(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160222
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧板及び化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20221012BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20221012BHJP
D21H 17/67 20060101ALI20221012BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20221012BHJP
D06N 7/00 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B29/00
D21H17/67
D21H27/30 A
D06N7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064849
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F055AA17
4F055AA18
4F055BA12
4F055DA12
4F055EA02
4F055EA25
4F055FA01
4F055FA02
4F055FA08
4F055FA23
4F055HA20
4F100AK01C
4F100AK36C
4F100AP00D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100CA13B
4F100GB07
4F100GB81
4F100HB00B
4F100HB31B
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4F100JB05B
4F100JN01C
4L055AG19
4L055AH01
4L055AJ01
4L055EA08
4L055FA15
4L055GA22
(57)【要約】
【課題】 水性インクを用いても印刷シワが生じず高い意匠性を有する化粧シート、化粧板及び化粧シートの製造方法を提供する。
【解決手段】化粧シートは、坪量100g/m
2以上のチタン紙で構成された基材と、基材の一方の面上に設けられ、基材の表面の少なくとも一部に染み込むように形成されたインキ層と、インキ層の基材と反対側の面上に設けられた透明樹脂層と、を備えている。化粧シートのインキ層は、少なくとも4色のインキを用いて形成されていることが好ましい。このような化粧シートは、坪量100g/m
2以上のチタン紙で構成された基材の一方の面上に、水を成分比率の40質量%以上含む水性インキを用いて、無版印刷により所望の絵柄模様を印刷してインキ層を形成することにより形成される。無版印刷は、インクジェット印刷であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量100g/m2以上のチタン紙で構成された基材と、
前記基材の一方の面上に設けられ、前記基材の表面の少なくとも一部に染み込むように形成されたインキ層と、
前記インキ層の前記基材と反対側の面上に設けられた透明樹脂層と、
を備える化粧シート。
【請求項2】
前記インキ層は、少なくとも4色のインキを用いて形成されている
請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか1項に記載の化粧シートと、
前記基材の前記インキ層とは反対側の面上に設けられた板材と、
を備える化粧板。
【請求項4】
坪量100g/m2以上のチタン紙で構成された基材の一方の面上に、水を成分比率の40質量%以上含む水性インキを用いて、無版印刷により所望の絵柄模様を印刷してインキ層を形成する
化粧シートの製造方法。
【請求項5】
前記無版印刷は、インクジェット印刷である
請求項4に記載の化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シート、化粧板及び化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建装材として、インキ層を印刷する基材としてチタン紙が広く用いられている。また、建装材の絵柄模様の印刷のために、水性インクが広く用いられている。水性インキは、溶剤系インキと比較して毒性や臭性が少なく、不燃性が高くなり、環境への負担も少ない点で好適である。チタン紙は、このような水性インキとの適性が高く、水性インキを用いたインクジェット印刷により形成されるインキ層を有する化粧シートの基材として用いられることにより、化粧シートに高い意匠性を付与することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チタン紙を基材として用いた場合であっても、水性インクを用いた印刷時に印刷シワが発生して化粧シートの意匠性が低下する場合があった。
