置されたカバー側連結部材と、前記クロスレールに設置されたクロスレール側連結部材と、を有し、前記カバー側連結部材と前記クロスレール側連結部材とは前記開閉方向へ相対移動自在に連結されていることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロスレール昇降型の工作機械に設置される開閉式のチップカバーおよびこれを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のうち、門型マシニングセンタや門型ターニングセンタでは、一対のコラムおよび水平なクロスレールを有する門型構造で主軸ヘッドを支持している。門型構造の工作機械の一部は、コラムに沿ってクロスレールを昇降可能なクロスレール昇降型とされている。
工作機械の一部では、ワークが載置される載物テーブルの周囲に開閉式のチップカバーが設置される。クロスレール昇降型の工作機械のチップカバーでは、クロスレールとの干渉を避けるために、クロスレールとの交差部分に切欠きが形成される。切欠きには、クロスレールが離れた状態でのチップやクーラントの漏れ出しを避けるために、切欠きを塞ぐ可動式の補助カバーが設置される。補助カバーとしては、クロスレールに追従して昇降する昇降カバーが用いられる(特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1の自動工具交換装置保護カバーでは、保護カバーの切欠きに小カバーを設け、小カバーを昇降させるエアシリンダなどの駆動装置を設けるとともに、クロスレールの高さ位置を検出する複数のリミットスイッチおよび制御装置を設け、駆動装置をクロスレールの高さに応じて電気制御することにより小カバーをクロスレールに追従させている。
【0004】
特許文献2の工作機械のカバー構造では、保護カバーの切欠きに昇降カバーを設け、昇降カバーをクロスレールに係止する係止機構を設け、クロスレールに対して昇降カバーを機械的に追従させる。特許文献2の構造では、保護カバーを開いた際(保護カバーがクロスレールから離れる方向へ移動した際)には係止機構が解除され、代わりに落下防止機構により昇降カバーが現状位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-103175号公報
【特許文献2】特開2010-167545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、小カバーの開閉に、エアシリンダなどの駆動装置や複数のリミットスイッチ、制御装置ないしこれらの間の電気配線が必要であり、装置の複雑化が避けられない。
特許文献2では、昇降カバーの駆動をクロスレールに依存することで電気制御よりも構造が簡素化できる。しかし、保護カバーを開いた際に昇降カバーを現状位置に保持する落下防止機構が必要であり、構造を一層簡素化することが要望されていた。
【0007】
本発明の目的は、クロスレールに追従して昇降する昇降カバーの構造を一層簡素化できるチップカバーおよび工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のチップカバーは、ワークが載置される載物テーブルと、前記載物テーブルの上方で昇降可能なクロスレールと、前記クロスレールに支持された主軸ヘッドと、を有する工作機械に設置され、前記クロスレールと交差しかつ水平な開閉方向に移動可能な開閉カバーと、前記開閉カバーの前記クロスレールとの交差部分に形成された切欠きと、前記切欠きに沿って昇降可能かつ前記切欠きを閉塞可能な昇降カバーと、前記昇降カバーを前記クロスレールに追従して昇降させる連結機構と、を有するチップカバーであって、前記連結機構は、前記昇降カバーに設置されたカバー側連結部材と、前記クロスレールに設置されたクロスレール側連結部材と、を有し、前記カバー側連結部材と前記クロスレール側連結部材とは前記開閉方向へ相対移動自在に連結されていることを特徴とする。
【0009】
このような本発明では、クロスレールおよび主軸ヘッドで支持された主軸にツールを装着し、載物テーブルに載置されたワークに対して相対移動させることで、所期の切削加工あるいは孔開け加工を行うことができる。この際、ワークおよびツールから飛散するチップやクーラントは、チップカバーによって周囲への散乱を防止できる。
