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特開2022-160272スタッド切除装置、及び、床版架け替え方法
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  • 特開-スタッド切除装置、及び、床版架け替え方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160272
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】スタッド切除装置、及び、床版架け替え方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20221012BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064921
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593184363
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
(72)【発明者】
【氏名】村岸 聖介
(72)【発明者】
【氏名】熊部 淳
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 浩太
(72)【発明者】
【氏名】藤永 大樹
(72)【発明者】
【氏名】梶原 英男
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059AA14
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】 鋼桁(形鋼)1上の床版の架け替え時などに、鋼桁1の表面から突出するスタッド3を好適に切除する。
【解決手段】 スタッド切除装置5は、鋼桁(形鋼)1の延在方向に移動可能で任意の位置で固定可能な架台10と、架台10に支持されて鋼桁1の延在方向と直角方向で鋼桁1の表面と平行に延びるレール20と、レール20に沿って移動可能な移動装置30、30(キャリッジ31及び自動送り装置32)と、移動装置30、30に支持された切断装置40、40と、を含む。切断装置40は、スタッド3が突出する形鋼1の表面に対し平行に近接配置されて回転駆動される円形回転刃42を有し、レール20に沿って送られて、スタッド3の根元部を切断する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形鋼の表面から突出するスタッドを切除する装置であって、
前記形鋼の延在方向に移動可能で任意の位置で固定可能な架台と、
前記架台に支持されて前記形鋼の延在方向と直角方向で前記表面と平行に延びるレールと、
前記レールに沿って移動可能な移動装置と、
前記移動装置に支持された切断装置と、
を含み、
前記切断装置は、前記スタッドが突出する前記形鋼の表面に対し平行に近接配置されて回転駆動される円形回転刃を有し、前記レールに沿って送られて、前記スタッドの根元部を切断することを特徴とする、スタッド切除装置。
【請求項2】
前記スタッドは、前記形鋼の延在方向における1つの位置に、前記形鋼の延在方向と直角方向に並べられて複数設けられていて、
前記移動装置及び前記切断装置は、一対設けられ、前記レールの両端から内側に向かって移動することを特徴とする、請求項1記載のスタッド切除装置。
【請求項3】
前記架台は、前記形鋼の延在方向に移動可能な走行ローラと、前記形鋼をワンタッチで挟持・解放可能なトグルクランプとを有することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のスタッド切除装置。
【請求項4】
前記移動装置は、送りモータと、該送りモータにより駆動されるピニオンギアとを有し、該ピニオンギアが前記レールに取付けられたラックギアに噛み合うことにより、前記レールに沿って移動することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のスタッド切除装置。
【請求項5】
前記移動装置と前記切断装置との間にあって伸縮可能で前記形鋼の表面に対する前記切断装置の位置を調整する位置調整装置を更に含むことを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載のスタッド切除装置。
【請求項6】
鋼桁上に設けられた床版を架け替える方法であって、
