(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160154
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221012BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20221012BHJP
H01L 23/34 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
H01L23/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064731
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】江積 匡彦
【テーマコード(参考)】
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5F136BA04
5F136BB04
5F136DA27
5F136FA02
5F136HA01
5H770HA06X
5H770PA12
5H770PA21
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA08
(57)【要約】
【課題】温度センサの測定精度の劣化を抑制できる半導体装置を提供する。
【解決手段】第一面及び該第一面と背合わせとなる第二面を有する基板本体と、前記第一面に実装されたパワー半導体素子と、前記第二面に接触する冷却器と、前記パワー半導体素子の温度を測定する温度センサと、を備え、前記温度センサは、前記基板本体よりも前記パワー半導体素子の実装されている側である第一側に設けられるとともに、前記パワー半導体素子よりも前記基板本体の前記第一面から離間した位置に設けられている半導体装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面及び該第一面と背合わせとなる第二面を有する基板本体と、
前記第一面に実装されたパワー半導体素子と、
前記第二面に接触する冷却器と、
前記パワー半導体素子の温度を測定する温度センサと、を備え、
前記温度センサは、前記基板本体よりも前記パワー半導体素子の実装されている側である第一側に設けられるとともに、前記パワー半導体素子よりも前記基板本体の前記第一面から離間した位置に設けられている半導体装置。
【請求項2】
前記パワー半導体素子に接続されているリードフレームと、
前記リードフレームと前記温度センサとに熱伝導可能に接続し、前記リードフレームと前記温度センサとを電気的に絶縁する絶縁部材と、
をさらに備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パワー半導体素子は、前記基板本体の前記第一面において複数が実装され、
前記リードフレームは、複数の前記パワー半導体素子にわたって延びて接続されている請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板本体と前記パワー半導体素子とが積層される積層方向において、前記温度センサの少なくとも一部は、前記リードフレームが前記パワー半導体素子と重なる領域に位置する請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記冷却器は、前記基板本体の前記第二面に接触する基部と、該基部から延びる放熱フィンと、を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インバータ等の電力変換器に用いられるパワー半導体素子が開示されている。パワー半導体素子は、電力の変換や、昇圧及び降圧する回路の一部を担っており、大きな電流を扱うため、大量の熱を発生する。このため、冷却器でパワー半導体素子を冷却しつつ、電力変換器の制御装置は、温度センサを用いてパワー半導体素子の温度をモニタリングする必要がある。
【0003】
