(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160361
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】工作物ホルダ及び回転対称な工具の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23B 31/02 20060101AFI20221012BHJP
B23P 15/34 20060101ALI20221012BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20221012BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B23B31/02 610Z
B23P15/34
B23Q17/22 A
B23Q17/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022022993
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】21166898
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518144274
【氏名又は名称】アガトン・アクチエンゲゼルシャフト・マシーネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・ヤーコプ・メッツガー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ツェンガー
(72)【発明者】
【氏名】クオン・フイン
【テーマコード(参考)】
3C029
3C032
【Fターム(参考)】
3C029AA01
3C029AA40
3C032GG27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保持している工作物の位置や方向を計測可能な工作物ホルダを提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃を持つ回転対称な工具を製造する機械加工装置に、基準面(30)を備えた工作物(2)を連結する工作物ホルダ(3)であって、工作物ホルダ(3)は、機械加工装置に解除可能な回転固定方式で接続可能に構成された機械加工部と、工作物(2)を解除可能な方式で受け入れてクランプするように構成されたクランプ部分と、を備える。工作物ホルダ(3)のクランプ部は、その周縁部に設けられ、クランプされた工作物(2)の基準面(30)へのアクセスをスロット(40)を通して提供するように構成された少なくとも1つのスロット(40)を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃(10)を有する回転対称な工具(1)を製造する機械加工装置(200)に、基準面(30)を備えた工作物(2)を接続する工作物ホルダ(3)であって、
解除可能な回転固定方式で機械加工装置(200)に接続可能に構成された機械加工部(31)と、
工作物(2)を受け取り、解除可能な回転固定方式でクランプするように構成されたクランプ部(32)とを備える工作物ホルダ(3)において、
工作物ホルダ(3)のクランプ部(32)が、その周縁部に設けられ、クランプされた工作物(2)の基準面(30)へのアクセスを提供するように構成された少なくとも1つのスロット(40)を備えることを特徴とする、工作物ホルダ(3)。
【請求項2】
工作物ホルダ(3)のクランプ部(32)は、円錐形又は円筒形の部分と、クランプされた工作物の相補的に形成された基準面(30)との境界面を形成するように構成された半径方向のフランジ部とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項3】
少なくとも1つのスロット(40)は、工作物ホルダ(3)の長手軸線(WH)の方向に部分的に延在する細長いスロット(40)として構成されていて、基準面(30)の少なくとも一部に直接接触するように、計測装置(50)の計測プローブ(51)をその中に挿入可能に構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項4】
少なくとも1つのスロット(40)は、光学計測装置(50)による基準面(30)の非接触計測が行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項5】
複数のスロット(40)が設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項6】
前記工作物ホルダ(3)は、前記回転対称な工具(1)の機能部(14)を加工する際に、前記工作物(2)を保持するように構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項7】
工作物ホルダ(3)は、回転対称な工具(1)の幾何学的に定義された切刃(10)を形成するために、工作物(2)の基部ボデー(16)に接続された少なくとも1つの切削チップ(15)を加工する間、工作物(2)を保持するように構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項8】
回転対称な工具(1)が、ボールトラックミリングカッター(100)であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項9】
工作物ホルダ(3)は、その第1円周径(35a)にある少なくとも1つのカム(36)と、第2円周径(35b)にあるノッチ(37)との少なくとも一方を備えていて、これらのカム(36)とノッチ(37)との少なくとも一方は、機械加工装置(200)における工作物ホルダ(3)の所定の位置で、少なくとも1つの計測処理を起動するように構成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項10】
工作物ホルダ(3)は、機械加工装置(200)の回転軸線(M)と工作物軸線(W)の変位を計測するものであることを特徴とする、請求項9に記載の工作物ホルダ(3)。
【請求項11】
