(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160393
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】鉄合金の機械加工のためのPCBN成形体
(51)【国際特許分類】
C22C 29/16 20060101AFI20221012BHJP
C22C 1/05 20060101ALI20221012BHJP
C04B 35/5835 20060101ALI20221012BHJP
C04B 35/645 20060101ALI20221012BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20221012BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20221012BHJP
C22C 21/00 20060101ALN20221012BHJP
【FI】
C22C29/16 A
C22C1/05 M
C04B35/5835
C04B35/645
B23B27/14 B
B23B27/20
C22C21/00 E
C22C21/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022101054
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2017216905の分割
【原出願日】2017-11-10
(31)【優先権主張番号】15/793,098
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516053969
【氏名又は名称】ダイヤモンド イノヴェーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デュース, ローレンス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】油本 憲志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切削ツールの製造に採用されうる、微粒子立方晶窒化ホウ素焼結成形体を提供する。
【解決手段】成形体は少なくとも80vol%のcBNを含み、HPHT条件下で焼結される。本発明では、最終的に焼結された材料中の未反応コバルトのレベルは従来の材料よりも低い。本発明は、焼結金属合金などの鉄を含む金属合金の機械加工で有益であることを立証した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積で80%から95%の間の体積のcBN粒子と、
アルミニウム源と、
コバルト源と、
それぞれ微量のW、CoW、WB、CoBと、
Co、W、Al、並びに、Cr、Ni、V及びMnのうちの少なくとも1つを含む、金属結合剤と、
超硬合金背面と
を含み、圧力が少なくとも5GPaで、温度が少なくとも1200°CであるHPHT条件で焼結された、微粒子焼結成形体。
【請求項2】
CoBは、材料の3vol%から15vol%の間である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
W又はBと反応していないCoは、材料の1~3vol%である、請求項1に記載の成形体。
【請求項4】
前記結合剤はCoB、Co、及びWBを含み、CoBは3~15vol%、非合金コバルトは1~3vol%、WBは0.1~10vol%、CoB/Coは3~15、並びにCoB/WBは0.5~15である、請求項1に記載の成形体。
【請求項5】
前記結合剤の粒子サイズは、D50で示した値で0.3~0.7ミクロンである、請求項1に記載の成形体。
【請求項6】
前記cBNの含有量は85vol%から95vol%の間のcBNである、請求項1に記載の成形体。
【請求項7】
超硬合金背面は超硬WCである、請求項1に記載の成形体。
【請求項8】
前記HPHT圧力は少なくとも5.5GPaである、請求項1に記載の成形体。
【請求項9】
前記HPHT圧力は少なくとも6GPaである、請求項1に記載の成形体。
【請求項10】
前記アルミニウム源は元素アルミニウム又はアルミニウム金属間化合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の成形体。
【請求項11】
