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  • 特開-熱収縮性多層フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160345
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】熱収縮性多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
B32B27/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065034
(22)【出願日】2021-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】中尾 宰
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB24B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK25C
4F100AK73A
4F100AK73B
4F100AL09A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA17B
4F100CC00C
4F100DD01C
4F100DE01B
4F100EH20
4F100EH46C
4F100GB15
4F100JA03
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JC00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】抗菌性能を有する熱収縮性多層フィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る熱収縮性多層フィルムは、第1面及び第2面を有し、熱可塑性樹脂を含有する基材と、前記基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層され、抗菌微粒子が分散された、熱可塑性樹脂を含有する中間層と、前記中間層に積層され、前記中間層を保護する樹脂製のオーバーコート層と、を備え、前記オーバーコート層から前記抗菌微粒子の少なくとも一部が露出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有し、熱可塑性樹脂を含有する基材と、
前記基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層され、抗菌微粒子が分散された、熱可塑性樹脂を含有する中間層と、
前記中間層に積層され、前記中間層を保護する樹脂製のオーバーコート層と、
を備え、
前記オーバーコート層から前記抗菌微粒子の少なくとも一部が露出している、熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
前記オーバーコート層の厚みは、0.5~3.0μmである、請求項1に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
前記抗菌微粒子の最頻粒子径は、オーバーコート層の厚みよりも大きい、請求項2に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
前記基材及び前記中間層は、スチレン系樹脂を含有している、請求項1から3のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
前記オーバーコート層は、アクリル系樹脂を含有している、請求項1から4のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
前記中間層は、アンチブロッキング用微粒子をさらに含有している、請求項1から5のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項7】
第1面及び第2面を有し、抗菌微粒子が分散された、熱可塑性樹脂を含有する基材と、
前記基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層され、前記基材を保護する樹脂製のオーバーコート層と、
を備え、
前記オーバーコート層から前記抗菌微粒子の少なくとも一部が露出している、熱収縮性多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル、金属罐等の容器の多くには、熱可塑性樹脂からなる熱収縮性フィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-161147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は熱収縮フィルムにおいても抗菌性能が要望されているが、十分な抗菌性能を有する熱収縮性多層フィルムは未だ提案されていなかった。本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、抗菌性能を有する熱収縮性多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.第1面及び第2面を有し、熱可塑性樹脂を含有する基材と、
