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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160216
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】カーボン材料分散液
(51)【国際特許分類】
   C08L 55/00 20060101AFI20221012BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221012BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C08L55/00
C08K3/04
C08F290/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064841
(22)【出願日】2021-04-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 博之
(72)【発明者】
【氏名】釜林 純
(72)【発明者】
【氏名】村上 賀一
(72)【発明者】
【氏名】土居 誠司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 禅
【テーマコード(参考)】
4J002
4J127
【Fターム(参考)】
4J002BQ001
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002FD106
4J002FD206
4J002GN00
4J002GQ00
4J002HA06
4J127AA07
4J127BA041
4J127BB021
4J127BB101
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD221
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BF181
4J127BF18X
4J127BF191
4J127BF19X
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG14Z
4J127CA02
4J127CB052
4J127CB062
4J127CB201
4J127CC032
4J127CC291
4J127EA04
4J127FA51
(57)【要約】
【課題】カーボン材料を高濃度に含む場合であっても分散性に優れているとともに、長期間にわたって分散性が安定的に維持されるカーボン材料分散液を提供する。
【解決手段】カーボン材料、水、及び高分子分散剤を含有し、高分子分散剤が、2-ビニルピリジン等のモノマー1に由来する構成単位(1)5~40質量%と、一般式(1)で表されるモノマー2に由来する構成単位(2)50~80質量%と、これらのモノマーと共重合可能なモノマー3に由来する構成単位(3)0.5~40質量%とを含むポリマーであるカーボン材料分散液である。
(Rは水素原子等を示し、AはO又はNHを示し、Xはエチレン基又はプロピレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、Rは、相互に独立に水素原子等を示し、nは20~100の平均繰り返し単位数を示し、Rは水素原子等を示す)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン材料、水、及び高分子分散剤を含有し、
前記高分子分散剤が、
2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、及びこれらの第4級アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種のモノマー1に由来する構成単位(1)5~40質量%と、
下記一般式(1)で表されるモノマー2に由来する構成単位(2)50~80質量%と、
前記モノマー1及び前記モノマー2と共重合可能なモノマー3に由来する構成単位(3)0.5~40質量%と、を含む、
数平均分子量が5,000~20,000のポリマーであるカーボン材料分散液。
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Xはエチレン基又はプロピレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、Rは、相互に独立に水素原子又はメチル基を示し、nは20~100の平均繰り返し単位数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、Rが水素原子である繰り返し単位数nは、全体の繰り返し単位数nの1/2以上である)
【請求項2】
前記カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のカーボン材料分散液。
【請求項3】
前記モノマー3が、α-メチルスチレンを含み、
前記ポリマー中、前記α-メチルスチレンに由来する構成単位の含有量が、0.5~5質量%である請求項1又は2に記載のカーボン材料分散液。
【請求項4】
前記モノマー3が、(メタ)アクリル酸を含み、
前記ポリマー中、前記(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量が、0.5~30質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載のカーボン材料分散液。
【請求項5】
前記カーボン材料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が、10~200質量部であり、
前記カーボン材料の含有量が、15質量%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のカーボン材料分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン材料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェン等のカーボン材料(ナノカーボン材料)は、炭素原子の共有結合によって形成される六員環グラファイト構造を有する、導電性や伝熱性等の種々の特性が発揮される材料であり、幅広い分野でその特性を活かすための方法が検討されている。例えば、カーボン材料の電気的性質、熱的性質、及びフィラーとしての性質に注目し、帯電防止剤、導電材料、プラスチック補強材、半導体、燃料電池電極、及びディスプレーの陰極線等に用いることが検討されている。
