(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160336
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】回路基板
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20221012BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221012BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221012BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221012BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H02K11/33
H02M7/48 Z
H05K7/20 C
H05K1/02 Q
H01L23/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065022
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】日本電産エレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 優介
(72)【発明者】
【氏名】長内 俊二郎
【テーマコード(参考)】
5E322
5E338
5F136
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA03
5E322AB01
5E322AB02
5E322AB08
5E322EA10
5E322FA04
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB05
5E338BB25
5E338BB75
5E338CC08
5E338CD23
5E338EE02
5F136BB02
5F136DA01
5F136DA27
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA05
5H770BA01
5H770HA07Z
5H770PA21
5H770PA28
5H770QA01
5H770QA08
5H770QA27
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】単一構成の回路基板において放熱性の向上とともに小型化、低コスト化を実現する。
【解決手段】モータ15の反出力側でベアリングホルダ13に固定され、そのベアリングホルダ13と対向する第2の表面と反対側の第1の表面に発熱素子(FET)が実装された多層の単一の回路基板23において、発熱素子の第1の電気的端子22が接続される第1の領域31aの直下にビアカバーされた第1のビア41aを設け、発熱素子の第2の電気的端子24が接続される第2の領域32aの直下にビアカバーされた第2のビア43aを設ける。これら第1のビアと第2のビアを熱伝導路として、発熱素子で発生した熱を回路基板23と密着させて配置したベアリングホルダ13へ放熱する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力側と反対側の反出力側においてベアリングホルダに固定され、該ベアリングホルダと対向する第2の表面と反対側の第1の表面に発熱素子が実装された多層の単一の回路基板であって、
前記発熱素子の第1の電気的端子が接続される第1の領域の直下において前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第1のビアと、
前記発熱素子の第2の電気的端子が接続される第2の領域の直下において前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第2のビアと、
を備え、
前記第1のビアと前記第2のビアを熱伝導路として、前記発熱素子で発生した熱を前記回路基板と密着させて配置した前記ベアリングホルダへ放熱する回路基板。
【請求項2】
前記第1のビアと前記第2のビアは、前記第2の表面に塗布したソルダーレジストにより前記ビアカバーされている請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記第1のビアと前記第2のビア各々は、前記多層の少なくとも一層に形成されたベタパターンと電気的に接続され、前記ベタパターンのうち前記第2の表面に最も近い層のベタパターンが他のベタパターンよりも面積が広い請求項1に記載の回路基板。
【請求項4】
前記第1の領域の平面視近傍の第3の領域に設けた、前記回路基板の厚さ方向に貫通する第3のビアと、
前記第2の領域の平面視近傍の第4の領域に設けた、前記回路基板の厚さ方向に貫通する第4のビアと、
