(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160198
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】成形型、これを用いた複合成形品の製造方法及びスペーサ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20221012BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20221012BHJP
F02F 1/10 20060101ALI20221012BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/14
F02F1/10 D
F01P3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064815
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕治
(72)【発明者】
【氏名】綱澤 啓太
【テーマコード(参考)】
3G024
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3G024AA27
3G024BA01
3G024CA11
3G024DA18
3G024FA14
3G024GA01
3G024HA13
3G024HA17
4F202AH16
4F202AM36
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CB13
4F202CK15
4F202CK25
4F202CQ01
4F206AH16
4F206AM36
4F206JA07
4F206JB13
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】樹脂成形体に対するシート体の位置ずれの抑制が可能でありながらも、ウェルドラインの発生を抑制し得る成形型、これを用いた複合成形品の製造方法及びスペーサを提供する。
【解決手段】シート体11の一方面を樹脂成形体13に沿わせた複合成形品10を一体成形する際に用いられる成形型1であって、前記シート体に形成された孔12に挿通され、先端面8aと対向側との間に溶融樹脂の流動可能な隙間を空けて配される位置決め突起8と、樹脂供給口3からキャビティ9内に供給されて前記位置決め突起に向けて流動する溶融樹脂を前記位置決め突起の先端面側に誘導する誘導部4と、が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体の一方面を樹脂成形体に沿わせた複合成形品を一体成形する際に用いられる成形型であって、
前記シート体に形成された孔に挿通され、先端面と対向側との間に溶融樹脂の流動可能な隙間を空けて配される位置決め突起と、樹脂供給口からキャビティ内に供給されて前記位置決め突起に向けて流動する溶融樹脂を前記位置決め突起の先端面側に誘導する誘導部と、が設けられていることを特徴とする成形型。
【請求項2】
請求項1において、
前記位置決め突起の対向側には、該位置決め突起を受け入れて前記樹脂成形体に該位置決め突起の先端面を覆う先端覆部及び外周面を覆う外周覆部を形成する突起受入凹所と、該突起受入凹所から溶融樹脂の流動方向上流側に向けて延び、前記誘導部を構成する誘導溝と、が設けられていることを特徴とする成形型。
【請求項3】
請求項2において、
前記誘導溝における少なくとも前記突起受入凹所側部位の溝深さ寸法は、前記突起受入凹所の深さ寸法以上であることを特徴とする成形型。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記突起受入凹所に前記位置決め突起が差し込まれた状態において、前記位置決め突起の外周面から前記突起受入凹所の内周面までの径方向に沿う寸法よりも前記位置決め突起の先端面とこれに対向する前記突起受入凹所の底面との間の寸法が大であることを特徴とする成形型。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項において、
前記誘導溝の溝幅が前記位置決め突起の径よりも小であることを特徴とする成形型。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項において、
複数の前記位置決め突起及び複数の前記突起受入凹所と、これら複数の突起受入凹所を連通させる前記誘導溝と、が設けられていることを特徴とする成形型。
【請求項7】
請求項6において、
前記誘導溝は、複数の前記突起受入凹所間に直線状に形成されていることを特徴とする成形型。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1項において、
前記樹脂供給口は、前記誘導溝の溝底または該誘導溝の近傍において開口していることを特徴とする成形型。
【請求項9】
請求項1において、
前記位置決め突起の対向側には、前記樹脂供給口から前記位置決め突起に向かう溶融樹脂の流動方向に対して概ね直交する方向の両側から前記位置決め突起を挟むように前記誘導部を構成する2つの誘導突部が設けられていることを特徴とする成形型。
【請求項10】
請求項9において、
前記2つの誘導突部間に前記位置決め突起が差し込まれた状態において、前記位置決め突起の外周面から各誘導突部の互いに向き合う側面までの隙間寸法よりも前記位置決め突起の先端面とこれに対向する対向面との間の寸法が大きくなるように形成されていることを特徴とする成形型。
【請求項11】
請求項9または10において、
複数の前記位置決め突起が設けられ、これら位置決め突起のそれぞれの両側に位置するように前記誘導突部が設けられていることを特徴とする成形型。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項において、