鋼桁上から既設床版を撤去した後、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載のスタッド切除装置を用いて、鋼桁上に残置されて表面から突出するスタッドを切除する工程と、
前記スタッドの切除後で、鋼桁上に新設床版を設置する前に、鋼桁上に新規にスタッドを溶接により植設する工程と、
を含む、床版架け替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形鋼の表面から突出するスタッドを切除するスタッド切除装置に関する。
本発明はまた、既設の橋梁などにおいて、鋼桁(形鋼)上の床版の架け替え(既設床版の撤去とこれに替わる新設床版の設置)を行う場合の、既設床版の撤去後に鋼桁上に残置されたスタッドの切除を含む、床版架け替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁は、例えば、複数の橋脚と、各々が複数の橋脚の上に跨がって橋軸方向に並列に延びる複数の鋼桁(例えばH形鋼又はI形鋼)と、橋軸直角方向に長く複数の鋼桁の上に跨がって配置されて橋軸方向に並べられるプレキャストコンクリート製の床版と、を含んで構成される。
【0003】
ここで、鋼桁の上面には、スタッド(スタッドジベル)が、鋼桁の延在方向に所定の間隔で、また各位置に鋼桁の延在方向と直角方向に並べて、複数本(例えば4本)ずつ植設されている。その一方、床版には、前記複数本のスタッドと対応する位置に長孔(上下方向の貫通孔)が形成されている。これは、鋼桁上に床版を設置して、前記複数本のスタッドを長孔内に位置させた後、長孔内にモルタルを充填することで、鋼桁と床版とを一体化するためである。
【0004】
かかる床版については、長年の使用によるコンクリートの劣化や内部の鉄筋の腐食などの理由で、架け替え(既設床版の撤去とこれに替わる新設床版の設置)が求められる場合がある。
【0005】
特許文献1には、床版架け替え方法について、特に、鋼桁上から既設床版を撤去した後、新設床版を設置する前に、ケレン装置を用いて、鋼桁の上面にケレン処理を施すことについて、記載されている。既設床版を撤去すると、鋼桁の上面にコンクリート片などの付着物が残留してしまうからである。
ケレン装置としては、手持ち式のグラインダー又はサンダーを利用し、これを組み込んで自走式の装置を構成している。
【0006】
また、既設床版が撤去された鋼桁上には、スタッドが残置される。
残置されたスタッドは疲労しているので、切除して、新しいスタッドを植設することが好ましい。スペースに余裕がある場合は、残置されたスタッドとは別の場所に新しいスタッドを植設してもよいが、残置されたスタッドが新設床版と干渉しないよう、根元部で切断する必要がある。
【0007】
このため、残置されたスタッドについては、作業者が手持ち式のカッター(円形回転刃を有する切断工具)を用いて、根元部で切断することにより、除去していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-176420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、切断工具を用いるとは言え、手作業によるスタッドの切除は、時間がかかり、また一人が1本ずつ行うため、多数のスタッドがある場合に、多大な時間を要することとなり、床版架け替え工事の遅延につながっていた。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑み、形鋼の表面から突出するスタッドを好適に切除することができる、スタッド切除装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスタッド切除装置は、形鋼の表面から突出するスタッドを切除するため、前記形鋼の延在方向に移動可能で任意の位置で固定可能な架台と、前記架台に支持されて前記形鋼の延在方向と直角方向で前記表面と平行に延びるレールと、前記レールに沿って移動可能な移動装置と、前記移動装置に支持された切断装置と、を含む。
そして、前記切断装置は、スタッドが突出する前記形鋼の表面に対し平行に近接配置されて回転駆動される円形回転刃を有し、前記レールに沿って送られて、前記スタッドの根元部を切断することを特徴とする。
【0012】
本発明はまた、鋼桁上に設けられた床版の架け替え方法を提供する。
本方法は、鋼桁上から既設床版を撤去した後、上記のスタッド切除装置を用いて、鋼桁上に残置されて表面から突出するスタッドを切除する工程と、前記スタッドの切除後で、鋼桁上に新設床版を設置する前に、鋼桁上に新規にスタッドを溶接により植設する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鋼桁などを構成する形鋼の表面から突出するスタッドを好適に切除することができる。