基準面(30)を備えた工作物(2)を機械加工装置(200)に結合するために、請求項1から10のいずれか一項に記載の工作物ホルダ(3)を用いて、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃(10)を持つ回転対称な工具(1)の製造方法であって、以下の、
- 工作物ホルダ(3)の機械加工部(31)を、機械加工装置(200)のクランプシステム(202)に、解除可能な回転固定方式で接続するステップと
- 工作物(2)の取付部(12)を、工作物ホルダ(3)のクランプ部分(32)に、解除可能な回転固定式で接続するステップと
- 少なくとも1つの計測処理を実行し、計測装置(50)の計測プローブ(51)を工作物ホルダ(3)の円周部に設けられた少なくとも1つのスロット(40)に導入して、クランプされた工作物(2)の基準面(30)に接触させることにより、クランプされた工作物(2)の計測データを生成するステップと、
- 計測データを処理して、工作物軸線(W)の実際の向きを求めるステップと、
機械加工装置の回転軸線と工作物軸線(W)との間で検出された変位を補正するために、工作物軸線(W)の実際の向きを得るために計測データを処理するステップと、
- 機械加工処理によって回転対称な工具(1)を製造するために、工作物(2)の基準面(30)に関連する、回転対称な工具(1)の少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃(10)の曲線を得るために、計測データを処理するステップと
を備える、製造方法。
【請求項12】
計測データを処理することは、工作物(2)の実際に位置決めされた切削チップ(15)の仮想平面を計算し、実際に位置決めされた切削チップ(15)の仮想平面を用いて、回転対称な工具(1)の機能部(14)の所定の包絡面と工作物(2)の実際に位置決めされた切削チップ(15)の仮想平面との交線として、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃(10)の曲線を得ることを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法で回転対称な工具(1)を製造する機械加工装置(200)が、
- 制御ユニット(210)と、
- 砥石(201)のような機械加工工具と、
- 請求項1から10のいずれかに記載の工作物ホルダ(3)を受け取り、解除可能な回転可能な固定方法で接続するように構成されたクランプシステム(202)と、
- クランプされた工作物(2)の基準面(30)の計測を直接行うために、工作物ホルダ(3)の円周部に設けられた少なくとも1つのスロット(40)を介して挿入されるように構成された計測プローブ(51)を備える計測装置(50)と
を備える、機械加工装置(200)。
【請求項14】
機械加工装置(200)が多軸研削装置であることを特徴とする、請求項13に記載の機械加工装置(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルやミリングカッターのような実質的に対称的に回転する(回転対称)工具、特に等速ジョイントのボールのトラックを製造するボールトラックミリングカッターを製造する工作物ホルダに関するものである。さらに本発明は、回転対称な工具の製造方法及び機械加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドリルやミリングカッター、例えばボールトラックミリングカッターやラジアスエンドミリングカッターなどの回転対称な工具の製造は、複数の機械加工装置で行われる複数ステップの処理である。ステップのうちの少なくとも1つは、回転対称な工作物などの工作物を、機械加工装置の回転軸線に対して相対的に、かつ研削中の砥石などの加工工具に対して相対的に、又はレーザユニット内で定義された位置に正確に一時的に保持することを含む。加工中に工作物を一時的に保持する保持手段は、複数のエラーの原因として知られている。工作物を全方向から加工するためには、機械加工装置の回転軸線を中心に回転させるが、このとき、好ましくは、回転軸線と工作物の長手方向軸線又は中心軸線は同一である。実際には、機械加工装置のクランプ機構に保持されている保持手段の一部の公差や、保持手段で工作物をクランプする公差と同様に、取り付け公差がある。特に、工作物を外部から計測する場合、加工処理を中断しなければならず、クランプの再現性がさらなる誤差の原因となることがある。さらに、機械加工中の熱の影響により、機械加工装置のクランプ機構に対する保持手段の位置や、工作機械に対する保持手段の位置が変化することがある。これらの影響は、高品質で高精度な回転対称な工具を製造する際の再現性と精度に影響を与える。
【0003】
高精度のボールトラックミリングカッターは、ホモキネティック(同速回転)ジョイントの円筒部品の円周側面に形成されたベアリングボールの走り面又はトラック外形を加工するために使用される。ホモキネティックジョイントの一種は、溝や軌道が形成された球状の内殻と、同様の外殻から構成され、各溝や軌道が1つのベアリングボールをガイドする。等速ジョイントとして知られる同速回転ジョイントは、特に自動車分野で使用されていて、駆動軸が、摩擦や遊びを著しく増加させることなく、一定の回転速度において可変の角度(angel)を介して動力を伝達可能にしている。
【0004】
ボールトラックミリングカッターの製造には、異なる機械加工装置で工作物を加工することが含まれる。例えば、ある機械加工装置で取付部を作成し、別の機械加工装置で研削、レーザ、又は他の適切な加工によってその機能部分を作成する。ミリングヘッド部を形成するボールトラックミリングカッターの機能部を製造するために、工作物は、ミリング装置で使用される工具ホルダに保持されず、一時的な保持手段に保持されてもよい。ボールトラックミリングカッターの製造によるエラーを回避し、機能部の正確な形状を達成する一般的な取り組みには、加工前の工作物の、未加工の機能部を計測することと、加工前の工作物の、未加工機能部分の(複数の)基準面と一時的な保持手段との間の境界面の最大限の幾何学的精度に頼ることとの少なくとも一方が含まれる。しかし、機械加工装置と工作物の間の各境界面や、保持手段の各変更が、完成した切削工具の達成可能な精度を制限する幾何学的誤差を引き起こすおそれがあり、その結果、完成した切削工具の性能の精度が制限される可能性があることが知られている。