前記複合成形品は、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路内に配置され、冷却水の流れを規制するスペーサであることを特徴とする成形型。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項において、
前記シート体は、所定の外的要因によって、圧縮状態から厚さ方向に膨大化する特性を有していることを特徴とする成形型。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の成形型を用い、シート体の一方面を樹脂成形体に沿わせた複合成形品を一体成形する複合成形品の製造方法であって、
前記シート体に形成された孔に、前記成形型に設けられた位置決め突起を挿通させて前記シート体を位置決めする工程と、前記成形型のキャビティ内に溶融樹脂を供給して前記位置決め突起の先端面を覆う先端覆部を含む前記樹脂成形体を成形する工程と、を備えていることを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項15】
内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路内に配置され、冷却水の流れを規制するスペーサであって、
厚さ方向に貫通する孔が形成されたシート体と、該シート体の一方面が沿わせられた合成樹脂製のスペーサ本体と、を備えており、
前記スペーサ本体は、前記シート体の孔に連通する凹部を区画するように設けられ厚さ方向一方側に向けて突出する有底筒状の突部と、前記突部に連なって延びるように設けられ厚さ方向一方側に向けて突出する突条と、を備えていることを特徴とするスペーサ。
【請求項16】
内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路内に配置され、冷却水の流れを規制するスペーサであって、
厚さ方向に貫通する孔が形成されたシート体と、該シート体の一方面が沿わせられた合成樹脂製のスペーサ本体と、を備えており、
前記スペーサ本体には、前記シート体の孔に連通するシート体側凹部と、厚さ方向で前記シート体が沿わせられた側とは異なる側において前記シート体側凹部の両側に位置する2つの反シート体側凹部と、が設けられていることを特徴とするスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形品を一体成形する際に用いられる成形型、これを用いた複合成形品の製造方法及びスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シート体の一方面を樹脂成形体に沿わせた複合成形品を一体成形する際に用いられる成形型が知られている。このような複合成形品を成形する際には、シート体が成形型のキャビティ内において位置ずれしないように位置決めされることが望まれる。
例えば、下記特許文献1には、シート状の多孔質体に設けられた貫通孔に嵌め合わされる突起が設けられた成形型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような突起を成形型に設けた構成とすれば、ゲート部から射出された樹脂は、突起の外周面に沿って突起を回り込むように流れ、つまり、突起によって分流されて突起の樹脂流動方向下流側において合流することからウェルドラインが生じ易くなる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、樹脂成形体に対するシート体の位置ずれの抑制が可能でありながらも、ウェルドラインの発生を抑制し得る成形型、これを用いた複合成形品の製造方法及びスペーサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る成形型は、シート体の一方面を樹脂成形体に沿わせた複合成形品を一体成形する際に用いられる成形型であって、前記シート体に形成された孔に挿通され、先端面と対向側との間に溶融樹脂の流動可能な隙間を空けて配される位置決め突起と、樹脂供給口からキャビティ内に供給されて前記位置決め突起に向けて流動する溶融樹脂を前記位置決め突起の先端面側に誘導する誘導部と、が設けられていることを特徴とする。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る複合成形品の製造方法は、本発明に係る成形型を用い、シート体の一方面を樹脂成形体に沿わせた複合成形品を一体成形する複合成形品の製造方法であって、前記シート体に形成された孔に、前記成形型に設けられた位置決め突起を挿通させて前記シート体を位置決めする工程と、前記成形型のキャビティ内に溶融樹脂を供給して前記位置決め突起の先端面を覆う先端覆部を含む前記樹脂成形体を成形する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るスペーサは、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路内に配置され、冷却水の流れを規制するスペーサであって、厚さ方向に貫通する孔が形成されたシート体と、該シート体の一方面が沿わせられた合成樹脂製のスペーサ本体と、を備えており、前記スペーサ本体は、前記シート体の孔に連通する凹部を区画するように設けられ厚さ方向一方側に向けて突出する有底筒状の突部と、前記突部に連なって延びるように設けられ厚さ方向一方側に向けて突出する突条と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るスペーサは、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路内に配置され