前記基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層され、抗菌微粒子が分散された、熱可塑性樹脂を含有する中間層と、
前記中間層に積層され、前記中間層を保護する樹脂製のオーバーコート層と、
を備え、
前記オーバーコート層から前記抗菌微粒子の少なくとも一部が露出している、熱収縮性多層フィルム。
【0006】
項2.前記オーバーコート層の厚みは、0.5~3.0μmである、項1に記載の熱収縮性多層フィルム。
【0007】
項3.前記抗菌微粒子の最頻粒子径は、オーバーコート層の厚みよりも大きい、項2に記載の熱収縮性多層フィルム。
【0008】
項4.前記基材及び前記中間層は、スチレン系樹脂を含有している、項1から3のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【0009】
項5.前記オーバーコート層は、アクリル系樹脂を含有している、項1から4のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【0010】
項6.前記中間層は、アンチブロッキング用微粒子をさらに含有している、項1から5のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【0011】
項7.第1面及び第2面を有し、抗菌微粒子が分散された、熱可塑性樹脂を含有する基材と、
前記基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層され、前記基材を保護する樹脂製のオーバーコート層と、
を備え、
前記オーバーコート層から前記抗菌微粒子の少なくとも一部が露出している、熱収縮性多層フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗菌性能を有する熱収縮性多層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の熱収縮性多層フィルムの一例を示す断面図である。
図2】本発明の熱収縮性多層フィルムの一例を示す断面図である。
図3】本発明の熱収縮性多層フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る熱収縮性多層フィルムの一実施形態について説明する。この熱収縮性多層フィルムは、第1面及び第2面を有するシート状の基材と、この基材の第1面及び第2面の少なくとも一方に積層される中間層と、この中間層に積層されるオーバーコート層3と、を備えている。したがって、図1に示すように、本実施形態にかかる熱収縮性多層フィルムは、基材1の両面に中間層2が積層され、一方の中間層2にオーバーコート層3が積層される態様と、図2に示すように、基材1の一方の面に中間層2が積層され、この中間層2にオーバーコート層3が積層される態様と、を取り得るようになっている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0015】
<1.基材>
基材1は、従来公知の熱可塑性樹脂材料を適宜選択して用いることができ、その材料について特に限定されない。このような材料としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン樹脂等を挙げることができるが、好ましい熱収縮性を得られる点でポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂は単独でもよいし、2種以上を組み合わせても良い。
【0016】
<1-1.スチレン系樹脂>
スチレン系樹脂としては、熱収縮性を発現する観点から、例えば、スチレンブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル系共重合体等を用いることができる。
【0017】
スチレン系樹脂のビカット軟化温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが好ましい。このスチレン系樹脂が、ビカット軟化温度の異なる2種以上のスチレン系樹脂を含有する混合樹脂である場合、このスチレン系樹脂のビカット軟化温度は、各スチレン系樹脂のビカット軟化温度と配合割合(重量比)との積を合計して算出した見掛けのビカット軟化温度を意味する。
【0018】
<1-2.スチレン系エラストマー>
基材1は前述の<1-1.スチレン系樹脂>の低温切れ抑制のためにスチレン系エラストマー、水添スチレン系熱可塑性エラストマー等をさらに含有することができ、スチレンエラストマーとしては、上記スチレン系樹脂成分100重量部に対するスチレン系エラストマーの含有量は、15重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましい。
【0019】
<1-3.基材の厚み>
基材1の厚みは、例えば、10~60μmであることが好ましく、15~50μmであることがさらに好ましい。