前記アルミニウム源は元素アルミニウム、NiAl3、又はTiAl3からなる、請求項10に記載の成形体。
【請求項12】
前記コバルト源は超硬合金背面を含む、請求項1に記載の成形体。
【請求項13】
前記コバルト源は超硬WC背面を含む、請求項12に記載の成形体。
【請求項14】
前記cBN粒子は5ミクロン未満のD50を有する、請求項1に記載の成形体。
【請求項15】
前記成形体は切削ツールの構成要素として使用される、請求項1に記載の成形体。
【請求項16】
前記cBN粒子は2ミクロン未満のD50を有する、請求項1に記載の成形体。
【請求項17】
体積で80%から95%の間の体積のcBNと、
アルミニウム源と、
コバルト源と、
それぞれ微量のW、CoW、WB、CoBと、
Co、W、Al、並びに、Cr、Ni、V及びMnのうちの少なくとも1つを含む、金属結合剤と、
超硬合金背面と
を含む、微粒子焼結成形体。
【請求項18】
前記成形体は約5GPaで焼結される、請求項17に記載の成形体。
【請求項19】
前記成形体は少なくとも1200°Cの温度で焼結される、請求項17に記載の成形体。
【請求項20】
体積で80%から95%の間の体積のcBNと、
アルミニウム源と、
コバルト源と、
それぞれ微量のW、CoW、WB、CoBと、
金属結合剤と、
超硬合金背面と
を含む微粒子焼結成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
多結晶質立方晶窒化ホウ素(PcBN)成形体(compact)は、体積百分率で約80%から約95%のcBN及び金属結合剤系からなる。PcBN成形体は、鉄及び同様な化学反応部品、例えば焼結金属粉末合金などの機械加工で特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】本発明の望ましい実施形態の電子顕微鏡画像である。
【
図2】個々の物質を表わす特定の色を有する、本発明の実施形態の元素マップである。
【
図3】従来の材料Aの元素マップの電子顕微鏡画像である。
【
図4】従来の材料Bの元素マップの電子顕微鏡画像である。
【
図6】ツール寿命対CoB/Co比率の概要を表わすグラフである。
【背景技術】
【0003】
高圧/高温(HP/HT)プロセスによるcBNの製造は当該技術分野では周知で、米国特許第2,947,617号にも記載されている。触媒なしで熱分解六方晶窒化ホウ素を利用して、焼結多結晶cBN成形体を作成するプロセスは、米国特許第4,1888,194号に記載されている。このような直接変換プロセスに関する改良が米国特許第4,289,503号に記載されており、酸化ホウ素は変換プロセスの前にHBN粉末の表面から除去される。
【0004】
カッター技術で使用される成形体は、自己接着性によって、接着媒体によって、或いはこれらの組み合わせによって、一体に接着された大量の研磨粒子を含む。複合成形体は、超硬金属炭化物などの基板材料に接着された成形体である。米国特許第3,918,219号は、複合cBN成形体を形成するため、六方晶窒化ホウ素(HBN)を炭化物塊に接触させてcBNに変える触媒変換について記載している。成形体又は複合成形体は、切削ツール、ドリルビット、ドレッシングツール及び摩耗部品用の半加工品で使用されうる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
新しいcBN成形体は成形ツールで特に有用で、ワークピースの機械加工で使用される。本発明の一実施形態では、本発明のcBN成形体の用途は化学反応性の高い材料の機械加工にある。
【0006】
「化学反応性の高い材料」という表現は、ツール材料と化学的に反応する材料、例えば、温度が上昇するとダイヤモンドツールと反応する鉄分を含むワークピースを意味する。本発明の焼結cBN成形体は、固めるか圧縮されてワークピース又は部品を形成する粉末金属から作られた粉末金属部品の機械加工に使用されうる。
【0007】
本発明の焼結cBN成形体は、粉末金属鉄などの化学反応性の高い材料の機械加工で、優れた性能を実証している。本発明のcBN焼結成形体は、自動車産業では現在一般的な、金属粉末の圧密によって製造される粉末金属部品、例えば、ギア、バルブシートなどの機械加工に優れている。本発明のcBN焼結成形体の数値比較はツールの耐用年数で、ツールが破断するまでに、或いは機械加工された金属の仕上がり表面が許容できなくなるまでに、完了しうる機械加工の量によって決定される。本発明のcBN焼結成形体は一実施形態で試験され、3:1の比率以上で従来の成形体よりも優れた性能を示すことが明らかになった。