【0003】
これらの用途には、カーボン材料の分散性が良好であるとともに、分散性が長期間にわたって維持されるカーボン材料分散液が必要である。但し、ナノサイズのカーボン材料は表面エネルギーが高く、強いファンデルワールス力が働いているために凝集しやすい。このため、液媒体中に分散させた場合であっても、直ちに凝集することが多い。
【0004】
カーボン材料を液媒体中に安定して分散させるために、一般的に分散剤が用いられている。例えば、アルカノールアミン塩等のカチオン性界面活性剤や、スチレン-アクリル系樹脂等の高分子分散剤を用いた、カーボンナノチューブの溶剤系分散液が提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-174084号公報
【特許文献2】特表2013-537570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、界面活性剤を分散剤として用いると、カーボンナノチューブを液媒体中に分散させることは可能であるが、その分散性は必ずしも十分であるとはいえず、さらには再凝集しやすいといった課題もあった。また、一般的な高分子分散剤を用いると、得られる分散液がチキソトロピックな性質を示しやすく、時間経過とともにカーボン材料が沈降したり、分散液がゲル化したりする場合があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、カーボン材料を高濃度に含む場合であっても分散性に優れているとともに、長期間にわたって分散性が安定的に維持されるカーボン材料分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すカーボン材料分散液が提供される。
[1]カーボン材料、水、及び高分子分散剤を含有し、前記高分子分散剤が、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、及びこれらの第4級アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種のモノマー1に由来する構成単位(1)5~40質量%と、下記一般式(1)で表されるモノマー2に由来する構成単位(2)50~80質量%と、前記モノマー1及び前記モノマー2と共重合可能なモノマー3に由来する構成単位(3)0.5~40質量%と、を含む、数平均分子量が5,000~20,000のポリマーであるカーボン材料分散液。
【0009】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Xはエチレン基又はプロピレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、Rは、相互に独立に水素原子又はメチル基を示し、nは20~100の平均繰り返し単位数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、Rが水素原子である繰り返し単位数nは、全体の繰り返し単位数nの1/2以上である)
【0010】
[2]前記カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載のカーボン材料分散液。
[3]前記モノマー3が、α-メチルスチレンを含み、前記ポリマー中、前記α-メチルスチレンに由来する構成単位の含有量が、0.5~5質量%である前記[1]又は[2]に記載のカーボン材料分散液。
[4]前記モノマー3が、(メタ)アクリル酸を含み、前記ポリマー中、前記(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量が、0.5~30質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載のカーボン材料分散液。
[5]前記カーボン材料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が、10~200質量部であり、前記カーボン材料の含有量が、15質量%以下である前記[1]~[4]のいずれかに記載のカーボン材料分散液。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カーボン材料を高濃度に含む場合であっても分散性に優れているとともに、長期間にわたって分散性が安定的に維持されるカーボン材料分散液を提供することができる。本発明のカーボン材料分散液は、分散性、保存安定性、粘度特性、及び加工性に優れており、塗布等することでカーボン塗膜を形成することができる。また、カーボン材料を適宜選択することで、透明性の高い皮膜を形成することもできる。さらに、高分子分散剤の含有量が少なくても、カーボン材料が良好な状態で分散されているので、カーボン材料の含有量の多い塗膜を形成することが可能であり、導電性及び熱伝導性等のカーボン材料自体の特性を生かすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<カーボン材料分散液>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のカーボン材料分散液の一実施形態は、カーボン材料、水、及び高分子分散剤を含有する。そして、高分子分散剤が、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、及びこれらの第4級アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種のモノマー1に由来する構成単位(1)5~40質量%と、下記一般式(1)で表されるモノマー2に由来する構成単位(2)50~80質量%と、モノマー1及びモノマー2と共重合可能なモノマー3に由来する構成単位(3)0.5~40質量%と、を含む、数平均分子量が5,000~20,000のポリマーである。以下、本実施形態のカーボン材料分散液の詳細について説明する。
