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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160195
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/664 20060101AFI20221012BHJP
   H01H 1/06 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01H33/664 C
H01H1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064809
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 義憲
【テーマコード(参考)】
5G026
5G051
【Fターム(参考)】
5G026CB04
5G026CC06
5G051AA07
(57)【要約】
【課題】可動電極を全体に亘って一定の姿勢で一定の方向に離接操作することが可能な真空バルブを提供する。
【解決手段】離接可能に対向させて配置された一対の電極E1,E2と、電極相互を一定の姿勢で一定の方向に案内するガイド機構Gmと、を具備し、ガイド機構は、一方の電極から他方の電極に向けて突出した凸状ガイド13と、他方の電極の一部を凸状ガイドから離間する方向に窪ませて構成され、凸状ガイドに対向して配置された凹状ガイド14と、を有し、一対の電極が互いに離間した状態において、凸状ガイドは、その一部が凹状ガイドの内部に入り込んだ状態に位置付けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離接可能に対向させて配置された一対の電極と、
前記電極相互を一定の姿勢で一定の方向に案内するガイド機構と、を具備し、
前記ガイド機構は、
一方の前記電極から他方の前記電極に向けて突出した凸状ガイドと、
他方の前記電極の一部を前記凸状ガイドから離間する方向に窪ませて構成され、前記凸状ガイドに対向して配置された凹状ガイドと、を有し、
一対の前記電極が互いに離間した状態において、前記凸状ガイドは、その一部が前記凹状ガイドの内部に入り込んだ状態に位置付けられる真空バルブ。
【請求項2】
一対の前記電極が互いに離間した状態において、前記凸状ガイドと前記凹状ガイドとが互いに接触すること無く、前記凸状ガイドは、その一部が前記凹状ガイドの内部に入り込んだ状態に位置付けられる請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項3】
一対の前記電極が互いに離間した状態において、前記凸状ガイドと前記凹状ガイドとが互いに接触しつつ、前記凸状ガイドは、その一部が前記凹状ガイドの内部に入り込んだ状態に位置付けられる請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項4】
前記ガイド機構は、前記凹状ガイドに接触する前記凸状ガイドの表面に被覆された潤滑膜を有している請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項5】
前記凸状ガイドは、剛体として構成されている請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項6】
前記凹状ガイドは、
前記凸状ガイドが脱出可能に挿入されるガイド穴部と、
前記ガイド穴部に向かって、前記凸状ガイドから離間する方向に先細り円錐状に傾斜させたガイド傾斜部と、を備え、
一対の前記電極が互いに離間した状態から接触した状態に移行する際に、前記凸状ガイドは、前記ガイド傾斜部によって前記ガイド穴部に案内され、前記ガイド穴部に挿入される請求項5に記載の真空バルブ。
【請求項7】
前記凸状ガイドは、弾性体として構成されている請求項1に記載の真空バルブ。
【請求項8】
前記凹状ガイドは、
前記凸状ガイドから離間する方向に先細り円錐状に傾斜させたガイド傾斜部を備え、
一対の前記電極が互いに離間した状態から接触した状態に移行する際に、前記凸状ガイドは、前記ガイド傾斜部に沿って案内されつつ弾性変形する請求項7に記載の真空バルブ。
【請求項9】
一対の前記電極には、
予め設定された位置に固定された固定電極と、
前記固定電極に対して離接可能に配置された可動電極と、が含まれ、
