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特開2022-160236パターン形成用積層フィルムおよび未感光のスクリーン印刷版ならびにこれらの製造方法
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  • 特開-パターン形成用積層フィルムおよび未感光のスクリーン印刷版ならびにこれらの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160236
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】パターン形成用積層フィルムおよび未感光のスクリーン印刷版ならびにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20221012BHJP
   G03F 7/12 20060101ALI20221012BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221012BHJP
   B41N 1/24 20060101ALI20221012BHJP
   B41C 1/14 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/12
G03F7/004 512
G03F7/11 502
B41N1/24
B41C1/14 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064868
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】390030373
【氏名又は名称】株式会社ムラカミ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】安達 大作
(72)【発明者】
【氏名】近江 護
(72)【発明者】
【氏名】岩田 修次
(72)【発明者】
【氏名】大上 豊司
(72)【発明者】
【氏名】宮下 直己
【テーマコード(参考)】
2H084
2H114
2H196
2H225
【Fターム(参考)】
2H084AA30
2H084AA32
2H084BB02
2H084BB04
2H084BB10
2H084CC10
2H114AA23
2H114AA30
2H114AB09
2H114BA02
2H114DA43
2H114DA47
2H114DA51
2H114DA52
2H114DA55
2H114DA56
2H114DA61
2H114EA02
2H114FA14
2H114GA34
2H114GA38
2H196AA19
2H196BA03
2H196BA05
2H196BA06
2H196CA05
2H196GA08
2H225AA01
2H225AC35
2H225AC36
2H225AD02
2H225AD15
2H225AE15P
2H225AF16P
2H225AF78P
2H225AM22N
2H225AM48N
2H225AM52N
2H225AM52P
2H225AM53N
2H225AM53P
2H225AM64N
2H225BA11P
2H225CA07
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC11
2H225CC13
2H225CD07
(57)【要約】
【課題】空気中の水分の吸収や、不要成分の版膜表面への残存もない、感光性樹脂層のタック性が防止されたパターン形成用積層フィルムを提供する。
【解決手段】支持層、糊層、非水溶性高分子層および感光性樹脂層が、この順序で構成されてなることを特徴とするパターン形成用積層フィルム、及びこのパターン形成用積層フィルムが採用された未感光のスクリーン印刷版、並びにこれらの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層、糊層、非水溶性高分子層および感光性樹脂層が、この順序で構成されてなることを特徴とする、パターン形成用積層フィルム。
【請求項2】
前記の感光性樹脂層が、中性水で現像が可能な感光性樹脂である、請求項1に記載のパターン形成用積層フィルム。
【請求項3】
前記の支持層と糊層との間の層間接着力(x)、前記の糊層と非水溶性高分子層との間の層間接着力(y)、および前記の非水溶性高分子層と感光性樹脂層との間の層間接着力(z)は、下記の関係にある、請求項1または2に記載のパターン形成用積層フィルム。
層間接着力(x) > 層間接着力(y)
層間接着力(z) > 層間接着力(y)
【請求項4】
前記の糊層と非水溶性高分子層との間の層間接着力(y)は、0.001~1.0N/25mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
【請求項5】
前記の非水溶性高分子層のヘイズ値が5.0%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
【請求項6】
前記の非水溶性高分子層は、厚さが1~100μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
【請求項7】
前記の感光性樹脂層は、下記の成分(A)および成分(B)を含んでなる感光性樹脂からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
成分(A):けん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
成分(B):ジアゾ樹脂
【請求項8】
前記の感光性樹脂層は、下記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含んでなる感光性樹脂からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
成分(A):けん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
成分(C):少なくとも一つのエポキシ基を有するエポキシ化合物
成分(D):光酸発生剤
【請求項9】
前記の感光性樹脂層は、下記の成分(E)を含んでなる感光性樹脂からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
成分(E):スチリル置換されたピリジニウム基またはスチリル置換されたキノリニウム基を有するけん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
【請求項10】
前記の感光性樹脂層は、下記の成分(F)および成分(G)をさらに含んでなる感光性樹脂からなる、請求項7~9のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
成分(F):少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物
成分(G):光ラジカル重合開始剤
【請求項11】
前記の感光性樹脂層は、下記の成分(H)をさらに含んでなる感光性樹脂からなる、請求項7~10のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
成分(H):水性ポリマーエマルジョン
【請求項12】
前記のパターン形成用積層フィルムの感光性樹脂層側に、さらに保護層が積層されてなる、請求項1~11のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルム。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルムから前記の支持層および糊層を除いた積層フィルムと、前記の積層フィルムの感光性樹脂層側に積層されたスクリーンメッシュとを含んでなることを特徴とする、未感光のスクリーン印刷版。
【請求項14】
下記の工程(イ)および工程(ロ)を含んでなることを特徴とする、未感光のスクリーン印刷版の製造方法。
工程(イ):請求項1~11のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に、スクリーンメッシュを接合する工程
工程(ロ):前記のパターン形成用積層フィルムの非水溶性高分子層から、前記の支持層および糊層を剥離する工程
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルムから前記の支持層および糊層を除いた積層フィルムと、前記の積層フィルムの感光性樹脂層側に積層されたスクリーンメッシュとを含んでなる未感光のスクリーン印刷版に、潜像を形成し感光性樹脂層を現像してなることを特徴とする、スクリーン印刷版。
【請求項16】
下記の工程(イ)~工程(ヘ)を含んでなることを特徴とする、スクリーン印刷版の製造方法。
工程(イ):請求項1~11のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に、スクリーンメッシュを接合する工程
工程(ロ):前記のパターン形成用積層フィルムの非水溶性高分子層から、前記の支持層および糊層を剥離する工程
工程(ハ):前記の非水溶性高分子層の表面にパターンマスクを配置する工程
工程(ニ):前記の感光性樹脂層に潜像を形成する工程
工程(ホ):前記の非水溶性高分子層を剥離する工程
工程(ヘ):前記の潜像が形成された感光性樹脂層を現像する工程
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載のパターン形成用積層フィルムと、前記パターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に積層された基材とを含んでなることを特徴とする、感光性レジスト基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成用積層フィルムおよび未感光のスクリーン印刷版ならびにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷版を製造する方法として、パターン形成用フィルムを使う方法がある。この方法は、直接感光性樹脂を塗布する方法と比較してパターン形成用フィルムを使用して感光性樹脂層を転写するとスクリーン上の感光性樹脂膜が平滑に形成され、版内の厚みばらつきを抑えることができる点で優れている。そのため、現像後のパターンのエッジがシャープでインク転移量にムラの少ない印刷精度の高い版の作製が可能である。
【0003】