チップカバーにおいては、開閉カバーを開閉することでツールの交換あるいはアタッチメントの交換を行うことができる。この際、開閉カバーに形成された切欠きにより、開閉カバーとクロスレールとの干渉を回避できる。この切欠きは、クロスレールに追従して昇降される昇降カバーにより塞がれるため、クロスレールが上昇した状態でも切欠きを通してチップカバーの外部へチップやクーラントが散乱することがない。
【0010】
本発明では、昇降カバーをクロスレールに追従して昇降させるために、連結機構が用いられている。連結機構は、カバー側連結部材とクロスレール側連結部材とが開閉カバーの開閉方向へ相対移動自在である。従って、昇降カバーがクロスレールに追従した状態のまま、開閉カバーを開閉させることができる。
このように、本発明では、機械的な連結機構により昇降カバーをクロスレールに追従させることができ、前述した特許文献1の電気的な制御手段が一切必要ないとともに、連結機構によりクロスレールと昇降カバーとが常時連結されるため、前述した特許文献2のような落下防止機構を追加する必要がない。そして、連結機構としては、昇降カバーに設置されたカバー側連結部材と、クロスレールに設置されたクロスレール側連結部材と、が相対移動自在に連結されていればよく、例えば単純なガイドレールなどを用いてきわめて簡素な構成とすることができる。
【0011】
本発明のチップカバーにおいて、前記クロスレール側連結部材は、前記クロスレールに固定されて前記開閉方向に延びるガイドレールであり、前記カバー側連結部材は、前記昇降カバーに固定されかつ前記ガイドレールに移動自在に係合されたスライダであることが好ましい。
このような本発明では、簡単な構造で連結機構を構成することができる。
なお、本発明の連結機構として、カバー側連結部材は、昇降カバーに固定されて開閉方向に延びるガイドレールであり、クロスレール側連結部材は、クロスレールに固定されかつガイドレールに移動自在に係合されたスライダである、としてもよい。
【0012】
本発明のチップカバーにおいて、前記スライダは、前記クロスレールに沿った方向へ延びるブラケットであることが好ましい。
このような本発明では、スライダとしてブラケットを用いることで、ガイドレールと昇降カバーとがクロスレールに沿った方向へ離れていても連結構造を確保することができ、主軸ヘッドとの干渉を避けてガイドレールをコラムに近い位置に設置するなど、ガイドレールの設置自由度を高めることができる。
【0013】
本発明のチップカバーにおいて、前記昇降カバーは、複数の板状部材を有し、最上段の前記板状部材には前記カバー側連結部材が固定され、最下段の前記板状部材は前記開閉カバーに係止可能であり、最上段および最下段を除く前記板状部材は、上段の前記板状部材の下端部が下段の前記板状部材の上端部に係止可能であることが好ましい。
このような本発明では、複数の板状部材の互いの重なり部面積を増減させることで、全体高さを変更させることができる。すなわち、複数の板状部材を大部分が重なった状態とすることで、昇降カバーとしての全体高さを小さくできる。一方、最上段の板状部材を上昇させることで、中間の板状部材が順次吊り上げられ、最下段の板状部材までの全体高さを大きく広げることができる。これにより、クロスレールの下降時にはコンパクトでありながら、上昇時には広い面積とすることができ、大面積の切欠きにも利用できる。
【0014】
本発明のチップカバーにおいて、前記昇降カバーには、複数の前記板状部材に沿って上下に伸縮可能な補助フレームが設置されていることが好ましい。
このような本発明では、昇降カバーが複数の板状部材で構成される場合でも、面交差方向の倒れを補助フレームで支えることができる。また、補助フレームを上下に伸縮可能とすることで、切欠き内に張り出してクロスレールと干渉することも防止できる。
なお、上下に伸縮可能な補助フレームとしては、いわゆるレージトング機構(複数のリンクをジグザクに交差させた状態で回動自在に連結したパンタグラフ機構)や、テレスコピック構造(徐々に径が異なる筒状部材を順次入れ子状に連結した構成)が利用でき、それぞれ伸長状態で所期の曲げ剛性が確保できればよい。また、補助フレームは、ひとつの昇降カバーに一対ないし3つ以上並列に設けてもよい。
【0015】
本発明のチップカバーにおいて、前記昇降カバーは、上縁に沿って庇が形成されていることが好ましい。
このような本発明では、前記連結機構の上方を庇で覆うことができ、カバー側連結部材とクロスレール側連結部材との間の摺動部分の性能維持に好適である。
