(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160305
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】屋根材及び屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/365 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
E04D3/365 A
E04D3/365 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064969
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】分部 孝彦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108AS03
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN02
2E108CC02
2E108CC03
2E108DD05
2E108EE01
2E108FF01
2E108GG05
2E108GG09
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】横方向に隣接する屋根材を強固につなぐことができる屋根材及び屋根構造を提供する。
【解決手段】屋根材2の横方向の一端部に一方嵌合部3が形成され、一方嵌合部3とは反対側の端部に他方嵌合部4が形成される。一方嵌合部3は、ベース部31と、ベース部31において他方嵌合部4とは反対側の端部から延出し、ベース部31に被さる被さり位置に変位可能な折返部32とを有する。ベース部31には、水上側に隣接して配置される他の屋根材2が備える、ベース部31と同形状のベース部31が被さった状態で嵌合可能である。折返部32には、前記被さり位置に配された際に、他方嵌合部4とは反対側に隣接して配置される更に他の屋根材2が備える、他方嵌合部4と同一形状の他方嵌合部4が被さった状態で嵌合可能である。折返部32は、前記更に他の屋根材2の他方嵌合部4を引掛可能な掛止部324を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向の一端部に形成された一方嵌合部と、
前記横方向における前記一方嵌合部とは反対側の端部に形成された他方嵌合部とを備え、
前記一方嵌合部は、
ベース部と、
前記ベース部における前記他方嵌合部とは反対側の端部から延出し、前記ベース部に被さる被さり位置に変位可能な折返部とを有し、
前記ベース部には、水上側に隣接して配置される他の屋根材が備える、前記ベース部と同形状のベース部が被さった状態で嵌合可能であり、
前記折返部には、前記被さり位置に配された際に、前記他方嵌合部とは反対側に隣接して配置される更に他の屋根材が備える、前記他方嵌合部と同一形状の他方嵌合部が被さった状態で嵌合可能であり、
前記折返部は、
前記更に他の屋根材の前記他方嵌合部を引掛可能な掛止部を有する、
屋根材。
【請求項2】
本体と、
前記本体の水上側端から表面側に向かって延出した立上部と、
前記本体の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部とを有する、
請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
前記ベース部は、
表面側に向かって突出した突条を有し、
前記折返部は、
前記折返部が前記被さり位置に配された状態で前記突条に被さる被さり部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の屋根材。
【請求項4】
前記ベース部は、
前記突条の下端部から前記他方嵌合部とは反対側に向かって延出した下片を更に有し、
前記折返部は、
前記折返部が前記被さり位置に配された状態で、前記下片における前記他方嵌合部とは反対側の端部から前記他方嵌合部側に向かって延出し、前記下片の上に重なる上片を更に有し、
前記下片と前記上片とで、固定具によって屋根下地に固定される固定部が構成される、
請求項3に記載の屋根材。
【請求項5】
水下側屋根材と、
前記水下側屋根材の水上側に隣接する水上側屋根材と、
横方向において前記水下側屋根材と隣接する横屋根材とを備え、
前記水下側屋根材は、
前記水下側屋根材における前記横屋根材側の端部に形成された水下側嵌合部を有し、
前記水上側屋根材は、
水上側嵌合部を有し、
前記横屋根材は、
前記横屋根材における前記水下側屋根材側の端部に形成された横嵌合部を有し、
前記水下側嵌合部は、
ベース部を有し、
前記水上側嵌合部は、前記ベース部の水上側の端部に被さった状態で嵌合し、
前記水下側嵌合部は、
前記横方向と平行でかつ前記水下側屋根材から前記横屋根材に向かう方向を一方としたときに、前記ベース部における前記一方の端部から延出し、かつ、前記ベース部に被さった折返部を更に有し、
前記横嵌合部は、前記折返部に被さった状態で嵌合し、
前記折返部は、
前記横嵌合部が引っ掛かる掛止部を有する、
屋根構造。
【請求項6】
前記折返部は、前記水上側嵌合部に被さった、
請求項5に記載の屋根構造。
【請求項7】
前記水下側屋根材は、
水下側屋根材本体と、
前記水下側屋根材本体の水上側端から表面側に向かって延出した立上部とを有し、
前記水上側屋根材は、
水上側屋根材本体と、
前記水上側屋根材本体の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部とを有し、
前記立下部は、前記立上部の水下側に位置した、
請求項5又は請求項6に記載の屋根構造。
【請求項8】
前記ベース部は、
表面側に向かって突出した突条を有し、
前記折返部は、
前記突条に被さった被さり部を有する、
請求項5~7のいずれか1項に記載の屋根構造。
【請求項9】
