(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160327
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064998
(22)【出願日】2021-04-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和3年1月6日 販売した場所 株式会社奥田工務店 京都府京都市下京区納屋町415番 販売日 令和3年1月6日 販売した場所 株式会社錢高組 大阪府大阪市西区阿波座1丁目7番3 販売日 令和3年1月27日、令和3年3月24日 販売した場所 内野建設株式会社 東京都墨田区亀沢1-21 販売日 令和3年1月28日、令和3年2月9日、令和3年2月17日 販売した場所 高松建設株式会社 千葉県千葉市中央区新千葉2-1-1 販売日 令和3年2月1日、令和3年2月10日、令和3年2月25日、令和3年3月11日 販売した場所 株式会社中山組 東京都新宿区高田馬場1丁目16-35 販売日 令和3年2月15日 販売した場所 株式会社雛屋建設社 岐阜県岐阜市金宝町2丁目1番3 販売日 令和3年2月17日 販売した場所 株式会社三煌産業 京都府亀岡市ひえ田野町佐伯下峠20 販売日 令和3年2月19日 販売した場所 高松建設株式会社 東京都江戸川区中葛西3-20-3 販売日 令和3年3月1日 販売した場所 高松テクノサービス株式会社 東京都世田谷区太子堂4-22-15 販売日 令和3年3月2日 販売した場所 株式会社篠崎工務店 東京都目黒区三田1-5-2 販売日 令和3年3月4日 販売した場所 株式会社クラスト 埼玉県さいたま市北区宮原町1丁目183番 販売日 令和3年3月5日 販売した場所 株式会社林建設 兵庫県尼崎市南塚口町5丁目16-1 販売日 令和3年3月11日 販売した場所 株式会社IXSIM Communicati 東京都中野区東中野3-14-15 販売日 令和3年3月26日 販売した場所 株式会社創美建築企画 京都府京都市中京区小川通三条下る猩々町140番
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 耕佑
(72)【発明者】
【氏名】村井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 徳和
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239CA03
2E239CA04
2E239CA29
2E239CA32
2E239CA43
2E239CA46
2E239CA67
(57)【要約】
【課題】耐火強度の高いガラスが脱落することに起因して防火性が低下する事態を防止する。
【解決手段】枠体10の室内側となる部分に内障子20を備えるとともに、枠体10の室外側となる部分に外障子30を備え、内障子20及び外障子30は、それぞれ面材21,31の四周に框を装着することによって構成された建具であって、内障子20の面材21,31は、耐火強度が互いに異なる網入りガラス21b,31b及びフロートガラス21c,31cが対向して配置された複層ガラスであり、内障子20において召し合わせとなる内方縦框22は、中空状の内方縦框基部22dを有し、内障子20及び外障子30を構成する框には、内方縦框基部22dにのみ、内方縦框22よりも線膨張係数の小さい材質によって成形された補強材27が配設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の見込み方向において一方の縁部側となる部分に第1障子を備えるとともに、前記枠体の他方の縁部側となる部分に第2障子を備え、前記第1障子及び前記第2障子は、それぞれ面材の四周に框を装着することによって構成された建具であって、
前記第1障子の面材は、耐火強度が互いに異なる複数枚のガラスが対向して配置された複層ガラスであり、
前記第1障子において召し合わせとなる縦框は、中空部を有し、
前記第1障子及び前記第2障子を構成する框には、前記第1障子において召し合わせとなる縦框の前記中空部にのみ、前記縦框よりも線膨張係数の小さい材質によって成形された補強材が配設されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記補強材は、前記縦框の中空部において前記耐火強度の高いガラスに対応する部分にのみ連結されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記補強材は、重心位置が前記縦框の中空部において前記耐火強度の高いガラスに対応する部分に片寄るように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記縦框には、前記中空部の内部を室外側の室と室内側の室とに仕切る仕切り壁部が設けられ、
