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  • 特開-抗がん剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160353
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】抗がん剤
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20221012BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20221012BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61M25/00 540
A61M25/098
A61M25/01
A61K45/00
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021138447
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】301037660
【氏名又は名称】佐藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
【テーマコード(参考)】
4C084
4C267
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB26
4C267AA04
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB26
4C267CC08
4C267EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】副作用をできるだけ発生させずに高い治療効果を上げ、かつ、同様の治療が効くがん以外の病気に対して副作用をできるだけ発生させない抗がん剤を提供する。
【解決手段】体内で磁界によって移動できるヘッドと、先端が開口した状態で前記ヘッドに取り付けられ、前記先端の開口部を介して液体を注入又は吸引可能な管と、前記ヘッド又は前記管の先端側の位置に存在するマークとを有し、前記ヘッドに磁界を付与可能な電磁石と、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きとを制御可能な移動制御部とを有する移動装置と、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きを調節して、前記管が目的位置に対してほぼ真っ直ぐに挿し込まれるように前記ヘッドの進行方向制御を行うことを特徴とする注入・吸引装置を使用して行う治療の対象である人間または動物に使うための、抗がん剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料から形成され、体内で磁界によって移動できるヘッドと、
先端が開口した状態で前記ヘッドに取り付けられ、前記先端の開口部を介して液体を注入又は吸引可能な管と、
前記ヘッド又は前記管の先端側の位置に存在するマーク
とを有し、
前記ヘッドに磁界を付与可能な電磁石と、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きとを制御可能な移動制御部とを有する移動装置と、
前記マークの位置を求め、前記マークの位置に基づいて前記ヘッドの位置を検出可能な位置検出装置
によって、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きを調節して、前記管が目的位置に対してほぼ真っ直ぐに挿し込まれるように前記ヘッドの進行方向制御を行うことを特徴とする注入・吸引装置を使用して行う治療の対象である人間または動物に使うための、
その分子が毛細血管を含む血管から血管外の組織へほぼ移動しないことを特徴とする、抗がん剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、抗がん剤は、がん細胞を破壊するのと同様に健康な細胞も破壊してしまうせいで、脱毛、吐き気・嘔吐・食欲不振、感染症、出血、下痢・便秘、口内炎、しびれ・筋肉痛、倦怠感などの副作用が発生してしまっていた。このため、逆に抗がん剤の副作用を弱めようとすると、抗がん効果が低くなってしまうものが多かった(特許6238414号公報参照)。これらは、抗がん剤をがん以外の病気の治療に使用する場合も同様である。
【0003】
また、特に抗がん効果が高い抗がん剤は、通常、その分子が毛細血管などの血管から血管外の組織にも移動していた。そして、その血管外の組織には、がん組織だけではなく健康な組織も含まれるため、副作用が大幅に強まってしまっていた。一般に、抗がん剤の分子が血管の内壁を構成する細胞に作用して血管を破壊することにより発生する副作用よりも、抗がん剤の分子が血管外の非がん組織へ移動することにより発生する副作用の方が強い。これらは、抗がん剤をがん以外の病気の治療に使用する場合も同様である。
【0004】
また、特願2020-039430号公報などに記載の注入・吸引装置(または同様の機能を持つ装置)を使用してがんの治療を行う場合、固形がん(がん以外の病気の場合は固形がんに似た特徴を持つ細胞群、すなわち、特定の臓器や組織などに明らかな塊として認められる充実性の細胞群)には劇的な効果があるが、血液がん(がん以外の病気の場合は血液がんに似た特徴を持つ細胞群、すなわち、塊をつくらず個別に発生する細胞群)だとがん細胞が血液中などを移動し続けることが多く、通常、効果が低かった。なお、固形がんにおける循環がん細胞(CTC)も、血液がん細胞と同様である。これらは、特願2020-039430号公報などに記載の注入・吸引装置(または同様の機能を持つ装置)をがん以外の病気の治療に使用する場合も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6238414号公報
