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特開2022-160362睡眠時無呼吸症の監視システムおよび監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160362
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸症の監視システムおよび監視方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20221012BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/11 110
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026507
(22)【出願日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/171,091
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】110121917
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519031944
【氏名又は名称】光禾感知科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】OSENSE TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】陳 富貴
(72)【発明者】
【氏名】王 友光
(72)【発明者】
【氏名】林 信標
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS09
4C038SV01
4C038VA05
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【目的】被験者の睡眠状態を監視することのできる睡眠時無呼吸症の監視システムおよび監視方法を提供する。
【解決手段】監視方法は、回帰モデルを取得することと、被験者に無線周波数信号を送信して、無線周波数信号に対応する反射信号を受信し、反射信号が、心拍信号、呼吸信号、および動作信号を含むことと、心拍信号および呼吸信号に対してそれぞれウェーブレットエントロピー分析を行って、心拍信号に対応する第1エントロピーおよび呼吸信号に対応する第2エントロピーを生成することと、第1エントロピー、第2エントロピー、および動作信号に基づいて、回帰モデルを基礎として無呼吸低呼吸指数(AHI)を計算することと、無呼吸低呼吸指数(AHI)に基づいて、被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断し、判断結果を生成することと、判断結果を出力することを含む。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者を監視するのに適した睡眠時無呼吸症の監視システムであって、前記監視システムが、
送受信機と、
回帰モデルを保存する記憶媒体と、
前記記憶媒体および前記送受信機に結合されたプロセッサと、
を含み、前記プロセッサが、
前記送受信機を介して前記被験者に無線周波数信号を送信して、前記無線周波数信号に対応する反射信号を受信し、前記反射信号が、心拍信号、呼吸信号、および動作信号を含むことと、
前記心拍信号および前記呼吸信号に対してそれぞれウェーブレットエントロピー分析を行って、前記心拍信号に対応する第1エントロピーおよび前記呼吸信号に対応する第2エントロピーを生成することと、
前記第1エントロピー、前記第2エントロピー、および前記動作信号に基づいて、前記回帰モデルを基礎として無呼吸低呼吸指数を計算することと、
前記無呼吸低呼吸指数に基づいて、前記被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断し、判断結果を生成することと、
前記判断結果を出力することと、
を含む監視システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記動作信号に基づいて前記被験者の動作回数を判断し、前記第1エントロピー、前記第2エントロピー、および前記動作信号を前記回帰モデルに入力して、前記無呼吸低呼吸指数を計算する請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記プロセッサが、閾値よりも大きい前記無呼吸低呼吸指数に反応して、前記睡眠時無呼吸イベントが発生すると判断し、前記判断結果を生成する請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記記憶媒体が、さらに、前記被験者の生理学的情報を保存し、前記プロセッサが、閾値よりも小さいか、それに等しい前記無呼吸低呼吸指数に反応して、前記生理学的情報に基づいて、前記睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断する請求項1に記載の監視システム。
【請求項5】
前記記憶媒体が、さらに、ルックアップテーブルを保存し、前記プロセッサが、前記ルックアップテーブルから前記生理学的情報に対応するルックアップ値を取得して、前記判断結果を生成する請求項4に記載の監視システム。