本開示は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、水性インクを用いても印刷シワが生じず高い意匠性を有する化粧シート、化粧板及び化粧シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧シートは、坪量100g/m2以上のチタン紙で構成された基材と、基材の一方の面上に設けられ、基材の表面の少なくとも一部に染み込むように形成されたインキ層と、インキ層の基材と反対側の面上に設けられた透明樹脂層と、を備えている。
また、本開示の一態様に係る化粧板は、上述する化粧シートと、基材のインキ層とは反対側の面上に設けられた板材と、を備えている。
さらに、本開示の一態様に係る化粧シートの製造方法は、坪量100g/m2以上のチタン紙で構成された基材の一方の面上に、水を成分比率の40質量%以上含む水性インキを用いて、無版印刷により所望の絵柄模様を印刷してインキ層を形成している。
【発明の効果】
【0006】
本開示の態様によれば、水性インクを用いても印刷シワが生じず高い意匠性を有する化粧シート、化粧板及び化粧シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る化粧シートの一構成例を示す断面図である。
【
図2】本開示の第二実施形態に係る化粧板の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は特許請求の範囲にかかる発明を模式的に示すものであり、各部の幅、厚さ等の寸法は現実のものとは異なり、これらの比率も現実のものとは異なる。
【0009】
本開示の第一実施形態に係る化粧シートについて説明する。本開示に係る化粧シートは、例えば、壁面、建具、家具等に施工される化粧シートである。なお、以下の説明では、化粧シートの貼り付け面に接触する側を「下」、化粧シートの貼り付け面に接触する側と反対側(表面)を「上」として説明する場合がある。
以下、図面を参照して本開示の各実施形態の各態様について説明する。
【0010】
1.第一実施形態
(1.1)化粧シートの基本構成
図1は、第一実施形態に係る化粧シート1の一構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、化粧シート1は、基材11と、インキ層12と、透明樹脂層13とを備えている。
【0011】
基材11は、化粧シート1の基材となる層であり、インキ層12の印刷性を向上させるための層である。インキ層12は、化粧シート1に所望の色彩や絵柄模様を付与する層である。透明樹脂層13は、インキ層12を保護するための層である。
以下、基材11、インキ層12及び透明樹脂層13の各層について詳細に説明する。
【0012】
(基材)
基材11は、水性インキを用いた印刷の基材として好ましく、加工適性が高い材料により形成されており、具体的には酸化チタンを抄き込んだ紙であるチタン紙が挙げられる。チタン紙は、濃色柄を印刷する際に、加工適性が高いため好ましい。チタン紙原紙は、セルロースパルプにチタンホワイトを抄き込んで形成されている。チタン紙原紙は、例えば、カレンダー処理された印刷用原紙に、酸化チタン(例えば二酸化チタン)を含む紙料を長網抄紙機で抄造して得られる。
【0013】
水性インキを用いた印刷の際の印刷シワ抑制の観点から、基材11は、坪量100g/m2以上であることが好ましく、坪量100g/m2以上120g/m2以下であることがより好ましい。基材11の坪量が100g/m2以上である場合、インキ層12のインキへの耐性が高く変形しにくいため、印刷時に印刷シワが生じにくくなるとともに、基材11のインキ発色性を向上させることができる。
【0014】
なお、基材11は、インキの発色性を向上させ、濃度階調を高めるために、インキ受理層が設けられている場合がある。インキ受理層は、化粧シート1に吹き付けられた水性インキをインキ受理層にとどめ、基材11の原子の繊維に染み込むことを抑制することで、インキの発色性や濃度階調を向上させる。しかしながら、このようなインキ受理層を有する化粧シートは、加工適性が損なわれてしまう。本実施形態に係る化粧シート1では、このようなインキ受理層が設けられていないため、印刷シワの抑制と加工適性とを両立させることができ、かつインキ受理層が設けられていなくてもインキ発色性を高く維持することができる。
【0015】
(インキ層)
