(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160321
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】摺動部材および摺動体
(51)【国際特許分類】
F16C 33/20 20060101AFI20221012BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
F16C33/20 A
C08L27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064992
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】所 昌哉
(72)【発明者】
【氏名】川井 トオル
(72)【発明者】
【氏名】堀部 直樹
【テーマコード(参考)】
3J011
4J002
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011DA01
3J011JA01
3J011RA02
3J011RA03
3J011SA03
3J011SA05
3J011SA06
3J011SC12
4J002BD151
4J002DG029
4J002DG058
4J002DH047
4J002DJ036
4J002FD176
4J002FD177
4J002FD178
4J002FD179
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】グリス潤滑下及び油中において、より高い低摩擦性のPTFEベースの摺動部材および摺動体を提供する。
【解決手段】摺動部材において、ポリテトラフルオロエチレン樹脂をベースに焼成クレーが添加されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂をベースに焼成クレーが添加されている摺動部材。
【請求項2】
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂にさらに固体潤滑剤が添加されている、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
前記個体潤滑剤は、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、二流加モリブデンである、請求項2に記載の摺動部材。
【請求項4】
前記リン酸マグネシウムを12~16重量%、前記硫酸バリウムを13~19重量%、前記二流加モリブデンを4~6重量%、前記焼成クレーを1~4重量%を添加した、請求項3に記載の摺動部材。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂にさらに充填剤が添加され、前記充填剤は球状カーボン、ガラス球、カーボン繊維、グラファイト繊維、ガラス繊維、樹脂粉末、樹脂繊維、金属粉末、及び金属繊維から選択される少なくとも1種であって充填総量で10重量%以下を含有する請求項2乃至4のいずれか一に記載の摺動部材。
【請求項6】
基材上に、請求項1乃至5のいずれか一に記載の摺動部材を設けた摺動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材および摺動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(以降「PTFE」と略称する)は、自己潤滑性に優れ、摩擦係数が低く、更には、耐薬品性および耐熱性を有することから、自動車等の車両のステアリング機構における摺動部材等として広く使用されている。そして、最近は、PTFEをベースとした摺動部材が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近はグリス潤滑下及び油中において使用されるPTFEベースの摺動部材においては、より高い低摩擦性が求められている。
【0005】
本発明は、グリス潤滑下及び油中において、より高い低摩擦性のPTFEベースの摺動部材およびこれを用いた摺動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の摺動部材は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂をベースに焼成クレーが添加されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、グリス潤滑下及び油中において、より高い低摩擦性のPTFEベースの摺動部材およびこれを用いた摺動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る摺動体を示す図である。
【
図3】
図3は、摺動部材の実験結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、摺動部材の実験結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る摺動部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。実施形態は、グリス潤滑下において摺動体を車両に用いた例を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