【0016】
本発明のチップカバーにおいて、前記載物テーブルの正面側に設置された正面カバーと、前記載物テーブルの側面側に設置されかつ前記クロスレールと交差方向に延びる側面カバーと、を有し、前記開閉カバーは、前記側面カバーに沿って移動可能に設置されていることが好ましい。
このような本発明では、正面カバーで載物テーブルの正面側を覆うとともに、側面カバーで載物テーブルの両側を覆うことができる。そして、側面カバーに設置される開閉カバーにおいて、それぞれ昇降カバーをクロスレールに追従して昇降させることができる。側面カバーは、載物テーブルを囲むべくその両側に設けることができ、そのうち少なくとも一方に開閉カバーを設けることができる。開閉カバーを設ける側は、主軸に関与するツールやアタッチメントの自動交換装置が設置された側とすることができる。
【0017】
本発明の工作機械は、ワークが載置される載物テーブルと、前記載物テーブルの上方で昇降可能なクロスレールと、前記クロスレールに支持された主軸ヘッドと、を有する工作機械であって、前記クロスレールと交差しかつ水平な開閉方向に移動可能な開閉カバーと、前記開閉カバーの前記クロスレールとの交差部分に形成された切欠きと、前記切欠きに沿って昇降可能かつ前記切欠きを閉塞可能な昇降カバーと、前記昇降カバーを前記クロスレールに追従して昇降させる連結機構と、を有するチップカバーを備え、前記連結機構は、前記昇降カバーに設置されたカバー側連結部材と、前記クロスレールに設置されたクロスレール側連結部材と、を有し、前記カバー側連結部材と前記クロスレール側連結部材とは前記開閉方向へ相対移動自在に連結されていることを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明のチップカバーで説明した通りの効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クロスレールに追従して昇降する昇降カバーの構造を一層簡素化できるチップカバーおよび工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の開閉カバーが開いた状態を示す平面図。
図2】前記実施形態の開閉カバーが開いた状態を示す側面図。
図3】前記実施形態の開閉カバーを閉じた状態を示す側面図。
図4】前記実施形態の昇降カバーの伸長状態を示す側面図(A)および正面図(B)。
図5】前記実施形態の昇降カバーの中間状態を示す側面図(A)および正面図(B)。
図6】前記実施形態の昇降カバーの収縮状態を示す側面図(A)および正面図(B)。
図7】前記実施形態の開閉カバーを閉じたままクロスレールを下げた状態を示す側面図。
図8】前記実施形態のクロスレールを下げたまま開閉カバーを開いた状態を示す側面図。
図9】本発明の他の実施形態の昇降カバーの伸長状態を示す側面図(A)および正面図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、本発明に基づくクロスレール昇降型の工作機械1は、基礎上に固定されたベッド2の上面に載物テーブル3を有する。ベッド2の内部には駆動機構(図示省略)が設置され、ベッド2の上面に形成されたレール31に沿って載物テーブル3をX軸方向へ移動可能である。
【0021】
ベッド2を跨ぐように一対のコラム4およびクロスレール5からなる門型構造が形成され、クロスレール5にはサドル6を介して主軸ヘッド7が支持されている。コラム4の内部には駆動機構(図示省略)が設置され、クロスレール5を水平な状態のままZ軸方向へ昇降可能である。クロスレール5の内部には駆動機構(図示省略)が設置され、主軸ヘッド7をY軸方向へ移動可能である。
【0022】
主軸ヘッド7には主軸8が下向きに支持され、主軸8には切削など加工内容に応じたツール9が装着される。主軸ヘッド7の内部には主電動機および伸縮式のクイル(図示省略)が設置され、主軸8およびツール9を載物テーブル3に向けて進出させ、載物テーブル3に載置されたワークを切削加工可能である。
【0023】
ベッド2の側方には、ツールマガジン51、自動ツール交換装置52、アタッチメントマガジン53、および自動アタッチメント交換装置54が設置されている。
ツールマガジン51には主軸8に装着可能な多様なツール9が複数格納されている。