インキ層12は、化粧シート1に意匠性を付与するための層である。インキ層12は、基材11の一方の面上(上面側)に設けられており、水性インキを用いて形成されることにより、基材11の表面の少なくとも一部に染み込むように形成されている。
【0016】
インキ層12は例えばインクジェット印刷等の無版印刷により形成されることが好ましい。このとき、インキ層12は、基材11表面に印刷された複数のドットにより形成されている。ドット状に形成されたインキは、互いに離れて印刷されていてもよく、重複して印刷されていても良い。これにより、インキ層12の絵柄模様のサイズの制限がなくなり、高品質で微細な絵柄模様のインキ層12を実現することが可能となる。インクジェット印刷は、例えばグラビア印刷やオフセット印刷のように印刷用の版にインキ層12の絵柄模様に対応する凹凸を付与する必要がなくなる。このため、金属加工技術の上限以上に微細な絵柄模様を形成することが可能となる。
【0017】
インキ層12は、基材11に印刷可能なインキであればよく、例えば紫外線硬化型インキ又は水性インキを用いることができるが、特に紫外線硬化型インキにより形成されていることが好ましい。紫外線硬化型インキは、水性インキを用いた場合と比較して、乾燥機のような大規模な設備が不要となるとともに、塗布直後の紫外線照射により硬化可能であるため、製造工程の簡易化、製造時間の短縮等が可能となる。また、紫外線硬化型インキは、インクジェットノズルの目詰まりが生じ難く、好適に使用できる。
【0018】
このような水性インキとしては、公知のインクジェット用水性インキが用いられる。水性インキは、例えば水性溶媒及び水性溶媒中に分散された着色剤を含み、その他の添加剤が添加されていても良い。
着色剤は、例えば顔料及び染料等を用いることができる。顔料は、耐水性及び耐光性やそれによる変質(変色等)のしにくさ等の観点から好適に用いられる。また、染料は、粒径が非常に小さく低粘度であるため、インキ中における染料成分の割合を高くしても粘度が上がりにくく、また溶剤に溶解しやすいことから高粘度化の要因の一つである分散剤を添加する必要がないため、高い着色性と印刷の平坦性を両立できる点で好適である。
【0019】
水系溶媒は、例えば水や水溶性有機溶剤を含んでいる。水溶性有機溶剤としては、例えばアルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ポリアルキレングリコール系溶剤等をもちいることができる。本実施形態に係る化粧シートのインキ層12を形成するために用いる水性インキは、水を成分比率の40質量%以上含んでいることが好ましく、40質量%以上50質量%以下含んでいることがより好ましい。水の成分比率を40質量%以上とすることにより、水性インキ中の顔料の含有量が多くなりすぎないため、インキ層12を構成する顔料の密度が向上して透明樹脂層13を構成する透明樹脂を基材11に十分に含浸させ、透明樹脂層13の白化現象(詳細は後述する)を抑制することができる。また、水の成分比率を40質量%以上とすることにより、水性インキ中の水溶性有機溶剤の含有量を比較的低く抑えられるため、水性インキが揮発しにくくなり、インクジェット印刷時にインキ吐出部のつまりが生じにくくなる。さらに、水の成分比率を50質量%以下とすることにより、インクジェット印刷時に濃色柄の印刷が可能となり、意匠性が向上する。
【0020】
その他の添加剤としては、例えば、分散剤、バインダ樹脂及び界面活性剤等が挙げられる。
分散剤は、顔料を水系溶媒に分散させるために用いられる。分散剤としては、例えばを用いることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を用いることが好ましい。
界面活性剤は、水性インキの乾燥性を向上させるために用いられる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
バインダ樹脂は、インキ層12の基材11への定着性の向上や発色性の向上のために用いられる。バインダ樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂と、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂、並びにアクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の共重合体等を用いることが好ましい。
【0021】
また、インキ層12の厚みは、10μm以上2mm以下程度が好ましい。インキ層12の厚みをこの範囲内とすることにより、インキ層12よりも下の層を隠蔽できるためである。
インキ層12は、少なくとも4色のインキを用いて形成されていることが好ましい。インキ層12が4色以上のインキを用いて形成されている場合、化粧シート1に非常に高品質で高い意匠性が付与される。
