(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160355
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】低スキュー相補信号発生器
(51)【国際特許分類】
H03K 5/00 20060101AFI20221012BHJP
G11C 7/10 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H03K5/00 T
G11C7/10 460
H03K5/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174280
(22)【出願日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】17/223,372
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】599129074
【氏名又は名称】旺宏電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャン-チ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジヘン-シェン チ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低スキューの相補信号を発生する回路及び集積回路を提供する。
【解決手段】相補信号を生成する回路は、入力信号に応答して真の信号を生成する直列の2つのインバータ11、13を有するインバータの第1ストリングと、入力信号に応答して相補信号を生成する直列の3つのインバータ21、22、23を有するインバータの第2ストリングと、を備える。補償キャパシタンス回路15は、インバータの第1ストリング内のノード12に接続される。補償キャパシタンス回路は、インバータの第2ストリング内のインバータの異なるプロセス、電圧及び温度のPVT条件にわたって遅延をエミュレートする方式で、ノードにおける抵抗-容量RC遅延を増大させるべく、ノードにキャパシタンスを加えることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補信号を生成する回路であって、
入力信号に応答して真の信号を生成する、直列の偶数個のインバータを有するインバータの第1ストリング、及び、前記入力信号に応答して相補信号を生成する、直列の奇数個のインバータを有するインバータの第2ストリングであって、前記第1ストリング及び前記第2ストリングのうちの一方は、より少ない数のインバータを有する、第1ストリング及び第2ストリングと、
前記より少ない数のインバータを有する前記第1ストリング及び前記第2ストリングのうちの前記一方にあるノードに接続される補償キャパシタンス回路と
を備える回路。
【請求項2】
前記補償キャパシタンス回路は、前記インバータのうちの1つの出力ノードのオーバラップ及び接点キャパシタンスをエミュレートする第1コンポーネントと、前記インバータのうちの1つの入力ノードにおける入力負荷キャパシタンスをエミュレートする第2コンポーネントとを含む、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記第1ストリング及び前記第2ストリング内の前記インバータは、同じセル構造を有するCMOSインバータセルである、請求項1又は2に記載の回路。
【請求項4】
前記第1ストリング及び前記第2ストリング内の前記インバータにおける前記インバータのうちの少なくとも1つは、一緒に接続されるゲートを有するNMOSトランジスタと直列のPMOSトランジスタを含み、前記補償キャパシタンス回路は、そのソース端子に接続されるゲートを有するNMOSトランジスタと直列の、そのソース端子に接続されるゲートを有するPMOSトランジスタを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の回路。
【請求項5】
前記補償キャパシタンス回路は、インバータを含む、請求項4に記載の回路。
【請求項6】
前記インバータのうちの前記少なくとも1つにおける前記NMOSトランジスタは、第1の相対的なトランジスタサイズXを有し、前記補償キャパシタンス回路内の前記NMOSトランジスタは、第2の相対的なトランジスタサイズYを有し、Y>Xである、請求項4又は5に記載の回路。
【請求項7】
Y=約2Xである、請求項6に記載の回路。
【請求項8】
前記インバータのうちの前記少なくとも1つにおける前記NMOSトランジスタは、第1の相対的なトランジスタサイズXを有し、前記補償キャパシタンス回路内の前記NMOSトランジスタは、第2の相対的なトランジスタサイズYを有し、Y=ほとんどXである、請求項4又は5に記載の回路。