、冷却水の流れを規制するスペーサであって、厚さ方向に貫通する孔が形成されたシート体と、該シート体の一方面が沿わせられた合成樹脂製のスペーサ本体と、を備えており、前記スペーサ本体には、前記シート体の孔に連通するシート体側凹部と、厚さ方向で前記シート体が沿わせられた側とは異なる側において前記シート体側凹部の両側に位置する2つの反シート体側凹部と、が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る成形型、これを用いた複合成形品の製造方法及びスペーサは、上述のような構成としたことで、樹脂成形体に対するシート体の位置ずれの抑制が可能でありながらも、ウェルドラインの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る成形型の一例及びこれを用いた複合成形品の製造方法の一例を模式的に示す一部破断概略縦断面図である。
【
図2】(a)~(c)は、同成形型を用いて成形された複合成形品の一例としてのスペーサの一例を模式的に示し、(a)は、一部破断概略正面図、(b)は、(a)におけるX1-X1線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(c)は、(a)におけるY1-Y1線矢視に対応させた一部破断概略横断面図である。
【
図3】同スペーサを内燃機関の冷却水流路内に配置した状態の一例を模式的に示す一部省略概略平面図である。
【
図4】(a)、(b)は、
図3におけるZ部に対応させた一部破断概略横断面図である。
【
図5】(a)は、第1変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す一部破断概略正面図、(b)は、第2変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す一部破断概略正面図、(c)は、(b)におけるX2-X2線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【
図6】(a)は、第3変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す一部破断概略正面図、(b)は、(a)におけるX3-X3線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(c)は、第4変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す一部破断概略正面図、(d)は、(c)におけるX4-X4線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【
図7】(a)は、第5変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す一部破断概略正面図、(b)は、(a)におけるY2-Y2線矢視に対応させた一部破断概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
図1~
図4は、第1実施形態に係る成形型の一例、これを用いた複合成形品の製造方法の一例及びスペーサの一例を模式的に示す図である。
【0013】
本実施形態に係る成形型1は、
図1及び
図2に示すように、シート体11の一方面を樹脂成形体13に沿わせた複合成形品10を一体成形する際に用いられる。
本実施形態では、複合成形品10は、
図3に示すように、内燃機関20のシリンダブロック21に設けられた冷却水流路24内に配置され、冷却水の流れを規制するスペーサである。このような構成とすれば、詳細には後述するが成形型1を用いて、冷却水流路24内に配置されて冷却水の流れを規制するスペーサを、ウェルドラインの発生を抑制して成形することができる。本実施形態に係る成形型1を用いて成形される複合成形品10としては、このようなスペーサに限られないが、以下では、一例として複合成形品10を、スペーサ10として説明し、樹脂成形体13を、スペーサ本体13として説明する。成形型1の具体的構成の一例については後述する。
【0014】
図3では、自動車用エンジン等の内燃機関20の一例として、往復動されるピストン28,28,28をそれぞれに収容する複数(図例では、3つ)のシリンダボア27,27,27が互いに隣接して直列状に設けられたシリンダブロック21を例示している。このシリンダブロック21には、図示省略のシリンダヘッドがガスケットを介して組み付けられる。シリンダボア27,27,27の周囲には、オープンデッキタイプの冷却水流路(ウォータージャケット)24が一連(環状)に溝状に形成されている。この冷却水流路24には、シリンダボア27を取り囲むように円弧状とされた円弧状部24aと、隣接するシリンダボア27,27間の部分が互いに接近して対をなしてくびれ状とされたくびれ部24bと、が設けられている。この冷却水流路24の溝幅方向両側は、シリンダボア27側の内周側壁面26とシリンダボア27とは反対側の外周側壁面25とによって区画されている。シリンダブロック21には、この冷却水流路24に通じる冷却水(不凍液も含む)導入口22と冷却水排出口23とが設けられている。冷却水排出口23は、不図示のラジエータに配管接続され、ラジエータのアウトレット側は、ウォータポンプ(不図示)を介して冷却水導入口22に配管接続される。これによって、冷却水が冷却水流路24とラジエータとの間で循環する。
【0015】
スペーサ10は、
図4(a)、(b)に示すように、厚さ方向に貫通する孔(貫通孔)12が形成されたシート体11と、このシート体11の一方面が沿わせられた合成樹脂製のスペーサ本体13と、を備えている。図例では、冷却水流路24内に、複数のスペーサ10,10が配置された例を示している。これらスペーサ10,10は、冷却水流路24の概ね全周に亘って設けられている。これらスペーサ10,10は、シリンダボア配列方向に直交する方向に2分割(図例では、略2等分)されている。これらスペーサ10,10のシート体11,11及びスペーサ本体13,13は、互いに同様の構成であるので以下では一方を例にとって説明する。
