(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160314
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】輻射パネルにおける配管接合構造及びその配管接合方法
(51)【国際特許分類】
F24D 3/10 20060101AFI20221012BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F24D3/10 M
F24F5/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064982
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 博光
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 栄徳
(72)【発明者】
【氏名】樋上 博幸
【テーマコード(参考)】
3L070
【Fターム(参考)】
3L070AA03
3L070BC03
3L070BC15
3L070BC20
3L070DD03
(57)【要約】
【課題】構成部材の削減が図れると共に、製造コストの削減が図れ、ヘッダー管と管部の接合を容易かつ確実にする、輻射パネルにおける配管接合構造及びその配管接合方法を提供する。
【解決手段】上下に対峙する一対のアルミニウム形材製の上部及び下部ヘッダー管6a,6bと、上部及び下部ヘッダー管6a,6bに接続される管部11と放熱フィンとを有するアルミニウム形材製の放熱体10とを具備する輻射パネルにおいて、上部及び下部ヘッダー管6a,6bの対向側面に管部挿入用孔60を設け、管部挿入用孔60内に環状のパッキン42を嵌挿し、管部11の上下端を、パッキン42及び管部挿入孔60を貫通するよう上部及び下部ヘッダー管6a,6b内に挿入し、上部及び下部ヘッダー管6a,6bを、輻射パネル1を構成する一対の縦枠2を介して連結する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に対峙する一対のアルミニウム形材製のヘッダー管と、上記両ヘッダー管に接続される管部と放熱フィンとを有するアルミニウム形材製の放熱体とを具備する輻射パネルにおける配管接合構造であって、
上記両ヘッダー管の対向側面に管部挿入用孔が設けられ、上記管部挿入用孔内に環状のパッキンが嵌挿され、上記管部の上下端が、上記パッキン及び上記管部挿入孔を貫通するよう上記両ヘッダー管内に挿入され、上記両ヘッダー管が、上記輻射パネルを構成する一対の縦枠を介して連結されている、
ことを特徴とする輻射パネルにおける配管接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の輻射パネルにおける配管接合構造において、
上記両ヘッダー管の少なくとも対向側面は平坦状に形成されている、ことを特徴とする輻射パネルにおける配管接合構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の輻射パネルにおける配管接合構造において、
上記パッキンの外面を覆うパッキン押えが、固定部材によって上記ヘッダー管に固定され、上記パッキン押えに設けられた孔部を介して上記管部が上記両ヘッダー管内に挿入されている、ことを特徴とする輻射パネルにおける配管接合構造。
【請求項4】
請求項1に記載の輻射パネルにおける配管接合構造において、
上記管部挿入用孔は、上記パッキンが嵌入される大径孔部と、上記管部が貫入される小径孔部とからなる段状に形成されている、ことを特徴とする輻射パネルにおける配管接合構造。
【請求項5】
請求項1に記載の輻射パネルにおける配管接合構造において、
上記両ヘッダー管における長手方向の端部が閉塞部材によって閉塞されると共に、上記縦枠を貫通するねじ部材によって固定されている、ことを特徴とする輻射パネルにおける配管接合構造。
【請求項6】
上下に対峙する一対のアルミニウム形材製のヘッダー管と、上記両ヘッダー管に接続される管部と放熱フィンとを有するアルミニウム形材製の放熱体とを具備する輻射パネルにおける配管接合方法であって、
上記両ヘッダー管の対向側面に、環状のパッキンの寸法に合わせた管部挿入用孔を穿設する工程と、
上記管部挿入用孔内に上記パッキンを嵌挿する工程と、
上記パッキンの外面を覆うパッキン押えを固定部材によって上記ヘッダー管に固定する工程と、
上記管部の上下端を、上記パッキン押えに設けられた孔部、上記パッキン及び上記管部挿入用孔に貫通するように上記両ヘッダー管内に挿入する工程と、
上記管部の上下端を上記両ヘッダー管内に挿入した状態で、上記両ヘッダー管を、上記輻射パネルを構成する一対の縦枠に固定する工程と、
