(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160230
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、及び通信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/10 20090101AFI20221012BHJP
H04W 72/08 20090101ALI20221012BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20221012BHJP
【FI】
H04W72/10
H04W72/08
H04W88/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064861
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏暢
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA41
5K067DD45
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ17
(57)【要約】
【課題】移動体において、状況に応じたフレキシブルなストリーミングデータ通信を実現する。
【解決手段】移動体に搭載された通信装置は、複数の通信回線を介して外部装置と通信可能である。通信装置は、コントローラを備える。コントローラは、外部装置に送信される複数のストリーミングデータを取得し、複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係を動的に制御する。複数の通信回線は、第1通信回線と、第1通信回線よりも優先順位の低い第2通信回線とを含む。コントローラは、複数のストリーミングデータを第2通信回線よりも第1通信回線に優先的に割り当てる一方で、第1通信回線の通信速度である第1通信速度に基づいて上記割り当て関係を動的に制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、複数の通信回線を介して外部装置と通信可能な通信装置であって、
前記外部装置に送信される複数のストリーミングデータを取得し、前記複数のストリーミングデータと前記複数の通信回線との間の割り当て関係を動的に制御するコントローラを備え、
前記複数の通信回線は、
第1通信回線と、
前記第1通信回線よりも優先順位の低い第2通信回線と
を含み、
前記コントローラは、前記複数のストリーミングデータを前記第2通信回線よりも前記第1通信回線に優先的に割り当てる一方で、前記第1通信回線の通信速度である第1通信速度に基づいて前記割り当て関係を動的に制御する
通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記複数のストリーミングデータは、
第1ストリーミングデータと、
前記第1ストリーミングデータよりも優先順位の低い第2ストリーミングデータと
を含み、
前記コントローラは、前記第1ストリーミングデータを前記第2ストリーミングデータよりも優先的に前記第1通信回線に割り当てる、あるいは、前記第1ストリーミングデータの品質を前記第2ストリーミングデータの品質よりも優先的に確保する
通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信装置であって、
前記コントローラは、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が第1閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータと前記第2ストリーミングデータの両方を前記第1通信回線に割り当て、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第1閾値未満且つ第2閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータを前記第1通信回線に割り当て、前記第2ストリーミングデータを前記第2通信回線に割り当て、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第2閾値未満である場合、前記第1ストリーミングデータと前記第2ストリーミングデータの両方を前記第2通信回線に割り当てる
通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の通信装置であって、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第2閾値未満である場合、前記コントローラは、前記第2通信回線の通信速度である第2通信速度に基づいて、前記第1ストリーミングデータ及び前記第2ストリーミングデータの前記品質を制御する
通信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の通信装置であって、
前記コントローラは、
前記第2通信回線の前記第2通信速度が第3閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータ及び前記第2ストリーミングデータに対して輻輳制御を行わず、
前記第2通信回線の前記第2通信速度が前記第3閾値未満且つ第4閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行うことなく前記第2ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行い、
前記第2通信回線の前記第2通信速度が前記第4閾値未満且つ第5閾値以上である場合、第1ストリーミングデータ及び前記第2ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行う
通信装置。
【請求項6】
請求項2に記載の通信装置であって、
前記コントローラは、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が第1閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータと前記第2ストリーミングデータの両方を前記第1通信回線に割り当て、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第1閾値未満且つ第2閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータと前記第2ストリーミングデータの両方を前記第1通信回線に割り当て、且つ、前記第1ストリーミングデータに対して輻輳制御を行うことなく前記第2ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行い、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第2閾値未満且つ第3閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータと前記第2ストリーミングデータの両方を前記第1通信回線に割り当て、且つ、第1ストリーミングデータ及び前記第2ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行う