【請求項6】
前記生理学的情報が、性別、年齢、身長、体重、および首回りのうちの少なくとも1つを含む請求項4に記載の監視システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記反射信号に対して高速フーリエ変換を行って、周波数スペクトルを生成し、前記プロセッサが、前記周波数スペクトルに対して第1バンドパスフィルタリングを行って、前記呼吸信号を生成し、前記周波数スペクトルに対して第2バンドパスフィルタリングを行って、前記心拍信号を生成する請求項1に記載の監視システム。
【請求項8】
前記送受信機から前記被験者までの距離が、0.5m~2mである請求項1に記載の監視システム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記送受信機および睡眠ポリグラフ検査により訓練データを受信して、前記訓練データに基づいて前記回帰モデルを訓練し、前記訓練データが、睡眠ポリグラフ検査に関連する検査結果を含む請求項1に記載の監視システム。
【請求項10】
被験者を監視するのに適した睡眠時無呼吸症の監視方法であって、前記監視方法が、
回帰モデルを取得することと、
前記被験者に無線周波数信号を送信して、前記無線周波数信号に対応する反射信号を受信し、前記反射信号が、心拍信号、呼吸信号、および動作信号を含むことと、
前記心拍信号および前記呼吸信号に対してそれぞれウェーブレットエントロピー分析を行って、前記心拍信号に対応する第1エントロピーおよび前記呼吸信号に対応する第2エントロピーを生成することと、
前記第1エントロピー、前記第2エントロピー、および前記動作信号に基づいて、前記回帰モデルを基礎として無呼吸低呼吸指数を計算することと、
前記無呼吸低呼吸指数に基づいて、前記被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断し、判断結果を生成することと、
前記判断結果を出力することと、
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時無呼吸症の監視システムおよび監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症(sleep apnea)の患者は、睡眠中に上気道(鼻咽頭、中咽頭、および喉頭を含む)が繰り返し崩壊することによって、気道の閉塞を引き起こす。患者は、呼吸が浅くなり、より多くの労力が必要になる。症状が激しい場合、患者は、呼吸ができなくなり、窒息する可能性がある。大部分の患者は、肥満による気道狭窄や気道筋の緊張低下によって、上気道の崩壊を引き起こす。また、患者の中には、顎が小さいか後退している、扁桃腺または口蓋垂が大きい、あるいは先天的な頭蓋顔面異常であるために、狭い上気道を有する者もいる。
【0003】
睡眠時無呼吸症の患者は、昼間の眠気や集中力の低下を引き起こしやすい。その結果、作業効率が下がり、運転中に眠気に襲われて事故を起こす可能性もある。さらに、睡眠時無呼吸症の患者は、狭心症、心筋梗塞、あるいは睡眠中に脳卒中を起こす可能性がある。また、睡眠時無呼吸症の患者は、突然記憶喪失や若年性認知症を発症する可能性がある。一方、睡眠時無呼吸症(不安、睡眠不足、短気、または不穏状態等)によって患者の性格が変わり、うつ病や不眠症になることもある。
【0004】
したがって、いかにして睡眠時無呼吸症を発症する人々を早期に発見するかが、本分野の課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被験者の睡眠状態を監視することのできる睡眠時無呼吸症の監視システムおよび監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の睡眠時無呼吸症の監視システムは、被験者を監視するのに適している。監視システムは、プロセッサ、記憶媒体、および送受信機を含む。記憶媒体は、回帰モデル(regression model)を保存する。プロセッサは、記憶媒体および送受信機に結合される。プロセッサは、以下を実行するために構成される。送受信機を介して被験者に無線周波数信号を送信して、無線周波数信号に対応する反射信号を受信する。反射信号は、心拍信号(heartbeat signal)、呼吸信号、および動作信号を含む。心拍信号および呼吸信号に対してそれぞれウェーブレットエントロピー分析(wavelet entropy analysis)を行って、心拍信号に対応する第1エントロピーおよび呼吸信号に対応する第2エントロピーを生成する。第1エントロピー、第2エントロピー、および動作信号に基づいて、回帰モデルを基礎として無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index, AHI)を計算する。無呼吸低呼吸指数(AHI)に基づいて、被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断し、判断結果を生成する。判断結果をプロセッサにより出力する。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、プロセッサは、動作信号に基づいて被験者の動作回数を判断し、第1エントロピー、第2エントロピー、および動作信号を回帰モデルに入力して、無呼吸低呼吸指数(AHI)を計算する。