前記ベース部は、
前記突条の下端部から前記一方に向かって延出した下片を更に有し、
前記折返部は、
前記下片における前記一方の端部から前記一方とは逆方向に向かって延出し、前記下片の上に重なった上片を更に有し、
前記被さり部は、前記上片における前記一方とは反対側の端部から延出し、
前記下片と前記上片とで構成された固定部が、この固定部を貫通する固定具によって屋根下地に固定された、
請求項8に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屋根材及び屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、山部と谷部が幅方向に交互に配列された波形形状の屋根板材が開示されている。この屋根板材は、水下側の端部を既に配設された他の屋根板材の水上側の端部に重ね合わせることで、他の屋根板材につなぎ合わされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した屋根板材は、横方向の一端部に形成された山部を横方向において隣接する他の屋根板材の山部に被せることで、他の屋根板材につなぐことができる。
【0005】
しかし、山部を他の屋根板材の山部に被せるだけでは、横方向に隣接する屋根板材同士を強固につなぐことが難しい。
【0006】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、横方向に隣接する屋根材を強固につなぐことができる屋根構造及び屋根材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る屋根材は、横方向の一端部に形成された一方嵌合部と、前記横方向における前記一方嵌合部とは反対側の端部に形成された他方嵌合部とを備える。前記一方嵌合部は、ベース部と、前記ベース部における前記他方嵌合部とは反対側の端部から延出し、前記ベース部に被さる被さり位置に変位可能な折返部とを有する。前記ベース部には、水上側に隣接して配置される他の屋根材が備える、前記ベース部と同形状のベース部が被さった状態で嵌合可能である。前記折返部には、前記被さり位置に配された際に、前記他方嵌合部とは反対側に隣接して配置される更に他の屋根材が備える、前記他方嵌合部と同一形状の他方嵌合部が被さった状態で嵌合可能である。前記折返部は、前記更に他の屋根材の前記他方嵌合部を引掛可能な掛止部を有する。
【0008】
また、本開示の一態様に係る屋根構造は、水下側屋根材と、前記水下側屋根材の水上側に隣接する水上側屋根材と、横方向において前記水下側屋根材と隣接する横屋根材とを備える。前記水下側屋根材は、前記水下側屋根材における前記横屋根材側の端部に形成された水下側嵌合部を有する。前記水上側屋根材は、水上側嵌合部を有する。前記横屋根材は、前記横屋根材における前記水下側屋根材側の端部に形成された横嵌合部を有する。前記水下側嵌合部は、ベース部を有する。前記水上側嵌合部は、前記ベース部の水上側の端部に被さった状態で嵌合する。前記水下側嵌合部は、前記横方向と平行でかつ前記水下側屋根材から前記横屋根材に向かう方向を一方としたときに、前記ベース部における前記一方の端部から延出し、かつ、前記ベース部に被さった折返部を更に有する。前記横嵌合部は、前記折返部に被さった状態で嵌合する。前記折返部は、前記横嵌合部が引っ掛かる掛止部を有する。
【発明の効果】
【0009】
前記一態様に係る屋根材及び屋根構造にあっては、横方向に隣接する屋根材同士を強固につなぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る屋根構造の一部切り欠き斜視断面図である。
【
図2】
図2は、同上の屋根構造が有する屋根材の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の屋根材の施工前の状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、屋根材及び屋根構造に関し、詳しくは、流れ方向及び横方向に並んだ状態で施工される屋根材及びこの屋根材を備えた屋根構造に関する。
【0012】
(1)実施形態
図1に本実施形態の屋根構造1を示す。なお、本実施形態の屋根構造1が適用される建築物は、住宅建築物、非住宅建築物又は複合建築物のいずれであってもよい。住宅建築物は、例えば、戸建住宅又は共同住宅等である。非住宅建築物は、例えば、店舗、倉庫、工場又は集会場等である。複合建築物は、住宅の用途に用いられる部分と、非住宅の用途に用いられる部分とを有した建築物である。
【0013】
屋根構造1は、屋根下地10と、複数の屋根材2とを備えている。屋根下地10は、複数の屋根材2の下地である。屋根下地10は、例えば、野地板11と、野地板11の上面に敷かれた下葺き材12とを有する。この場合、下葺き材12の上面が、屋根下地10の上面である。なお、屋根下地10は下葺き材12を有さなくてもよい。また、屋根下地10は野地板11を有するものに限定されず、例えば、複数の横架材等で構成されてもよい。また、屋根材2をリフォームに用いる場合、屋根下地10は、既設の屋根材で構成されてもよい。
【0014】
屋根下地10の上には、複数の屋根材2が、流れ方向及び横方向において並んだ状態で葺かれている。以下の屋根材2の説明では、特に記載する場合を除き、屋根材2が施工された状態について説明する。
【0015】
なお、本開示において「流れ方向」とは、屋根構造1が形成する屋根面において雨水が流れる方向であって、屋根面の勾配方向と平行でかつ水下側に向かう方向である。ここで、「屋根面」とは、屋根構造1によって形成される屋根の上面のうちの一面であって、一定の勾配を有する。例えば、屋根構造1が片流れ屋根を形成する場合、屋根構造1は、屋根面を一つだけ有する。例えば、屋根構造1が切妻屋根を形成する場合、屋根構造1は、二つの屋根面を有する。なお、屋根構造1は、三つ以上の屋根面を有してもよい。また、本開示において「横方向」とは、流れ方向と直交する水平方向を意味する。