温度センサは、例えば、パワー半導体素子が実装される基板と同一の基板において、パワー半導体素子から面内方向に離間して実装される場合がある。温度センサは、実装される箇所において、パワー半導体素子から伝導する熱の温度を測定する。この温度センサの測定結果により、制御装置は、パワー半導体素子の温度を間接的にモニタリングすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今は、パワー半導体素子がより大きな電流を扱えるように、パワー半導体素子を冷却する冷却器の冷却性能の向上が望まれている。パワー半導体素子の冷却器の冷却性能が向上すればするほど、パワー半導体素子の熱は面内方向には放散されにくくなる。このように、パワー半導体素子の熱が面内方向へ放散されにくくなると、温度センサが実装される箇所まで伝導する熱量が減少するため、パワー半導体素子の温度上昇に対する温度センサの測定精度が劣化する可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、温度センサの測定精度の劣化を抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る半導体装置は、第一面及び該第一面と背合わせとなる第二面を有する基板本体と、前記第一面に実装されたパワー半導体素子と、前記第二面に接触する冷却器と、前記パワー半導体素子の温度を測定する温度センサと、を備え、前記温度センサは、前記基板本体よりも前記パワー半導体素子の実装されている側である第一側に設けられるとともに、前記パワー半導体素子よりも前記基板本体の前記第一面から離間した位置に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、温度センサの測定精度の劣化を抑制できる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る半導体装置を横から見た図である。
【
図2】本開示の第二実施形態に係る半導体装置を横から見た図である。
【
図3】本開示の第二実施形態に係る半導体装置を積層方向から見た図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係る半導体装置の変形例を積層方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
(半導体装置)
以下、本開示の第一実施形態に係る半導体装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態の半導体装置は、例えば、インバータやコンバータ等の電力変換器が備える電力変換回路の一部を構成している。
本実施形態における半導体装置は、直流電流を入力とし、交流電流を出力とするインバータに用いられる。
【0011】
図1は、第一実施形態に係る半導体装置を横から見た図である。
図1に示すように、本実施形態の半導体装置1は、基板10と、パワー半導体素子20と、冷却器30と、リードフレーム40と、絶縁基板50と、温度センサ60と、を備えている。
【0012】
(基板)
基板10は、基板本体11と、入力回路Ciと、出力回路Coと、制御回路Cnと、接合パターンCbと、を有している。
基板本体11は、平板状を成す部材である。基板本体11は、第一面11a及び該第一面11aの裏側に位置する第二面11bを有している。即ち、基板本体11の第一面11aと第二面11bとは背合わせとなっている。
【0013】
以下、本実施形態において基板本体11が延びている方向(
図1における紙面奥行方向及び上下方向)を面内方向Aと称する。
本実施形態において、基板本体11には、例えばセラミック等が採用される。
なお、基板本体11には、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラスポリイミド、フッ素樹脂等を採用してもよい。
【0014】
入力回路Ci、出力回路Co、及び制御回路Cnは、基板本体11の第一面11aにおいて、面内方向Aに互いに離間してそれぞれ形成されている銅箔等のパターンである。より詳しくは、これら回路は、基板本体11の第一面11aにろう付け等がなされて基板本体11と一体に形成されており、基板本体11上においてそれぞれが独立した回路パターンを形成している。
【0015】
入力回路Ciには、半導体装置1への入力である直流電流が、基板本体11の一部から延びている入力用のバスバー(図示無し)を介して基板10外部から入力される。
出力回路Coは、入力回路Ciから面内方向Aに離間して形成されている。出力回路Coは、基板本体11の一部から延びている出力用のバスバー(図示無し)を介して、基板10の外部に設けられた装置に、半導体装置1によって変換された交流電流を出力する。
【0016】
本実施形態における制御回路Cnの詳細な構成については後述する。
接合パターンCbは、基板本体11の第二面11bに設けられている銅箔等のパターンである。接合パターンCbは、後述の冷却器30を接合するために第二面11bの全体にわたってろう付け等がなされて基板本体11と一体に形成されている。
【0017】