【0005】
特許文献1(DE102005007038)は、不正確さの補正を提供するコレクトで工作物を受け取るための工作物主軸ストックを備えた工具研削盤を開示している。不正確さの補正及び/又は補償のために、主軸は、工作物の位置を機械的に変化させることにより、コレット、ひいては工作物を主軸線に対して直交するようにモータで整列できるように構成されている。しかし、直径に関する調整は、限られた自由度の中で小さな不正確さを補正するように制限されている。
【0006】
特許文献2(EP2311600)では、工作機械用の工作物の振れを最小化する調整方法が記載されている。工作物は、工作物保持機構に保持され、それにより、フローティング機構が、工作物主軸の回転を工作物保持機構に伝達し、工作物主軸に対する工作物保持機構の相対的な移動を可能にする。調整方法には、回転中の工作物の振れを調整する方法と、工作物と機械加工装置の回転軸線を水平に調整する方法がある。この調整方法は、複雑で脆弱であり、さらに2つの並進自由度にしか制限されていない。クランプ径と加工径の不一致は調整できない。
【0007】
機械加工装置に可逆的に固定し、ミリングカッターのような工具を可逆的に受け入れるための工具ホルダが知られている。このような工具ホルダ又はコレットチャック又はコレットホルダは、複数の部品形態で実現できる。一般に、工具ホルダは、工具ホルダを機械加工装置、すなわち機械の主軸に可逆的に固定する機械部品又は保持部品と、工具を可逆的に受け入れるためのクランプ部品とからなる。さらに、機械部品は、円錐部品や、機械装置のクランプ機構の対応する対向面との当接面を提供する半径方向突出部品などの形状部品から構成できる。工具ホルダのタイプとしては、HSKホルダ(hollow shank taper)と呼ばれるものが知られていて、工具ホルダと機械加工装置のクランプ機構との間に二重の接触をもたらす。HSKホルダは、高い再現性と精度、高速な工具交換、温度変化による影響の少なさが特徴である。
【0008】
工具ホルダに受容された回転対称な工具は、軸部を有する取付部やジョイント部などの少なくとも2つの部分と、加工される工作物から材料を除去する少なくとも1つの切刃を有するミリングカッターヘッドなどの機能部や切削部を備えるものにしてよい。工具を保持するために使用される工具ホルダ、アダプタ、スペーサ、エクステンションなど、又は機械の主軸自体は、工具の取付部に適合するように構成され、それに応じて変化できる。工具ホルダに受け取られて確実に保持された工具の装着部は、工具ホルダとの間に境界面を形成する。安定性、剛性、及び寸法精度のために、工具と工具ホルダとの間の境界面は、重要である。界面は、例えばベンダーの仕様に応じて特別に設計された基準面で構成できる。
【0009】
ミリングカッターのような回転対称な工具の機能部は、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃を有し、切刃は、すくい面とフランク面との間の交線として形成できる。さまざまなタイプのミリングカッターが知られている。例えば、あるタイプは、基部ボデーからなるソリッドな工具として構成されていて、少なくとも1つの切刃が基部ボデーと一体的に形成されている。別のタイプは、別の材料で作られた基部ボデーに、ろう付け、はんだ付け、溶接、又はクランプされた別の材料として構成された切削チップ又は切削プレートに、切刃を形成可能に構成されている。好ましくは、切削チップは立方晶窒化ホウ素(CBN)、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)、多結晶ダイヤモンド(PCD)などの硬い材料でできていて、好ましくは、基部ボデーは鋼や超硬合金などの靭性を備えた材料でできている。一般的に、このタイプのミリングカッターは、最終的な加工面に寄与する所定の包絡面を満たすように、個々の切削チップに刃先を形成するように加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005007038号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2311600号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの課題は、工作物を一時的に保持する工作物ホルダを提供することである。保持手段としての工作物ホルダは、実質的に回転対称な工具、例えばシャンク工具や、好ましくはボールトラックミリングカッターなどのミリングカッターの少なくとも一部を、研削及び/又はレーザ加工によって製造する、機械加工装置、特に研削装置又はレーザ装置において使用される。工作物ホルダは、機械加工装置に受け止められて固定可能であり、機械加工後の完成した工具の精度に誤差が生じないように、クランプされた位置における工作物の位置及び/又は向きを計測して調整できるように構成されている。
【0012】
本発明の別の課題は、工作物ホルダに保持されている間に工作物で実行される計測ステップを含む、そのような回転対称な工具を製造する方法を提供することである。本方法は、工作物を加工する際に、特に最終的な回転対称な工具の機能部分を作成する際に、工作物ホルダに保持されている工作物の位置と、向きとの少なくとも一方を考慮するように、加工処理を適応させることを提供する。この方法は、距離と、角度との少なくとも一方の偏差による振れ誤差を低減するように構成されている。
【0013】
本発明の他の課題は、工作物の基準面に関連するクランプされた工作物の計測データを生成することであり、これらの計測データは、最終的な回転対称な工具の機能部分を機械加工するために使用可能であり、特にボールトラックミリングカッターのような高精度工具の製造に使用できる。
【0014】
さらに、本発明は、工作物を回転対称な工具に製造するために、クランプされた工作物の計測を行い、クランプされた工作物の計測データに基づいて加工処理を適応させるように構成された機械加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの課題は、独立請求項により達成される。本発明の有利な実施形態は、図及び従属請求項に開示されている。
