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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160194
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/22 20060101AFI20221012BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221012BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221012BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221012BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H05B33/22 Z
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064807
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】軍司 雅和
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD89
3K107FF15
5C094BA27
5C094EA10
5C094FA01
5C094FB12
5C094FB15
(57)【要約】
【課題】 表示素子の性能劣化を抑制することが可能な表示装置を提供すること。
【解決手段】 一実施形態に係る表示装置は、基材と、基材の上に配置された画素回路と、基材および画素回路を覆う第1絶縁層と、第1絶縁層の上に配置された第1下部電極および第2下部電極と、第1絶縁層の上において第1下部電極と第2下部電極との間に配置され、第1絶縁層に形成された開口部を通じて画素回路に接続される隔壁と、第1下部電極の上に配置された第1有機層と、第1有機層の上に配置された第1上部電極と、を備える。隔壁は、第1絶縁層の上に配置され、開口部を通じて画素回路に接続される部分であり、かつ、第1下部電極に面する第1側面と第2下部電極に面する第2側面とを有する導電層と、導電層の上に配置された第2絶縁層と、を含む。第1下部電極は、第1側面に接し、第2下部電極は、第2側面から離間している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に配置された画素回路と、
前記基材および前記画素回路を覆う第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に配置された第1下部電極および第2下部電極と、
前記第1絶縁層の上において前記第1下部電極と前記第2下部電極との間に配置され、前記第1絶縁層に形成された開口部を通じて前記画素回路に接続される隔壁と、
前記第1下部電極の上に配置された第1有機層と、
前記第1有機層の上に配置された第1上部電極と、を備え、
前記隔壁は、
前記第1絶縁層の上に配置され、前記開口部を通じて前記画素回路に接続される部分であり、かつ、前記第1下部電極に面する第1側面と前記第2下部電極に面する第2側面とを有する導電層と、
前記導電層の上に配置された第2絶縁層と、を含み、
前記第1下部電極は、前記第1側面に接し、前記第2下部電極は、前記第2側面から離間している、
表示装置。
【請求項2】
前記第2絶縁層は、前記第1側面から前記第1下部電極に向けて張り出した第1部分と、前記第2側面から前記第2下部電極に向けて張り出した第2部分と、を有し、
前記第1部分の幅は、前記第2部分の幅に比べて小さい、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2絶縁層は、前記第1側面から前記第1下部電極に向けて張り出した第1部分と、前記第2側面から前記第2下部電極に向けて張り出した第2部分と、を有し、
前記第1部分の幅と前記第2部分の幅とは等しい、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2下部電極と前記第2側面との間の距離は、前記第2部分の幅とほぼ同等である、
請求項2または請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1絶縁層の上面からの前記導電層の厚さは、前記第1下部電極の厚さと前記第1有機層の厚さとの和以下である、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2下部電極の上に配置された第2有機層と、
前記第2有機層の上に配置された第2上部電極と、
前記隔壁の上に配置され、前記第1下部電極および前記第2下部電極と同一材料によって形成された第1電極と、をさらに備え、
前記第1上部電極と前記第2上部電極とは、前記第1電極を介して互いに接続されている、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1電極の上に配置され、前記第1上部電極および前記第2上部電極と同一材料によって形成された第2電極、をさらに備え、
前記第1上部電極と前記第2上部電極とは、前記第1電極および前記第2電極を介して互いに接続されている、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記隔壁は、前記第1下部電極および前記第1有機層と、前記第2下部電極および前記第2有機層とを分断している、