第一面11aに形成されている上記入力回路Ci、出力回路Co、及び制御回路Cnと、第二面11bに形成されている接合パターンCbとは、電気絶縁材料からなる基板本体11が間に挟まることで電気的に絶縁されている。
【0018】
(パワー半導体素子)
パワー半導体素子20は、例えば、IGBTやMOSFET、FWD等であり、入力面20b及び該入力面20bの裏側に位置する出力面20aを有する。入力面20bには、電流が入力される入力端子(図示無し)が設けられており、出力面20aには、変換された後の電流が出力される出力端子(図示無し)が設けられている。入力端子は、基板本体11の第一面11aに形成されている入力回路Ciに接合材Sを介して電気的に接続されている。即ち、パワー半導体素子20は、基板本体11の第一面11aに実装されている。以下、基板10とパワー半導体素子20とが積層される方向(
図1における左右方向)を積層方向Lと称する。
【0019】
パワー半導体素子20は、少なくとも、パワートランジスタが回路素子として組み込まれたパワートランジスタ回路(図示無し)を有している。
パワー半導体素子20は、後述の制御回路Cnより制御ワイヤ70を介して入力される制御信号を受け入れる。パワー半導体素子20は、制御回路Cnより入力された制御信号に従ってスイッチングを行う。
【0020】
(冷却器)
冷却器30は、接合材Sを介して、基板10の第二面11bに設けられている接合パターンCbに接合されている。冷却器30は、基部31と、放熱フィン32と、を有している。基部31は、接合材Sを介して、基板10の接合パターンCbに接合される接合面31aと、該接合面31aと背合わせとなり、放熱フィン32が設けられるフィン面31bと、を有している。放熱フィン32は、基部31のフィン面31bから積層方向Lに延びるように複数設けられている。
【0021】
これにより、パワー半導体素子20が発熱した際に、パワー半導体素子20の熱は、パワー半導体素子20と入力回路Ciとを接続する接合材S、入力回路Ci、基板本体11、接合パターンCb、基板本体11と基部31とを接続する接合材S、基部31、放熱フィン32の順に伝導する。したがって、パワー半導体素子20の入力面20bから積層方向Lに放散される熱は、上記経路を伝搬して、放熱フィン32によって放散される。
【0022】
本実施形態において、冷却器30の基部31及び放熱フィン32の材料には、例えばアルミニウムが採用される。なお、冷却器30の基部31及び放熱フィン32には、鉄、銅、セラミック等を採用してもよい。
【0023】
冷却器30の放熱フィン32は、冷媒が流れる冷媒流路(詳細は図示無し)に浸漬されている。
図1に、二点鎖線で冷媒流路の概形を示し、冷媒の流れWを右向きの矢印で示す。放熱フィン32は、冷媒流路内を流れる冷媒と常時熱交換を行い、パワー半導体素子20から伝導する熱を水冷方式によって放散している。本実施形態において、冷媒には、例えば水が採用される。なお、冷媒には、水以外の液体を採用してもよい。
【0024】
(リードフレーム)
リードフレーム40は、パワー半導体素子20と出力回路Coとを橋渡しすることで、両者を電気的に接続する導体である。リードフレーム40は、一端が出力回路Coに接続され、他端がパワー半導体素子20に接続されている。より詳しくは、リードフレーム40の上記一端は、接合材Sを介して、基板本体11の第一面11aに形成された出力回路Coに接続されている。リードフレーム40の上記他端は、パワー半導体素子20の出力面20aの少なくとも一部を覆うようにして、接合材Sを介して出力面20aに設けられた出力端子に接続されている。本実施形態において、リードフレーム40には、例えば銅クリップが採用される。
【0025】
(絶縁基板)
絶縁基板50は、リードフレーム40と接合材Sを介して接触している絶縁部材である。絶縁基板50は、絶縁基板本体51と、接合パターンCbと、を有している。
絶縁基板本体51は、平板状を成す部材である。絶縁基板本体51は、絶縁面51b及び該絶縁面51bの裏側に位置するセンサ実装面51aを有している。即ち、絶縁基板本体51の絶縁面51bとセンサ実装面51aとは背合わせとなっている。
【0026】
本実施形態において、絶縁基板本体51には、例えばセラミック等が採用される。なお、絶縁基板本体51には、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラスポリイミド、フッ素樹脂等が採用されてもよい。
【0027】
