(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160237
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】遠隔支援装置及び遠隔支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20221012BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
G06Q10/06 302
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064869
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 諒
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL09
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】遠隔支援のリクエストが見込まれる車両の運転資格を考慮して、当該遠隔支援の実施を待機するオペレータの人数を適切に確保することが可能な技術を提供する。
【解決手段】データ処理装置は、実施履歴データに基づいて、将来の単位時間帯における遠隔支援のリクエストの総見込み数を、車両の運転資格区分ごとに計算する。実施履歴データは、遠隔支援サービスが提供された単位時間帯のデータと、遠隔支援サービスが提供された車両の運転資格区分のデータと、を含む。データ処理装置は、また、総見込み数を上回る所定数を、将来の単位時間帯において遠隔支援サービスに従事するオペレータの総人数として設定する。データ処理装置は、更に、総人数と、車両の遠隔支援を行うオペレータが有する車両の運転資格区分と、に基づいて、将来の単位時間帯において遠隔支援の実施を待機するオペレータを決定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の遠隔支援サービスを提供する遠隔支援装置であって、
車両の遠隔支援を行うオペレータの識別データと、前記遠隔支援サービスの実施履歴データと、が格納されるデータベースと、
データ処理装置と、
を備え、
前記識別データは、前記オペレータが有する車両の運転資格区分のデータを含み、
前記実施履歴データは、前記遠隔支援サービスが提供された単位時間帯のデータと、前記遠隔支援サービスが提供された車両の運転資格区分のデータと、を含み、
前記データ処理装置は、
前記実施履歴データに基づいて、前記遠隔支援サービスを提供する将来の単位時間帯における前記遠隔支援のリクエストの総見込み数を、車両の運転資格区分ごとに計算し、
前記総見込み数を上回る所定数を、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援サービスに従事するオペレータの総人数として設定し、
前記総人数と、前記オペレータが有する車両の運転資格区分と、に基づいて、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援の実施を待機するオペレータを決定する
ことを特徴とする遠隔支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔支援装置であって、
前記実施履歴データは、前記遠隔支援サービスが提供されたエリア区分のデータを更に含み、
前記データ処理装置は、前記総見込み数の計算において、
前記実施履歴データに基づいて、前記将来の単位時間帯における前記遠隔支援のリクエストの見込み数をエリア区分ごとに計算し、
前記見込み数を合算して前記総見込み数を計算する
ことを特徴とする遠隔支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の遠隔支援装置であって、
前記実施履歴データは、前記遠隔支援サービスが提供されたエリア区分のデータと、前記エリア区分における気象区分のデータと、を更に含み、
前記データ処理装置は、前記総見込み数の計算において、
前記実施履歴データに基づいて、前記将来の単位時間帯において予測される前記遠隔支援のリクエストの見込み数をエリア区分と気象区分の組み合わせごとに計算し、
前記見込み数を合算して前記総見込み数を計算する
ことを特徴とする遠隔支援装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の遠隔支援装置であって、
前記将来の単位時間帯は、前記総見込み数の計算処理及び前記総人数の設定処理が行われる日を示す処理実施日の単位時間帯に対応して設定される、当該処理実施日の翌日の単位時間帯である
