IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 金井 建二の特許一覧

<>
  • 特開-制振構造 図1
  • 特開-制振構造 図2
  • 特開-制振構造 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160147
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20221012BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04H9/02 321B
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064713
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】516223632
【氏名又は名称】金井 建二
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】金井 建二
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AA17
2E139AC23
2E139AD03
2E139BA07
2E139BA12
2E139BA17
2E139BA19
2E139BA44
2E139BD15
2E139BD22
3J048AA06
3J048AC01
3J048AC04
3J048AC06
3J048BD08
3J048BE03
3J048BE10
3J048BE12
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】微小な揺れと大きな揺れのいずれにも効果を発揮する、制振構造を提供することを目的とする。
【解決手段】平行する2本の縦材と、2本の縦材の上端及び下端に接合した平行する2本の横架材と、一方の縦材に固定する第一制振ダンパーと、他方の縦材に固定する第二制振ダンパーと、第一制振ダンパーから他方の縦材の上側に架ける第一上筋かいと、第一制振ダンパーから他方の縦材の下側に架ける第一下筋かいと、第二制振ダンパーから一方の縦材の上側に架ける第二上筋かいと、第二制振ダンパーから一方の縦材の下側に架ける第二下筋かいと、により構成し、第一制振ダンパーは速度依存ダンパーであり、第二制振ダンパーは履歴ダンパーである、制振構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行する2本の縦材と、
2本の縦材の上端及び下端に接合した平行する2本の横架材と、
一方の縦材に固定する第一制振ダンパーと、
他方の縦材に固定する第二制振ダンパーと、
第一制振ダンパーから他方の縦材の上側に架ける第一上筋かいと、
第一制振ダンパーから他方の縦材の下側に架ける第一下筋かいと、
第二制振ダンパーから一方の縦材の上側に架ける第二上筋かいと、
第二制振ダンパーから一方の縦材の下側に架ける第二下筋かいと、により構成し、
第一制振ダンパーは速度依存ダンパーであり、
第二制振ダンパーは履歴ダンパーである、
制振構造。
【請求項2】
第一制振ダンパーは粘弾性ダンパー又はオイルダンパーであることを特徴とする、請求項1に記載の制振構造。
【請求項3】
第二制振ダンパーは鋼製ダンパー又は摩擦ダンパーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の制振構造。
【請求項4】
2本の縦材と2本の横架材とによって構成される矩形の開口を正面又は背面としたときに、第一制振ダンパーと、第二制振ダンパーは、少なくとも正面側又は背面側のいずれかに筋かい取付部を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造住宅における制振構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
戸建の木造住宅の制振構造として、柱や筋かいからなる壁構造に、制振ダンパーを別に設けるものが一般的に知られている。
制振ダンパーとしては、例えば特許文献1や特許文献2に記載のダンパーが知られている。
特許文献1には、高さ方向に並列した複数の振動吸収フィンにより制振を行う鋼製ダンパーが記載されている。
また、特許文献2には、粘弾性体により制振を行う粘弾性ダンパーが記載されている。
そして、従来の制振構造は、いずれか一方のダンパーを用いた構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-121348号公報
【特許文献2】実用新案登録第3204250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋼製ダンパーは履歴ダンパーであり、大きな揺れに対応することができる一方、一定以上の変位がなければ制振機能が発揮されないため、微小な揺れに対しては効果がない。