請求項6または請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記導電層は、平面視において、前記第1下部電極の一辺に沿って配置され、前記第2下部電極の一辺からは離間して配置されている、
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
平面視において、前記第1下部電極の一辺と交差する方向に延びる前記第1下部電極の別の一辺に沿って配置された第3絶縁層、をさらに備える、
請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第3絶縁層の厚さは、前記第1下部電極の厚さと前記第1有機層の厚さとの和より大きい、
請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第3絶縁層の厚さは、前記隔壁の厚さとほぼ同等である、
請求項11に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。表示素子は、画素電極と共通電極との間に有機層を備えている。有機層は、発光層の他に、ホール輸送層や電子輸送層等の機能層を含んでいる。このような有機層は、例えば真空蒸着法によって形成される。
【0003】
例えば、マスク蒸着の場合、各画素に対応した開口を有するファインマスクが適用される。しかしながら、ファインマスクの加工精度、開口形状の変形等に起因して、蒸着によって形成される薄膜の形成精度が低下するおそれがある。例えば、有機層の端面が所望の位置に形成されず、表示素子の性能劣化を招くおそれがある。このため、ファインマスクを適用することなく、所望の形状の有機層を形成することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2019/026511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、表示素子の性能劣化を抑制することが可能な表示装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る表示装置は、
基材と、前記基材の上に配置された画素回路と、前記基材および前記画素回路を覆う第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に配置された第1下部電極および第2下部電極と、前記第1絶縁層の上において前記第1下部電極と前記第2下部電極との間に配置され、前記第1絶縁層に形成された開口部を通じて前記画素回路に接続される隔壁と、前記第1下部電極の上に配置された第1有機層と、前記第1有機層の上に配置された第1上部電極と、を備える。前記隔壁は、前記第1絶縁層の上に配置され、前記開口部を通じて前記画素回路に接続される部分であり、かつ、前記第1下部電極に面する第1側面と前記第2下部電極に面する第2側面とを有する導電層と、前記導電層の上に配置された第2絶縁層と、を含む。前記第1下部電極は、前記第1側面に接し、前記第2下部電極は、前記第2側面から離間している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る表示装置の一構成例を示す図である。
図2図2は、図1に示した副画素の構成例を示す断面図である。
図3図3は、図1に示した副画素の別の構成例を示す断面図である。
図4図4は、図1に示した副画素の別の構成例を示す断面図である。
図5図5は、副画素の一部の構成を示す平面図である。
図6図6は、副画素の一部の構成を示す平面図である。
図7図7は、図2に示した断面構造の形成工程を説明するための図である。
図8図8は、図2に示した断面構造の形成工程を説明するための図である。
図9図9は、図2に示した断面構造の形成工程を説明するための図である。
図10図10は、下部電極の形成方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実施の態様に比べて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、および、Z軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向または第1方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向または第3方向と称する。X軸およびY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸およびZ軸によって規定される面をX-Z平面と称する。X-Y平面を見ることを平面視という。
【0010】
いくつかの実施形態に係る表示装置DSPは、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パソコン、携帯端末、携帯電話等に搭載される。なお、以下に説明する表示素子は照明装置の発光素子として適用することができ、表示装置DSPは照明装置等の他の電子機器に転用することができる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る表示装置DSPの一構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基材10の上に、画像を表示する表示部DAを備えている。基材10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