【請求項9】
前記インバータのうちの前記少なくとも1つにおける前記PMOSトランジスタは、第1の相対的なトランジスタサイズXを有し、前記補償キャパシタンス回路内の前記PMOSトランジスタは、第2の相対的なトランジスタサイズYを有し、Y>Xである、請求項4又は5に記載の回路。
【請求項10】
前記インバータのうちの前記少なくとも1つにおける前記PMOSトランジスタは、第1の相対的なトランジスタサイズXを有し、前記補償キャパシタンス回路内の前記PMOSトランジスタは、第2の相対的なトランジスタサイズYを有し、Y=ほとんどXである、請求項4又は5に記載の回路。
【請求項11】
前記第1ストリング及び前記第2ストリング内の前記インバータにおける前記インバータのうちの少なくとも1つは、一緒に接続されるゲートを有するNMOSトランジスタと直列のPMOSトランジスタを含み、前記補償キャパシタンス回路は、
そのソース端子に接続されるゲート、及び、前記ノードに接続されるドレイン端子を有するPMOSトランジスタと、そのソース端子に接続されるゲート、及び、前記ノードに接続されるドレイン端子を有するNMOSトランジスタと、
前記ノードに接続される入力を有するインバータと
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の回路。
【請求項12】
6つの標準的なインバータセルと、相補信号を生成する回路に配置され、前記6つの標準的なインバータセルのうちの1つの出力のキャパシタンスをエミュレートするコンポーネントと、を有する少なくとも1つのマクロセルを備える集積回路。
【請求項13】
前記マクロセルは、前記コンポーネントとレイアウトマッチングして、前記6つの標準的なインバータセルのうちの1つの出力のキャパシタンスをエミュレートするための、前記マクロセルに配置されるダミートランジスタを含む、請求項12に記載の集積回路。
【請求項14】
前記マクロセルは、矩形フットプリントを有する、請求項12又は13に記載の集積回路。
【請求項15】
前記6つの標準的なインバータセルは、2つのインバータを有する第1の一連のインバータと、3つのインバータを有する第2の一連のインバータと、前記第1の一連における前記2つのインバータ間のノードに接続される入力を有する1つのインバータとを形成すべく相互接続され、前記コンポーネントは、前記第1の一連における前記2つのインバータ間の前記ノードに接続される、請求項12から14のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項16】
前記マクロセルは、入力ノードを有し、前記6つの標準的なインバータセルは、前記入力ノードに対する入力信号に応答して、第1出力ノードに対して真の信号を生成する2つのインバータを有する第1の一連のインバータと、前記入力ノードに対する前記入力信号に応答して、第2出力ノードに対して相補信号を生成する3つのインバータを有する第2の一連のインバータと、前記第1の一連における前記2つのインバータ間のノードに接続される入力を有する1つのインバータと、を形成すべく、相互接続されており、前記コンポーネントは、前記第1の一連における前記2つのインバータ間の前記ノードに接続される、請求項12から15のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項17】
前記少なくとも1つのマクロセルの数は、複数であり、前記マクロセルは、相補信号を生成する回路に配置され、前記マクロセルのそれぞれは標準マクロセルである、請求項12から16のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項18】
前記マクロセルを含む出力バッファをさらに備える、請求項12から17のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項19】
前記マクロセルを含む入力バッファをさらに備える、請求項12から18のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項20】
相補信号を生成する回路であって、
入力信号に応答して真の信号を生成する、直列の偶数個のインバータを有するインバータの第1ストリング、及び、前記入力信号に応答して、相補信号を生成する、直列の奇数個のインバータを有するインバータの第2ストリングと、
より少ない数のインバータを有する前記第1ストリング及び前記第2ストリングのうちの一方と、