自動ツール交換装置52は、ツールマガジン51から任意のツール9を取り出して主軸8まで搬送し、主軸8に対してツール交換操作を行い、取り外したツール9を搬送してツールマガジン51に戻す動作を行う。
アタッチメントマガジン53には主軸8に装着可能な多様なアタッチメント(図示省略)が複数格納されている。
自動アタッチメント交換装置54は、主軸ヘッド7に装着されたアタッチメントを取り外し、取り外したアタッチメントをアタッチメントマガジン53まで搬送してアタッチメントマガジン53に戻すとともに、アタッチメントマガジン53から任意のアタッチメントを取り出して主軸ヘッド7まで搬送し、主軸ヘッド7に対してアタッチメントを装着する動作を行う。
【0024】
工作機械1は、本発明に基づく開閉式のチップカバー10を有する。
チップカバー10は、ベッド2を取り囲む所定高さのパネルで構成され、載物テーブル3上のワークの加工時に生じるチップやクーラントの漏れ出しを防止可能である。
チップカバー10は、正面側が開閉可能な正面カバー11とされており、アタッチメントマガジン53などが設置された側の側面に側面カバー12および開閉カバー13を有する。
正面カバー11は、載物テーブル3を挟んでクロスレール5に対向配置され、クロスレール5と平行(Y軸方向)に延びている。正面カバー11は、ベッド2に設置されたガイドレール(図示省略)で支持され、Y軸方向へ移動することで開閉可能である。
側面カバー12は、正面カバー11の一方の端部からクロスレール5と交差方向(開閉方向であるX軸方向)に延びている。側面カバー12のクロスレール5側端からコラム4までの間には、前述した自動ツール交換装置52および自動アタッチメント交換装置54の搬送動作に必要な所定の間隔が空けられている。
【0025】
図3にも示すように、側面カバー12の外側には、その表面に沿ってX軸方向に移動可能な開閉カバー13が設置されている。
開閉カバー13は、側面カバー12に設置されたガイドレール(図示省略)で支持されるとともに、側面カバー12に設置された駆動シリンダ121に接続されており、側面カバー12とコラム4との間の間隔を開閉可能である。すなわち、側面カバー12とコラム4との間隔が開いた状態(図2の状態)から、側面カバー12とコラム4との間隔が開閉カバー13で閉鎖された状態(図3の状態)まで移動することで、この間隔を開閉可能である。
【0026】
開閉カバー13には、クロスレール5に臨む側に切欠き131が形成され、切欠き131には昇降カバー14が設置されている。
昇降カバー14は、上下方向に伸縮可能であり、下端が切欠き131の下縁に係止され、上端が切欠き131の側縁に沿って昇降可能である。昇降カバー14の中間ないし上部の昇降をガイドするために、切欠き131の側縁にはガイドフレーム132が形成されている。切欠き131の下縁には昇降カバー14の下端を係止可能な枠部材133が固定されている。
【0027】
昇降カバー14の上端はハンガーレール15に吊り下げ支持されている。
ハンガーレール15は、X軸方向(開閉方向)に延びる長尺部材であり、基端部をクロスレール5の下面側に固定されている。昇降カバー14は、ハンガーレール15に対して、その長手方向(開閉方向)に移動自在に支持されている。
なお、クロスレール5が移動上限まで上昇した状態でも、これに追従して昇降カバー14が伸長できるように、昇降カバー14は伸長限界長さに余裕をもって設計しておく。
【0028】
図4図5、および図6には、それぞれ昇降カバー14の伸長状態、中間状態、および収縮状態が示されている。各図において、それぞれ(A)部は昇降カバー14の側面形状を示し、(B)部は昇降カバー14の正面形状を示す。
【0029】
図4において、昇降カバー14は、複数(3枚)の板状部材141,142,143で構成されている。
最上段の板状部材141には、上端内側に枠部材144が固定されている。中間の板状部材142には、上端内側に枠部材145が固定されている。最下段の板状部材143には、上端内側に枠部材146が固定されている。
最上段の板状部材141において、枠部材144(本発明のカバー側連結部材)は、ハンガーレール15(本発明のクロスレール側連結部材)に対して、その延長方向(開閉方向であるX軸方向)に移動自在に連結されている。これらの枠部材144(本発明のカバー側連結部材)およびハンガーレール15(本発明のクロスレール側連結部材)により、連結機構140が構成されている。