例えば、自動車等の車両において、ステアリング機構の中で用いられる軸受のうち、すべり速度が低くグリス潤滑で使用されるすべり軸受が有る。この軸受は、例えば、ラック&ピニオン式パワーステアリングに取り付けられたサポートヨーク部分に使用され、低摩擦性が重視される。
【0011】
図1は第1実施形態に係る摺動体1を示す図である。
図1に示すように、摺動体1は、基材2と焼結層3と樹脂層4を有する。基材2は、摺動体1に機械的強度を与えるための層である。基材2は、裏金、または、裏金層と称される場合がある。基材2は、例えば、Fe合金、Cu、Cu合金などの金属板を用いることができる。
【0012】
また、焼結層3は、基材2上に、銅合金、例えば銅錫、銅鉛錫、リン青銅または鉄、銅、錫等の混合粉末を散布して焼結した層である。焼結層3は、多孔質層である。基材2上に焼結層3を備えた構成とすることで、樹脂層4と基材2との密着性向上の向上を図ることができる。
【0013】
また、樹脂層4は、PTFE5をベース(PTFE5を主たる樹脂成分)とし、PTFE5に焼成クレーを添加した摺動部材である。樹脂層4を構成する摺動部材については、
図2で後述する。摺動部材が焼結層3に含浸することで、基材2と摺動部材が強固に密着する。
【0014】
摺動体1は、摺動部材を構成する各原材料の混合物を焼結層3に含浸させた後に、350~420℃で焼成せしめることにより、基材2上に樹脂層4(摺動部材41)が形成される。基材2上の樹脂層4の厚さは、80~400μm、好ましくは120~250μmである。また、樹脂層4の表面は多孔質焼結層が露出していないことが好ましいが、露出していてもよい。
【0015】
なお、焼結層3は必須ではなく、例えば基材2上へショットブラスト等の粗面化処理を行い、その粗面化部分へ直接摺動部材を塗布してもよい。塗布法としては、スプレー、タンブリング、ロール転写、印刷等の手段が用いられる。塗布面の厚さは、好ましくは10~60μm、より好ましくは20~40μmである。また、基材2として鋼板を使用せず、金網を使用してもよい。金網の場合は、基本的に上記多孔質焼結層へ含浸する方法と同様である。
【0016】
次に、摺動部材について説明する。摺動部材41は、PTFE5に焼成クレー6が添加されている。第1実施形態では焼成クレー6の一例として焼成カオリンを用いた。焼成カオリンは、天然粘土鉱物であるカオリンを高温処理したものである。PTFE5に焼成クレー6を添加することにより、焼成クレーの吸油効果で油との濡れ性が向上する。油との濡れ性が向上すると、グリス潤滑下及び油中で潤滑油膜が発生し易くなり、低摩擦性が向上する。また低摩擦性が向上することで耐摩耗性も向上する。第1実施形態において、焼成クレー6の添加率は1vol%~15vol%が望ましい。
【0017】
PTFE5に焼成クレー6を添加した摺動部材41を用いて以下の実験を行い、油に対する摺動部材41の油接触角と、摩擦係数を測定した。摺動部材41は、PTFE5に焼成クレー6を含まない摺動部材(0)、PTFE5に焼成クレー6を5vol%添加した摺動部材(5)、PTFE5に焼成クレー6を15vol%添加した摺動部材(15)の3種類の摺動部材41を用いて、油接触角の計測実験、摩擦係数の計測実験を行った。
【0018】
実験の環境は次の通りである。油接触角の計測実験は、室温下で油(グリスの主成分であるハイコール)を0.2μLを摺動部材41の表面に滴下し、1秒後に接触角計を用いて油接触角測定を5回行った。また、摩擦係数の計測実験は、摺動部材41の表面をΦ8の鋼球を押し当てて滑らせて行った。押し当てる負荷を4.9Nとし、すべり速度3.0mm/s、すべり距離10mmとし、室温、グリス潤滑下で行った。その結果を
図3および
図4に示す。なお、実験結果において、油接触角が小さいほど摺動部材41と油との濡れ性が向上していることを示している。
【0019】
図3において、横軸が、摺動部材41におけるPTFE5へのクレーの添加量を示し、縦軸が、摺動部材41上に滴下した油の摺動部材41に対する油接触角を示す。
図3において、クレーの添加量が0%上の点のプロットが摺動部材(0)に対する油接触角を示し、クレーの添加量が5%上の点のプロットが摺動部材(5)に対する油接触角を示し、クレーの添加量が15%上の点のプロットが摺動部材(15)に対する油接触角を示す。
【0020】
図3に示すように、摺動部材(0)に対する油接触角より摺動部材(5)に対する油接触角が小さいことが分かる。すなわち、摺動部材(5)の方が摺動部材(0)より油に対する濡れ性が向上している。同様に、摺動部材(0)および摺動部材(5)に対する油接触角より摺動部材(15)に対する油接触角が小さいことが分かる。すなわち、摺動部材(15)の方が、摺動部材(0)および摺動部材(5)より油に対する濡れ性が向上している。
【0021】
以上の実験により、本出願の出願人は、PTFE5に焼成クレー6を5~15vol%添加した摺動部材41は、油に対する濡れ性を向上させることができることを発見した。
【0022】