表示部DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SP1,SP2,SP3を備えている。一例では、画素PXは、赤色の副画素SP1、緑色の副画素SP2、および、青色の副画素SP3を備えている。なお、画素PXは、上記した3色の副画素の他に、白色等の他の色の副画素を加えた4個以上の副画素を備えていてもよい。
【0013】
画素PXに含まれる1つの副画素SPの一構成例について簡単に説明する。
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動制御される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)により構成されたスイッチ素子である。
【0014】
画素スイッチ2について、ゲート電極は走査線GLに接続され、ソース電極は信号線SLに接続され、ドレイン電極はキャパシタ4を構成する一方の電極および駆動トランジスタ3のゲート電極に接続されている。駆動トランジスタ3について、ソース電極はキャパシタ4を構成する他方の電極および電源線PLに接続され、ドレイン電極は表示素子20のアノードに接続されている。表示素子20のカソードは、給電線FLに接続されている。なお、画素回路1の構成は、図示した例に限らない。
【0015】
表示素子20は、発光素子である有機発光ダイオード(OLED)である。例えば、副画素SP1は赤波長に対応した光を出射する表示素子を備え、副画素SP2は緑波長に対応した光を出射する表示素子を備え、副画素SP3は青波長に対応した光を出射する表示素子を備えている。画素PXが表示色の異なる複数の副画素SP1,SP2,SP3を備えることで、多色表示を実現できる。
【0016】
但し、副画素SP1,SP2,SP3の各々の表示素子20が同一色の光を出射するように構成されてもよい。これにより、単色表示を実現できる。
【0017】
また、副画素SP1,SP2,SP3の各々の表示素子20が白色の光を出射するように構成された場合、表示素子20に対向するカラーフィルタが配置されてもよい。例えば、副画素SP1は表示素子20に対向する赤カラーフィルタを備え、副画素SP2は表示素子20に対向する緑カラーフィルタを備え、副画素SP3は表示素子20に対向する青カラーフィルタを備える。これにより、多色表示を実現できる。
【0018】
あるいは、副画素SP1,SP2,SP3の各々の表示素子20が紫外光を出射するように構成された場合、表示素子20に対向する光変換層が配置されることで、多色表示を実現できる。
【0019】
表示素子20の詳細な構成については、後述する。
【0020】
図2は、図1に示した副画素SPに含まれる表示素子20の一例を示す断面図である。
図1に示した画素回路1は、基材10の上に配置され、絶縁層11(第1絶縁層)によって覆われている。図2では、画素回路1に含まれる駆動トランジスタ3のみを簡略化して図示している。絶縁層11は、表示素子20の下地層に相当し、例えば、ポリイミド、アクリル樹脂、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)等の絶縁材料によって形成されている。
【0021】
絶縁層11には、開口部OP1が形成されている。開口部OP1は、駆動トランジスタ3に重畳する領域に形成され、当該駆動トランジスタ3まで貫通した貫通孔である。開口部OP1には、柱状の導電体31と、絶縁性の庇32とによって構成される隔壁30が配置されている。以下では、柱状の導電体31を単に導電層と称し、絶縁性の庇32を単に絶縁層と称する場合がある。
【0022】
表示素子20は、下部電極E1と、有機層ORと、上部電極E2と、を備えている。有機層ORは、下部電極E1と上部電極E2とに挟まれて配置されている。
【0023】
下部電極E1は、副画素毎あるいは表示素子毎に配置された電極であり、駆動トランジスタ3と電気的に接続されている。このような下部電極E1は、画素電極、反射電極、アノード等と称される場合がある。
【0024】
上部電極E2は、複数の副画素あるいは複数の表示素子に亘って配置された電極であり、給電線FLと電気的に接続されている。このような上部電極E2は、共通電極、対向電極、カソード等と称される場合がある。
【0025】
下部電極E1は、絶縁層11の上に配置され、その周縁部が隔壁30を構成する導電層31に接続している。下部電極E1は、導電層31を介して駆動トランジスタ3と電気的に接続されている。
【0026】
下部電極E1は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料によって形成された透明電極である。なお、下部電極E1は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属材料によって形成された金属電極であってもよい。また、下部電極E1は、透明電極および金属電極の積層体であってもよい。例えば、下部電極E1は、透明電極、金属電極、および、透明電極の順に積層された積層体として構成されてもよいし、3層以上の積層体として構成されてもよい。
【0027】