【0016】
これらの課題は、基準面を備えた工作物を、回転対称な工具を製造する機械加工装置に結合する工作物ホルダによって達成される。好ましくは、工作物ホルダは、ミリングカッター、すなわちボールトラックミリングカッターに機械加工される実質的に回転対称の工作物を保持するように構成される。
【0017】
工作物ホルダは、離脱可能な回転固定式で機械加工装置に接続可能に構成されている。特に、工作物ホルダは、機械加工装置のクランプシステムに受容され、確実にクランプ可能である。機械部品は、軸線方向の円錐形の収容部に受け入れられ、機械加工装置のクランプシステム又はクランプ機構によって固定されるように構成できる。工作物ホルダと機械加工装置の収容部との間の境界面の形状の結果、2つの適合する形状の接触が達成される。そのため、工作物ホルダは、軸線方向及び半径方向に遊びがなく、さらに解除可能な回転固定方式で、機械加工装置に対して相対的に整列する。工作物ホルダの機械部分の構成により、機械加工装置に対する工作物ホルダの相対的な位置決め、すなわち砥石などの工作機械に対する相対的な位置決めの高い再現性と精度、及び工作物ホルダの高速な交換性が達成される。
【0018】
工作物ホルダは、工作物を受け取り、解除可能な方法でクランプするように構成されたクランプ部を備える。工作物ホルダのクランプ部は、工作物が確実にクランプされるように、工作物の基準面を有する取付部と互換性があるように構成され、工作物の生の機能部分を加工できる。工作物の取付部は、少なくとも1つの以前に実行された機械加工処理で機械加工されてもよい。取付部は、クランプされた工作物の軸線方向及び/又は半径方向の位置決め及び配向を提供するために、保持手段、特に工作物ホルダの互換性のある面に対して負担する着座面又は軸受面を提供するのに適切な任意の形状を有し得る。工作物の取付部は、第1着座面としての軸部を備えてよい。軸部は、半径方向の位置決めによって工作物ホルダに確実に着座するために、円錐形又は円筒形の形状を有し得る。円錐形又は円筒形の形状は、軸部の全長にわたって丸い断面を有するか、又は替わりに丸みを帯びた多角形の断面を有し得る。軸部は、軸線方向の位置決めによって着座を確保するために、工作物ホルダの適合する構成の表面に耐えるように構成された半径部分への移行部を形成できる。この半径方向の部分は、肩部を備えた円錐形又は環状のリングとして構成してよい。工作物ホルダは、工作物の取付部を収容するために、半径部分と円錐形又は円筒形の部分を提供するように構成できる。このクランプ部は、ツールに関する仕様に応じて個別に設けてよい。さらに、工作物の取付部を工作物ホルダや他の保持手段に確実に保持するために、軸部のクランプ端面をネジクランプやプレスクランプにできる。
【0019】
しかし、工作物の取付部は、保持手段に確実に固定されるように構成されているだけでなく、基準面も設けられている。基準面は、円筒形又は円錐形の軸部と、リング状又はテーパー状に形成された隣接する半径部分の少なくとも一部とし得る。
【0020】
工作物ホルダは、工作物を解除可能な回転固定方式でクランプするクランプ部を備えている。工作物ホルダのクランプ部は、工作物ホルダと工作物のマウント部との間に、軸線方向及び半径方向の境界面を形成することにより、工作物のマウント部が確実に固定されるように構成されている。したがって、工作物ホルダは、材料を除去する少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃を有するボールトラックミリングカッターなどのミリングカッターのヘッド部分などの完成した回転対称な工具の機能部分を製造する際に、工作物を確実に保持する。
【0021】
本発明によれば、工作物ホルダのクランプ部は、その周縁部に設けられ、クランプされた工作物の基準面に、好ましくは外部からアクセス可能に構成された少なくとも1つのスロットを備える。ここで、スロットとは、一般に、穴や溝など様々な形態で構成される開口部を意味する。
【0022】
場合によっては、工作物を工作物ホルダに取り付けた状態でクランプすることにより、工作物の取付部、すなわち軸部の少なくとも一部が工作物ホルダを越えて延在するようにしてよい。したがって、工作物の基準面は、直接計測のための計測装置によってアクセスできる。また、レーザユニットの選択肢として、工作物の後部を短くクランプできる。回転対称ツールの機能部分をレーザ加工で製造する際、クランプされた工作物にはほとんど力が働かない。この具体的なケースでは、クランプされた工作物の基準面の計測は、必ずしも工作物ホルダの提供された開口部又はスロットを通してではなく、直接行える。生成された計測データは、以下に説明するように使用できる。すなわち、寸法、形状、及び/又は位置の精度に関連した厳密な公差のために使用できる。
【0023】
クランプされた工作物の直接計測が可能であるため、工作物を工作物ホルダに装着し、機械加工装置で工作物を加工し、工作物ホルダを再チャックし、クランプされた工作物付きの工作物ホルダを外部の計測装置に移動して加工された工作物を計測するというステップを、機能部品の最終形状に達するまで繰り返し行う必要はない。繰り返し行われる再チャックは、周知のチャックエラーを引き起こす可能性があり、正確な工具案内にもかかわらず、高精度及び超高精度を確実に達成できないという点で、いずれにしてもエラーの原因となる。このように、計測、研磨、計測などの工程を何度も繰り返して高精度の工具を製造すると、廃棄率が高くなり、加工時間も長くなる。
【0024】
クランプされた工作物の位置や方向を直接計測するには、工作物にあらかじめ形成された基準面、すなわち工作物ホルダの円周部に設けられた少なくとも1つのスロットや、穴、溝、凹みなどの他の開口部を介して、工作物の取付部にアクセスする必要がある。工作物ホルダにクランプされる工作物は、あらかじめ作成された定義された基準面から構成されている。有利には、少なくとも1つのスロットは、工作物ホルダの長手方向に部分的に延びる細長いスロットとして構成され、計測装置の計測プローブが、好ましくは外部からその中に挿入されて、クランプされた工作物の基準面の少なくとも一部に直接接触できるように構成される。基準面に触れることによる計測やプロービングは、レーザプローブや静電プローブなどの非接触式プローブチップの使用を広く想定している。さらに、有利なことに、少なくとも1つのスロットは、基準面の計測が行われるように構成されている。一実施形態によれば、計測は、カメラやレーザシステムなどの光学的な計測装置や、機械加工装置に内蔵又は搭載可能な他の計測装置によって行える。好ましくは、開口部又はスロットは、触覚による計測が行われるように構成されている。したがって、計測プローブを挿入し、基準面に接触しながら、定義された方向に沿って移動できる。