をさらに備え、
前記第1のビアと前記第3のビアは前記多層の少なくとも一層において電気的に接続され、前記第2のビアと前記第4のビアは前記多層の少なくとも一層において電気的に接続されている請求項1に記載の回路基板。
【請求項5】
前記モータは駆動部と制御部とが一体に形成された機電一体型のモータである請求項1に記載の回路基板。
【請求項6】
前記駆動部は前記モータの駆動用交流電源を生成するブリッジ回路を有し、前記発熱素子は前記ブリッジ回路を構成する半導体スイッチング素子である請求項5に記載の回路基板。
【請求項7】
前記モータは3相以上の多相のモータであり、前記半導体スイッチング素子は前記多相の各相に対応する高電位側半導体スイッチング素子と低電位側スイッチング素子を含み、
前記回路基板の内層には、
前記高電位側半導体スイッチング素子各々の前記第1の電気的端子同士が電気的に接続されてなる高電位ベタパターンと、
前記高電位側半導体スイッチング素子各々の前記第2の電気的端子と、前記低電位側スイッチング素子各々の前記第1の電気的端子とが各相ごと電気的に接続されてなる中電位ベタパターンと、
前記低電位側スイッチング素子各々の前記第2の電気的端子と、電流検出素子の一端とが各相ごと電気的に接続されてなる低電位ベタパターンと、
前記電流検出素子の他端同士が電気的に接続されてなるグランド(GND)ベタパターンとが配置され、
前記高電位ベタパターン、前記中電位ベタパターンおよび前記低電位ベタパターン各々は、前記回路基板における前記発熱素子の実装側と反対側に投影されるベタパターンを形成する請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
前記ブリッジ回路と前記モータ間に接続された前記多相の各相に対応するモータリレー用半導体スイッチング素子の前記第1の電気的端子が接続される第5の領域の直下において、前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第5のビアと、
前記モータリレー用半導体スイッチング素子の前記第2の電気的端子が接続される第6の領域の直下において、前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第6のビアと、
をさらに備え、
前記回路基板の内層において前記第6のビアと前記中電位ベタパターンとが電気的に接続されている請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
前記モータへの電源の供給を遮断する電源リレー用半導体スイッチング素子の前記第1の電気的端子が接続される第7の領域の直下において、前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第7のビアと、
前記第7の領域の平面視近傍の第8の領域に設けた、前記回路基板の厚さ方向に貫通する第8のビアと
前記電源リレー用半導体スイッチング素子の前記第2の電気的端子が接続される第9の領域の直下において、前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第9のビアと、
前記電源の逆接保護リレー用半導体スイッチング素子の前記第1の電気的端子が接続される第10の領域の直下において、前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第10のビアと、
前記第10の領域の平面視近傍の第11の領域に設けた、前記回路基板の厚さ方向に貫通する第11のビアと、
前記逆接保護リレー用半導体スイッチング素子の前記第2の電気的端子が接続された第12の領域の直下において、前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第12のビアと、
をさらに備え、
前記回路基板の内層において前記第9のビアと前記第12のビアが電気的に接続され、前記第11のビアは前記高電位ベタパターンと電気的に接続されている請求項7に記載の回路基板。
【請求項10】
前記半導体スイッチング素子は外形サイズが5×6mmクラス、もしくはそれ以下の外形サイズのパッケージを有する請求項6に記載の回路基板。
【請求項11】
3相以上の多相のモータを駆動するモータ制御装置であって、
前記モータのシャフトを回転可能に支持するベアリングを保持するベアリングホルダと、
前記ベアリングホルダに固定される請求項1~10のいずれか1項に記載の回路基板と、
を備え、