【0013】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Xはエチレン基又はプロピレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、Rは、相互に独立に水素原子又はメチル基を示し、nは20~100の平均繰り返し単位数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、Rが水素原子である繰り返し単位数nは、全体の繰り返し単位数nの1/2以上である)
【0014】
(カーボン材料)
カーボン材料としては、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができる。カーボンブラックのストラクチャー、吸油量、及び比表面積等の物性値や、酸化等の表面改質等の有無については特に限定されず、従来公知のカーボンブラックを用いることができる。
【0015】
カーボンファイバーとしては、ポリアクリロニトリルを原料とするPAN系炭素繊維、ピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維、及びこれらの再生品等を挙げることができる。なかでも、繊維径がナノサイズであり、六員環グラファイト構造を巻いて筒状にした形状を有する、いわゆるカーボンナノファイバーや、その径がシングルナノサイズであるカーボンナノチューブを用いることができる。カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブとしては、多層のマルチウォールや、単層のシングルウォール等を用いることができる。
【0016】
カーボン材料の粒子径、繊維径、繊維長、形状、及び製造方法等については特に限定されない。カーボン材料には、白金やパラジウム等の金属及び金属塩がドープされていてもよい。カーボン材料の表面は、酸化処理、プラズマ処理、放射線処理、コロナ処理、及びカップリング処理等されることによって表面改質されていてもよい。
【0017】
(液分散媒体)
本実施形態のカーボン材料分散液は、カーボン材料を分散させる液分散媒体として水を含有する。すなわち、本実施形態のカーボン材料分散液は、水性の分散液である。液分散媒体には、必要に応じて、水以外の液媒体を含有させてもよい。水以外の液媒体としては、水可溶性の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類;ピロリドン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等のアミド類;テトラメチル尿素、ジメチル1,3-イミダゾリジノン等の尿素系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄含有溶媒;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド等のイオン液体;等を挙げることができる。カーボン材料分散液中の水可溶性の有機溶媒の含有量は、20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0018】
(高分子分散剤)
高分子分散剤は、モノマー1に由来する構成単位(1)、モノマー2に由来する構成単位(2)、及びモノマー3に由来する構成単位(3)を含むポリマーである。モノマー1は、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、及びこれらの第4級アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種である。2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニルイミダゾールは、いずれも塩基性モノマーであり、これらのモノマーに由来する構成単位(1)はカーボン材料に吸着して分散性に寄与する。
【0019】
一般的な塩基性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等もある。しかし、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニルイミダゾールの少なくともいずれかを用いることで、カーボン材料分散液の分散安定性をより向上させることが可能であるとともに、カーボン材料分散液の粘度を低下させることができる。2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニルイミダゾールは、いずれも、カーボン材料の6員環構造と類似した構造を有する芳香環を持ったモノマーである。このため、これらのモノマーに由来する構成単位(1)とすることで、ファンデルワールス力やπ-πスタッキングによるカーボン材料への吸着力を高めることができると考えられる。さらに、カーボン材料の表面は酸化され、カルボキシ基やフェノール性水酸基が存在している場合がある。カルボキシ基やフェノール性水酸基と、構成単位(1)中の塩基性基とがイオン結合することで、高分子分散剤がカーボン材料により吸着しやすくなり、分散性がさらに向上すると考えられる。なお、モノマー1は4-ビニルピリジンが特に好ましい。
【0020】
モノマー1として、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニルイミダゾールの第4級アンモニウム塩を用いることで、分散性をさらに高めることができる。
2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニルイミダゾールに由来する構成単位を第4級アンモニウム塩化することで、第4級アンモニウム塩に由来する構成単位(1)とすることができる。第4級アンモニウム塩化するための材料(第4級アンモニウム塩化剤)としては、例えば、ハロゲン化物及び硫酸エステル類等を用いることができる。ハロゲン化物としては、塩化メチル、塩化ベンジル等を挙げることができる。硫酸エステル類としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等を挙げることができる。第4級アンモニウム塩としては、ハロゲン化アリールメチルが好ましい。アリールメチル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、及びピレニルメチル基等を挙げることができる。なかでも、ナフチルメチル基が好ましい。
【0021】