前記補強材は、前記耐火強度の高いガラスに対応する室にのみ配設されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性を考慮した建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金によって枠や框が成形された建具には、防火性を考慮して、中空に構成した内部にスチール製の補強材を配設するようにしたものが提供されている。この種の建具によれば、アルミニウム合金によって成形された枠や框よりも、スチールによって成形された補強材の線膨張係数が小さいため、枠や框が高温によって溶融してもスチール製の補強材によって建具の形状を維持することができる等の利点がある。
【0003】
また、防火性を考慮した建具では、障子の面材として、耐火強度が互いに異なるガラスによって構成された複層ガラスが多く用いられている。複層ガラスとしては、例えば、網入りガラスとフロートガラスとの組み合わせが一般的である。この建具によれば、フロートガラスが熱割れする温度状態まで建具が加熱された場合にも、耐火強度の高い網入りガラスが障子に残存するため、室内外に発炎経路が生じる事態を防止することができるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アルミニウム合金によって成形された枠や框の内部に、スチールによって成形された補強材が配設された建具では、枠や框が溶融する以前の温度状態まで加熱された場合、枠や框の熱変形が補強材によって制限されていたとしても、枠や框が面外方向に変形する事態が生じ得る。このため、耐火強度の高いガラスが軟化して自立を失うような温度状態にあっても、召し合わせとなる縦框が面外方向に大きく変形した場合には、ガラスが脱落する懸念があり、防火性を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。特に、内障子と外障子とを備える建具では、上述の原因で変形する懸念のある召し合わせの縦框が2つあり、さらには耐火強度の高いガラスが室外側に配置されている場合と室内側に配置されている場合とで状況が異なるため、ガラスの脱落に起因した防火性の低下を防止することが困難となる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、耐火強度の高いガラスが脱落することに起因して防火性が低下する事態を防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体の見込み方向において一方の縁部側となる部分に第1障子を備えるとともに、前記枠体の他方の縁部側となる部分に第2障子を備え、前記第1障子及び前記第2障子は、それぞれ面材の四周に框を装着することによって構成された建具であって、前記第1障子の面材は、耐火強度が互いに異なる複数枚のガラスが対向して配置された複層ガラスであり、前記第1障子において召し合わせとなる縦框は、中空部を有し、前記第1障子及び前記第2障子を構成する框には、前記第1障子において召し合わせとなる縦框の前記中空部にのみ、前記縦框よりも線膨張係数の小さい材質によって成形された補強材が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、第1障子において召し合わせとなる縦框の中空部にのみ補強材を設けるようにしているため、第2障子の縦框にも補強材が設けられている場合に比べて第1障子の縦框に生じる変形をコントロールすることが容易となり、例えば第1障子の縦框に生じる変形を抑えることで耐火強度の高いガラスが脱落する事態を防止し、防火性が低下することをより確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た図である。
【
図4】
図1に示した建具に適用する内障子の上框を示すもので、(a)は端面図、(a)は室内側から見た図である。
【
図5】
図1に示した建具に適用する内障子の縦框を示すもので、(a)は端面図、(a)はガラス収容溝側から見た図である。
【
図6】
図1に示した建具に適用する内障子の召し合わせとなる縦框を示すもので、(a)は端面図、(b)はガラス収容溝側から見た図、(c)は(a)の拡大図である。
【
図7】
図1に示した建具を室外側から加熱した場合の状態変化を比較例とともに要部横断面として示す図表である。
【
図8】