より少ない数のインバータを有する前記第1ストリング及び前記第2ストリングのうちの前記一方におけるノードにキャパシタンスを加え、インバータの他のストリングにおけるインバータにおいて、PVT条件にわたる抵抗-容量RC遅延をエミュレートする方式で、前記ノードにおける前記遅延を増大させるための手段と
を備える回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[分野]
本発明は、集積回路用の相補信号発生器、特に、低スキュー相補信号発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
相補信号発生器は、集積回路及び他の環境で用いられる多くの回路設計のコンポーネントである。例えば、相補信号発生器回路は、米国特許出願公開第20200266185号明細書に開示されている。相補信号発生器は、多くの場合グランドを基準に、入力に対するシングルエンド信号を受信し、それぞれの出力に対する真の相補信号を生成する。真の相補信号は、例えば、グランドを基準にすることなく2つのワイヤ伝送線を駆動させるために、差動信号の同相及び逆位相成分として用いられ得る。また、真の相補信号は、例えば、論理回路における異なるフリップフロップへの相補クロック信号、又は、回路の異なる同期コンポーネントへの異なるイネーブル信号に適用される別個のシングルエンド信号として用いられ得る。
【0003】
相補信号発生器を実装する1つの方法は、2つのインバータストリングを提供することであり、1つのストリングは、真の信号を生成する直列の2つのインバータを有し、1つのストリングは、相補信号を生成する直列の3つのインバータを有する。この追加のインバータは、真の信号と比べて、相補信号の遷移の際にさらなる遅延をもたらし、相補信号間のスキューをもたらす。
【0004】
真の信号を生成するインバータのストリングにパスゲートを加えることにより、スキューを減らすことができる。パスゲートは、相補信号を生成するインバータのストリングの第3インバータにおける遅延を補償できるわずかな遅延をもたらす。この手法では、スキューは、一般に減少するが、異なるプロセス、電圧及び温度のPVT条件において大幅な変動があるという弱点があり得る。
【0005】
電子回路の動作の周波数が増大するにつれて、真の相補信号間のスキューは、より重要になり得る。
【0006】
異なるPVT条件において、スキューを減らすこと、及び、スキューおける変動を減らすことを含む相補信号発生器を向上させることができる技術を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
前書きの目的で、本明細書に説明される相補信号発生器の態様は、ノードOUTに対して真の信号を生成する、直列の偶数個(例えば、2、4)のインバータを有するインバータの第1ストリングと、ノードOUTBに対して相補信号を生成する、直列の奇数個(例えば、1、3)のインバータを有するインバータの第2ストリングとを含む。補償キャパシタンス回路は、より少ない数のインバータを有する第1ストリング及び第2ストリングのうちの1つにあるノードに接続される。
【0008】
本明細書に説明される技術の態様において、補償キャパシタンス回路は、インバータのうちの1つの接点及びオーバラップキャパシタンスをエミュレートするコンポーネントと、インバータのうちの1つの入力負荷をエミュレートするコンポーネントとを含むことができる。
【0009】
異なるPVT条件にわたって、スキューを減らし、かつ、スキューにおける変動を減らす真の相補信号を生成できる回路が説明される。
【0010】
別の態様では、回路の実装のためのマクロセルが説明される。
【0011】
別の態様において、集積回路の出力バッファが提供され、本明細書に説明されるような相補信号発生器を含む。
【0012】
本発明の他の態様及び利点は、以下の図面、詳細な説明及び特許請求の範囲の検討で見られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に説明されるような相補信号を生成する回路の回路図である。
【0014】
【
図2】
図1の回路により出力される真の相補信号間のタイミングスキューを示すタイミング図である。
【0015】
【
図3】本明細書に説明されるような補償キャパシタンス回路を含む、相補信号を生成する回路のより詳細な回路図である。
【0016】
【
図4】
図3の回路において用いられるようなインバータの標準的なセルの表現を示す。
【0017】
【
図5】PVT条件にわたって相補信号を生成する回路の3つの異なる実施形態に関するスキューのプロセスコーナーグラフである。
【0018】
【
図6A】
図3を参照して説明されるような相補信号を生成する回路に関して、