ハンガーレール15としては、例えば溝付き形材が利用でき、枠部材144から突起するピンなどを溝に係合させることで、昇降カバー14を移動自在に吊り下げ可能である。
【0030】
中間の板状部材142は、上端部外側が上段の板状部材141の下端部と重ねられ、下端部が下段の板状部材143の上端部外側と重ねられており、これにより昇降カバー14はテレスコピック構造とされ、全体として伸縮が可能である(図5および図6参照)。
最下段の板状部材143の下端部には図示しない係止ピンなどが形成され、開閉カバー13の枠部材133に係止されて上昇を規制されている。最上段の板状部材141を上方へ引き上げた際には、板状部材143の下端部が枠部材133で係止され、昇降カバー14が伸長される(図4参照)。
一方、最上段の板状部材141を下降させると、板状部材141,142,143の重なり部分が増して昇降カバー14が収縮し(図5参照)、枠部材144,145,146がそれぞれ当接した状態で最も縮んだ状態(図6参照)となる。
【0031】
昇降カバー14には、内側に2列の補助フレーム148が設置されている。
補助フレーム148は、それぞれいわゆるレージトング機構(複数のリンクをジグザクに交差させた状態で回動自在に連結したパンタグラフ機構)で構成され、上下に伸縮可能かつ伸長状態で所期の曲げ剛性が確保されている。
【0032】
このような昇降カバー14においては、開閉カバー13の開閉状態に関わらず、クロスレール5の昇降動作に応じて伸長状態が変化する。
【0033】
図2において、開閉カバー13はコラム4から離れた開位置にあり、コラム4との間の間隔を通して主軸8へのツール9の着脱や、主軸ヘッド7へのアタッチメント(図示省略)の着脱などの作業が行われる。
図2の状態では、クロスレール5は移動上限に移動しており、クロスレール5で吊り下げられた昇降カバー14は伸長して切欠き131を全面的に塞いでいる。
【0034】
図3において、加工動作を行う際には、開閉カバー13を開位置からコラム4側の閉位置まで移動させる。
この際、昇降カバー14とクロスレール5とを連結する連結機構140は開閉方向へ移動自在であり、昇降カバー14が切欠き131を塞いだ状態のまま、開閉カバー13を閉位置まで移動できる。
【0035】
図3において、開閉カバー13が閉位置にある状態で、クロスレール5を下降させると、クロスレール5の下降に追従して昇降カバー14が収縮する。
図7において、下降するクロスレール5が開閉カバー13の上端高さ以下に達しても、開閉カバー13には切欠き131が形成されており、開閉カバー13との干渉は防止される。
この際、切欠き131を塞いでいた昇降カバー14は、クロスレール5とともにハンガーレール15が下降することで全体高さが収縮し、クロスレール5の下降を妨げることはない。
【0036】
一方、下降しているクロスレール5が再び上昇した際には、クロスレール5とともにハンガーレール15が上昇し、これにより昇降カバー14が伸長して切欠き131を塞いだ状態が保持される。つまり、クロスレール5の下面側において切欠き131が開放状態で残されることはない。
【0037】
さらに、クロスレール5が下降した状態のまま、開閉カバー13を開くこともできる。
図8において、開閉カバー13を閉位置から開位置まで移動させることで、クロスレール5の下方には開閉カバー13とコラム4との間に間隔が空けられる。
この際、昇降カバー14とクロスレール5とを連結する連結機構140は、枠部材144(カバー側連結部材)がハンガーレール15(クロスレール側連結部材)に対して開閉方向へ移動自在であり、昇降カバー14の上方で切欠き131が開かれた状態のまま、開閉カバー13を開位置まで移動できる。
【0038】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
本実施形態では、クロスレール5および主軸ヘッド7で支持された主軸8にツール9を装着し、載物テーブル3に載置されたワークに対して相対移動させることで、所期の切削加工あるいは孔開け加工を行うことができる。この際、ワークおよびツール9から飛散するチップやクーラントは、チップカバー10によって周囲への散乱を防止できる。
チップカバー10においては、開閉カバー13を開閉することでツール9の交換あるいはアタッチメントの交換を行うことができる。この際、開閉カバー13に形成された切欠き131により、開閉カバー13とクロスレール5との干渉を回避できる。この切欠き131は、クロスレール5に追従して昇降される昇降カバー14により塞がれるため、クロスレール5が上昇した状態でも切欠き131を通してチップやクーラントがチップカバー10の外部に散乱することがない。