【0016】
スペーサ本体13は、
図3に示すように、厚さ方向が冷却水流路24の溝幅方向となるように配される薄板状とされている。このスペーサ本体13は、冷却水流路24の円弧状部24aに応じて円弧状に形成された円弧状部18と、冷却水流路24のくびれ部24bに応じて屈曲状に形成され、隣り合う円弧状部18,18同士を接続する接続部19と、を備えている。
スペーサ本体13は、
図2(a)~(c)に示すように、シート体11の貫通孔12に連通する凹部16を区画するように設けられ厚さ方向一方側に向けて突出する有底筒状の突部15と、この突部15に連なって延びるように設けられ厚さ方向一方側に向けて突出する突条14と、を備えている。このような構成とすれば、突部15とこれに連なる突条14とによって冷却水の流れを効果的に規制することができる。突部15及び突条14は、本実施形態では、各円弧状部18における外周側壁面25に対面する面の周方向略中央部に位置するように設けられている。これら突部15及び突条14の具体的構成の一例については後述する。
【0017】
シート体11は、可撓性を有しており、スペーサ本体13の円弧状部18における内周側壁面26に対面する面に沿って設けられている。このシート体11の冷却水流路24の周方向に沿う寸法及びシート体11の冷却水流路24の深さ方向に沿う寸法は、スペーサ本体13の円弧状部18の周方向に沿う寸法及び円弧状部18の冷却水流路24の深さ方向に沿う寸法よりも小とされている。図例では、スペーサ本体13の複数(図例では、3つ)の円弧状部18,18,18のそれぞれに、シート体11,11,11が設けられた例を示している。これらシート体11,11,11は、それぞれの周方向中央部が各円弧状部18,18,18の周方向中央部に一致するように設けられているが、このような例に限られない。これらシート体11,11,11は、互いに同様の構成であるので、以下では1つを例にとって説明する。シート体11の貫通孔12の具体的構成の一例については後述する。
【0018】
シート体11は、本実施形態では、所定の外的要因によって、圧縮状態から厚さ方向に膨大化する特性を有している。このような構成とすれば、圧縮状態から厚さ方向に膨大化する特性を有したシート体11をスペーサ本体13に一体成形したスペーサ10を、ウェルドラインの発生を抑制して成形することができる。このシート体11としては、所定の外的要因としての吸水によって厚さ方向に復元(膨張)可能とされたセルロース系スポンジでもよい。セルロース系スポンジは、加圧して圧縮した状態で乾燥すれば、セルロース分子間が水素結合し、その圧縮状態が維持される一方、水に晒される等によって吸水すれば、水分子がセルロース分子間の水素結合を解離させ、圧縮状態から復元する特性を有している。
【0019】
上記のようなシート体11を設けた構成とすれば、スペーサ10を冷却水流路24内に挿入する際にシート体11が圧縮状態であるので、挿入性を向上させることができる。一方、
図4(b)に示すように、シート体11が吸水によって膨大化すれば、このシート体11及びスペーサ本体13によって冷却水の流れを効果的に規制することができる。図例では、シート体11が膨大化した状態で、シート体11が内周側壁面26に当接し、スペーサ本体13の突部15が外周側壁面25に当接しているような例を示しているが、このような例に限られない。
シート体11としては、上記のようなセルロース系スポンジに限られず、水可溶性または熱溶融性のバインダーで圧縮状態とされたゴム系発泡体や合成樹脂系発泡体等でもよく、その他、種々の構成とされたものでもよい。
【0020】
成形型1には、
図1(a)、(b)に示すように、シート体11に形成された貫通孔12に挿通され、先端面8aと対向側との間に溶融樹脂の流動可能な隙間を空けて配される位置決め突起8が設けられている。このような構成とすれば、スペーサ本体13に対するシート体11の位置ずれを抑制することができる。つまり、シート体11が成形型1のキャビティ9内において移動するようなことを抑制することができる。また、
図2(a)~(c)に示すように、位置決め突起8の先端面8aを覆う先端覆部15aを含むスペーサ本体13が成形されることとなり、シート体11の位置決めが可能でありながらも、スペーサ本体13に位置決め突起8によって貫通孔が形成されることがない。
この成形型1には、樹脂供給口3からキャビティ9内に供給されて位置決め突起8に向けて流動する溶融樹脂を位置決め突起8の先端面8a側に誘導する誘導部4が設けられている。このような構成とすれば、位置決め突起8に向けて流動する溶融樹脂が誘導部4によって位置決め突起8の先端面8a側に誘導されるので、先端面8a側を流れ難くなることを抑制することができる。これにより、位置決め突起8の外周面8bに沿って位置決め突起8を回り込むように流れる溶融樹脂と位置決め突起8の先端面8aに沿って流れる溶融樹脂とが位置決め突起8の樹脂流動方向下流側において概ね同じタイミングで流動し易くなることから、ウェルドラインを生じ難くすることができる。これにより、製造されたスペーサ本体13に局所的な強度低下によるクラックが生じたり、外観不良が生じたりすることを抑制することができる。
【0021】