【0016】
複数の屋根材2の各々は、形状及び大きさが同じである。なお、各屋根材2の形状及び大きさは、異なっていてもよい。
【0017】
図2~
図4に屋根材2を示す。なお、
図3は施工前の屋根材2を示しており、後述する折返部32はベース部31に被さっていない。折返部32は、屋根材2が施工された状態において、
図2及び
図4に示すようにベース部31の上に被さる。
【0018】
各屋根材2は、一枚の金属板を曲げ加工することで形成されており、例えば、プレス加工によって成型される。各屋根材2を構成する金属板は、例えば、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等である。
【0019】
図2~
図4に示すように、各屋根材2は、流れ方向の寸法が横方向の寸法よりも長尺に成型された部材であり、長手方向を有している。以下、屋根材2の流れ方向に沿った方向を、「長手方向」という。
【0020】
各屋根材2は、例えば、長手方向の寸法が2m以上4m以下であり、一つの屋根面において、流れ方向に二つ以上並んだ状態で施工される。なお、各屋根材2の長手方向の長さは、限定されない。
【0021】
各屋根材2は、屋根材2の横方向の一端部に形成された一方嵌合部3と、屋根材2の横方向の他端部(一方嵌合部3とは反対側の端部)に形成された他方嵌合部4とを有している。
【0022】
流れ方向に隣接する屋根材2同士は、水上側に位置する屋根材2の一方嵌合部3の水下側の端部が、水下側に位置する屋根材2の一方嵌合部3の水上側の端部に嵌合し、水上側に位置する屋根材2の他方嵌合部4の水下側の端部が、水下側に位置する屋根材2の他方嵌合部4の水上側の端部に嵌合した状態でつながっている。
【0023】
横方向に隣接する屋根材2同士は、
図5に示すように、一方の屋根材2の他方嵌合部4が、他方の屋根材2の一方嵌合部3に嵌合した状態で、つながっている。以下、
図1及び
図2に示すように、横方向と平行で、かつ、他方嵌合部4から一方嵌合部3に向かう方向を一方といい、横方向と平行で、かつ、一方嵌合部3から他方嵌合部4に向かう方向を他方向という。
【0024】
図2に示すように、屋根材2は、水下側の端部に形成された水下側段部25と、水上側の端部に形成された水上側段部26とを有している。屋根材2は、本体20、立下部21、段下部22、立上部23及び段上部24を有している。本体20、立下部21、段下部22、立上部23及び段上部24は、一体に形成されている。
【0025】
本体20は、屋根材2における水下側の端部と水上側の端部との間の部分を構成している。本体20の横方向の両端は、屋根材2の横方向の両端である。立下部21は、本体20の水下側端から裏面側に向かって延出している。なお、本開示における「裏面側」は、屋根下地10側を意味し、裏面と直交する方向だけでなく、裏面とは直交しない方向も含まれる。
【0026】
立下部21は、本体20の水下側端の全長にわたって形成されている。段下部22は、立下部21の下端から水下側に向かって延出している。段下部22は、立下部21の下端の全長にわたって形成されている。
【0027】
立上部23は、本体20の水上側端から表面側に向かって延出している。なお、本開示における「表面側」は、屋根下地10とは反対側を意味し、表面と直交する方向だけでなく、表面とは直交しない方向も含まれる。
【0028】
立上部23は、本体20の水上側端の全長にわたって形成されている。段上部24は、立上部23の上端から水上側に向かって延出している。段上部24は、立上部23の上端の全長にわたって形成されている。
【0029】
水下側段部25は、本体20の水下側の端部、立下部21及び段下部22で構成されており、階段状に形成されている。水上側段部26は、本体20の水上側の端部、立上部23及び段上部24で構成されており、階段状に形成されている。段下部22の水下側端は、屋根材2の水下側端である。段上部24の水上側端は、屋根材2の水上側端である。
【0030】
本体20、段下部22及び段上部24の各々は、長手方向と直交する断面形状が、長手方向の全長にわたって略同じである。
【0031】
各屋根材2は、例えば、立下部21と段下部22とで形成される水下側の角部と、立上部23と段上部24とで形成される水上側の角部とが、それぞれ水下側の屋根材2及び屋根下地10の上に、又は屋根下地10の上に接した状態で、屋根下地10上に載置される。
【0032】
屋根材2の水下側に他の屋根材2が施工されている場合、段下部22及び本体20の水下側の端部は、それぞれ、他の屋根材2の本体20の水上側の端部及び段上部24の上に重なる。また、立下部21は、他の屋根材2の立上部23の水下側に位置し、他の屋根材2の立上部23に対向する。
【0033】
立上部23は、水上側に隣接する他の屋根材2の立下部21が水上側に移動することを規制する。屋根材2を施工する作業者は、立下部21を、水下側に先に施工された他の屋根材2の立上部23の水下側に配置することで、屋根材2を他の屋根材2に対して位置合わせすることができる。立上部23は、本体20の表面に沿って水上側に逆流した雨水を堰き止める。このため、建築物の防水性が高まる。
【0034】
本体20、段下部22及び段上部24の各々は、屋根下地10の上面に沿った平板部200,220,240を有している。一方嵌合部3及び他方嵌合部4は、本体20の平板部200、段下部22の平板部220及び段上部24の平板部240を介してつながっている。
【0035】
一方嵌合部3は、
図3に示すベース部31を有している。ベース部31は、屋根材2の水下側端から水上側端にまでわたっている。
【0036】
ベース部31は、表面側に向かって突出した突条310を有している。突条310は、屋根材2の水下側端から水上側端に至るまで、長手方向と平行に延びている。突条310の長手方向と直交する断面形状は、表面側に突出するように曲がった山形である。突条310は、本体20の平板部200の上面、段下部22の平板部220の上面及び段上部24の平板部240の上面に沿って一方嵌合部3側に流れた雨水を堰き止める。このため、建築物の防水性を高めることができる。