ことを特徴とする遠隔支援装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の遠隔支援装置であって、
前記将来の単位時間帯は、前記総見込み数の計算処理及び前記総人数の設定処理が行われる日を示す処理実施日の単位時間帯に対応して設定される、当該処理実施日と曜日が共通する翌週の日の単位時間帯である
ことを特徴とする遠隔支援装置。
【請求項6】
車両の遠隔支援サービスを提供する遠隔支援方法であって、
前記遠隔支援サービスが提供された単位時間帯のデータと、前記遠隔支援サービスが提供された車両の運転資格区分のデータと、を含む前記遠隔支援サービスの実施履歴データに基づいて、将来の単位時間帯における遠隔支援のリクエストの総見込み数を、車両の運転資格区分ごとに計算する処理と、
前記総見込み数を上回る所定数を、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援サービスに従事するオペレータの総人数として設定する処理と、
前記総人数と、車両の遠隔支援を行うオペレータが有する車両の運転資格区分と、に基づいて、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援の実施を待機するオペレータを決定する処理と、
を備えることを特徴とする遠隔支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の遠隔支援サービスを提供するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-77649号公報は、車両の遠隔支援サービスを提供するシステムを開示する。この従来のシステムは、車両の遠隔支援を行う管理施設を備えている。管理施設には、複数のオペレータが待機している。遠隔支援のリクエストを車両から受け付けた場合、管理施設は、オペレータのうちから、所定条件を満たすオペレータを選択する。所定条件には、直近の遠隔支援サービスを適正に行ったオペレータに該当すること、及び、熟練度及び覚醒度が基準値以上のオペレータに該当すること、が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-77649号公報
【特許文献2】特開2020-42764号公報
【特許文献3】特開2019-175209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムには、オペレータの需要数を予測する観点が欠けている。そのため、遠隔支援のリクエストが集中した場合、これらのリクエストの全てに応対するためのオペレータが不足する可能性がある。
【0005】
この点、管理施設で待機するオペレータの人数を増やせば、この問題が解消するかもしれない。しかしながら、オペレータの人数を増やせば、雇用コストがそれだけ増えるという別の問題が発生する。また、オペレータの人数を増やしたとしても、遠隔支援をリクエストした車両の運転資格をオペレータが有していなければ、遠隔支援サービスを提供することができない。
【0006】
本発明の1つの目的は、遠隔支援のリクエストが見込まれる車両の運転資格を考慮して、当該遠隔支援の実施を待機するオペレータの人数を適切に確保することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、車両の遠隔支援サービスを提供する遠隔支援装置であり、次の特徴を有する。
前記遠隔支援装置は、データベースと、データ処理装置と、を備える。前記データベースには、車両の遠隔支援を行うオペレータの識別データと、前記遠隔支援サービスの実施履歴データと、が格納される。
前記識別データは、前記オペレータが有する車両の運転資格区分のデータを含む。
前記実施履歴データは、前記遠隔支援サービスが提供された単位時間帯のデータと、前記遠隔支援サービスが提供された車両の運転資格区分のデータと、を含む。
前記データ処理装置は、
前記実施履歴データに基づいて、前記遠隔支援サービスを提供する将来の単位時間帯における前記遠隔支援のリクエストの総見込み数を、車両の運転資格区分ごとに計算し、
前記総見込み数を上回る所定数を、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援サービスに従事するオペレータの総人数として設定し、
前記総人数と、前記オペレータが有する車両の運転資格区分と、に基づいて、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援の実施を待機するオペレータを決定する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において更に次の特徴を有する。