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、プロセッサは、閾値よりも大きい無呼吸低呼吸指数(AHI)に反応して、睡眠時無呼吸イベントが発生すると判断し、判断結果を生成する。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、記憶媒体は、さらに、被験者の生理学的情報を保存する。プロセッサは、閾値よりも小さいか、それに等しい無呼吸低呼吸指数(AHI)に反応して、生理学的情報に基づいて、睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断する。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、記憶媒体は、さらに、ルックアップテーブルを保存する。プロセッサは、ルックアップテーブルから生理学的情報に対応するルックアップ値を取得して、判断結果を生成する。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、生理学的情報は、性別、年齢、身長、体重、および首回りのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、プロセッサは、反射信号に対して高速フーリエ変換(fast Fourier transform)を行って、周波数スペクトルを生成する。プロセッサは、周波数スペクトルに対して第1バンドパスフィルタリング(bandpass filtering)を行って、呼吸信号を生成し、周波数スペクトルに対して第2バンドパスフィルタリングを行って、心拍信号を生成する。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、送受信機から被験者までの距離は、0.5m~2mである。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、プロセッサは、送受信機および睡眠ポリグラフ検査(polysomnography, PSG)により訓練データを受信し、訓練データに基づいて回帰モデルを訓練する。訓練データは、睡眠ポリグラフ検査(PSG)に関連する検査結果を含む。
【0015】
本発明の睡眠時無呼吸症の監視方法は、被験者を監視するのに適している。監視方法は、以下を含む。回帰モデルを取得する。被験者に無線周波数信号を送信して、無線周波数信号に対応する反射信号を受信する。反射信号は、心拍信号、呼吸信号、および動作信号を含む。心拍信号および呼吸信号に対してそれぞれウェーブレットエントロピー分析を行って、心拍信号に対応する第1エントロピーおよび呼吸信号に対応する第2エントロピーを生成する。第1エントロピー、第2エントロピー、および動作信号に基づいて、回帰モデルを基礎として無呼吸低呼吸指数(AHI)を計算する。無呼吸低呼吸指数(AHI)に基づいて、被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断し、判断結果を生成する。判断結果を出力する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の監視システムは、被験者がウェアラブルデバイスを装着しなくても、非接触の方法で被験者の睡眠状態を測定し、睡眠状態に基づいて、被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを示す判断結果を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0018】
図1】本発明の1つの実施形態に係る睡眠時無呼吸症の監視システムの概略図である。
図2】本発明の1つの実施形態に係る睡眠時無呼吸症の監視方法のフローチャートである。
図3】本発明の1つの実施形態に係る反射信号の周波数スペクトルの概略図である。
図4】本発明の別の実施形態に係る睡眠時無呼吸症の監視方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をよりよく理解するために、以下、実施形態と図面を組み合わせて、本発明をさらに詳しく説明する。可能な限り、同一または類似する部分を参照するために、図面および説明において、同一または類似する参照番号の素子/構成要素/ステップを使用する。
【0020】
被験者の睡眠状態を測定するために、被験者は、通常、睡眠センターに一晩滞在して、睡眠中に睡眠ポリグラフ検査(PSG)を受けなければならない。睡眠ポリグラフ検査(PSG)は、睡眠中の脳波、眼電図、筋電図、心電図、鼾の数、鼻および口呼吸流量、胸部および腹部の呼吸運動、酸素飽和指数、無呼吸低呼吸指数(AHI)、体の動き、または寝相等の被験者の情報を取得するために行われる。医療専門家は、睡眠ポリグラフ検査(PSG)の結果に基づいて、被験者が睡眠時無呼吸症を発症する傾向にあるかどうかを判断することができる。しかしながら、この方法は、費用と時間がかかり、十分な訓練を受けた専門家によって実施される必要があるため、この方法を幅広く応用するのは難しい。
【0021】
したがって、本発明は、被験者の睡眠時無呼吸症を非接触の方法で測定して、被験者が睡眠時無呼吸症を発症する傾向にあるかどうかを判断することのできる家庭用監視システムを提供する。そのため、被験者は、費用と時間を費やして睡眠センターへ行く必要がなく、睡眠の質に影響を与えるウェアラブルデバイスを装着する必要もない。