【0008】
本発明の焼結cBN成形体の製造では、原材料粉末は所望の粒子サイズに粉砕され、例えば、超音波混合、ボールミル混合、アトリッションミル混合などを含む様々な技術によって混合される。
【0009】
粉砕は、例えば、限定するものではないが、アルコール、アセトンなどの容易に除去可能で、且つ粉砕される金属粉末の望ましくない酸化を促進しない溶媒がある状態で実行される。このような粉砕は通常、望ましくない程度の粉末の酸化を引き起こすことはない。粉砕温度は周囲温度で、粉砕時間は最大で数時間に及ぶことがある。ボールミル装置のサイズを調節することで、100gから2kg以上までの範囲の混合物を作ることができる。
【0010】
溶媒を取り除くため、混合物は溶媒(イソプロピルアルコール、アセトンなど)の引火点未満の温度で乾燥される。粉末はその後の処理を補助するため、粒状にされる。混合材料の組成は、構成要素の相対含有量が所望の範囲にとどまるように、調整可能である。
【0011】
粉末は、上述の当該技術分野で周知のように、従来のHPHT技術及び装置を用いた焼結をうけてもよい。粉末は耐熱金属カップ(例えば、Ta又はNb)に充填される。カップのサイズは最終の焼結成形体のサイズを限定する。背面基板材料(粉末又は成形体)は、当該技術で周知のように、焼結cBN成形体にその場で接着するためカップに充填することができる。適切な基板は、例えば、耐熱金属(例えば、W)炭化物を含む。基板のエッジ周囲でのカップ材料の圧着は、カップを密閉する。
【0012】
この密閉カップアセンブリは次に、圧力伝達及び圧力密閉材料からなる高圧セルに充填され、粉末混合物を焼結して基板にろう付けするため、高圧(例えば、4.5~6.5GPa)及び高温(約1200°C)に30~40分間さらされる。焼結された半加工品はセルから取り外され、カップ材料を取り除き、所望の寸法にするため、機械加工される。仕上げられた半加工品は放電加工(EDM)によって、或いはレーザーによって、粉末金属鉄及び他の焼結材料の機械加工に使用される切削ツールの製造に適した形状及びサイズに切断される。上述の焼結半加工品のサイズ及び形状は、コンポーネントの寸法を変えることによって変化し、主として焼結プロセスの促進に使用される高圧/高温(HPHT)機器によって寸法が制限される。
【0013】
焼結されたcBN成形体製品は、約80vol%から95vol%に及ぶ、平均サイズが約1~2ミクロン(μm)のcBN粒子、並びに、cBN粒子間に一様に分散された結合剤相からなる残材を含む。HPHTプロセスでは、粉砕及び混合ステップ中に粉末に添加されたアルミニウム含有化合物は、立方晶窒化ホウ素との反応を開始し、焼結を開始する。超硬合金基板のコバルトもHPHT中に液化し、粉末床に浸透して空隙を解消し、更に焼結を支援する。HPHT後、結合剤は化学量論的炭化物、窒化物、又はホウ化物を含む。
【0014】
本願の一実施形態では、結合剤相は、X線回折技術によって特定されうる幾つかの相、例えば、窒化アルミニウム、コバルト、タングステンカーバイド、並びにタングステン、ホウ素及び/又はコバルトの化合物を含む。これらの相は、混合された粉末コンポーネントの反応によって、焼結プロセス中に形成される。粉末剤形とHPHT条件を注意深く選択することによって、従来の材料よりも最終の材料で未反応のコバルトは少なくなる。本発明の材料は、従来の材料に対して、測定可能な性能の利点を有することが示された。
【0015】
焼結されたcBN成形体は次に、粉末金属鉄などの化学反応性の高い材料の機械加工用のツールに形成することができる。このようなツールの形成及び使用される機械加工条件は、当該技術分野では周知で、商業的に盛んに用いられている。
【0016】
図1は、約90vol%のcBNを有する微粒子のcBN高含有材料を示しており、これ以降では本発明の材料と称される。本発明の好ましい実施形態は以下を含みうる。
3.607vol%の黒110は、未割当の色である。
7.001vol%の黄120は、未検出のCoB、Wを示す。
70.814vol%の緑130は、未検出のB、Co及びWを示す。
1.142vol%の赤140は、未検出のCo、B及びWを示す。
3.23vol%の青150は、未検出のW、Co及びBを示す。
9.72vol%のシアン160は、未検出のWB、Coを示す。
2.281vol%のマゼンタ170は、未検出のCoW、Bを示す。