有機層ORは、下部電極E1の上に配置されている。有機層ORは、白色、赤色、緑色、青色のうちのいずれかの色で発光する発光層を含む、有機層ORは、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロック層、ホールブロック層、電子輸送層、電子注入層、等の機能層を含んでいてもよい。このため、図2では、有機層ORを単層体として図示したが、有機層ORは、発光層の他に、上記した機能層のうちの少なくとも1つを含む複数の層が積層された積層体であってもよい。
【0028】
上部電極E2は、有機層ORの上に配置されている。上部電極E2は、複数の副画素あるいは複数の表示素子に亘って共通に用いられる共通層である。上部電極E2は、例えば、ITOやIZO等の透明導電材料によって形成された透明電極である。なお、上部電極E2は、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の金属材料によって形成された半透過性の金属電極であってもよい。上部電極E2は、表示部DAに配置された給電線FL、あるいは、表示部DAの外側に配置された給電線FLと電気的に接続されている。
【0029】
下部電極E1の電位が上部電極E2の電位よりも相対的に高い場合、下部電極E1がアノードに相当し、上部電極E2がカソードに相当する。また、上部電極E2の電位が下部電極E1の電位よりも相対的に高い場合、上部電極E2がアノードに相当し、下部電極E1がカソードに相当する。
本実施形態では、一例として、下部電極E1がアノードに相当し、上部電極E2がカソードに相当する場合を想定している。
【0030】
ここで、隣接する2つの表示素子20A,20Bに着目する。なお、以下では、便宜的に、表示素子20Aに関する要素には符号の末尾に「A」を付し、表示素子20Bに関する要素には符号の末尾に「B」を付して説明する。
【0031】
隔壁30は、表示素子20Aと表示素子20Bとの間に位置している。隔壁30は、導電層31と、絶縁層32(第2絶縁層)とを有している。
【0032】
導電層31は、下部電極E1A(第1下部電極)と下部電極E1B(第2下部電極)との間、および、有機層ORA(第1有機層)と有機層ORB(第2有機層)との間に位置している。導電層31は、絶縁層11に形成された開口部OP1Aを通じて駆動トランジスタ3Aに接続されている。導電層31は、絶縁層11の表面から第3方向Zに沿って延出し、厚さT1を有する突出部31aを有している。突出部31aは、表示素子20Aに面する第1側面S1と、表示素子20Bに面する第2側面S2と、第1側面S1と第2側面S2との間の上面U1と、を有している。
【0033】
導電層31は、隣接する2つの表示素子20A,20Bのうちの一方の表示素子20Aの下部電極E1Aと接続し、他方の表示素子20Bの下部電極E1Bと接続しない。より詳しくは、導電層31の突出部31aは、第1側面S1において当該第1側面S1と面する表示素子20Aの下部電極E1Aと接し、第2側面S2において当該第2側面S2と面する表示素子20Bの下部電極E1Bと離間している。つまり、表示素子20Aの下部電極E1Aのみが、導電層31を介して駆動トランジスタ3Aと電気的に接続されている。
【0034】
導電層31は、突出部31aの厚さT1が、第1側面S1において接している表示素子20Aの下部電極E1Aの厚さT2と、当該下部電極E1Aの上に配置される有機層ORAの厚さT3との和以下になるように形成されることが望ましい。図2では、突出部31aの厚さT1が、下部電極E1Aの厚さT2と、有機層ORAの厚さT3との和と等しくなるように、導電層31が形成された場合を示している。実際には、突出部31aの厚さT1は例えば600nm程度である。
【0035】
なお、突出部31aの厚さT1は、発光色に応じて調整されてもよい。例えば、発光色が赤色、緑色、青色のうちのいずれかの色である場合(つまり、有機層の塗り分けが行われる場合)、突出部31aの厚さT1が薄目になるように、導電層31が形成され、発光色が白色である場合(つまり、タンデム構造の有機層が実装される場合)、突出部31aの厚さT1が上記した塗り分けが行われる場合に比べて厚目になるように、導電層31が形成されてもよい。
【0036】
導電層31は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属材料によって形成される。
【0037】
絶縁層32は、導電層31の突出部31aの上面U1の上に配置されている。絶縁層32は、上記した第1側面S1から表示素子20Aに向かって張り出し、さらには、第2側面S2から表示素子20Bに向かって張り出している。第1側面S1から表示素子20Aに向かって張り出す第1部分の幅W1は、第2側面S2から表示素子20Bに向かって張り出す第2部分の幅W2に比べて小さい。つまり、絶縁層32は、導電層31を境に非対称な形状を有している。
【0038】
絶縁層32は、ポリイミド、アクリル樹脂、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)等の絶縁材料によって形成されている。
【0039】
絶縁層32の上には、第1電極33、有機層34、第2電極35が、当該絶縁層32の側からこの順で積層されている。詳しくは後述するが、第1電極33は、下部電極E1を形成した際に絶縁層32の上に積層された層であり、下部電極E1と同一材料によって形成されている。また、有機層34は、有機層ORを形成した際に第1電極33の上に積層された層であり、有機層ORと同一材料によって形成されている。さらに、第2電極35は、上部電極E2を形成した際に有機層34の上に積層された層であり、上部電極E2と同一材料によって形成されている。