【0037】
図4に示すように、突条310は、一対の側壁311,312を有している。一対の側壁311,312は、それぞれ、突条310の横方向の両側部分を構成し、上端部同士がつながっている。各側壁311,312は、下端に近い部分ほど突条310の横方向の外側に位置するように鉛直方向に対して傾斜している。以下、一対の側壁311,312のうち、一方(他方嵌合部4とは反対側)に位置する側壁311を一方側壁311といい、他方向(他方嵌合部4側)に位置する側壁312を他方側壁312という。
【0038】
図3に示すように、突条310は、本体20に対応する主部313と、段下部22に対応する水下側端部314と、段上部24に対応する水上側端部315とを有している。水下側端部314は、主部313の水下側に位置している。水上側端部315は、主部313の水上側に位置している。
【0039】
突条310の主部313、水下側端部314及び水上側端部315の各々は、長手方向と直交する断面の形状及び大きさが同じである。ただし、水下側端部314は本体20よりも一段下に位置する段下部22に形成されているため、主部313と水下側端部314との間には段差がある。また、水上側端部315は本体20よりも一段上に位置する段上部24に形成されているため、主部313と水上側端部315との間には段差がある。
【0040】
屋根材2の水下側に他の屋根材2が施工されている場合、水下側端部314及び主部313の水下側の端部は、それぞれ、他の屋根材2の主部313の水上側の端部及び水上側端部315に被さった状態で嵌合する。
図4に示すように、突条310は、一対の側壁311,312が下端に近い部分ほど横方向において突条310の外側に位置するように傾斜している。このため、作業者は、突条310を水下側の他の屋根材2の突条310に被せやすい。
【0041】
図3に示すように、ベース部31は、突条310の下端部から一方に延出した下片316を更に有している。下片316は、突条310の一方側壁311の下端部から一方(他方嵌合部4とは反対側)に向かって突出している。
【0042】
下片316は、突条310の長さ方向の全長にわたって形成されている。下片316は、本体20に対応する主部317と、段下部22に対応する水下側端部318と、段上部24に対応する水上側端部319とを有している。下片316の主部317と水下側端部318とは立下部21を介してつながっており、主部317と水下側端部318との間には、段差がある。下片316の主部317と水上側端部319とは立上部23を介してつながっており、主部317と水上側端部319との間には、段差がある。
【0043】
一方嵌合部3は、ベース部31における一方の端部から延出した折返部32を更に有している。折返部32は、下片316における一方の端部から延出している。折返部32は、長手方向において下片316の主部317の全長にわたって形成されている、もしくは主部317よりも短く形成されている。折返部32は、本体20にのみ形成されており、段下部22及び段上部24には形成されていない。
【0044】
図3に示す施工前の屋根材2にあっては、折返部32が下片316から表面側に向かって突出した非被さり位置に位置している。非被さり位置に配された折返部32は、下片316との境界部分を境にして他方に向かって曲げることで、
図2に示すように、当該屋根材2のベース部31に被さる被さり位置に変位可能である。折返部32は、被さり位置に位置した状態で、当該屋根材2のベース部31の主部313,317(
図3参照)の表面を覆い隠す。屋根材2の水上側に他の屋根材2が施工されている場合、折返部32は、当該折返部32を有する屋根材2の突条310の主部313に被さった、他の屋根材2の水下側端部314,318の表面も覆い隠す。
【0045】
折返部32は、下片316における一方の端部から他方に向かって延出して下片316の上に重なった上片325と、上片325における他方の端部から延出した被さり部320とを有している。
図3に示す施工前の屋根材2における上片325は、下片316における一方の端部から表面側に突出している。
【0046】
図2に示すように、一方嵌合部3は、下片316と上片325とで構成された固定部300を有している。屋根材2の水下側に他の屋根材2が施工されている場合、固定部300の水下側の端部は、他の屋根材2の下片316の水上側端部319を介して屋根下地10上に配置される。屋根材2の水上側に他の屋根材2が施工されている場合、固定部300の水上側の端部には、他の屋根材2の下片316の水下側端部318が載置される。
【0047】
固定部300は、固定部300を上下方向に貫通した複数の固定具13(
図5参照)によって屋根下地10に固定されている。これにより、各屋根材2は、屋根下地10に固定されている。各固定具13は、例えば、釘又はねじ等である。固定部300は、下片316と上片325とで構成されることで、2枚の板状部分が重なった二重板状に形成されている。このため、固定部300の変形に対する強度は高く、屋根材2を屋根下地10に強固に固定することができる。
【0048】
なお、固定具13は、固定部300において、水下側に隣接する他の屋根材2の下片316の水上側端部319と重なる部分又は水上側に隣接する他の屋根材2の下片316の水下側端部318と重なる部分を貫通して屋根下地10に固定されてもよい。この場合、他の屋根材2も、固定具13によって屋根下地10に固定される。また、複数の固定具13が通される前の固定部300には、
図2に示すように、複数の固定具13を通すための複数の固定具用孔301が予め形成されてもよいし、形成されなくてもよい。
【0049】