以上のような水性インキを用いた場合、例えば乾燥機等により所定時間乾燥させることでインキ層12が形成される。
【0022】
<透明樹脂層>
透明樹脂層13は、インキ層12の基材11と反対側の面上に設けられ、化粧シート1のトップコート層として機能する。透明樹脂層13は、化粧シート1の使用環境や用途等に応じてトップコート層として求められる機能に応じて適宜選択された樹脂材料により形成されていれば良い。透明樹脂層13、インキ層12を保護しつつ、インキ層12の絵柄模様を化粧シート1の上面(透明樹脂層13の上面)から視認可能とするために、透明材料で形成されていることが好ましい。また、透明樹脂層13は、化粧シート1の上面を保護するために、強度の高い樹脂材料で形成されていることが好ましい。すなわち、透明樹脂層13は、透明樹脂材料で形成されていることが好ましい。
【0023】
透明樹脂層13としては、従来から化粧材の表面層材料として用いられる材料であればよく、例えばポリ塩化ビニル(PVC)樹脂やメラミン樹脂等を含有する樹脂材料により形成されることが好ましい。
また、透明樹脂層13により高い耐熱性や耐傷性、耐汚染性が求められる場合、透明樹脂層13は、メラミン樹脂で形成されることが好ましい。メラミン樹脂は、化粧シート1に高い耐熱性や耐傷性、耐汚染性を付与するものの、白化により化粧シート1の意匠性を低下させる場合がある。しかしながら、本実施形態の基材11及びインキ層12を有する化粧シートでは、印刷シワの抑制に加えて、透明樹脂層13の白化現象を抑制することができる。メラミン樹脂を用いた透明樹脂層13の白化現象は、メラミン樹脂の基材11への含浸不良に起因して生じる場合が多い。本実施形態の化粧シート1では、基材11にインキ受理層が設けられていないことから、メラミン樹脂が基材11に含浸しやすくなる。このため、メラミン樹脂により形成された透明樹脂層13の白化現象が生じにくくなる。
【0024】
透明樹脂層13は、厚さ1μm以上30μm以下で形成されていることが好ましい。透明樹脂層13の厚さがこの範囲内である場合、表面保護層としての機能を十分に得ることができるとともに、透明樹脂層13を不要に厚く形成することがないため製造コストの低下につながる。
【0025】
透明樹脂層13は、紫外線吸収剤や光安定剤を含有していてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が用いられることが好ましい。これらの紫外線吸収剤の少なくとも一種を用いる場合、透明樹脂層13を構成する樹脂材料との相溶性が充分に確保されることから、透明樹脂層13の耐候性が向上する。また、これら紫外線吸収剤を組み合わせて用いることにより、吸収する紫外光の波長範囲を調整することができる。
また、透明樹脂層13に添加される光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が用いられることが好ましい。
【0026】
(1.2)化粧シートの製造方法
以下、化粧シート1の製造方法について説明する。
まず、基材11として、坪量100g/m2以上のチタン紙を準備する。
続いて、基材11の一方の面上に、インキ層12を形成する。インキ層12は、基材11の一方の面上に水性インキを用いて所望の絵柄をインクジェット印刷等の無版印刷により印刷する。このとき、水性インキは、水を成分比率の40質量%以上含むことが好ましい。
最後に、インキ層12の表面に透明樹脂材料を塗布・硬化させることにより透明樹脂層13を形成する。
以上により、透明樹脂層を用いても印刷シワが生じず高い意匠性を有する化粧シート1を得ることができる。
【0027】
(1.3)第一実施形態の効果
第一実施形態に係る化粧シートは、以下の効果を有する。
(1)化粧シートは、坪量100g/m2以上のチタン紙で構成された基材と、基材の一方の面上に設けられ、有機溶剤に起因する残留物を含まないインキ層と、を備えている。
これにより、化粧シートは、水性インクを用いてインキ層を形成しても印刷シワが生じず、高い意匠性を有する。
(2)化粧シートのインキ層は、少なくとも4色のインキを用いて形成されていることが好ましい。
これにより、化粧シートの意匠性が向上する。
【0028】
(3)化粧シートは、坪量100g/m2以上のチタン紙で構成された基材の一方の面上に、水を成分比率の40質量%以上含む水性インキを用いて、無版印刷により所望の絵柄模様を印刷してインキ層を形成することが製造されることが好ましい。
これにより、製造された化粧シートは、水性インキ中の顔料の含有量が多くなりすぎないため透明樹脂層13の白化現象を抑制して高い意匠性を発現するとともに、水性インキを揮発しにくくしてインクジェット印刷時におけるインキ吐出部のつまりを生じにくくする事ができる。