図6B及び
図6Cに示されるレイアウト図の凡例である。
【0019】
【
図6B】
図3のような回路の第1の代替的な標準マクロセルレイアウトである。
【0020】
【
図6C】
図3のような回路の第2の代替的な標準マクロセルレイアウトである。
【0021】
【
図7】本明細書に説明されるような、相補信号を生成する回路を含む集積回路メモリデバイスの簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~
図7を参照して、本発明の実施形態の詳細な説明が提供される。
【0023】
差動信号を生成するための回路は、共通の入力に接続されるインバータの2つのストリングを用いて実装されることができる。インバータのストリングのうちの一方は、直列の2つのインバータを有し、入力信号と比べて、インバータストリングを通じた信号伝搬時間分だけわずかに遅れるその出力に対して真の信号を生成する。インバータの2つのストリングのうちの他方は、直列の3つのインバータを有し、入力信号と比べて、インバータストリングを通じた信号伝搬時間分だけさらに遅れるその出力に対して相補信号を生成する。2つのストリングにおけるインバータの数が異なっているので、インバータストリングを通じた遅延も異なっており、真の信号と相補信号との間のスキューをもたらす。スキューを減らすために、真の信号を生成するストリング内の2つのインバータ間に、パスゲートがもたらされ得る。パスゲートは、相補信号を生成するストリングを通じた遅延をより厳密に一致させ得るように、ストリングを通じて遅延を増大させ、それにより、スキューを減らす。
【0024】
図1は、スキューをさらに減らすことができ、PVT条件にわたるスキューの変動を少なくすることができる差動信号を生成するための回路を示す。
【0025】
差動信号を生成するための回路は、直列に配置されたインバータの第1ストリングと、直列に配置されたインバータの第2ストリングとを含む。インバータの第1ストリングは、入力ノード10に接続される入力と、ノード12に接続される出力とを有する第1インバータ11を含む。インバータの第1ストリングは、ノード12に接続される入力と、ノード14に接続される出力とを有する第2インバータ13を含む。ノード14は、真の信号が提供される回路の出力ノードOUTである。
【0026】
インバータの第2ストリングは、第1インバータ21、第2インバータ22及び第3インバータ23を含む。第1インバータ21は、入力ノード10に連結される入力と、第2インバータ22の入力に接続される出力とを有する。第2インバータ22は、第3インバータ23の入力に接続される出力を有する。第3インバータ23の出力は、ノード24に接続される。ノード24は、相補信号が提供される回路の出力ノードOUTBである。
【0027】
補償キャパシタンス回路15は、ノード12に接続される。インバータの第1ストリング内の1つのインバータの出力から次のインバータの入力への電流フローパスにおける能動要素を含むパスゲートとは異なり、補償キャパシタンス回路15は、ストリング内のインバータ間の電流フローパスに能動素子を含んでいない。むしろ、補償キャパシタンス回路15は、ノード12に接続するように構成されることができ、第1インバータ11の出力及び第2インバータ13の入力に受動的に接続される。
【0028】
補償キャパシタンス回路15は、ノード12にキャパシタンスを加え、インバータの第2ストリング内の第2インバータ22のPVT条件にわたって遅延をエミュレートする方式で、ノード12における抵抗-容量RC遅延を増大させるための手段である。
【0029】
図1に示される差動信号を生成するための回路は、真の信号を生成する第1ストリング内の2つのインバータと、相補信号を生成する第2ストリング内の3つのインバータとを含む。この回路設計は、偶数個(2、4、...)のインバータを含むインバータの第1ストリング、及び、奇数個(1、3、...)のインバータを含むインバータの第2ストリングに拡張され得る。補償キャパシタンス回路は、最も少ない数のインバータを有するインバータのストリング内のノードに接続される。
【0030】
図2は、入力ノードINにおける入力信号と比べた出力ノードOUT及びOUTBにおける真の信号及び相補信号のタイミングを示す。図示されるように、入力信号が低い値から高い値に遷移するにつれて、出力ノードOUTにおける真の信号は、短いレイテンシの後にlowからhighに遷移する。同様に、出力ノードOUTBにおける相補信号は、短いレイテンシの後にhighからlowに遷移する。これらのレイテンシにおける差は、
図2に示されるように、高い値と低い値との間の中点と交差するポイント間のタイミング差により一般的に測定されるスキューと呼ばれ、半値と称されることもある。