【0040】
絶縁層32の上に積層された第1電極33は、その両端において、表示素子20Aの上部電極E2A(第1上部電極)と、表示素子20Bの上部電極E2B(第2上部電極)とに接続されている。つまり、表示素子20Aの上部電極E2Aと、表示素子20Bの上部電極E2Bとは、第1電極33を介して互いに電気的に接続されている。これによれば、上部電極E2を、複数の副画素あるいは複数の表示素子に亘って共通に用いられる共通層として機能させることが可能である。
【0041】
なお、図2では、表示素子20Aの上部電極E2Aと表示素子20Bの上部電極E2Bとが第1電極33を介して接続されることにより、複数の副画素あるいは複数の表示素子に亘って共通に用いられる上部電極E2が形成される構成を示したが、これに限定されず、例えば図3に示すように、表示素子20Aの上部電極E2Aと表示素子20Bの上部電極E2Bとが、第2電極35を介して接続され、これにより、共通に用いられる上部電極E2が形成される構成であってもよい。あるいは、図4に示すように、表示素子20Aの上部電極E2Aと表示素子20Bの上部電極E2Bとが、第1電極33および第2電極35の双方と接続され、これにより、共通に用いられる上部電極E2が形成される構成であってもよい。
【0042】
以上説明した図2に示す構成によれば、下部電極E1と上部電極E2との間に配置された有機層ORが位置する部分に、表示素子20の発光領域を形成することができる。なお、絶縁層32の上に積層された有機層34は、下部電極E1と上部電極E2との間に配置されていないため、発光しない。
【0043】
また、以上説明した図2に示す構成によれば、隔壁30は、隣接する2つの表示素子20の間に配置されている。換言すると、表示素子20は、2つの隔壁30の間に配置されている。表示素子20を構成する下部電極E1は、2つの隔壁30のうちの一方の隔壁30を構成する導電層31に接続し、当該導電層31を介して駆動トランジスタ3と電気的に接続されている。表示素子20を構成する上部電極E2は、隔壁30を構成する絶縁層32の上に配置された第1電極33および第2電極35のうちの少なくとも一方を介して、隣接する表示素子20の上部電極E2と電気的に接続されている。
【0044】
図5は、図2に示した導電層31と下部電極E1とを示す平面図である。図5では、第1方向Xに隣接する2つの副画素SPにそれぞれ含まれる導電層31と下部電極E1とを示している。
【0045】
導電層31は、絶縁層11の上において、下部電極E1の第2方向Yに沿って延びる一辺LY1に沿って配置され、当該下部電極E1と接続している。導電層31は、第2方向Yに沿って延び、下部電極E1に接続される一辺LY2が、当該下部電極E1の第2方向Yに沿って延びる一辺LY1以上になるように形成されることが望ましい。図5では、第2方向Yに沿って延びる一辺LY2が、下部電極E1の第2方向Yに沿って延びる一辺LY1と等しくなるように、導電層31が形成された場合を示している。
【0046】
導電層31は、絶縁層11に形成された開口部OP1を通じて、画素回路(駆動トランジスタ)に接続されている。下部電極E1と平面視において重なる領域が、副画素SP(に含まれる表示素子20)の発光領域に相当する。
【0047】
副画素SPに含まれる下部電極E1と、隣接する副画素SPに含まれる導電層31との間には、所定のスペースが空いている。この所定のスペースは、図2に示した幅W2を有する絶縁層32の第2部分と平面視において重なる部分に相当する。
【0048】
下部電極E1の第2方向Yに沿って延びる一辺LY1に沿って配置された導電層31は、当該下部電極E1が、隣接する副画素SPに含まれる下部電極E1と接続してしまうことを防止するための壁として、さらには、各副画素SPに含まれる下部電極E1の上に配置される有機層が互いに接続してしまうことを防止するための壁として機能する。
【0049】
図6は、図2に示した導電層31、絶縁層32および下部電極E1と、第2方向Yに隣接する副画素SP間に配置される絶縁層40とを示す平面図である。
絶縁層32は導電層31の上に配置されている。絶縁層32は、第1方向Xに隣接する2つの副画素SPに含まれる下部電極E1の間に配置されている。絶縁層32は、第1方向Xに沿って延びる一辺が、平面視において重なる導電層31の第1方向Xに沿って延びる一辺に比べて長く、第2方向Yに沿って延びる一辺が、平面視において重なる導電層31の第2方向Yに沿って延びる一辺と等しくなるように形成されている。
【0050】
絶縁層11の上において、第2方向Yに隣接する2つの副画素SPの間には、絶縁層40(第3絶縁層)が第1方向Xに沿って配置されている。絶縁層40は、絶縁層11の上に配置される有機絶縁層であり、絶縁層11の表面から第3方向Zに沿って、上記した厚さT1以上の厚さを有するように形成される。好ましくは、絶縁層40は、隔壁30の厚さとほぼ同等の厚さを有するように形成されることが望ましい。絶縁層40は、第2方向Yに隣接する2つの副画素SPに含まれる下部電極E1や有機層が互いに接続してしまうことを防止するための壁として機能する。
【0051】
図6に示すように、副画素SP(に含まれる表示素子20)の発光領域(つまり、下部電極E1と平面視において重なる領域)は、絶縁層32および絶縁層40によって囲まれている。
【0052】
図7図9は、図2に示した断面構造の形成工程を説明するための図である。