を備えることを特徴とする輻射パネルにおける配管接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、輻射パネルにおける配管接合構造及びその配管接合方法に関するもので、更に詳細には、上下に対峙する一対のアルミニウム形材製のヘッダー管と、上記両ヘッダー管に接続される管部と放熱フィンとを有するアルミニウム形材製の放熱体とを具備する輻射パネルにおける配管接合構造及び接合方法に関するものある。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の輻射パネルとして、上下に対峙する上側配管(以下に、上部ヘッダー管という)と下側配管(以下に、下部ヘッダー管という)と、両ヘッダー管に接続される複数の冷暖房パイプ(管部)とを具備する冷暖房パネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輻射パネルは、上部ヘッダー管と下部ヘッダー管を、複数のヘッダー構成部品と、ヘッダー構成部品相互を環型シールが嵌装された継手と係止部品を用いて連接(接合)し、管部の上下端部を、環型シールと係止部品によって上部ヘッダー管と下部ヘッダー管に連接(接合)する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、上部ヘッダー管と下部ヘッダー管が、複数のヘッダー構成部品と、ヘッダー構成部品相互を連接するシールが嵌装された継手と係止部品とで構成されるため、構成部品数が嵩むと共に、部品製造コストが嵩む懸念がある。
【0006】
また、上部ヘッダー管及び下部ヘッダー管自体の接合と、上部ヘッダー管と下部ヘッダー管の間に接続される管部の接合作業において、構成部品相互の接合の位置合わせや位置ずれに伴う熱媒水漏れを無くすなどに細心な注意を要する懸念がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、構成部材の削減が図れると共に、製造コストの削減が図れ、ヘッダー管と管部の接合を容易かつ確実にする、輻射パネルにおける配管接合構造及びその配管接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、第1の発明は、上下に対峙する一対のアルミニウム形材製のヘッダー管と、上記両ヘッダー管に接続される管部と放熱フィンとを有するアルミニウム形材製の放熱体とを具備する輻射パネルにおける配管接合構造であって、上記両ヘッダー管の対向側面に管部挿入用孔が設けられ、上記管部挿入用孔内に環状のパッキンが嵌挿され、上記管部の上下端が、上記パッキン及び上記管部挿入孔を貫通するよう上記両ヘッダー管内に挿入され、上記両ヘッダー管が、上記輻射パネルを構成する一対の縦枠を介して連結されている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成することにより、アルミニウム形材製の両ヘッダー管の対向側面に設けられた管部挿入用孔内に嵌挿された環状のパッキンによって、管部と放熱フィンを有するアルミニウム形材製の放熱体の管部の上下端を、両ヘッダー管内に水密に挿入した状態で、両ヘッダー管を、輻射パネルを構成する一対の縦枠を介して連結してヘッダー管と放熱体の管部とを接合することができる。
【0010】
この発明において、上記両ヘッダー管の少なくとも対向側面は平坦状に形成されているのが好ましい(請求項2)。
このように構成することにより、ヘッダー管と管部の接合部を平面状にすることができ、ヘッダー管と管部との接合部の位置合わせを容易にすることができる。
【0011】
また、この発明において、上記パッキンの外面を覆うパッキン押えが、固定部材によって上記ヘッダー管に固定され、上記パッキン押えに設けられた孔部を介して上記管部が上記両ヘッダー管内に挿入されているのが好ましい(請求項3)。
【0012】
このように構成することにより、管部挿入用孔に嵌挿されたパッキンの位置ずれを抑制することができ、ヘッダー管と管部の接合部の水密を維持することができる。
【0013】
また、この発明において、上記管部挿入用孔は、上記パッキンが嵌入される大径孔部と、上記管部が貫入される小径孔部とからなる段状に形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0014】
このように構成することにより、管部挿入用孔内に嵌挿されるパッキンの位置ずれを抑制することができると共に、管部挿入用孔内を貫通する管部の位置ずれを抑制することができる。
【0015】