前記実施履歴データは、前記遠隔支援サービスが提供されたエリア区分のデータを更に含む。
前記データ処理装置は、前記総見込み数の計算において、
前記実施履歴データに基づいて、前記将来の単位時間帯における前記遠隔支援のリクエストの見込み数をエリア区分ごとに計算し、
前記見込み数を合算して前記総見込み数を計算する。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において更に次の特徴を有する。
前記実施履歴データは、前記遠隔支援サービスが提供されたエリア区分のデータと、前記エリア区分における気象区分のデータと、を更に含む。
前記データ処理装置は、前記総見込み数の計算において、
前記実施履歴データに基づいて、前記将来の単位時間帯において予測される前記遠隔支援のリクエストの見込み数をエリア区分と気象区分の組み合わせごとに計算し、
前記見込み数を合算して前記総見込み数を計算する。
【0010】
第4の発明は、第1~3の発明において更に次の特徴を有する。
前記将来の単位時間帯は、前記総見込み数の計算処理及び前記総人数の設定処理が行われる日を示す処理実施日の単位時間帯に対応して設定される、当該処理実施日の翌日の単位時間帯である。
【0011】
第5の発明は、第1~3の発明において更に次の特徴を有する。
前記将来の単位時間帯は、前記総見込み数の計算処理及び前記総人数の設定処理が行われる日を示す処理実施日の単位時間帯に対応して設定される、当該処理実施日と曜日が共通する翌週の日の単位時間帯である。
【0012】
第6の発明は、車両の遠隔支援サービスを提供する遠隔支援方法であり、次の特徴を有する。
前記遠隔支援方法は、
前記遠隔支援サービスが提供された単位時間帯のデータと、前記遠隔支援サービスが提供された車両の運転資格区分のデータと、を含む前記遠隔支援サービスの実施履歴データに基づいて、将来の単位時間帯における遠隔支援のリクエストの総見込み数を、車両の運転資格区分ごとに計算する処理と、
前記総見込み数を上回る所定数を、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援サービスに従事するオペレータの総人数として設定する処理と、
前記総人数と、車両の遠隔支援を行うオペレータが有する車両の運転資格区分と、に基づいて、前記将来の単位時間帯において前記遠隔支援の実施を待機するオペレータを決定する処理と、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
第1又は6の発明によれば、将来の単位時間帯において遠隔支援の実施を待機するオペレータの人数を、オペレータが有する車両の運転資格区分を考慮して適切に設定することが可能になる。よって、将来の単位時間帯における遠隔支援のリクエストに応対するオペレータが不足するのを未然に防ぐことが可能となる。
【0014】
第2の発明によれば、遠隔支援サービスが提供されたエリア区分のデータが実施履歴データに含まれる場合においても、遠隔支援のリクエストの総見込み数を計算することが可能となる。
【0015】
第3の発明によれば、遠隔支援サービスが提供されたエリア区分のデータと、このエリア区分における気象区分のデータとが実施履歴データに含まれる場合においても、遠隔支援のリクエストの総見込み数を計算することが可能となる。
【0016】
第4の発明によれば、処理実施日の翌日の単位時間帯において遠隔支援の実施を待機するオペレータの人数を、オペレータが有する車両の運転資格区分を考慮して適切に設定することが可能になる。
【0017】
第5の発明によれば、処理実施日と曜日が共通する翌週の日の単位時間帯において遠隔支援の実施を待機するオペレータの人数を、オペレータが有する車両の運転資格区分を考慮して適切に設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1に示した遠隔支援装置の構成例を示す図である。
【
図5】実施履歴データの別の構成例を示す図である。
【
図6】将来の単位時間帯の一例を説明する図である。
【
図7】将来の単位時間帯の別の例を説明する図である。
【
図8】データ処理装置(プロセッサ)により行われる処理例の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る遠隔支援装置及び遠隔支援方法について説明する。なお、実施形態に係る遠隔支援方法は、実施形態に係る遠隔支援装置において行われるコンピュータ処理により実現される。また、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0020】