【0020】
<2.中間層>
中間層2は、熱可塑性樹脂と、抗菌微粒子4とを含有している。図1及び図2の拡大図に示すように、抗菌微粒子4の少なくとも一部は、熱可塑性樹脂から露出している。
【0021】
<2-1.熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、前述の基材1と同じ樹脂材料から選択することができる。また、アンチブロッキング性能を発現するためのアンチブロッキング剤や、滑性を発現するために滑剤を付加的に含有することもできる。熱可塑性樹脂材料の詳細は、基材1で説明したとおりであるが、以下、基材1と相違する点について、説明する。なお、図1及び図2の拡大図は、微粒子の役割を説明するために誇張した概略図である。この点は、後述する図3も同じである。
【0022】
中間層2を構成するスチレン系樹脂のビカット軟化温度は、自然収縮率を抑制するために基材1のスチレン系樹脂よりも高いことが好ましく、70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましい。このスチレン系樹脂が、ビカット軟化温度の異なる2種以上のスチレン系樹脂を含有する混合樹脂である場合、このスチレン系樹脂のビカット軟化温度は、各スチレン系樹脂のビカット軟化温度と配合割合(重量比)との積を合計して算出した見掛けのビカット軟化温度を意味する。
【0023】
<2-2.抗菌微粒子>
抗菌微粒子4は、銀イオン、銅イオンなどの抗菌性を有する金属イオン含有無機材を用いることができる。このような金属イオン含有無機材の最頻粒子径は、例えば、1.0~15.0μmであることが好ましく、3.0~12.0μmであることがさらに好ましく、5.0~10.0μmであることが特に好ましい。この最頻粒子径は、後述するオーバーコート層3の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、抗菌微粒子4がオーバーコート層3から露出しやすくなる。さらには、この最頻粒子径は、中間層2の熱可塑性樹脂の厚みよりも大きいことが好ましい。但し、抗菌微粒子4の含有量を調整することで、その最頻粒子径をオーバーコート層及び中間層の熱可塑性樹脂の厚みよりも小さくすることもできる。最頻微粒子径は、例えば、公知のレーザー回析・散乱法等により測定することができる。
【0024】
抗菌微粒子4の含有量は、例えば、中間層2を構成する熱可塑性樹脂成分と抗菌微粒子100重量部に対して、0.1~5.0重量部(10wt%MB換算で1~50重量部)であることが好ましく、0.2~3.0重量部(10wt%MB換算で2~30重量部)であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲であると、抗菌性能をより発現しやすくなる。
【0025】
なお、抗菌微粒子4は、2つの中間層2の両方に含有させなくてもよく、例えば、一方の中間層2にのみ含有させることができる。
【0026】
<2-3.アンチブロッキング剤>
付加的に用いられるアンチブロッキング剤(アンチブロッキング用微粒子)としては、有機系微粒子または無機系微粒子のいずれも用いることができる。有機系微粒子としては、アクリル系樹脂微粒子、スチレン系樹脂微粒子、スチレン―アクリル系樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン系樹脂微粒子等の有機系微粒子を用いることができる。これらは架橋されていても架橋されてなくてもよいが、微粒子の耐熱性を高めるために架橋されていることが望ましい。中でも上記スチレン系樹脂との相溶性の観点からアクリル系樹脂微粒子が好ましく、ポリメタクリル酸メチル系架橋微粒子がさらに好ましい。また、上記有機系微粒子のうち、市販品としては、例えば、テクポリマー(積水化成品工業社製)、ファインスフェア(日本ペイント社製)、ガンツパール(アイカ工業社製)、アートパール(根上工業社製)等が挙げられる。
【0027】
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、アルミナ等を用いることができる。
【0028】
上記微粒子の最頻粒子径は、例えば、1.0~7.0μmであることが好ましく、1.2~6.7μmであることが好ましく、1.5~6.5μmであることがさらに好ましく、2.0~6.3μmであることが特に好ましい。上記最頻粒子径が上記範囲であると、凝集を抑えてトラッピング不良によるインキとびを効果的に抑制することができる。上記最頻粒子径は、公知のレーザー回折・散乱法等により測定した。
【0029】
上記微粒子の含有量は、例えば、中間層2を構成する熱可塑性樹脂成分と抗菌微粒子100重量部に対して、0.01~0.20重量部(10wt%MB換算で0.1~2重量部)であることが好ましく、0.03~0.1重量部(10wt%MB換算で0.3~1重量部)であることがさらに好ましい。上記含有量が上記範囲であると、上述したように、中間層2の表面に形成された凹凸により、熱収縮性多層フィルムの耐ブロッキング性に加え、トラッピング不良によるインキとびを抑制することができる。
【0030】