前記ガイド機構は、前記可動電極を囲むように配置された円筒状ガイドを有し、
前記可動電極が前記固定電極に接近する際に、前記可動電極は、前記円筒状ガイドに沿って移動する請求項1に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや大型施設に設けられる受配電用の開閉装置として、例えば、遮断器や断路器などの開閉器を具備したスイッチギヤが知られている。スイッチギヤには、開閉器の構成要素として真空バルブが適用されている。真空バルブの内部は、絶縁容器(真空容器)によって一定の絶縁状態に維持され、この絶縁容器の内部に一対の電極(即ち、可動電極、固定電極)が離接可能に収容されている。この場合、真空バルブの開閉時、可動電極を固定電極に対して離接操作することで、事故電流の遮断や負荷電流の開閉が行われ、スイッチギヤから電力が安定して供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-91267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、真空バルブには、遮断性能や絶縁性能を一定に維持するために、当該真空バルブの開閉時、固定電極に対して可動電極を一定の姿勢で一定の方向に離接操作することが求められる。これに応えるべく、従来の真空バルブには、可動電極(具体的には、可動通電軸)を一定の方向に案内する円筒状ガイドが設けられている。
【0005】
円筒状ガイドは、可動電極(具体的には、可動通電軸の外周)を囲むように配置されている。そして、真空バルブの開閉時、可動通電軸は、円筒状ガイドに沿って移動する。これにより、可動通電軸を一定の方向に案内することができる。
【0006】
しかしながら、円筒状ガイドで可動通電軸を案内するだけでは、可動電極の全体を一定の姿勢で一定の方向に案内することが困難になってしまう虞がある。例えば、真空バルブの使用環境や使用状態に応じて、可動通電軸の先端に接続された可動接点が変位する場合が想定される。この場合、可動接点の変位の程度によっては、可動電極の全体を一定の姿勢で一定の方向に案内することができなくなる。
【0007】
本発明の目的は、可動電極を全体に亘って一定の姿勢で一定の方向に離接操作することが可能な真空バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、離接可能に対向させて配置された一対の電極と、電極相互を一定の姿勢で一定の方向に案内するガイド機構と、を具備し、ガイド機構は、一方の電極から他方の電極に向けて突出した凸状ガイドと、他方の電極の一部を凸状ガイドから離間する方向に窪ませて構成され、凸状ガイドに対向して配置された凹状ガイドと、を有し、一対の電極が互いに離間した状態において、凸状ガイドは、その一部が凹状ガイドの内部に入り込んだ状態に位置付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る真空バルブの内部構成を示す部分断面図。
図2】真空バルブの開状態におけるガイド機構の配置構成を示す部分断面図。
図3】真空バルブの閉状態におけるガイド機構の配置構成を示す部分断面図。
図4】真空バルブの開状態におけるガイド機構の他の配置構成を示す部分断面図。
図5】第2実施形態に係る真空バルブの開状態におけるガイド機構の配置構成を示す部分断面図。
図6】真空バルブの閉状態におけるガイド機構の配置構成を示す部分断面図。
図7】第3実施形態に係る真空バルブの開状態におけるガイド機構の配置構成を示す部分断面図。
図8】真空バルブの閉状態におけるガイド機構の配置構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「第1実施形態」
図1は、本実施形態に係る真空バルブPの配置構成図である。真空バルブPは、固定電極E1と、可動電極E2と、絶縁容器1(真空容器とも言う)と、固定側封着部材2と、可動側封着部材3と、気密維持機構4と、アークシールド5と、を有している。固定電極E1、可動電極E2、気密維持機構4、アークシールド5は、絶縁容器1に収容されている。
【0011】
図1の例において、絶縁容器1は、例えば、アルミナセラミックなどの絶縁材料で中空円筒形状に構成されている。固定側封着部材2及び可動側封着部材3は、例えば、ステンレス鋼を主成分とする金属材料で構成されている。
【0012】