加えて、この発明において、上記両ヘッダー管における長手方向の端部が閉塞部材によって閉塞されると共に、上記縦枠を貫通するねじ部材によって固定されているのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このように構成することにより、ヘッダー管の両端開口部を確実に閉塞することができ、ヘッダー内に流入する熱媒体の圧力に対する強度を高めることができる。
【0017】
また、第2の発明は、上下に対峙する一対のアルミニウム形材製のヘッダー管と、上記両ヘッダー管に接続される管部と放熱フィンとを有するアルミニウム形材製の放熱体とを具備する輻射パネルにおける配管接合方法であって、 上記両ヘッダー管の対向側面に、環状のパッキンの寸法に合わせた管部挿入用孔を穿設する工程と、 上記管部挿入用孔内に上記パッキンを嵌挿する工程と、 上記パッキンの外面を覆うパッキン押えを固定部材によって上記ヘッダー管に固定する工程と、 上記管部の上下端を、上記パッキン押えに設けられた孔部、上記パッキン及び上記管部挿入用孔に貫通するように上記両ヘッダー管内に挿入する工程と、 上記管部の上下端を上記両ヘッダー管内に挿入した状態で、上記両ヘッダー管を、上記輻射パネルを構成する一対の縦枠に固定する工程と、を備えることを特徴とする(請求項6)。
【0018】
このように構成することにより、対峙する両ヘッダー管の対向側面に設けられた管部挿入用孔内にパッキンを確実に嵌挿することができ、管部の上下端を、両ヘッダー管内に水密に挿入した状態で、両ヘッダー管を、輻射パネルを構成する一対の縦枠を介して連結することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような顕著な効果が得られる。
【0020】
(1)請求項1,2に記載の発明によれば、アルミニウム形材製のヘッダー管に設けられた管部挿入用孔内に嵌挿されたパッキンによって、管部と放熱フィンを有するアルミニウム形材製の放熱体の管部の上下端を、両ヘッダー管内に水密に挿入した状態で接合することができる。したがって、構成部材の削減が図れると共に、製造コストの削減が図れ、ヘッダー管と管部の接合を容易かつ確実にすることができる。
【0021】
(2)請求項3に記載の発明によれば、管部挿入用孔に嵌挿されたパッキンの位置ずれを抑制することができ、ヘッダー管と管部の接合部の水密を維持することができるので、上記(1)に加えて、更にヘッダー管と管部の接合を容易かつ確実にすることができる。
【0022】
(3)請求項4に記載の発明によれば、管部挿入用孔内に嵌挿されるパッキンの位置ずれを抑制することができると共に、管部挿入用孔内を貫通する管部の位置ずれを抑制することができるので、上記(1)に加えて、更にヘッダー管と管部の接合を容易かつ確実にすることができる。
【0023】
(4)請求項5に記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更にヘッダー管の両端開口部を確実に閉塞することができ、ヘッダー内に流入する熱媒体の圧力に対する強度を高めることができる。
【0024】
(5)請求項6に記載の発明によれば、対峙する両ヘッダー管の対向側面に設けられた管部挿入用孔内にパッキンを確実に嵌挿することができ、管部の上下端を、両ヘッダー管内に水密に挿入した状態で、両ヘッダー管を、輻射パネルを構成する一対の縦枠を介して連結してヘッダー管と放熱体の管部とを接合することができる。したがって、ヘッダー管と管部の接合を容易かつ確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明に係る輻射パネルの一部を断面で示す正面図である。
【
図3】この発明における上部ヘッダー管及び下部ヘッダー管と管部の接合状態を示す概略背面図である。
【
図4】この発明における上部ヘッダー管及び下部ヘッダー管と管部の接合状態を示す要部断面図である。
【
図5】この発明における放熱体を示す断面図である。
【
図6】この発明における放熱体を示す断面斜視図である。
【
図8】
図7のIII-III線に沿う断面図である。
【
図9】この発明における上部ヘッダー管、環状パッキン、パッキン押え及び管部を示す分解斜視図である。
【
図11】この発明におけるヘッダー管と管部を接合する手順を示す断面図である。
【
図12】この発明におけるヘッダー管に閉塞部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図13】この発明におけるヘッダー管の端部を縦枠に固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
この発明に係る輻射パネル1は、体育館を含む屋内施設内の壁面に沿って配設され、熱源70から供給される熱媒体を内部に循環させて冷気や暖気を輻射させることにより屋内施設内の冷暖房に使用される。
【0028】
輻射パネル1は、
図1及び