【0025】
一実施形態では、好ましくは細長いスロットは、計測装置の3次元計測プローブの少なくとも一部がその中に挿入可能に構成される。また、少なくとも1つのスロットの寸法は、計測プローブの計測ヘッドが遊びを持って挿入可能に構成してよい。例えば、球状の計測ヘッドを使用する場合、少なくとも1つのスロットの幅は、球状の計測ヘッドの直径よりも0.5mmから1mm大きくする場合がある。有利には、工作物ホルダの円周部に複数のスロットを設ける場合がある。工作物ホルダの円周部におけるスロットの数及び配置は、ある範囲で可変であるが、好ましくは、工作物のクランプの機械的安定性がまだ与えられていない限り、スロットの数は3以上とし得る。
【0026】
本発明の一態様によれば、工作物ホルダは、回転対称な工具の機能部の加工中に工作物ホルダを保持するように構成されている。
【0027】
一実施形態によれば、工作物ホルダは、回転対称型工具の幾何学的に定義された切刃を作成するために、工作物の基部ボデーに接続された少なくとも1つの切削チップを加工しながら、工作物を保持するように構成される。好ましくは、回転対称な工具は、ボールトラックミリングカッターである。
【0028】
一般的に、回転対称な工具の1つのタイプは、基部ボデーと、基部ボデーに接続され、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃を提供する切削チップ又は切削プレートとを備える。例えば、ボールトラックミリングカッターは、硬質材料で作られボンディングされた切削チップ又はカッターブレードで構成できる。接合された切削チップを用いて工作物から高精度のボールトラックミリングカッターを製造するためには、非常に高い表面及び寸法の要求を満たすために、精密な研削工程と、レーザ加工工程との少なくとも一方が必要である。完成した工具の所定の平面走行精度を得るためには、一般に高すぎるボールトラックミリングカッターの機能部分の製造公差を、完成したボールトラックミリングカッターに必要な平面走行精度に修正するような慎重な計測を行わなければならない。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、工作物ホルダは、その外周径に設けられた少なくとも1つのカム又はノッチを備える。この少なくとも1つのカム又はノッチは、機械加工装置における工作物ホルダの所定の位置において、少なくとも1つの計測処理を起動するように構成されている。起動信号は、計測プローブ、特に3次元計測プローブを含む計測装置を作動させて、少なくとも1つのスロットに挿入し、工作物ホルダに保持された工作物の基準面に直接接触させる。さらに、設けられたカム又はノッチは、工作物ホルダをクランプシステム内の機械加工装置に対して相対的に位置決めするために使用できる。工作物ホルダが機械加工装置に接続されている場合、工作物ホルダは、例えばいわゆるB軸線などの回転軸線を中心に所定の位置まで回転可能である。
【0030】
一実施形態によれば、工作物ホルダは、機械加工装置の回転軸線と工作物ホルダの長手方向の軸線との変位の計測を提供する。この変位は、機械加工装置の回転軸線及び/又は工作物の軸線に対する工作物ホルダの長手方向の軸線の変位を備えることがある。クランプされた工作物、好ましくはクランプされた工作物の基準面に外部から直接アクセスできるため、クランプされた工作物の基準面と、機械加工装置の基準点と、基準軸線との少なくとも一方との関係を使用して、クランプされた工作物の位置決めと、向きとの少なくとも一方を確認できる。さらに、計測データを使用して信頼性の高い座標系を生成し、それに基づいて回転対称な工具の機能部分の製造を実行できる。
【0031】
外部からの直接計測により、機械加工装置、工作物ホルダ、工作物の設定ミスによる偏差を検出できる。したがって、設定誤差は、加工処理に先立って修正してよく、また、加工処理の調整によって検討してよい。加工工程の調整とは、工作物が回転するたびに軸線がずれたり、オフセットしたりして、工作物がわずかに振れてしまうことがないように、回転、ピッチ、平面の移動に関する設定を備える場合がある。
【0032】
本発明による工作物ホルダの有利点は、計測プローブによってクランプされた工作物の基準面にアクセス可能であることである。クランプされた工作物の計測は、機械加工装置の回転軸線、特にB軸線と、工作物軸線との少なくとも一方の軸線の変位を決定するために実施してよく、さらに、工作物軸線と工作物ホルダの長手方向軸線及び/又は工作物ホルダの長手方向軸線と機械加工装置の回転軸線の変位を含み、工作物軸線の位置が回転機械軸線に対して所望の位置に補正して固定されるように、計測値に基づいて補正できる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、工作物を保持するために本発明による工作物ホルダを用いて、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃を有する回転対称な工具を製造する方法が提供される。工作物は、基準面を提供し、好ましくは、その生の機能部分において、少なくとも1つの切削チップを備える。本方法は、工作物ホルダを機械加工装置のクランプシステムに解除可能に回転固定して接続するステップと、工作物の取付部を工作物ホルダに接続するステップと、計測装置の計測プローブを工作物ホルダの円周部に設けられた少なくとも1つのスロットに導入して、クランプされた工作物の基準面に接触させることにより、計測データを生成する少なくとも1つの計測処理を実行するステップと、機械加工装置の回転軸線と工作物の軸線との間で検出された変位を補正するステップと、計測データを処理して、機械加工処理によって回転対称な工具を製造するために使用される工作物の基準面に関連する、回転対称な工具の少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃の曲線を得るステップとを備える。