本実施形態における接合パターンCbは、絶縁基板50の絶縁面51b及びセンサ実装面51aに設けられている銅箔等のパターンである。より詳しくは、接合パターンCbは、絶縁基板本体51の絶縁面51b及びセンサ実装面51aの一面にそれぞれろう付け等がなされて絶縁基板本体51と一体に形成されている。絶縁面51bに形成されている接合パターンCbと、センサ実装面51aに形成されている接合パターンCbとは、絶縁基板本体51が間に挟まることで電気的に絶縁されている。
【0028】
絶縁面51bに形成された接合パターンCbは、接合材Sを介してリードフレーム40に接続されている。センサ実装面51aに形成された接合パターンCbには、一端が半導体装置1外部の電力変換器の制御装置(図示無し)に接続されたセンサ導線(図示無し)の他端が接続されている。センサ導線は、センサ実装面51aに実装された温度センサ60を動作させるための電流を制御装置から供給するとともに、温度センサ60が出力する測定結果としての応答信号を制御装置に取り出す。
【0029】
上記パワー半導体素子20と基板10の入力回路Ci、冷却器30の基部31と基板10の接合パターンCb、リードフレーム40と出力回路Co、リードフレーム40とパワー半導体素子20、及びリードフレーム40と絶縁基板50の接合パターンCbとを接続している接合材Sには、例えば、半田等が採用される。なお、焼結材(金属やセラミック等の粉末)を接合材Sとして採用してもよい。また、冷却器30の基部31と基板10の接合パターンCb、リードフレーム40と絶縁基板50の接合パターンCbとを接続する接合材Sには、接着剤を採用してもよい。
【0030】
(温度センサ)
温度センサ60は、絶縁基板50のセンサ実装面51aに形成された接合パターンCbに実装されている。温度センサ60は、絶縁基板50上の接合パターンCbの実装箇所における温度を測定するセンサである。本実施形態において、温度センサ60には、例えばサーミスタが採用される。なお、温度センサ60には、測温抵抗体等を採用してもよい。
【0031】
温度センサ60は、基板10よりもパワー半導体素子20の実装されている側である第一側に設けられるとともに、パワー半導体素子20よりも基板本体11の第一面11aから離間した位置に設けられている。本実施形態における温度センサ60は、更に、積層方向Lにおいて、リードフレーム40がパワー半導体素子20と重なる領域に位置している。
【0032】
パワー半導体素子20から放散される熱は、積層方向Lにおいて、パワー半導体素子20とリードフレーム40とを接続する接合材S、リードフレーム40、リードフレーム40と接合パターンCbとを接続する接合材S、接合パターンCb、絶縁基板50、接合パターンCb、温度センサ60の順に伝導する。センサ実装面51aにおける温度センサ60の実装箇所は上記経路を経て伝導した熱により温められる。本実施形態において、温度センサ60は、積層方向Lから見た時にパワー半導体素子20の略中央の位置に設けられる構成が望ましい。
【0033】
(制御回路)
制御回路Cnは、基板本体11の第一面11aにおいて入力回路Ciから面内方向Aに離間して設けられている。制御回路Cnには、パワー半導体素子20を制御するための電気信号を該制御回路Cnから送信可能とする制御ワイヤ70が接続されている。制御ワイヤ70は、一端が制御回路Cnに電気的に接続されており、他端がパワー半導体素子20の制御信号の入力用端子(図示無し)に電気的に接続されている。
【0034】
制御回路Cnには、パワー半導体素子20の制御信号を生成する制御部(図示無し)が接続されている。これにより、制御回路Cnは、制御ワイヤ70を介してパワー半導体素子20に上記制御部で生成した制御信号を入力することができる。本実施形態において、制御ワイヤ70には、例えばアルミニウムが採用される。なお、制御ワイヤ70には、銅や金等を採用してもよい。
【0035】
(作用効果)
上記第一実施形態に係る半導体装置1は、第一面11a及び該第一面11aと背合わせとなる第二面11bを有する基板本体11と、第一面11aに実装されたパワー半導体素子20と、第二面11bに接触する冷却器30と、パワー半導体素子20の温度を測定する温度センサ60と、を備え、温度センサ60は、基板本体11よりもパワー半導体素子20の実装されている側である第一側に設けられるとともに、パワー半導体素子20よりも基板本体11の第一面11aから離間した位置に設けられている。
【0036】
このような構成によれば、パワー半導体素子20から温度センサ60に伝導する熱が、パワー半導体素子20が実装される基板10の面内方向Aにおける熱放散の影響を受けない。そのため、例えば、冷却器30の性能が向上して、基板10の面内方向Aにおける熱放散が小さくなった場合であっても、温度センサ60の測定精度が低下することを抑制できる。