図2に示すように、左右一対の縦枠2と、両縦枠2の上端に架設される上枠3と、両縦枠2の下部に架設される下枠4で形成された矩形状のパネル枠体5と、パネル枠体5内において、上下に対峙する一対の上部ヘッダー管6a,下部ヘッダー管6bと、上部ヘッダー管6aと下部ヘッダー管6bに接続される互いに平行な複数、例えば12列の放熱体10と、放熱体10に装着される防球部20とを具備する。放熱体10の背面部の上端部、下端部及び中間部は、両縦枠2に固定された断面中空矩形状の横桟7によって保持されている。また、複数の放熱体10の上下端は保持板17によって連結・保持されている(
図8参照)。なお、縦枠2、上枠3、下枠4、横桟7及び保持板17は、アルミニウム合金製部材にて形成されている。
ここでは、放熱体10が12列配置される場合について説明したが、放熱体10の数は輻射パネル1の幅寸法に合わせて任意に設定される。
【0029】
パネル枠体5の背面部には、表面に熱反射板8を有する断熱材9が取り付けられている。また、パネル枠体5内の背面側の放熱体10の下方位置に両縦枠2と断熱材9に固定される樋状のドレン30が配置されている。ドレン30の中央部の2箇所にはドレン管31が接続されている(
図1参照)。
【0030】
放熱体10は、
図5及び
図6に示すように、上部ヘッダー管6a,下部ヘッダー管6bに連通する管部11と、管部11の長手方向の側面から管部11に対して略直交状に延在する直状基部12と、直状基部12の両側面からそれぞれ互いに平行に突出する複数例えば左右にそれぞれ8個の放熱フィン13とを一体にしたアルミニウム合金製の押出形材にて形成されている。なお、放熱フィン13の数は左右に8個である必要はなく、任意の複数であってもよい。
【0031】
この場合、管部11の熱媒体の流通路には直状基部12の延長線上から流通路内に突出する一対のリブ11a,11bと、これと直交する方向に流通路内に突出する一対のリブ11c,11dが設けられている。このように、管部11の流通路内に互いに直交状に位置する二対のリブ11a,11b;11c,11dを設けることによって管部11の流通路内を流れる熱媒体の伝熱性能の向上が図れる。
【0032】
また、直状基部12の先端部には凸円弧状の膨隆突起12aが設けられている。放熱フィン13は直状基部12の肉厚より若干肉薄に形成されており、各放熱フィン13の先端部は肉厚に形成されている。また、管部11に直近の放熱フィン13と直状基部12との連結部14は肉厚となっており、直状基部12から放熱フィン13に向かって狭小のテーパーが設けられている。このように、管部11に直近の放熱フィン13と直状基部12の連結部14をその他の放熱フィン13と直状基部12の連結部より肉厚にし、放熱フィン13に向かって狭小のテーパーを設けることにより、管部11に直近の放熱フィン13の管部側の面が他の放熱フィン13より解放空間があるため、対流熱伝達率が他より大きくなり、バランス上連結部14を肉厚にして熱伝導をよくすることができる。また、各放熱フィン13の先端部を肉厚にすることにより、他の部分より対流熱伝達率がよい先端部からより多く熱移動させることができる。
【0033】
なお、先端側の放熱フィン13と管部11側の2番目の放熱フィン13と直状基部12との2箇所の連結部には断面狭隘円弧状のビスポケット15a,15bが直状基部12に関して点対称の位置に設けられている。なお、上記保持板17がビスポケット15a,15bにねじ結合されるビス17aによって固定される(
図8参照)。
【0034】
また、直状基部12の先端部に形成された膨隆突起12aに断熱部材である断熱ゴム21が嵌合されており、断熱ゴム21に防球部20が嵌合されている。この場合、断熱ゴム21は、
図5及び
図6に示すように、凸円弧状の膨隆突起12aに嵌合可能な狭隘円弧状に形成されている。
【0035】
防球部20は、断熱ゴム21の凸円弧状外周面に嵌合可能な凹円弧状嵌合部20aと、放熱体10の直状基部12の延長線上に位置する補強リブ20bを有する中空円筒状に形成されている。なお、補強リブ20bは少なくとも直状基部12の延長線上に設けられていればよく、更に補強リブを増やしてもよい。この防球部20は、アルミニウム合金製の押出形材にて形成されている。このように、防球部20を補強リブ20bを有する中空円筒状に形成することにより、防球部20を軽量にすると共に強度を持たせることができる。
【0036】
次に、放熱体10の管部11と上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bとの接続(接合)について、
図4、
図7ないし
図9を参照して、管部11と上部ヘッダー管6aの接続(接合)を代表して説明する。
【0037】