なお、アンチブロッキング剤は、両方の中間層2に含有させることもできるし、一方の中間層2にのみ含有させることもできる。例えば、一方の中間層2に抗菌微粒子4を含有させ、他方の中間層2にアンチブロッキング剤を含有させることもできる。
【0031】
<2-4.滑剤>
付加的に用いられる滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられ、滑剤の含有量は、例えば、中間層2を構成する熱可塑性樹脂成分と抗菌微粒子100重量部に対して、0.01~0.20重量部(10wt%MB換算で0.1~2重量部)であることが好ましく、0.03~0.15重量部(10wt%MB換算で0.3~1.5重量部)であることがさらに好ましい。
【0032】
<2-5.厚み>
中間層2の熱可塑性樹脂の厚みは、例えば、1~10μmであることが好ましく、2.0~6.0μmであることがさらに好ましい。
【0033】
<3.オーバーコート層>
オーバーコート層3は、中間層2を保護するためのものである。オーバーコート層は、アクリル系樹脂、セルロース樹脂等の樹脂材料で形成することができる。オーバーコート層の厚みは、例えば、0.5~3.0μmとすることが好ましく、1.0~2.0μmとすることがさらに好ましい。特に、オーバーコート層3の厚みが上述した抗菌微粒子4の最頻粒子径よりも小さいと、抗菌微粒子4がオーバーコート層3から露出しやすくなり、抗菌性能がより発現しやすくなる。さらに、抗菌微粒子4の露出により、この熱収縮性多層フィルムの表面に凹凸が形成されるため、アンチブロッキング性能を発現することができる。アンチブロッキング性能のためには、熱収縮性多層フィルムの表面粗さRzが、例えば、1~7μmであることが好ましく、1.5~6.5μmであることがより好ましく、2~6μmであることがさらに好ましい。
【0034】
オーバーコート層3の滑性は、中間層2の保護の観点から例えば、オーバーコート層3と中間層2の組み合わせの静摩擦係数(μs)および動摩擦係数(μd)は、0.7以下であることが好ましい。また、オーバーコート層3の傷付き防止の観点から例えば、オーバーコート層3同士の組み合わせの静摩擦係数(μs)および動摩擦係数(μd)は0.5以下であることが好ましい。
【0035】
なお、オーバーコート層3は、両方の中間層2に積層することもできる。また、例えば、抗菌微粒子4が含有されている中間層2にオーバーコート層3を積層することもできる。
【0036】
<4.熱収縮性多層フィルムの厚み>
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さは、例えば、20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、80μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。熱収縮性多層フィルム全体の厚さが上記範囲内であると、優れた熱収縮性、印刷又はセンターシール等の優れたコンバーティング性、優れた装着性が得られる。
【0037】
<5.その他の成分>
上記基材1、中間層2、及びオーバーコート層3には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0038】
<6.熱収縮性多層フィルムの熱収縮性能>
本発明の熱収縮性多層フィルムを70℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率は、5%以上であることが好ましく、30%以下であることが好ましい。また、80℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率は、30%以上であることが好ましく、60%以下であることが好ましい。また、98℃温水中に10秒間浸漬したときの熱収縮率は、60%以上であることが好ましく、76%以下であることが好ましい。熱収縮率が上記範囲内であると、収縮不良等の問題を起こすことがなく、熱収縮性多層フィルムとして好適に使用することができる。なお、収縮の方向はTD方向及びMD方向であるが、特にTD方向の収縮率が上記の範囲にあることが好ましい。
【0039】
<7.熱収縮性多層フィルムの製造方法>
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法は特に限定されないが、基材1と中間層2は、共押出法により同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
【0040】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては、具体的には、例えば、上記基材1及び中間層2を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、ダイスによりシート状に押出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法が挙げられる。上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法又はこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度は、フィルムを構成する樹脂の軟化温度、熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性等に応じて変更されるが、65℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることが好ましく、115℃以下であることがより好ましい。