【0037】
また、上記第一実施形態に係る半導体装置1は、パワー半導体素子20に接続されているリードフレーム40と、リードフレーム40と温度センサ60とに熱伝導可能に接続し、リードフレーム40と温度センサ60とを電気的に絶縁する絶縁基板50と、をさらに備える。
【0038】
このような構成によれば、温度センサ60が、パワー半導体素子20の入力及び出力に係る回路に影響を及ぼすことがない。したがって、パワー半導体素子20の回路設計の自由度を低下させることがない。
【0039】
また、基板10とパワー半導体素子20とが積層される積層方向Lにおいて、温度センサ60は、リードフレーム40がパワー半導体素子20と重なる領域に位置している。
【0040】
このような構成によれば、温度センサ60は、パワー半導体素子20において生じる熱が損失無く伝導する箇所に位置している。したがって、温度センサ60が測定する箇所の温度を、パワー半導体素子20の実温度に近づけることができる。
【0041】
また、上記第一実施形態に係る半導体装置1において、冷却器30は、基板10の第二面11bに接触する基部31と、基部31から積層方向L他方側に向かって延びる放熱フィン32と、を有している。
【0042】
このような構成によれば、冷却器30が温度センサ60の測定する箇所を冷却することがない。したがって、温度センサ60の測定値に影響を与えることなく、パワー半導体素子20を冷却できる。
【0043】
[第二実施形態]
以下、本開示の第二実施形態に係る半導体装置について
図2及び
図3を参照して説明する。第二実施形態では、第一実施形態の半導体装置1が備えるパワー半導体素子20、リードフレーム40、及び制御回路Cnの構成が一部異なる。第一実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図2は、第二実施形態に係る半導体装置を横から見た図である。
図2に示すように、本実施形態の半導体装置1は、複数のパワー半導体素子20を備えている。
【0044】
(パワー半導体素子)
複数のパワー半導体素子20は、入力面20b及び該入力面20bの裏側に位置する出力面20aをそれぞれ有している。複数のパワー半導体素子20は、接合材Sを介して、入力面20bに設けられている入力端子(図示無し)が、基板本体11の第一面11aに設けられている入力回路Ciにそれぞれ電気的に接続されている。即ち、複数のパワー半導体素子20は、基板本体11の第一面11aに実装されている。
【0045】
本実施形態においては、三つのパワー半導体素子20が基板本体11の第一面11aにおいて並列に実装されている。基板本体11の第一面11aにおいて並列に実装される三つのパワー半導体素子20のうち、二つのパワー半導体素子20に挟まれる中央のパワー半導体素子20は、二つのパワー半導体素子20から放散される熱の影響を受けるため、温度が比較的高くなりやすい。
【0046】
(冷却器)
冷却器30は、接合材Sを介して、基板10の第二面11bに設けられている接合パターンCbに接合されている。冷却器30は、上記第一実施形態と同様の構成を成している。
【0047】
図3は、半導体装置1を積層方向Lから見た図である。
図3に示す半導体装置1においては、制御回路Cnの図示を省略している。
【0048】
(リードフレーム)
リードフレーム40は、複数のパワー半導体素子20と出力回路Coとを橋渡しすることで、複数のパワー半導体素子20と出力回路Coとを電気的に接続する導体である。
図3に示すように、リードフレーム40は、一部が出力回路Coに接続され、残部のうちの複数部分が複数のパワー半導体素子20にそれぞれ接続されている。より詳しくは、リードフレーム40の上記残部は、複数のパワー半導体素子20の各出力面20aの少なくとも一部をそれぞれ覆うとともに直線的にわたって延びて各出力面20aに設けられている出力端子に接続されている。
【0049】
(絶縁基板)
絶縁基板50は、リードフレーム40と接触している絶縁部材である。絶縁基板50は、上記第一実施形態と同様の構成を成している。
【0050】
(温度センサ)
温度センサ60は、絶縁基板50のセンサ実装面51aに形成された接合パターンCbに実装されている。温度センサ60は、絶縁基板50上の接合パターンCbの実装箇所における温度を測定するセンサである。温度センサ60は、積層方向Lにおいて、リードフレーム40がパワー半導体素子20と重なる領域に位置している。本実施形態において、温度センサ60は、基板10に並列に実装された三つのパワー半導体素子20のうち、中央のパワー半導体素子20とリードフレーム40とが積層方向Lにおいて重なる領域の略中央に位置している。
