(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160207
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】カメラモニタリングシステム用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/00 20220101AFI20221012BHJP
B60R 1/12 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B60R1/00 A
B60R1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064831
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 軒介
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 知彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 親彦
(57)【要約】
【課題】カメラモニタリングシステムの異常時にドライバーが後方視認可能な状態に早急に復帰する制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置15は、異常検出部21および視認状態切替部22を備える。異常検出部21は、CMS10の異常を検出する。視認状態切替部22は、CMS10の異常が検出された場合、モニター12を非表示にし、モニター12を用いた視認状態からハーフミラー18を用いた視認状態に切り替える。これにより、CMS10に異常が発生したとしても、CMS10の状態を検出することで部品焼損等の故障を未然に防止できる。また、ドライバー91の操作を要することなくモニター12からハーフミラー18に切り替わるため、ドライバー91が後方視認可能な状態に早急に復帰できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラが撮影した画像をモニターに表示させ、ハーフミラーを通して前記モニターの画像を車両のドライバーに見せることで、ドライバーが車両後方を視認可能とするカメラモニタリングシステム用の制御装置であって、
前記カメラモニタリングシステムの異常を検出する異常検出部と、
前記カメラモニタリングシステムの異常が検出された場合、前記モニターを非表示にし、前記モニターを用いた視認状態から前記ハーフミラーを用いた視認状態に切り替える視認状態切替部と、
を備えるカメラモニタリングシステム用の制御装置。
【請求項2】
ドライバーに対する前記ハーフミラーの角度は、前記モニターを用いた視認状態と前記ハーフミラーを用いた視認状態との間で変わらず、
前記視認状態切替部は、前記モニターを非表示にするだけで、前記モニターを用いた視認状態から前記ハーフミラーを用いた視認状態に切り替える、請求項1に記載のカメラモニタリングシステム用の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモニタリングシステム用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鏡だけを使った車室内後写鏡に代わって、カメラおよびモニターを使ったカメラモニタリングシステム(以下、CMS)が実用化されている。市場に出ているCMSの中には、例えば特許文献1に開示されたもののようにハーフミラーと組み合わせることでドライバーの意思によりモニターかハーフミラーかを使い分けることができるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、国連規則である間接視界に関する協定規則UN-R46では、『システムが作動不可であること(例:CMSの故障)を(警告表示、ディスプレイ情報、ステータスインジケータの欠如などによって)運転者が認識できるようにするものとする。運転者のための情報は、使用者向けマニュアルの中で説明されるものとする。』と規定されている。従来のCMSでは、例えばカメラ画像が異常である場合、モニターには「無信号」と表示され続ける。しかし、システムの異常をドライバーに知らせることができたとしても、その後ドライバーが後方を視認できない状態が継続する。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、CMSの異常時にドライバーが後方視認可能な状態に早急に復帰する制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制御装置は、カメラが撮影した画像をモニターに表示させ、ハーフミラーを通してモニターの画像を車両のドライバーに見せることで、ドライバーが車両後方を視認可能とするCMSに用いられるものであって、異常検出部および視認状態切替部を備える。
【0007】