通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の通信装置であって、
前記コントローラは、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第3閾値未満且つ第4閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータを前記第1通信回線に割り当て、前記第2ストリーミングデータを前記第2通信回線に割り当て、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第4閾値未満である場合、前記第1ストリーミングデータと前記第2ストリーミングデータの両方を前記第2通信回線に割り当てる
通信装置。
【請求項8】
請求項6に記載の通信装置であって、
前記コントローラは、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第3閾値未満且つ第4閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータを前記第2通信回線に割り当て、前記第2ストリーミングデータを前記第1通信回線に割り当て、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第4閾値未満である場合、前記第1ストリーミングデータと前記第2ストリーミングデータの両方を前記第2通信回線に割り当てる
通信装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の通信装置であって、
前記第1通信回線の前記第1通信速度が前記第4閾値未満である場合、前記コントローラは、前記第2通信回線の通信速度である第2通信速度に基づいて、前記第1ストリーミングデータ及び前記第2ストリーミングデータの品質を制御する
通信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の通信装置であって、
前記コントローラは、
前記第2通信回線の前記第2通信速度が第5閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータ及び前記第2ストリーミングデータに対して輻輳制御を行わず、
前記第2通信回線の前記第2通信速度が前記第5閾値未満且つ第6閾値以上である場合、前記第1ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行うことなく前記第2ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行い、
前記第2通信回線の前記第2通信速度が前記第6閾値未満且つ第7閾値以上である場合、第1ストリーミングデータ及び前記第2ストリーミングデータに対して前記輻輳制御を行う
通信装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の通信装置であって、
ポリシー情報は、前記複数のストリーミングデータの前記優先順位、前記複数の通信回線の前記優先順位、及び前記第1通信回線の前記第1通信速度に応じた前記割り当て関係の設定ポリシーを示し、
前記コントローラは、前記ポリシー情報に基づいて、前記割り当て関係を動的に制御する
通信装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の通信装置であって、
前記複数の通信回線の前記優先順位は、通信コストに基づいて予め設定され、
前記優先順位の高い前記第1通信回線の前記通信コストは、前記優先順位の低い前記第2通信回線の前記通信コストよりも低い
通信装置。
【請求項13】
移動体から外部装置への通信方法であって、
前記移動体は、複数の通信回線を介して前記外部装置と通信可能であり、
前記通信方法は、
前記外部装置に送信される複数のストリーミングデータを取得する処理と、
前記複数のストリーミングデータと前記複数の通信回線との間の割り当て関係を動的に制御する動的割当制御処理と
を含み、
前記複数の通信回線は、
第1通信回線と、
前記第1通信回線よりも優先順位の低い第2通信回線と
を含み、
前記動的割当制御処理は、前記複数のストリーミングデータを前記第2通信回線よりも前記第1通信回線に優先的に割り当てる一方で、前記第1通信回線の通信速度である第1通信速度に基づいて前記割り当て関係を動的に制御する
通信方法。
【請求項14】
移動体に搭載される通信装置に適用される通信プログラムであって、
前記移動体は、複数の通信回線を介して外部装置と通信可能であり、
前記通信プログラムは、コンピュータに実行されることにより、
前記外部装置に送信される複数のストリーミングデータを取得する処理と、
前記複数のストリーミングデータと前記複数の通信回線との間の割り当て関係を動的に制御する動的割当制御処理と
を前記コンピュータに実行させ、
前記複数の通信回線は、
通信速度が第1通信速度である第1通信回線と、
前記第1通信回線よりも優先順位の低い第2通信回線と
を含み、
前記動的割当制御処理は、前記複数のストリーミングデータを前記第2通信回線よりも前記第1通信回線に優先的に割り当てる一方で、前記第1通信回線の通信速度である第1通信速度に基づいて前記割り当て関係を動的に制御する
通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体に適用される通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車載通信装置を開示している。車載通信装置は、移動通信方式及びWiFi通信方式の両方に対応している。車両の異常を検知した場合、車載通信装置は、車両走行状況を示す数値データ及び画像データを指定サーバに送信する。このとき、車載通信装置は、数値データを移動通信方式で送信し、画像データをWiFi通信方式で送信する。
【0003】
特許文献2は、車両内に設けられた通信機器間で通信を行う方法を開示している。優先度の高い通信データについては有線通信が用いられ、優先度の低い通信データについては無線通信が用いられる。
【0004】
特許文献3は、複数の通信網に接続可能な通信端末装置における通信回線切替方法を開示している。アプリケーションの優先度に基づいて、複数の通信網のうちいずれか一つが選択される。そして、選択された一つの通信網を経由して送信先への通信回線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-120443号公報
【特許文献2】特開2017-158056号公報