【0051】
(制御回路)
制御回路Cnには、パワー半導体素子20を制御するための電気信号を該制御回路Cnから送信可能とする制御ワイヤ70が複数本(本実施形態では三本)接続されている。複数の制御ワイヤ70は、それぞれの一端が制御回路Cnに電気的に接続されており、それぞれの他端が各パワー半導体素子20の制御信号の入力用端子(図示無し)に電気的に接続されている。
【0052】
(作用効果)
上記第二実施形態に係る半導体装置1において、パワー半導体素子20は、基板本体11の第一面11aにおいて複数が実装され、リードフレーム40は、複数のパワー半導体素子20にわたって延びて接続されている。
【0053】
このような構成によれば、温度センサ60は、複数のパワー半導体素子20の温度を一括して測定することができる。したがって、例えば、いずれかのパワー半導体素子20の温度が過度に上昇してしまう異常が生じた場合でも、温度センサ60の測定値に基づいて、パワー半導体素子20の過温度保護を実現することができる。
【0054】
また、上記第二実施形態に係る半導体装置1において、温度センサ60は、基板10に並列に実装された三つのパワー半導体素子20のうち、中央のパワー半導体素子20とリードフレーム40とが積層方向Lにおいて重なる領域の略中央に位置している。
【0055】
このような構成によれば、温度センサ60は、温度が比較的高くなる箇所において温度を測定することができる。したがって、温度センサ60の測定値に基づくパワー半導体素子20の過温度保護をより適切に実現することができる。
【0056】
[その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は各実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示は実施形態によって限定されることはない。
【0057】
上記第二実施形態では、リードフレーム40は、複数のパワー半導体素子20の各出力面20aの少なくとも一部をそれぞれ覆うように、直線状にわたって延びて接続されているが、この構成に限定されることはない。
図4に、第二実施形態のリードフレーム40の変形例を示す。
図4に示すように、リードフレーム40は、出力回路Co上における任意の三か所から各パワー半導体素子20の出力面20aに向かって延出するとともに、複数のパワー半導体素子20の各出力面20aの少なくとも一部をそれぞれ覆うように、わたって延びて相互に接続されている構成であってもよい。これにより、上記第二実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、基板10に一つのパワー半導体素子20が実装されている場合、及び三つのパワー半導体素子20が並列に実装されている場合を例示しているが、パワー半導体素子20が実装される個数は上記個数に限定されることはない。パワー半導体素子20は二つ又は四つ以上が実装されてもよい。
例えば、パワー半導体素子20が並列に二つ実装される場合、温度センサ60は、積層方向Lにおいてリードフレーム40がパワー半導体素子20と重なる領域に必ずしも位置していなくてよい。温度センサ60は、二つのパワー半導体素子20との間における略中間位置において、実装箇所の温度を測定する構成であってもよい。これにより、二つのパワー半導体素子20の温度を効率的に測定することができ、上記第二実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、温度センサ60は、積層方向Lにおいてリードフレーム40がパワー半導体素子20と重なる領域に位置しているが、この構成に限定されることはない。温度センサ60の少なくとも一部が、積層方向Lにおいてリードフレーム40がパワー半導体素子20と重なる領域に位置している構成であってもよい。この場合においても、上記実施形態に記載の作用効果を実現することが可能である。
【0060】