本実施形態では、成形型1の位置決め突起8の対向側には、位置決め突起8を受け入れてスペーサ本体13に位置決め突起8の先端面8aを覆う先端覆部15a及び位置決め突起8の外周面8bを覆う外周覆部15bを形成する突起受入凹所5と、この突起受入凹所5から溶融樹脂の流動方向上流側に向けて延び、誘導部を構成する誘導溝4と、が設けられている。このような構成とすれば、突起受入凹所5に受け入れられた位置決め突起8の先端面8aを覆う先端覆部15a及び外周面8bを覆う外周覆部15bを形成することができる。これにより、先端覆部15aと外周覆部15bとによってスペーサ本体13の一方面から突出する有底筒状の突部15を形成することができる。また、突起受入凹所5から溶融樹脂の流動方向上流側に向けて延びる誘導溝4を設けているので、ウェルドラインをより効果的に生じ難くすることができる。つまり、誘導部を構成する誘導溝4に沿って位置決め突起8の先端面8a側に向けて溶融樹脂を効果的に誘導することができる。
【0022】
本実施形態では、成形型1には、
図2(a)、(b)に示すように、複数の位置決め突起8,8及び複数の突起受入凹所5,5と、これら複数の突起受入凹所5,5を連通させる誘導溝4と、が設けられている。このような構成とすれば、複数の位置決め突起8,8によってシート体11をより確実に位置決めすることができる。また、複数の突起受入凹所5,5を連通させる誘導溝4によって各位置決め突起8,8の先端面8a,8a側に向けて溶融樹脂を効果的に誘導することができる。誘導溝4は、複数の突起受入凹所5,5間に直線状に形成されている。このような構成とすれば、直線状の誘導溝4によって各位置決め突起8,8の先端面8a,8a側に向けて溶融樹脂をより効果的に誘導することができる。樹脂供給口3は、誘導溝4の溝底4aまたは誘導溝4の近傍において開口している。このような構成とすれば、樹脂供給口3から供給された溶融樹脂を誘導溝4に沿って流動させ易くなる。
【0023】
具体的には、成形型1は、
図1(a)、(b)に示すように、樹脂供給口3、誘導溝4及び突起受入凹所5が設けられた第1型2と、位置決め突起8が設けられた第2型7と、を備えている。これら第1型2及び第2型7は、これらによって区画されるキャビティ9が上記したスペーサ本体13に応じた形状となるように形成されている。第1型2の樹脂供給口3、誘導溝4及び突起受入凹所5並びに第2型7の位置決め突起8は、スペーサ本体13の各円弧状部18,18,18を形成する部位それぞれの周方向(冷却水流路24の周方向)中央部に設けられている。以下では、第1型2の樹脂供給口3、誘導溝4及び突起受入凹所5並びに第2型7の位置決め突起8について、1つの円弧状部18を形成する部位を例にとって説明する。
【0024】
位置決め突起8は、本実施形態では、円柱状とされている(
図2(a)も参照)。また、本実施形態では、2つの位置決め突起8,8を冷却水流路24の深さ方向に間隔を空けて設けている。これら2つの位置決め突起8,8は、樹脂供給口3から等距離の位置となるように設けられている。これら2つの位置決め突起8,8は、突出寸法及び径W1が互いに同寸とされている。上記したシート体11には、これら2つの位置決め突起8,8が挿通される貫通孔12,12が設けられている。これら貫通孔12,12の内径は、各位置決め突起8,8の挿通が可能なように、位置決め突起8,8の径W1に応じた径とされている。位置決め突起8,8の突出寸法は、シート体11の厚さ寸法よりも大とされている。
突起受入凹所5は、位置決め突起8に対応させて、本実施形態では、凹所深さ方向に見て位置決め突起8と同心状の円形状とされている(
図2(a)も参照)。また、本実施形態では、2つの突起受入凹所5,5を、樹脂供給口3から等距離の位置となるように、冷却水流路24の深さ方向に間隔を空けて設けている。これら2つの突起受入凹所5,5は、深さ寸法D2(
図1(a)参照)及び径が互いに同寸とされている。
【0025】
誘導溝4は、これら2つの突起受入凹所5,5を連通させるように冷却水流路24の深さ方向に延びるように設けられている。樹脂供給口3は、この誘導溝4の溝底4aにおいて開口するように設けられている。
本実施形態では、
図1(a)に示すように、誘導溝4における少なくとも突起受入凹所側部位の溝深さ寸法D1は、突起受入凹所5の深さ寸法D2以上である。このような構成とすれば、例えば、誘導溝4の溝深さ寸法D1が突起受入凹所5の深さ寸法D2よりも小さい寸法とされたものと比べて、誘導溝4に沿って位置決め突起8の先端面8a側に向けて溶融樹脂をより効果的に誘導することができる。図例では、2つの突起受入凹所5,5間に亘る誘導溝4の溝深さ寸法D1を全長に亘って均一な寸法とし、突起受入凹所5の深さ寸法D2と同寸法としているが、このような態様に限られない。
この誘導溝4の溝幅W2は、
図2(a)に示すように、位置決め突起8の径W1よりも小とされている。このような構成とすれば、溶融樹脂が位置決め突起8の外周面8b側を流れ難くなることから、位置決め突起8の先端面8a側に向けて溶融樹脂をより効果的に誘導することができる。図例では、誘導溝4の溝幅W2を全長に亘って均一な寸法とし、位置決め突起8の径W1の1/2程度とした例を示しているが、このような例に限られない。
【0026】
図1(b)に示すように、突起受入凹所5に位置決め突起8が差し込まれた状態において、位置決め突起8の外周面8bから突起受入凹所5の内周面5bまでの径方向に沿う寸法(外周側隙間寸法)G2よりも位置決め突起8の先端面8aとこれに対向する突起受入凹所5の底面5aとの間の寸法(先端側隙間寸法)G1が大とされている。このような構成とすれば、溶融樹脂が位置決め突起8の外周面8b側を流れ難くなることから、位置決め突起8の先端面8a側に向けて溶融樹脂をより効果的に誘導することができる。図例では、先端側隙間寸法G1を、外周側隙間寸法G2の1.2倍程度とした例を示しているが、このような例に限られない。
【0027】
上記のような構成とされた成形型1を用い、シート体11の一方面をスペーサ本体13に沿わせたスペーサ10を一体成形する複合成形品の製造方法は、シート体11に形成された貫通孔12に、成形型1に設けられた位置決め突起8を挿通させてシート体11を位置決めする工程と、成形型1のキャビティ9内に溶融樹脂を供給して位置決め突起8の先端面8aを覆う先端覆部15aを含むスペーサ本体13を成形する工程と、を備えている。具体的には、