【特許文献3】国際公開第2007/099700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両、ロボット等の移動体が外部装置と通信を行う際、様々なストリーミングデータの通信が行われることが想定される。単一の通信回線を介して複数のストリーミングデータを同時に送信する場合、その通信回線の通信速度が低下すると、複数のストリーミングデータの品質が一律に低下するおそれがある。そこで、複数の通信回線を介して複数のストリーミングデータを同時に送信することが考えられる。しかしながら、同時に使用する通信回線の数が増加すると、それだけ通信コストも増加する。状況に応じてフレキシブルにストリーミングデータ通信を行うことができる技術が望まれる。
【0007】
本開示の1つの目的は、移動体において状況に応じたフレキシブルなストリーミングデータ通信を実現することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点は、移動体に搭載され、複数の通信回線を介して外部装置と通信可能な通信装置に関連する。
通信装置は、コントローラを備える。コントローラは、外部装置に送信される複数のストリーミングデータを取得し、複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係を動的に制御する。
複数の通信回線は、第1通信回線と、第1通信回線よりも優先順位の低い第2通信回線とを含む。
コントローラは、複数のストリーミングデータを第2通信回線よりも第1通信回線に優先的に割り当てる一方で、第1通信回線の通信速度である第1通信速度に基づいて上記割り当て関係を動的に制御する。
【0009】
第2の観点は、移動体から外部装置への通信方法に関連する。
移動体は、複数の通信回線を介して外部装置と通信可能である。
通信方法は、
外部装置に送信される複数のストリーミングデータを取得する処理と、
複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係を動的に制御する動的割当制御処理と
を含む。
複数の通信回線は、第1通信回線と、第1通信回線よりも優先順位の低い第2通信回線とを含む。
動的割当制御処理は、複数のストリーミングデータを第2通信回線よりも第1通信回線に優先的に割り当てる一方で、第1通信回線の通信速度である第1通信速度に基づいて上記割り当て関係を動的に制御する。
【0010】
第3の観点は、移動体に搭載される通信装置に適用される通信プログラムに関連する。
移動体は、複数の通信回線を介して外部装置と通信可能である。
通信プログラムは、コンピュータに実行されることにより、
外部装置に送信される複数のストリーミングデータを取得する処理と、
複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係を動的に制御する動的割当制御処理と
をコンピュータに実行させる。
複数の通信回線は、第1通信回線と、第1通信回線よりも優先順位の低い第2通信回線とを含む。
動的割当制御処理は、複数のストリーミングデータを第2通信回線よりも第1通信回線に優先的に割り当てる一方で、第1通信回線の通信速度である第1通信速度に基づいて上記割り当て関係を動的に制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、移動体は複数の通信回線を使用可能である。複数の通信回線は、優先順位の高い第1通信回線と、優先順位の低い第2通信回線とを含む。基本的に、複数のストリーミングデータは、優先順位の高い第1通信回線に優先的に割り当てられる。第2通信回線が不要な状況では、通信回線数が抑えられるため、通信コストも抑えられる。但し、第1通信回線の第1通信速度に応じて、複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係は動的に制御される。これにより、状況(第1通信回線の第1通信速度)に応じたフレキシブルなストリーミングデータ通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態に係る通信システムの概要を示す概念図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る通信システムの適用例を説明するための概念図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る通信システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る通信システムの具体例を示すブロック図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る通信装置によるストリーミング通信処理を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施の形態に係る動的割当制御処理の第1の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図7】本開示の実施の形態に係る動的割当制御処理の第1の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】本開示の実施の形態に係る動的割当制御処理の第2の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図9】本開示の実施の形態に係る動的割当制御処理の第2の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】本開示の実施の形態に係る動的割当制御処理の第3の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図11】本開示の実施の形態に係る動的割当制御処理の第3の例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0014】
1.通信システムの概要
図1は、本実施の形態に係る通信システム1の概要を示す概念図である。通信システム1は、第1通信装置10、第2通信装置20、及び通信ネットワーク30を含んでいる。第1通信装置10と第2通信装置20は、通信ネットワーク30を介して互いに接続されている。第1通信装置10と第2通信装置20は、通信ネットワーク30を介して互いに通信可能である。
【0015】
本実施の形態では、第1通信装置10と第2通信装置20のうち少なくとも一方が移動体に搭載される。移動体としては、車両、ロボット、飛翔体、等が例示される。車両は、自動運転車両であってもよいし、ドライバが運転する車両であってもよい。ロボットとしては、物流ロボット、作業ロボット、等が例示される。飛翔体としては、飛行機、ドローン、等が例示される。
【0016】
以下の説明では、第1通信装置10の方が移動体100に搭載される。第2通信装置20は、移動体100の外部の外部装置200に搭載される。外部装置200の種類は特に限定されない。例えば、外部装置200は、移動体100を管理する管理サーバである。他の例として、外部装置200は、移動体100の動作を遠隔で支援する遠隔支援装置であってもよい。更に他の例として、外部装置200は、移動体100とは別の移動体であってもよい。典型的には、移動体100の第1通信装置10と外部装置200の第2通信装置20は、無線通信を行う。但し、本実施の形態は無線通信に限定されない。