上部ヘッダー管6aは、円形の連通路6cを有し、下部ヘッダー管6bと対向する側面が平坦状の断面矩形状のアルミニウム製押出形材にて形成されており、上部ヘッダー管6aの底部には放熱体10の管部11が挿入可能な管部挿入用孔60が設けられている。この場合、管部挿入用孔60は、環状のパッキン42の寸法に合わせた形成されており、
図9に示すように、環状のパッキン42が嵌入される大径孔部61と、管部11が貫入される小径孔部62とを有する段状に形成されている。
【0038】
上記のように形成された管部挿入用孔60の大径孔部61内に環状パッキン42が嵌挿され、パッキン42の外面をパッキン押え43によって覆い、固定ねじ44によってパッキン押え43を上部ヘッダー管6aの対向面に固定することによってパッキン42が管部挿入用孔60の大径孔部61に固定される。これにより、パッキン42の位置ずれが抑制される。なお、パッキン押え43は、中央に管部11が貫通可能な孔部43aを有する矩形板状に形成されており、角部の4箇所には固定ねじ44の取付孔43bが穿設されている。なお、取付孔43bを貫通する固定ねじ44は上部ヘッダー管6aの対向面に設けられたねじ孔6dにねじ結合される。
【0039】
上部ヘッダー管6aの長手方向の両端開口部には閉塞部材40がねじ結合されており、両縦枠2に固定ねじ41によって固定されて連通路6cが塞がれた状態で固定されている。この場合、閉塞部材40は上部ヘッダー管6aの連通路6cの直径よりやや大径の円柱状に形成されており、外周には上部ヘッダー管6aの開口端にねじ結合される雄ねじ部40aを有し、外側面には六角穴40bが設けられている。この閉塞部材40は六角レンチ等の工具によって上部ヘッダー管6aの開口端部にねじ結合されて、上部ヘッダー管6aの開口端を閉塞している。
【0040】
一方、放熱体10の管部11の上下端には、上部ヘッダー管6aと下部ヘッダー管6bがそれぞれ収まるように切欠き段部16が設けられており、切欠き段部16の水平部に管部11が突出した状態に形成されている。この場合、切欠き段部16は、管部11に連結する直状基部12の管部11から離れた位置に設けられている。また、管部11の上下端は、上部ヘッダー管6a及び下部ヘッダー管6bに設けられた連通路6c内に突出する長さに切断され、開口端に狭小テーパーが設けられている。
【0041】
この突出した管部11を上部ヘッダー管6aに設けられた管部挿入用孔60にパッキン42を介して挿入することで、上部ヘッダー管6aと管部11とを接続(接合)することができる。なお、上部ヘッダー管6aの上部の2箇所に設けられた排気口に第3のエアー抜き弁53が設けられている。
【0042】
上記のように、両端が縦枠2と閉塞部材40によって固定される上部ヘッダー管6aに設けられた管部挿入用孔60内にパッキン42を介して管部11を挿入して接続(接合)することにより、上部ヘッダー管6aと管部11の接続(接合)を容易かつ強固にすることができる。すなわち、上部ヘッダー管6aの両端が縦枠2と閉塞部材40によって固定されているので、上部ヘッダー管6a内に流入する熱媒体の圧力に対しても十分に耐えることができ、かつ、上部ヘッダー管6aと管部11の接続にボルト、ナット等の連結部材を用いる必要がなく、容易に接続(接合)することができる。
【0043】
下部ヘッダー管6bは、上部ヘッダー管6aと同様な断面形状の第1ヘッダー管6b1と第2のヘッダー管6b2とを継手部材6eによって連結されており、管部11との接続も上部ヘッダー管6aと同様にして接続(接合)する。すなわち、下部ヘッダー管6bは、熱媒体の流入側空間6fを有する第1ヘッダー管6b1と、熱媒体の流出側空間6gを有する第2のヘッダー管6b2とを継手部材6eによって連結してなる。なお、継手部材6eは、第1のヘッダー管6b1と第2のヘッダー管6b2を抱持する断面コ字状に形成されており、継手部材6eの上部片6hには管部11が貫通可能なスリット6iが設けられている。この場合、第1ヘッダー管6b1と第2のヘッダー管6b2の一端は、縦枠2と閉塞部材(図示せず)によって固定され、他端の連結側端部は、それぞれ閉塞部材40によって閉塞されている(
図10参照)。
【0044】
なお、下部ヘッダー管6bの流入側空間6fに設けられた流入口には第1のエアー抜き弁51を介して供給配管61が接続されている。また、下部ヘッダー管6bの流出側空間6gに設けられた流出口には第2のエアー抜き弁52を介して排出配管62が接続されている。
【0045】