前記回路基板は、その一方端側に、外部電源の接続用端子と外部信号の接続用端子とを有するコネクタ部を備え、前記制御部は少なくとも前記外部信号をもとに前記モータを駆動する指令信号を決定し、前記駆動部は前記指令信号に応じて前記モータを駆動するモータ制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載のモータ制御装置を、車両等の運転者のステアリングハンドル操作をアシストする電動パワーステアリング用のモータ制御装置としたパワーステアリングシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のパワーステアリングシステムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばモータ制御装置等に使用する回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のモータを駆動制御するモータ制御装置等では、モータと電子制御ユニット(ECU)の一体化による小型化のみならず、装置に搭載する回路基板、その基板に実装する電子部品を小型化して、回路基板の表面における部品実装面積を減少させ、基板全体を高密度化、小型化している。
【0003】
近時におけるモータ制御装置等の高性能化、多機能化に伴い、回路基板に実装される電子部品が高集積化され、さらなる高速駆動化によって電子部品の発熱量も増大している。モータ制御装置には、モータに駆動電力を供給するインバータ回路が実装され、そのインバータ回路を構成するMOSFET等のスイッチング素子は、スイッチング損失等により発熱する。
【0004】
このように、回路基板に実装した発熱部品より発生した熱は、基板の外部に効率良く放出する必要がある。放熱構成として、例えば、基板実装されたFETの背面から放熱するタイプ、基板実装されたFETの下面から熱伝導体の材料を介して(銅インレイ等)放熱するタイプ、基板実装されたFETの下面から放熱ビアを介して放熱するタイプ、発生した熱をベアリングホルダへ放熱する構成等が知られている。
【0005】
特許文献1の駆動装置では、基板とフレーム部材を近接して配置し、基板に実装された駆動素子、電流検出素子、集積回路部品(ASIC)等の発熱素子からの熱をフレーム部材に対して背面放熱させている。
【0006】
特許文献2は、電動モータの筐体を外部放熱体として使用するとともに、金属製貫通部材である銅インレイによって、回路基板の一方面側から他方面側への熱伝導経路を確保して伝熱、放熱を可能にする回路基板を開示している。
【0007】
他の放熱例として、サーマルビアから表層の放熱基板を介して電子部品の熱を外気に放熱する構造が知られている。例えば、特許文献3の負荷駆動装置では、基板に実装された発熱型電子部品の直下にサーマルビア群を設けて、それら発熱型電子部品から発せられた熱をサーマルビア群により基板の裏面側に伝熱させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6179476号公報
【特許文献2】特開2020-4887号公報
【特許文献3】特開2019-80471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、発熱素子であるMOSFETからの熱を、MOSFETの背面からモータのベアリングホルダへ放熱する構成は、その放熱効果を高めるためには、背面放熱可能なMOSFETへの適用に限られる。背面放熱可能なMOSFETの種類が限られるため高価であることから、それを適用することは回路基板全体のコストを低下できないという問題がある。
【0010】
特許文献2の場合、熱伝導体材料としての銅インレイが高価であることから、それを主たる放熱手段とすることは回路基板のコストアップにつながる。一方、特許文献3が採用するサーマルビアによる放熱は、回路基板のMOSFETの底面のパッドからビアにはんだが流入し、基板裏面に流出してヒートシンクと電気的にショートする懸念があるため、生産組み立て性等に課題がある。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、単一構成の回路基板の小型化、低コスト化とともに放熱性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち、本願の例示的な第1の発明に係る回路基板は、モータの出力側と反対側の反出力側においてベアリングホルダに固定され、該ベアリングホルダと対向する第2の表面と反対側の第1の表面に発熱素子が実装された多層の単一の回路基板であって、前記発熱素子の第1の電気的端子が接続される第1の領域の直下において前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第1のビアと、前記発熱素子の第2の電気的端子が接続される第2の領域の直下において前記回路基板の厚さ方向に延伸し、所定部位でビアカバーされた第2のビアとを備え、前記第1のビアと前記第2のビアを熱伝導路として、前記発熱素子で発生した熱を前記回路基板と密着させて配置した前記ベアリングホルダへ放熱することを特徴とする。
【0013】