【0017】
図2は、本実施の形態に係る通信システム1の適用例を説明するための概念図である。
図2に示される例では、通信システム1は、移動体100の動作を遠隔で支援する「遠隔支援」に利用される。より詳細には、移動体100にはカメラ150が搭載されている。カメラ150は、移動体100の周囲の状況を撮像し、画像情報を取得する。第1通信装置10は、画像情報を、外部装置200の一種である遠隔支援装置200Aに送信する。遠隔支援装置200Aの第2通信装置20は、移動体100から画像情報を受け取る。遠隔支援装置200Aは、受け取った画像情報をモニタ250に表示する。遠隔オペレータは、モニタ250に表示される画像情報をみて、移動体100の周囲の状況を把握し、移動体100の動作を遠隔で支援する。遠隔オペレータによる遠隔支援としては、認識支援、判断支援、遠隔運転、等が挙げられる。遠隔オペレータによる指示は、第2通信装置20から移動体100の第1通信装置10に送られる。移動体100は、遠隔オペレータによる指示に従って動作する。
【0018】
移動体100から外部装置200には様々なストリーミングデータが送信され得る。例えば、
図2で例示された遠隔支援の場合、カメラ150によって撮像される画像(動画)のストリーミングデータが送信される。それに加えて、移動体100に搭載されたマイクにより取得される音声のストリーミングデータが送信される場合も考えられる。また、カメラ150が前方と後方に設けられている場合、前方動画のストリーミングデータと後方動画のストリーミングデータが別々に送信される可能性がある。
【0019】
以下、移動体100から外部装置200に複数のストリーミングデータが同時に送信される場合を考える。その複数のストリーミングデータには優先順位が存在し得る。以下、便宜上、ストリーミングデータの優先順位を「ストリーミング優先順位」と呼ぶ。例えば、上述の遠隔支援の場合、遠隔支援精度の確保の観点からストリーミング優先順位が設定される。例えば、動画のストリーミングデータのストリーミング優先順位は、音声のストリーミングデータのストリーミング優先順位よりも高い。他の例として、前方動画のストリーミングデータのストリーミング優先順位は、後方動画のストリーミングデータのストリーミング優先順位よりも高い。
【0020】
単一の通信回線を介して複数のストリーミングデータを同時に送信する場合、その単一の通信回線の通信速度が低下すると、複数のストリーミングデータの品質が一律に低下するおそれがある。ストリーミング優先順位にかかわらずデータ品質が一律に低下することは、ストリーミングデータの利用の観点から好ましくない。例えば、動画と音声を利用して遠隔支援が行われる場合、ストリーミング優先順位の異なる動画と音声の品質が一律に低下することは、遠隔支援精度の観点から好ましくない。
【0021】
本実施の形態に係る移動体100の第1通信装置10は、複数の通信回線を介して外部装置200と通信可能なように構成される。同時に使用可能な通信回線数が増加するため、全体としての通信速度すなわちデータ品質を確保しやすくなる。第1通信装置10は、複数の通信回線のうち必要な数の通信回線を用いて、複数のストリーミングデータを外部装置200に送信する。
【0022】
しかしながら、同時に使用する通信回線の数が増加すると、それだけ通信コストも増加する。従って、状況に応じてフレキシブルにストリーミングデータ通信を行うことが望まれる。本実施の形態に係る第1通信装置10は、複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係を“動的”に制御することができるように構成される。
【0023】
以下、本実施の形態に係る通信システム1について更に詳しく説明する。
【0024】
2.通信システムの構成例
図3は、本実施の形態に係る通信システム1の構成例を示すブロック図である。
【0025】
第1通信装置10は、複数種類の通信方式に対応している。通信方式としては、移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)によって提供される通常のセルラー方式、仮想移動体通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)によって提供される安価なセルラー方式、無線LAN(Local Area Network)方式、等が例示される。複数種類の通信方式間では通信コストが異なる。上記の例の場合、無線LAN方式が最も安く、通常のセルラー方式が最も高い。
【0026】
図3に示されるように、第1通信装置10は、複数の通信インタフェース11及び通信コントローラ12を含んでいる。
【0027】
複数の通信インタフェース11は、通信ネットワーク30に接続され、複数種類の通信方式のそれぞれに基づいて第2通信装置20と通信を行う。例えば、第1通信インタフェース11-1は、第1通信方式に基づいて通信を行う。第2通信インタフェース11-2は、第1通信方式とは異なる第2通信方式に基づいて通信を行う。尚、複数の通信インタフェース11は、それぞれ異なる物理インタフェースにより実現されてもよいし、共通の物理インタフェースと異なる論理インタフェースの組み合わせにより実現されてもよい。
【0028】
複数種類の通信方式のそれぞれに基づいて複数の通信回線が確立される。つまり、複数の通信回線は、複数種類の通信方式のそれぞれに対応する。複数の通信回線は、複数の通信インタフェース11のそれぞれに対応していると言うこともできる。複数の通信インタフェース11は、複数の通信回線のそれぞれを介して第2通信装置20と通信を行う。例えば、第1通信インタフェース11-1は、第1通信方式に基づく第1通信回線C1を介して通信を行う。第2通信インタフェース11-2は、第2通信方式に基づく第2通信回線C2を介して通信を行う。
【0029】
通信コントローラ12は、移動体100上で動作する少なくとも1つのアプリが送受信するデータを制御するために設けられている。例えば、通信コントローラ12は、少なくとも1つのアプリから外部装置200(第2通信装置20)に送信される複数のストリーミングデータを取得する。通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータを複数の通信インタフェース11のうち使用するものに割り当てる。言い換えれば、通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータを複数の通信回線のうち使用するものに割り当てる。そして、通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータの各々を、割り当てられた通信インタフェース11(通信回線)を介して外部装置200に送信する。
【0030】