図1(a)に示すように、第1型2と第2型7とを型開した状態で、第2型7の位置決め突起8をシート体11の貫通孔12に挿通させてシート体11を第2型7に対して位置決めする。そして、
図1(b)に示すように、第1型2と第2型7とを型閉し、樹脂供給口3を介してキャビティ9内に溶融樹脂を供給する。
【0028】
この樹脂供給口3から供給された溶融樹脂は、第1型2の型面と第2型7の型面との間を流れ、また、誘導溝4に沿って流れ、両側の位置決め突起8,8の先端面8a,8a及び外周面8b,8b並びに両側の突起受入凹所5,5の底面5a,5a及び内周面5b,5bに沿って流れる。このように樹脂供給口3から位置決め突起8の外周面8bに沿って位置決め突起8を回り込むように流れる溶融樹脂と位置決め突起8の先端面8aに沿って流れる溶融樹脂とが位置決め突起8の樹脂流動方向下流側において略同じタイミングで流動するように成形型1が構成されている。
そして、適宜、保圧、型開、離型すれば、シート体11の一方面をスペーサ本体13に沿わせたスペーサ10が成形される。
【0029】
本実施形態では、このスペーサ10のスペーサ本体13の円弧状部18には、その周方向中央部において冷却水流路24の深さ方向に間隔を空けて2つの突部15,15が設けられ、これら突部15,15を繋ぐように延びる突条14が設けられている。
これら突部15,15は、円弧状部18の径方向外側に向けて突出するように設けられている。これら突部15,15は、先端覆部15a,15aを底面部とし、外周覆部15b,15bを側面部とする有底の略円筒形状とされている。これら突部15,15は、互いに突出寸法及び径が同寸とされている。これら突部15,15の先端覆部15a,15aの厚さ寸法(突部突出方向に沿う寸法)は、これら突部15,15の外周覆部15b,15bの厚さ寸法(突部径方向に沿う寸法)よりも大とされている。
【0030】
これら突部15,15のシート体11側においてそれぞれ開口するように凹部16,16が設けられている。これら凹部16,16は、底面が先端覆部15aによって区画され、内周面が外周覆部15b及び突部15,15を除いた部位のスペーサ本体13によって区画されている。これら凹部16,16は、これらの深さ方向に見て、略円形状とされている。これら凹部16,16の径は、シート体11の貫通孔12,12の径と略同径とされている。
突条14は、円弧状部18の径方向外側に向けて突出するように設けられている。この突条14は、幅方向が冷却水流路24の周方向となる壁状に形成されている。この突条14の突出寸法は、突部15,15の突出寸法と同寸法とされている。つまり、突条14の先端面と突部15,15の先端面とは同一平面状とされている。この突条14の幅寸法(冷却水流路24の周方向に沿う寸法)は、突部15,15の径よりも小さい寸法とされている。
【0031】
次に、成形型の変形例及び各変形例を用いて成形された複合成形品としてのスペーサの一例について、図面を参照して説明する。
以下の各変形例では、先に説明した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、先に説明した例と同様に奏する作用効果についても説明を省略または簡略に説明する。また、各変形例に係る成形型を用いた製造方法についても上記と同様であるので説明を省略する。
【0032】
図5(a)は、第1変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す図である。
本変形例では、成形型1Aの第1型2Aの誘導溝4Aが一直線状ではなく途中において屈曲している点が上記した例とは主に異なる。本変形例では、第1型2Aの2つの突起受入凹所5,5及び第2型7Aの2つの位置決め突起8,8が樹脂供給口3から冷却水流路24の周方向にずれた位置となるように設けられている。これら2つの突起受入凹所5,5及び2つの位置決め突起8,8は、冷却水流路24の周方向で互いに一致した位置となるように、かつ樹脂供給口3から等距離の位置となるように設けられている。誘導溝4Aは、樹脂供給口3が設けられた部位において屈曲し、当該部位から突起受入凹所5,5のそれぞれに向けて延びるように設けられている。
【0033】
樹脂供給口3が円弧状部18を形成する部位の周方向中央部に位置するように設けられていてもよく、または、2つの突起受入凹所5,5及び2つの位置決め突起8,8が円弧状部18を形成する部位の周方向中央部に位置するように設けられていてもよい。
この成形型1Aを用いて成形されたスペーサ10Aのスペーサ本体13Aには、途中において屈曲する突条14Aが設けられている。スペーサ本体13Aには、上記と概ね同様、2つの突部15,15が冷却水流路24の周方向で互いに一致した位置となるように設けられている。突条14Aは、屈曲部から突部15,15のそれぞれに向けて延びるように設けられている。
【0034】
図5(b)、(c)は、第2変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す図である。
本変形例では、成形型1Bの第1型2Bに1つの突起受入凹所5を設け、第2型7Bに1つの位置決め突起8を設けた例を示している。これら突起受入凹所5及び位置決め突起8並びに樹脂供給口3は、冷却水流路24の周方向で互いに一致した位置となるように設けられている。本変形例では、樹脂供給口3は、誘導溝4Bの溝底4aではなく、誘導溝4Bの近傍において開口している。ここに、誘導溝4Bの近傍とは、樹脂供給口3の径や成形するスペーサ10の大きさ等にもよるが、樹脂供給口3から誘導溝4Bまでの距離が20mm以内の範囲であってもよい。図例では、樹脂供給口3は、突起受入凹所5に向けて延びる誘導溝4Bの突起受入凹所5側の端部とは反対側の端部近傍において開口している例を示しているが、このような例に限られない。