【0022】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る睡眠時無呼吸症の監視システム100の概略図である。監視システム100は、被験者の睡眠状態を監視するのに適している。監視システム100は、プロセッサ110、記憶媒体120、および送受信機130を含むことができる。
【0023】
プロセッサ110は、例えば、中央処理装置(central processing unit, CPU)または他のプログラマブル一般用途または特殊用途のマイクロコントロールユニット(micro control unit, MCU)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、デジタル信号プロセッサ(digital signal, processor, DSP)、プログラマブルコントローラ(programmable controller)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit, ASIC)、グラフィックスプロセッシングユニット(graphics processing unit, GPU)、イメージ信号プロセッサ(image signal processor, ISP)、画像処理装置(image processing unit, IPU)、演算論理回路(arithmetic logic unit, ALU)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(complex programmable logic device, CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array, FPGA)、または他の類似する素子、あるいはこれらの素子の組み合わせである。プロセッサ110は、記憶媒体120および送受信機130に結合され、記憶媒体120に保存された複数のモジュールおよび様々なアプリケーションにアクセスして実行することができる。
【0024】
記憶媒体120は、例えば、任意の種類の固定された、または移動可能なランダムアクセスメモリ(random access memory, RAM)、読出し専用メモリ(read-only memory, ROM)、フラッシュメモリ(flash memory)、ハードディスクドライブ(hard disk drive, HDD)、ソリッドステートドライブ(solid state drive, SSD)、または類似する素子、あるいはその組み合わせである。記憶媒体120は、プロセッサ110によって実行することのできる複数のモジュールおよび様々なアプリケーションを保存するために構成される。
【0025】
送受信機130は、無線で信号を送受信する。送受信機130は、例えば、低雑音増幅、インピーダンス整合、周波数混合、送受信周波数変換、波動フィルタリング、増幅、および類似する操作をさらに実行することができる。送受信機130は、例えば、ドップラレーダ(Doppler radar)である。監視システム100は、送受信機130を介して、ミリ波(mm Wave)等の無線周波数信号を発射することができる。
【0026】
記憶媒体120は、回帰モデル121を保存する。回帰モデル121は、生理信号に対応する無呼吸低呼吸指数(AHI)を判断するために構成される。1つの実施形態において、プロセッサ110は、回帰モデル121を訓練し、訓練した回帰モデル121を記憶媒体120に保存することができる。具体的に説明すると、プロセッサ110は、回帰モデル121および睡眠ポリグラフ検査(PSG)により訓練データを受信することができる。訓練データは、睡眠ポリグラフ検査(PSG)に関連する検査結果を含むことができる。検査結果は、睡眠中の脳波、眼電図、筋電図、心電図(すなわち、心拍信号)、鼾の数、鼻および口呼吸流量、胸部および腹部の呼吸運動、鼻および口呼吸流量および/または胸部および腹部の呼吸運動に対応する呼吸信号、酸素飽和指数、無呼吸低呼吸指数(AHI)、体の動き、寝相、または体の動きおよび/または寝相に対応する動作信号等の被験者の情報を含むことができる。プロセッサ110は、訓練データに対して重回帰分析(multiple regression analysis)を行って、エントロピー(entropy)、動作回数(movement number)、および無呼吸低呼吸指数(AHI)に対応する回帰モデル121を生成することができる。つまり、回帰モデル121は、エントロピー、動作回数、および無呼吸低呼吸指数(AHI)を含む3つの次元の情報を少なくとも含む。
【0027】
図2は、本発明の1つの実施形態に係る睡眠時無呼吸症の監視方法のフローチャートである。監視方法は、被験者の睡眠状態を監視するのに適しており、図1に示した監視システム100によって実行することができる。
【0028】
ステップS201において、監視システム100は、被験者の睡眠状態を検出することができる。具体的に説明すると、プロセッサ110は、送受信機130を介して被験者に無線周波数信号を送信することができる。被験者の身体は、無線周波数信号を送受信機130に反射する。プロセッサ110は、送受信機130を介して無線周波数信号に対応する反射信号を受信することができる。反射信号は、心拍信号(heartbeat signal)、呼吸信号(respiration signal)、および動作信号(movement signal)を含むことができる。1つの実施形態において、送受信機130から被験者までの距離は、約0.5m~2mであってもよい。