図1に示すように、中空円筒形状の絶縁容器1は、両端が開口されている。双方の開口(固定側開口K1、可動側開口K2)は、固定側封着部材2、及び、可動側封着部材3によって覆われている。具体的には、固定側封着部材2は、固定側封着金具6を介して、絶縁容器1の一方の固定側開口K1を閉塞している。可動側封着部材3は、可動側封着金具7を介して、絶縁容器1の他方の可動側開口K2を閉塞している。
【0013】
アークシールド5は、例えば、銅やステンレス鋼などを主成分とする金属材料で構成されている。アークシールド5は、中空円筒形状を成し、絶縁容器1に固定されている。アークシールド5は、その内部(内側)に、後述する固定電極E1の固定接点8、並びに、可動電極E2の可動接点10を収容するように配置されている。
【0014】
固定電極E1及び可動電極E2は、直線状に対向するように整列して延在されている。固定電極E1は、絶縁容器1の内部に固定されている。可動電極E2は、絶縁容器1の内部において、固定電極E1に対して離接可能に配置されている。
【0015】
固定電極E1は、固定接点8と、固定通電軸9と、を備えている。可動電極E2は、可動接点10と、可動通電軸11と、を備えている。固定接点8及び可動接点10は、銀タングステンカーバイトで成形され、固定通電軸9及び可動通電軸11は、銅(Cu)材で成形されている。
【0016】
固定接点8と可動接点10とは、それぞれの接触面(即ち、固定側接触面S1、可動側接触面S2)が互いに対向するように配置されている。固定接点8は、固定通電軸9の一端に接続され、固定通電軸9の他端は、固定側封着部材2を介して、移動不能に真空バルブPに固定されている。可動接点10は、可動通電軸11の一端に接続され、可動通電軸11の他端は、可動側封着部材3を介して、図示しない操作機構に連結されている。
【0017】
ここで、操作機構によって可動通電軸11を移動させる。これにより、可動接点10を固定接点8に対して離接させることができる。この結果、真空バルブPを開閉操作(即ち、一対の電極E1,E2を離接操作)することができる。
【0018】
なお、図1には一例として、真空バルブPの閉状態(即ち、一対の電極E1,E2が相互に接触した状態)が示され、この閉状態において、固定接点8の固定側接触面S1と、可動接点10の可動側接触面S2とは、互いに接触している。
【0019】
更に、可動通電軸11と可動側封着部材3との間には、気密維持機構4が配置されている。気密維持機構4は、伸縮性を有するベローズで構成されている。ベローズ(気密維持機構)4は、例えば、ステンレスなどの薄い金属で構成されている。ベローズ4は、伸縮可能な蛇腹状を成し、可動通電軸11の外側を隙間無く覆っている。
【0020】
ベローズ4は、その一端が可動側封着部材3に隙間無く接合され、その他端が可動通電軸11に隙間無く接合されている。これにより、絶縁容器1の内部は、常に気密状態(即ち、真空状態)に維持される。この結果、真空バルブPの開閉操作に際し、可動通電軸11を移動させている間も、絶縁容器1の内部に大気(空気)が浸入することはない。
【0021】
ところで、真空バルブPの閉状態では、各電極E1,E2の中心軸(即ち、固定側中心軸Px1、可動側中心軸Px2)が1本の仮想軸線(図示しない)に沿って真っ直ぐに整列するように、双方の電極E1,E2を互いに接触させることが好ましい。これにより、固定接点8の固定側接触面S1と、可動接点10の可動側接触面S2とが、軸ズレすること無く接触することになる。
【0022】
このように、一対の電極E1,E2を軸ズレ無く接触させるには、電極E1,E2相互を一定の姿勢で一定の方向に案内することが必要である。図1の真空バルブPでは、固定電極E1に対して可動電極E2が離接可能に配置されている。そこで、本実施形態に係る真空バルブPは、可動電極E2を一定の姿勢で一定の方向に案内するガイド機構Gm(図1図4参照)を有している。
【0023】
図1の例において、ガイド機構Gmは、円筒状ガイド12を有している。円筒状ガイド12は、中空の円筒部12aと、円筒部12aの一端から周方向に沿って外向きに突出したフランジ部12bと、を備えている。円筒部12aの内径は、可動通電軸11の外径よりも若干大きく設定されている。これにより、可動通電軸11を、円筒部12aにスムーズに挿通させることができる。
【0024】