2.973vol%の白180は、CoWBを示す。
【0017】
図2は、好ましい実施形態で含まれる物質200の元素マップを示している。色又は色の組み合わせは、関連する物質に対応している。走査型電子顕微鏡(SEM)は、注目している3種の元素が選択され、カラーチャネルに割り当てられるよう、cBN材料のエネルギー分散型X線分光(EDS)マップを生成するために使用された。コバルトは赤240に割り当てられ、Wは青250に割り当てられ、ホウ素は緑230に割り当てられている。3つのカラーチャネルは、特定の元素又は元素の組み合わせを示す各色による複合画像を作り出すためにマージされる。この事例では、色は、以下を含む元素、混合物及び化合物を示す。
黄220はホウ化コバルトを示す。
緑230はホウ素のみを示す。
赤240はコバルトのみを示す。
青250はタングステンを示す。
シアン260はホウ化タングステンを示す。
マゼンタ270はコバルトタングステンを示す。
白280はコバルトホウ化タングステンを示す。
【0018】
図3は、本発明の材料とは異なる従来のグレードの材料Aを示し、以下を含む。
4.462vol%の黒310は未割当である。
7.49vol%の黄320はCoBを示す。
71.934vol%の緑330はBを示す。
6.076vol%の赤340はCoを示す。
1.803vol%の青350はWを示す。
3.75vol%のシアン360はWBを示す。
3.212vol%のマゼンタ370はCoWを示す。
1.334vol%の白380はCoWBを示す
本発明の材料の元素コバルトの量は他の従来のグレードのコバルトより大幅に少ないため、提示した材料300は本発明の材料とは異なる。cBN(CoB+WB)の反応量は、従来のグレードにおけるよりも、本発明の材料で大幅に多い。
【0019】
図4は、従来のグレードの材料Bを示しており、以下を含む。
5.269の黒410は未割当である。
3.156の黄420はCoBを示す。
78.841vol%の緑430はBを示す。
3.83vol%の赤440はCoを示す。
1.681vol%の青450はWを示す。
3.64vol%のシアン460はWBを示す。
1.681vol%のマゼンタ470はCoWを示す。
0.704vol%の白480はCoWBを示す。
【0020】
図5は、元素マップ画像分析の概要500を示す。本発明の材料510と従来の材料A520及び従来の材料B530との比較をここに示す。元素コバルト540の量は、従来の材料560又は570よりも本発明の材料550で大幅に少ない。更に、反応済のB(CoB+WB)の量は、従来の材料590よりも本発明の材料580で大幅に多い。焼結金属合金ギアの機械加工では、本発明の材料は、従来の材料のツール寿命を超える長いツール寿命を得る結果となることが、試験により明らかになった。本発明の材料のツール寿命は、従来の材料Aのツール寿命の3.8倍、また、従来の材料Bのツール寿命の2.6倍を超えた。
【0021】
図6はツール寿命のグラフ表示である。ここで、X軸はCoBの体積(vol%)とCoの体積(vol%)の比率で、Y軸は、切削条件150m/min、送り速度0.15mm/rev、切削深さ0.1mm、冷却剤ありの場合の焼結合金ギアの機器加工時のツール寿命(分)である。この図は、ツール寿命の増大がCoB/Co比率の増大に正比例することを示している。
【0022】
本発明は好ましい実施形態を参照して記載されているが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本書の要素に対して様々な変更を行いうること、均等物で代替されうることを理解するであろう。加えて、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況又は材料を適用するため、多くの修正が行われうる。したがって、本発明は、本発明の実行を想定した最良の態様として開示された特定の実施形態又は実施例に限定されるものではなく、本発明は、請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図されている。本願では、明示的に示されていない限り、すべての単位はメートル法によるもので、量及び百分率はすべて重量を基準としている。また、本書で言及された文献はすべて、参照により本書に明示的に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の一の発明。
【外国語明細書】