このようなパターン形成用フィルムを用いてスクリーン印刷用ステンシルを製造するときは、まずスクリーンに水や感光性樹脂等を塗布し、パターン形成用フィルムの感光性樹脂層を貼り合わせ、十分乾燥させた後、支持層を剥離することで、感光性樹脂層をスクリーンに転写し、その後、パターンマスクを介して感光性樹脂層を露光し、続いて水等により現像することで、スクリーンに所定のパターンを形成することができる。
【0004】
しかしながら、感光性樹脂層の表面は、構成成分上、タック性を帯びることが多いので、露光時にパターンマスクの位置あわせがし難く、また、パターンマスクとの均一な密着が阻害されたり、或いは、露光後にパターンマスクを感光性樹脂層から剥離する際に、感光性樹脂層の一部が損傷し、パターンマスクを汚染したりする等の問題が発生することがあった。
【0005】
それらを防止するために、特開昭58-60745号公報や国際公開2013-080958号公報では、支持層と感光性樹脂層との間にポリビニルアルコールやフッ素化合物を中間層として配するパターン形成用積層フィルムが提案されている。
【0006】
しかしながら、ポリビニルアルコールは水溶性高分子であるところから、空気中の水分を吸水してしまい、印刷版のタック性を抑制するには十分ではないように思われる。
【0007】
また、この中間層は、本来非感光性材料であり、現像時に除去されるものであるが、実際には感光性樹脂層と長時間接していることにより、感光性成分が一部中間層に移行してしまい露光の際に現像液に不溶化してしまう。そのため現像で除去できずに版膜表面に中間層の成分が残存してしまうことがある。このことにより本来の感光性樹脂の設計通りの性能が出せずにいることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58-60745号公報
【特許文献2】国際公開2013-080958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によれば、空気中の水分を吸水することもなく、不要成分の版膜表面への残存もない、感光性樹脂層のタック性を抑制し露光時の密着不良や作業性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所定のパターン形成用積層フィルムを提供することによって、上記課題を解決するものである。
したがって、本発明によるパターン形成用積層フィルムは、支持層、糊層、非水溶性高分子層および感光性樹脂層が、この順序で構成されてなること、を特徴とするものである。
【0011】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の感光性樹脂層が、中性水で現像が可能な感光性樹脂であるもの、を包含する。
【0012】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の支持層と糊層との間の層間接着力(x)、前記の糊層と非水溶性高分子層との間の層間接着力(y)、および前記の非水溶性高分子層と感光性樹脂層との間の層間接着力(z)は、下記の関係にあるもの、を包含する。
層間接着力(x) > 層間接着力(y)
層間接着力(z) > 層間接着力(y)
【0013】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の糊層と非水溶性高分子層との間の層間接着力(y)は、0.001~1.0N/25mmであるもの、を包含する。
【0014】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の非水溶性高分子層のヘイズ値が5.0%以下であるもの、を包含する。
【0015】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の非水溶性高分子層は、厚さが1~100μmであるもの、を包含する。
【0016】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の感光性樹脂層は、下記の成分(A)および成分(B)を含んでなる感光性樹脂からなるもの、を包含する。
成分(A):けん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
成分(B):ジアゾ樹脂。
【0017】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の感光性樹脂層は、下記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含んでなる感光性樹脂からなるもの、を包含する。
成分(A):けん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
成分(C):少なくとも一つのエポキシ基を有するエポキシ化合物
成分(D):光酸発生剤。
【0018】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の感光性樹脂層は、下記の成分(E)を含んでなる感光性樹脂からなるもの、を包含する。
成分(E):スチリル置換されたピリジニウム基またはスチリル置換されたキノリニウム基を有するけん化度50モル%以上のポリビニルアルコール。
【0019】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の感光性樹脂層は、下記の成分(F)および成分(G)をさらに含んでなる感光性樹脂からなるもの、を包含する。
成分(F):少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物
成分(G):光ラジカル重合開始剤。
【0020】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記の感光性樹脂層は、下記の成分(H)をさらに含んでなる感光性樹脂からなるもの、を包含する。
成分(H):水性ポリマーエマルジョン。
【0021】
このような本発明によるパターン形成用積層フィルムは、好ましくは、前記のパターン形成用積層フィルムの感光性樹脂層側に、さらに保護層が積層されてなるもの、を包含する。
【0022】
そして、本発明による未感光のスクリーン印刷版は、前記のパターン形成用積層フィルムから前記の支持層および糊層を除いた積層フィルムと、前記の積層フィルムの感光性樹脂層側に積層されたスクリーンメッシュとを含んでなること、を特徴とするものである。
【0023】
そして、本発明による未感光のスクリーン印刷版の製造方法は、下記の工程(イ)および工程(ロ)を含んでなること、を特徴とするものである。
工程(イ):前記のパターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に、スクリーンメッシュを接合する工程
工程(ロ):前記のパターン形成用積層フィルムの非水溶性高分子層から、前記の支持層および糊層を剥離する工程。
【0024】
そして、本発明によるスクリーン印刷版は、前記のパターン形成用積層フィルムから前記の支持層および糊層を除いた積層フィルムと、前記の積層フィルムの感光性樹脂層側に積層されたスクリーンメッシュとを含んでなる未感光のスクリーン印刷版に、潜像を形成し感光性樹脂層を現像してなること、を特徴とするものである。
【0025】
そして、本発明によるスクリーン印刷版の製造方法は、下記の工程(イ)~工程(ヘ)を含んでなること、を特徴とするものである。
【0026】
工程(イ):前記のパターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に、スクリーンメッシュを接合する工程
工程(ロ):前記のパターン形成用積層フィルムの非水溶性高分子層から、前記の支持層および糊層を剥離する工程
工程(ハ):前記の非水溶性高分子層の表面にパターンマスクを配置する工程
工程(ニ):前記の感光性樹脂層に潜像を形成する工程
工程(ホ):前記の非水溶性高分子層を剥離する工程
工程(ヘ):前記の潜像が形成された感光性樹脂層を現像する工程。
【0027】
そして、本発明による感光性レジスト基材は、前記のパターン形成用積層フィルムと、前記パターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に積層された基材とを含んでなること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によるパターン形成用積層フィルムは、感光性樹脂層の表面に非水溶性高分子層が積層されている。この非水溶性高分子層は、表面が平滑であることから、非水溶性高分子層の表面においてパターンマスクを位置決めするのが容易である。
【0029】
そして、パターンマスクと非水溶性高分子層との密着性が高くかつ均一性が高いので、パターンマスクの歪み等が抑制される。このことから、感光性樹脂層の露光および潜像の形成をきわめて正確に行なうことができる。
【0030】
そして、この非水溶性高分子層は、感光性樹脂層の所謂保護層として機能して、周囲環境や劣化成分等が感光性樹脂層へ影響を与えるのを防止する。例えば、感光性樹脂層が吸湿するのを防止したり、他層からの有害成分等が移行するのが防止されるので、感光性樹脂本来の優れた特性が長期間維持される。
よって、本発明によるパターン形成用積層フィルムによれば、高精細な所望のパターンが正確に形成されたスクリーン印刷版を得ることができる。
【0031】
本発明によるパターン形成用積層フィルムは、露光時に感光性樹脂層上に非水溶性高分子層が存在することで、従来の水溶性高分子層である場合に懸念されていた吸湿、残存がなく、感光性樹脂成分によるパターンマスクの汚染を防止することができる。
【0032】
そして、感光性樹脂層のタックによる密着不良を防止でき、位置合わせも容易であって、かつ異物の付着を抑制し、付着した異物を取り除くのも容易である。
さらに、ポリマー層を有するため、タックを気にすることがなくなり、感光材の設計の幅が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による好ましい未感光のスクリーン印刷版の概要を示す図。
図2】本発明による好ましい未感光のスクリーン印刷版の概要を示す図。
図3】本発明による好ましいスクリーン印刷版の製造方法の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔パターン形成用積層フィルム〕
本発明によるパターン形成用積層フィルムは、支持層、糊層、非水溶性高分子層および感光性樹脂層が、この順序で構成されてなること、を特徴とするものである。
【0035】