【0029】
(4)化粧シートは、無版印刷としてインクジェット印刷によりインキ層が形成されることが好ましい。
これにより、製造された化粧シートは、高品質で微細な絵柄模様のインキ層12を実現することが可能となる。
(5)化粧シートは、インキ層の上面に透明樹脂層を備えている。
これにより、化粧シートは、高い意匠性を有し、かつ耐熱性や耐傷性、耐汚染性を有する。
【0030】
2.第二実施形態
以下、
図2を参照して、第二実施形態に係る化粧板10について説明する。
図2は、化粧板10の積層構造を説明するための断面図である。
【0031】
(2.1)化粧板の基本構成
化粧板10は、第一実施形態に係る化粧シート1と、化粧シート1の基材11のインキ層12とは反対側の面上に設けられた板材20と、を備えている。また、化粧板10は、化粧シート1と板材20とを接着する接着層30を有していてもよい。
以下、化粧板10を構成する板材20について説明する。なお、化粧シート1は、第一実施形態に係る化粧シート1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0032】
<板材>
板材20は、化粧板10の適用場面に応じて適した材料を用いればよい。板材20としては、例えば木質系板材、金属板、火山性ガラス質複層板等、所望の板材を用いることができる。
木質系板材としては、例えば、MDF(Medium Density Fiberboard)、合板、パーチクルボード等を用いることができる。
金属板としては、アルミ基板等を用いることができる。
火山性ガラス質複層板としては、例えば、火山性ガラス質堆積物粉体、鉱物繊維等から製造された板材であることが好ましいが、優れた不燃性を有しているならば特に限定されない。
【0033】
なお、板材20の表面には、シーラー層(
図2中不図示)が設けられていても良い。
板材20の化粧シート1側の表面に設けられるシーラー層は、シーラー剤を含み、板材20と化粧シート1との接着性をより高めるために設けられている。
板材20の化粧シート1と反対側の表面に設けられるシーラー層は、シーラー剤を含み、化粧板10と貼付け面との接着性をより高めるために設けられている。
板材20の化粧シート1と反対側の表面に設けられるシーラー層は、板材20の化粧シート1側の表面に設けられるシーラー層よりも厚く、すなわちシーラー剤の塗布量が多く形成されていることが好ましい。
【0034】
シーラー層に含有されるシーラー剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、クロロプレンゴム系シーラー剤、ウレタン系シーラー剤、イソシアネート系シーラー剤、エポキシ系シーラー剤があげられる。シーラー層とシーラー層には、同種のシーラー剤を用いてもよいし、異種のシーラー剤を用いてもよい。
シーラー層は、例えばスポンジロールを用いたロールコーターによりシーラー剤が板材20に塗布されることにより形成される。
【0035】
<接着層>
接着層30は、板材20の材料に応じて選択された接着剤により形成されていれば良い。また、板材20の表面にシーラー層が設けられている場合には、シーラー層に応じて選択された接着剤により形成されていれば良い。
接着層30を構成する接着剤は、特に限定されないが、例えばアクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、ウレタン系接着剤、イソシアネート系接着剤、メラミン樹脂系接着剤が挙げられる。
【0036】
(2.2)化粧板の製造方法
本実施形態の化粧板10は、以下の方法により形成される。
まず、板材20の表面に、ロールコーターによりシーラー剤を塗布し、乾燥することによりシーラー層を形成する。
続いて、シーラー層を形成した板材20の表面に、接着剤を塗布した後、化粧シート1の基材11側の面を積層する。最後に、接着剤を乾燥させて接着層30を形成し、化粧板10を得る。
【0037】
(2.3)本実施形態の効果
第二実施形態に係る化粧板は、第一実施形態における効果に加えて以下の効果を有する。
(6)化粧板は、化粧シートと、化粧シートの基材のインキ層とは反対側の面上に設けられた板材とを備えている。
これにより、化粧板は、高い意匠性を有する。
【実施例0038】
以下、本開示に係る化粧シートについて、実施例を挙げて説明する
実施例では、上述の実施形態のいずれかで説明した構成の化粧シートを作製し、後述する評価を行った。
【0039】
<実施例1>
基材として、坪量100g/m2のチタン紙を準備した。
続いて、基材の一方の表面に、水を成分比率の40質量%含む4色(4種類)の水性インキを用いてインクジェット印刷により濃い木目柄を印刷してインキ層とした。最後に、インキ層を形成した基材に、メラミン樹脂を含浸させて、メラミン樹脂を硬化させた。