上記のように形成された下部ヘッダー管6bすなわち第1ヘッダー管6b1,第2のヘッダー管6b2に設けられた管部挿入用孔60内にパッキン42を介して管部11を挿入することにより、下部ヘッダー管6bと管部11の接続を容易かつ強固にすることができる。すなわち、下部ヘッダー管6b(第1ヘッダー管6b1,第2のヘッダー管6b2)の両端が縦枠2と閉塞部材40によって固定されているので、下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)内に流入する熱媒体の圧力に対しても十分に耐えることができ、かつ、下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)と管部11の接続にボルト、ナット等の連結部材を用いる必要がなく、容易に接続することができる。
【0046】
次に、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bと管部11の接合手順について、
図11ないし
図13を参照して説明する。ここでは、上部ヘッダー管6aと管部11の接合を代表として説明する。
【0047】
まず、上部ヘッダー管6aの下部ヘッダー管6bとの対向側面にパッキン42と管部11の寸法に合わせた管部挿入用孔60を形成する。すなわち、上部ヘッダー管6aの下部ヘッダー管6bとの対向側面にパッキン42が嵌入される大径孔部61と管部11が貫入される小径孔部62とからなる管部挿入用孔60を形成する(
図11(a)参照)。
【0048】
次に、管部挿入用孔60の大径孔部61内にパッキン42を嵌挿し(
図11(b)参照)、パッキン42の外面をパッキン押え43によって覆い、パッキン押え43に設けられた取付孔43bを貫通する固定ねじ44を上部ヘッダー管6aに設けられたねじ孔6dにねじ結合してパッキン押え43を上部ヘッダー管6aに固定する(
図11(c)参照)。
【0049】
管部挿入用孔60内にパッキン42を嵌挿し、パッキン42の外面をパッキン押え43によって押えて固定した状態にした後、管部11の上端を、パッキン押え43に設けられた孔部43a、パッキン42及び管部挿入用孔60の小径孔部62に貫通するように上部ヘッダー管6a内に挿入する(
図11(d)参照)。同様に、管部11の下端を下部ヘッダー管6bの管部挿入用孔60に挿入する。
【0050】
次に、管部11の上下端を両ヘッダー管6a,6b内に挿入した状態で、両ヘッダー管6a,6bを、輻射パネル1を構成する一対の縦枠2に固定する。この際、
図12に示すように、上部ヘッダー管6aの長手方向の開口端部に閉塞部材40をねじ結合して連通路6cを塞いでおく。なお、閉塞部材40の上部ヘッダー管6aの開口端部への取付は、上部ヘッダー管6a内に管部11を挿入する前後のいずれであってもよい。上部ヘッダー管6aの端部を縦枠2に固定する場合は、
図13に示すように、縦枠2を貫通する固定ねじ41を上部ヘッダー管6aの端部に設けられたねじ孔(図示せず)にねじ結合して、上部ヘッダー管6aの端部を縦枠2に固定する。これにより、上部ヘッダー管6aの連通路6cが閉塞部材40と縦枠2によって確実に閉塞される。
【0051】
上記のようにして、管部11の上下端を上部ヘッダー管6aと下部ヘッダー管6bの管部挿入用孔60内にパッキン42を介して挿入し、上部ヘッダー管6aと下部ヘッダー管6bの両端開口部を閉塞部材40によって閉塞した状態で、上部ヘッダー管6aと下部ヘッダー管6bの両端を一対の縦枠2に固定して連結する(
図4参照)。
【0052】
次に、輻射パネル1を用いた冷暖房システムの一例について、
図1を参照して説明する。ここでは、熱媒体として定常の温度が冷房に適した温度(例えば、12℃±5℃の液体、例えば不凍液(主成分がエチレングリコールで、防錆剤が含有され、水で薄めた23~40%の濃度の不凍液)あるいは純水を使用した場合について説明する。
【0053】
熱媒体の熱源70は、供給配管61に接続されており、液供給源71に開閉弁72を介して暖房時に水を加熱する熱交換器73とで構成されている。また、排出配管62は供給配管61の熱交換器73の一次側に接続されて循環経路が形成されている。この場合、排出配管62にはフィルタ74と循環ポンプ75が介設されている。
【0054】
上記のように構成される冷暖房システムにおいて、冷房時には、熱源70の液供給源71から供給される液(熱媒体)が輻射パネル1の下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)の流入側空間6f内に流入し、流入側空間6fに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて上部ヘッダー管6a内に流れる。上部ヘッダー管6a内に流れた液(熱媒体)は流出側空間6gに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて下部ヘッダー管6bの流出側空間6g内に流れる。
【0055】