被さり部320は、上片325における他方の端部から表面側に突出している。被さり部320は、本体20の水下側端から水上側端に至るまで、長手方向と平行に連続して延びた突条である。被さり部320の長手方向と直交する断面形状は、表面側に突出するように曲がった山形である。被さり部320は、突条310の主部313に被さっている。
【0050】
図5に示すように、被さり部320は、天井部321及び一対の側壁部322,323を有している。天井部321は、当該天井部321を有する屋根材2の突条310の上方に位置している。天井部321は、本体20の平板部200と略平行な平板状に形成されている。天井部321の上面は、被さり部320の上面である。
【0051】
一対の側壁部322,323は、天井部321における横方向の両端部からそれぞれ裏面側に向かって延出している。一対の側壁部322,323の各々は、下端に近い部分ほど被さり部320の横方向における外側に位置するように、鉛直方向に対して傾斜している。以下、一対の側壁部322,323のうち、一方に位置する側壁部322を一方側壁部322といい、他方に位置する側壁部323を他方側壁部323という。
【0052】
一方側壁部322は、突条310の主部313の一方側壁311の表面に沿っている。上片325は、一方側壁部322の下端部から一方に延出している。他方側壁部323は、突条310の主部313の他方側壁312の他方に位置している。被さり部320の他方側壁部323から突条310の主部313の他方側壁312までの距離は、被さり部320の一方側壁部322から突条310の主部313の一方側壁311までの距離よりも長い。
【0053】
被さり部320は、掛止部324を更に有している。掛止部324は、他方側壁部323の下端部から突条310側(一方)に向かって延出している。掛止部324における一方の端は、自由端であり、突条310の主部313の他方側壁312の近傍に位置している又は他方側壁312に接している。掛止部324は、本体20の平板部200の表面側に隙間を介して位置している。なお、掛止部324の形状は限定されない。例えば、掛止部324は、他方側壁部323と、他方側壁部323の下端部から他方側壁部323に沿って上方に突出した部分とで構成されてもよい。また、他方側壁部323の下端部を自由端とし、この他方側壁部323の下端部を掛止部324としてもよい。
【0054】
被さり部320と突条310との間には、被さり部320の天井部321、他方側壁部323及び掛止部324並びに突条310の主部313における他方側壁312で囲まれた隙間14が形成されている。隙間14は、長手方向において被さり部320の全長にわたって形成されている。
【0055】
隙間14は、被さり部320と突条310との間の通気性を向上させる。また、隙間14は、突条310の主部313の他方側壁312と、被さり部320の他方側壁部323との間に至った雨水が、毛細管現象によって上昇することを抑制する。このため、この雨水が、突条310の主部313を乗り越え、固定具13が貫通した下片316に至ることが抑制され、建築物の防水性が高まる。
【0056】
図2に示すように、屋根材2の他方の端部には、表面側に向かって突出した他方嵌合部4が形成されている。他方嵌合部4は、屋根材2の水下側端から水上側端に至るまで、長手方向と平行に連続して延びている。他方嵌合部4は、表面側に突出するように曲がっている。他方嵌合部4は、本体20の平板部200の上面、段下部22の平板部220の上面及び段上部24の平板部240の上面に沿って他方嵌合部4側に流れた雨水を堰き止める。
【0057】
他方嵌合部4は、本体20に対応する主部40と、段下部22に対応する水下側端部41と、段上部24に対応する水上側端部42とを有している。水下側端部41は主部40の水下側に隣接し、水上側端部42は主部40の水上側に隣接している。主部40、水下側端部41及び水上側端部42は、長手方向と直交する断面の形状及び大きさが同じである。ただし、主部40と水下側端部41との間には段差があり、主部40と水上側端部42との間にも段差がある。
【0058】
屋根材2の水下側に他の屋根材2が施工されている場合、他方嵌合部4の水下側端部41は、他の屋根材2の他方嵌合部4の主部40の水上側の端部に被さった状態で嵌合する。また、この場合、他方嵌合部4の主部40の水下側の端部は、他の屋根材2の他方嵌合部4の水上側端部42に被さった状態で嵌合する。
【0059】
屋根材2の他方に他の屋根材2が施工されている場合、他方嵌合部4は、他の屋根材2の折返部32の被さり部320に被さった状態で嵌合し、他の屋根材2の一方嵌合部3の表面を覆い隠す。この場合、他方嵌合部4は、
図5に示すように、他の屋根材2の固定部300及びこの固定部300を貫通した各固定具13の頭部も覆い隠す。
【0060】
前述したように、
図2に示す他方嵌合部4の主部40、水下側端部41及び水上側端部42は、長手方向と直交する断面の形状及び大きさが同じである。このため、以下では、主部40について詳述し、水下側端部41及び水上側端部42の各々ついては、主部40と共通する要素に同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0061】
図4に示すように、他方嵌合部4の主部40は、天井部分43及び一対の側壁部分44,45を有している。天井部分43は、本体20の平板部200と略平行な平板状に形成されている。天井部分43の上面は、主部40の上面を構成する。
図5に示すように、屋根材2の他方に他の屋根材2が施工されている場合、天井部分43は、他の屋根材2の被さり部320の天井部321の表面側に位置する。
【0062】
一対の側壁部分44,45は、天井部分43における横方向の両端部からそれぞれ裏面側に向かって延出している。一対の側壁部分44,45の各々は、下端に近い部分ほど他方嵌合部4における横方向の外側に位置するように、鉛直方向に対して傾斜している。以下、一対の側壁部分44,45のうち、一方に位置する側壁部分44を一方側壁部分44といい、他方に位置する側壁部分45を他方側壁部分45という。