また、通信コントローラ12は、必要に応じて、ストリーミングデータの品質を低下させる「輻輳制御」を行う。例えば、ストリーミングデータが画像(動画)である場合、輻輳制御は、解像度あるいはフレームレートを低下させることによって画質を低下させる。他の例として、輻輳制御は、圧縮率を変えることによってストリーミングデータの品質を低下させてもよい。
【0031】
通信コントローラ12は、例えば、コンピュータとコンピュータプログラムの協働により実現される。移動体100は、プロセッサとメモリを含むコンピュータを備えている。通信コントローラ12の機能を提供するコンピュータプログラムを、以下、「通信プログラムPROG」と呼ぶ。通信プログラムPROGはメモリに格納される。プロセッサ(コンピュータ)が通信プログラムPROGを実行することにより、通信コントローラ12の機能が実現される。尚、通信プログラムPROGは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。通信プログラムPROGは、ネットワーク経由で提供されてもよい。
【0032】
第2通信装置20は、ネットワークインタフェース21及び通信コントローラ22を含んでいる。ネットワークインタフェース21は、通信ネットワーク30に接続され、第1通信装置10と通信を行う。
【0033】
通信コントローラ22は、外部装置200上で動作する少なくとも1つのアプリが送受信するデータを制御するために設けられている。例えば、通信コントローラ22は、第1通信装置10から送信される複数のストリーミングデータを、ネットワークインタフェース21を介して受け取る。そして、通信コントローラ22は、複数のストリーミングデータをそれぞれの宛先のアプリに出力する。
【0034】
通信コントローラ22は、例えば、コンピュータとコンピュータプログラムの協働により実現される。外部装置200は、プロセッサとメモリを含むコンピュータを備えている。コンピュータプログラムはメモリに格納される。プロセッサ(コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することにより、通信コントローラ22の機能が実現される。
【0035】
図4は、本実施の形態に係る通信システム1の具体例を示すブロック図である。
【0036】
第1通信装置10の複数の通信インタフェース11は、無線LANインタフェース11-A、安価セルラーインタフェース11-B、及びセルラーインタフェース11-Cを含んでいる。無線LANインタフェース11-Aは、無線LAN方式に基づく通信回線Caを介して通信を行う。無線LANインタフェース11-Aは、アクセスポイント31-Aを介して通信ネットワーク32(例:WAN)に接続される。安価セルラーインタフェース11-Bは、安価なセルラー方式に基づく通信回線Cbを介して通信を行う。安価セルラーインタフェース11-Bは、セルラーネットワーク31-Bを介して通信ネットワーク32に接続される。セルラーインタフェース11-Cは、通常のセルラー方式に基づく通信回線Ccを介して通信を行う。セルラーインタフェース11-Cは、セルラーネットワーク31-Cを介して通信ネットワーク32に接続される。
【0037】
図4に示される例の場合、無線LAN方式に基づく通信回線Ca、安価なセルラー方式に基づく通信回線Cb、通常のセルラー方式に基づく通信回線Ccの順番に、通信コストは低い。
【0038】
3.ストリーミング通信処理
図5は、本実施の形態に係る第1通信装置10によるストリーミング通信処理を示すフローチャートである。
【0039】
3-1.ステップS10(ストリーミングデータ取得処理)
ステップS10において、通信コントローラ12は、少なくとも1つのアプリから外部装置200(第2通信装置20)に送信される複数のストリーミングデータを取得する。
【0040】
3-2.ステップS20(ストリーミング優先順位取得処理)
ステップS20において、通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータのストリーミング優先順位を取得する。例えば、上述の遠隔支援の場合、遠隔支援精度の確保の観点からストリーミング優先順位が決まる。例えば、動画のストリーミングデータのストリーミング優先順位は、音声のストリーミングデータのストリーミング優先順位よりも高い。他の例として、前方動画のストリーミングデータのストリーミング優先順位は、後方動画のストリーミングデータのストリーミング優先順位よりも高い。尚、前方とは移動体100の進行方向であり、後方とは進行方向とは逆の方向である。よって、移動体100の進行方向が変わると、前方動画と後方動画も入れ替わる。
【0041】
例えば、アプリは、出力するストリーミングデータのヘッダに、そのストリーミングデータの種類を示す識別情報を格納する。この場合、通信コントローラ12は、アプリから受け取るストリーミングデータに含まれる識別情報に基づいて、各ストリーミングデータの種類を特定する。そして、通信コントローラ12は、各ストリーミングデータの種類に基づいて、複数のストリーミングデータのストリーミング優先順位を決定する。ストリーミングデータの種類とストリーミング優先順位との対応関係を示す情報は、通信コントローラ12がアクセス可能な記憶装置に予め格納される。
【0042】
他の例として、アプリは、出力するストリーミングデータのヘッダに、そのストリーミングデータの優先レベルを示す情報を格納してもよい。優先レベルは、多段階に設定される。優先レベルは数値化されていてもよい。通信コントローラ12は、アプリから受け取るストリーミングデータに含まれる優先レベル情報に基づいて、各ストリーミングデータの優先レベルを特定する。そして、通信コントローラ12は、各ストリーミングデータの優先レベルを比較することにより、複数のストリーミングデータのストリーミング優先順位を決定する。
【0043】
更に他の例として、1つのアプリが複数のストリーミングデータを出力する場合、そのアプリが、ストリーミング優先順位を直接指定してもよい。この場合、アプリは、ストリーミング優先順位を指定する情報を通信コントローラ12に提供する。通信コントローラ12は、指定優先順位情報に基づいて、複数のストリーミングデータのストリーミング優先順位を特定する。
【0044】
3-3.ステップS30(動的割当制御処理)
ステップS30において、通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータを複数の通信インタフェース11のうち使用するものに割り当てる。言い換えれば、通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータを複数の通信回線のうち使用するものに割り当てる。ここで、通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係を、状況に応じて動的に制御する。この処理を、以下、「動的割当制御処理」と呼ぶ。
【0045】
より詳細には、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位、回線優先順位、及び回線通信速度に基づいて、動的割当制御処理を行う。ストリーミング優先順位は、上記ステップS20において取得される。