【0031】
図3は、補償キャパシタンス回路15の実施形態のより詳細と共に
図1の差動信号を生成するための回路を示す。
図3における参照番号は、同様のコンポーネントに対する
図1のものと一致する。
【0032】
補償キャパシタンス回路15は、電力供給ノードVDDに接続されるソース及びノード12に接続されるドレインを有するPMOSトランジスタ50を含む。また、補償キャパシタンス回路15は、さらに、基準供給ノードVSSに接続されるソース及びノード12に接続されるドレインを有するNMOSトランジスタ52を含む。PMOSトランジスタ50のゲートは、線51によりそのソースに接続される。同様に、NMOSトランジスタ52のゲートは、線53によりそのソースに接続される。
【0033】
補償キャパシタンス回路15は、さらに、ノード12に接続される入力及び線59における出力を有するインバータ55を含み、接続されていないまま、又は、いくつかの実施形態において、フローティングし得る。他の実施形態において、線59における出力は、デバイス上の他の回路素子に接続されてよい。
【0034】
図3における補償キャパシタンス回路15は、PMOSトランジスタ50及びNMOSトランジスタ52を有する第1コンポーネントを含み、この例では、標準的なインバータセル構造の出力などのインバータの出力におけるゲート-ドレインオーバラップキャパシタンス及び接点キャパシタンスをエミュレートする。
【0035】
図3における補償キャパシタンス回路15は、さらに、インバータ55を有する第2コンポーネントを含み、この例では、標準的なインバータセル構造の入力負荷などのインバータの入力ノードキャパシタンスをエミュレートする。
【0036】
図4は、
図3の回路におけるインバータの等価回路を示す。インバータはそれぞれ、NMOSトランジスタ31と直列のPMOSトランジスタ30を含む。PMOSトランジスタ30は、電力供給ノードVDDに接続されるソース及びノード33に接続されるドレインを有する。また、NMOSトランジスタ31は、基準供給ノードVSSに接続されるソース及びノード33に接続されるドレインを有する。PMOSトランジスタ30及びNMOSトランジスタ31のゲートは、線32上で一緒に接続される。
【0037】
図3の実施形態における6つのインバータ(11、55、13、21、22、23)のそれぞれ、例えば、標準的なセル構造を用いることにより、同じレイアウト及び構造で実装されることができ、その結果、セルのそれぞれにおいて利用されるトランジスタは、同じサイズ及びレイアウトを有する。(本説明の目的で、用語「標準」は、同じ集積回路内の統一された構造を意味しており、必ずしも異なる回路にわたる必要はない。)
図3の回路はインバータセルを用いて実装されるが、いくつかの実施形態において、インバータの1つ又は複数は、NORゲート又はNANDゲートなどの他の論理ゲートセルを用いて実装され得る。
【0038】
補償キャパシタンス回路15のオーバラップキャパシタンスコンポーネントにおけるトランジスタの相対的なサイズは、パラメータMOLCにより表される。インバータにおけるトランジスタの相対的なサイズは、パラメータMINVにより表される。
【0039】
これらの図において、MOLC=Yであり、MINV=Xである。例えば、値MINV=1を有するトランジスタは、集積回路を実装するために用いられる標準的なセルライブラリ内の単一のトランジスタユニットを用いて実装され得る。値MINV=2を有するトランジスタは、並列の2つのトランジスタユニットなどを用いて実装され得る。代わりに、値MINV=2を有するトランジスタは、標準的なトランジスタユニットのゲート幅の2倍のゲート幅を有するトランジスタを用いて実装され得る。
【0040】
補償キャパシタンス回路15の実施形態において、MOLCは、MINVの1倍と2倍との間とすることができる。回路内のインバータにおけるトランジスタの標準的なサイズのMINVを考慮すると、オーバラップキャパシタンスを補償するために用いられるトランジスタ(例えば、50、52)のサイズMOLCは、回路の挙動に対するオーバラップキャパシタンス又は入力負荷キャパシタンスの相対的な寄与の機能である。この相対的な寄与は、コンポーネントのサイジング、コンポーネントの配置及びコンポーネント間の相互接続のルーティングを調節することにより判定され得る、又は、調整され得る。
【0041】