これにより、床版架け替え工事でのスタッド切除作業を効率良く行うことができ、工事の迅速な進行を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】床版架け替え対象の橋梁の例を示す概略図
図2】本発明の一実施形態として示すスタッド切除装置の正面図
図3】同上のスタッド切除装置の平面図
図4】同上のスタッド切除装置の右側面図
図5】スタッド切除の様子を示す平面図
図6】本発明の他の実施形態として示すスタッド切除装置の正面図
図7】同上他の実施形態でのスタッド切除装置の右側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は床版架け替え対象の橋梁の例を示す概略図で、(A)は正面縦断面図、(B)は平面図である。
【0016】
鋼桁1は、H形鋼(又はI形鋼)からなり、図示しない橋脚上に支持されて、複数本並列に、橋軸方向に延在している。
【0017】
床版2は、プレキャストコンクリート製で、橋軸直角方向に長く、複数の鋼桁1上(H形鋼の上側フランジ上)に跨がって配置される。1枚の床版2の橋軸方向の長さは2m程度であり、橋軸方向に並べられて、路床を構成する。
【0018】
ここで、鋼桁1上には、床版2との一体化のため、多数のスタッド(スタッドジベル)3が溶接により植設(溶植)されている。スタッド3は、例えば4本ずつ橋軸直角方向に一列に並べられ、これらが橋軸方向に所定の間隔で配置されている。
【0019】
その一方、床版2には、各4本のスタッド3と対応する位置に、上下方向に貫通する長孔4が形成されている。
従って、鋼桁1上に床版2を載置して、スタッド3を4本ずつ長孔4内に位置させた後、長孔4内にモルタルを充填することで、鋼桁1と床版2とを一体化することができる。
【0020】
上記のような床版架け替え対象の橋梁では、鋼桁1上から既設の床版2を撤去すると、鋼桁1上にスタッド3が残置される。
かかるスタッド3については、疲労しているので、切除して、新設の床版を設置する前に、新しいスタッドを溶植することが望ましい。スペースに余裕がある場合は、残置されたスタッド3とは別の場所に新しいスタッドを溶植してもよいが、残置されたスタッド3が新設の床版と干渉しないよう、突出長が2cm以下程度となるように、根元部で切断する必要がある。
【0021】
本発明では、上記のようなスタッド切除作業に好適に用いることができる、スタッド切除装置を提供する。
【0022】
図2は本発明の一実施形態として示すスタッド切除装置の鋼桁延在方向に見た正面図、図3は同上のスタッド切除装置の平面図、図4は同上のスタッド切除装置の右側面図である。また、図5はスタッド切除の様子を示す平面図で、図2のV-V矢視図に相当する。
【0023】
スタッド切除装置5は、既設の床版が撤去されて上面にスタッド3が残置された鋼桁1にセットされる。
【0024】
なお、本実施形態では、鋼桁1は、250mm×250mmのH形鋼とする。また、スタッド3は、鋼桁1上(H形鋼の上側フランジ上)に4本ずつ橋軸直角方向に一列に並べられ、これらが橋軸方向に200mm間隔で配置されているものとする。かかる寸法は理解を容易にするためであり、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0025】
スタッド切除装置5は、これを鋼桁1にセットするための架台10を含む。
架台10の本体は、図2に示されるように、正面視で(鋼桁1の延在方向に見て)天板11と左右の側板12、12とから下側開放のコ字状断面に形成されている。
【0026】
天板11は鋼桁1の上方に位置させる。
左右の側板12、12は、図4に示されるように、側面視で中央部に開口部13を有している。これは後述する切断装置40の通過部となる。
【0027】
左右の側板12、12には、それぞれを貫通させて、ロックナットにより軸方向位置を調整可能に、ボルト軸14、14が取付けられている。そして、各ボルト軸14の内側端部に、走行ローラ15が回転可能に取付けられている。これらの走行ローラ15は、外フランジ付きの車輪であって、鋼桁1の上面の左右の縁部に係合する。これにより、架台10が鋼桁1の延在方向に移動可能となっている。
【0028】
また、左右の側板12、12には、それぞれ下端部に、トグルクランプ16、16が取付けられている。各トグルクランプ16は、レバー部の内側への回動操作により、クランプ部16aが図示のごとく上方へ移動して、鋼桁1の上フランジを走行ローラ15とクランプ部16aとで挟持することにより、架台10を位置固定することができる。その一方、レバー部の外側への回動操作により、クランプ部16aが鋼桁1から離れて、位置固定を解除することができる。