【0039】
本実施形態では、昇降カバー14をクロスレール5に追従して昇降させるために、連結機構140が用いられている。連結機構140は、枠部材144(カバー側連結部材)とハンガーレール15(クロスレール側連結部材)とが開閉カバー13の開閉方向へ相対移動自在である。従って、昇降カバー14がクロスレール5に追従した状態のまま、開閉カバー13を開閉させることができる。
このように、本実施形態では、機械的な連結機構140により昇降カバー14をクロスレール5に追従させることができ、電気的な制御手段などが一切必要ないとともに、連結機構140によりクロスレール5と昇降カバー14とが常時連結されるため、落下防止機構などを追加する必要がない。そして、連結機構140としては、昇降カバー14に設置された枠部材144(カバー側連結部材)と、クロスレール5に設置されたハンガーレール15(クロスレール側連結部材)と、が相対移動自在に連結されていればよく、例えば単純なガイドレールなどを用いてきわめて簡素な構成とすることができる。
【0040】
本実施形態では、チップカバー10のクロスレール側連結部材として、クロスレール5に固定されて開閉方向に延びるガイドレールであるハンガーレール15を用い、カバー側連結部材として、昇降カバー14に固定されかつハンガーレール15に移動自在に係合されたスライダである枠部材144を用いたため、簡単な構造で連結機構140を構成することができる。
【0041】
本実施形態では、昇降カバー14は、複数の板状部材141~143を有し、最上段の板状部材141には枠部材144(カバー側連結部材)が固定され、最下段の板状部材143は開閉カバー13(切欠き131の下縁)に係止可能であり、最上段および最下段を除く板状部材142は、上段の板状部材(141,142)の下端部が下段の板状部材(142,143)の上端部に係止可能な構成としていた。
これにより、複数の板状部材141~143の互いの重なり部面積を増減させることで、全体高さを変更させることができる。すなわち、複数の板状部材141~143を大部分が重なった状態とすることで、昇降カバー14としての全体高さを小さくできる。一方、最上段の板状部材141を上昇させることで、中間の板状部材142および最下段の板状部材143が順次吊り上げられ、全体高さを大きく広げることができる。これにより、クロスレール5の下降時にはコンパクトでありながら、上昇時には広い面積とすることができ、大面積の切欠き131にも利用できる。
【0042】
本実施形態のチップカバー10において、昇降カバー14には、複数の板状部材141~143に沿って上下に伸縮可能な補助フレーム148が設置されている。
これにより、昇降カバー14が複数の板状部材141~143で構成される場合でも、面交差方向の倒れを補助フレーム148で支えることができる。また、補助フレーム148を上下に伸縮可能とすることで、切欠き131内に張り出してクロスレール5と干渉することも防止できる。
【0043】
本実施形態のチップカバー10において、載物テーブル3の正面側に設置された正面カバー11と、載物テーブル3の側面側に設置されかつクロスレール5と交差方向に延びる側面カバー12と、を有し、開閉カバー13は、側面カバー12に沿って移動可能に設置されていた。
これにより、正面カバー11で載物テーブル3の正面側を覆うとともに、側面カバー12で載物テーブル3の側面側(自動ツール交換装置52および自動アタッチメント交換装置54が設置された側の側面)を覆うことができる。そして、側面カバー12に設置される開閉カバー13において、昇降カバー14をクロスレール5に追従して昇降させることができる。
【0044】
図9には本発明の他の実施形態が示されている。
昇降カバー14Aは、基本構成が前述した実施形態の昇降カバー14と同様であるが、ハンガーレール15が枠部材144から離れており、枠部材144にはハンガーレール15に至るブラケット147が設置され、さらに上端縁に沿って庇部材149が形成されている。
【0045】