まず、基材10の上に駆動トランジスタ3が配置される。続いて、絶縁層11が、基材10および駆動トランジスタ3を覆うように形成される。次に、駆動トランジスタ3と重なる領域に開口部OP1が形成される。
【0053】
続いて、隔壁30を構成する柱状の導電体31のもととなる導電層が開口部OP1を覆うように形成され、さらに、隔壁30を構成する絶縁性の庇32のもととなる絶縁層が当該導電層の上に形成される。その後、絶縁層をパターニングして絶縁性の庇32を形成した後に、導電層をサイドエッチングによりパターニングして柱状の導電体31を形成することで、隔壁30が形成される。柱状の導電体31を形成するにあたっては、第2側面S2側からのエッチングが第1側面S1側からのエッチングに比べて促進される条件を設定することで、図7に示すような非対称な形状の庇32を有した隔壁30が形成される。
【0054】
次に、例えばスパッタリング法により、下部電極E1を形成する。このとき、ターゲットからの材料は、例えば等方的に放射される。等方的に放射された材料は、絶縁層11および絶縁性の庇32の上に堆積すると共に、その一部が絶縁性の庇32の内側に回り込んで堆積する。上記したように、絶縁性の庇32は非対称な形状を有しているため、図8に示すように、幅の狭い庇側の第1側面S1にのみ接続する下部電極E1が形成される。また、絶縁性の庇32の上には、第1電極33が形成される。
【0055】
続いて、例えば真空蒸着法により、有機層ORを形成する。このとき、蒸着源からの蒸気は、例えば等方的に放射される。これによれば、図9に示すように、下部電極E1の上に有機層ORが形成される。また、第1電極33の上には、有機層34が形成される。
【0056】
しかる後、例えばスパッタリング法により、上部電極E2を形成する。このとき、ターゲットからの材料は、例えば等方的に放射される。これによれば、図2に示したように、有機層ORの上に上部電極E2が形成され、その両端が第1電極33と接続される。また、有機層34の上には、第2電極35が形成される。
【0057】
以上説明した本実施形態に係る構成によれば、隣接する2つの表示素子20の間には隔壁30が配置され、ファインマスクを介することなく形成した有機層ORは、隔壁30によって分断される。このため、所望の形状の有機層ORを備えた表示素子20が提供される。したがって、ファインマスクを適用する場合と比較して、製造コストを削減することができ、しかも、ファインマスクの位置合わせ等の工程が不要となり、容易に所望の形状の有機層ORを形成することができる。また、表示素子20において、所定の領域に発光領域を形成することができる。
【0058】
また、上部電極E2も有機層ORと同様に隔壁30によって分断されるが、各上部電極E2は、隔壁30に積層される第1電極33および第2電極35のうちの少なくとも一方を介して電気的に接続される。第1電極33および第2電極35は、表示部DA、あるいは、表示部DAの外側において所定の電位の給電線と電気的に接続されている。このため、各表示素子20の上部電極E2には、第1電極33および第2電極35のうちの少なくとも一方を介して所定の電位が供給される。つまり、上部電極E2の一部での電位降下が抑制される。
【0059】
また、隣接する表示素子20において、有機層ORが繋がったことに起因する不所望な電流リーク(クロストーク)が抑制される。したがって、表示素子20において、所望の表示性能を実現することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、絶縁性の庇32の形状を柱状の導電体31を境に非対称な形状にすることで、柱状の導電体31の一方の側面にのみ下部電極E1を接続させるとしたが、これに限定されず、例えば下部電極E1を形成する材料の放射角に異方性を持たせることで、柱状の導電体31の一方の側面にのみ下部電極E1を接続させることを実現してもよい。
【0061】
この場合、図10に示すように、絶縁性の庇32は非対称な形状を有していなくて構わない。図10では、第1側面S1から張り出した幅と、第2側面S2から張り出した幅とが共に幅W3であり、絶縁性の庇32が対称形状である場合を示している。
【0062】
図10に示すように、柱状の導電体31の第1側面S1にのみ下部電極E1を接続させるために、ターゲットからの材料は図中右方向から図中左方向に向けて所定の放射角を有して放射される。これによれば、柱状の導電体31の第1側面S1に接続し、隣接する別の柱状の導電体31の第2側面S2からは離間している下部電極E1を形成することが可能である。なお、上記したように、ターゲットからの材料は図中右方向から図中左方向に向けて所定の放射角を有して放射されるため、絶縁層32の上に積層される第1電極33は、図中右側ほど厚く積層され、図中左側ほど薄く積層される。
【0063】
以上説明した一実施形態によれば、表示素子の性能劣化を抑制することが可能な表示装置を提供することが可能である。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10…基材、3…駆動トランジスタ、11…絶縁層、OP1…開口部、20…表示素子、E1…下部電極、OR…有機層、E2…上部電極、30…隔壁、31…柱状の導電体、32…絶縁性の庇、33…第1電極、34…有機層、35…第2電極、SP…副画素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10