図1に示した建具を室内側から加熱した場合の状態変化を比較例とともに要部横断面として示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0011】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と、枠体10の室内側となる部分に配設した内障子20と、枠体10の室外側となる部分に配設した外障子30とを備えるものである。枠体10は、左右の縦枠11,12の上下両端部の間にそれぞれ上枠13及び下枠14を設けることによって四角形状に構成したものである。内障子20は、四角形状を成す面材21の左右両縁部に縦框22,23を設けるとともに、面材21の上下両縁部において縦框22,23の相互間となる部分に上框24及び下框25を装着することによって構成したものである。外障子30も同様に、四角形状を成す面材31の左右両縁部に縦框32,33を設けるとともに、面材31の上下両縁部において縦框32,33の相互間となる部分に上框34及び下框35を装着することによって構成したものである。枠体10を構成する縦枠11,12、上枠13、下枠14及び障子20,30を構成する縦框22,23,32,33、上框24,34、下框25,35は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0012】
内障子20の面材21及び外障子30の面材31としては、それぞれスペーサ部材21a,31aを介して網入りガラス21b,31bとフロートガラス21c,31cとを互いに対向した状態に接合した複層ガラスを適用している。本実施の形態では、比較的耐火強度の高い網入りガラス21b,31bがそれぞれ室外側に配置され、比較的耐火強度の低いフロートガラス21c,31cが室内側に配置された状態でそれぞれの障子20,30が構成してある。内障子20には、外障子30の面材31に比べて縦横の寸法が大きな面材21が配設してある。
図1に示すように、本実施の形態では、室内側から見て枠体10の右側に内障子20がFIX窓として構成してある。外障子30は、枠体10に対して上枠13及び下枠14の長手に沿って移動可能に配設してあり、室内側から見て枠体10の左側に配置した場合に、内障子20とともに枠体10の開口を閉じることが可能である。外障子30が閉じた状態においては、室内側から見て外障子30の右側に配置される縦框33と、内障子20の左側に配置される縦框22とが見込み方向に沿って互いに並設された状態となっている。これら縦框22,33の間には、それぞれ煙返し22a,33aが設けてあるとともに、クレセント22b及びクレセント受け33bが設けてある。
【0013】
外障子30の縦框33に設けた煙返し33aは、室内に向けて突出した後、戸先側に向けてほぼ直角に屈曲したものである。内障子20の縦框22に設けた煙返し22aは、室外に臨む見付け面から室外に向けて突出した後、戸先側に向けてほぼ直角に屈曲したものである。これらの煙返し22a,33aは、外障子30を閉じた場合に縦框22,33との間に相手側の煙返し22a,33aが挿入された状態となり、見込み方向に沿った互いの離隔する方向への移動を制限するように機能する。なお、この状態においても、内障子20に対して外障子30を開く方向へ移動させることは可能である。
【0014】
クレセント22b及びクレセント受け33bは、外障子30が閉じた状態においてクレセント22bを施錠操作すると、互いに係合することにより、外障子30の縦框33と内障子20の縦框22との間を施錠して外障子30の開く方向への移動を阻止することが可能である。なお、以下においては外障子30の構成要素と内障子20の構成要素とを区別するため、外障子30の構成要素に「外方」という用語を付与し、内障子20の構成要素に「内方」という用語を付与する場合がある。また便宜上、
図1に従って室内側から見た状態で外障子30の構成要素及び内障子20の構成要素の左右を特定することとする。
【0015】
本実施の形態の枠体10は、引き違い窓と共用することができるように構成したものである。枠体10の上枠13には、内方上框24及び外方上框34に対応する部分にそれぞれ上枠レール部13a,13bが設けてあり、下枠14には、内方下框25及び外方下框35に対応する部分にそれぞれ下枠レール部14a,14bが設けてある。上枠レール部13a,13b及び下枠レール部14a,14bは、それぞれ見付け方向に延在した平板状を成すもので、上枠13及び下枠14の長手に沿ってほぼ全長となる部分に形成してある。本実施の形態では、室内側の上枠レール部13aと室外側の上枠レール部13bとが互いにほぼ等しい高さ位置に設けてある。これに対して下枠14においては、室内側の下枠レール部14aが、室外側の下枠レール部14bよりも高い位置となるように構成してある。
【0016】