【0035】
本変形例では、
図5(c)に示すように、誘導溝4Bは、全長に亘って均一な溝深さ寸法とされておらず、その突起受入凹所5側部位の溝深さ寸法D1が均一とされている。この誘導溝4Bの樹脂供給口3側部位は、樹脂供給口3側の端部から突起受入凹所5側に向かうに従い溝深さ寸法が徐々に大となるように形成されている。この誘導溝4Bの突起受入凹所5側部位の溝深さ寸法D1は、突起受入凹所5の深さ寸法D2よりも小とされている。
この成形型1Bを用いて成形されたスペーサ10Bのスペーサ本体13Bには、1つの突部15と、この突部15から冷却水流路24の深さ方向に延びる突条14Bと、が設けられている。この突条14Bの突部15側部位の突出寸法は、突部15の突出寸法よりも小とされている。この突条14Bの突部15から離れた部位は、その突出寸法が突部15から離れるに従い徐々に小さくなるように形成されている。
本変形例においては、1つの突起受入凹所5及び位置決め突起8を設けた例を示しているが、樹脂供給口3を挟んで対称状に突起受入凹所5及び位置決め突起8が更に設けられていてもよい。この場合は、樹脂供給口3の近傍から冷却水流路24の深さ方向で両側に向けて延びるように誘導溝4Bが設けられていてもよい。
【0036】
図6(a)、(b)は、第3変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す図である。
本変形例においても第2変形例と同様、成形型1Cの第1型2Cに1つの突起受入凹所5を設け、第2型7Cに1つの位置決め突起8を設けた例を示している。本変形例では、誘導溝4Cの突起受入凹所5側部位の溝深さ寸法D1は、
図6(b)に示すように、突起受入凹所5の深さ寸法D2よりも大とされている。この誘導溝4Cが突起受入凹所5の一部に至るように設けられた例を示している。図例では、突起受入凹所5の概ね中心に至るように誘導溝4Cが設けられた例を示している。
この成形型1Cを用いて成形されたスペーサ10Cのスペーサ本体13Cには、1つの突部15と、この突部15から冷却水流路24の深さ方向に延びる突条14Cと、が設けられている。この突条14Cの突部15側部位の突出寸法は、突部15の突出寸法よりも大とされている。この突条14Cは、突部15の一部に至るように設けられている。このような構成とされたスペーサ10Cは、シート体11が膨大化した状態で、突条14Cが冷却水流路24の外周側壁面25に当接されてもよい。
【0037】
図6(c)、(d)は、第4変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す図である。
本変形例においても第2変形例と同様、成形型1Dの第1型2Dに1つの突起受入凹所5を設け、第2型7Dに1つの位置決め突起8を設けた例を示している。本変形例では、誘導溝4Dの溝幅W2が位置決め突起8の径W1よりも大とされている。本変形例では、誘導溝4Dの溝幅W2を、突起受入凹所5の内径と同寸としている。この誘導溝4Dの溝深さ寸法D1は、突起受入凹所5の深さ寸法D2と同寸法とされている。換言すれば、誘導溝4Dの樹脂供給口3側とは異なる側の端部に一連状に凹所深さ方向に見て略半円状の突起受入凹所5が設けられたような構成とされている。樹脂供給口3は、この誘導溝4Dの突起受入凹所5側とは異なる側の端部の溝底4aにおいて開口するように設けられている。
この成形型1Dを用いて成形されたスペーサ10Dのスペーサ本体13Dには、略半円筒状の突部15から一連状に冷却水流路24の深さ方向に延びる突条14Dが設けられている。換言すれば、突条14Dの一方の端部に一連状に略半円筒状の突部15が設けられたような構成とされている。これら突部15及び突条14Dの突出寸法は、互いに同寸法とされている。突部15の径と突条14Dの幅寸法とは、同寸とされている。
【0038】
図7(a)、(b)は、第5変形例に係る成形型の一例及びこれを用いて成形されたスペーサの一例を模式的に示す図である。
本変形例では、成形型1Eに設けられた誘導部の構成が上記した各例とは主に異なる。本変形例では、第2型7Eの位置決め突起8の対向側には、樹脂供給口3から位置決め突起8に向かう溶融樹脂の流動方向に対して概ね直交する方向の両側から位置決め突起8を挟むように誘導部を構成する2つの誘導突部6,6が設けられている。このような構成としてもウェルドラインを生じ難くすることができる。つまり、誘導部を構成する2つの誘導突部6,6によって溶融樹脂が位置決め突起8の外周面8b側を流れ難くなることから、位置決め突起8の先端面8a側に向けて溶融樹脂をより効果的に誘導することができる。また、上記のような外周覆部15bを形成する突起受入凹所5を設けていないので、上記のような突部15が形成されることなく位置決め突起8の先端面8aを覆う先端覆部15Aの表面を周囲の表面と面一状にすることができる。
【0039】
本変形例では、複数(図例では、2つ)の位置決め突起8,8が設けられ、これら位置決め突起8,8のそれぞれの両側に位置するように誘導突部6,6,6,6が設けられている。つまり、図例では、4つの誘導突部6,6,6,6が設けられている。このような構成とすれば、これら複数の位置決め突起8,8によってシート体11をより確実に位置決めすることができる。また、これら位置決め突起8,8のそれぞれの両側に位置する誘導突部6,6,6,6によって各位置決め突起8,8の先端面8a,8a側に向けて溶融樹脂を効果的に誘導することができる。
具体的には、成形型1Eの第1型2Eの樹脂供給口3及び第2型7Eの2つの位置決め突起8,8は、冷却水流路24の周方向で互いに一致した位置となるように設けられている。これら樹脂供給口3及び2つの位置決め突起8,8は、円弧状部18を形成する部位の周方向中央部に位置するように設けられていてもよい。これら2つの位置決め突起8,8は、樹脂供給口3から等距離の位置となるように設けられている。各位置決め突起8,8の両側の誘導突部6,6,6,6は、互いに同様の構成であるので、以下では、一方の位置決め突起8の両側の誘導突部6,6を例にとって説明する。