ブラケット147は、一端が枠部材144に接続されるとともに、クロスレール5に沿って延び、他端がハンガーレール15に摺動自在に係合されており、ハンガーレール15に対してスライダとなっている。昇降カバー14Aは、このブラケット147を介してハンガーレール15に吊り下げられている。これらのブラケット147(カバー側連結部材)およびハンガーレール15(クロスレール側連結部材)により連結機構140Aが構成されている。
このような連結機構140Aによれば、クロスレール5に支持されるハンガーレール15を、より外側の位置、つまり主軸ヘッド7から離れた位置に設置でき、ハンガーレール15と主軸ヘッド7との干渉を避けて主軸ヘッド7のY軸方向の移動範囲を大きく確保できる。
【0046】
庇部材149は、最上段の板状部材141の上縁から外側に折り返されて伸びており、水平な部分がブラケット147およびハンガーレール15を覆うように形成されている。
このような昇降カバー14Aによれば、庇部材149で連結機構140Aの上方を覆うことができ、ブラケット147(カバー側連結部材)とハンガーレール15(クロスレール側連結部材)との間の摺動部分の性能維持に好適である。
なお、ハンガーレール15とクロスレール5との接続にはC字状の接続部材などを用い、ハンガーレール15の上面側を覆う庇部材149との干渉を避けることが好ましい。
【0047】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、クロスレール5の下面に固定されたハンガーレール15(クロスレール側連結部材)に対して、昇降カバー14の上端に固定された枠部材144またはブラケット147をスライダ(カバー側連結部材)として連結機構140,140Aを構成した。これに対し、カバー側連結部材は、昇降カバー14に支持されて開閉方向に延びるガイドレールであり、クロスレール側連結部材は、クロスレール5に固定されかつガイドレールに移動自在に係合されたスライダである、としてもよい。
【0048】
前述した図9の実施形態では、ブラケット147をカバー側連結部材として用いたが、庇部材149をカバー側連結部材としてもよい。この場合、ブラケット147は省略してよく、庇部材149に昇降カバー14Aの荷重に耐える強度を確保したうえ、庇部材149の先端をハンガーレール15に摺動自在に係合させてカバー側連結部材とすればよい。
前記実施形態では、上下に伸縮可能な補助フレーム148として、いわゆるレージトング機構(複数のリンクをジグザクに交差させた状態で回動自在に連結したパンタグラフ機構)を用いたが、テレスコピック構造(徐々に径が異なる筒状部材を順次入れ子状に連結した構成)を利用してもよく、それぞれ伸長状態で所期の曲げ剛性が確保できればよい。また、補助フレーム148は、ひとつの昇降カバー14に一対ないし3つ以上並列に設けてもよい。
【0049】
チップカバー10の寸法形状および開閉部分については、前記実施形態に限らず適宜変更することができる。例えば、側面カバー12には、開閉カバー13の他にも開閉式のドアなどが形成されていてもよい。正面カバー11は、Y軸方向に移動して開閉可能な構成に限らず、それ自体はベッド2に固定されているが開閉式のドアを備えたパネルなどであってもよい。
工作機械1の構成についても、前記実施形態に限らず適宜変更することができる。例えば、主軸8の向きを変えるためにB軸回転が可能な主軸ヘッドを備えたもの、あるいはコラム4がベッド2に対してX軸方向へ移動する構成などであってもよく、クロスレール5が昇降する構成の工作機械であれば本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明はクロスレール昇降型の工作機械に設置される開閉式のチップカバーおよびこれを備えた工作機械に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…工作機械、2…ベッド、3…載物テーブル、4…コラム、5…クロスレール、6…サドル、7…主軸ヘッド、8…主軸、9…ツール、10…チップカバー、11…正面カバー、12…側面カバー、121…駆動シリンダ、13…開閉カバー、131…切欠き、132…ガイドフレーム、14,14A…昇降カバー、140,140A…連結機構、141,142,143…板状部材、144…枠部材(カバー側連結部材)、145,146…枠部材、147…ブラケット(カバー側連結部材)、148…補助フレーム、149…庇部材、15…ハンガーレール(クロスレール側連結部材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9