モノマー2は、下記一般式(1)で表される、ポリアルキレングリコール鎖を有するマクロモノマーである。モノマー2に由来する構成単位(2)を導入することで、ポリアルキレングリコール鎖がグラフトした構造を有するポリマーとすることができる。ポリアルキレングリコール鎖は、液分散媒体である水に溶解する。そして、カーボン材料に吸着した構成単位(1)が、ポリアルキレングリコール鎖が溶解したことによって粒子間の立体障害となって反発し、カーボン材料を液分散媒体中に長期間にわたって良好な状態で安定的に分散させることができる。
【0022】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Xはエチレン基又はプロピレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、Rは、相互に独立に水素原子又はメチル基を示し、nは20~100の平均繰り返し単位数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、Rが水素原子である繰り返し単位数nは、全体の繰り返し単位数nの1/2以上である)
【0023】
一般式(1)で表されるモノマー2の分子量は、880~5,800程度である。一般式(1)中、Rが水素原子である繰り返し単位数nが、全体の繰り返し単位数nの1/2以上であることで、ポリアルキレングリコール鎖を水溶性にすることができる。なかでも、Rが水素原子である繰り返し単位数nが、全体の繰り返し単位数nの3/5以上であることが好ましい。
【0024】
モノマー3は、モノマー1及びモノマー2と共重合可能なモノマーである。モノマー3としては、(メタ)アクリル酸系モノマーを用いることが好ましい。モノマー3の具体例としては、(メタ)アクリル酸;メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2-エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イソステアリル、ベヘニル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、t-ブチルシクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル、イソボルニル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル等の置換基を有する単官能(メタ)アクリレート;ポリ(n=2以上)アルキレン(炭素数2~4)グリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)アルキレン(炭素数2~4)グリコールモノアルキル(炭素数1~22)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)ヒドロキシアルカン酸(炭素数5~18)モノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマーであるポリマー型の(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。また、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルカプロラクトン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマーをモノマー3として用いることもできる。
【0025】
モノマー3としてα-メチルスチレンを用いることが、分子量を容易に制御することができるために好ましい。具体的には、モノマー3がα-メチルスチレンを含み、ポリマー中、α-メチルスチレンに由来する構成単位の含有量が、0.5~5質量%であることが好ましく、1~3質量%であることがさらに好ましい。α-メチルスチレンに由来する構成単位の含有量が0.5部質量%未満であると、重合がやや不均一に進行することがあり、モノマー2が残存したり、ゲル化したりする場合がある。一方、α-メチルスチレンに由来する構成単位の含有量が5質量%超であると、重合性がやや乏しいα-メチルスチレンが残存したり、分子量が過剰に制御されて重合率がやや低下したりする場合がある。
【0026】
また、モノマー3として(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。酸成分である(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むことで、ポリマーの水溶解性が向上するとともに、ポリマー中に第4級アンモニウム塩基も存在する場合には、ポリマーが両イオン性を示すことになるため、カーボン材料にイオン的に吸着しやすくなり、分散性をさらに向上させることができる。また、ポリマーが両イオン性を示すことで、分子内・分子間でイオン結合して架橋構造が形成されやすくなり、カーボン材料からの脱離をさらに抑制することができる。
【0027】
ポリマー中、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量は、0.5~30質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量が0.5質量%未満であると、酸成分としての効果が不足する傾向にある。一方、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量が30質量%超であると、水溶性が高くなりすぎることがあり、形成される塗膜等の耐水性がやや低下する場合がある。
【0028】
高分子分散剤(ポリマー)中、構成単位(1)の含有量は5~40質量%、好ましくは10~20質量%であり、構成単位(2)の含有量は50~80質量%、好ましくは55~75質量%であり、構成単位(3)の含有量は0.5~40質量%、好ましくは1~31質量%である。なお、構成単位(1)、構成単位(2)、及び構成単位(3)の合計を100質量%とする。
【0029】
構成単位(1)の含有量が5質量%未満であると、カーボン材料に十分に吸着することができない。一方、構成単位(1)の含有量が40質量%超であると、着色したり、臭気が発生したりすることがあるとともに、カーボン材料にまとまって吸着しやすくなり、凝集剤として機能する場合がある。
【0030】