【0034】
本発明の別の実施形態では、幾何学的に定義された切刃の曲線を得るために計測データを処理するステップは、回転対称型工具の機能部の所定の包絡面を使用する。計測データは、座標系に関連する少なくとも1つの接続された切削チップの位置に関連するデータ、好ましくは、複数の切削チップのそれぞれの位置に関連するデータを含んでよい。座標系は、個々のクランプされた工作物の基準面に関連するものとし得る。
【0035】
各回転対称な工具について、所定の理想的な包絡面が知られている。ミリングカッターのような工具の包絡面は、所定の最終加工面に寄与する各切刃の個々の包絡面の区域の組み合わせとして見ることができる。各切刃の個々の包絡面は、加工軸線を中心に回転することにより、回転面として生成できる。そのため、切刃の理想的な位置からのずれや、振れの存在により、所定の理想的な包絡面とは異なる有効な包絡面が生成される。各切削チップで幾何学的に定義された切刃を加工することにより、各切削チップで決定された計測データを使用して、所定の理想的な包絡線表面に関して理想的な切刃を作成するように適合された加工処理を生成できる。
【0036】
しかしながら、複数の切削チップのそれぞれは、理想的又は有効な切刃を計算するために処理されるべきこの切削チップの計測データを決定するために、個別に計測されることになる。個々の切削チップの計測処理は、計測装置の計測プローブを用いて切削チップの位置を決定することを含んでよい。好ましくは、個々の切削チップの実際の位置を決定する計測は、工作物が工作物ホルダ内で正確に方向付けられている場合でも実行される。計測プローブは、工作物ホルダの少なくとも1つのスロットに挿入され、接触により、又は直接接触することなく、この切削チップの大まかな位置を決定する。この切削チップの大まかな位置を決定した後、この切削チップの異なる計測点、好ましくは少なくとも3つの計測点で、計測プローブによる計測が行われる。得られた計測データは、この切削チップの実際の正確な位置を含み、実際に位置決めされた切削チップの仮想平面を生成又は計算するために処理できる。
【0037】
幾何学的に定義された切刃の計算された形状、特に曲線は、所定の理想的な包絡線表面と、実際に配置されたカッティングチップの仮想平面との交線として見ることができる。計測データを処理し、幾何学的に定義された切刃と、例えばその面取りとの少なくとも一方を作成する加工経路を定義するために使用される個々の切刃の交線を計算することによって、切削工具の機能部を高精度に製造できる。
【0038】
本発明の別の態様は、工作物を回転対称な工具に製造するように構成された機械加工装置に関するものである。機械加工装置は、制御装置又はコントローラ、本発明による工作物ホルダを保持するクランプシステム、及びクランプされた工作物で計測を行うように適合された計測装置を少なくとも備える、一般的に知られている多軸研削装置とし得る。
【0039】
本発明とその利点をより完全に理解するために、本発明の例示的な実施形態を添付の図を参照して以下の説明でより詳細に説明し、そこでは同一参照符号は同一部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、回転対称の切削工具、特にボールトラックミリングカッターの概略的な透視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態による工作物ホルダの概略的な透視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態による工作物ホルダと、その中に挿入された工作物の概略縦断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る工作物ホルダと、装着された工作物及び計測プローブとの、計測処理中の概略断面図である。
【
図5】
図5は、複数の幾何学的に定義された切刃を持つ回転対称な工具の切刃の実際の位置と理想的な位置を示す、ボールトラックミリングカッターの概略側面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示した実施形態による工作物ホルダにクランプされた工作物を示す、工作物を切削工具に加工する研削装置の部品の概略透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃10、ここでは合計4つの幾何学的に定義された切刃10を持つ、回転対称的な(回転対称)工具1のヘッド部分の透視図であり、そのうちの1つのみが示されている。複数の切刃10は周方向に等間隔で配置されていて、好ましくは各幾何学的に定義された切刃10は同一に設計されている。切刃10は、切刃10にそれぞれ付帯するすくい面10aとフランク面10bとの交線として形成されていて、また、切刃10は面取り10cを備えてよい。
【0042】
回転対称な工具1は、ボールトラックミリングカッター100であることがあり、このボールトラックミリングカッター100は、ミリング装置の工具ホルダに受容されて保持されるように構成されていて、特にミリング装置の主軸にクランプされるように構成されている。回転対称な工具1は、回転対称な工具1のヘッド部18において、少なくとも1つの幾何学的に定義された切刃10を備え、軸部としても参照される取付部12と、機能部14とを備える。ヘッド部18は、好ましくは鋼又は超硬合金からなる基部ボデー16と、工具1の機能部14をなし幾何学的に定義された、複数の切刃10とを備える。以下、機能部14という用語は、工具1の完成した機能部14を表すが、工具1の完成した機能部14に入った、加工されるべき工作物の未加工の機能部14も同様に表す。
図1に示す実施形態では、切刃10は、好ましくは、はんだ付け又はろう付けによって、基部ボデー16に接続された切刃チップ15に形成されている。切刃10は、立方晶窒化ホウ素(CBN)、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)及び多結晶ダイヤモンド(PCD)からなる群から選択可能な硬質材料からなるか、又は硬質材料で作られている。
【0043】