【0041】
主収縮方向の延伸倍率は、フィルムを構成する樹脂、延伸手段、延伸温度等に応じて変更されるが、2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、7倍以下が好ましく、6倍以下がより好ましい。
【0042】
このような延伸温度及び延伸倍率とすることにより、特に、中間層2の延伸によって、抗菌微粒子4(あるいはアンチブロッキング剤)周囲の樹脂が薄くなり、抗菌微粒子4等による凹凸を中間層2に生じさせることができる。
【0043】
これに続いて、中間層2の表面にオーバーコート層用の塗布液を塗布する。オーバーコート層用の塗布液は、例えば、スクリーン印刷などの方法で塗布することができる。その後、例えば、15~30℃で乾燥すると、オーバーコート層3が形成され、熱収縮性多層フィルムが完成する。このとき、抗菌微粒子4の少なくとも一部がオーバーコート層3から外部に露出する。
【0044】
<8.熱収縮性多層フィルムの用途>
本発明の熱収縮性多層フィルムの用途は特に限定されないが、本発明の熱収縮性多層フィルムは、ミシン目のカット性に優れ、耐落下衝撃性に優れるとともに、透明性にも優れることから、例えば、ペットボトル、金属罐等の容器に装着される熱収縮性ラベルのベースフィルムとして好適に用いられる。
【0045】
<9.熱収縮性多層フィルムの他の態様>
上記の説明では、基材1、中間層2、及びオーバーコート層3により、熱収縮性多層フィルムを構成しているが、基材1と中間層2を一体化した第2基材を形成し、図3に示すように、この第2基材5の表面に上記中間層2と同様の構成を有する層を形成することで、熱収縮性多層フィルムを構成することができる。なお、第2基材5の両方の面にオーバーコート層3を形成することもできる。
【0046】
この熱収縮性多層フィルムの第2基材5は、上述した中間層2と同じ材料で形成することができる。この第2基材5の厚みは、例えば、10~60μmとすることができる。また、微粒子をオーバーコート層3側に偏在させた第2基材5とオーバーコート層3からなる構成も本願の発明の範疇である。具体的には、基材と、<1.基材>の項で説明したのと同じ組成の樹脂組成物と微粒子から成る層と、を共押出により設けることで製造することが可能である。このような場合、断面写真では2層として観察される。その後、押し出されたフィルムの表面にオーバーコート層3を形成することができる。
【0047】
<10.特徴>
本発明によれば、中間層2に抗菌微粒子4が含有され、オーバーコート層3から露出しているため、この抗菌微粒子4により抗菌性能を発現することができる。また、この抗菌微粒子4により、熱収縮性多層フィルムの表面に凹凸を形成することができるため、アンチブロッキング性能を発現することができる。
【0048】
また、オーバーコート層3により中間層2が保護されるため、中間層2が傷つくのを防止することができる。
【実施例0049】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0050】
<1.実施例及び比較例の準備>
以下の通り、実施例1,2及び比較例に係る熱収縮性多層フィルムを作製した。実施例1,2及び比較例は、図1に示す4層構造を有している。ここでは、基材の各面に積層される中間層を、それぞれ第1中間層及び第2中間層と称することとする。実施例1,2及び比較例においては、両中間層にアンチブロッキング剤(AB剤)が含有されている。また、実施例1,2においては、第1中間層に、さらに抗菌微粒子が含有されている。
【0051】
基材及び各中間層を構成する原料として表1に示す成分を用い、これらを表1に示す割合で混合することで、実施例1,2及び比較例に係る基材、各中間層を構成する原料組成物を得た。また、オーバーコート層用の塗布液として、アクリル系樹脂を含有する酢酸エステルとIPAの混合溶液を準備した。
【0052】
続いて、上記基材及び中間層を構成する原料組成物を、バレル温度が160~200℃の押出機に投入し、200℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、50℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン102℃、延伸ゾーン89~91℃、熱固定ゾーン86℃のテンター延伸機内で延伸倍率3.5倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、主収縮方向と直交する方向がMD、主収縮方向がTDとなる熱収縮性多層フィルムを得た。実施例1,2においては、第1中間層、基材層、及び第2中間層の厚みの比を1:9:1とした。一方、比較例においては、第1中間層、基材、及び第2中間層の厚みの比を1:6:1とした。続いて、この延伸シートの第1中間層面にオーバーコート層用の塗布液をスクリーン印刷によって塗布し乾燥した。こうして、表2に示す厚みの熱収縮性多層フィルムを作製した。