【0029】
プロセッサ110は、反射信号に対して信号処理を行って、心拍信号、呼吸信号、および動作信号を取得することができる。1つの実施形態において、プロセッサ110は、反射信号に基づいて、被験者から送受信機130までの距離を判断し、その距離の変化に基づいて、動作信号を得ることができる。1つの実施形態において、プロセッサ110は、反射信号の周波数スペクトルから心拍信号または呼吸信号を得ることができる。具体的に説明すると、プロセッサ110は、反射信号に対して高速フーリエ変換(fast Fourier transform)を行って、周波数スペクトルを生成することができる。図3は、本発明の1つの実施形態に係る反射信号の周波数スペクトルの概略図である。周波数スペクトルは、呼吸信号(またはその調波)に対応するピーク値32および心拍信号(またはその調波)に対応するピーク値33を含むことができる。ピーク値33に対応する周波数は、ピーク値32に対応する周波数よりも高い。
【0030】
周波数スペクトルから呼吸信号および心拍信号を取り出すため、プロセッサ110は、異なる周波数帯の濾波機を使用して、反射信号の周波数スペクトルをフィルタリングすることができる。例えば、プロセッサ110は、周波数スペクトルに対して第1バンドパスフィルタリングを行って、呼吸信号を生成し、周波数スペクトルに対して第2バンドパスフィルタリングを行って、心拍信号を生成することができる。第1バンドパスフィルタリングは、窓関数42に対応することができ、第2バンドパスフィルタリングは、窓関数43に対応することができる。窓関数43が存在する周波数帯は、窓関数42が存在する周波数帯より高くてもよい。
【0031】
図2に戻ると、ステップS202において、プロセッサ110は、心拍信号および呼吸信号に対してそれぞれウェーブレットエントロピー(wavelet entropy analysis)分析を行って、心拍信号に対応する第1エントロピーおよび呼吸信号に対応する第2エントロピーを生成することができる。
【0032】
ステップS203において、プロセッサ110は、第1エントロピー、第2エントロピー、および動作信号に基づいて、回帰モデル121を基礎として無呼吸低呼吸指数(AHI)を計算することができる。具体的に説明すると、プロセッサ110は、動作信号に基づいて、被験者の動作回数(例えば、寝返りの回数)を判断する。動作回数を取得した後、プロセッサ110は、第1エントロピー、第2エントロピー、および動作回数を回帰モデル121に入力して、無呼吸低呼吸指数(AHI)を計算することができる。以下のステップにおいて、プロセッサ110は、無呼吸低呼吸指数(AHI)に基づいて、被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断し、判断結果を生成することができる。
【0033】
ステップS204において、プロセッサ110は、無呼吸低呼吸指数(AHI)が閾値よりも大きいかどうかを判断することができる。無呼吸低呼吸指数(AHI)が閾値よりも大きい場合、プロセスは、ステップS205に進む。無呼吸低呼吸指数(AHI)が閾値よりも小さいか、それに等しい場合、プロセスは、ステップS206に進む。
【0034】
ステップS205において、プロセッサ110は、睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断して、判断結果を生成することができる。判断結果は、睡眠中に被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生したことを示すことができる。
【0035】
1つの実施形態において、プロセッサ110は、複数の閾値に基づいて睡眠時無呼吸イベントの重症度を判断して、対応する判断結果を生成することができる。判断結果は、被験者に発生している睡眠時無呼吸イベントが軽度であるか、中度であるか、重度であるかを示すことができる。例えば、プロセッサ110は、第1閾値、第2閾値、および第3閾値を含む3つの閾値に基づいて、睡眠時無呼吸イベントの重症度を判断することができる。第1閾値は、5であってもよく、第2閾値は、15であってもよく、第3閾値は、30であってもよい。3つの閾値のそれぞれは、1時間以内の無呼吸低呼吸指数(AHI)の平均値と関連する。1時間以内の被験者の平均無呼吸低呼吸指数が第1閾値よりも小さい場合、プロセッサ110は、睡眠時無呼吸イベントが発生しないと判断することができる。1時間以内の被験者の平均無呼吸低呼吸指数が第2閾値よりも小さく、且つ第1閾値よりも大きいか、それに等しい場合、プロセッサ110は、被験者に軽度の睡眠時無呼吸イベントが発生したと判断することができる。1時間以内の被験者の平均無呼吸低呼吸指数が第3閾値よりも小さく、且つ第2閾値よりも大きいか、それに等しい場合、プロセッサ110は、被験者に中度の睡眠時無呼吸イベントが発生したと判断することができる。1時間以内の被験者の平均無呼吸低呼吸指数が第3閾値よりも大きいか、それに等しい場合、プロセッサ110は、被験者に重度の睡眠時無呼吸イベントが発生したと判断することができる。
【0036】