【0006】
【特許文献2】特願2020-039430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特願2020-039430号公報などに記載の注入・吸引装置(または同様の機能を持つ装置)を併用することにより、固形がんに対しても血液がんに対しても副作用をできるだけ発生させずに高い治療効果を上げ、かつ、同様の治療が効くがん以外の病気に対して副作用をできるだけ発生させずに高い治療効果を上げることが可能な抗がん剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、磁性材料から形成され、体内で磁界によって移動できるヘッドと、先端が開口した状態で前記ヘッドに取り付けられ、前記先端の開口部を介して液体を注入又は吸引可能な管と、前記ヘッド又は前記管の先端側の位置に存在するマークとを有し、前記ヘッドに磁界を付与可能な電磁石と、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きとを制御可能な移動制御部とを有する移動装置と、前記マークの位置を求め、前記マークの位置に基づいて前記ヘッドの位置を検出可能な位置検出装置によって、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きを調節して、前記管が目的位置に対してほぼ真っ直ぐに挿し込まれるように前記ヘッドの進行方向制御を行うことを特徴とする注入・吸引装置を使用して行う治療の対象である人間または動物に使うための、その分子が毛細血管を含む血管から血管外の組織へほぼ移動しないことを特徴とする、抗がん剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特願2020-039430号公報などに記載の注入・吸引装置(または同様の機能を持つ装置)を併用することにより、固形がんに対しても血液がんに対しても副作用をできるだけ発生させずに高い治療効果を上げ、かつ、同様の治療が効くがん以外の病気に対して副作用をできるだけ発生させずに高い治療効果を上げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る抗がん剤の一例の薬物動態の特徴を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略したものもある。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る抗がん剤の一例の薬物動態の特徴を説明するための概念図である。動脈10、小動脈20、静脈30、小静脈40、毛細血管50を備える人体P等の体内において、抗がん剤の分子60は、動脈10、小動脈20、静脈30、小静脈40、毛細血管50等の血管から外へ通り抜けることなどは通常はできず、通常はそれらの血管から血管外の組織へほぼ移動しない。
【0013】
また、図1に明示されていないが、「血管壁以外を経由する、抗がん剤の分子60の毛細血管を含む血管からの血管外の組織への移動」も、通常はほぼ発生しない。
【0014】
第1の実施の形態では、
磁性材料から形成され、体内で磁界によって移動できるヘッドと、
先端が開口した状態で前記ヘッドに取り付けられ、前記先端の開口部を介して液体を注入又は吸引可能な管と、
前記ヘッド又は前記管の先端側の位置に存在するマーク
とを有し、
前記ヘッドに磁界を付与可能な電磁石と、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きとを制御可能な移動制御部とを有する移動装置と、
前記マークの位置を求め、前記マークの位置に基づいて前記ヘッドの位置を検出可能な位置検出装置
によって、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きを調節して、前記管が目的位置に対してほぼ真っ直ぐに挿し込まれるように前記ヘッドの進行方向制御を行うことなどを特徴とする注入・吸引装置を利用する。これは、通常は、特願2020-039430号公報などに記載の注入・吸引装置(または同様の機能を持つ装置)を指す。
【0015】
第1の実施の形態に係る抗がん剤は、例えば、この注入・吸引装置を使用して行う治療の対象である人間または動物に使うための抗がん剤であり、かつ、その抗がん剤の分子60が毛細血管を含む血管から血管外の組織へほぼ移動しないことなどを特徴とする。
【0016】
一般に、抗がん剤の分子が毛細血管を含む血管から血管外の組織(健康な組織など)へほぼ移動しなければ、血液中を漂う血液がん(がん以外の病気の場合は血液がんに似た特徴を持つ細胞群、すなわち、塊をつくらず個別に発生する細胞群)の細胞のみを重点的に殺すことができる。このとき、血管の内壁を構成する細胞に作用して血管も破壊するが、前述の通り、抗がん剤の分子がEPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)などにより血管外の組織へ移動することにより生じる細胞の破壊に比べれば、通常は小さな破壊で済む。
【0017】
これを利用して、第1の実施の形態では、特願2020-039430号公報などに記載の注入・吸引装置(または同様の機能を持つ装置)を使用して主に固形がんを治療し、かつ、第1の実施の形態に係る抗がん剤を使用して主に血液がんを治療することで、がんなどの病気に対して副作用をできるだけ抑えつつ高い治療効果が得られる。
【0018】