本発明によるパターン形成用積層フィルムは、支持層、糊層、非水溶性高分子層および感光性樹脂層を含んでなる。ここで、「含んでなる」とは、挙示の各層(即ち、支持層、糊層、非水溶性高分子層および感光性樹脂層)のみを含んでなるもののほかに、挙示の各層以外の層あるいは材料等を含んでなるものをも包含する。そのような挙示の各層以外の層の代表例としては、例えば保護層を挙げることができる。
【0036】
本発明によるパターン形成用積層フィルムは、例えば、各種の印刷技術分野、特に好ましくは、スクリーン印刷分野に適用可能なものである。本発明によるパターン形成用積層フィルムを、このような印刷分野に適用する際には、先ず、糊層と非水溶性高分子層との界面を剥離して支持層および糊層を除去した後に、非水溶性高分子層を剥離することが行なわれることがある。
【0037】
したがって、スクリーン印刷分野に適用可能な、本発明の特に好ましいパターン形成用積層フィルムとしては、前記の支持層と糊層との間の層間接着力(x)、前記の糊層と非水溶性高分子層との間の層間接着力(y)、および前記の非水溶性高分子層と感光性樹脂層との間の層間接着力(z)が、下記の関係にあるものを挙げることができる。
層間接着力(x) > 層間接着力(y)
層間接着力(z) > 層間接着力(y)
なお、層間接着力(x)と層間接着力(z)とは、(x)の方が(z)より大きい場合、(x)の方が(z)より小さい場合、および(x)と(z)とが等しい場合、がある。
【0038】
<支持層>
本発明において、支持層としては各種の材料からなるものを用いることができる。例えば、各種の樹脂材料からなるものを用いることができ、また天然素材からなるものも用いることができる。
【0039】
好ましい材質としては、例えば、紙、離型紙、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル重合体、ナイロン等のポリアミド、セロファン等のセルロース、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリイミドなどのフィルムを挙げることができる。支持層は、透明であっても不透明であってもよく、積層フィルムの機能等の向上を目的として片面または両面に離型処理、マット処理、易接着処理を施すことができる。例えば、上記処理によって、例えば、支持層と糊層との間の層間接着力(x)を制御することが容易になる。
支持層の厚みは特に限定はないが、10~200μmであることが好ましく、30~125μmであることが特に好ましい。
【0040】
<糊層>
本発明において、糊層としては各種の材料からなるものを用いることができる。すなわち、糊層に使用する糊材は特に制限されず、種々の糊材を使用することができる。
好ましい糊材としては、例えば、アクリル系(一液型または二液型)の接着剤ないし粘着剤、ゴム系またはウレタン系の接着剤ないし粘着剤、シリコーン系の接着剤ないし粘着剤粘着剤、酢酸ビニル系をはじめとする種々の糊剤を使用することができる。
【0041】
さらに、無溶剤タイプ、溶剤タイプ、エマルジョンタイプ、熱硬化タイプ、UV硬化タイプ、EB硬化タイプ、ホットメルトタイプ等を使用することができる。
糊層の厚みは特に限定はないものの、0.5~30μmが好ましく、0.5~20μmが特に好ましい。
【0042】
糊層の形成は、グラビア、コンマ、エアーナイフ、ドクターナイフ、バーコーター、ダイコート法、ドクターブレード法等の通常のコーティング方法で、支持層上に上記の糊材を塗布した後、加熱処理、紫外線照射処理、電子線照射処理等の方法で乾燥、硬化させることで実施できる。
【0043】
この糊層を形成するための糊材は、糊層と非水溶性高分子層との間の層間接着力(y)が、好ましくは0.001~1.0N/25mm、特に好ましくは0.005~0.5N/25mm(対PET)、となるように選択することができる。0.001N/25mm未満であるときは、非水溶性高分子層への付着力が不足することによる剥がれや浮き等が発生することがあるため好ましくなく、一方、1.0N/25mmより大きいと、非水溶性高分子層から剥離しにくくなることや、剥離後に糊残りが発生したり、表面汚染性が高くなることがある等により、好ましくない。層間接着力(y)は、25mm幅のポリエチレンテレフタレートフィルムに糊層を形成し、さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ圧着する。23℃下で1分後に、300mm/分の速度で180度の角度で剥離するときの力で表したものである(JIS-Z0237に準ずるものである)。
【0044】
本発明によるパターン形成用積層フィルムは、支持層および糊層を非水溶性高分子層から剥離した後において、糊層を構成していた糊剤が非水溶性高分子層の表面に残留しないことが好ましい。糊層剥離後の非水溶性高分子層の表面における糊剤の残留量は、10cmの糊材の質量を100とした時に、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは、0.1%以下、である。
【0045】
<非水溶性高分子層>
本発明によるパターン形成用積層フィルムでは、非水溶性高分子層を透過した光によって、感光性樹脂層を構成する樹脂の硬化がなされる。
非水溶性高分子層はヘイズ値が低いものが好ましい。例えば、ヘイズ値が0.01~5.0%であるものが好ましく、0.05~3.0%であるものが特に好ましい。ここで、ヘイズ値は、JIS-K7136によるものである。
【0046】
ヘイズ値が、上記好ましい範囲内であることによって、光照射量が少なくても感光性樹脂層の硬化が良好に行なうことができ、かつ、感光性樹脂層に高精細な所望パターンを形成させることができる。
【0047】
好ましい非水溶性高分子層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル重合体、ナイロン等のポリアミド、セロファン等のセルロース、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリエーテルスルホン樹脂などのフィルムを挙げることができる。
非水溶性高分子層は、ヘイズ値の範囲内であれば、積層フィルムの機能等の向上を目的として片面または両面に離型処理、易接着処理を施すことができる。例えば、上記処理によって、例えば、糊層と非水溶性高分子層の間の層間接着力(y)、非水溶性高分子層と感光性樹脂層の間の層間接着力(z)を制御することが容易になる。
特に好ましい非水溶性高分子層としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムが好適に使用される。厚みは1~100μmであることが好ましい。
【0048】
<感光性樹脂層>
本発明によるパターン形成用積層フィルムの感光性樹脂層は、光照射によって潜像が形成可能なものであって、中性水によって現像可能な樹脂からなることができる。そして、溶媒に水を用いて塗膜を形成可能なものが好ましい。
そのような感光性樹脂層の好ましいものとしては、次の第一の具体例、第二の具体例および第三の具体例を挙げることができる。
【0049】
<<第一の感光性樹脂層>>
感光性樹脂層の第一の具体例は、下記の成分(A)および成分(B)を含んでなる感光性樹脂からなるものである。
成分(A):けん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
成分(B):ジアゾ樹脂
ここで、「含んでなる」とは、挙示の各成分(即ち、成分(A)および成分(B))のみを含んでなるもののほかに、挙示の成分以外の成分等を含んでなるものをも包含する。そのような挙示の成分以外の成分の代表例としては、例えば成分(F)~(H)を挙げることができる(詳細後記)。
【0050】
成分(A)と成分(B)との存在比率(質量%)は、成分(A):成分(B)が、好ましくは1:0.005~1:0.5、特に好ましくは1:0.01~1:0.2である。
上記の成分(A)および成分(B)を含んでなる感光性樹脂は、必要に応じて、成分(F)~(H)のいずれか一種あるいは複数種を含むことができる。
【0051】
成分(A)
成分(A)は、けん化度50モル%以上のポリビニルアルコールである。けん化度が50~100モル%、特に70~100%、のものが好ましく、水溶性が損なわれない限り、他のビニルモノマーとの共重合体でもよい。その平均重合度は、200~5000、特に300~4000のものが好ましい。けん化度および重合度が異なる2種類以上のポリビニルアルコールを混合することもできる。また、カチオン変性やアニオン変性などの変性物も同様に使用可能である。
【0052】
成分(B)
成分(B)は、ジアゾ樹脂である。具体例としては、p‐ジアゾジフェニルアミンもしくは3‐メトキシ‐4‐ジアゾジフェニルアミンと4,4’‐ビスメトキシメチルジフェニルエーテルとの縮合物、およびこれらの硫酸塩、リン酸塩および塩化亜鉛複塩陰イオンコンプレックスのジアゾ樹脂、p‐ジアゾジフェニルアミンもしくは3‐メトキシ‐4‐ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物の硫酸塩、リン酸塩および塩化亜鉛複塩陰イオンコンプレックスのジアゾ樹脂、を挙げることができる。この種のジアゾ樹脂としては、パラアミノジフェニルアミンの他に、4‐アミノ‐4’‐メチルジフェニルアミン、4‐アミノ‐4’‐エチルジフェニルアミン、4‐アミノ‐4’‐メトキシジフェニルアミン、4‐アミノ‐4’‐クロロジフェニルアミン、4‐アミノ‐4’‐ニトロジフェニルアミン等のジフェニルアミン類のジアゾ化物を、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n‐ブチルアルデヒド等のアルデヒド類を用いて縮合させた水溶性のジアゾ樹脂を用いることができる。
【0053】
その中でも、特にp‐ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物、3‐メトキシ‐4‐ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物、p‐ジアゾジフェニルアミンと4,4’‐ビスメトキシメチルジフェニルエーテルとの縮合物、3‐メトキシ‐4‐ジアゾジフェニルアミンと4,4’‐ビスメトキシメチルジフェニルエーテルとの縮合物が好ましい。
上記成分(B)の一種を単独で用いることができ、また二種以上を併用することができる。
【0054】
成分(F)
成分(F)は、少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物であり、「光硬化技術データブック」(テクノネット社、2000年)に記載のモノマーおよびオリゴマーなどが該当する。
【0055】