1.遠隔支援サービス
実施形態に係る遠隔支援装置は、車両の遠隔支援サービスを行うためのシステムの一部を構成する。
図1は、遠隔支援サービスの概念図である。
図1に示されるシステム1は、遠隔支援サービスの対象である車両2と、遠隔支援サービスを提供する遠隔支援装置3と、を備えている。車両2と遠隔支援装置3の間の通信は、ネットワーク4を介して行われる。この通信において、車両2から遠隔支援装置3へは、通信データCOM2が送信される。一方、遠隔支援装置3から車両2へは、通信データCOM3が送信される。
【0021】
車両2は、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関を動力源とする自動車、電動機を動力源とする電気自動車、内燃機関と電動機を備えるハイブリッド自動車である。電動機は、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池などの電池により駆動される。
【0022】
車両2は、車両2のドライバの操作により走行する。車両2の走行は、車両2に搭載された制御システムにより行われてもよい。この制御システムは、ドライバによる手動運転を支援する車両制御を行い、又は、自動運転を行うための車両制御を行う。前者は運転支援制御と総称され、後者は自動運転制御と総称される。ドライバ又は制御システムは、遠隔支援が必要であると判定した場合、遠隔支援装置3に対して遠隔支援のリクエスト信号RSを送信する。リクエスト信号RSは、通信データCOM2に含まれる。
【0023】
車両2は、カメラ21を備えている。カメラ21は、車両2の周辺環境の画像(動画)を撮影する。カメラ21は、車両2の少なくとも前方の画像を撮影するために、少なくとも1台設けられる。前方撮影用のカメラ21は、例えば、車両2のフロントガラスの背面に設けられる。カメラ21が取得した画像データIMGは、典型的には動画データである。ただし、画像データIMGは静止画像データであってもよい。画像データIMGは、通信データCOM2に含まれる。
【0024】
車両2は、また、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機22を備えている。GNSS受信機22は、3個以上の人工衛星からの信号を受信する。GNSS受信機22は、この受信信号に基づいて、車両2の位置及び姿勢データPOSを生成する。位置及び姿勢データPOSも、通信データCOM2に含まれる。
【0025】
遠隔支援装置3は、リクエスト信号RSを受け付けた場合、リクエスト信号RSを送信した車両2の走行を遠隔支援する。この遠隔支援は、遠隔施設に駐在するオペレータにより行われる。遠隔施設には2人以上のオペレータが駐在しており、車両2の遠隔支援を行うオペレータは、このうちの1人である。2人以上のオペレータから1人のオペレータを選び出す手法は特に限定されず、公知の手法が適用される。
図1に示されるオペレータ端末群31は、遠隔支援中にオペレータが操作する端末(以下、「オペレータ端末」とも称す。)の総称である。
【0026】
オペレータ端末は、例えば、ディスプレイと、入力装置と、データ処理装置と、を備えている。ディスプレイには、画像データIMGが表示される。オペレータは、ディスプレイに表示された画像データIMGに基づいて、車両2の周辺環境を把握し、車両2に対する支援指示を入力する。データ処理装置は、この支援指示に基づいて支援信号ASを生成し、車両2に送信する。この支援信号ASは、通信データCOM3に含まれる。
【0027】
オペレータによる遠隔支援としては、認識支援及び判断支援が例示される。ここで、車両2の制御システムにより自動運転制御が行われる場合を考える。車両2の前方に存在する信号機に日光が当たっている場合、信号機の発光部の灯火状態の認識の精度が低下する。灯火状態を認識することができない場合、どのような行動をどのタイミングで実行すべきか判断することも困難となる。このような場合、灯火状態の認識支援、及び/又は、オペレータが認識した灯火状態に基づいた車両2の行動の判断支援が行われる。
【0028】
オペレータによる遠隔支援には、遠隔運転も含まれる。遠隔運転において、オペレータは、ディスプレイに表示される画像データIMGを参考にして、操舵、加速、及び減速の少なくとも一つを含む車両2の運転操作を行う。この場合、支援信号ASは、車両2の運転操作の内容を示す信号を含む。車両2の制御システムは、支援信号ASに従って、操舵、加速、及び減速の少なくとも一つを含む車両2の運転操作を行う。
【0029】
2.遠隔支援装置
図2は、
図1に示した遠隔支援装置3の構成例を示す図である。