オーバラップキャパシタンスが支配的な因子である場合、Yは2Xに等しくすることができる。これは、ある方向における量ΔVだけ入力が遷移し、一方、反対の方向に量ΔVだけ出力が速く遷移し、結果として、約2ΔVの電圧の遷移となるインバータのオーバラップキャパシタンスの挙動により説明され得る。この遷移における電荷Qは、オーバラップキャパシタンスCを2ΔV倍にすることに等しい(Q=C2ΔV)。この電荷Qは、2倍のキャパシタンスでオーバラップキャパシタンスをエミュレートするコンポーネント内のトランジスタを実装することによりエミュレートされることができ、Q=2CΔVである。
【0042】
ゲート-ドレインオーバラップキャパシタンス及び接点キャパシタンスの両方が大いに寄与する場合、Yは、1Xよりも大きくすることができ、約1.5Xなどの1Xと2Xとの間とすることができる。いくつかの場合、Yは、ほとんどXに等しくでき、この文脈における「ほとんど」は、同じサイズを有するように設計された構造に対する構造の製造上の公差内であることを意味する。
【0043】
Y=1.5X、例えば、
図3の回路が、2つのトランジスタユニットを用いてM
INV=2を有する標準的なインバータを用いて実装されることができるように、ゲート-ドレインオーバラップキャパシタンスをエミュレートするコンポーネントを実装するために、M
OLC=3のNMOSトランジスタ52及びPMOSトランジスタ50が3つのトランジスタユニットを用いて実装することができる。
【0044】
一般に、1つは、因子「1RC」により一連のインバータにおける各インバータの抵抗-容量RC遅延を表すことができ、キャパシタンスは、インバータの出力における接点及びオーバラップキャパシタンスKの組み合わせ、及び、次のインバータの入力負荷キャパシタンスJであり、C=J+Kである。
【0045】
このように、3つのインバータを含むシリーズは、(ノードOUTBにおける入力負荷キャパシタンスJが同じであると仮定して)3RCに等しい総遅延を有する。補償容量を有していない2つのインバータを含むシリーズは、2RCに等しい総遅延を有し、結果として、(ノードOUTにおける入力負荷キャパシタンスJが同じであると仮定して)1RCの差により引き起こされるスキューをもたらす。補償容量は、PVT変動を追跡する方式でノード12におけるキャパシタンスを増大させることによりスキューを減らす手段であり、その結果、インバータ11及び13を通じたノードINとノードOUTとの間の総RC遅延は3RCである。結果として、スキューが減らされ、デバイスに対して規定される動作条件の範囲にわたってより一貫したものとなる。
【0046】
補償キャパシタンス回路は、キャパシタンスをノード12に加えることにより、この3RC遅延を達成しており、その結果、遅延は、式
(1R×2C)+1(RC)=3RC
により表され得る。
【0047】
第1因子は、第1インバータ及び補償キャパシタンス回路15の出力を示し、第2因子は、第2インバータの出力を表す。
【0048】
第1因子に関して、インバータ55は、1つの入力負荷キャパシタンスJに寄与する。インバータ13は、1つの入力負荷キャパシタンスJに寄与する。インバータ11は、1つの接点及びオーバラップキャパシタンスKに寄与する。トランジスタ50及び52は、1つの接点及びオーバラップキャパシタンスKに寄与する。合計は、以下に見られるように、2Cに等しい。
1J+1J+1K+1K=2(J+K)=2c
【0049】
図5は、PVT条件にわたってピコ秒におけるスキューを示すプロセスコーナーチャートであり、相補信号を生成する回路の3つの変動に関するプロセスコーナーTT、SS、FF、SF、FS、-50℃から+105℃までの温度及び1.65Vから1.95Vまでの電力供給電圧を含む。トレース100は、上記のように真の信号を生成する直列の2つのインバータ、及び、相補信号を生成する直列の3つのインバータを用いる回路に対するスキューを表す。トレース100に示されるように、この回路のシミュレーションでは、結果として、PVT条件にわたって約27psから約50psまでの範囲のスキューが生じる。トレース101は、上記のように、真の信号の生成する直列の2つのインバータ及びパスゲート、及び、相補信号を生成する直列の3つのインバータを用いる回路に対するスキューを表す。トレース101に示されるような回路のシミュレーションでは、結果として、PVT条件にわたって、約6ピコ秒(ps)から約24psまでの範囲のスキューが生じる。トレース102は、
図3に関連して上述したような回路に対するスキューを表す。トレース102に見られるように、
図3の回路は、結果として、促進されるPVT条件の範囲全体にわたって、約2psから約12psまでの範囲のスキューが生じ得る。また、当該スキューは、促進されたPVT条件の範囲全体わたってトレース101のスキューよりも低い。
【0050】