【0063】
屋根材2の他方に他の屋根材2が施工されている場合、他方嵌合部4の主部40の一方側壁部分44は、他の屋根材2の被さり部320の一方に隙間を介して位置する。また、この場合、他方嵌合部4の主部40の他方側壁部分45は、他の屋根材2の被さり部320の他方側壁部323の表面に沿う。
【0064】
他方嵌合部4の主部40は、引掛部分46を更に有している。引掛部分46は、他方側壁部分45の下端部から一方に延出している。引掛部分46における一方の端は、自由端である。
【0065】
屋根材2の水下側に他の屋根材2が施工されている場合、他方嵌合部4の水下側端部41の引掛部分46(
図2参照)及び主部40の水下側の端部の引掛部分46は、それぞれ他の屋根材2の他方嵌合部4の主部40の水上側の端部の引掛部分46の下面及び水上側端部42の引掛部分46の下面に引っ掛かることで、上方への移動が規制される。
【0066】
屋根材2の他方に他の屋根材2が施工されている場合、他方嵌合部4の主部40の引掛部分46は、他の屋根材2の被さり部320の掛止部324の下面に引っ掛かり、上方への移動が規制される。これにより、横方向に隣接する屋根材2同士は強固につながる。
【0067】
図1に示すように、複数の屋根材2のうち、水上側に他の屋根材2が隣接し、かつ、一方(他方嵌合部4とは反対側)に更に他の屋根材2が隣接する屋根材2を水下側屋根材2Aとする。また、水下側屋根材2Aの水上側に隣接する他の屋根材2を水上側屋根材2Bとし、水下側屋根材2Aの一方に隣接する更に他の屋根材2を横屋根材2Cとする。また、水下側屋根材2Aの一方(横屋根材2C側)の端部に形成された一方嵌合部3を水下側嵌合部3Aとし、水上側屋根材2Bの一方嵌合部3を水上側嵌合部3Bとし、横屋根材2Cの他方(水上側屋根材2B側)の端部に形成された他方嵌合部4を横嵌合部4Cとする。この場合、水上側嵌合部3Bのベース部31は、水下側嵌合部3Aのベース部31の水上側の端部に被さった状態で嵌合し、横嵌合部4Cは、水下側嵌合部3Aの折返部32に被さった状態で嵌合し、かつ、水下側嵌合部3Aの掛止部324に引っ掛かる(
図2、
図3及び
図5参照)。また、この場合、水下側嵌合部3Aの折返部32は、水上側嵌合部3Bのベース部31に被さる。
【0068】
また、水下側屋根材2Aの本体20を水下側屋根材本体20Aとし、水上側屋根材2Bの本体20を水上側屋根材本体20Bとする。この場合、水上側屋根材本体20Bの水下側端から裏面側に向かって延出した立下部21(
図2参照)は、水下側屋根材本体20Aの水上側端から表面側に向かって延出した立上部23(
図2参照)の水下側に位置する。
【0069】
図1に示すように、水上側屋根材2Bの他方嵌合部4とは反対側に隣接し、かつ、横屋根材2Cの水上側に隣接する屋根材2を第2の横屋根材2Dとする。この場合、水下側屋根材2A、水上側屋根材2B、横屋根材2C及び第2の横屋根材2Dは、例えば、以下に示すように屋根下地10上に施工される。
【0070】
水下側屋根材2A、水上側屋根材2B、横屋根材2C及び第2の横屋根材2Dは、この順序で、屋根下地10上に載置される。
【0071】
すなわち、作業者は、まず水下側屋根材2Aを、折返部32が非被さり位置(
図3参照)に配された状態で、屋根下地10上に載置する。次に作業者は、水上側屋根材2Bを、折返部32が非被さり位置(
図3参照)に配された状態で、水上側屋根材2Bの水下側の端部が水下側屋根材2Aの水上側の端部の上に重なるように、屋根下地10上に載置する。このとき、作業者は、水上側屋根材2Bの突条310の水下側端部314及び主部313の水下側の端部(
図3参照)を、それぞれ、水下側屋根材2Aの突条310の主部313の水上側の端部及び水上側端部315に被せて嵌合する。
【0072】
次に作業者は、水下側屋根材2Aの非被さり位置に配された折返部32を、
図4に示すように被さり位置まで変位させ、水下側屋根材2Aの被さり部320を水下側屋根材2Aの突条310の主部313及び水上側屋根材2Bの突条310の水下側端部314(
図3参照)に被せる。この後、作業者は、水下側屋根材2Aの固定部300を複数の固定具13(
図5参照)で屋根下地10に固定することで、水下側屋根材2Aを屋根下地10に固定する。
【0073】
次に作業者は、水下側屋根材2Aと同様に、水上側屋根材2Bの非被さり位置に配された折返部32を被さり位置まで変位させ、水上側屋根材2Bの被さり部320を水上側屋根材2Bの突条310の主部313に被せる。この後、作業者は、水上側屋根材2Bの固定部300を複数の固定具13で屋根下地10に固定することで、水上側屋根材2Bを屋根下地10に固定する。
【0074】
なお、水上側屋根材2Bの折返部32を被さり位置に変位させる作業は、水下側屋根材2Aの固定部300を屋根下地10に固定する前に行われてもよいし、水下側屋根材2Aの折返部32を被さり位置に変位させる前に行われてもよい。また、水上側屋根材2Bの固定部300を複数の固定具13で屋根下地10に固定する作業は、水下側屋根材2Aの固定部300を屋根下地10に固定する前に行われてもよいし、水下側屋根材2Aの折返部32を被さり位置に変位させる前に行われてもよい。
【0075】
次に作業者は、横屋根材2Cを、折返部32が非被さり位置(
図3参照)に配された状態で、横屋根材2Cの他方嵌合部4が水下側屋根材2Aの一方嵌合部3の上に重なるように、屋根下地10上に載置する。このとき、作業者は、横屋根材2Cの他方嵌合部4を水下側屋根材2Aの一方嵌合部3の折返部32及び水上側屋根材2Bの一方嵌合部3の折返部32に被せた状態で嵌合し、横屋根材2Cの他方嵌合部4の主部40の引掛部分46を水下側屋根材2Aの掛止部324に引っ掛け、横屋根材2Cの他方嵌合部4の水上側端部42の引掛部分46を水上側屋根材2Bの掛止部324に引っ掛ける。
【0076】
次に作業者は、第2の横屋根材2Dを、折返部32が非被さり位置(