【0046】
回線優先順位は、複数の通信回線の優先順位である。例えば、回線優先順位は、通信コストに基づいて予め設定される。この場合、通信コストが低いほど回線優先順位は高い。つまり、第1通信回線C1の通信コストが第2通信回線C2の通信コストよりも低い場合、第1通信回線C1の回線優先順位は、第2通信回線C2の回線優先順位よりも高く設定される(C1>C2)。
図4で示された例の場合、無線LAN方式に基づく通信回線Ca、安価なセルラー方式に基づく通信回線Cb、通常のセルラー方式に基づく通信回線Ccの順番に、通信コストは低い。よって、通信回線Ca、Cb、Ccの順番で回線優先順位は高い(Ca>Cb>Cc)。
【0047】
他の例として、回線優先順位は、信頼性の観点から設定されてもよい。この場合、信頼性が高いほど回線優先順位は高い。更に他の例として、回線優先順位は、通信速度の理論値の観点から設定されてもよい。この場合、通信速度の理論値が高いほど回線優先順位は高い。
【0048】
回線優先順位は、通信システム1の管理者あるいはユーザによって予め設定される。回線優先順位は、必要に応じて切り替え可能であってもよい。回線優先順位の設定情報は、通信コントローラ12がアクセス可能な記憶装置に予め格納される。通信コントローラ12は、その設定情報から回線優先順位を取得する。
【0049】
回線通信速度は、例えばスループットである。回線通信速度として、実測値が用いられてもよいし、推定値が用いられてもよい。回線通信速度は、地域、時間、曜日等をパラメータとする推定モデルによって推定されてもよい。推定モデルは、ディープラーニングを通して作成されてもよい。回線通信速度の計測方法あるいは推定方法としては、様々なものが提案されている。本実施の形態では、その手法は特に限定されない。
【0050】
ポリシー情報13(
図3、
図4参照)は、複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係の設定ポリシーを示す。より詳細には、ポリシー情報13は、ストリーミング優先順位、回線優先順位、及び回線通信速度に応じた割り当て関係の設定ポリシーを示す。このようなポリシー情報13は、通信コントローラ12がアクセス可能な記憶装置に予め格納される。通信コントローラ12は、ポリシー情報13に基づいて、動的割当制御処理を実行する。動的割当制御処理の具体例は後述される。
【0051】
3-4.ステップS40(ストリーミングデータ送信処理)
ステップS40において、通信コントローラ12は、複数のストリーミングデータの各々を、割り当てられた通信回線(通信インタフェース11)を介して外部装置200に送信する。
【0052】
4.動的割当制御処理の例
以下、本実施の形態に係る動的割当制御処理のいくつかの例を説明する。以下に説明される例では、
図3で示された構成、すなわち、使用可能な通信回線数が2である場合を考える。使用可能な通信回線数が3以上の場合も同様である。
【0053】
第1通信インタフェース11-1は、第1通信方式に基づく第1通信回線C1を介して通信を行う。第2通信インタフェース11-2は、第2通信方式に基づく第2通信回線C2を介して通信を行う。第1通信回線C1の回線優先順位は、第2通信回線C2の回線優先順位よりも高いとする(C1>C2)。例えば、第1通信回線C1の通信コストは、第2通信回線C2の通信コストよりも低い。
【0054】
また、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の2種類のストリーミングデータが同時に送信される。第1ストリーミングデータS1のストリーミング優先順位は、第2ストリーミングデータS2のストリーミング優先順位よりも高いとする(S1>S2)。
【0055】
第1通信速度R1は、第1通信回線C1の通信速度である。第2通信速度R2は、第2通信回線C2の通信速度である。ここでの、通信速度は、例えばスループットである。
【0056】
通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位、回線優先順位、及び第1通信回線C1の第1通信速度R1に基づいて、動的割当制御処理を行う。必要に応じて、第2通信回線C2の第2通信速度R2も考慮される。
【0057】
4-1.第1の例
図6は、動的割当制御処理の第1の例を説明するためのタイミングチャートである。第1の例では、データ品質をできるだけ確保することを目的とする動的割当制御処理を説明する。つまり、第1の例における通信要件は「データ品質優先」である。
【0058】
時刻t1よりも前の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第1閾値Th1以上である。この場合、データ品質を低下させることなく、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を第1通信回線C1を介して送信することができる。よって、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を、回線優先順位の高い第1通信回線C1に割り当てる。第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御は行われない。従って、良好なデータ品質が確保される。
【0059】
時刻t1よりも前の期間において、第2通信回線C2は使用されない。使用されない第2通信回線C2は、ホットスタンバイ状態に設定されてもよい。同時に使用される通信回線数が最小限に抑えられるため、通信コストも抑えられる。第1通信回線C1の通信コストが第2通信回線C2の通信コストよりも低い場合、通信コストは特に抑えられる。このように、良好なデータ品質を確保し、且つ、通信コストも抑えることが可能となる。
【0060】
時刻t1~t2の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第1閾値Th1未満、且つ、第2閾値Th2以上である。この場合、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1を、回線優先順位の高い第1通信回線C1に割り当てる。一方、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2を、回線優先順位の低い第2通信回線C2に割り当てる。使用される通信回線数が増加するため、全体としての通信速度が確保され、良好なデータ品質が確保される。
【0061】
時刻t2以降の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第2閾値Th2未満である。この場合、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を第2通信回線C2に割り当てる。第1通信回線C1は使用されない。使用されない第1通信回線C1は、ホットスタンバイ状態に設定されてもよい。同時に使用される通信回線数が最小限に抑えられるため、通信コストが抑えられる。
【0062】