図2に示されるように、遠隔支援装置3は、オペレータ端末群31と、データベース32及び33と、通信装置34と、データ処理装置35と、を備えている。データ処理装置35と、オペレータ端末群31、データベース32及び33とは、専用のネットワークを介して接続されている。
【0030】
2-1.オペレータ端末群31
オペレータ端末群31は、オペレータごとに割り振られた2基以上のオペレータ端末を含んでいる。オペレータ端末の構成例については、
図1の説明において既に述べたとおりである。オペレータ端末は、データ処理装置25に支援信号ASを送信する。オペレータ端末は、データ処理装置25を経由せずに車両2に支援信号ASを直接送信してもよい。
【0031】
オペレータ端末は、データ処理装置25にオペレータのスケジュールデータSCHを送信する。スケジュールデータSCHには、オペレータが遠隔支援サービスに応対することが可能な将来の単位時間帯のデータが含まれている。スケジュールデータSCHは、オペレータ端末を経由せずにデータ処理装置25に送信されてもよい。即ち、スケジュールデータSCHは、オペレータ端末以外の端末(例えば、オペレータの一般業務用の端末)を経由してデータ処理装置24に送信されてもよい。
【0032】
2-2.データベース32
データベース32は、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)といった不揮発性の記憶媒体である。データベース32には、遠隔支援サービスの実施履歴データHISが格納されている。実施履歴データHISとしては、時間帯データTZNと、車両の運転資格区分データSGLとを組み合わせたデータが例示される。時間帯データTZNは、遠隔支援サービスが提供された単位時間帯TMのデータから構成される。運転資格区分データSGLは、遠隔支援サービスが提供された車両の運転資格区分(例えば、大型、中型、準中型及び普通)のデータから構成される。
【0033】
実施履歴データHISの別の例としては、上述した2種類のデータTZN及びSGLの組み合わせを、遠隔支援サービスが提供されたエリア区分データSGAと更に組み合わせたデータが例示される。エリア区分データSGAは、遠隔支援サービスが提供されたエリア区分ARのデータから構成される。
【0034】
図3は、実施履歴データHISを上述した3種類のデータTZN、SGL及びSGAの組み合わせにより構成したときのデータの構成例を示す図である。
図3には、単位時間帯TM1~TM12と、運転資格区分LS1~LS4と、を組み合わせたエリア区分AR1のデータテーブルが描かれている。単位時間帯TM1~TM12は、基準時間帯(例えば、24時間)を2時間刻みで分割することにより設定される。なお、基準時間帯及びこの分割数はこの例に限定されない。運転資格区分LS1~LS4は、遠隔支援サービスの対象として想定される車両の運転資格区分の例である。
【0035】
エリア区分AR1のデータテーブルと同様の構成のデータテーブルは、エリア区分AR2、AR3、・・・においても形成されている。エリア区分AR1、AR2、AR3、・・・は、遠隔支援サービスの対象として想定されるエリアを所定面積刻み(例えば、80km
2刻み)で分割することにより設定される。
図4は、エリア区分ARの設定例を示す図である。
図4に示される例では、遠隔支援サービスの対象として想定される地域RGがメッシュ状に分割され、これによりエリア区分AR1~AR24が設定されている。エリア区分AR1~AR24の各位置は、例えば、緯度及び経度により特定される。
【0036】
図4には、また、オペレータ端末群31A~31Dの担当エリアの例も示されている。担当エリアは、遠隔支援装置3が車両2からリクエスト信号RSを受け付けたときの当該車両2の位置に基づいて設定される。具体的に、車両2の位置がエリア区分AR1~AR6の場合、オペレータ端末群31Aの何れかの端末が当該車両2の遠隔支援を担当する。車両2の位置がエリア区分AR7~AR12の場合、オペレータ端末群31Bの何れかの端末が当該車両2の遠隔支援を担当する。なお、担当エリアの設定例はこの例に限られない。また、担当エリアは設定されなくてもよい。
【0037】
実施履歴データHISのまた別の例としては、上述した3種類のデータTZN、SGL及びSGAの組み合わせを、気象区分データと更に組み合わせたデータが例示される。気象区分データとしては、天候区分データSGW及び温度帯データSGTが例示される。天候区分データSGWは、天候区分SW(例えば、晴れ、曇、雨及び雪)のデータから構成される。温度帯データSGTは、単位温度帯TPのデータから構成される。
【0038】