更に、円筒部12aに可動通電軸11を挿通させた状態で、フランジ部12bは、可動側封着部材3に支持されている。支持方法としては、例えば、接着、ねじ止めなど既存の固定方法を適用することができる。図1では一例として、フランジ部12bは、可動側封着部材3の外側に当接させて固定されている。この状態において、可動通電軸11を挿通させた円筒部12aは、可動側封着部材3の開口3hを通して、真空バルブPの内部に配置されている。
【0025】
かくして、円筒状ガイド12は、固定側封着部材2を介して、移動不能に真空バルブPに固定される。このとき、円筒部12aは、上記した気密維持機構4で囲まれた絶縁容器1の内部に延在した状態となる。この状態において、円筒部12aが、可動電極E2(具体的には、可動通電軸11の外周)を囲むように配置される。
【0026】
このような円筒状ガイド12(ガイド機構Gm)によれば、可動電極E2を固定電極E1に対して離接する際に、可動通電軸11は、円筒部12aによって、一定の方向に案内される。これにより、真空バルブPの開閉時(電極E1,E2の離接操作時)に、可動電極E2(可動電極E2)を、円筒状ガイド12(即ち、円筒部12a)に沿って一定の方向に移動させることができる。
【0027】
図2は、真空バルブPの開状態(電極E1,E2が互いに離間した状態)におけるガイド機構Gmの配置構成図である。図3は、真空バルブPの閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)おけるガイド機構Gmの配置構成図である。
【0028】
ガイド機構Gmは、凸状ガイド13と、凹状ガイド14と、潤滑膜15と、を有している。図2及び図3の例において、凸状ガイド13は、一方の電極(例えば、固定電極E1)から他方の電極(即ち、可動電極E2)に向けて突出している。凹状ガイド14は、他方の電極(即ち、可動電極E2)の一部を凸状ガイド13から離間する方向に窪ませて構成されている。凸状ガイド13と凹状ガイド14とは、互いに対向して配置されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、凸状ガイド13は、固定接点8(固定電極E1)の固定側接触面S1に設けられている。凸状ガイド13は、その全体が剛体として構成され、弾性変形し難い剛性を有している。凸状ガイド13は、真っ直ぐに延びた立体的な輪郭形状を有している。凸状ガイド13の輪郭形状としては、例えば、断面円形の円筒形状とすることが好ましい。
【0030】
このような凸状ガイド13は、その基端側が固定側接触面S1から固定接点8の内部に埋め込まれた状態で固定され、その先端側は、丸味を帯びた半球形状を有している。基端側が固定された凸状ガイド13は、凹状ガイド14に向けて突出している。この状態において、凸状ガイド13の向き(突出方向、突出姿勢)は、例えば、一対の電極E1,E2を離接させる方向と平行になるように設定することが好ましい。これにより、凸状ガイド13は、その先端側が凹状ガイド14に対して真っ直ぐに対向(即ち、正対)するように配置される。
【0031】
更に、凸状ガイド13の先端側は、潤滑膜15で被覆されている。この場合、凸状ガイド13の先端側表面のうち凹状ガイド14に接触する部分を、潤滑膜15で被覆することが好ましい。潤滑膜15としては、例えば、二硫化モリブデン系、硬質炭素、PTFE系などの固体潤滑膜を適用することができる。
【0032】
凹状ガイド14は、可動接点10(可動電極E2)の可動側接触面S2に設けられている。この場合、一対の電極E1,E2を離接させる方向で見て、凹状ガイド14は、凸状ガイド13の先端側に対向するように構成されている。このような構成において、凹状ガイド14は、ガイド穴部14hと、ガイド傾斜部14sと、を備えている。
【0033】
ガイド穴部14hは、凸状ガイド13の先端側(即ち、潤滑膜15で被覆された部分)が脱出可能に挿入されるように設定されている。このため、ガイド穴部14hは、凸状ガイド13の先端側に対して真っ直ぐに対向(即ち、正対)させて配置されている。ガイド穴部14hは、円筒形状の凸状ガイド13に対応して、断面円形の中空円筒状を成している。ガイド穴部14hの穴径(内径)は、凸状ガイド13の直径(外径)よりも若干大きく設定されている。これにより、凸状ガイド13を、ガイド穴部14hにガタつくこと無くスムーズに挿通させることができる。
【0034】
ガイド傾斜部14sは、ガイド穴部14hを中心にして同心円状に広がっている。ガイド傾斜部14sは、ガイド穴部14hに向かって、凸状ガイド13から離間する方向に先細り円錐状に傾斜している。即ち、ガイド傾斜部14sは、可動側接触面S2をガイド穴部14hに向かって円錐状に窪ませて(凹ませて)構成されている。