本願の例示的な第2の発明は、3相以上の多相のモータを駆動するモータ制御装置であって、前記モータのシャフトを回転可能に支持するベアリングを保持するベアリングホルダと、前記ベアリングホルダに固定される上記例示的な第1の発明に係る回路基板とを備え、前記回路基板は、その一方端側に、外部電源の接続用端子と外部信号の接続用端子とを有するコネクタ部を備え、前記制御部は少なくとも前記外部信号をもとに前記モータを駆動する指令信号を決定し、前記駆動部は前記指令信号に応じて前記モータを駆動することを特徴とする。
【0014】
本願の例示的な第3の発明は、上記例示的な第2の発明に係るモータ制御装置を、車両等の運転者のステアリングハンドル操作をアシストする電動パワーステアリング用のモータ制御装置としたパワーステアリングシステムを特徴とする。
【0015】
本願の例示的な第4の発明は、上記例示的な第3の発明に係るパワーステアリングシステムを備えた車両を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、単一構成の回路基板に実装した発熱部品に対する高い放熱効率を得るとともに、回路基板の小型化、低コスト化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る回路基板が搭載されたモータ制御装置の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る回路基板を平面視した外観図である。
【
図3】
図3(a)は、第1の放熱構造を有する回路基板の表面を部分的に示し、
図3(b)は、
図3(a)に対応する回路基板の裏面を示している。
【
図4】
図4は、
図3(a)のB-B´矢視線に沿って回路基板を切断した断面図である。
【
図5】
図5(a)は、第2の放熱構造を有する回路基板の表面を部分的に示し、
図5(b)は、
図5(a)に対応する回路基板の裏面を示している。
【
図6】
図6は、
図5(a)のC-C´矢視線に沿って回路基板を切断したときの断面図である。
【
図7】
図7は、回路基板の駆動側に係る回路構成図である。
【
図8】
図8は、
図7の回路構成に対応させた第2の放熱構造における放熱ビアの配置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る回路基板が搭載され、その回路基板と一体化されたたモータ制御装置の分解斜視図である。
【0019】
図1に示すモータ制御装置10において、モータカバー14で覆われたモータ15の軸方向上部にヒートシンク13が配置され、ベアリングホルダ13の上部であって、モータ15の軸方向反出力側に本実施形態に係る回路基板20が載置され、ベアリングホルダ13にネジ等により固定される。
【0020】
ベアリングホルダ13は、モータ15の軸受機構を保持する金属製のヒートシンクであり、回路基板20から発生する熱の放熱用部材として機能し、例えばアルミダイキャストを成形してなる。モータ15のベアリングホルダ13を外部放熱体として使用することで、回路基板20の部品点数の削減が可能となる。
【0021】
回路基板20の裏面(部品実装面の反対側)とベアリングホルダ13とが、熱伝導性の絶縁樹脂(コンパウンド)を介して互いに密着した状態で、回路基板20がベアリングホルダ13に固定されている。これにより、回路基板20の発熱部品で発生した熱は、後述する放熱ビアを伝導してヒートシンク13へ効率的に放熱される。
【0022】
ベアリングホルダ13に固定された回路基板20の上部は、金属製のユニットカバー12で覆われる。外部コネクタ16は、モータ15へ供給される電源、回路基板20への制御信号等の接続用端子であり、コネクタケースに覆われ、ベアリングホルダ13に固定されている。
【0023】
このように平面同士を対向させて配置した回路基板20と、それを支持して固定するベアリングホルダ13は、平面視したときの外形形状と面積がほぼ同一である。
【0024】
モータ15は、モータの駆動部と制御部とが一体に形成された機電一体型のモータ(ブラシレスモータ)である。機電一体型とすることで、後述する発熱素子で発生した熱を効率的に放熱できる。
【0025】
図2は、本実施形態に係る回路基板20を平面視した外観図である。
図2に示すように、回路基板20の基板本体23の表面には、モータ15を制御するマイクロプロセッサ30等の信号処理用部品、電流センサ等の各種センサを含む制御系デバイスと、モータ15への駆動電流の通電等に係る駆動系デバイスとが実装されている。
【0026】
なお、
図2における基板本体23上での個々の部品(デバイス)の配置位置は一例であり、回路基板20が搭載される装置の仕様等に応じて、適宜、変更が可能である。
【0027】
駆動系デバイスはパワー系のデバイスであり、モータ駆動電流の生成に係るFETブリッジ回路を構成するFET1~FET6、モータへ駆動電流を通電するスイッチングFET(FET9~FET11)、モータ駆動電流用の電解コンデンサC1~C3等からなる。
【0028】