単官能性モノマーの具体例としては、たとえば、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2‐エトキシエチル(メタ)アクリレート、2(2‐エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、n‐ブトキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、N,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N‐ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、オキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」および「アクリレート」の両者を意味し、「エチ(プロピ)レン」とは、「エチレン」および「プロピレン」の両者を意味する。
【0056】
エチレン性不飽和結合を二以上有する多官能性モノマーの具体例としては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3‐トリメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビス(メタクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、エピクロルヒドリン変性1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、オキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、オキサイド変性ビスフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0057】
オリゴマーとしては、たとえば、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、カプロラクトン付加(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることができる。
さらに、エチレン性不飽和結合含有ポリエステルデンドリマーなどを用いることができる。このようなエチレン性不飽和結合含有ポリエステルデンドリマーの具体例は、例えば特開2005-76005号、特開2005-47979号、特開2005-76005号各公報などに記載されている。
【0058】
上記の成分(F)の一種を単独で用いることができ、また二種以上を併用することができる。
成分(F)の存在量(質量%)は、上記の成分(A)および成分(B)の合計を100質量%としたときに、好ましくは1.0~800質量%、特に好ましくは10~600質量%、である。
【0059】
成分(G)
成分(G)は、光重合開始剤であり、特に制限は無いが一例として、ベンゾフェノン、ビス‐N,N‐ジメチルアミノベンゾフェノン、などのベンゾフェノン類、チオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類が挙げられる。
【0060】
また、油溶性の光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、1,1‐ジクロロアセトフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、1‐(4‐イソプロピルフェニル)‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロパン‐1‐オン、1‐(4‐ドテシルフェニル)‐2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロパン‐1‐オン、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)‐フェニル(2‐ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン類;2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルホリノプロパノン‐1、2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルホリノフェニル)‐ブタノン‐1などのアミノアセトフェノン類;2‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、2‐ターシャリーブチルアントラキノン、1‐クロロアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4‐ジエチルチオキサントン、2‐クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4‐ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類又はキサントン類などがあり、これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができ、また、第3級アミン類のような公知の増感剤を単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
成分(G)の量(質量%)は、上記の成分(F)に対し、好ましくは0.1~20質量%、特に好ましくは0.5~10質量%、である。
【0061】
成分(H)
成分(H)は、水性ポリマーエマルジョンであり、例えば、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、クロロプレン重合体、イソプレン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン、フッ素樹脂等を挙げることができる。これら疎水性重合体粒子は、重合工程中により得られるポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン・酢酸ビニルコポリマーエマルジョン、酢酸ビニル・アクリルコポリマーエマルジョン、エチレン・酢酸ビニル・アクリル3元共重合エマルジョン、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーエマルジョン、アクリルエマルジョン、スチレン・ブタジエンラテックスエマルジョン、MBRラテックスエマルジョン、アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックスエマルジョン、クロロプレンゴムラテックスエマルジョン、塩化ビニリデンエマルジョン等を挙げることができる。さらには、多官能性(メタ)アクリレートから調製される水性エマルジョンを熱重合開始剤あるいは光重合開始剤によって乳化重合し、架橋構造を有するポリマーの水性エマルジョンも好適に用いることができる。合成高分子ディスパージョンとしては、ポリエチレンディスパージョン、ポリオレフィンアイオノマーディスパージョン、ウレタンアイオノマーディスパージョン等が有用である。
成分(H)の存在比率(質量%)は、上記の成分(A)および成分(B)の合計を100質量%としたときに、好ましくは1~1500質量%、特に好ましくは10~1000質量%、である。
【0062】
その他の成分
第一の感光性樹脂層には、その他の成分として、架橋剤、有機または無機粒子、シランカップリング剤、顔料、染料、熱重合防止剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、密着性付与剤、可塑剤、溶剤、表面張力調節剤、安定剤、連鎖移動防止剤、難燃剤、抗菌剤、防腐剤などを必要に応じて添加できる。
【0063】
<<第二の感光性樹脂層>>
感光性樹脂層の第二の具体例は、下記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含んでなる感光性樹脂からなるものである。
成分(A):けん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
成分(C):少なくとも一つのエポキシ基を有するエポキシ化合物
成分(D):光酸発生剤
【0064】
ここで、「含んでなる」とは、挙示の各成分(即ち、成分(A)、成分(C)および成分(D))のみを含んでなるもののほかに、挙示の成分以外の成分等を含んでなるをも包含する。そのような挙示の各層以外の層の代表例としては、例えば成分(F)~(H)を挙げることができる。
【0065】
成分(A)と成分(C)との存在比率(質量%)は、成分(A):成分(C)が、好ましくは1:1~1:10、特に好ましくは1:2~1:6である。成分(D)の量(質量%)は、上記の成分(C)に対し、好ましくは1~20質量%、特に好ましくは3~10質量%である。
上記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含んでなる感光性樹脂は、必要に応じて、成分(F)~(H)のいずれか一種あるいは複数種を含むことができる。
【0066】
成分(A)
第二の具体例における成分(A)としては、第一の感光性樹脂の具体例において成分(A)として例示したものを用いることができる。
【0067】
成分(C)
成分(C)は、少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物である。
2官能以上のグリシジル型エポキシ化合物として、たとえば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、水添フタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA PO 2mol付加物ジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。さらには、脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとε-カプロラクトンの付加物、1,2,8,9-ジエポキシリモネン、(3,3’4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、1,2‐エポキシ‐4‐ビニルシクロヘキサン)、2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)‐1‐ブタノールの1,2‐エポキシ‐4‐(2‐オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ブタンテトラカルボン酸 テトラ(3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル) 修飾ε‐カプロラクトン、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートなどを挙げることができる。