ここで用いられるような標準的なセルは、ブール論理関数を提供するトランジスタ及び相互接続構造のグループであり、トランジスタデバイスの異なる構造に対応し、配線層及びビア層を相互接続するベース層で構成され、トランジスタ構成の端子を一緒に接合するレイアウトを含み得る。相補信号を生成する回路の実施形態におけるインバータは、同じセル構造を有する同じ標準的なセルを用いて実装され得る。相補信号を生成する回路の実施形態におけるインバータは、同じセル構造を有する同じ標準的なCMOSインバータセルを用いて実装され得る。
【0051】
また、標準的なセルにおいて用いられるトランジスタは、ゲート幅及び長さのレイアウトを含むトランジスタサイズと、回路にわたって共通に用いられるNMOS及びPMOSトランジスタに対する単位トランジスタサイズをそれぞれ含むゲートオーバラップとを有することができる。本説明の目的で、標準マクロセルは、標準的なセル及びトランジスタのグループであり、トランジスタ構成の端子を一緒に接合する配線層及びビア層を相互接続する。
図1及び
図3を参照して説明されるような相補信号を生成する回路は、標準マクロセルとして実装され、集積回路の効率的な配置、及び、標準マクロセルを利用する集積回路の効率的な合成の目的で、セルライブラリにおいて用いられることができる。また、マクロセルでは、金属層に一般的にある相互接続は、2つの信号パスの長さ、幅及びビアの数において一致する。
【0052】
図6A~
図6Cは、
図3を参照して説明されるように、相補信号を生成する回路を実装できる標準マクロセルに関する凡例及び代替的なレイアウト構成を含む。
【0053】
図6Aは、凡例であり、真の信号を生成するために用いられるストリングにおいて用いられるインバータには数字1、3がラベル付けされ、補償キャパシタンス回路において用いられるインバータには2がラベル付けされ、相補信号を生成するために用いられるストリングにおいて用いられるインバータには数字4、5、6がラベル付けされる。オーバラップキャパシタンスをエミュレートするコンポーネント内のPMOSトランジスタにはAがラベル付けされる。オーバラップキャパシタンスをエミュレートするコンポーネント内のNMOSトランジスタにはBがラベル付けされる。例えば、一緒に接続されるそれらのゲート、ソース及びドレインを有することができるダミートランジスタは、C及びDがラベル付けされており、レイアウトマッチングのために用いられる。また、金属層に一般的にある相互接続(図示されていない)は、2つの信号パスの長さ、幅及びビアの数において一致する。
【0054】
図6Bは、回路内の全部で6つのインバータに対する標準的なインバータセルを含む第1マクロセルのレイアウトを示す。レイアウトは、順番に、インバータ1用の標準的なインバータセル、トランジスタA及びB用のセル、インバータ2用の標準的なインバータセル、及び、インバータ3用の標準的なインバータセルを有する最上部の行を含む。
図6Bにおけるレイアウトは、順番に、インバータ4用の標準的なインバータセル、ダミートランジスタC及びD用のセル、インバータ5用の標準的なインバータセル、及び、インバータ6用の標準的なインバータセルを有する最下部の行を含む。
図6Bのマクロセルは、矩形フットプリントを有する。
【0055】
トランジスタA及びB用のセルは、標準的なインバータセルの回路構造と一致し、かつ、レイアウト内のエリアの約同じ量を消費する方式で、PMOSトランジスタAがNMOSトランジスタBに対して配置されるように、レイアウト内に構成される。ダミートランジスタC及びD用のセルは、トランジスタA及びB用のセルに関するレイアウトと一致するようにレイアウト内に構成される。
【0056】
図6Bにおけるマクロセルは、入力ノード600を有する。6つの標準的なインバータセル(INV1からINV6)は、入力ノードにおける入力信号に応答して、第1出力ノード601に対する真の信号を生成する2つのインバータセル(INV1、INV3)を有する第1の一連のインバータと、入力ノードにおける入力信号に応答して、第2出力ノード602に対する相補信号を生成する3つのインバータ(INV4、INV5、INV6)を有する第2の一連のインバータとを形成すべく相互接続される。インバータINV2は、第1の一連における2つのインバータINV1とINV3との間のノード605に接続される入力を有し、コンポーネント(PMOSトランジスタA及びNMOSトランジスタB)は、第1の一連における2つのインバータ間のノード605に接続される。
図6Bの回路はインバータセルを用いて実装されているが、いくつかの実施形態において、インバータの1つ又は複数は、NORゲート又はNANDゲートなどの他の論理ゲートセルを用いて実装され得る。
【0057】