一方、粘弾性ダンパーは速度依存ダンパーであり、微小な揺れでも制振機能が発揮される一方、大きな揺れに対応することができない。
従来の制振構造は、いずれか一方のダンパーしか用いていないため、微小な揺れか大きな揺れのどちらかにしか効果を発揮しなかった。
【0005】
本発明は、微小な揺れと大きな揺れのいずれにも効果を発揮する、制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の制振構造は、平行する2本の縦材と、2本の縦材の上端及び下端に接合した平行する2本の横架材と、一方の縦材に固定する第一制振ダンパーと、他方の縦材に固定する第二制振ダンパーと、第一制振ダンパーから他方の縦材の上側に架ける第一上筋かいと、第一制振ダンパーから他方の縦材の下側に架ける第一下筋かいと、第二制振ダンパーから一方の柱の上側に架ける第二上筋かいと、第二制振ダンパーから一方の柱の下側に架ける第二下筋かいと、により構成し、第一制振ダンパーは速度依存ダンパーであり、第二制振ダンパーは履歴ダンパーである。
第一制振ダンパーは粘弾性ダンパー又はオイルダンパーであってもよい。
第二制振ダンパーは鋼製ダンパー又は摩擦ダンパーであってもよい。
2本の縦材と2本の横架材とによって構成される矩形の開口を正面又は背面としたときに、第一制振ダンパーと、第二制振ダンパーは、少なくとも正面側又は背面側のいずれかに筋かい取付部を有してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の制振構造は、速度依存ダンパーと履歴ダンパーを組み合わせて構成するため、日常の微小な揺れから、大地震時の大きな揺れまで制振することができる。
また、第一制振ダンパー、第二制振ダンパーのいずれも、正面側または背面側に筋かいを取り付けるため、筋かいの長さが均一となり、取り付け時に筋かいを取り違えるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の制振構造の正面図
図2】第一制振ダンパーの斜視図
図3】第二制振ダンパーの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。なお、本説明における正面、背面は2本の柱と2本の横架材とによって構成される開口を基準とする。
【0010】
[実施例1]
<1>制振構造の概要
本発明の制振構造は、平行する2本の柱1a、1bと、柱1a、1bの上下の横架材である梁2と土台3で構成された軸組構法の架構に制振ダンパーを取り付けて制振機能を付与したものである。
本実施例における架構には、柱1a、1bに沿った縦枠1c、床合板3a上に下枠3bを設けてある。
そして、一方の柱1a側の縦枠1cの高さ方向中央の内面には第一制振ダンパー4を固定し、他方の柱1b側の縦枠1cの高さ方向中央の内面には第二制振ダンパー5を固定する。
また、第一制振ダンパー4から他方の柱1bの上側に架ける第一上筋かい6a、第一制振ダンパー4から他方の柱1bの下側に架ける第一下筋かい6b、第二制振ダンパー5から一方の柱1aの上側に架ける第二上筋かい6c、及び第二制振ダンパー5から他方の柱1aの下側に架ける第二下筋かい6dを設ける。
各筋かい6a、6b、6a、6dは筋かい金物7を介して縦枠1cに固定する。ただし、柱1a、1bと梁2や下枠3bに同時に固定してもよい。
なお、本実施例においては、縦枠1cに第一制振ダンパー4、第二制振ダンパー5及び各筋かい6a、6b、6a、6dを固定するが、縦枠1cを設けない場合には、柱1a、1bに直接固定してもよい。
【0011】
<2>制振ダンパー
本発明の制振構造に用いる第一制振ダンパー4と第二制振ダンパー5は、一方を速度依存ダンパー、他方を履歴ダンパーとする。
本実施例においては、第一制振ダンパー4を速度依存ダンパーである粘弾性ダンパーとし、第二制振ダンパー5を履歴ダンパーである鋼製ダンパーとするが、速度依存ダンパーと履歴ダンパーの組合せであればよい。また、速度依存ダンパーとしてオイルダンパー、履歴ダンパーとして摩擦ダンパーを用いてもよい。
【0012】
<2.1>第一制振ダンパー
第一制振ダンパー4は、縦枠1cと接合するベースプレート41と、第一上筋かい6a及び第一下筋かい6bに接合する筋かい取付部材42と、ベースプレート41と筋かい取付部材42とを接着する粘弾性体43と、からなる。
【0013】
<2.1.1>ベースプレート
ベースプレート41は断面L字状の鋼板である。
ベースプレート41は、L字の一辺を成す一平面の外側を縦枠1cに当接して、ビス等によって固定する。平面を当接した状態でビス等により固定するため、容易に取り付けることができる。
そして、他平面の内側に、粘弾性体43を介して筋かい取付部材42を接着する。
【0014】
<2.1.2>筋かい取付部材
筋かい取付部材42は鋼製の平板である。
筋かい取付部材42は、ベースプレート41と接着した際に、縦枠1cと逆側の長辺側の面がベースプレート41から突出する。また、筋かい受け部材42の側面とベースプレート41との間には間隔を設ける。