図5は、実施履歴データHISを上述した5種類のデータTZN、SGL、SGA、SGW及びSGTの組み合わせにより構成したときのデータの構成例を示す図である。
図5には、
図3で説明したエリア区分AR1のデータテーブルと同様の構成のデータテーブルが描かれている。
図3の例とは異なり、
図5の例では、単位時間帯TM1~TM12と、運転資格区分LS1~LS4と、天候区分SW1と、単位温度帯TP1と、が組み合わされている。
【0039】
天候区分SW1~SW4は、天候区分SWの一例である。単位温度帯TP1~TP4は、単位温度帯TPの一例である。単位温度帯TP1~TP4は、基準温度帯(例えば、-5~35℃)を10℃刻みで分割することにより設定される。なお、基準温度帯及びこの分割数はこの例に限定されない。なお、
図5では省略されているが、エリア区分AR1のデータテーブルと同様の構成のデータテーブルは、エリア区分AR2、AR3、・・・においても形成されている。
【0040】
2-3.データベース33
図2に戻り、遠隔支援装置3の構成例の説明を続ける。データベース33は、フラッシュメモリやHDDといった不揮発性の記憶媒体である。データベース33には、オペレータの識別データIDOが格納されている。識別データIDOは、例えば、オペレータの識別番号のデータと、オペレータが有する車両の運転資格区分のデータと、を含んでいる。この運転資格区分は、
図3で説明した運転資格区分LS1~LS4に対応している。
【0041】
実施形態では、運転資格区分LS1が最上位の区分であり、運転資格区分LS4が最下位の区分であると仮定する。運転資格区分のランクは、オペレータが運転することのできる車両のランクを示している。即ち、最上位の区分LS1を有するオペレータは、相対的下位の区分LS2~LS4の車両も運転することができる。一方、最下位の区分LS4を有するオペレータは、相対的上位の区分LS1~LS3の車両を運転することができない。識別データIDOとして格納されるデータは、各オペレータが有する最上位の区分のデータである。
【0042】
2-4.通信装置34
通信装置34は、ネットワーク4の基地局との間で無線通信を行う。この無線通信の通信規格としては、4G、LTE、または5G等の移動体通信の規格が例示される。通信装置34の通信先には、車両2が含まれる。車両2との通信において、通信装置34は、データ処理装置35から受け取った支援信号ASを、車両2に送信する。通信装置34の通信先には、気象予報データのサーバが含まれていてもよい。このサーバとの通信において、通信装置34は、遠隔支援サービスの対象として想定されるエリアの気象予報データ(例えば、天候及び温度の予報データ)を受信してもよい。
【0043】
2-5.データ処理装置35
データ処理装置35は、各種データを処理するためのコンピュータである。データ処理装置35は、少なくとも1つのプロセッサ36と、少なくとも1つのメモリ37と、を備えている。プロセッサ36は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリ37は、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ36が使用するプログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。
【0044】
プロセッサ36は、将来の単位時間帯における遠隔支援のリクエストの総見込み数TNRを計算する処理を行う。プロセッサ36は、また、将来の単位時間帯において遠隔支援サービスに従事するオペレータの総人数TNAを設定する処理を行う。プロセッサ36は、更に、将来の単位時間帯における総人数TNOと、識別データIDOと、スケジュールデータSCHと、に基づいて、当該単位時間帯における待機信号WSを生成する。プロセッサ36が行う具体的な処理内容の例については後述される。
【0045】
ここで、「将来の単位時間帯」について説明する。
図6及び7は、将来の単位時間帯の一例を説明する図である。将来の単位時間帯は、総見込み数TNRの計算処理と、総人数TNOの設定処理と、を行う日(以下、「処理実施日」とも称す。)を基準として設定される。
図6には、処理実施日の単位時間帯TMの例として、単位時間帯TM(i)及びTM(j)が示されている。単位時間帯TM(i)は、処理実施日の午前に属している。時間帯TM(j)は、処理実施日の午後に属している。
図6に示される例において、将来の単位時間帯は、処理実施日の単位時間帯TM(i)及びTM(j)にそれぞれ対応する翌日の単位時間帯である。
【0046】