図3参照)に配された状態で、第2の横屋根材2Dの水下側の端部が横屋根材2Cの水上側の端部の上に重なり、かつ、第2の横屋根材2Dの他方嵌合部4が水上側屋根材2Bの一方嵌合部3の上に重なるように、屋根下地10上に載置する。このとき、作業者は、第2の横屋根材2Dの他方嵌合部4を水上側屋根材2Bの一方嵌合部3の折返部32及び横屋根材2Cの他方嵌合部4に被せた状態で嵌合し、第2の横屋根材2Dの他方嵌合部4の主部40の引掛部分46を水上側屋根材2Bの掛止部324に引っ掛け、第2の横屋根材2Dの他方嵌合部4の水下側端部41の引掛部分46を横屋根材2Cの他方嵌合部4の水上側端部42の引掛部分46に引っ掛ける。また、このとき、作業者は、第2の横屋根材2Dの突条310の水下側端部314及び主部313の水下側の端部を、それぞれ、横屋根材2Cの突条310の主部313の水上側の端部及び水上側端部315に被せて嵌合する。
【0077】
次に作業者は、水下側屋根材2Aと同様に、横屋根材2Cの非被さり位置に配された折返部32を被さり位置まで変位させ、横屋根材2Cの被さり部320を横屋根材2Cの突条310の主部313及び第2の横屋根材2Dの突条310の水下側端部314に被せる。この後、作業者は、横屋根材2Cの固定部300を複数の固定具13で屋根下地10に固定することで、横屋根材2Cを屋根下地10に固定する。
【0078】
次に作業者は、横屋根材2Cと同様に、第2の横屋根材2Dの非被さり位置に配された折返部32を被さり位置まで変位させ、第2の横屋根材2Dの被さり部320を第2の横屋根材2Dの突条310の主部313に被せる。この後、作業者は、第2の横屋根材2Dの固定部300を複数の固定具13で屋根下地10に固定することで、第2の横屋根材2Dを屋根下地10に固定する。
【0079】
なお、第2の横屋根材2Dの折返部32を被さり位置に変位させる作業は、横屋根材2Cの固定部300を屋根下地10に固定する前に行われてもよいし、横屋根材2Cの折返部32を被さり位置に変位させる前に行われてもよい。また、第2の横屋根材2Dの折返部32を被さり位置に変位させる作業は、第2の横屋根材2Dが屋根下地10上に載置される前に行われてもよい。また、第2の横屋根材2Dの固定部300を複数の固定具13で屋根下地10に固定する作業は、横屋根材2Cの固定部300を屋根下地10に固定する前に行われてもよいし、横屋根材2Cの折返部32を被さり位置に変位させる前に行われてもよい。
【0080】
本実施形態の屋根材2の一方嵌合部3は、横方向に隣接する屋根材2の他方嵌合部4の引掛部分46が引っ掛かる掛止部324を有している。このため、横方向に隣接する屋根材2同士を強固につなぐことができる。
【0081】
また、屋根材2の一方嵌合部3は、横方向に隣接する他の屋根材2の他方嵌合部4が嵌合する折返部32とは別に、水上側に隣接する更に他の屋根材2のベース部31が嵌合可能なベース部31を有している。このため、ベース部31の断面形状を、折返部32の断面形状と比較してシンプルで、かつ、水上側に隣接する更に他の屋根材2のベース部31を表面側から被せやすい形状にすることができる。したがって、作業者は、流れ方向において隣接する屋根材2同士をつなぐ縦継ぎを容易に行うことができる。
【0082】
以上説明した実施形態の屋根構造1及び屋根材2の各要素の形状、大きさ及び材質、並びに屋根構造1及び屋根材2の施工方法等は、適宜変更可能である。
【0083】
(2)態様
以上説明した実施形態から明らかなように、第1の態様の屋根材2は、以下に示す構成を有する。屋根材2は、横方向の一端部に形成された一方嵌合部3と、前記横方向における一方嵌合部3とは反対側の端部に形成された他方嵌合部4とを備える。一方嵌合部3は、ベース部31と、ベース部31における他方嵌合部4とは反対側の端部から延出し、ベース部31に被さる被さり位置に変位可能な折返部32とを有する。ベース部31には、水上側に隣接して配置される他の屋根材2(水上側屋根材2B)が備える、ベース部31と同形状のベース部31が被さった状態で嵌合可能である。折返部32には、被さり位置に配された際に、他方嵌合部4とは反対側に隣接して配置される更に他の屋根材2(横屋根材2C)が備える、他方嵌合部4と同一形状の他方嵌合部4が被さった状態で嵌合可能である。折返部32は、前記更に他の屋根材2の他方嵌合部4を引掛可能な掛止部324を有する。
【0084】
この態様によれば、屋根材2の折返部32が有する掛止部324に、横方向に隣接する更に他の屋根材2の横嵌合部4Cを引っ掛けて、横方向に隣接する屋根材2同士を強固につなぐことができる。また、一方嵌合部3は、横方向に隣接する屋根材2が引っ掛かる折返部32とは別に、水上側の他の屋根材2のベース部31が嵌合するベース部31を有している。このため、ベース部31の断面形状を、水上側の他の屋根材2のベース部31を表面側から被せやすい形状にすることができ、作業者は、流れ方向に隣接する屋根材2同士を容易につなぐことが可能になる。
【0085】
第2の態様の屋根材2は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様の屋根材2は、本体20と、本体20の水上側端から表面側に向かって延出した立上部23と、本体20の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部21とを有する。
【0086】
この態様によれば、立上部23及び立下部21を利用して、流れ方向に並ぶ屋根材2の位置合わせを容易に行うことができる。また、本体20の表面に沿って水上側に逆流した雨水を立上部23によって堰き止め、建築物の防水性を高めることができる。
【0087】
第3の態様の屋根材2は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様の屋根材2は、以下に示す構成を有する。ベース部31は、表面側に向かって突出した突条310を有する。折返部32は、折返部32が前記被さり位置に配された状態で突条310に被さる被さり部320を有する。