ポリマーに含まれる構成単位のうち、構成単位(2)の割合が最も多い。このため、ポリマー中で密に存在するポリアルキレングリコール鎖が立体障害となり、分散したカーボン材料どうしが近接するのを抑制し、安定的に分散させることができる。構成単位(2)の含有量が50質量%未満であると、立体障害が不十分になるとともに、水に溶解しにくくなる場合がある。一方、構成単位(2)の含有量が80質量%超であると、反応性がやや低いモノマー2が重合せずに残存しやすくなる。なお、構成単位(3)の含有量が40質量%超であると、他の構成単位の割合が相対的に減少するので、分散剤としての機能が低下する。
【0031】
高分子分散剤として用いるポリマーの数平均分子量は、5,000~20,000であり、好ましくは10,000~15,000である。ポリマーの数平均分子量が5,000未満であると、マクロモノマーであるモノマー2に由来する構成単位(2)の導入量が少なくなるので、分散安定性が不十分になる。一方、ポリマーの数平均分子量が20,000超であると、得られるカーボン材料分散液の粘度が過度に高くなるとともに、必要となる高分子分散剤の量が多くなりすぎる場合がある。本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の値である。
【0032】
(高分子分散剤(ポリマー)の製造方法)
高分子分散剤として用いるポリマーは、従来公知のラジカル重合法やリビングラジカル重合法により製造することができる。なかでも、リビングラジカル重合法によって製造することが、主鎖の分子量を揃えることができるとともに、モノマーの添加方法によってはABブロックコポリマーとすることができるために好ましい。
【0033】
リビングラジカル重合法としては、チオール等の連鎖移動剤を用いて分子量を調整する重合法、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキサイド法(NMP法)、有機テルル法(TERP法)、ヨウ素移動重合法(ITP法)、可逆的移動触媒重合法(RTCP法)、可逆的触媒媒介重合法(RCMP法)等がある。
【0034】
重合条件等については特に限定されない。アゾ系ラジカル発生剤、過酸化物系ラジカル発生剤、光増感剤等を反応系に添加してもよい。重合形式は、無溶剤、溶液重合、乳化重合等であってもよい。なかでも、溶液重合が好ましく、カーボン材料分散液に配合しうる前述の水可溶性の有機溶媒中で溶液重合することがさらに好ましい。水可溶性の有機溶媒中で溶液重合することで、得られるポリマーの溶液をそのままカーボン材料分散液に配合することができる。
【0035】
溶液重合等によってモノマー1、モノマー2、及びモノマー3を重合することで、所望とするポリマーを得ることができる。また、モノマー1、モノマー2、及びモノマー3を重合した後、塩化ベンジル、ナフチルメチルクロライド、アセチニルメチルクロライド、ピレニルメチルクロライド、ナフチルメチルブロマイド等のハロゲン化アルキルを反応系に添加し、モノマー1に由来するアミノ基を第4級アンモニウム塩化してもよい。さらに、ビス(トリフルオロメチルスルホン)イミドリチウム塩やビス(ヘプタフルオロブチルスルホン)イミドリチウム塩等を添加して、第4級アンモニウム塩をイオン交換してスルホイミド塩を形成してもよい。
【0036】
(カーボン材料分散液)
カーボン材料100質量部に対する、高分子分散剤の含有量は、10~200質量部であることが好ましく、20~150質量部であることがさらに好ましく、30~100質量部であることが特に好ましい。また、カーボン材料分散液中のカーボン材料の含有量は、15質量%以下であることが好ましい。カーボン材料に対する高分子分散剤の含有量を上記の範囲とすることで、カーボン材料がより安定的に分散したカーボン材料分散液とすることができる。カーボン材料に対して高分子分散剤が過度に少ないと、分散性がやや不十分になることがある。一方、カーボン材料に対して高分子分散剤が過度に多くなると、カーボン材料分散液が増粘しやすくなるとともに、固形分中のカーボン材料の比率が相対的に低くなることがある。
【0037】
カーボン材料分散液には、添加剤や樹脂等をさらに含有させることができる。添加剤としては、水溶性染料、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、光重合開始剤、及びその他の顔料分散剤等を挙げることができる。樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリフェノール樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等を挙げることができる。
【0038】
(カーボン材料分散液の製造方法)
本実施形態のカーボン材料分散液は、前述のポリマーを高分子分散剤として使用し、カーボン材料を従来公知の方法にしたがって水を主成分とする液分散媒体中に分散させることで調製することができる。例えば、ディスパー撹拌、三本ロールでの混練、超音波分散、ビーズミル分散、乳化装置、高圧ホモジナイザー等を用いる分散等の分散方法を用いることができる。なかでも、分散効果が高いことから、ビーズミル分散、超音波分散、高圧ホモジナイザーを用いる分散が好ましい。
【0039】
(カーボン材料の分散状態の確認方法)
カーボン材料分散液中におけるカーボン材料の分散性は、以下に示すような、分光光度計を使用して吸光度を測定する方法によって確認することができる。まず、カーボン材料の濃度が既知の極低濃度の分散液を複数調製するとともに、特定波長におけるこれらの分散液の吸光度を測定し、カーボン材料の濃度に対して吸光度をプロットした検量線を作成しておく。そして、カーボン材料分散液を遠心分離処理して分散しきれないカーボン材料を沈降分離しして上澄み液を得る。吸光度を測定可能な濃度となるように得られた上澄み液を希釈して吸光度を測定し、検量線からカーボン材料の濃度を算出する。算出したカーボン材料の濃度と、カーボン材料の仕込み量とを比較することで、カーボン材料の分散性を評価することができる。
【0040】
また、遠心分離処理後のカーボン材料分散液を長期間静置した後、凝集物の有無を確認することによっても、カーボン材料の分散性を確認することができる。さらに、ガラスプレート等に滴下したカーボン材料分散液の状態を、電子顕微鏡等を使用し観察したり、カーボン材料分散液を塗布及び乾燥して形成した膜の電気導電率等の物性値を測定したりすることによっても、カーボン材料の分散性を確認することができる。
【0041】
<カーボン材料分散液の使用>