また、上記実施形態では、リードフレーム40に銅クリップが採用されているが、銅クリップに限定されることはない。少なくとも絶縁基板50がリードフレーム40に接触でき、温度センサ60が絶縁基板50上において安定してパワー半導体素子20の温度を測定可能でありさえすれば、リードフレーム40にはどのような導体を採用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、平板状の絶縁基板50を採用しているが、平板状に限定されることはない。少なくともリードフレーム40と温度センサ60とに熱伝導可能に接続し、リードフレーム40と温度センサ60とを電気的に絶縁し、温度センサ60が安定してパワー半導体素子20の温度を測定可能でありさえすれば、どのような形状の絶縁部材を採用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、半導体装置1は、インバータの電力変換回路に用いられるとされているが、インバータの電力変換回路に限定されることはない。半導体装置1は、交流電流を入力とし、直流電流を出力とするコンバータの電力変換回路や、直流電流の電圧の大きさを変更するレギュレータの昇圧回路等の一部を構成してもよい。
【0063】
[付記]
上記実施形態に記載の半導体装置は、例えば以下のように把握される。
【0064】
(1)第1の態様に係る半導体装置1は、第一面11a及び該第一面11aと背合わせとなる第二面11bを有する基板本体11と、前記第一面11aに実装されたパワー半導体素子20と、前記第二面11bに接触する冷却器30と、前記パワー半導体素子20の温度を測定する温度センサ60と、を備え、前記温度センサ60は、前記基板本体11よりも前記パワー半導体素子20の実装されている側である第一側に設けられるとともに、前記パワー半導体素子20よりも前記基板本体11の前記第一面11aから離間した位置に設けられている。
【0065】
これにより、パワー半導体素子20から温度センサ60に伝導する熱が、パワー半導体素子20が実装される基板10の面内方向Aにおける熱放散の影響を受けない。そのため、例えば、冷却器30の性能が向上して、基板10の面内方向Aにおける熱放散が小さくなった場合であっても、温度センサ60の測定精度が低下することを抑制できる。
【0066】
(2)第2の態様に係る半導体装置1は、(1)の半導体装置1であって、前記パワー半導体素子20に接続されているリードフレーム40と、前記リードフレーム40と前記温度センサ60とに熱伝導可能に接続し、前記リードフレーム40と前記温度センサ60とを電気的に絶縁する絶縁部材と、をさらに備えてもよい。
【0067】
これにより、温度センサ60が、パワー半導体素子20の入力及び出力に係る回路に影響を及ぼすことがない。したがって、パワー半導体素子20の回路設計の自由度を低下させることがない。
【0068】
(3)第3の態様に係る半導体装置1は、(2)の半導体装置1であって、前記パワー半導体素子20は、前記基板本体11の前記第一面11aにおいて複数が実装され、前記リードフレーム40は、複数の前記パワー半導体素子20にわたって延びて接続されていてもよい。
【0069】
これにより、温度センサ60は、複数のパワー半導体素子20の温度を一括して測定することができる。したがって、例えば、いずれかのパワー半導体素子20の温度が過度に上昇してしまう異常が生じた場合でも、温度センサ60の測定値に基づいて、パワー半導体素子20の過温度保護を実現することができる。
【0070】
(4)第4の態様に係る半導体装置1は、(2)または(3)の半導体装置1であって、前記基板本体11と前記パワー半導体素子20とが積層される積層方向Lにおいて、前記温度センサ60の少なくとも一部は、前記リードフレーム40が前記パワー半導体素子20と重なる領域に位置してもよい。
【0071】
これにより、温度センサ60は、パワー半導体素子20において生じる熱が損失無く伝導する箇所に位置している。したがって、温度センサ60が測定する箇所の温度を、パワー半導体素子20の実温度に近づけることができる。
【0072】
(5)第5の態様に係る半導体装置1は、(1)から(4)のいずれかの半導体装置1であって、前記冷却器30は、前記基板本体11の前記第二面11bに接触する基部31と、該基部31から延びる放熱フィン32と、を有してもよい。
【0073】
これにより、冷却器30が温度センサ60の測定する箇所を冷却することがない。したがって、温度センサ60の測定値に影響を与えることなく、パワー半導体素子20を冷却できる。
【符号の説明】
【0074】
1…半導体装置 10…基板 11…基板本体 11a…第一面 11b…第二面 20…パワー半導体素子 20a…出力面 20b…入力面 30…冷却器 31…基部 31a…接合面 31b…フィン面 32…放熱フィン 40…リードフレーム 50…絶縁基板 51…絶縁基板本体 51a…センサ実装面 51b…絶縁面 60…温度センサ 70…制御ワイヤ A…面内方向 Cb…接合パターン Ci…入力回路 Cn…制御回路 Co…出力回路 L…積層方向 S…接合材 W…冷媒の流れ