【0068】
単官能性エポキシ化合物としては、2‐エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、p‐tert‐ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコール(EO)15グリシジルエーテル、Cl、Cl混合アルコールグリシジルエーテル、N‐グリシジルフタルイミドなどを挙げることができる。これらを反応性希釈剤として用いれば、高粘度あるいは固形のエポキシ樹脂を用いることができる。たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール‐A型エポキシ樹脂、ビスフェノール‐F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール‐Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、スチレン‐ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物、臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂などを用いることができる。
また、少なくとも一つのオキセタン基を有する化合物を上記のエポキシ化合物と混合して用いることができる。
【0069】
オキセタン化合物としては、J.V.Crivello and H.Sasaki,J.M.S.Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993) あるいは J.H.Sasaki and V.Crivello,J.M.S.Pure Appl.Chem.,A30(2&3),915(1993) に記載の化合物が挙げられる。たとえば、3‐エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)、2‐エチルヘキシルオキセタン、(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メチルメタクリレート、(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メチルアクリレート、3‐エチル‐3‐(4‐ヒドロキシブチルオキシメチル)オキセタンなどの単官能オキセタン化合物、キシリレンビスオキセタン、3‐エチル‐3{[(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’‐ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル)、ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチル]イソフタレートなどの2官能オキセタン化合物、ペンタエリスリトールトリス(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサ(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3‐エチル‐3‐オキセタニルメチル)エーテルなどの多官能オキセタン化合物を挙げることができる。
上記成分(C)の一種を単独で用いることができ、また二種以上を併用することができる。
【0070】
成分(D)
成分(D)は、酸発生剤であり、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187~192ページ参照)。酸発生剤の具体例としては、例えば、オニウムカチオン化合物、ハロゲン化水素酸を発生する含ハロゲン化合物、スルホン酸を発生するスルホン化化合物を挙げることができる。
【0071】
イオン性酸発生剤として、たとえば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、フェロセニウムなどのオニウムカチオンの、Cl、Br、I、ZnCl 、HSO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 、CHSO 、CFSO 、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、カンファースルホネート、ベンゼンスルホネート、p‐トルエンスルホネート、9,10‐ジメトキシアントラセン‐2‐スルホネート、シクロヘキシルアミノスルホネート、(C、(C などの塩を挙げることができる。
【0072】
前記オニウムカチオンの具体的な例として、フェニルジアゾニウム、p‐メトキシジアゾニウム、α‐ナフチルジアゾニウム、ビフェニルジアゾニウム、ジフェニルアミン‐4‐ジアゾニウム、3‐メトキシジフェニルアミン‐4‐ジアゾニウム、2,5‐ジエトキシ‐4‐メトキシベンゾイルアミドフェニルジアゾニウム、2,5‐ジプロポキシ‐4‐(4‐トリル)チオフェニルジアゾニウム、4‐メトキシジフェニルアミン‐4‐ジアゾニウム、4‐ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物、1‐メトキシキノリニウム、1‐エトキシイソキノリニウム、1‐フェナシルピリジニウム、1‐ベンジル‐4‐ベンゾイルピリジニウム、1‐ベンジルキノリニウム、N‐置換ベンゾチアゾリウム(特開平5-140143号公報参照)などが挙げられる。
【0073】
さらに、ベンジルトリフェニルスルホニウム、p‐メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(p‐メトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(p‐メトキシフェニル)スルホニウム、p‐フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム、ベンジルテトラメチレンスルホニウム、フェナシルテトラメチレンスルホニウム、フェナシルジメチルスルホニウム、p‐メトキシフェニルジエチルスルホニウム、ナフチルジアルキルスルホニウム(特開平9-118663号公報、特開平5-140209号公報参照)、(2‐ナフチルカルボニルメチル)テトラメチレンスルホニウム、(p‐ヒドロキシフェニル)ジチメルスルホニウム、(4‐ヒドロキシナフチル)‐ジメチルスルホニウム、(4,7‐ジヒドロキシナフチル)‐1‐ジメチルスルホニウム、(4,8‐ジヒドロキシナフチル)‐1‐ジメチルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、フェニル(4‐メトキシフェニル)ヨードニウム、フェニル{4‐(tert‐ブチル)フェニル}ヨードニウム、4‐ビス{4‐(tert‐ブチル)フェニル}ヨードニウム、ビス(4‐ドデシルフェニル)ヨードニウム、(4‐メトキシフェニル)(4‐オクチルオキシフェニル)ヨードニウム、フェナシルトリフェニルホスホニウム、シアノメチルトリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。
【0074】
ハロゲン化水素酸を発生する酸発生剤としては、1‐メチル‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐フェニル‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(4‐クロロフェニル)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(4‐メトキシフェニル)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(4‐ブトキシフェニル)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(3,4‐メチレンジオキシフェニル)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(3,4‐ジメトキシフェニル)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(4‐メトキシナフチル‐1)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐{2‐(4‐メトキシフェニル)エテニル}‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐{2‐(2‐メトキシフェニル)エテニル}‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐{2‐(3,4‐ジメトキシフェニル)エテニル}‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐{2‐(3‐クロロ‐4‐メトキシフェニル)エテニル}‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(ビフェニル‐1)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(4‐ヒドロキシビフェニル‐1)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(4‐メトキシビフェニル‐1)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1‐(4‐メチルビフェニル‐1)‐3,5‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1,3,5‐トリス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、1,3‐ジクロロ‐4‐トリクロロメチルベンゼン、1,1,1‐トリクロロ‐{2,2‐84‐クロロフェニル}エタン、フェニルトリブロモメチルスルホン、1‐ケト‐4‐メチル‐4‐トリクロロメチル‐2,5‐ジクロヘキサジエン、2‐トリブロモキノリン、1‐ケト‐2,3‐ベンゾ‐4,4,5,6‐テトラクロロヘキサエン‐5、などが挙げられる。
【0075】