異常検出部は、CMSの異常を検出する。視認状態切替部は、CMSの異常が検出された場合、モニターを非表示にし、モニターを用いた視認状態からハーフミラーを用いた視認状態に切り替える。これにより、CMSに異常が発生したとしても、システムの状態を検出することで部品焼損等の故障を未然に防止できる。また、ドライバーの操作を要することなくモニターからハーフミラーに切り替わるため、ドライバーが後方視認可能な状態に早急に復帰できる。
【0008】
好ましくは、ドライバーに対するハーフミラーの角度は、モニターを用いた視認状態とハーフミラーを用いた視認状態との間で変わらない。視認状態切替部は、モニターを非表示にするだけで、モニターを用いた視認状態からハーフミラーを用いた視認状態に切り替える。これにより、視認状態の切り替えに際して、ハーフミラーの角度調整を手動で行う必要がなく、さらにハーフミラーの角度を例えばアクチュエータ等を用いて自動で変更する必要もない。そのため、システムを簡素化することができる。また、視認状態の切り替えに要する時間をできるだけ短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の制御装置が実行する処理を説明するフローチャート。
【
図3】
図1の制御装置が実行する異常処理ルーチンを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[一実施形態]
以下、本発明の一実施形態による制御装置を図面に基づいて説明する。制御装置は、CMSに用いられる。CMSは、従来の鏡だけを使った車室内後写鏡に代わって、カメラおよびモニターを使ったシステムである。
【0011】
<CMS>
CMS10について
図1を参照して説明する。CMS10は、カメラ11、モニター12、モニタースイッチ13、LEDランプ14および制御装置15を備える。
【0012】
カメラ11は、車両後方を撮影可能に車両90に設置されている。モニター12は、ミラーユニット16に設置されており、カメラ11が撮影した画像を表示する。ミラーユニット16は、ハウジング17と、ハウジング17の車両後方側の開口部に設置されたハーフミラー18と、ハウジング17を角度変更可能に支持するアーム19とを有する。モニター12は、ハウジング17内であって、ハーフミラー18に対して車両前方側に設置されている。ハーフミラー18は、モニター12からの画面表示光を透過可能である。
【0013】
モニタースイッチ13は、モニター12の画面表示のオン(表示)とオフ(非表示)をドライバー91が手動で切り替えるためのスイッチである。LEDランプ14は、CMS10の状態を示すためのランプである。制御装置15は、カメラ11から出力された画像信号を処理して画像としてモニター12に表示させる。また、制御装置15は、モニター12の輝度、色相、色度等を調整したり、各種メッセージをモニター12に表示させたりする。モニタースイッチ13、LEDランプ14および制御装置15は、ミラーユニット16に配置されてもよいし、ミラーユニット16の外に配置されてもよい。
【0014】
CMS10は、カメラ11が撮影した画像をモニター12に表示させ、ハーフミラー18を通してモニター12の画像を車両90のドライバー91に見せることで、ドライバー91が車両後方を視認可能とする。また、CMS10は、モニター12を非表示にし、ハーフミラー18に映る像をドライバー91に見せることで、ドライバー91が車両後方を視認可能とする。
【0015】
以下の説明において、ドライバー91がモニター12に表示された画像を見ることで車両後方を視認可能な状態のことを、モニター12を用いた視認状態と記載し、ドライバー91がハーフミラー18に映る像を見ることで車両後方を視認可能な状態のことを、ハーフミラーを用いた視認状態と記載する。ドライバー91は、モニタースイッチ13を操作することで、自身の意思によりモニターを用いた視認状態かハーフミラーを用いた視認状態かを使い分けることができる。
【0016】
<従来の問題>
ここで、従来のCMSの問題を説明する。従来のCMSは、モニター使用時にはハーフミラー使用時と比べてハーフミラーの鏡面を上方へ傾ける機構を有している。そのため、CMSの異常をモニター表示によりドライバーに通知したとしても、ドライバーが手動でハーフミラーを用いた視認状態に切り替えなければならない。単にモニターの電源を切るだけでは後方視認はできず、ハーフミラーの鏡面の角度調整が必要になる。また、モニターのバックライトが点灯したままでは、バックライトの光(明るさ)によってミラーの視認性が劣る。
【0017】
<一実施形態の特徴>
上記従来の問題に対して、一実施形態では以下の特徴がある。制御装置15は、異常検出部21および視認状態切替部22を備える。異常検出部21は、CMS10の異常を検出する。視認状態切替部22は、CMS10の異常が検出された場合、モニター12を非表示にし、モニター12を用いた視認状態からハーフミラー18を用いた視認状態に切り替える。「モニターを非表示にする」とは、モニターの画面をオフにしつつ電源はオンのままの場合と、モニターの電源をオフする場合の両方を含む。これにより、CMS10に異常が発生したとしても、CMS10の状態を検出することで部品焼損等の故障を未然に防止できる。また、ドライバー91の操作を要することなくモニター12からハーフミラー18に切り替わるため、ドライバー91が後方視認可能な状態に早急に復帰できる。