【0035】
ここで、ガイド傾斜部14sは、ガイド穴部14hに向かって円錐状に傾斜したガイド面として設定することができる。この場合、ガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)の傾斜角度は、例えば、可動側接触面S2とガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)との成す角として規定することができる。なお、ガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)の傾斜角度について、ここでは特に数値限定しない。
【0036】
このようなガイド機構Gmによれば、真空バルブPの開状態(電極E1,E2が互いに離間した状態)において(図2参照)、凸状ガイド13と凹状ガイド14とが互いに接触すること無く、凸状ガイド13は、その一部が凹状ガイド14の内部に入り込んだ状態に位置付けられる。
【0037】
図2の例では、凸状ガイド13の先端側(潤滑膜15で被覆された部分)の一部が、可動側接触面S2から同一平面上に延在する仮想平面と、ガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)とで囲まれた空間領域内に入り込んでいる。
【0038】
ここで、電極E1,E2が互いに離間した状態から接触した状態に移行する際に、可動通電軸11は、上記した円筒部12aによって一定の方向に案内される。同時に、凸状ガイド13は、その先端側がガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)によってガイド穴部14hに向けて案内される。
【0039】
このとき、凸状ガイド13は、その先端側からガイド穴部14hに入り込む。そして、凸状ガイド13が、ガイド穴部14hに挿入される。これにより、可動接点10(可動側接触面S2)は、変位(軸ズレ)すること無く、固定接点8(固定側接触面S1)に接触する。この結果、真空バルブPは、閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)となる(図3参照)。
【0040】
以上、本実施形態によれば、真空バルブPの開閉に際し、可動通電軸11が円筒部12aによって一定方向に案内されると共に、可動接点10が凸状ガイド13及び凹状ガイド14によって固定接点8に向けて案内される。この場合、電極E1,E2が互いに離間した状態から接触した状態に移行する際に、可動接点10が変位したとしても、凸状ガイド13の先端側が、ガイド傾斜部14sに沿って案内されることで、凸状ガイド13をガイド穴部14hに挿入させることができる。これにより、可動電極E2の全体を一定の姿勢で一定の方向(即ち、固定電極E1に向かう方向)に案内することができる。この結果、可動接点10を変位させること無く固定接点8に案内して接触させることができる。
【0041】
本実施形態によれば、潤滑膜15が、凹状ガイド14(ガイド穴部14h、ガイド傾斜部14s)に接触する凸状ガイド13の先端側表面に被覆されている。これにより、凸状ガイド13の先端側と凹状ガイド14との間の摩擦力を低減させることができる。この結果、凸状ガイド13をガイド傾斜部14sに沿って円滑に案内してガイド穴部14hにスムーズに挿入させることができる。
【0042】
「第1実施形態の他の配置構成」
図4は、ガイド機構Gmの他の配置構成図である。図4の例において、凸状ガイド13は、その先端側が延長されていると共に、当該先端側(潤滑膜15で被覆された部分)の一部が常時ガイド穴部14hに挿入された状態となるように構成されている。
【0043】
この場合、真空バルブPの開状態(電極E1,E2が互いに離間した状態)において、凸状ガイド13と凹状ガイド14とが互いに接触しつつ、凸状ガイド13は、その一部が凹状ガイド14の内部に入り込んだ状態に位置付けられる。
【0044】
このような構成によれば、真空バルブPの開閉に際し、可動通電軸11が円筒部12aによって一定方向に案内されると共に、凸状ガイド13は、ガイド穴部14hから外れること無く、当該ガイド穴部14hに沿って移動する。これにより、可動電極E2の全体を一定の姿勢で一定の方向(即ち、固定電極E1に向かう方向)に案内することができる。なお、その他の構成及び効果は、上記した第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0045】