具体的には、焼成クレーはクレーを高熱処理することにより得られるが、高熱処理により、活性化・多孔質化して吸油性が高くなる。このため、PTFE5に添加することにより、油との濡れ性が向上すると考えられる。油との濡れ性が向上すると、潤滑油膜が発生し易くなり、油潤滑下において、PTFE5の元来の低摩擦性に加え、油潤滑の効果で、更に低摩擦性が向上すると同時に、耐摩耗性も向上する。
【0023】
また
図4において、摺動部材(0)、摺動部材(5)、摺動部材(15)における油接触角を横軸とし、各油接触角に対する摩擦係数を縦軸とした。なお、
図4における摺動部材(0)、摺動部材(5)、摺動部材(15)の各油接触角(
図4にプロットした点)は、それぞれにおいて
図3でプロットした5回の実験結果の油接触角の平均値である。
図4に示すように、摺動部材(0)における摩擦係数は0.020~0.021間の値である。摺動部材(5)における摩擦係数は0.019~0.020間であって、0.020に近い値である。摺動部材(15)における摩擦係数は0.019~0.020間であって、0.019に近い値である。
【0024】
このように、摺動部材(5)は、摺動部材(0)よりも濡れ性が向上し、摩擦係数も摺動部材(0)より小さくなる。また、摺動部材(15)は、摺動部材(0)および摺動部材(5)よりも濡れ性がより向上し摩擦係数も摺動部材(0)および摺動部材(5)より小さくなる。濡れ性が良い方が、油が摩擦面に残り易く、油の摩擦力を下げる効果がより発揮されるためと考えられる。
【0025】
このように、第1実施形態の摺動部材41は、PTFE5をベースに焼成クレー6が添加された構成を備える。このような第1実施形態の摺動部材41は、濡れ性を向上させることができるため、油が有る場合は、摺動部材41の摩擦係数を、焼成クレー6が添加されない場合よりも小さくすることができる。そのため、より高い低摩擦性のPTFEベースの摺動部材41を提供することができる。
【0026】
また、基材2上の焼結層3に、第1実施形態の摺動部材41を含浸させた摺動体1においても、摩擦係数を小さくすることができる。そのため、より高い低摩擦性の摺動体1を提供することができる。
【0027】
また、第1実施形態の摺動部材41および摺動体1は、焼成クレー6を添加したことにより耐摩耗性も向上する。
【0028】
(第2実施形態)
ここからは、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同等の構成については第1実施形態と同じ参照符号を付し、説明を簡略化または省略する。第2実施形態における樹脂層4は、摺動部材42を備える。摺動部材42は、PTFE5、焼成クレー6に加え、固体潤滑剤7が添加されている。PTFE5は、第1実施形態と同一の構成を有する。固体潤滑剤7は、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン等が好ましい。第2実施形態において固体潤滑剤7を添加するのは、第1実施形態から更に、低摩擦性、耐摩耗性、耐焼付性のバランスを調整するためである。また、第2実施形態の摺動体1は、摺動部材42を備える。
【0029】
また、摺動部材42に添加される個体潤滑剤7には、好ましくはリン酸マグネシウム12~16重量%、硫酸バリウム13~19重量%、二硫化モリブデン4~6重量%の割合で含まれる。
【0030】
摺動部材42に添加される焼成クレー6は好ましくは1~4重量%の割合で含まれる。
【0031】
また、摺動部材42には、球状カーボン、ガラス球、カーボン繊維、グラファイト繊維、ガラス繊維、樹脂粉末、樹脂繊維、金属粉末、及び金属繊維から選択される少なくとも1種の充填材が10vol%以下添加されていてもよい。このような充填材を添加することにより、充填材の種類に応じて、摺動材料の強度、耐摩耗性等が向上する。
【0032】
摺動部材42中のPTFE5の量は、摺動部材42から固体潤滑剤7と充填材の量(充填材が入っている場合)を差引いた残りの量であり、好ましくは40~95重量%、更に好ましくは56~66重量%である。
【0033】
第2実施形態の摺動体1は、基材2上に樹脂層4が形成されて製造される。基材2は第1実施形態と同様の素材が使用される。また、樹脂層4の生成方法も第1実施形態と同様である。そして、樹脂層4の厚み、露出程度も第1実施形態と同様である。また、第1実施形態と同様に、鋼板上へショットブラスト等の粗面化処理を行い、その粗面化部分へ直接樹脂層4を塗布してもよい。塗布法および塗布面の厚さは、第1実施形態と同様である。
【0034】
ここからは、第2実施形態における実施例1~実施例5について説明する。各実施例で用いた摺動部材42に含まれる原材料は次の通りである。PTFE(平均粒径350~550μm)、リン酸マグネシウム(粒径200メッシュアンダー)、硫酸バリウム(平均粒径8~12μm)、二硫化モリブデン(平均粒径0.5~2.5μm)、焼成クレー(粒径325メッシュアンダー)。
【0035】
(実施例1)
基材2の表面をサンディング処理した後、脱脂した裏金鋼板上へりん青銅粉末を散布し、その後、920~950℃で焼結を行い、厚さ0.1~0.2mmの焼結層3を形成した(ここまでは実施例2~実施例5も同様)。一方、摺動部材42として、PTFE5に、リン酸マグネシウム15.6重量%、硫酸バリウム13.0重量%、二硫化モリブデン6.0重量%、焼成クレー3.1重量%を添加した原材料混合物を焼結層3上にロールで含浸被覆し、その後、350~420℃まで温度を上げて試料を得た。これらの試料の被覆の厚さ(焼結層3より上の部分)は、0.01~0.06mmであった。