一般に、抗がん剤の分子の直径が数ナノメートル以下である場合、腎臓から尿中に容易に排泄されてしまうため、体内に滞留させることができず、薬としての効果が出にくくなる。また、一般に、抗がん剤の分子の直径が400ナノメートル以上になると、免疫機構が働き、マクロファージなどによる異物排除により体内から素早く排除されてしまい、薬としての効果が出にくくなる。このため、分子の直径が数ナノメートル以下の抗がん剤においてそれぞれの分子を、直径が数ナノメートル~400ナノメートル(すなわち、腎臓から尿中に容易に排泄されず、かつ、免疫機構により排除されにくい大きさ)の膜であり、かつ、病変部に到達すると破壊される膜で包み込み、病変部において抗がん剤をリリースさせる抗がん剤の投与方法が存在する。
【0019】
この人体の働きなどを参考に、抗がん剤の分子60の直径を本発明の目的を達成するのに適した値にしてもよい。
【0020】
例えば、抗がん剤の分子60の直径を400ナノメートルに近い値などの、免疫機構により排除されにくい範囲で、できるだけ大きな値にしてもよい。これにより、がん組織の血管内皮細胞間や炎症部位に存在する直径150~300ナノメートル程度の開口部を通りにくくなり、EPR効果における分子の飛び出し(すなわち、Enhanced Permeation効果)の発生を抑えられる。
【0021】
また、治療対象の人間または動物に免疫抑制剤などを投与しておき(主に、免疫機構による排除の発生を抑えるため)、抗がん剤の分子60の直径を400ナノメートル以上にしてもよい。通常、分子の直径を十分に大きくすることにより、その分子が毛細血管を含む血管から血管外の組織へ移動しない状態にしやすくなる。なお、人間の毛細血管の直径はたいてい5~20マイクロメートル程度であり、7マイクロメートル程度のものが多いが、その場合の抗がん剤の分子60の直径は、通常は、たいていの毛細血管を通り抜けられる値(例えば、5マイクロメートルなど)以下となる。
【0022】
また、上にも例があるが、EPR効果における分子の飛び出しが生じにくい状態にしてもよい。例えば、がん組織の血管内皮細胞間や炎症部位に存在する直径150~300ナノメートル程度の開口部から血管外の組織へ移動した分子は、健康な組織も破壊してしまうおそれがあるため、通常はその方が好ましい。一般に、EPR効果における分子の飛び出しは、がん組織だけではなく、「活性酸素、AGEs、アルコールの代謝などにより発生するアルデヒド、食品添加物等の化学物質による破壊」「アレルギーに由来する免疫細胞による攻撃や、細菌・ウィルス等による攻撃」などにより全身に存在する炎症部位においても発生する。これは、がん組織だけではなく炎症部位においても「直径150~300ナノメートル程度の開口部」が存在するためである。よって、通常は、EPR効果における分子の飛び出しの発生を抑えることにより、副作用を大幅に減少させることができる。
【0023】
また、「注入・吸引装置を使用して行う治療の対象である人間または動物」は、既に「注入・吸引装置を使用して行う治療」を行った人間または動物でもよいし、「注入・吸引装置を使用して行う治療」中の人間または動物でもよいし、これから「注入・吸引装置を使用して行う治療」を行う(すなわち、まだ行っていない)人間または動物でもよい。
【0024】
また、「その分子が毛細血管を含む血管から血管外の組織へほぼ移動しない」とは、その分子が全く移動しない状態でもよいし、治療対象の人間または動物のQoLが大幅に低下しない程度の数のその分子が移動する状態でもよい。その「治療対象の人間または動物のQoLが大幅に低下しない程度の数」は、治療対象の人間または動物の第1の実施の形態に係る抗がん剤との相性に応じて変わってもよい。
【0025】
また、「毛細血管を含む血管」は、通常、がん細胞が作る新生血管も含む。
【0026】
また、第1の実施の形態に係る抗がん剤は、がん以外の病気の治療にも使用可能である。
【0027】
また、第1の実施の形態において、注入・吸引装置を用いる目的は、主に固形がんを治療することにある。
【0028】
[第2の実施の形態]
磁性材料から形成され、体内で磁界によって移動できるヘッドと、
先端が開口した状態で前記ヘッドに取り付けられ、前記先端の開口部を介して液体を注入又は吸引可能な管と、
前記ヘッド又は前記管の先端側の位置に存在するマーク
とを有し、
前記ヘッドに磁界を付与可能な電磁石と、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きとを制御可能な移動制御部とを有する移動装置と、
前記マークの位置を求め、前記マークの位置に基づいて前記ヘッドの位置を検出可能な位置検出装置
によって、前記電磁石が付与する磁界によって前記ヘッドに働く磁力の大きさ及び向きを調節して、前記管が目的位置に対してほぼ真っ直ぐに挿し込まれるように前記ヘッドの進行方向制御を行うことを特徴とする注入・吸引装置を使用して行う治療の対象である人間または動物に使うための、
その分子が毛細血管を含む血管から血管外の組織へほぼ移動しないことを特徴とする、抗がん剤。


【0029】
なお、本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形、実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の抗がん剤は、特願2020-039430号公報などに記載の注入・吸引装置(または同様の機能を持つ装置)を併用することにより、固形がんに対しても血液がんに対しても副作用をできるだけ発生させずに高い治療効果を上げ、かつ、同様の治療が効くがん以外の病気に対して副作用をできるだけ発生させずに高い治療効果を上げることができるので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0031】
10 動脈
20 小動脈
30 静脈
40 小静脈
50 毛細血管
60 抗がん剤の分子
P 人体
図1