左右の縦枠11,12には、見込み方向に沿って延在する平板状の縦枠基部11a,12aにおいて互いに対向する内周側の見込み面に縦枠レール部11b,12bが設けてある。室内側から見て右側に位置する縦枠12には、縦枠基部12aにおいて内方縦框23に対応する部分にのみ縦枠レール部12bが設けてある。室内側から見て左側に位置する縦枠11には、縦枠基部11aにおいて外方縦框32に対応する部分にのみ縦枠レール部11bが設けてある。これらの縦枠レール部11b,12bは、それぞれ見付け方向に延在した平板状を成すもので、縦枠11,12の長手に沿ってほぼ全長となる部分に形成してある。
【0017】
外障子30は、外方上框34及び戸先となる左側の外方縦框32にそれぞれ2つのガイド壁部34a,32aを有するとともに、外方下框35に戸車36を備えている。外方上框34のガイド壁部34aは、角筒状を成す外方上框基部34bの室外側に位置する縁部及び室内側に位置する縁部からそれぞれ上方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部34aの上縁部には、それぞれシール部材37が配設してある。外方縦框32のガイド壁部32aは、異形筒状を成す外方縦框基部32bの左側端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ左側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部32aの相互間には、縦枠レール部11bに係合することにより、枠体10に対して外障子30を室内側に引き寄せるように機能する引き寄せ部材38が配設してある。戸車36は、図には明示していないが、見込み方向に沿って延在する車軸を介して外方下框35の内部に回転可能に配設したもので、下方周面が外部に露出した状態で外方下框35の長手方向に沿った複数箇所に設けてある。
【0018】
外障子30の召し合わせとなる右側の外方縦框33は、中空状を成す外方縦框基部(中空部)33cを有したものである。外方縦框基部33cには、中空の内部を見込み方向に分断するように仕切り壁部33dが形成してある。仕切り壁部33dは、面材31において網入りガラス31bとフロートガラス31cとの中間となる位置に設けてある。
【0019】
図2及び
図3からも明らかなように、外障子30の左右の外方縦框32,33、外方上框34、外方下框35には、いずれも内周側となる部分にガラス収容溝31dが一体に成形してあり、それぞれのガラス収容溝31dの内部に面材31の縁部が収容してある。
【0020】
上記のように構成した外障子30は、外方上框34の2つのガイド壁部34aの間に上枠レール部13bを配置し、かつ戸車36を下枠レール部14bの上縁部に転動可能に載置させることにより、上枠13及び下枠14の延在方向に沿って移動することが可能である。外障子30を閉じた状態においては、左側の外方縦框32に設けた2つのガイド壁部32aの間に左側の縦枠11に設けた縦枠レール部11bが進入し、左側の外方縦框32が室内側に引き寄せられる。さらに、この状態からクレセント22bを操作してクレセント受け33bに係合させると、右側の外方縦框33が後述する内障子20の左側に位置する内方縦框22に引き寄せられる。
【0021】
この状態においては、下枠14に設けたシール部材14cが外方下框35の室内に臨む見付け面に当接するとともに、左側の縦枠11に設けたシール部材11cが外方縦框32の室内側に位置するガイド壁部32aに当接することになり、互いの間の水密性が確保される。また、外方上框34と上枠13との間においては、外方上框34の2つのガイド壁部34aに設けたシール部材37が上枠レール部13bの両側面に当接し、互いの間の水密性が確保される。さらに、右側の外方縦框33に対しては、左側の内方縦框22に設けたシール部材22cが当接し、互いの間の水密性が確保された状態となる。
【0022】
内障子20は、内方下框25、内方上框24及び戸先となる右側の内方縦框23にそれぞれ2つのガイド壁部25a,24a,23aを有している。内方下框25のガイド壁部25aは、角筒状を成す内方下框基部25bの下端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ下方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。
【0023】
内方上框24のガイド壁部24aは、見込み方向に沿った平板状を成す内方上框基部24bの上端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ上方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部24aの上縁部には、互いに対向する上縁部にそれぞれシール部材26が配設してある。図からも明らかなように、室外側に設けたガイド壁部24aには、連結片24cが設けてある。連結片24cは、ガイド壁部24aの上縁から上方に向けて延在したもので、上縁部に屈曲部24dを有している。屈曲部24dは、室外に向けて見込み方向に延在したもので、上枠レール部13a,13bの相互間に配設することのできる寸法に形成してある。本実施の形態では、