【0029】
従って、架台10は、H形鋼からなる鋼桁1の延在方向に移動可能で、かつ任意の位置でワンタッチで固定可能である。
なお、トグルクランプ16としては、株式会社ミスミグループ本社製の「トグルクランプTDE41F」を使用した。
【0030】
スタッド切除装置5はまた、架台10に支持されて鋼桁1の延在方向と直角方向で鋼桁1の上面と平行に、架台10の両側方へ延びる断面角形のレール20を含む。
レール20を支持するため、架台10にはその天板11の中央部に支持板17が立設・支持されていて、レール20はその長手方向の中央部で支持板17に支持されて、支持板17の左右に延びている。
【0031】
そして、レール20の左右の下面には、それぞれ、レール20の長手方向に沿って、ラックギア22、22が取付けられている。
【0032】
スタッド切除装置5はまた、レール20の左右に、レール20に沿って移動可能な移動装置30、30と、これらの移動装置30、30に支持されて一体に移動可能な切断装置40、40とを含む。
【0033】
各移動装置30は、キャリッジ31と、自動送り装置32とを含む。
キャリッジ31は、断面中央部に角孔を有し、レール20に対し、摺動可能に取付けられている。
自動送り装置32は、キャリッジ31の側方に、適宜の取付部材を介して、取付けられている。
【0034】
自動送り装置32は、内蔵の送りモータ(図示せず)と、これによりウォームギア、ウォームホイール、減速歯車機構及びクラッチ機構を介して駆動されるピニオン軸33と、ピニオン軸33に取付けられてレール20のラックギア22と噛み合うピニオンギア34(図3参照)とを有している。
【0035】
従って、自動送り装置32は、内蔵の送りモータの作動により、ピニオンギア34がレール20のラックギア22に噛み合って、キャリッジ31と一体的にレール20に沿って移動することができる。なお、送りモータの負荷電流を検出し、これに基づいて送り量を制御することが望ましい。
【0036】
なお、自動送り装置32としては、市販の株式会社コンセック製の「自動送り装置EHAC-80A」を使用した。これは、コアドリルの自動送り装置(特開平10-296574号公報参照)であるが、転用することができる。
【0037】
各切断装置40は、移動装置30のキャリッジ31の下方に、適宜の取付部材を介して、取付けられている。
従って、自動送り装置32によるレール20に沿ったキャリッジ31の移動に伴わせて、切断装置40を送り動作することができる。
【0038】
各切断装置40は、キャリッジ31に取付けられる本体部41の先端に、図示しないモータにより駆動されて水平面内を回転する円形回転刃(チップソー)42を有していて、円形回転刃42の上面側は先端部を除きカバー43(図5参照)により覆われている。
なお、切断装置40としては、手持ち式の市販の株式会社IKK製の「ツライチカッターDEC-51」を使用した。
【0039】
次に、スタッド切除装置5によるスタッド3の切除の様子を主に図5を参照して説明する。
【0040】
図5(A)では、スタッド切除装置5(その架台10)は、鋼桁1上にその延在方向に直角方向に並べられている4本ずつのスタッド3の列を、左右一対の切断装置40、40(特にその円形回転刃42、42)が、列の両端から挟み込むような位置で、トグルクランプ16を用いて、固定されている。
【0041】
この状態から、移動装置30、30(自動送り装置32、32)を作動させて、切断装置40、40(円形回転刃42、42)を鋼桁1の上面上へ移動させる。
これにより、図5(B)のように、先ず、4本のスタッド3のうち、外側の2本がほぼ同時に根元部で切断され、除去される。
【0042】
そして更に自動送り装置32、32により切断装置40、40(円形回転刃42、42)を内側へ移動させることで、図5(C)のように、外側の2本に続き、内側の2本がほぼ同時に根元部で切断され、除去される。
このように左右から一度に2本ずつ切除することで、切除作業を効率良く、短時間で行うことができる。なお、スタッド3はまれに奇数(例えば3本)の場合もあるが、この場合でも、片側から3本切除するより、両側から2本と1本切除することで、短時間で切除できる。
【0043】
この後は、切断装置40、40の作動(円形回転刃42、42の回転)を停止させ、自動送り装置32、32を逆転させて、図5(D)のように、切断装置40、40(円形回転刃42、42)を鋼桁1上から待避させる。
【0044】