機能部品14の切刃10は、硬質材料からなる連結された切断チップ15から、研削、レーザ、又はエロージョン処理で材料を除去することによって製造できる。切刃10は、基部ボデー16に既に固定されている各切削チップ15に機械加工、好ましくは研削加工される。研削加工は、制御ユニットによって制御され、プログラム可能なコンピュータプログラム製品に従い、自動化された多軸研削盤で実施可能である。切削チップ15から材料を除去することで定義された切削外形を持ち、幾何学的に定義された切刃10を少なくとも1つ製造することは、本発明の方法の対象の1つである。
【0044】
ヘッド部18は、工具装置において、工作物の意図された加工中の工具1の回転軸線に相当する仮想中心軸線Mを有する。さらに、ヘッド部18は、作業端側19と、中心軸線Mに沿って作業端側19に対向する取付部12としてのクランプ端側20とを有している。
図1に示すボールトラックミリングカッター100の作業端側19は、ミリング装置での加工を意図している工作物に面している。
【0045】
回転対称な工具1、好ましくはボールトラックミリングカッター100の作業端側19とは反対側の端部、すなわちクランプ端部側20には、好ましくは軸部として構成された取付部12が設けられている。工具1のクランプ端部側20を含んで取付部12が、工具1の機能部品14が製造される前に製造されることに言及しておく。したがって、工作物2(
図1に非図示)の取付部12は、完成した工具1に相当する。図示の実施形態では、取付部12は円筒形であるが、クランプ端部側20に向かう方向に円錐形に構成することも可能である。クランプ端部側20は、機械加工装置の保持手段によって提供される相補的なねじ部に接続可能な内ねじ21を備えることがある。クランプ端部側20は、クランプ端部側20が保持手段に確実かつ解除可能な回転固定式に固定可能に、外ねじを設けるなど、異なる形態で構成し得る。
【0046】
工具1のヘッド部18に一体的に取り付け可能な軸部を備える取付部12は、ヘッド部18に向かって、クランプ位置で保持手段(図示せず)の端面に突き当たる第1着座面23を備える。第1着座面23は、軸部12に統合している半径部分として構成し得るし、肩部を提供する円錐状又は環状面として構成し得る。第1着座面23とクランプ端部側20との間には、円錐状又は円筒状に形成された第2着座面24が設けられている。円錐形又は円筒形の第2着座面24及び第1着座面23は、取付部12が機械加工装置の保持手段に挿入されて固定されたときに、保持手段の形成部分に適合する、軸線方向及び半径方向の境界面を形成する。円錐形又は円筒形の第2着座面24及び半径方向に形成された第1着座面23は、工具1の基準面30を形成し、工作物2(
図1に非図示)のところとして説明される。
【0047】
しかしながら、回転対称な工具1の製造は、複数のステップの処理である。前のステップ内で、中心工作物軸線W(
図1に非図示)を有する回転対称工作物2(
図1に非図示)を加工して、クランプ端部側20と、基準面30を提供する第1着座面23及び第2着座面24とを形成し、工作物ホルダ3(
図1には示されていない)などの保持手段に接続可能に構成する。
【0048】
図2は、好ましい1実施形態の工作物ホルダ3の透視図である。工作物ホルダ3は、機械加工部31とクランプ部32とからなる。工作物ホルダ3の図示の実施形態によれば、機械加工部31は、機械加工装置のクランプシステム(
図2に非図示)に挿入可能である。回転対称の工作物2(
図2に非図示)は、工作物ホルダ3のクランプ部32に解除可能な回転固定式で取り付けられてもよい。工作物ホルダ3は、機械加工部31に、円錐形又は円筒形の部分33と、半径方向のフランジ部分34とを備えている。
図2に示すように、半径方向のフランジ部分34は、機械部31とクランプ部32との間に配置されている。円錐形又は円筒形の部分33は、工作物ホルダ3の長手方向の軸線WHに沿って延びている。円錐形の部分33の場合、円錐形は所定の角度で傾斜していて、機械加工装置のクランプシステムにおける工作物ホルダ3のセンタリングを補助する。半径方向のフランジ部分34は、工作物ホルダ3の長手方向軸線WHに垂直な端面34aを提供する肩部として形成され、工作物ホルダ3をクランプしたときに機械加工装置のクランプシステムとの当接部又は支承面を形成してもよい。
【0049】
工作物ホルダ3を機械加工装置に接続するために、そのクランプシステムは、工作物ホルダ3の内面に係合するように構造化され配置されたクランプ面を有する引き戻しフィンガー又は分割コレットを備えることがある。引き戻しフィンガーは、例えば中空シャンクの工作物ホルダ3を機械加工装置のクランプシステムでクランプするために、半径方向外側に押し出し可能である。中空シャンクの工作物ホルダ3は、公知の中空シャンク工具ホルダ、HSKとして設計されてもよい。
【0050】
図2によれば、工作物ホルダ3は、外周径35aにおいて、外周径35aから突出したカム36を備えている。さらに、図示の実施形態では、第2円周径35bにノッチ37が設けられている。工作物ホルダ3が機械加工装置のクランプシステムによって解除可能な回転固定方式で受け取られて確実に接続されると、工作物ホルダ3だけでなく、カム36とノッチ37との少なくとも一方は、工作物ホルダ3の長手方向軸線WHを中心に回転可能である。所定の位置において、カム36と、ノッチ37との少なくとも一方は、計測プローブ51(
図2に非図示)からなる計測装置50(
図2に非図示)を静止位置から計測位置に移動させるきっかけとなる。計測位置では、計測プローブ51は、クランプされた工作物2の基準面30に直接接触する。計測プローブ51の移動は、制御部(
図2に非図示)によって制御できる。
【0051】
図2に示すように、工作物ホルダ3は、クランプ部32において、円周上に配置された一連のスロット40を備え、それらスロット40は好ましくは、円周上に均等に配置されていて、かつ同一の設計である。各スロット40は、工作物ホルダ3の長手方向軸線WHに平行に、クランプ部端部32aから機械加工部31に向かって予め決められる長さ程度に延在している。好ましい一実施形態では、各スロット40は、クランプされた工作物2の部分に接触すべく、特に工作物2の基準面30に直接アクセスすべく、計測プローブ51の通過を可能にするのに十分な幅41を有する。スロット40の数や配置は様々であってよいが、好ましくは、少なくとも3つのスロット40であり、それらは工作物ホルダ3の円周上に均等に配置されている。