【0088】
この様態によれば、突条310を利用して、一方の方向に吹き込む雨水を突条310によって堰き止め、建築物の防水性を高めることができる。
【0089】
第4の態様の屋根材2は、第3の態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様の屋根材2は、以下に示す構成を有する。ベース部31は、突条310の下端部から他方嵌合部4とは反対側に向かって延出した下片316を更に有する。折返部32は、折返部32が前記被さり位置に配された状態で、下片316における他方嵌合部4とは反対側の端部から他方嵌合部4側に向かって延出し、下片316の上に重なる上片325を更に有する。下片316と上片325とで、固定具13によって屋根下地10に固定される固定部300が構成される。
【0090】
この態様によれば、下片316と上片325とで構成された固定部300を固定具13によって屋根下地10に固定することができる。また、固定部300は2枚の板状部分が重なった二重板状に形成されているため、固定部300の変形に対する強度は高く、屋根材2を屋根下地10に強固に固定することができる。
【0091】
第5の態様の屋根構造1は、以下に示す構成を有する。屋根構造1は、水下側屋根材2Aと、水下側屋根材2Aの水上側に隣接する水上側屋根材2Bと、横方向において水下側屋根材2Aと隣接する横屋根材2Cとを備える。水下側屋根材2Aは、水下側屋根材2Aにおける横屋根材2C側の端部に形成された水下側嵌合部3Aを有する。水上側屋根材2Bは、水上側嵌合部3Bを有する。横屋根材2Cは、横屋根材2Cにおける水下側屋根材2A側の端部に形成された横嵌合部4Cを有する。水下側嵌合部3Aは、ベース部31を有する。水上側嵌合部3Bは、ベース部31の水上側の端部に被さった状態で嵌合する。水下側嵌合部3Aは、前記横方向と平行でかつ水下側屋根材2Aから横屋根材2Cに向かう方向を一方としたときに、ベース部31における前記一方の端部から延出し、かつ、ベース部31に被さった折返部32を更に有する。横嵌合部4Cは、折返部32に被さった状態で嵌合する。折返部32は、横嵌合部4Cが引っ掛かる掛止部324を有する。
【0092】
この態様によれば、水下側屋根材2Aの折返部32が有する掛止部324に、横屋根材2Cの横嵌合部4Cを引っ掛けて、水下側屋根材2Aと横屋根材2Cとを強固につなぐことができる。また、水下側屋根材2Aの水下側嵌合部3Aは、横嵌合部4Cを引っ掛ける折返部32とは別に、水上側屋根材2Bの水上側嵌合部3Bが嵌合するベース部31を有している。このため、ベース部31の断面形状を、水上側嵌合部3Bを表面側から被せやすい形状にすることができ、作業者は、水下側屋根材2Aと水上側屋根材2Bとを容易につなぐことが可能になる。
【0093】
第6の態様の屋根構造1は、第5の態様との組み合わせにより実現され得る。第6の態様の折返部32は、水上側嵌合部3Bに被さる。
【0094】
この態様では、折返部32が水上側嵌合部3Bの上方への移動を規制する。このため、水下側屋根材2Aと水上側屋根材2Bとを強固につなぐことができる。
【0095】
第7の態様の屋根構造1は、第5又は第6の態様との組み合わせにより実現され得る。第7の態様は、以下に示す構成を有する。水下側屋根材2Aは、水下側屋根材本体20Aと、水下側屋根材本体20Aの水上側端から表面側に向かって延出した立上部23とを有する。水上側屋根材2Bは、水上側屋根材本体20Bと、水上側屋根材本体20Bの水下側端から裏面側に向かって延出した立下部21とを有する。立下部21は、立上部23の水下側に位置する。
【0096】
この態様によれば、水上側屋根材2Bの水下側屋根材2Aに対する位置合わせを、立上部23及び立下部21を利用して容易に行うことができる。また、水下側屋根材本体20Aの表面に沿って水上側に逆流した雨水を立上部23によって堰き止め、建築物の防水性を高めることができる。
【0097】
第8の態様の屋根構造1は、第5~第7のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第8の態様は、以下に示す構成を有する。ベース部31は、表面側に向かって突出した突条310を有する。折返部32は、突条310に被さった被さり部320を有する。
【0098】
この様態によれば、突条310を利用して、一方の方向に吹き込む雨水を突条310によって堰き止め、建築物の防水性を高めることができる。
【0099】
第9の態様の屋根構造1は、第8の態様との組み合わせにより実現され得る。第9の態様は、以下に示す構成を有する。ベース部31は、突条310の下端部から前記一方に向かって延出した下片316を更に有する。折返部32は、下片316における前記一方の端部から前記一方とは逆方向に向かって延出し、下片316の上に重なった上片325を更に有する。被さり部320は、上片325における前記一方とは反対側の端部から延出する。下片316と上片325とで構成された固定部300が、固定部300を貫通する固定具13によって屋根下地10に固定される。
【0100】
この態様によれば、下片316と上片325とで構成された固定部300を固定具13によって屋根下地10に固定することができる。固定部300は2枚の板状部分が重なった二重板状に形成されているため、固定部300の変形に対する強度は高く、屋根材2を屋根下地10に強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 屋根構造
10 屋根下地
13 固定具
2 屋根材
2A 水下側屋根材
2B 水上側屋根材
2C 横屋根材
20 本体
20A 水下側屋根材本体
20B 水上側屋根材本体
21 立下部
23 立上部
3 一方嵌合部
3A 水下側嵌合部
3B 水上側嵌合部
300 固定部
31 ベース部
310 突条
316 下片
320 被さり部
32 折返部
324 掛止部
325 上片
4 他方嵌合部
4C 横嵌合部