図4に示すように、内方上框24において左側の内方縦框22に対応する部分に逃げ用スペース24Xが確保してあり、逃げ用スペース24Xよりも右側となる部分にのみ連結片24cが設けてある。また、連結片24cには、左側に位置する部分に非固定用スペース24Yが確保してあり、非固定用スペース24Yよりも右側となる部分にのみ屈曲部24dが設けてある。さらに、内方上框24において右側の内方縦框23に対応する部分には、戸先側逃げ用スペース24Zが確保してあり、戸先側逃げ用スペース24Zよりも左側となる部分にのみ連結片24c及び屈曲部24dが設けてある。
【0024】
内方縦框23のガイド壁部23aは、
図3、
図5に示すように、見込み方向に沿った平板状を成す内方縦框基部23bの右側端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ右側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。室外側に設けたガイド壁部23aは、平板状を成すもので、見付け方向に沿った寸法が右側の縦枠12に設けた縦枠レール部12bよりも大きく設定してある。室内側に設けたガイド壁部23aは、室外側のガイド壁部23aとほぼ同一の寸法を有した平板状を成すもので、延在縁部に屈曲部23cを有している。屈曲部23cは、室内に向けてほぼ直角に屈曲したものである。なお、右側の内方縦框23には、室内側のガイド壁部23aよりもさらに室内側となる部分にシール用当接壁部23dが設けてある。
【0025】
内障子20の召し合わせとなる左側の内方縦框22は、中空状を成す内方縦框基部(中空部)22dを有したものである。内方縦框基部22dには、中空の内部を見込み方向に分断するように仕切り壁部22eが形成してある。仕切り壁部22eは、面材21において網入りガラス21bとフロートガラス21cとの中間となる位置に設けてある。
【0026】
この内方縦框22には、中空の内部において仕切り壁部22eよりも室外側となる部分、つまり面材21において耐火強度の高い網入りガラス21bに対応した部分にのみ補強材27が配設してある。補強材27は、内方縦框22の材料であるアルミニウム合金よりも線膨張係数の小さい材質、例えばスチールによって断面が略U字状となるように構成したものであり、
図6に示すように、内方縦框22のほぼ全長にわたる部分に配設してある。補強材27と内方縦框22との間は、長手に沿って適宜間隔を確保した複数箇所にネジ部材S0を螺合することによって固定してある。
【0027】
図3、
図6に示すように、内障子20には、左側の内方縦框22の内周側となる部分にのみガラス収容溝21dが一体に成形してあるとともに、ガラス収容溝21dの内部となる部分に面材支持金具28が配設してある。面材支持金具28は、取付板部28aと支持板部28bとを有した断面L字状を成すもので、内方縦框22の上下方向においてほぼ中央となる部分を含む複数箇所において取付板部28aを介してネジ部材Sによって固定してある。
【0028】
また、内方縦框22には、外方縦框33に対向する部分及びガラス収容溝21dの内部において両側縁部となる部分にそれぞれ熱膨張性部材50が配設してある。熱膨張性部材50は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材である。この種の熱膨張性部材50としては、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。本実施の形態では、幅方向の寸法に対して板厚の薄い断面形状を有した長尺状の熱膨張性部材50を適用し、ガラス収容溝21dの長手に沿ったほぼ全長にわたる部分に連続して配設してある。
【0029】
一方、内障子20の右側の内方縦框23、内方上框24、内方下框25には、いずれも室内側にのみガラス支持片21eが設けてあり、室外側には押縁装着部21fが設けてある。つまり、内障子20においては、室外側から左側の内方縦框22に設けたガラス収容溝21dに面材21の縁部を収容させた後、右側の内方縦框23、内方上框24、内方下框25のガラス支持片21eに面材21を当接させ、さらにそれぞれの押縁装着部21fに押縁21gを装着することによって面材21が支持してある。
【0030】
戸先となる右側の内方縦框23には、
図5に示すように、ガラス収容溝21dの内部を外気と等圧にするための空気導入孔23eが設けてある。内方縦框23の空気導入孔23eは、上下に沿った長孔状となるもので、内方縦框23の上端部及び下端部に形成してある。
【0031】