図6には、また、単位時間帯TM(i)における総見込み数TNRの計算処理及び総人数TNOの設定処理を行うタイミングPT(ia)及びPT(ib)の例が示されている。前者は、処理実施日の単位時間帯TM(i)よりも前のタイミングである。後者は、この単位時間帯TM(i)よりも後のタイミングである。処理実施日の単位時間帯TM(i)における実施履歴データHISは、当該単位時間帯TM(i)の経過後に取得される。そのため、処理実施日の実施履歴データHISを考慮する場合はタイミングPT(ib)において上記の処理が行われ、そうでない場合はタイミングPT(ia)において上記の処理が行われる。
【0047】
これと同様の理由により、処理実施日の実施履歴データHISを考慮する場合は、単位時間帯TM(j)における総見込み数TNRの計算処理及び総人数TNOの設定処理がタイミングPT(jb)において行われる。一方、そうでない場合は、単位時間帯TM(j)における総見込み数TNRの計算処理及び総人数TNOの設定処理が、タイミングPT(ja)において行われる。
【0048】
図7には、処理実施日の単位時間帯TMの例として、処理実施日が月曜日である例が示されている。将来の単位時間帯は、処理実施日の単位時間帯TM(i)及びTM(j)にそれぞれ対応し、かつ、処理実施日と曜日が共通する翌週の日(つまり、来週月曜日)の単位時間帯である。単位時間帯TM(i)及びTM(j)、タイミングPT(i)及びPT(j)などの説明については、
図6に示した例と同じである。
【0049】
メモリ37に保存される各種データには、予測モデルMDが含まれる。予測モデルMDは、総見込み数TNRを計算するための計算モデルである。予測モデルMDは、例えば、実施履歴データHISに含まれるデータをパラメータとする重回帰分析により特定される。予測モデルMDの特定処理は、総見込み数TNRの計算処理の実行の都度行われる。
【0050】
予測モデルMDの特定処理に用いられるパラメータの第1の例としては、運転資格区分データSGL及び時間帯データTZNが例示される。第2の例としては、運転資格区分データSGL、時間帯データTZN及びエリア区分データSGAが挙げられる。第3の例としては、運転資格区分データSGL、時間帯データTZN、エリア区分データSGA及び気象区分データ(即ち、天候区分データSGW及び温度帯データSGT)が挙げられる。
【0051】
3.データ処理装置による処理例
図8は、データ処理装置35(プロセッサ36)により行われる処理例の流れを示したフローチャートである。
図8に示されるルーチンは、例えば、所定の周期で繰り返し実行される。なお、所定の周期は、総見込み数TNRの計算処理及び総人数TNOの設定処理を行う周期に応じて、予め設定されている。
【0052】
図8に示されるルーチンでは、まず、各種データが取得される(ステップS11)。各種データとしては、実施履歴データHIS、識別データIDO及びスケジュールデータSCHが例示される。実施履歴データHISは、例えば、処理実施日以前のデータが抽出される。実施履歴データHISは、処理実施日当日のデータを含めて抽出されてもよい。スケジュールデータSCHは、例えば、処理実施日以降のデータが抽出される。オペレータ端末群31が細分化されている場合(
図4参照)、実施履歴データHIS、識別データIDO及びスケジュールデータSCHが担当エリアごとに抽出される。
【0053】
ステップS11の処理に続いて、総見込み数TNRが計算される(ステップS12)。総見込み数TNRの計算に際しては、予測モデルMDの特定処理が行われる。予測モデルMDの特定は、ステップS11において抽出された実施履歴データHISに含まれるデータをパラメータとする重解析分析を行うことにより行われる。
【0054】
このパラメータには、上述した第1~第3の例が含まれる。第1の例によれば、将来の単位時間帯を説明変数Xとし、この単位時間帯における運転資格区分SLごとの総見込み数TNRを目的変数Yとする予測モデルMDが特定される。第2の例によれば、将来の単位時間帯及びエリア区分ARを説明変数Xとし、この単位時間帯及びエリア区分ARにおける運転資格区分SLごとのリクエストの見込み数NRを目的変数Yとする予測モデルMDが特定される。第3の例によれば、将来の単位時間帯、エリア区分AR及び気象区分を説明変数Xとし、この単位時間帯、エリア区分AR及び気象区分における運転資格区分SLごとの見込み数NRを目的変数Yとする予測モデルMDが特定される。
【0055】
予測モデルMDが特定されたら、この予測モデルMDに説明変数Xを適用して目的変数Yが算出される。なお、上述した第3の例の予測モデルMDを用いる場合は、別途、将来の単位時間帯が属する日の気象予報データが取得され、エリア区分ARごとの気象区分(即ち、天候区分SW及び単位温度帯TP)が特定される。予測モデルMDに代入される説明変数Xには、特定された気象区分が用いられる。