スルホン酸を発生する酸発生剤としては、2‐ニトロベンジルp‐トルエンスルホネート、2,6‐ジニトロベンジルp‐トルエンスルホネート、1‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐1‐フェニルエタンニトリル、1‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐1‐フェニルエタンニトリル、ベンゾインp‐トルエンスルホネート、2‐p‐トルエンスルホニルオキシ‐2‐ベンゾイルプロパン、p‐ニトロベンジル9,10‐ジメトキシアントラセン‐2‐スルホネート、N‐トリフルオロメタンスルホニルオキシジフェニルマレイミド、N‐p‐トルエンスルホニルオキシサクシンイミド、N‐カンファースルホニルオキシサクシンイミド、N‐トルフルオロメタンスルホニルオキシサクシンイミド、N‐パーフルオロブタンスルホニルオキシサクシンイミド、N‐p‐トルエンスルホニルオキシフタルイミド、N‐カンファースルホニルオキシフタルイミド、N‐トルフルオロメタンスルホニルオキシフタルイミド、N‐パーフルオロブタンスルホニルオキシフタルイミド、N‐p‐トルエンスルホニルオキシ‐1,8‐ナフタレンカルボキシイミド、N‐カンファースルホニルオキシ‐1,8‐ナフタレンカルボキシイミド、N‐トリフルオロメタンスルホニルオキシ‐1,8‐ナフタレンカルボキシイミド、N‐パーフルオロブタンスルホニルオキシ‐1,8‐ナフタレンカルボキシイミド、1,2,3‐トリス(p‐トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、ビス(フェニルスルホン)、ビス(フェニルスルホニル)メタン、などを挙げることができる。
【0076】
また、酸発生剤と併用して増感剤を使用することが可能であり、用いられる増感剤としては、電子供与性化合物であることが望ましい。このような特性を持つ増感剤としては、芳香族多環化合物、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、ポリメチン色素化合物、メロシアニン化合物、クマリン化合物、チオピリリウム化合物、ピリリウム化合物、p‐ジアルキルアミノスチリル化合物、チオキサンテン化合物等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの多くは、大河、平嶋、松岡、北尾編集、「色素ハンドブック」(講談社)、社団法人色材協会編集、「色材工学ハンドブック」、朝倉書店(1989年発行)、林原生物化学研究所感光色素研究所「Dye Catalogue」などに掲載されている。
【0077】
成分(F)
第二の具体例における成分(F)としては、第一の感光性樹脂の具体例において成分(F)として例示したものを用いることができる。
成分(F)の存在比率(質量%)は、上記の成分(A)および成分(C)および成分(D)の合計を100質量%としたときに、好ましくは1~60質量%、特に好ましくは5~30質量%、である。
【0078】
成分(G)
第二の具体例における成分(G)としては、第一の感光性樹脂の具体例において成分(G)として例示したものを用いることができる。
成分(G)の存在比率(質量%)は、上記の成分(F)に対して、好ましくは0~20質量%、特に好ましくは0.1~10質量%、である。
【0079】
成分(H)
第二の具体例における成分(H)としては、第一の感光性樹脂の具体例において成分(H)として例示したものを用いることができる。
成分(H)の存在比率(質量%)は、上記の成分(A)および成分(C)および成分(D)の合計を100質量%としたときに、好ましくは0.5~200質量%、特に好ましくは1~100質量%、である。
【0080】
その他の成分
第二の感光性樹脂層には、その他の成分として、架橋剤、有機または無機粒子、シランカップリング剤、顔料、染料、熱重合防止剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、密着性付与剤、可塑剤、溶剤、表面張力調節剤、安定剤、連鎖移動防止剤、難燃剤、抗菌剤、防腐剤などを必要に応じて用いることができる。
【0081】
<<第三の感光性樹脂層>>
感光性樹脂層の第三の具体例は、下記の成分(E)を含んでなる感光性樹脂からなるものである。
成分(E):スチリル置換されたピリジニウム基またはスチリル置換されたキノリニウム基を有するけん化度50モル%以上のポリビニルアルコール
上記の成分(E)を含んでなる感光性樹脂は、必要に応じて、成分(F)~(H)のいずれか一種あるいは複数種を含むことができる。
【0082】
成分(E)
成分(E)は、スチリル置換されたピリジニウム基又はスチリル置換されたキノリニウム基を有するけん化度50モル%以上の酢酸ビニル重合体けん化物で、それ自体光架橋性を有する。好ましい具体的としては、下記の一般式(1)または一般式(2)で示される化合物を挙げることができる。
【化1】
【0083】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基またはアラルキル基を示し、これらはヒドロキシ基、カルバモイル基で置換されていてもよく、また、それらの炭素炭素結合は酸素原子あるいは不飽和結合を介していても良い。Rは、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示す。mは、1~6の整数である。nは、0または1である。X は、ハロゲンイオン、リン酸イオン、メト硫酸イオン、スルホン酸イオン、アニオン解離能をもつラジカル重合性モノマーまたはこれら陰イオンの混合物を表す)
のアルキル基またはアラルキル基としては、炭素数1~10のものが好ましい。特に1~7のものが好ましい。具体的な残基(R)としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2‐ヒドロキシエチル、3‐ヒドロキシプロピル、2‐メトキシエチル、3‐メトキシプロピル、アリル、クロチル、ベンジルなどを挙げることができる。mは1~6の範囲を越えると光不溶化後の膜が膨潤しやすくなり、1~4がより好ましい。nは0または1のいずれでもよい。
【0084】
としては、リン酸イオン、メト硫酸イオン、ハロゲンイオンとしてClまたはBr、スルホン酸イオンとして、CHSO 、CHCHSO 、CSO 、p‐CHSO が好ましい。また、X として少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を持ち、かつ、アニオン解離能を有するラジカル重合性モノマーも挙げることができる。アニオン解離能を有する残基としては、スルホン酸、カルボン酸、リン酸を挙げることができ、これらのアルカリ塩あるいは脂肪族アミンのアンモニウム塩とすることによりアニオン基を持つラジカルモノマーとして用いられる。このために用いられるモノマーにおけるラジカル重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基(以下、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよびメタクロイルの両者を意味する)、マレイン酸モノエステル基、スチリル基、アリル基などを挙げることができる。解離していない酸型のモノマーの例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、フタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸3‐(メタ)アクリロイルオキシ‐2‐プロピルエステル、フタル酸3‐(メタ)アクリロイルオキシ‐2‐プロピルエステル、シクロヘキサン‐3‐エン‐1,2‐ジカルボン酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、シクロヘキサン‐1,2‐カルボン酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、マレイン酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω‐カルボキシ‐ポリカプロラクトンモノアクリレート、アクリル酸ダイマー、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルリン酸、2‐(メタ)アクリロイルオキシ‐3‐プロピルリン酸、ω‐(メタ)アクリロイルポリエチレンオキシエチレンリン酸、ω‐(メタ)アクリロイルポリプロピレンオキシエチレンリン酸、スチレンスルホン酸、N‐(2‐スルホエチル)アクリルアミド、N‐(2‐スルホエチル)メタアクリルアミド、などを挙げることができるが、この限りではない。
【0085】
成分(F)
第三の具体例における成分(F)としては、第一の感光性樹脂の具体例において成分(F)として例示したものを用いることができる。
成分(F)の存在比率(質量%)は、上記の成分(E)を100質量%としたときに、好ましくは1.0~800質量%、特に好ましくは10~600質量%、である。
【0086】
成分(G)
第三の具体例における成分(G)としては、第一の感光性樹脂の具体例において成分(E)として例示したものを用いることができる。
成分(G)の存在比率(質量%)は、上記の成分(F)を100質量%としたときに、好ましくは0.1~20質量%、特に好ましくは0.5~10質量%、である。
【0087】
成分(H)
第三の具体例における成分(H)としては、第一の感光性樹脂の具体例において成分(H)として例示したものを用いることができる。
成分(H)の存在比率(質量%)は、上記の成分(E)を100質量%としたときに、好ましくは1~1500質量%、特に好ましくは10~1000質量%、である。
【0088】
その他の成分
第三の感光性樹脂層には、その他の成分として、架橋剤、有機または無機粒子、シランカップリング剤、顔料、染料、熱重合防止剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、密着性付与剤、可塑剤、溶剤、表面張力調節剤、安定剤、連鎖移動防止剤、難燃剤、抗菌剤、防腐剤などを必要に応じて用いることができる。
【0089】
<保護層>
本発明によるパターン形成用積層フィルムには、支持層、糊層、非水溶性高分子層および感光性樹脂層以外の他の層を含むことができる。そのような他の層の代表例としては、例えば保護層を挙げることができる。
【0090】
この保護層は、主として、本発明によるパターン形成用積層フィルムを保護する機能を有するものであって、例えば、この保護層を感光性樹脂層の表面に配置した場合には、感光性樹脂層を、外部からの衝撃や圧力等によって傷つくのを防止し、湿気やガス、光等によって劣化するのを防止することができる。そして、本発明によるパターン形成用積層フィルムを重ね合わせたり、ロール状に巻き回して貯蔵することを容易にする。
【0091】
本発明において、保護層としては各種の材料からなるものを用いることができる。例えば、各種の樹脂材料からなるものを用いることができ、また天然素材からなるものも用いることができる。