第一上筋かい6a及び第一下筋かい6bは筋かい取付部材42の、ベースプレート41から突出した部分にビス44等により固定する。このとき、第一上筋かい6aと第一下筋かい6bは当接していても離れていてもよい。
筋交い受け部材42は平板であり、各筋かい6a、6bの平面を当接した状態でビス44等により固定するため、容易に取り付けることができる。
【0015】
<2.1.3>粘弾性体
粘弾性体43は高減衰ゴム、アクリルゴム等からなる。
粘弾性体43は、一方の面をベースプレート41に接着し、他方の面を筋かい取付部材42に接着して、ベースプレート41と筋かい取付部材42とを一体にする。
粘弾性体43の両面にベースプレート41及び筋かい取付部材42を接着することにより、粘弾性体43は、ベースプレート41と筋かい取付部材42の相対的な変位に合わせて変形し、制振を行う。
【0016】
<2.2>第二制振ダンパー
第二制振ダンパー5は、縦枠1cと接合するベースプレート51と、第二上筋かい6c及び第二下筋かい6dに接合する筋かい取付部材52と、ベースプレート51と筋かい取付部材52との間に平行に設ける複数の振動吸収フィン53と、からなる。
【0017】
<2.2.1>
ベースプレート51は鋼製の平板である。
ベースプレート51は、縦枠1cに当接して、ビス等によって固定する。平面を当接した状態でビス等により固定するため、容易に取り付けることができる。
ベースプレート51の表面には、振動吸収フィン53を固定する。
【0018】
<2.2.2>筋かい取付部材
筋かい取付部材52は断面L字状の鋼板である。
筋かい取付部材52は、L字の一辺を成す平面状のフィン固定部521の内側に振動吸収フィン53を固定する。
そして、L字のもう一辺を成す平面状の筋かい固定部522の外側に第二上筋かい6c及び第二下筋かい6dを当接して、ビス54等によって固定する。このとき、第二上筋かい6cと第二下筋かい6dは当接していても離れていてもよい。各筋かい6c、6dの平面を当接した状態でビス54等により固定するため、容易に取り付けることができる。
【0019】
<2.2.3>振動吸収フィン
振動吸収フィン53は、断面U字状の鋼板である。
振動吸収フィン53は、両端を平行に屈曲した固定部531と、固定部531を連結する変形部532と、からなる。
振動吸収フィン53は、振動に伴う変形部532の変形が、変形部532の中央に対して対称となるように、変形部532を固定部531から中央にかけて徐々に幅狭に形成し、中央の面積が狭くなるように構成する。
振動吸収フィン53の一方の固定部531はベースプレート51の表面に、他方の固定部531はフィン固定部521の内側表面に、それぞれ溶接等により固定する。
また、第二制振ダンパー5には、変位量を目視するためのスケール部材55を設ける。
スケール部材55は、両端をベースプレート51と、筋かい取付部材52のフィン固定部521の内側に固定する。
【0020】
<3>制振機能
地震により木造住宅に力が作用すると、柱1a、1bに傾きが生じる。そして、柱1a、1bとそれぞれの筋かい6a~6dとが変位し、それに合わせて第一制振ダンパー4と第二制振ダンパー5のベースプレート41、51と筋かい取付部材42、52とが相対的に変位する。
各筋かい6a~6dは筋かい取付部材42、52に固定されているため、各筋かい6a~6dと筋かい取付部材42、52は柱1a、1b及びベースプレート41、51に対して上下方向に変位する。第一制振ダンパー4は、この変位に合わせて粘弾性体43が変形し、制振機能が働く。
また、第二制振ダンパー5は、この変位に合わせて振動吸収フィン53が変形し、制振機能が働く。
【0021】
本実施例の制振構造の第一制振ダンパー4は粘弾性ダンパーであり、速度依存ダンパーである。また、第二制振ダンパー5は鋼製ダンパーであり、履歴ダンパーである。
速度依存ダンパーと履歴ダンパーを組み合わせることにより、車両の走行や風等の日常の微小な揺れに対しては速度依存ダンパーである粘弾性ダンパーにより制振し、大地震時の大きな揺れは、履歴ダンパーである鋼製ダンパーによる制振を行うことができる。
【0022】
[その他の実施例]
上述の実施例は、軸組構法の軸組構法の架構に制振ダンパーを取り付けたが、軸組構法に限らず、枠組壁構法における枠内に第一制振ダンパー4、第二制振ダンパー5及び各筋かい6a、6b、6c、6dを設けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1a、1b 柱
1c 縦枠
2 梁
3 土台、3a 床合板、3b 下枠
4 第一制振ダンパー、41 ベースプレート、42 筋かい取付部材、43 粘弾性体、44 ビス
5 第二制振ダンパー、51 ベースプレート、52 筋かい取付部材、521 フィン固定部、522 筋かい固定部、53 振動吸収フィン、531 固定部、532 変形部、54 ビス、55 スケール部材
6a 第一上筋かい、6b 第一下筋かい、6c 第二上筋かい、6d 第二下筋かい
7 筋かい金物
図1
図2
図3