半導体スイッチング素子(FET)はパワー素子とも呼ばれ、例えば、MOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を用いる。半導体スイッチング素子は、外形サイズが、例えば5×6mmクラス、あるいはそれ以下の小型スイッチング素子である。
【0029】
なお、上記の5×6mmクラスには、5.15×6.15mm等が含まれ、5×6mmクラス以下には、3×4mmクラス等が含まれる。
【0030】
基板本体23の表面には、モータ中心軸Pに合わせて、回転角センサである回転センサIC28が実装されている。回転センサIC28は、例えば、磁気抵抗素子あるいはホール素子によって形成されており、モータ回転軸(モータの反出力軸)に対向する位置に配置することで、モータ回転軸に配置したマグネットによって発生した磁界の変化を検知して、ロータの回転角度を検出する。
【0031】
上述した駆動系デバイスは、回路基板20において、回転センサIC28に対して一方側(
図2において一点鎖線18の下側であり、駆動側ともいう)に配置され、制御系デバイスは他方側(一点鎖線18の上側であり、制御側ともいう)に配置されている。
【0032】
モータ15に供給されるU,V,Wの各相電流の出力端子部27は、駆動側に配置されている。こうすることで、3相インバータ回路等からモータ15までの配線距離を短くすることができ、電源経路のパターン長が短いことによる低抵抗値化にともなう電力損失を低減できる。
【0033】
次に、本実施形態に係る回路基板の放熱構造について詳細に説明する。
【0034】
<第1の放熱構造>
本実施形態に係る回路基板における第1の放熱構造について説明する。
図3(a)は、第1の放熱構造を有する回路基板20aの表面を部分的に示しており、
図2に示す回路基板20のA部に対応する。
図3(b)は、
図3(a)に対応する回路基板20aの裏面を示す図である。また、
図4は、
図3(a)のB-B´矢視線に沿って回路基板20aを切断した断面図である。
【0035】
回路基板20aにおいて、上述した駆動側に配置された各スイッチングFET(
図3(a)ではFET1)を平面視したとき、その直下の第1の領域31aは、基板本体23上面において、
図4に示すようにFET1の第1の電気的端子(ドレイン端子)22がはんだ25aにより基板に接続される領域である。第1の領域31aには、回路基板20aの厚さ方向に延伸する第1の放熱ビア41aが形成されている。なお、ビアの内側は例えば銅メッキ等がされた導体である。
【0036】
これによって、FET1の第1の電気的端子22は、はんだ25aを介して第1の放熱ビア41aと電気的に接続される。
【0037】
同様に、FET1を平面視したときの第2の領域32aは、基板本体23上面において、
図4に示すようにFET1の第2の電気的端子(ソース端子)24がはんだ25bで接続される領域である。第2の領域32aには、回路基板20aの厚さ方向に延伸する第2の放熱ビア43aが形成されている。
【0038】
図3(b)に示すように、回路基板20aの裏面において、基板表面の領域31aに対応する領域31bと、領域32aに対応する領域32bの全面にソルダーレジスト51bが塗布されている。
【0039】
すなわち、第1の放熱構造では、
図4に示すように、スイッチングFETの第1の電気的端子22の直下に配置された第1の放熱ビア41aと、第2の電気的端子24の直下に配置された第2の放熱ビア43aは、その基板裏面の開口部に塗布されたソルダーレジスト51bでビアカバーされており、基板を貫通しない。
【0040】
回路基板20aの層内部では、
図4に示すように、絶縁層23b,23dを挟む層23a,23c,23eに設けた導体パターン38a,38b,38cにより第1の放熱ビア41aが互いに電気的に接続されている。また、第2の放熱ビア43aも導体パターン39a,39b,39cに接続される構成を有する。
【0041】
回路基板20aの裏面は、コンパウンド52を介してベアリングホルダ13と密着している。コンパウンド52は、熱伝導性に優れるとともに電気的な絶縁性を有する。
【0042】
図4に示すように、第1の放熱構造において、基板本体23の裏面に最も近い導体パターン38c,39cは、他の導体パターン38a,38b,39a,39bよりも内層の平面方向に面積が大きい。
【0043】
これにより、回路基板20aに表面実装された発熱素子であるスイッチングFETで発生し、第1の放熱ビア41aと第2の放熱ビア43aそれぞれを伝導した熱は、これらの導体パターン38c,39cとコンパウンド52を介して効率的にベアリングホルダ13へ放熱される。
【0044】
なお、電流は、スイッチングFETの第1の電気的端子22と、第2の電気的端子24を流れていくため、両端子それぞれの直下のビアで放熱できることで高い放熱効果を得ることが可能になる。
【0045】
<第2の放熱構造>