本実施形態のカーボン材料分散液は水系の分散液であることから、環境にやさしい材料であり、水性の塗料やインキ、及びプラスチック成形物等の材料として有用である。また、導電性材料や熱導電剤としての利用が期待できるほか、帯電防止材料への応用も期待される。水性の塗料やインキは、例えば、溶剤、樹脂、及び添加物等の成分をカーボン材料分散液に添加して調製することができる。また、市販の塗料やインキにカーボン材料分散液を添加してもよい。カーボン材料が分散したプラスチック成形物は、例えば、溶融状態のプラスチック材料にカーボン材料分散液を添加した後、水を除去することによって製造することができる。また、微粉末状態のプラスチック材料にカーボン材料分散液を添加した後、水を除去する、又はカーボン材料を析出させることによっても、カーボン材料が分散したプラスチック成形物を製造することができる。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0043】
<高分子分散剤(ポリマー)の合成>
(合成例1)
(a)マクロモノマーの合成
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び滴下ロートを取り付けた反応装置に、片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル共重合体(M41)(商品名「ゲナミンM41/2000」、クラリアント社製、実測アミン価26.4mgKOH/g)142.5部(0.067mol)を入れて撹拌した。メタクリル酸2-イソシアナトエチル(MOI)(商品名「カレンズMOI」、昭和電工社製)10.4部(0.067mol)を滴下ロートに入れ、水浴で冷却した反応装置内に30分間かけて滴下した。反応液の一部をサンプリングしてIR測定し、MOI由来のイソシアネート基の吸収の消失及び尿素結合の生成を確認した。また、生成物のアミン価は0.2mgKOH/gであり、アミノ基とイソシアネート基の反応がほぼ完結していることを確認した。なお、アミン価は、0.1mol/L 2-プロパノール性塩酸溶液を用いた電位差自動滴定装置により測定した。以上より、その片末端にメタクリロイル基が結合したポリプロピレングリコールポリエチレングリコール共重合体(MC-1)が生成したことを確認した。テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、MC-1のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は2,800であり、分子量分布(PDI=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1.09であった。MC-1は、一般式(1)で表されるモノマー2に該当するマクロモノマーであり、繰り返し単位数nは、全体の繰り返し単位数nの1/2以上である。
【0044】
(b)高分子分散剤の合成
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)95部、MC-1 70部、α-メチルスチレン(αMS)2.5部、スチレン(St)10.5部、及び4-ビニルピリジン(4VP)17部を入れ、窒素ガスをバブリングさせながら75℃まで加温した。70℃に到達した時点で、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(V-601)(商品名「V-601」、和光純薬社製)5部を添加し、75℃で4時間重合した。さらに、V-601 2.5部を追加し、75℃で4時間重合してポリマー(高分子分散剤A-1)を含む液体を得た。高分子分散剤A-1(ポリマー)のMnは9,600であり、PDIは1.83であり、ピークトップ分子量(PT)は22,700であり、原料として用いたMC-1に由来するピークはほとんど認められなかった。また、高分子分散剤A-1のアミン価(樹脂純分換算)は86.2mgKOH/gであった。水分計を使用して測定した、高分子分散剤A-1を含む液体の固形分は、50.4%であった。
【0045】
(合成例2~5)
表1に示す組成としたこと以外は、前述の合成例1と同様にして、高分子分散剤A-2~5を含む液体を得た。得られた高分子分散剤A-2~5の物性を表1に示す。なお、合成例2及び3で得たMC-2及びMC-3は、いずれも、一般式(1)で表されるモノマー2に該当するマクロモノマーであり、繰り返し単位数nは、全体の繰り返し単位数nの1/2以上である。
【0046】
表1中の略号の意味を以下に示す。
・M1000:片末端アミノポリプロピレングリコールポリエチレングリコールメチルエーテル(商品名「ジェファーミンM1000」、ハンツマン社製)
・M3085:片末端アミノポリプロピレングリコールポリエチレングリコールメチルエーテル(商品名「ジェファーミンM3085」、ハンツマン社製)
・2VP:2-ビニルピリジン
・1VI:1-ビニルイミダゾール
【0047】
【0048】
(合成例6)
(c)アミノ基の第4級アンモニウム塩化
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び滴下ロートを取り付けた反応装置に、高分子分散剤A-1 100部を入れた。BDG 30部を添加して希釈した後、室温で10分間撹拌して均一化し、溶液を得た。得られた溶液中には、4VPに由来するアミノ基が0.081mol存在している。BDG10.25g及び塩化ベンジル(BzCl)10.25g(0.081mol)を含む溶液を室温下、滴下ロートから30分間かけて滴下した。滴下後、80℃まで加温して5時間維持して、ポリマー(高分子分散剤A-6)を含む液体を得た。得られた高分子分散剤A-6を含む液体の固形分は、40.2%であった。また、高分子分散剤A-6のアミン価はほぼ0mgKOH/gであり、反応が定量的に進行して4VPに由来するアミノ基のすべてが第4級アンモニウム塩化したことがわかる。
【0049】
(合成例7~9)
表2に示す組成としたこと以外は、前述の合成例6と同様にして、高分子分散剤A-7~9を含む液体を得た。得られた高分子分散剤A-7~9の物性を表2に示す。
【0050】
表2中の略号の意味を以下に示す。
・VBQ:4-ビニルピリジンのベンジルクロリド塩
・VNQ:4-ビニルピリジンのナフチルメチルクロリド塩
・VAQ:4-ビニルピリジンのアントラセニルメチルクロリド塩
【0051】
【0052】
(合成例10)