【0040】
これら誘導突部6,6は、冷却水流路24の周方向で位置決め突起8の両側に位置するように設けられている。これら誘導突部6,6は、
図7(a)に示すように、冷却水流路24の溝幅方向に見て略方形状とされ、冷却水流路24の深さ方向に沿う寸法が位置決め突起8の径よりも大とされている。第1型2Eには、これら誘導突部6,6によって冷却水流路24の深さ方向に延びる溝部が形成され、この溝部の溝底が位置決め突起8の先端面8aが対向する対向面5Aとなる。
本変形例では、
図7(b)に示すように、これら2つの誘導突部6,6間に位置決め突起8が差し込まれた状態において、位置決め突起8の外周面8aから各誘導突部6,6の互いに向き合う側面6a,6aまでの隙間寸法(外周側隙間寸法)G4よりも位置決め突起8の先端面8aとこれに対向する対向面5Aとの間の寸法(先端側隙間寸法)G3が大きくなるように形成されている。このような構成とすれば、溶融樹脂が位置決め突起8の外周面8b側をより流れ難くなることから、位置決め突起8の先端面8a側に向けて溶融樹脂をより効果的に誘導することができる。
【0041】
この成形型1Eを用いて成形されたスペーサ10Eのスペーサ本体13Eには、シート体11の貫通孔12に連通するシート体側凹部16Aと、厚さ方向でシート体11が沿わせられた側とは異なる側においてシート体側凹部16Aの両側に位置する2つの反シート体側凹部17,17と、が設けられている。このような構成とすれば、シート体側凹部16Aとその両側の反シート体側凹部17,17とによって軽量化を図ることができる。また、スペーサ本体13Eに厚さ方向に突出する上記のような突部15を設けていない構成とできるので、冷却水流路24の内壁(外周側壁面25)との干渉を抑制することができる。
【0042】
本例では、反シート体側凹部17,17は、冷却水流路24の周方向でシート体側凹部16Aの両側に位置するように設けられている。
このスペーサ本体13Eには、冷却水流路24の深さ方向に間隔を空けて2つのシート体側凹部16A,16Aが設けられ、これらシート体側凹部16A,16Aのそれぞれの両側に位置するように反シート体側凹部17,17,17,17が設けられている。各シート体側凹部16A,16A及びこれらの両側の反シート体側凹部17,17,17,17は、互いに同様の構成であるので、以下では、一方のシート体側凹部16A及びこれの両側の反シート体側凹部17,17を例にとって説明する。
【0043】
シート体側凹部16Aは、上記した例の凹部16と概ね同様、シート体11側(内周側壁面26側)において開口し、凹部深さ方向に見て略円形状とされている。このシート体側凹部16Aは、底面が先端覆部15Aによって区画されている。この先端覆部15Aの外周側壁面25側に向く面は、スペーサ本体13Eの他の部位の外周側壁面25側に向く面と面一状とされている。
反シート体側凹部17,17は、シート体11が設けられた側とは異なる側(外周側壁面25側)において開口し、凹部深さ方向に見て略方形状とされている。これら反シート体側凹部17,17とシート体側凹部16Aとを区画するように設けられた壁部15B,15Bの冷却水流路24の周方向に沿う寸法は、先端覆部15Aの厚さ寸法よりも小とされている。
【0044】
上記した各例に係る成形型1,1A~1E及びスペーサ10,10A~10Eにおける互いに異なる構成の一部を組み替えたり、組み合わせたりして適用するようにしてもよい。
上記した各例では、シート体11を所定の外的要因によって、圧縮状態から厚さ方向に膨大化する特性を有した構成としたが、このような特性を有していない構成であってもよい。シート体11としては、例えば、皮革や布、織物、木質単板、樹脂シート、コルクシート等であってもよい。
上記した各例では、シート体11の一方面を樹脂成形体に沿わせた複合成形品を、冷却水流路24内に配置されるスペーサ10,10A~10Eとした例を示しているが、自動車の内装トリムやガーニッシュ、産業機械、電子機器、建築資材等において用いられる種々の部品や部材を構成するものとしてもよい。
上記した各例に係る成形型1,1A~1E及びスペーサ(複合成形品)10,10A~10Eを構成する各部の構成は、上記した例に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,1A~1E 成形型
3 樹脂供給口
4,4A~4D 誘導溝(誘導部)
4a 溝底
5 突起受入凹所
5a 底面(対向側)
5b 内周面
5A 対向面(対向側)
6 誘導突部(誘導部)
6a 側面
8 位置決め突起
8a 先端面
8b 外周面
9 キャビティ
10,10A~10E スペーサ(複合成形品)
11 シート体
12 貫通孔(孔)
13,13A~13E スペーサ本体(樹脂成形体)
14,14A~14D 突条
15 突部
15a,15A 先端覆部
15b 外周覆部
16 凹部
16A シート体側凹部
17 反シート体側凹部
20 内燃機関
21 シリンダブロック
24 冷却水流路
D1 溝深さ寸法(誘導溝の突起受入凹所側部位の溝深さ寸法)
D2 深さ寸法(突起受入凹所の深さ寸法)
G1 先端側隙間寸法(位置決め突起の先端面とこれに対向する突起受入凹所の底面との間の寸法)
G2 外周側隙間寸法(位置決め突起の外周面から突起受入凹所の内周面までの径方向に沿う寸法)
G3 先端側隙間寸法(位置決め突起の先端面とこれに対向する対向面との間の寸法)
G4 外周側隙間寸法(位置決め突起の外周面から各誘導突部の互いに向き合う側面までの隙間寸法)
W1 径(位置決め突起の径)
W2 溝幅(誘導溝の溝幅)