本実施形態に係る回路基板における第2の放熱構造について説明する。
図5(a)は、第2の放熱構造を有する回路基板20bの表面を部分的に示しており、
図2に示す回路基板20のA部に対応する。
図5(b)は、
図5(a)に対応する回路基板20bの裏面を示す図である。また、
図6は、
図5(a)のC-C´矢視線に沿って回路基板20bを切断したときの断面図である。
【0046】
回路基板20bにおいて、上述した駆動側に配置された各スイッチングFET(
図5(a)ではFET1)を平面視したとき、その直下の領域である第3の領域31cには、
図5(a)、
図6に示すようにFET1の第1の電気的端子(ドレイン端子)22がはんだ25aにより基板本体23に接続されている。
【0047】
第3の領域31cには、回路基板20bの厚さ方向に延伸する第3の放熱ビア41bが形成されている。よって、FET1の第1の電気的端子22は、はんだ25aを介して第3の放熱ビア41bと電気的に接続される。
【0048】
さらに、FET1を平面視したときの第5の領域32cには、
図5(a)、
図6に示すようにFET1の第2の電気的端子(ソース端子)24がはんだ25bで接続されており、その領域32cに、回路基板20bの厚さ方向に延伸する第5の放熱ビア43bが形成されている。
【0049】
さらに第2の放熱構造では、
図5(a)に示すように、回路基板20bに実装されたFETの直下(電気的端子の直下)の領域31c,32cの近傍領域(隣接する領域)33a,35aそれぞれに、第4の放熱ビア41cと第6の放熱ビア43cが形成されている。
【0050】
図5(b)に示すように、回路基板20bの裏面において、基板表面の領域31c,32cに対応する領域31d,32dの全面にソルダーレジスト51bが塗布されている。一方、回路基板20bの表面の領域33a,35aと、それらに対応する裏面の領域33b,35bにおいて、第4の放熱ビア41cと第6の放熱ビア43cの開口部分を除く領域にソルダーレジスト51a,51bが塗布されている。
【0051】
よって、第2の放熱構造に係る回路基板20bは、
図5(b)、
図6に示すように、基板本体23の裏面における第3の放熱ビア41bと第5の放熱ビア43bの開口部分の領域31d,32dにソルダーレジスト51bを塗布することで、これら第3の放熱ビア41bと第5の放熱ビア43bはビアカバーされ、基板23を貫通しない。
【0052】
回路基板20bの表面および裏面では、第4の放熱ビア41c、第6の放熱ビア43cの開口部分を回避してソルダーレジスト51a,51bが塗布されており、放熱ビア41c,43cは、それらの開口部分でスルーホールが露出してビアが貫通したビアオープン状態になっている。
【0053】
回路基板20bの層内部において、
図6に示すように、第3の放熱ビア41bと第4の放熱ビア41cとが、絶縁層23b,23dを挟む層23a,23c,23eに設けた導体パターン48a,48b,48cによって互いに電気的に接続されている。
【0054】
さらに、回路基板20bの層内部において、第5の放熱ビア43bと第6の放熱ビア43cとが、層23a,23c,23eに設けた導体パターン49a,49b,49cによって互いに電気的に接続されている。
【0055】
よって、
図6に示すように、回路基板20に表面実装された発熱素子であるスイッチングFET1の第1の電気的端子(ドレイン端子)22で発生した熱は、FET1の直下に設けたビアカバーされた第3の放熱ビア41bと第4の放熱ビア41cを伝導し、回路基板20bの裏面とベアリングホルダ13との間に配置した、熱伝導性に優れた電気的な絶縁性を有するコンパウンド52を介して、ベアリングホルダ13へ放熱される。
【0056】
スイッチングFET1の第2の電気的端子(ソース端子)24で発生した熱は、第5の放熱ビア43bと第6の放熱ビア43cを伝導し、コンパウンド52を介してベアリングホルダ13へ放熱される。
【0057】
このように回路基板上に実装した発熱部品に対して、上述した第1の放熱構造および第2の放熱構造により、発熱部品の背面をヒートシンクに接触させて放熱する従来の構成に比べて、高い放熱効果を得ることができる。
【0058】
なお、ビアオープン状態の放熱ビアを設ける回路基板の領域は、上記の領域33a,35aに限定されない。例えば、
図5(a)に示すように、領域33a,35aに加えて領域37aにもビアオープン状態の放熱ビア(第7の放熱ビア45という)を設け、それらの放熱ビアを基板の層内部で電気的に接続してもよい。こうすることで、より放熱性を向上できる。
【0059】
図4、
図6等に示す放熱ビアの本数も一例であり、基板上における領域に応じて適宜、増減可能である。
【0060】
次に、本実施形態に係る回路基板におけるモータ制御回路とビア配置との関係について説明する。
【0061】
図7は、上述した回路基板20a,20bの駆動側に係る回路構成図である。
図8は、