【0056】
上述した第1の例の予測モデルMDによれば、目的変数Yとしての総見込み数TNRが直接的に算出される。一方、上述した第2の例の予測モデルMDによれば、エリア区分ARごとの見込み数NRが目的変数Yとして算出される。また、上述した第3の例の予測モデルMDによれば、エリア区分AR及び気象区分ごとの見込み数NRが目的変数Yとして算出される。そのため、上述した第2又は3の例の予測モデルMBを用いる場合は、目的変数Yとしての見込み数NRが合算される。これにより総見込み数TNRが算出される。
【0057】
ステップS12の処理に続いて、総人数TNOが設定される(ステップS13)。総人数TNOは、例えば、ステップS12の処理により算出された総見込み数TNRを上回る所定数(例えば、TNR+マージンα)に設定される。マージンαは、予備要員の数を表す。マージンαは、例えば、予備要員の雇用コストを考慮して設定される。
【0058】
ステップS13の処理に続いて、待機信号WSが生成及び出力される(ステップS14)。待機信号WSは、ステップS13の処理により設定された総人数TNOと、ステップS11の処理により取得された識別データIDO及びスケジュールデータSCHと、に基づいて生成される。オペレータ端末群31が細分化されている場合(
図4参照)は、担当エリアごとに抽出された識別データIDO及びスケジュールデータSCHに基づいて、待機信号WSが生成及び出力される。
【0059】
既に説明したように、識別データIDOには、オペレータが有する車両の運転資格区分のうちの最上位の区分のデータが含まれている。また、スケジュールデータSCHには、オペレータが遠隔支援サービスに応対することが可能な将来の単位時間帯のデータが含まれている。そのため、識別データIDO及びスケジュールデータSCHによれば、将来の単位時間帯において遠隔支援サービスに応対することが可能な総人数TNOを、運転資格区分ごとに把握することができる。
【0060】
待機信号WSの生成に際しては、最上位の運転資格区分から順にオペレータの割り当てが行われる。例えば、運転資格区分LS1の総人数TNOがNL1の場合を考える。この場合、最上位の区分が運転資格区分LS1である所定数(NL1+マージンβ)のオペレータが遠隔支援サービスに割り当てられる。マージンβは、予備要員の数を表す(β<α)。
【0061】
運転資格区分LS2の総人数TNOがNL2の場合を考える。この場合、最上位の区分が運転資格区分LS1又はLS2である所定数(NL2+マージンγ)のオペレータが遠隔支援サービスに割り当てられる。マージンγは、予備要員の数を表す(γ<α)。上述した割り当て手法は、運転資格区分LS3及びLS4にも適用される。
【0062】
上述した割り当てが行われることで、将来の単位時間帯において遠隔支援の実施を待機するオペレータが決定される。待機信号WSは、遠隔支援の実施を待機する必要がある将来の単位時間帯を示す信号である。待機信号WSは、上述した割り当てにより決定されたオペレータに割り振られたオペレータ端末に対して出力される。オペレータ端末以外の端末に待機信号WSが出力されてもよい。
【0063】
4.効果
実施形態によれば、運転資格区分LS及び単位時間帯TMのデータを含む実施履歴データHISに基づいて、将来の単位時間帯における遠隔支援のリクエストの総見込み数TNRが計算される。また、この総見込み数TNRに基づいて、将来の単位時間帯において遠隔支援サービスに割り当てられるオペレータの総人数TNOが設定される。そして、総人数TNOと、識別データIDOに含まれる運転資格区分とに基づいて、将来の単位時間帯において遠隔支援の実施を待機するオペレータが決定される。
【0064】
このように、実施形態によれば、将来の単位時間帯において遠隔支援の実施を待機するオペレータの人数を、識別データIDOに含まれる運転資格区分を考慮して適切に設定することが可能になる。よって、将来の単位時間帯における遠隔支援のリクエストに応対するオペレータが不足するのを未然に防ぐことが可能となる。このことは、遠隔支援サービスの利用の促進に繋がる。
【符号の説明】
【0065】
3 遠隔支援装置
31, 31A~31D オペレータ端末群
32,33 データベース
34 通信装置
35 データ処理装置
36 プロセッサ
37 メモリ
MO 予測モデル
AR、AR1~AR24 エリア区分
LS1~LS4 運転資格区分
TM1~TM12 単位時間帯
TP1~TP4 単位温度帯
WT1~WT3 天候区分
TZN 時間帯データ
HIS 実施履歴データ
IDO 識別データ
SGL 運転資格区分データ
SGA エリア区分データ