そして、トグルクランプ16による位置固定を解除して、スタッド切除装置5(その架台10)を、鋼桁1の延在方向に(すなわち図3及び図4のスタッド切除作業の進行方向に)、4本ずつのスタッド3のピッチ分を移動させ、再びトグルクランプ16を用いて位置固定する。
これにより、次の4本のスタッド3を切除可能となる。
【0045】
次に本発明の他の実施形態について図6及び図7により説明する。
図6は本発明の他の実施形態として示すスタッド切除装置の正面図、図7は同上他の実施形態でのスタッド切除装置の右側面図である。
なお、図1図3の実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略し、異なる要素について説明する。
【0046】
本実施形態では、移動装置30のキャリッジ31と切断装置40との間に、位置調整装置(ラボジャッキ)50が介装される。
従って、切断装置40は、移動装置30のキャリッジ31の下方に、位置調整装置50を介して取付けられる。
【0047】
位置調整装置50は、上側の取付板と下側の取付板との間に伸縮機構を有して、上下方向(高さ方向)に伸縮可能であり、これにより、鋼桁1の表面に対する切断装置40(円形回転刃42)の近接位置を調整することができる。
【0048】
なお、ここで用いる位置調整装置50は、「精密ラボジャッキ」と呼ばれ、研究や実験の際に機器や用品の高さを合わせるために使用する市販の道具である。高さの調整方法には、ラチェットハンドル式、ノブ式、ジャッキアップ式などがあり、リモートスイッチを備えた機種は、遠隔操作も可能である。
【0049】
このように、移動装置30(キャリッジ31)と切断装置40(円形回転刃42)との間にあって伸縮可能で鋼桁1の表面に対する切断装置40(円形回転刃42)の位置(近接位置)を調整する位置調整装置50を用いることにより、スタッド3の切除に際し、刃先が浮かないように、実質的に押付け力を発生させて、スタッド3をより根元部で切断でき、よりきれいに切除することができる。
【0050】
次に、既設の橋梁において、鋼桁(形鋼)上の床版の架け替え(既設床版の撤去とこれに替わる新設床版の設置)を行う場合の、既設床版の撤去後に鋼桁上に残置されたスタッドの切除を含む、床版架け替え方法について、工程順に、説明する。
【0051】
(1)既設床版撤去工程
既設の橋梁において、鋼桁上の床版の架け替えを行う際は、先ず、既設床版を鋼桁に対し縁切りした後、既設床版を撤去する。
【0052】
(2)スタッド切除工程
既設床版の縁切り・撤去後に、本発明に係るスタッド切除装置を用いて、鋼桁上に残置されて表面から突出するスタッド(既設スタッド)を切除する。
【0053】
(3)新設スタッド溶植工程
既設スタッドの切除後、鋼桁上に新規にスタッド(新設スタッド)を溶接により植設(溶植)する。
【0054】
(4)防錆剤塗布工程
新設スタッド溶植工程と前後して、鋼桁上面のケレン清掃を行い、また、角部については面取り処理を施した後、鋼桁上面に防錆剤を塗布する。
【0055】
(5)高さ調整工程
防錆剤の乾燥後、床版の高さを調整するための硬質ゴム、床版下の無収縮モルタルの漏れを止めるためのソールスポンジを設置する。
【0056】
(6)新設床版設置工程
新設床版を搬入し、架設する。なお、新設床版には、新設スタッドの列と対応する位置に上下方向に貫通する長孔が設けられており、新設スタッドを長孔内に位置させた後、長孔内にモルタルを充填することで、鋼桁と新設床版とを一体化する。
【0057】
なお、以上では主に床版架け替え工事における鋼桁(H形鋼又はI形鋼)からのスタッド切除について説明したが、本発明は、床版架け替え工事に限らず、またH形鋼やI形鋼に限らず、各種の形鋼からのスタッド切除に適用可能である。
【0058】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を概略的に例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 鋼桁(H形鋼)
2 床版
3 スタッド
4 長孔
5 スタッド切除装置
10 架台
11 天板
12 側板
13 開口部
14 ボルト軸
15 走行ローラ
16 トグルクランプ
16a クランプ部
17 支持板
20 レール
22 ラックギア
30 移動装置
31 キャリッジ
32 自動送り装置
33 ピニオン軸
34 ピニオンギア
40 切断装置
41 本体部
42 円形回転刃
43 カバー
50 位置調整装置(ラボジャッキ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7