上記のように構成した内障子20を枠体10に固定するには、まず面材21を取り外した状態で枠体10の内部に内障子20を配置し、予め下枠14に取り付けた連結ブラケット40の上面に載置した状態とする。すなわち、内方上框24の2つのガイド壁部24aの間に上枠レール部13aを配置するとともに、内方縦框23の2つのガイド壁部23aの間に縦枠レール部12bを配置し、その後、下枠14を連結ブラケット40に載置させれば、内障子20が枠体10の内部に配置されることになる。このとき、内方縦框23については、2つのガイド壁部23aの延在縁部がそれぞれ縦枠12の内周側となる見込み面に当接した状態に配置しておく。連結ブラケット40としては、例えば、上下に沿って延在するブラケット基部40aの上下両端部にそれぞれ直角方向に屈曲した取付板部40bを有したものを適用し、予め一方の取付板部40bを介して下枠14に取り付け、もう一方の取付板部40bが下枠レール部14aよりも上方に突出した状態としておけば良い。
【0032】
この状態から下枠14を介して連結ブラケット40にネジ部材S1を螺合すれば、連結ブラケット40を介して内方下框25を下枠14に固定することができる。また、縦枠12を介して内方縦框23の屈曲部23cにネジ部材S2を螺合すれば、内方縦框23を縦枠12に固定することができ、内方上框24の屈曲部24dを介して上枠13にネジ部材S3を螺合すれば、内方上框24を上枠13に固定することができる。内方下框25、内方縦框23、内方上框24をそれぞれ枠体10に固定した後においては、上述した方法によって面材21を支持させれば良い。内障子20に設けた逃げ用スペース24Xには、上枠13に設けた風止め板(図示せず)が配置される。
【0033】
上記のようにして枠体10に固定した内障子20においては、下枠14に設けたシール部材14dが内方下框25の室内側に設けたガイド壁部25aに当接するとともに、右側の縦枠12に設けたシール部材12cが内方縦框23のシール用当接壁部23dに当接することになり、互いの間の水密性が確保される。また、内方上框24と上枠13との間においては、内方上框24の2つのガイド壁部24aに設けたシール部材26が上枠レール部13aの両側面に当接し、互いの間の水密性が確保される。さらに、上述したように、左側の内方縦框22に設けたシール部材22cが外障子30の右側に位置する外方縦框33に当接し、互いの間の水密性が確保された状態となる。
【0034】
さらに、内障子20には、建具の防火性を向上させるため、内方上框24及び右側の内方縦框23にも熱膨張性部材50A,50B,50Cが配設してある。熱膨張性部材50A,50B,50Cは、内方縦框22に設けたものと同様、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材であり、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。本実施の形態では、幅方向の寸法に対して板厚の薄い断面形状を有した長尺状の熱膨張性部材50A,50B,50Cを適用している。内方上框24においては、
図5に示すように、連結片24cにおいて上下に延在する部分の両端部において上枠レール部13aに対向する表面に熱膨張性部材50Aが配設してあるとともに、逃げ用スペース24X及び戸先側逃げ用スペース24Zに対応する部分においては2つのガイド壁部24aの互いに対向する内表面にそれぞれ熱膨張性部材50Bが配設してある。内方縦框23においては、
図6に示すように、室外側のガイド壁部23aにおいて室内側となる表面の上下両端部に熱膨張性部材50Cが設けてある。図からも明らかなように、熱膨張性部材50Cは、上下に沿った寸法が空気導入孔23eよりも大きなもので、上下方向において空気導入孔23eの全長をすべて含む位置に配設してある。図には明示していないが、それぞれの熱膨張性部材50A,50B,50Cは、両面テープや接着剤によって接着してあり、内障子20から不用意に脱落することはない。
【0035】
上記のように構成した建具では、火災等の原因によって高温に晒された場合、外障子30と枠体10との間及び内障子20と枠体10との間に設けたシール部材11c,12c,14c,14d,22c,26,37が焼失することになるものの、内障子20と枠体10との間に介在した熱膨張性部材50A,50B,50Cや内方縦框22に設けた熱膨張性部材50が膨張することで内障子20と枠体10との間に隙間が生じる事態や外方縦框33と内方縦框22との間に隙間が生じる事態を防止することができる。しかも、内方上框24と上枠13との間においては、内方上框24と一体の長手に連続した連結片24cによって互いの間が連結され、内方縦框23と縦枠12との間においては、内方縦框23と一体の長手に連続したガイド壁部23aによって互いに連結されているため、仮に熱膨張性部材50A,50B,50Cが膨張した後に上枠13や内方上框24、または縦枠12や内方縦框23に熱変形が生じた場合にも、互いの間に発炎経路となるような隙間が生じるおそれはなく、防火性の点で有利となる。