【0052】
図3は、工作物2が挿入され、工作物ホルダ3のクランプ部32によってクランプされた状態で示される工作物ホルダ3の概略縦断面図である。工作物ホルダ3の機械加工部31は、機械加工装置のクランプシステムの部品を受け入れるように構成され配置された開口部31aを端部に有するように構成されている。基準面30、特に中心工作物軸線Wから見て半径方向に延在している第1着座面23及び軸線方向に延在している第2着座面24を備える工作物2は、第1着座面23及び第2着座面24がそれぞれ工作物ホルダ3の相補的に形成された面との境界面を形成するように、工作物ホルダ3に挿入される。したがって、工作物ホルダ3は、工作物ホルダ3内での工作物2の確実な着座が提供されるように、工作物2の第1着座面23及び第2着座面24に少なくとも部分的に相補的に形成された半径方向部分及び円錐形又は円筒形部分をクランプ部32に提供する。なお、
図3では、工作物ホルダ3の半径方向の部分及び円錐形又は円筒形の部分は見えていない。
【0053】
工作物2は、工作物ホルダ3が備える固定手段38によって、工作物ホルダ3内に固定される。固定手段38は、工作物2のクランプ端側20に形成されたネジと接続可能なようにネジを備えて構成し得る。
【0054】
図4は、挿入されてクランプされた工作物2と計測プローブ51を備えた工作物ホルダ3の計測工程中の縦断面図である。
図4から分かるように、工作物2は、工作物ホルダ3の長手方向軸線WHと工作物2の中心軸線Wとが一致するように、工作物ホルダ3内に軸線方向及び半径方向に配置されている。
【0055】
計測装置50によって制御された方法で実行される計測処理を起動することにより、計測プローブ51(好ましくは、球状の計測ヘッドを備えた3次元計測プローブ)は、静止位置から計測位置へと移動される。計測位置の1つにおいて、計測プローブ51は、工作物ホルダ3に設けられた少なくとも1つのスロット40に部分的に挿入され、その中を計測プローブ51が部分的に通過して、クランプされた工作物2の基準面30に直接接触するように構成されている。挿入された計測プローブ51が、クランプされた工作物2の基準面30に接触することで、基準面30に接触するだけでなく、基準面30上を移動することで、異なる方向及び異なる向きでの計測が可能になる。異なる計測点52が示されていて、複数の計測点52は、基準面30、特に工作物2の第1着座面23及び第2着座面24に配置してよく、複数の計測点52は、工作物2の未加工の機能部14、特に切削チップ15の異なる位置に配置してよい。
【0056】
異なる(複数の計測)点52で計測することにより、実際に位置決めされた切削チップの仮想平面と、クランプされた工作物2の中心工作物軸線Wの仮想中心との少なくとも一方が、計測データから計算される場合がある。工作物ホルダ3にクランプされた工作物2の正しい方向性を確保するために、機械加工装置の軸線を中心とした工作物2の回転を、挿入された計測プローブ51によってシミュレートして監視するだけでなく、制御装置によって計算することがある。さらに、少なくとも3つの計測点52で切削チップ15を計測することにより、切削チップ15の実際の位置を決定できる。この計測データは、理想的な形状かつ位置決めされ幾何学的に定義される切刃10を計算するためと、この幾何学的に定義された切刃10を研削又はレーザで製造するためとに使用できる。
【0057】
図5は、切削チップ15及び/又は切刃10の実位置60と、切削チップ15及び/又は切刃10の理想位置70とを示す、ボールトラックミリングカッター100の概略側面図である。切削チップ15の実位置60は、連結される切削チップ15の原形と同様に、例えばはんだ付けやろう付けによる切削チップ15の基部ボデー16への接続処理の結果として見ることができる。一実施形態によれば、幾何学的に定義された切刃10は、好ましくは切削チップ15を基部ボデー16に接続した後に、切削チップ15上に生成される。基部ボデー16に接続された切削チップ15は、通常、円形又は楕円形の形態を有し、幾何学的に定義された切刃10の理想的な外形のため、除去できる十分な材料を提供する。
【0058】
切刃10の製造は、切削チップ15の実位置60の計測を含む本発明による方法によって行える。この方法は、コンピュータプログラム製品が制御装置上で実行されているような制御装置、又は、研削装置などの機械加工装置を制御するために設定され、機械加工装置と動作可能に接続された別の計算装置によって制御できる。機械加工装置は、好ましくは、コンピュータプログラムを実行する制御ユニット又は計算装置と、データ記憶装置とを備える。
【0059】
図6は、機械加工装置200、特に砥石201を備えた研削盤の部品を示す概略透視図である。研削盤200は、特に、工作物ホルダ3を受けてクランプするクランプシステム202を備える。工作物ホルダ3は、研削装置200に、特にクランプシステム202に解除可能に回転可能に固定されるように構成されている。工作物2は、工作物ホルダ3に挿入され、保持される。さらに、計測装置50は、計測装置50の計測プローブ51が静止位置(図示)から計測位置に移動できるように配置されていて、計測プローブ51は、工作物ホルダ3に設けられた少なくとも1つのスロット40又は開口部を介して部分的に挿入されている。少なくとも1つのスロット40は、計測プローブ51が、工作物ホルダ3によって少なくとも部分的に覆われている工作物2に設けられた基準面30に接触できるように設けられている。
図6に示すように、機械加工装置200は、機械加工装置200の性能を制御するだけでなく、計測装置50の計測処理を制御するように構成された制御ユニット210を備えている。工作物2の中心軸線W及び工作物ホルダ3の長手方向軸線WHは、機械装置200の回転軸線Mと一致している。軸線の小さなずれは、計測プローブ51によって計測され、説明した方法に従って計測データを処理することによって検討できる。
【0060】
図6aは、工作物ホルダ3にクランプされた工作物2のホールドの詳細を示している。工作物ホルダ3に設けられたスロット40は、基準面30の少なくとも一部が工作物ホルダ3で覆われていても、基準面30の計測が可能であるように配置されかつ構成されている。
【外国語明細書】