「第2実施形態」
図5は、真空バルブPの開状態(電極E1,E2が互いに離間した状態)におけるガイド機構Gmの配置構成図である。図6は、真空バルブPの閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)おけるガイド機構Gmの配置構成図である。図5及び図6の例において、ガイド機構Gmは、凸状ガイド13と、凹状ガイド14と、潤滑膜15と、逃げ部13pと、を有している。
【0046】
図5及び図6に示すように、凸状ガイド13は、その全体が弾性体として構成され、弾性変形し易い伸縮性を有している。凸状ガイド13は、断面円形の立体的な球形輪郭を有している。球形の凸状ガイド13は、その一方側が固定側接触面S1から固定接点8の内部に埋め込まれた状態で固定され、その他方側は、凹状ガイド14に向けて球状に突出している。凸状ガイド13の球状の他方側表面のうち凹状ガイド14に接触する部分は、潤滑膜15で被覆されている。
【0047】
凹状ガイド14は、可動接点10の可動側接触面S2に設けられ、一対の電極E1,E2を離接させる方向で見て、凸状ガイド13の他方側に対向するように構成されている。凹状ガイド14は、ガイド傾斜部14sを備えている。ガイド傾斜部14sは、可動側接触面S2を円錐状に窪ませて(凹ませて)構成されている。この場合、ガイド傾斜部14sは、凸状ガイド13から離間する方向に先細り円錐状に傾斜したガイド面として設定することができる。
【0048】
更に、逃げ部13pは、ガイド傾斜部14sに対向するように、固定接点8の固定側接触面S1に設けられている。逃げ部13pは、球形の凸状ガイド13を中心にして同心円状に広がっている。逃げ部13pは、凸状ガイド13の一方側に向かって、ガイド傾斜部14sから離間する方向に先細り円錐状に傾斜している。即ち、逃げ部13pは、固定側接触面S1を凸状ガイド13の一方側に向かって円錐状に窪ませて(凹ませて)構成されている。
【0049】
このようなガイド機構Gmによれば、上記した第1実施形態と同様に、真空バルブPの開状態(電極E1,E2が互いに離間した状態)において(図5参照)、凸状ガイド13と凹状ガイド14とが互いに接触すること無く、凸状ガイド13は、その一部(潤滑膜15で被覆された他方側表面の一部)が凹状ガイド14の内部に入り込んだ状態に位置付けられる。
【0050】
ここで、電極E1,E2が互いに離間した状態から接触した状態に移行する際に、可動通電軸11は、上記した円筒部12aによって一定の方向に案内される。同時に、凸状ガイド13は、その他方側がガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)に沿って案内されつつ押圧される。
【0051】
このとき、凸状ガイド13は、弾性変形しつつ伸縮し、その一部が逃げ部13pに入り込む。そして、真空バルブPの閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)において(図6参照)、凸状ガイド13は、ガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)と逃げ部13pとで囲まれた空間領域内に拡がって収容される。これにより、可動接点10(可動側接触面S2)は、変位(軸ズレ)すること無く、固定接点8(固定側接触面S1)に接触する。この結果、真空バルブPは、閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)となる。
【0052】
以上、本実施形態によれば、上記した第1実施形態と同様に、可動電極E2の全体を一定の姿勢で一定の方向(即ち、固定電極E1に向かう方向)に案内することができる。この間、潤滑膜15によって、凸状ガイド13の他方側と凹状ガイド14との間の摩擦力を低減させることができる。
【0053】
「第3実施形態」
図7は、真空バルブPの開状態(電極E1,E2が互いに離間した状態)におけるガイド機構Gmの配置構成図である。図8は、真空バルブPの閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)おけるガイド機構Gmの配置構成図である。図7及び図8の例において、ガイド機構Gmは、凸状ガイド13の構成のみが上記した第2実施形態と異なり、その他の構成並びに効果は、第2実施形態と同様である。このため、以下では、凸状ガイド13の構成についての説明にとどめる。