【0036】
さらに、上述の建具では、内方上框24と上枠13との間に逃げ用スペース24X及び非固定用スペース24Yが確保してある。従って、日射等の影響によって内方縦框22に熱伸びが生じたり、経年変化によって上枠13の中間部が下方に向けて湾曲するように撓んだとしても、逃げ用スペース24X及び非固定用スペース24Yによってこれらの変形が吸収されることになる。従って、通常の使用時においては、内障子20の内方縦框22が面外方向に湾曲するような事態を招来する懸念がない。加えて、内方上框24の熱膨張性部材50A,50Bは、上述のように、これら逃げ用スペース24X、非固定用スペース24Y、戸先側逃げ用スペース24Zに対応する部分に配設してあるため、熱膨張した際にはこれら逃げ用スペース24X、非固定用スペース24Y、戸先側逃げ用スペース24Zにより生じる発炎経路を確実に塞ぐことが可能であり、火災が発生した際にも延焼を来す要因となるおそれがない。
【0037】
また、内方縦框23と縦枠12との間においては、2つのガイド壁部23aが縦枠12の見込み面に当接することで四周が囲まれた空間60が構成されることになる。従って、内方縦框23に配設した熱膨張性部材50Cは、この限られた空間60の内部において膨張することになり、内方縦框23と縦枠12との間に隙間が生じる事態をより確実に防止することができる。加えて、内方縦框23に設けた熱膨張性部材50Cは、空気導入孔23eを含む高さ位置に設けてある。従って、建具が高温に晒された場合には、空気導入孔23eを通じた内障子20のガラス収容溝21dと外気との連通状態が熱膨張する熱膨張性部材50Cによって遮断されることになる。すなわち、熱膨張性部材50Cが熱膨張した場合には、直接空気導入孔23eを塞がない状態であっても、内方縦框23と縦枠12の間に構成された空間60の両端部が熱膨張した熱膨張性部材50Cによって塞がれるため、ガラス収容溝21dと外気との連通状態が遮断されることになる。これにより、面材21として用いられたスペーサ部材21aが溶融することによってガラス収容溝21dに可燃性ガスが生じたとしても、これが外部に漏出することはなく、発炎の原因となるおそれもない。
【0038】
ここで、例えば室外において火災が発生することにより、建具の室外側となる部分が高温に晒されると、室内側に比べて室外側の熱伸び量が多くなる。このため、
図7の上段に比較例として示すように、外障子30において召し合わせに配置される外方縦框33及び内障子20において召し合わせに配置される内方縦框22の双方に補強材が配設されていない場合、建具の温度が上昇するに従って、外障子30の外方縦框33及び内障子20の内方縦框22が室外に向けて漸次凸となるように湾曲する。この結果、建具の温度が600℃程度となった際には外障子30の網入りガラス31b及び内障子20の網入りガラス21bが框から脱落する事態を招来する懸念があり、防火性の点で必ずしも好ましいとはいえない。
【0039】
これに対して実施の形態の建具では、内方縦框22において網入りガラス21bに対応する室外側部分にのみ補強材27を配設するようにしている。従って、
図7の下段に示すように、建具の温度が上昇した場合にも、内方縦框22の室外側に位置する部分の熱伸びが補強材27によって抑えられることになる。これにより、クレセント22bとクレセント受け33bによって内方縦框22に連結され、かつ煙返し22a,33aによって内方縦框22に対して離隔する方向への移動が制限された外方縦框33においては、その中空内部に補強材が存在しないため、内方縦框22に引き寄せられた状態となり、室外に向けて凸となるような熱変形が抑えられることになる。この結果、600℃程度の高温状態となった場合にも、外方縦框33及び内方縦框22の室外に凸となる熱変形が抑えられた状態が維持され、網入りガラス31b及び網入りガラス21bが框から脱落する事態を招来するおそれがなくなるため、防火性の点で有利となる。
【0040】
因に、外障子30及び内障子20のそれぞれにおいて耐火強度の高い網入りガラス31b,21bが室外側に配置された建具では、室内において火災が発生した場合、
図8に示すように、比較例及び上述の建具の双方においても、耐火強度の低いフロートガラス31c,21cが100℃程度で熱割れし、400℃程度でフロートガラス31c,21cが框から脱落する。但し、フロートガラス31c,21cにおいてガラス収容溝31d,21dに配置された縁部についてはそのまま框に保持された状態が維持されるため、網入りガラス31b,21bが框から脱落する事態が招来されることがない。特に、実施の形態のように、ガラス収容溝21dに面材支持金具28を設けた建具によれば、フロートガラス21cの縁部をより確実に框からの脱落を防止することができ、上述の作用効果がより顕著となる。