図7の回路構成に対応させて、回路基板20bの第2の放熱構造における放熱ビアの配置を模式的に示している。
【0062】
図7および
図8においてB+,B-は、モータ15等の駆動電源(バッテリBT)の正極電位と負極電位の入力端子であり、それらは、
図1の外部コネクタ16に接続されている。回路基板20bの駆動側において、電源入力側は、コイル56と電解コンデンサ53で構成されるノイズフィルタを有する。ノイズフィルタにより、回路基板20bに供給された電源に含まれるノイズ等を吸収し、電源電圧を平滑することができる。
【0063】
コイル56は、例えば2つのコイル等からなるコモンモードコイルである。また、電解コンデンサ53は、例えば、
図2に示すように並列接続された3つの電解コンデンサC1~C3で構成される。
【0064】
パワーモジュールとしての駆動側は、バッテリBTからの電源電圧に異常が生じたとき等において電源供給を遮断する電源リレーとしてのFET7、バッテリの逆接続時において逆向きの電流が流れるのを防ぐ逆接保護リレーとしてのFET8を備える。
【0065】
さらに、モータ15に駆動電流(3相交流電流)を通電する6個のFET1~FET6からなる3相インバータ回路(FETブリッジ回路)であるスイッチング回路54を備える。FET1,3,5は、3相(U,V,W)の各相に対応する高電位側半導体スイッチング素子であり、FET2,4,6は3相の各相に対応する低電位側スイッチング素子である。
【0066】
スイッチング回路54を構成する6個のFET1~FET6は、例えば、マイクロコンピュータ、プリドライバ等で構成される制御回路(不図示)からの信号により、そのゲートが駆動され、オンまたはオフされる。このオンまたはオフ制御で生成されたU,V,Wの各相電流は、3つの端子U,V,Wからなる出力端子部27を介して電動モータ15に供給される駆動電流である。
【0067】
図8に示すように、FET7,8の直下の領域には、上述した第3の放熱ビア(
図6の符号41bで示す放熱ビア構成)が形成されている。なお、以降において説明する、いずれのFETにおいても、その直下の領域には、第3の放熱ビアが形成されている。
【0068】
図7のL10は、FET7への電源供給部(ドレイン端子)に隣接する領域であるため、上述した第4の放熱ビア(
図6の符号41cで示す放熱ビア構成)が形成されている。また、FET7とFET8の接続部位(
図7、
図8のL11)は、FET7とFET8のソース端子同士が接続される領域であるため、上述した第5の放熱ビア(
図6の符号43bで示す放熱ビア構成)が形成されている。
【0069】
図7に示すようにFET1とFET2は、正極の電源ラインL1と負極電位ライン(GND)L2間に接続され、モータ15のU巻線を流れるU相電流を生成する。FET3とFET4は、正極の電源ラインL1と負極電位(GND)ラインL2間に接続され、電動モータ15のV巻線を流れるV相電流を生成している。FET5とFET6は、正極の電源ラインL1と負極電位(GND)ラインL2との間に接続され、電動モータ15のW巻線を流れるW相電流を生成する。
【0070】
さらには、
図7に示すようにFET1とFET2との接続ノードP1と、モータ15への出力端子Uとの間には、U相電流を遮断可能な半導体リレーであるFET9が設けられている。同様に、FET3とFET4との接続ノードP2と、モータ15への出力端子Vとの間に設けたFET10は、V相電流を遮断可能な半導体リレーとして機能し、FET5とFET6との接続ノードP3と、モータ15への出力端子Wとの間に設けられたFET11は、W相電流を遮断可能な半導体リレーとして機能する。
【0071】
図7に示すように、電源側であるFET8のドレイン端子と、FET1,3,5のそれぞれのドレイン端子とが、正極の電源ラインである高電位パターンL1により電気的に接続される。よって、回路基板20bの高電位パターンL1の領域には、
図8に示すように第4の放熱ビアが形成されている。
【0072】
スイッチング回路54において、FET1,3,5各々のソース端子と、FET2,4,6各々のドレイン端子とが、中電位パターンL3,L4,L5により電気的に接続されている。また、接続ノードP1,P2,P3は、それぞれFET9,10,11のソース端子と接続される。
【0073】
したがって、
図8に示すように回路基板20bのパターンL3,L4,L5の領域において、FET1,3,5側とFET9,10,11側には第5の放熱ビアと第6の放熱ビア(
図6の符号43cで示す放熱ビア構成)が形成され、FET2,4,6側には第4の放熱ビアが形成されている。
【0074】
その結果、回路基板20bでは、パターンL3,L4,L5の領域において、第4の放熱ビアと第5の放熱ビアと第6の放熱ビアとが基板の層内部で互いに電気的に接続された構成を有する。
【0075】
一方、FET9,10,11のドレイン端子から出力端子U,V,Wへ繋がるパターンL6,L7,L8の領域には、第4の放熱ビアが形成されている。