【0018】
また、ドライバー91に対するハーフミラー18の角度は、モニター12を用いた視認状態とハーフミラー18を用いた視認状態との間で変わらない。視認状態切替部22は、モニター12を非表示にするだけで、モニター12を用いた視認状態からハーフミラー18を用いた視認状態に切り替える。これにより、モニター12を用いた視認状態からハーフミラー18を用いた視認状態に切り替える際に、ハーフミラー18の角度調整を手動で行う必要がなく、さらにハーフミラー18の角度を例えばアクチュエータ等を用いて自動で変更する必要もない。そのため、ドライバー91が後方視認可能な状態に早急に復帰できるとともに、システムを簡素化することができる。
【0019】
制御装置15の各機能部21、22は、専用の論理回路によるハードウェア処理により実現されてもよいし、メモリーに予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理により実現されてもよい。各機能部21、22のうちどの部分をハードウェア処理により実現し、どの部分をソフトウェア処理により実現するかは、適宜選択可能である。
【0020】
<制御装置が実行する処理>
次に、制御装置15がCMS10の異常検出および視認状態の切り替えのために実行する一連の処理について
図2および
図3を参照して説明する。
図2に示す処理は、モニタースイッチ13がオンになる等によりモニター12が起動した場合に実行される。以下の説明において「S」はステップを意味する。
【0021】
図2の処理が開始されると、S100において、カメラ11の画像信号、カメラ11の電源電圧、モニター12のバックライトの電源電圧、各種供給電圧、およびモニター12の温度等のCMS10の状態を示す情報(以下、システム情報)に基づき、CMS10の異常の有無が判定される。CMS10の異常には、例えば信号無し、画面フリーズ、オーバーヒート、および電源過負荷などがある。CMS10が異常である場合(S100:Yes)、処理はS200に移行する。CMS10が異常ではない場合(S100:No)、処理はS100を再度実行する。
【0022】
S200では、
図3に示す異常処理ルーチンが呼び出されて実行される。
図3のルーチンが開始されると、S201において、所定時間(例えば3秒)待機する。S201の後、処理はS202に移行する。
【0023】
S202では、システム情報に基づき2回目のCMS10の異常の有無が判定される。CMS10が異常である場合(S202:Yes)、処理はS203に移行する。CMS10が異常ではない場合(S202:No)、処理はS100に移行する。
【0024】
S203では、CMS10がリセットされる。S203の後、処理はS204に移行する。
【0025】
S204では、システム情報に基づき3回目のCMS10の異常の有無が判定される。CMS10が異常である場合(S204:Yes)、処理はS205に移行する。CMS10が異常ではない場合(S204:No)、処理はS100に移行する。
【0026】
S205ではモニター12の輝度が下げられる。続いてS206では、CMS10の異常を知らせるメッセージがモニター12に表示される。続いてS207では、LEDランプ14が点灯から点滅に変更される。続いてS208では、所定時間(例えば3秒)待機する。続いてS209では、モニター12が非表示となる。S209の後、処理は
図2のルーチンに戻り、
図2のルーチンが終了する。
【0027】
<効果>
以上説明したように、CMS10の異常が検出された場合、モニター12が非表示になり、モニター12を用いた視認状態からハーフミラー18を用いた視認状態に切り替わるので、ドライバー91が後方視認可能な状態に早急に復帰できる。
【0028】
また、ドライバー91に対するハーフミラー18の角度は、モニター12を用いた視認状態とハーフミラー18を用いた視認状態の間で変わらないので、モニター12を非表示にするだけで、例えばアクチュエータ等を用いてハーフミラー18の角度を変更することなく、ドライバー91が後方視認可能な状態に早急に復帰できる。
【0029】
[他の実施形態]
他の実施形態では、ハーフミラーの角度を変更するアクチュエータが設けられ、視認状態切替部は、モニターを非表示にするとともにアクチュエータを用いてハーフミラーの角度を変更するように構成してもよい。それでも、ドライバーの操作を要することなくモニターからハーフミラーに切り替わるため、ドライバーが後方視認可能な状態に早急に復帰できる。
【0030】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 CMS、11 カメラ、12 モニター、13 モニタースイッチ、
14 LEDランプ、15 制御装置、16 ミラーユニット、17 ハウジング、
18 ハーフミラー、19 アーム、21 異常検出部、22 視認状態切替部、
90 車両、91 ドライバー。