【0041】
なお、上述した実施の形態では、内障子20の内方縦框22において室外側となる部分にのみ補強材27を配設したものを例示しているが、本発明はこれに限定されない。
【0042】
例えば
図9に示す変形例1のように、耐火強度の高い網入りガラス31b,21bが室外側となるように配置された外障子30及び内障子20を備える建具では、外障子30において召し合わせとなる外方縦框33の室外側となる部分にのみ補強材27を配設すれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することとなる。
【0043】
一方、耐火強度の高い網入りガラス31b,21bが室内側となるように配置された外障子30及び内障子20を備える建具では、
図10の変形例2に示すように、外方縦框33の室内側となる部分にのみ補強材27を設けても良いし、
図11の変形例3に示すように、内方縦框22の室内側となる部分にのみ補強材27を設けても構わない。変形例1~変形例3において実施の形態と同様の構成については、同一の符号が付してある。
【0044】
また、上述した実施の形態及び変形例1~3では、内障子と枠体との固定構造について詳述に記載しているが、これらの構成は必ずしも必須ではない。特に、本発明では、内障子を枠体に固定する必要はなく、外障子と同様、枠体に対して移動可能に配設されていても良い。この場合、外障子を枠体に固定しても構わない。
【0045】
さらに、網入りガラスとフロートガラスとを備えた複層ガラスを面材として適用しているが、耐火強度の異なるガラスの組み合せであれば必ずしもこれらに限定されない。また、補強材としてもスチールである必要はなく、框の材質よりも線膨張係数の小さい材質であれば良い。
【0046】
またさらに、上述した実施の形態では、縦框の中空部において片寄った位置に補強材を配置するようにしているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、補強材の形状や大きさに関わらず、耐火強度の高いガラスに対応した位置においてのみネジ部材によって縦框に連結しても良いし、板厚を変化させる等して重心位置が耐火強度の高いガラスに対応下位置となるように構成しても構わない。
【0047】
以上のように、本発明に係る建具は、枠体の見込み方向において一方の縁部側となる部分に第1障子を備えるとともに、前記枠体の他方の縁部側となる部分に第2障子を備え、前記第1障子及び前記第2障子は、それぞれ面材の四周に框を装着することによって構成された建具であって、前記第1障子の面材は、耐火強度が互いに異なる複数枚のガラスが対向して配置された複層ガラスであり、前記第1障子において召し合わせとなる縦框は、中空部を有し、前記第1障子及び前記第2障子を構成する框には、前記第1障子において召し合わせとなる縦框の前記中空部にのみ、前記縦框よりも線膨張係数の小さい材質によって成形された補強材が配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、第1障子において召し合わせとなる縦框の中空部にのみ補強材を設けるようにしているため、第2障子の縦框にも補強材が設けられている場合に比べて第1障子の縦框に生じる変形をコントロールすることが容易となり、例えば第1障子の縦框に生じる変形を抑えることで耐火強度の高いガラスが脱落する事態を防止し、防火性が低下することをより確実に防止することが可能となる。
【0048】
また本発明は、上述した建具において、前記補強材は、前記縦框の中空部において前記耐火強度の高いガラスに対応する部分にのみ連結されていることを特徴としている。
また本発明は、上述した建具において、前記補強材は、重心位置が前記縦框の中空部において前記耐火強度の高いガラスに対応する部分に片寄るように配設されていることを特徴としている。
また本発明は、上述した建具において、前記縦框には、前記中空部の内部を室外側の室と室内側の室とに仕切る仕切り壁部が設けられ、前記補強材は、前記耐火強度の高いガラスに対応する室にのみ配設されていることを特徴としている。
これらの発明によれば、縦框において耐火強度の高いガラスに対応した部分の変形を補強材によって抑えることができるため、ガラスが脱落する事態を防止して防火性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
10 枠体、20,30 障子、21,31 面材、21b,31b 網入りガラス、21c,31c フロートガラス、22 内方縦框、22d 内方縦框基部、22e,33d 仕切り壁部、27 補強材、28 面材支持金具、33 外方縦框、33c 外方縦框基部