【0076】
さらに回路基板20bの駆動側には、
図7に示すようにFET2とGNDラインL2間、FET4とGNDラインL2との間、FET6とGNDラインL2との間それぞれにシャント抵抗R1,R2,R3が設けられている。R1,R2,R3は、それぞれU相、V相、W相電流を検出する電流センサ(電流検出素子)として機能する。
【0077】
FET2とシャント抵抗R1間のパターンL12、FET4とシャント抵抗R2のパターンL13,FET6とシャント抵抗R3のパターンL14は、それぞれ低電位パターンを形成し、FET2,4,6のソース端子と接続されている。よって、パターンL12,L13,L14のFET2,4,6側には第5の放熱ビアが形成され、抵抗側には第6の放熱ビアが形成されている。
【0078】
なお、シャント抵抗R1,R2,R3のうちFET2,4,6のソース端子と繋がる逆側の部位は、それらの部位同士が電気的に接続されてグランド(GND)パターンL2を形成している。
【0079】
上述した高電位パターンL1、中電位パターンL3,L4,L5、低電位パターンL12,L13,L14、およびGNDパターンL2各々は、回路基板20におけるFET(半導体スイッチング素子)の実装側と反対側に投影されるベタパターンを形成する。
【0080】
以上説明したように本実施の形態に係る回路基板では、基板に表面実装された発熱素子(半導体スイッチング素子)で発生した熱を、実装表面側での大気中への放熱に加えて、第1の放熱構造のように発熱素子の直下に設けたビアカバーされたビアを介してベアリングホルダへ放熱することが可能となる。
【0081】
さらには、第2の放熱構造によれば、第1の放熱構造におけるビアカバーされたビアに加えて、それらの近傍に設けたビアオープンされたビアを介してベアリングホルダへ効率的に放熱できる。その結果、発熱電子部品が搭載された回路基板において、その発熱電子部品の背面放熱が不要となり、低コストで基板の放熱性と生産性を向上できる。
【0082】
その際、ソルダーレジストの塗布によりビアカバーすることで、基板を貫通しないビアとなるので、発熱素子の実装用はんだがビアを介して基板の裏側に回り込むことがなく、短絡の発生を防止して基板実装の生産性を上げることができる。
【0083】
なお、ソルダーレジストの塗布によりビアカバーすることで、コストアップにはならずに基板を貫通しないビアができる。併せて、基板裏面において、塗布されたソルダーレジストの厚さが、ビアオープンされたビアが配置された領域およびビアカバーされたビアが配置された領域に渡って均一になるので、回路基板とベアリングホルダとの密着性が向上する。その結果、回路基板とベアリングホルダ間に充填するコンパウンドの量を最少にでき、これにより低コスト化が可能になる。
【0084】
さらには、モータの各相に対応する高電位側半導体スイッチング素子各々の特定の電気的端子同士を電気的に接続した高電位ベタパターン、それら高電位側半導体スイッチング素子各々の他の電気的端子と、各相に対応する低電位側スイッチング素子各々の特定の電気的端子とを電気的に接続した中電位ベタパターン、低電位側スイッチング素子各々の他の電気的端子と、各相に対応する電流検出素子の一端とを電気的に接続した低電位ベタパターン、および、各相の電流検出素子の他端同士を電気的に接続したGNDベタパターンのように、ブリッジ回路等を構成する半導体スイッチング素子の電位に応じたベタパターンを基板の内層に設けることで、発熱部品に対する高い放熱効率を得ることができる。
【0085】
一方、モータ制御装置に搭載された回路基板において、上述した放熱構造を採用することで、回路基板上の発熱部品で発した熱を、低コストかつ高効率で放熱可能になる。また、このような効率的な放熱機構を有するモータ制御装置をパワーステアリングシステムに搭載することで、パワーステアリングシステムの小型化、低コスト化が可能になる。
【0086】
さらに、車両において上記のパワーステアリングシステムを使用することで、車両の高放熱化と低コスト化ができる。
【符号の説明】
【0087】
10 モータ制御装置
12 ユニットカバー
13 ベアリングホルダ
14 モータカバー
15 モータ
16 外部コネクタ
20,20a,20b 回路基板
22 第1の電気的端子
23 基板本体
24 第2の電気的端子
25a,25b はんだ
27 出力端子部
28 回転センサIC
30 マイクロプロセッサ
38a~38c,39a~39c,48a~48c,49a~49c 導体パターン
41a 第1の放熱ビア
41b 第3の放熱ビア
41c 第4の放熱ビア
43a 第2の放熱ビア
43b 第5の放熱ビア
43c 第6の放熱ビア
51a,51b ソルダーレジスト
52 コンパウンド
53,C1~C3 電解コンデンサ
54 スイッチング回路
56 コイル
BT バッテリ
L1 電源ライン
L2 グランド(GND)ライン