保護層の具体的な材質に制限はなく、例えば、支持層と同様の材質を用いることができる。保護層の厚みは特に限定はないが、1~50μmであることが好ましい。
【0092】
保護層が感光剤層の表面に配置された本発明によるパターン形成用積層フィルムを、例えばスクリーン印刷版に適用する場合には、本発明によるパターン形成用積層フィルムを構成する他の層よりも先に、この保護層を剥離することが行われる。従って、この保護層と感光剤層との間の層間接着力は、他の層間接着力(x)~(z)よりも低いこと(即ち、層間接着力(y)よりも低いこと)が、好ましい。そのため、片面または両面に離型処理が施されたものであってもよい。
【0093】
また、透明であっても不透明であってもよい。例えば、紙、離型紙、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル重合体、ナイロン等のポリアミド、セロファン等のセルロース、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリイミドなどのフィルムを挙げることができる。また、積層フィルムの機能を失わなければ片面または両面に離型処理、マット処理、易接着処理が施されていてもよい。
【0094】
<未感光のスクリーン印刷版(第一の未感光のスクリーン印刷版)>
本発明による第一の未感光のスクリーン印刷版は、上記のパターン形成用積層フィルムと、前記パターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に積層されたスクリーンメッシュとを含んでなること、を特徴とする。
【0095】
図1は、本発明による第一の未感光のスクリーン印刷版8の好ましい具体例を示すものである。図1に示される本発明による好ましい未感光のスクリーン印刷版8は、パターン形成用積層フィルム1(具体的には、支持層2、糊層3、非水溶性高分子層4および感光性樹脂層5が、この順序で構成されてなるパターン形成用積層フィルム1)と、このパターン形成用積層フィルム1の前記感光性樹脂層5側に積層されたスクリーンメッシュ6とを含んでなるものである。ここで、スクリーンメッシュ6は、通常の一般的なスクリーン印刷版と同様に、枠材7に貼設されている。
【0096】
<未感光のスクリーン印刷版(第一の未感光のスクリーン印刷版)の製造方法>
本発明による未感光のスクリーン印刷版(第一の未感光のスクリーン印刷版)の製造方法は、下記の工程(イ)を含んでなること、を特徴とする。
工程(イ):上記のパターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に、スクリーンメッシュを接合する工程
このスクリーン印刷版の製造方法によれば、例えば図1に示される未感光のスクリーン印刷版8を製造することができる。
【0097】
工程(イ)において、パターン形成用積層フィルム1の感光性樹脂層5側に、スクリーンメッシュ6を接合するときは、好ましくは、例えば、(1)スクリーンメッシュ6に、感光性材料(好ましくは、感光性樹脂層5を形成している感光性樹脂と同一ないし類似する感光性材料)または水を予め塗工しておいて、そこにパターン形成用積層フィルム1の感光性樹脂層5を接合する方法、(2)スクリーンメッシュ6に、パターン形成用積層フィルム1の感光性樹脂層5を重ね合わせた後、その重ね合わせ部に感光性樹脂層を形成している感光性樹脂と同一ないし類似する感光性材料または水を塗工する方法を挙げることができる。
【0098】
<未感光のスクリーン印刷版(第二の未感光のスクリーン印刷版)>
本発明による第二の未感光のスクリーン印刷版の他の好ましい態様(第二の未感光のスクリーン印刷版)は、パターン形成用積層フィルムから前記の支持層および糊層を除いた積層フィルムと、前記の積層フィルムの前記感光性樹脂層側に積層されたスクリーンメッシュとを含んでなること、を特徴とする。
【0099】
図2は、本発明による第二の未感光のスクリーン印刷版9の好ましい具体例を示すものである。
図2に示される本発明による好ましい未感光のスクリーン印刷版9は、図1に示された未感光のスクリーン印刷版8におけるパターン形成用積層フィルム1から支持層2および糊層3を除いた積層フィルム1’と、前記の積層フィルム1’の前記感光性樹脂層5側に積層されたスクリーンメッシュ6とを含んでなるものである。
【0100】
<未感光のスクリーン印刷版(第二の未感光のスクリーン印刷版)の製造方法>
本発明による未感光のスクリーン印刷版(第二の未感光のスクリーン印刷版)の製造方法は、下記の工程(イ)および工程(ロ)を含んでなること、を特徴とする。
工程(イ):前記のパターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層面側に、スクリーンメッシュを接合する工程
工程(ロ):前記のパターン形成用積層フィルムの非水溶性高分子層から、前記の支持層および糊層を剥離する工程
図2は、このような製造方法で得られた未感光のスクリーン印刷版9の好ましい具体例を示すものである。
【0101】
<スクリーン印刷版の製造方法>
本発明によるスクリーン印刷版の製造方法は、下記の工程(イ)~工程(ヘ)を含んでなること、を特徴とする。
工程(イ):前記のパターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に、スクリーンメッシュを接合する工程
工程(ロ):前記のパターン形成用積層フィルムの非水溶性高分子層から、前記の支持層および糊層を剥離する工程
工程(ハ):前記の非水溶性高分子層の表面にパターンマスクを配置する工程
工程(ニ):前記の感光性樹脂層に潜像を形成する工程
工程(ホ):前記の非水溶性高分子層を剥離する工程
工程(ヘ):前記の潜像が形成された感光性樹脂層を現像する工程。
【0102】
図3は、本発明によるスクリーン印刷版の製造方法の概要を示す図であって、
図3Aは、前記のパターン形成用積層フィルム1の前記感光性樹脂層5側に、スクリーンメッシュ6を接合する工程(イ)の概要を示し、
図3Bは、前記のパターン形成用積層フィルム1の非水溶性高分子層4から、前記の支持層2および糊層3を剥離する工程(ロ)の概要を示し、
図3Cは、前記の非水溶性高分子層4の表面に、パターンマスク10を配置する工程(ハ)の概要を示し、
図3Dは、前記の感光性樹脂層5に、前記パターンマスク10面からエネルギー線を照射して、感光性樹脂に潜像αを形成する工程(ニ)の概要を示し、
図3Eは、前記の非水溶性高分子層4を剥離する工程(ホ)の概要を示し、
図3Fは、前記の潜像αが形成された感光性樹脂層5を現像する工程(ヘ)を実施して得られたスクリーン印刷版11の概要を示している。この工程(ヘ)では、潜像αが形成された感光性樹脂層5を水(例えば、中性水)で洗浄して、感光性樹脂層5の未硬化領域(即ち、潜像αが形成されていない領域)を除去することからなる現像処理が行われる。その後、現像処理物を乾燥することによって、所定の開孔パターンを有するスクリーン印刷版11を得ることができる。
【0103】
本発明によるパターン形成用積層フィルム1は、非水溶性高分子層3を有しており、この非水溶性高分子層3の表面にパターンマスク10を配置して、その後、このパターンマスク10を介してエネルギー線の照射ならびに潜像αの形成が行なわれる。この非水溶性高分子層3により、感光性樹脂層の吸湿や構成成分の移行によるタック性を帯びることを防止することから、非水溶性高分子層3の表面においてマスクパターン10を位置決めするのが容易である。
【0104】
本発明によるスクリーン印刷版によれば、出来上がった印刷版は表面がフラットに仕上がるため、印刷再現性が良好であり、被印刷物との密着も良好なことから、インクが印刷版の裏側に回り込むことを抑制し、版ふき回数の減少を図ることができる。
【0105】
<感光性レジスト基材>
本発明による感光性レジスト基材は、前記のパターン形成用積層フィルムと、前記パターン形成用積層フィルムの前記感光性樹脂層側に積層された基材とを含んでなること、を特徴とする。
【0106】
感光性樹脂層側に積層される基材としては、各種の材料からなるものを用いることができる。例えば木、石、織物、紙、セラミックス、ガラス、酢酸セルロースやポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、エポキシ樹脂のような合成樹脂、ガラス繊維強化樹脂、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、亜鉛、マグネジウム、コバルトのような金属、シリコン、ガリウムヒ素ゲルマニウムなどの半導体材料、窒化ケイ素、酸化ケイ素などの絶縁材料を挙げることができる。
【0107】
この本発明による感光性レジスト基材は中性水で現像できる感光性樹脂であるので、現像液に溶剤やアルカリ水溶液を使用しないという点で従来の感光性レジスト基材よりも環境面・作業面で有利である。
【0108】
スクリーンメッシュ以外にも金属やガラス等の基材にこのパターン形成用積層フィルムを接合することで感光性レジスト基材を得ることができる。従来の有機溶剤含有型樹脂とは異なり、溶媒に中性水を使用しているため環境汚染が低い。現像も有機溶剤やアルカリ水を使用せず中性水で可能なことから、環境面・作業面・現像液の保管・処理などの点からも有利である。また基材によっては有機溶剤やアルカリにより変色、変形などしてしまうものがあり、中性水で現像できることで幅広い基材が選択できる。
【実施例0109】
<実施例1>
パターン形成用積層フィルムの作製
支持層として厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その上にエチレン‐酢酸ビニル系エマルジョンタイプの粘着剤をバーコーターにより塗工し、100℃3分加熱乾燥することで、厚み10μmの糊層を形成した。さらに、その上に非水溶性の高分子からなる層として厚み6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネーターによって貼り合わせた。
続いて、上述の成分(A)および成分(B)(F)(G)(H)からなる感光性樹脂1をバーコーターにより塗工し、40℃30分加熱乾燥することで、厚み20μmの感光性樹脂層を形成し、これによりパターン形成用積層フィルムを得た。
【0110】
<実施例2>
実施例1の感光性樹脂層を形成した後、その上に保護層として厚み25μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせた以外は実施例1と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0111】
<実施例3>