【0036】
(実施例2)
摺動部材42として、PTFE5に、リン酸マグネシウム12.5重量%、硫酸バリウム16.1重量%、二硫化モリブデン4.1重量%、焼成クレー1.3重量%を添加して、焼結層3上にロールで含浸被覆し、その後、350~420℃まで温度を上げて試料を得た。これらの試料の被覆の厚さ(焼結層3より上の部分)は、0.01~0.06mmであった。
【0037】
(実施例3)
摺動部材42として、PTFE5に、リン酸マグネシウム13.3重量%、硫酸バリウム16.9重量%、二硫化モリブデン4.7重量%、焼成クレー2.1重量%を添加して、焼結層3上にロールで含浸被覆し、その後、350~420℃まで温度を上げて試料を得た。これらの試料の被覆の厚さ(焼結層3より上の部分)は、0.01~0.06mmであった。
【0038】
(実施例4)
摺動部材42として、PTFE5に、リン酸マグネシウム14.0重量%、硫酸バリウム17.7重量%、二硫化モリブデン5.4重量%、焼成クレー2.9重量%を添加して、焼結層3上にロールで含浸被覆し、その後、350~420℃まで温度を上げて試料を得た。これらの試料の被覆の厚さ(焼結層3より上の部分)は、0.01~0.06mmであった。
【0039】
(実施例5)
摺動部材42として、PTFE5に、リン酸マグネシウム14.8重量%、硫酸バリウム18.5重量%、二硫化モリブデン6.0重量%、焼成クレー3.6重量%を添加して、焼結層3上にロールで含浸被覆し、その後、350~420℃まで温度を上げて試料を得た。これらの試料の被覆の厚さ(焼結層3より上の部分)は、0.01~0.06mmであった。
【0040】
これらの実施例1~実施例5で作製した摺動部材42について下記の摩耗試験を行った。
(1)摩耗試験の摩耗量および(2)摩耗試験時の摩擦係数
図6は、摩擦試験の状態を示す図である。
図6(a)は、試験の様子を軸Jの軸方向から見た図である。
図6(b)は、
図6(a)をA-A断面した側面図である。
図6(c)は、サンプルの形状を示す図であり、
図6(d)は、
図6(C)をB-B断面した図である。
図6に示すように、台座Dに、摺動体1を円弧板形状にしたサンプルS(半径:R13mm、高さ:9.5mm、円弧方向の長さ:30mm、軸方向の長さ:32mm)を取り付けて、台座Dに荷重を与えることで当該サンプルを軸径Φ26mmの軸Jの周縁部に押し当てて、軸方向(
図6(b)における左右方向)に往復動を行う摺動試験を行った。試験は、往復動のストローク:20mm、すべり速度:55mm/s、評価時間:3Hr、荷重:3500N、荷重形態:静荷重、油温:常温、給油方法:グリス塗布、油種:共同油脂製モリホワイトLSG、軸材質:S45C、軸硬さ:HRC24~30、軸粗さ:Ra0.05~0.1の条件で行った。その結果を表1にまとめた。
【0041】
【0042】
すなわち、実施例1では、摩耗量5μm、摩擦係数0.09、実施例2では、摩耗量9μm、摩擦係数0.07、実施例3では、摩耗量7μm、摩擦係数0.07、実施例4では、摩耗量9μm、摩擦係数0.06、実施例5では、摩耗量8μm、摩擦係数0.06という結果であった。
【0043】
このように、第2実施形態の摺動部材42は、PTFE5をベースに焼成クレー6および固体潤滑剤7が添加された構成を備える。このような第2実施形態の摺動部材42は、焼成クレー6が添加されているため、グリス潤滑下において濡れ性を向上させることができ、摺動部材42の摩擦係数を小さくすることができる。そのため、より高い低摩擦性のPTFEベースの摺動部材42を提供することができる。
【0044】
また、第2実施形態では、PTFE5に、固体潤滑剤7として、リン酸マグネシウムを12~16重量%、硫酸バリウムを13~19重量%、二流加モリブデンを4~6重量%を添加し、焼成クレーを1~4重量%を添加した。そのため、油の濡れ性を向上させることができ、摺動部材42のグリス潤滑下及び油中での摩擦係数を小さくすることができる。そのため、より高い低摩擦性のPTFEベースの摺動部材42を提供することができる。
【0045】
また、基材2上の焼結層3に、第2実施形態の摺動部材42を含浸させた摺動体1においても、グリス潤滑下及び油中での摩擦係数を小さくすることができる。そのため、より高い低摩擦性の摺動体1を提供することができる。
【0046】
また、第2実施形態の摺動部材42および摺動体1は、焼成クレー6を添加したことにより耐摩耗性が向上する。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態および変形例は例示であり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態および変形例、およびこれらの変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 摺動体
2 基材
3 焼結層
4 樹脂層
5 PTFE
6 焼成クレー
7 固体潤滑剤
41 摺動部材
42 摺動部材
D 台座
S サンプル
J 軸受け