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、BDG95.0部、MC-1 70部、αMS2.5部、St10.4部、メタクリル酸(MAA)7.7部、及び4VP9.4部を入れ、窒素ガスをバブリングさせながら75℃まで加温した。70℃に到達した時点で、V-601 5部を添加し、75℃で4時間重合した。さらに、V-601 2.5部を追加し、75℃で4時間重合して、ポリマー(高分子分散剤A-10)を含む液体を得た。高分子分散剤A-10(ポリマー)のMnは11,900であり、PDIは1.88であり、PTは25,900であり、原料として用いたMC-1に由来するピークはほとんど認められなかった。また、高分子分散剤A-10のアミン価(樹脂純分換算)は50.0mgKOH/gであり、酸価(樹脂純分換算)は50.0mgKOH/gであった。このポリマーは、その構造中にアミノ基とカルボキシ基を有する両イオン性の高分子分散剤である。高分子分散剤A-10を含む液体の固形分は、50.9%であった。
【0053】
(合成例11~13)
表3に示す組成としたこと以外は、前述の合成例10と同様にして、高分子分散剤A-11~13を含む液体を得た。得られた高分子分散剤A-11~13の物性を表3に示す。
【0054】
【0055】
(比較合成例1)
撹拌機、還流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、BDG95.0部、MC-1 70部、αMS2.5部、St7.5部、及びメタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノエチル)(DMAEMA)20部を入れた。それ以降は、前述の合成例1((b)高分子分散剤の合成)と同様にして、ポリマー(高分子分散剤H-1)を含む液体を得た。高分子分散剤H-1(ポリマー)のMnは10,400であり、PDIは1.81であり、PTは23,200であり、原料として用いたMC-1に由来するピークはほとんど認められなかった。また、高分子分散剤H-1のアミン価(樹脂純分換算)は73.2mgKOH/gであった。高分子分散剤H-1を含む液体の固形分は、50.5%であった。
【0056】
(比較合成例2及び3)
表4に示す組成としたこと以外は、前述の比較合成例1と同様にして、高分子分散剤H-2及び3を含む液体を得た。得られた高分子分散剤H-2及び3の物性を表4に示す。
【0057】
【0058】
<カーボンナノチューブ分散液の調製>
(実施例1)
樹脂製の容器に、カーボンナノチューブ(CNT)(平均径40nm、平均長8.0μm)3部、水91.05部、高分子分散剤A-1を含む液体(固形分50.4%)5.59部、及びジルコニアビーズ(直径0.8mmφ)180部を入れた。CNTは湿潤したが容器の底に沈んでおり、上部は透明層であった。スキャンデックスを使用して60分間分散処理したところ、液は均一に黒くなり、CNTの凝集状態が解れた状態となった。次いで、遠心分離処理して十分に分散しなかったCNTを沈降分離し、上澄み液をCNT分散液-1として取り出した。
【0059】
(実施例2~13、比較例1~3)
表5に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、CNT分散液-2~16を調製した。
【0060】
【0061】
<CNT分散液の評価>
調製したCNT分散液の遠心分離後のCNT濃度を測定した。CNT濃度の測定には、分光光度計を使用した。具体的には、CNT濃度既知のサンプルの吸光度を測定して検量線を作成した。そして、吸光度を測定可能な濃度に希釈した試料の吸光度を測定し、検量線から試料のCNT濃度を算出した。また、E型粘度計を使用し、調製したCNT分散液の25℃における粘度を測定した。さらに、遠心分離後のCNT分散液を7日間静置した後の状態を観察し、凝集物の有無を確認した。また、設計したCNT濃度に対する、遠心分離後のCNT濃度の割合(%)を「分散安定性(%)」として算出した。分散安定性が100%に近いほど、CNTの分散性が良好であることを意味する。CNT分散性の評価結果を表6に示す。
【0062】
【0063】
<ナノグラフェン分散液の調製>
(実施例14)
樹脂製の容器に、ナノグラフェン(NGR)(平均径5μm、平均厚6~8nm)5部、水85.08部、及び高分子分散剤A-1を含む液体(固形分50.4%)9.92部を入れた。容器内に撹拌子を入れ、マグネチックスターラーを使用して内容物を撹拌しながら、出力300Wの超音波分散機で超音波を60分間照射して、粘性液体であるNGR分散液-1を得た。
【0064】
(実施例15~19、比較例4~6)
表7に示す配合としたこと以外は、前述の実施例14と同様にして、NGR分散液-2~9を調製した。
【0065】
【0066】
<NGR分散液の評価>
E型粘度計を使用し、調製したNGR分散液の25℃における粘度を測定した。また、動的光散乱式の粒度分布測定装置を使用して、NGR分散液中のNGRのメジアン径(D50(μm))を測定した。さらに、動的光散乱式の粒度分布測定装置を使用してNGR分散液中のNGRの粒度分布を測定し、凝集物の有無を確認した。NGR分散性の評価結果を表8に示す。
【0067】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のカーボン材料分散液は、例えば、高導電性や高伝熱性等の特性を示す水性塗料、水性インキ、プラスチック成形物等の構成材料として有用であるとともに、電池材料、電子部品トレイ、ICチップ用カバー、電磁波シールド、自動車用部材、ロボット用部品等の様々な用途に好適である。

【手続補正書】
【提出日】2021-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン材料、水、及び高分子分散剤を含有し、
前記高分子分散剤が、
2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種の塩基性モノマーの第4級アンモニウム塩であるモノマー1に由来する構成単位(1)5~40質量%と、
下記一般式(1)で表されるモノマー2に由来する構成単位(2)50~80質量%と、
前記モノマー1及び前記モノマー2と共重合可能なモノマー3に由来する構成単位(3)0.5~40質量%と、を含む、
数平均分子量が5,000~20,000のポリマーである水性のカーボン材料分散液。