糊層にアクリル系粘着剤、C)非水溶性の高分子からなる層に厚み12μmのポリオレフィンフィルムを使用した以外は実施例1と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0112】
<比較例1>
パターン形成用積層フィルムの作製
支持層として厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その上にポリビニルアルコール(クラレ株式会社製クラレポバール95-88)の5.0質量%水溶液をバーコーターにより塗工し、40℃30分加熱乾燥することで、厚み5μmの水溶性の高分子からなる層を形成した。さらにその上に、上述の成分(A)および成分(B)(F)(G)(H)からなる感光性樹脂1をバーコーターにより塗工し、40℃30分加熱乾燥することで、厚み20μmの感光性樹脂層を形成し、これによりパターン形成用積層フィルムを得た。
【0113】
<比較例2>
水溶性の高分子からなる層としてフッ素化合物含有樹脂(株式会社ムラカミ製SP-2050UCジアゾ樹脂未添加)を使用した以外は比較例1と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0114】
<比較例3>
支持層として厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その上に、上述の成分(A)および成分(B)(F)(G)(H)からなる感光性樹脂1をバーコーターにより塗工し、40℃30分加熱乾燥することで、厚み20μmの感光性樹脂層を形成し、これによりパターン形成用フィルムを得た。
【0115】
<評価方法1>
アルミニウム枠に固定したポリエステル繊維製メッシュに、上述の成分(A)および成分(B)(F)(G)(H)からなる感光性樹脂1をステンレス鋼製バケットを用いて塗工し、上記で作製したパターン形成用積層フィルムの感光性樹脂層側を貼り合わせた。実施例2で作製したパターン形成用積層フィルムは貼り合わせる直前に、保護層を剥がしてから感光性樹脂層側を貼り合わせた。40℃30分乾燥させた後、支持層を剥がした。実施例1、2、3で作製したパターン形成用積層フィルムは支持層を剥がす際に同時に糊層も剥がした。
【0116】
次に、パターンマスクを重ねて、真空引きし、光源として3kWのメタルハライドランプを用い、光源と版表面との距離1m、照射時間2分の条件で、感光性樹脂層を露光した。続いて、パターンマスクを取り除いた後、水道水を用いて樹脂層を現像した。これにより、スクリーン印刷版を得た。
実施例1、2、3においては現像前に非水溶性高分子層を除去してから現像をおこなった。
【0117】
表面タック性1
パターンマスクを重ね合わせたときのパターンマスクの位置合わせのし易さにより、A~Cで評価した。
A:パターンマスクをスムーズに動かすことができ、位置合わせがし易い。
B:パターンマスクをスムーズに動かすことができず、位置合わせがし難い。
C:パターンマスクが表面に張り付いてしまい、位置合わせができない。
【0118】
表面タック性2
真空露光した後のパターンマスクの剥がし易さにより、A~Cで評価した。
A:パターンマスクを剥がす際に抵抗なく、容易に剥がすことができた。
B:パターンマスクを剥がす際に抵抗があり、スムーズに剥がせなかった。
C:パターンマスクが表面に張り付いてしまい、表面の一部が破損してしまった。
【0119】
表面状態
現像後のスクリーン印刷版の表面状態により、○~×で評価した。
○:感光性樹脂層の表面に何も残っていない。
×:感光性樹脂層の表面に別の成分が残存している。
【0120】
評価結果を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
<実施例4>
パターン形成用積層フィルムの作製
支持層として厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その上にシリコーン系の粘着剤をバーコーターにより塗工し、100℃3分加熱乾燥することで、厚み5μmの糊層を形成した。さらに、その上に非水溶性の高分子からなる層として厚み12μmのポリオレフィンフィルムをラミネーターによって貼り合わせた。
続いて、上述の成分(E)および成分(F)(G)(H)からなる感光性樹脂2をバーコーターにより塗工し、40℃30分加熱乾燥することで、厚み30μmの感光性樹脂層を形成し、これによりパターン形成用積層フィルムを得た。
【0123】
<実施例5>
糊層にエチレン‐酢酸ビニル系エマルジョンタイプの粘着剤を使用した以外は実施例4と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0124】
<実施例6>
糊層にウレタン系粘着剤を使用した以外は実施例4と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0125】
<実施例7>
糊層にアクリル系粘着剤を使用した以外は実施例4と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0126】
<比較例4>
パターン形成用積層フィルムの作製
非水溶性の高分子からなる層として厚み25μmのポリエステルフィルムにシリコーン離型処理を片面に施した離型フィルムを使用した以外は実施例4と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。離型フィルムはシリコーン離型処理面を感光性樹脂層側に貼り合わせた。
【0127】
<比較例5>
支持層として厚み75μmのポリエステルフィルムにシリコーン離型処理を片面に施した離型フィルムを使用した以外は実施例5と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。離型フィルムはシリコーン離型処理面を糊層側に貼り合わせた。
【0128】
<比較例6>
非水溶性の高分子からなる層として厚み25μmのポリエステルフィルムに片面コロナ放電処理を施した易接着フィルムを使用した以外は実施例6と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。易接着フィルムはコロナ処理面を糊層側に貼り合わせた。
【0129】
<比較例7>
感光性樹脂層に上述の成分(A)および成分(B)(H)からなる感光性樹脂3を使用した以外は実施例7と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0130】
<評価方法2>
アルミニウム枠に固定したポリエステル繊維製メッシュに、各パターン形成用フィルムに使用した感光性樹脂をステンレス鋼製バケットを用いて塗工し、上記で作製したパターン形成用積層フィルムの感光性樹脂層側を貼り合わせた。40℃30分乾燥させて、試験版を得た。
25℃50%環境下に24時間保管した後、支持層にセロハンテープを貼り付け、上部へ引っ張るように剥がしたとき、界面1~3のどこで剥がれるかを確認した。
界面1 支持層/糊層
界面2 糊層/非水溶性高分子層
界面3 非水溶性高分子層/感光性樹脂層
○:界面2で剥がれ、非水溶性高分子層上に糊層が残留していない。
×:界面2以外で剥がれる。
【0131】
評価結果を下記表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
<実施例8>
パターン形成用積層フィルムの作製
支持層として厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その上にシリコーン系粘着剤をバーコーターにより塗工し、100℃3分加熱乾燥することで、厚み3μmの糊層を形成した。さらに、その上に非水溶性の高分子からなる層として厚み12μm、ヘイズ値0.3%のポリオレフィンフィルムをラミネーターによって貼り合わせた。
【0134】
続いて、上述の成分(A)および成分(B)(F)(G)からなる感光性樹脂4をバーコーターにより塗工し、40℃30分加熱乾燥することで、厚み15μmの感光性樹脂層を形成し、これによりパターン形成用積層フィルムを得た。
【0135】
さらに、アルミニウム枠に固定したステンレス繊維製メッシュに、各パターン形成用フィルムに使用した感光性樹脂をステンレス鋼製バケットを用いて塗工し、上記で作製したパターン形成用積層フィルムの感光性樹脂層側を貼り合わせた。40℃30分乾燥させて、支持層及び糊層を剥離した。
【0136】
次に、パターンマスクを、非水溶性高分子層に重ねて、真空引きし、光源として3kWのメタルハライドランプを用い、光源と版表面との距離1m、照射時間2分、3分、4分、5分の条件で、感光性樹脂層を露光した。
続いて、パターンマスクを取り除いた後、水道水を用いて樹脂層を現像した。これにより、スクリーン印刷版を得た。
【0137】
<実施例9>
非水溶性高分子層に厚み50μm、ヘイズ値1.0%の高透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した以外は実施例8と同様にしてスクリーン印刷版を得た。
【0138】
<実施例10>
感光性樹脂層に上述の成分(A)および成分(C)(D)からなる感光性樹脂5を使用した以外は実施例8と同様にしてスクリーン印刷版を得た。
【0139】
<比較例8>
非水溶性高分子層に厚み30μm、ヘイズ値6%のポリオレフィンフィルムを使用した以外は実施例8と同様にしてスクリーン印刷版を得た。
【0140】
<比較例9>
非水溶性高分子層に厚み25μm、ヘイズ値5.7%の汎用ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した以外は実施例8と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0141】
<比較例10>
非水溶性高分子層に厚み125μm、ヘイズ値1.5%のポリオレフィンフィルムを使用した以外は実施例10と同様にしてパターン形成用積層フィルムを作製した。
【0142】
<評価方法3>
得られたスクリーン印刷版のパターンを100倍ルーペで確認し、感度と解像性を決定した。
感度:ステップタブレット7段以上の最短露光時間を感度とした。
解像性:上記で決定した感度で解像したL/Sの最狭幅(μm)を解像性とした。
評価結果を下記表3に示す。
【0143】
【表3】
【符号の説明】
【0144】
1:パターン形成用積層フィルム、2:支持層、3:糊層、4:非水溶性高分子層、5感光性樹脂層、6:スクリーンメッシュ、7:枠材、8:第一の未感光のスクリーン印刷版、9:第二の未感光のスクリーン印刷版、1’:積層フィルム、10:パターンマスク、11:スクリーン印刷版
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F