【0053】
【表1】
基材及び両中間層における各組成の単位は、部数である。
【0054】
【表2】
【0055】
<2.評価>
上記実施例1,2及び比較例について、以下の評価を行った。
【0056】
<2-1.抗菌試験>
JIS Z2801 5項に準拠した方法で測定した。使用した菌株は大腸菌NBRC3972、と黄色ブドウ球菌 NBRC12732である。
【0057】
<2-2.ブロッキング>
実施例及び比較例の熱収縮性フィルムを30mm×100mmにカットして2枚のサンプルを作成した。得られたサンプルを重ね合わせ、その上から荷重5kg/100cm2を載せ、40℃の条件で48時間静置した。その後、引張速度200m/minでせん断方向に引張り、せん断剥離強度を測定し、以下の基準で評価した。
【0058】
後述する表3中の外外とは、第1中間層同士を接触させたときのブロッキングの評価であり、内外とは、第1中間層と第2中間層とを接触させたときのブロッキングの評価である。
【0059】
<2-3.滑性>
表面性測定機(新東科学株式会社製、14FW)を用いて、ASTM-D1894に準拠し、オーバーコート層面(外)、第2中間層面(内)として、内外・外外のそれぞれの組み合わせの静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)を測定した。
【0060】
<2-4.湿熱収縮率>
実施例及び比較例で得られたフィルムを、MD100mm×TD100mmの大きさのサンプルにカットし試験片を得た。得られた試験片を、70℃、80℃、90℃、98℃の温水及び沸騰水(100℃)に10秒間浸漬させた後、熱収縮性多層フィルムを取り出し、15℃の水に5秒間浸漬し、次式に従いTD方向の熱収縮率を求めた。なお、収熱縮率は、各実施例及び比較例につき、3つの試験片を用いて測定し、その平均値を用いた。
熱収縮率(%)={(100-L)/100}×100
また、抗菌微粒子の添加前後の熱収縮率の変化量も測定した。
【0061】
<2-5.ヘイズ>
JIS Z7136に準ずる方法により、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて、実施例1,2及び比較例に対しヘイズを測定した。なお、ヘイズについては、各実施例及び比較例につき、4つの試験片を用いて測定し、その平均値を算出した。
【0062】
<2-6.光沢度>
JIS Z8741に準ずる方法により、日本電色工業社製のVG-2000型を用いて、実施例1,2及び比較例に対し、入射角45°における光沢度を測定した。
【0063】
<2-7.表面粗さ>
実施例1,2及び比較例を、東京精密株式会社製サーフコム570Aにセットし、ISO13565-1規格に準拠して、Ra,Ramax,Rzを測定した。測定条件は次のとおりであった。
・カットオフ:0.8mm
・測定端子の駆動速度:0.3mm/秒
・測定長さ:20.0mm
・測定倍率:縦倍率×10,000、横倍率×5
【0064】
<2-8.評価結果>
評価結果は以下の通りである。
【表3】
【0065】
以上の結果によると、実施例1,2は、いずれも抗菌微粒子が含有されているので、抗菌性能が発現されている。抗菌試験では2.0以上の評価が得られればよいとされるため、実施例1,2はいずれも十分な抗菌性能を有している。なお、比較例には抗菌微粒子が含有されていないため、抗菌性能は発現していない。
【0066】
ブロッキング試験の結果は低いほど、アンチブロッキング性能が高い。実施例1,2及び比較例は、いずれの中間層にもアンチブロッキング剤が含有されているため、十分なアンチブロッキング性能を有している。特に、実施例1,2においては、第1中間層に、アンチブロッキング剤に加え、抗菌微粒子が含有されているため、特に「外外」のアンチブロッキング性能が、比較例に較べて高くなっている。したがって、抗菌微粒子もアンチブロッキング性能に寄与していることが分かる。
【0067】
この点は、例えば、表面粗さの評価からも考察することができる。すなわち、実施例2は、実施例1に比べ粒径の大きい抗菌微粒子を用い、さらに含有量も多いため、表面粗さが実施例1及び比較例よりも大きくなっている。
【0068】
実施例1,2を比較すると、実施例1は、実施例2に比べ粒径の小さい抗菌微粒子を用い、さらに含有量も低いため、ヘイズが小さくなっている。同様の理由から光沢度も高くなっている。
【0069】
熱収縮率について、実施例1,2は、抗菌微粒子が含有されていない比較例に対して±5%(熱収縮率の変化量)であった。この熱収縮率は、実用性の高い十分なものである。
【0070】
以上より、実施例1,2は、抗菌性能、アンチブロッキング性能を有する熱収縮性多層フィルムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 基材
2 中間層
3 オーバーコート層
4 抗菌微粒子
図1
図2
図3