【0054】
図7に示すように、凸状ガイド13は、その全体が弾性体として構成され、弾性変形し易い伸縮性を有している。凸状ガイド13は、その基端側が固定側接触面S1から固定接点8の内部に埋め込まれた状態で固定され、その先端側は、凹状ガイド14に向けて先細り円錐状に突出している。凸状ガイド13の円錐状の先端側表面のうち凹状ガイド14に接触する部分は、潤滑膜15で被覆されている。
【0055】
本実施形態において、潤滑膜15で被覆された凸状ガイド13の先端側表面は、上記した第2実施形態で説明した凹状ガイド14のガイド傾斜部14s(ガイド面)に一致した輪郭形状を有している。この場合、凸状ガイド13の先端側表面と、凹状ガイド14のガイド傾斜部14s(ガイド面)とを互いに接触させた状態において、両者即ち先端側表面とガイド面とは、互いに隙間無く面状に接触する。
【0056】
このようなガイド機構Gmによれば、上記した第2実施形態と同様に、真空バルブPの開状態(電極E1,E2が互いに離間した状態)において(図7参照)、凸状ガイド13と凹状ガイド14とが互いに接触すること無く、凸状ガイド13は、その一部(潤滑膜15で被覆された先端側表面の一部)が凹状ガイド14の内部に入り込んだ状態に位置付けられる。
【0057】
ここで、電極E1,E2が互いに離間した状態から接触した状態に移行する際に、可動通電軸11は、上記した円筒部12aによって一定の方向に案内される。同時に、凸状ガイド13は、その先端側がガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)に沿って案内されつつ押圧される。
【0058】
このとき、凸状ガイド13は、弾性変形しつつ伸縮し、その一部が逃げ部13pに入り込む。そして、真空バルブPの閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)において(図6参照)、凸状ガイド13は、ガイド傾斜部14s(円錐状ガイド面)と逃げ部13pとで囲まれた空間領域内に拡がって収容される。これにより、可動接点10(可動側接触面S2)は、変位(軸ズレ)すること無く、固定接点8(固定側接触面S1)に接触する。この結果、真空バルブPは、閉状態(電極E1,E2が互いに接触した状態)となる。
【0059】
「変形例」
上記した各実施形態では、凸状ガイド13を固定電極E1(固定接点8)に設け、凹状ガイド14を可動電極E2(可動接点10)に設ける場合を想定したが、これとは逆に、凸状ガイド13を可動電極E2(可動接点10)に設け、凹状ガイド14を固定電極E1(固定接点8)に設けてもよい。このような変形例によれば、上記した実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0060】
上記した各実施形態では、ガイド機構Gm(凸状ガイド13、凹状ガイド14)の配置や個数について言及しなかったが、例えば、電極E1,E2(接触面S1,S2)相互間に1つのガイド機構Gmを設ける場合、固定側中心軸Px1に沿って凸状ガイド13を配置し、可動側中心軸Px2に沿って凹状ガイド14を配置してもよい。或いは、例えば、電極E1,E2(接触面S1,S2)相互間に複数のガイド機構Gmを設ける場合、これら複数のガイド機構Gmを中心軸Px1,Px2の周囲に沿って等間隔に配置してもよい。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
P…真空バルブ、E1…固定電極、E2…可動電極、K1…固定側開口、K2…可動側開口、S1…固定側接触面、S2…可動側接触面、Px1…固定側中心軸、Px2…可動側中心軸、Gm…ガイド機構、1…絶縁容器、2…固定側封着部材、3…可動側封着部材、3h…開口、4…気密維持機構、5…アークシールド、6…固定側封着金具、7…可動側封着金具、8…固定接点、9…固定通電軸、10…可動接点、11…可動通電軸、12…円筒状ガイド、12a…円筒部、12b…フランジ部、13…凸状ガイド、13p…逃げ部、14…凹状ガイド、14h…ガイド穴部、14s…ガイド傾斜部、15…潤滑膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8