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、AはO又はNHを示し、Xはエチレン基又はプロピレン基を示し、YはO、NHCOO、又はNHCONHを示し、Rは、相互に独立に水素原子又はメチル基を示し、nは20~100の平均繰り返し単位数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、Rが水素原子である繰り返し単位数nは、全体の繰り返し単位数nの1/2以上である)
【請求項2】
前記カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のカーボン材料分散液。
【請求項3】
前記モノマー3が、α-メチルスチレンを含み、
前記ポリマー中、前記α-メチルスチレンに由来する構成単位の含有量が、0.5~5質量%である請求項1又は2に記載のカーボン材料分散液。
【請求項4】
前記モノマー3が、(メタ)アクリル酸を含み、
前記ポリマー中、前記(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量が、0.5~30質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載のカーボン材料分散液。
【請求項5】
前記カーボン材料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が、10~200質量部であり、
前記カーボン材料の含有量が、15質量%以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のカーボン材料分散液。
【請求項6】
水可溶性の有機溶媒の含有量が、20質量%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のカーボン材料分散液。
【請求項7】
前記塩基性モノマーの第4級アンモニウム塩が、前記塩基性モノマーのベンジルクロリド塩、ナフチルメチルクロリド塩、又はアントラセニルメチルクロリド塩である請求項1~6のいずれか一項に記載のカーボン材料分散液。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すカーボン材料分散液が提供される。
[1]カーボン材料、水、及び高分子分散剤を含有し、前記高分子分散剤が、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種の塩基性モノマーの第4級アンモニウム塩であるモノマー1に由来する構成単位(1)5~40質量%と、下記一般式(1)で表されるモノマー2に由来する構成単位(2)50~80質量%と、前記モノマー1及び前記モノマー2と共重合可能なモノマー3に由来する構成単位(3)0.5~40質量%と、を含む、数平均分子量が5,000~20,000のポリマーである水性のカーボン材料分散液。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
[2]前記カーボン材料が、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、及びグラフェンからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載のカーボン材料分散液。
[3]前記モノマー3が、α-メチルスチレンを含み、前記ポリマー中、前記α-メチルスチレンに由来する構成単位の含有量が、0.5~5質量%である前記[1]又は[2]に記載のカーボン材料分散液。
[4]前記モノマー3が、(メタ)アクリル酸を含み、前記ポリマー中、前記(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量が、0.5~30質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載のカーボン材料分散液。
[5]前記カーボン材料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が、10~200質量部であり、前記カーボン材料の含有量が、15質量%以下である前記[1]~[4]のいずれかに記載のカーボン材料分散液。
[6]水可溶性の有機溶媒の含有量が、20質量%以下である前記[1]~[5]のいずれかに記載のカーボン材料分散液。
[7]前記塩基性モノマーの第4級アンモニウム塩が、前記塩基性モノマーのベンジルクロリド塩、ナフチルメチルクロリド塩、又はアントラセニルメチルクロリド塩である前記[1]~[6]のいずれかに記載のカーボン材料分散液。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
<カーボンナノチューブ分散液の調製>
参考例1)
樹脂製の容器に、カーボンナノチューブ(CNT)(平均径40nm、平均長8.0μm)3部、水91.05部、高分子分散剤A-1を含む液体(固形分50.4%)5.59部、及びジルコニアビーズ(直径0.8mmφ)180部を入れた。CNTは湿潤したが容器の底に沈んでおり、上部は透明層であった。スキャンデックスを使用して60分間分散処理したところ、液は均一に黒くなり、CNTの凝集状態が解れた状態となった。次いで、遠心分離処理して十分に分散しなかったCNTを沈降分離し、上澄み液をCNT分散液-1として取り出した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
参考例2~5、10~13、実施例6~9、比較例1~3)
表5に示す配合としたこと以外は、前述の参考例1と同様にして、CNT分散液-2~16を調製した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
<ナノグラフェン分散液の調製>
参考例14)
樹脂製の容器に、ナノグラフェン(NGR)(平均径5μm、平均厚6~8nm)5部、水85.08部、及び高分子分散剤A-1を含む液体(固形分50.4%)9.92部を入れた。容器内に撹拌子を入れ、マグネチックスターラーを使用して内容物を撹拌しながら、出力300Wの超音波分散機で超音波を60分間照射して、粘性液体であるNGR分散液-1を得た。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
参考例15、18、19、実施例16、17、比較例4~6)
表7に示す配合としたこと以外は、前述の参考例14と同様にして、NGR分散液-2~9を調製した。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】