時刻t2~t3の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第3閾値Th3以上である。この場合、データ品質を低下させることなく、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を第2通信回線C2を介して送信することができる。よって、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行わない。これにより、良好なデータ品質が確保される。
【0063】
時刻t3~t4の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第3閾値Th3未満、且つ、第4閾値Th4以上である。この場合、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行い、第2ストリーミングデータS2の品質を低下させる。一方、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1に対しては輻輳制御を行わない。よって、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1については、良好なデータ品質が確保される。
【0064】
時刻t4~t5の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第4閾値Th4未満、且つ、第5閾値Th5以上である。この場合、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行う。その結果、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2の品質は低下する。
【0065】
時刻t5以降の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第5閾値Th5未満である。この場合、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2の送信を停止する。ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1は少なくとも送信される。
【0066】
図7は、時間経過と共に回線通信速度が増加する場合を示している。動的割当制御処理の内容は、
図6の場合と同様である。
【0067】
以上に説明されたように、基本的に、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2は、回線優先順位の高い第1通信回線C1に優先的に割り当てられる。第2通信回線C2が不要な状況では、通信回線数が抑えられるため、通信コストも抑えられる。また、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1は、第2ストリーミングデータS2よりも優先的に第1通信回線C1に割り当てられる。但し、第1通信回線C1の第1通信速度R1に応じて、ストリーミングデータS1,S2と通信回線C1,C2との間の割り当て関係は動的に制御される。これにより、状況(第1通信回線C1の第1通信速度R1)に応じたフレキシブルなストリーミングデータ通信が可能となる。
【0068】
第1の例では、第1通信回線C1の第1通信速度R1が低下しても輻輳制御がなるべく行われないように、動的割当制御処理が行われる。具体的には、第1通信回線C1の第1通信速度R1が低下した場合、輻輳制御を安易に行うことなく、第2通信回線C2が適切に使用される。これにより、良好なデータ品質をなるべく確保することが可能となる。つまり、「データ品質優先」という通信要件が満たされる。
【0069】
また、輻輳制御が必要な場合は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2に対して優先的に輻輳制御が行われる。その結果、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1の品質が、第2ストリーミングデータS2よりも優先的に確保される。
【0070】
4-2.第2の例
図8は、動的割当制御処理の第2の例を説明するためのタイミングチャートである。第2の例では、通信コストをできるだけ抑えることを目的とする動的割当制御処理を説明する。つまり、第2の例における通信要件は「通信コスト優先」である。
【0071】
時刻t1よりも前の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第1閾値Th1以上である。この場合、上述の第1の例の場合と同様に、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を第1通信回線C1に割り当てる。これにより、良好なデータ品質を確保し、且つ、通信コストも抑えることが可能となる。
【0072】
時刻t1~t2の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第1閾値Th1未満、且つ、第2閾値Th2以上である。この場合、通信コントローラ12は、第2通信回線C2を用いることなく、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を第1通信回線C1に割り当てたままにする。但し、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行い、第2ストリーミングデータS2の品質を低下させる。一方、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1に対しては輻輳制御を行わない。よって、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1については、良好なデータ品質が確保される。
【0073】
時刻t2~t3の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第2閾値Th2未満、且つ、第3閾値Th3以上である。この場合、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行う。その結果、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2の品質は低下する。
【0074】
時刻t3~t4の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第3閾値Th3未満、且つ、第4閾値Th4以上である。この場合、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1を、回線優先順位の高い第1通信回線C1に割り当てる。但し、第1ストリーミングデータS1に対しては輻輳制御が行われる。一方、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2を、回線優先順位の低い第2通信回線C2に割り当てる。第2ストリーミングデータS2に対しては輻輳制御は行われない。