以上により、実施例1の化粧シートを形成した。
【0040】
<実施例2>
基材を坪量120g/m2のチタン紙とした。これ以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを形成した。
【0041】
<実施例3>
インキ層を形成するインキの種類を、水を30質量%含む水性インキとした。これ以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを形成した。
【0042】
<実施例4>
インキ層を形成するインキの種類を、水を50質量%含む水性インキとした。これ以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを形成した。
【0043】
<実施例5>
インキ層を形成するインキの種類を、水を60質量%含む水性インキとした。これ以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを形成した。
【0044】
<比較例1>
基材を坪量80g/m2のチタン紙とした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例1の化粧シートを形成した。
【0045】
<比較例2>
基材を坪量70g/m2のチタン紙とした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例2の化粧シートを形成した。
【0046】
<比較例3>
基材を坪量95g/m2のインクジェット用紙とした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例3の化粧シートを形成した。
【0047】
<比較例4>
基材を坪量65g/m2のコピー用紙とした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例4の化粧シートを形成した。
【0048】
<比較例5>
インキ層を形成するインキの種類を紫外線(UV)硬化型インキとした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例5の化粧シートを形成した。
【0049】
<比較例6>
基材を坪量80g/m2のチタン紙とするとともに、インキ層を形成するインキの種類を紫外線硬化型インキとした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例6の化粧シートを形成した。
【0050】
<比較例7>
基材を坪量70g/m2のチタン紙とするとともに、インキ層を形成するインキの種類を紫外線硬化型インキとした。これ以外は実施例1と同様にして、比較例7の化粧シートを形成した。
【0051】
[評価]
上述した各実施例及び各比較例の化粧シートについて、以下の評価を行った。
【0052】
(インキの含浸性)
メラミン樹脂含浸加工後の各化粧シートの表面における白化現象の有無を目視にて確認し、白化現象が生じていない場合を「○」、白化現象の傾向が見られる場合を「△」、白化現象が全体に生じている場合を「×」と評価した。
【0053】
(印刷シワ)
基材上にインキ層の印刷を行った後、印刷シワを目視にて確認し、印刷シワが生じていない場合を「○」、印刷シワが生じている場合を「×」と評価した。
【0054】
(意匠性)
各化粧シートの上面から木目柄を目視で確認し、木目柄がはっきりとよれることなく印刷されている場合を「○」、木目柄の一部によれ、欠けがあったり、化粧シートが白化して木目柄が見えにくい場合を「×」と評価した。
【0055】
各実施例及び各比較例の評価結果を、以下の表1に示す。
【0056】
【0057】
表1に示すように、坪量が100g/m2以上のチタン紙を基材とした各実施例の化粧シートは、坪量が80g/m2以下のチタン紙やコピー用紙を基材とした比較例1,2,4の化粧シートと比較して印刷シワが生じず、意匠性が向上することが分かった。
【0058】
また、表1に示すように、坪量が100g/m2以上のチタン紙を基材とした各実施例の化粧シートは、インクジェット用紙やコピー用紙を基材とした比較例3,4の化粧シートや、インキ層の印刷に紫外線硬化型インキを用いた比較例5~7の化粧シートと比較して、メラミン樹脂表層の白化現象が生じておらず、意匠性が向上することが分かった。
【0059】
以上説明したように、インキ層のインキ量に耐えうる坪量を有し、メラミン樹脂の含浸性を低下させない基材やインキを選択することで、印刷シワやメラミン樹脂の白化現象を抑制できることが分かった。
【0060】
本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。