ノード600、601、602、605は、ヒューリスティックに図に配置されている。実装では、ノードは、個々のセルのエリア内に相互接続を形成すべく、相互接続配線層及びビア層に接続される回路素子用の接続パッドを含むことができる。また、金属層に一般的にある相互接続(図示されていない)は、2つの信号パスの長さ、幅及びビアの数において一致する。
【0058】
図6Cは、回路内の全部で6つのインバータに対する標準的なインバータセルを含む単一の行を用いる第2マクロセルレイアウトを示す。単一の行は、順番に、インバータ1用の標準的なインバータセル、インバータ4用の標準的なインバータセル、トランジスタA及びB用のセル、ダミートランジスタC及びD用のセル、インバータ2用の標準的なインバータセル、インバータ5用の標準的なインバータセル、インバータ3用の標準的なインバータセル、及び、インバータ6用の標準的なインバータセルを含む。
図6Cにあるように、トランジスタA及びB用のセルは、標準的なインバータセルの回路構造と一致し、かつ、レイアウト内のエリアの約同じ量を消費する方式で、PMOSトランジスタAがNMOSトランジスタBにオーバレイするように、レイアウト内に構成される。ダミートランジスタC及びD用のセルは、トランジスタA及びB用のセルに関するレイアウトと一致するようにレイアウト内に構成される。
図6Cのマクロセルは、矩形フットプリントを有する。また、金属層に一般的にある相互接続(図示されていない)は、2つの信号パスの長さ、幅及びビアの数において一致する。
【0059】
図6Cにおけるマクロセルは、入力ノード610を有する。6つの標準的なインバータセル(INV1からINV6)は、入力ノードにおける入力信号に応答して、第1出力ノード611に対して真の信号を生成する2つのインバータセル(INV1、INV3)を有する第1の一連のインバータと、入力ノードにおける入力信号に応答して、第2出力ノード612に対して相補信号を生成する3つのインバータ(INV4、INV5、INV6)を有する第2の一連のインバータとを形成すべく相互接続される。インバータINV2は、第1の一連における2つのインバータINV1とINV3との間のノード615に接続される入力を有し、コンポーネント(PMOSトランジスタA及びNMOSトランジスタB)は、第1の一連における2つのインバータ間のノード615に接続される。
図6Cの回路はインバータセルを用いて実装されているが、いくつかの実施形態において、インバータの1つ又は複数は、NORゲート又はNANDゲートなどの他の論理ゲートセルを用いて実装されることができる。
【0060】
ノード610、611、612、615は、ヒューリスティックに図に配置されている。実装では、ノードは、個々のセルのエリア内で相互接続を形成するオーバレイパターン化導体層に接続する回路素子用の接続パッドを含むことができる。
【0061】
図6B及び
図6Cを参照して説明されたもののようなマクロセルは、マクロセルのジオメトリを規定する電子設計自動化命令を有するセルライブラリ内の機械可読エントリを用いて実装されることができる。したがって、技術の実施形態は、電子設計自動化命令を用いて実装される非トランジスタコンピュータ可読メモリに格納される機械可読命令を含む。
【0062】
図7は、本明細書に説明されるような、相補信号を生成するための回路を含む集積回路の簡略図である。
図7の例は、メモリ回路701、制御回路703及び入力/出力I/Oバッファ702を含む集積回路700である。入力/出力バッファ702は、デバイス上のメモリ回路701とI/Oピン710との間のデータの通信を提供する。制御回路703は、メモリ回路701の動作のため、及び、I/Oバッファ702の制御ために用いられるステートマシン、デコーダ及び他の周辺回路を含む。集積回路700は、いくつかの実施形態において、I/Oバッファ702の入力バッファ内の1つ又は複数、及び、I/Oバッファ702の出力バッファ内の1つ又は複数を含む相補信号を生成する複数の回路を含む。いくつかの実施形態において、相補信号を生成する複数の回路は、対応する複数の標準マクロセルを用いて実装される。
【0063】
相補信号を生成するための回路は、例えば、不揮発性ダブルデータレートバージョン4 NV DDR4及びバージョン3 NV DDR3インタフェース標準を実装するために利用などされる相補信号ドライバとして用いられ得る。本明細書に説明される技術は、DRAM、SRAM及び他のメモリシステムインタフェースに適用され得る。
【0064】
本発明は、上記の詳細な好ましい実施形態及び例を参照することにより開示されるが、一方、これらの例が限定的な意味ではなく、むしろ例示的であることを意図していることが理解される。修正及び組み合わせが当業者に対して容易に生じるものと考えられ、修正及び組み合わせは、本発明の主旨及び以下の特許請求の範囲の範囲内にある。