ステップS206において、プロセッサ110は、ルックアップテーブル122から、被験者の生理学的情報123および無呼吸低呼吸指数(AHI)に対応するルックアップ値を取得することができる。ルックアップ値は、被験者が睡眠時無呼吸症を発症するハイリスク群に属するかどうかを示す。具体的に説明すると、記憶媒体120は、被験者の生理学的情報123およびルックアップテーブル122を前もって保存する。生理学的情報123は、性別、年齢、身長、体重、および首回り等の情報を含むが、本発明はこれに限定されない。生理学的情報123またはルックアップテーブル122は、例えば、プロセッサ110によって取得される。
【0037】
ステップS207において、プロセッサ110は、ルックアップ値に基づいて、被験者が睡眠時無呼吸症を発症するハイリスク群に属するかどうかを判断することができる。被験者が睡眠時無呼吸症を発症するハイリスク群に属するとプロセッサ110が判断した場合、プロセスは、ステップS205に進む。被験者が睡眠時無呼吸症を発症するハイリスク群に属さないとプロセッサ110が判断した場合、プロセスは、ステップS208に進む。
【0038】
具体的に説明すると、ルックアップテーブル122は、生理学的情報123等の情報とルックアップ値の間のマッピング関係を記録することができる。1つの実施形態において、ルックアップテーブル122は、被験者の年齢とルックアップ値の間のマッピング関係を記録することができる。ルックアップ値は、被験者が睡眠時無呼吸症を発症するハイリスク群に属するかどうかを示すことができる。例えば、ルックアップテーブル122は、「体重と身長の比率が0.45よりも大きく、年齢が65歳よりも高く、首回りと身長の比率が0.24よりも大きいこと」がハイリスク群を示すルックアップ値に対応すると記録することができる。被験者の生理学的情報が「体重と身長の比率が0.45よりも大きく、年齢が65歳よりも高く、首回りと身長の比率が0.24よりも大きいこと」と一致する場合、プロセッサ110は、対応するルックアップ値に基づいて、被験者が睡眠時無呼吸症を発症するハイリスク群に属すると判断することができる。
【0039】
ステップS208において、プロセッサ110は、睡眠時無呼吸イベントが発生しないと判断し、判断結果を生成することができる。判断結果は、睡眠中に被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生しないことを示すことができる。
【0040】
ステップS209において、プロセッサ110は、判断結果を医療専門家の参考として出力することができる。
【0041】
図4は、本発明の別の実施形態に係る睡眠時無呼吸症の監視方法のフローチャートである。監視方法は、図1に示した監視システム100によって実行することができる。ステップS401において、回帰モデルを取得する。ステップS402において、被験者に無線周波数信号を送信して、無線周波数信号に対応する反射信号を受信する。反射信号は、心拍信号、呼吸信号、および動作信号を含む。ステップS403において、心拍信号および呼吸信号に対してそれぞれウェーブレットエントロピー分析を行って、心拍信号に対応する第1エントロピーおよび呼吸信号に対応する第2エントロピーを生成する。ステップS404において、第1エントロピー、第2エントロピー、および動作信号に基づいて、回帰モデルを基礎として無呼吸低呼吸指数(AHI)を計算する。ステップS405において、無呼吸低呼吸指数(AHI)に基づいて、被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生するかどうかを判断し、判断結果を生成する。ステップS406において、判断結果を出力する。
【0042】
以上のように、本発明の監視システムは、無線信号を使用して、被験者の睡眠状態を検出することができる。監視システムは、異なる濾波機を使用して、被験者の睡眠状態を示す信号を処理し、心拍信号、呼吸信号、および動作信号等の情報を取得する。監視システムは、さらに、回帰モデルおよび上述した情報に基づいて、被験者の無呼吸低呼吸指数(AHI)を計算する。無呼吸低呼吸指数(AHI)は、被験者に発生している睡眠時無呼吸症の重症度を示す。無呼吸低呼吸指数(AHI)が高すぎる時、監視システムは、睡眠中に被験者に睡眠時無呼吸イベントが発生すると判断し、判断結果を生成する。監視システムは、その判断結果を出力する。監視システムの判断結果は、被験者が睡眠時無呼吸症を患っているかどうかを医療専門家が診断する際に役立つ。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の睡眠時無呼吸症の監視システムおよび監視方法は、被験者の睡眠時無呼吸症のリスクを評価する非接触型監視システムに応用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 監視システム
110 プロセッサ
120 記憶媒体
121 回帰モデル
122 ルックアップテーブル
123 生理学的情報
130 送受信機
32、33 ピーク値
42、43 窓関数
S201、S202、S203、S204、S205、S206、S207、S208、S209、S401、S402、S403、S404、S405、S406 ステップ
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】