【0075】
時刻t4以降の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第4閾値Th4未満である。この場合、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を第2通信回線C2に割り当てる。第1通信回線C1は使用されない。
【0076】
時刻t4~t5の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第5閾値Th5以上である。この場合、データ品質を低下させることなく、第1ストリーミングデータS1と第2ストリーミングデータS2の両方を第2通信回線C2を介して送信することができる。よって、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行わない。これにより、良好なデータ品質が確保される。
【0077】
時刻t5~t6の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第5閾値Th5未満、且つ、第6閾値Th6以上である。この場合、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行い、第2ストリーミングデータS2の品質を低下させる。一方、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1に対しては輻輳制御を行わない。よって、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1については、良好なデータ品質が確保される。
【0078】
時刻t6~t7の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第6閾値Th6未満、且つ、第7閾値Th7以上である。この場合、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行う。その結果、第1ストリーミングデータS1及び第2ストリーミングデータS2の品質は低下する。
【0079】
時刻t7以降の期間において、第2通信回線C2の第2通信速度R2は、第7閾値Th7未満である。この場合、通信コントローラ12は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2の送信を停止する。ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1は少なくとも送信される。
【0080】
図9は、時間経過と共に回線通信速度が増加する場合を示している。動的割当制御処理の内容は、
図8の場合と同様である。
【0081】
以上に説明されたように、第2の例では、第1通信回線C1の第1通信速度R1が低下しても同時に使用される通信回線数がなるべく増加しないように、動的割当制御処理が行われる。具体的には、第1通信回線C1の第1通信速度R1がある程度低下するまでは、第2通信回線C2を使用する代わりに輻輳制御が適宜行われる。同時に使用される通信回線数が抑えられるため、通信コストが抑えられる。つまり、「通信コスト優先」という通信要件が満たされる。
【0082】
また、輻輳制御が必要な場合は、ストリーミング優先順位の低い第2ストリーミングデータS2に対して優先的に輻輳制御が行われる。その結果、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1の品質が、第2ストリーミングデータS2よりも優先的に確保される。
【0083】
4-3.第3の例
図10は、動的割当制御処理の第3の例を説明するためのタイミングチャートである。第3の例は、第2の例の変形例である。第2の例の場合と重複する説明は適宜省略する。
【0084】
時刻t3~t4の期間において、第1通信回線C1の第1通信速度R1は、第3閾値Th3未満、且つ、第4閾値Th4以上である。この場合、通信コントローラ12は、第2ストリーミングデータS2を第1通信回線C1に割り当て、且つ、第2ストリーミングデータS2に対して輻輳制御を行う。一方、通信コントローラ12は、第1ストリーミングデータS1を第2通信回線C2に割り当てる。第2ストリーミングデータS2に対しては輻輳制御は行われない。その結果、ストリーミング優先順位の高い第1ストリーミングデータS1の品質が、第2ストリーミングデータS2よりも優先的に確保される。
【0085】
図11は、時間経過と共に回線通信速度が増加する場合を示している。動的割当制御処理の内容は、
図10の場合と同様である。
【0086】
5.まとめ
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、移動体100は、複数の通信回線を使用可能である。複数の通信回線は、回線優先順位の高い第1通信回線C1と、回線優先順位の低い第2通信回線C2とを含む。基本的に、複数のストリーミングデータは、回線優先順位の高い第1通信回線C1に優先的に割り当てられる。第2通信回線C2が不要な状況では、通信回線数が抑えられるため、通信コストも抑えられる。但し、第1通信回線C1の第1通信速度R1に応じて、複数のストリーミングデータと複数の通信回線との間の割り当て関係は動的に制御される。これにより、状況(第1通信回線C1の第1通信速度R1)に応じたフレキシブルなストリーミングデータ通信が可能となる。
【0087】
上述の第1の例では、第1通信回線C1の第1通信速度R1が低下しても輻輳制御がなるべく行われないように、動的割当制御処理が行われる。具体的には、第1通信回線C1の第1通信速度R1が低下した場合、輻輳制御を安易に行うことなく、第2通信回線C2が適切に使用される。これにより、良好なデータ品質をなるべく確保することが可能となる。つまり、「データ品質優先」という通信要件が満たされる。
【0088】
上述の第2、第3の例では、第1通信回線C1の第1通信速度R1が低下しても同時に使用される通信回線数がなるべく増加しないように、動的割当制御処理が行われる。具体的には、第1通信回線C1の第1通信速度R1がある程度低下するまでは、第2通信回線C2を使用する代わりに輻輳制御が適宜行われる。同時に使用される通信回線数が抑えられるため、通信コストが抑えられる。つまり、「通信コスト優先」という通信要件が満たされる。
【0089】
このように、本実施の形態によれば、通信要件に応じたフレキシブルなストリーミングデータ通信も可能となる。
【符号の説明】
【0090】
1 通信システム
10 第1通信装置
11 通信インタフェース
11-1 第1通信インタフェース
11-2 第2通信インタフェース
12 通信コントローラ
13 ポリシー情報
20 第2通信装置
21 ネットワークインタフェース
22 通信コントローラ
30 通信ネットワーク
100 移動体
200 外部装置
C1 第1通信回線
C2 第2通信回線
R1 第1通信速度
R2 第2通信速度
S1 第1ストリーミングデータ
S2 第2ストリーミングデータ