液(熱媒体)が輻射パネル1の下部ヘッダー管6b(6b1)の流入側空間6fを介して放熱体10の管部11内を流れる際、第1のエアー抜き弁51によって液(熱媒体)中のエアーが除去され、上部ヘッダー管6a内に流れた液(熱媒体)中のエアーは第3のエアー抜き弁53によって除去され、そして下部ヘッダー管6b(6b2)の流出側空間6gから排出配管62に流れる液(熱媒体)中のエアーは第2のエアー抜き弁52によって除去される。
【0056】
したがって、エアーが除去された液(熱媒体)が流れる管部11から直状基部12及び複数の放熱フィン13によって輻射熱移動に対流を増幅させて輻射パネル1前面に放熱させることができる。なお、背面側に位置する管部11から背面側に放熱される輻射熱の熱損失を熱反射板8によって抑制することができる。これにより、床面から輻射パネル1の高さ、例えば2.5mの間に低温空気層が形成される。
【0057】
なお、下部ヘッダー管6b(6b2)の排出側空間6gから排出配管62に流れた液(熱媒体)はフィルタ74によって液(熱媒体)中の不純物が除去された状態で循環ポンプ75によって供給配管61側に流れて循環供給される。なお、液(熱媒体)を循環供給する際、液供給源71から液(熱媒体)を補充するようにしてもよい。
【0058】
なお、輻射パネル1を暖房用として使用する場合は、液供給源71から供給される液(熱媒体)を熱交換器73によって所定温度例えば40℃に加熱して温水を生成し、生成された温水(熱媒体)を上記と同様に輻射パネル1の下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)に流入することにより輻射パネル1を暖房用に使用することができる。
【0059】
すなわち、下部ヘッダー管6b(6b1)の流入側空間6f内に流入された温水(熱媒体)は、流入側空間6fに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて上部ヘッダー管6a内に流れる。上部ヘッダー管6a内に流れた温水(熱媒体)は流出側空間6gに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて下部ヘッダー管6b(6b2)の流出側空間6g内に流れる。この際、温水(熱媒体)中のエアーは第1~第3のエアー抜き弁51~53によって除去される。
【0060】
したがって、エアーが除去された温水(熱媒体)が流れる管部11から直状基部12及び複数の放熱フィン13によって輻射熱移動に対流を増幅させて輻射パネル1前面に放熱させることにより、床面から輻射パネル1の高さの間に暖房用空気層が形成される。
【0061】
上記のように構成される実施形態によれば、それぞれアルミニウム製押出形材にて形成される上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6b及び放熱体10を切断及び切削加工によって管部挿入用孔60と管部挿入用孔60に挿入される管部11を形成することができるので、構成部材の削減が図れると共に、製造コストの削減が図れる。
【0062】
また、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bに設けられた管部挿入用孔60内に嵌挿されたパッキン42をパッキン押え43によって位置ずれを抑制し、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bと管部11を水密にした状態で接合することができるので、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bと管部11の接合を容易かつ確実にすることができる。
【0063】
更に、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bにおける長手方向の端部が閉塞部材40によって閉塞されると共に、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bが一対の縦枠2によって固定されるので、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bの両端開口部を確実に閉塞することができ、上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6b内に流入する熱媒体の圧力に対する強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 輻射パネル
2 縦枠
6a 上部ヘッダー管
6b 下部ヘッダー管
6c 連通路
10 放熱体
11 管部
12 直状基部
13 放熱フィン
40 閉塞部材
41 固定ねじ
42 パッキン
43 パッキン押え
43a 孔部
44 固定ねじ
60 管部挿入用孔
61 大径孔部
62 小径孔部