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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160394
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】エレクトレットシート
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/193 20060101AFI20221012BHJP
   H01L 41/45 20130101ALI20221012BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20221012BHJP
   H01G 7/02 20060101ALI20221012BHJP
   H04R 19/01 20060101ALI20221012BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20221012BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01L41/193
H01L41/45
H01L41/113
H01G7/02 A
H04R19/01
C08J9/36 CES
C08J7/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102036
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2017019863の分割
【原出願日】2017-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2016019530
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】神谷 信人
(72)【発明者】
【氏名】土谷 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】葛山 裕太
(72)【発明者】
【氏名】白坂 康之
(57)【要約】
【課題】 本発明は、高温環境下においても高い圧電性を保持するエレクトレットシートを提供する。
【解決手段】 本発明のエレクトレットシートは、帯電された多孔質シートを含み、25℃における体積抵抗率1.0×1015Ω・cm以上で且つ25℃における絶縁破壊電圧が7kV以上であることを特徴とし、好ましくは、37℃における体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上で且つ37℃における絶縁破壊電圧が7kV以上であるので、高温雰囲気下に長期間に亘って放置された後においても優れた圧電性を保持する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡壁が帯電された合成樹脂発泡シート(ただし、合成樹脂と、ケイ素微粒子及び/又は炭化ケイ素微粒子を含む無機微粒子とを含有する合成樹脂発泡シートに電荷を注入して上記合成樹脂発泡シートを帯電させたものを除く)を含み、37℃における絶縁破壊電圧が6.5kV以上、9.0kV以下であることを特徴とするエレクトレットシート。
【請求項2】
25℃における体積抵抗率が1.0×10 15 Ω・cm以上で且つ25℃における絶縁破壊電圧が7kV以上であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトレットシート。
【請求項3】
37℃における体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトレットシート。
【請求項4】
50℃における体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上で且つ50℃における絶縁破壊電圧が6kV以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトレットシート。
【請求項5】
合成樹脂発泡シートの発泡倍率が、3~15倍である請求項1又は2に記載のエレクトレットシート。
【請求項6】
合成樹脂発泡シートの発泡倍率が、7.5倍以上である請求項1又は2に記載のエレクトレットシート。
【請求項7】
合成樹脂発泡シートが、ポリプロピレン系樹脂発泡シートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトレットシート。
【請求項8】
ポリプロピレン系樹脂発泡シートが、プロピレンと少なくとも1種の上記プロピレン以外の炭素数が20以下のオレフィンとの共重合体を含むことを特徴とする請求項7に記載のエレクトレットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトレットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットシートは絶縁性の高分子材料に電荷を注入することにより、内部に永久帯電を付与した材料である。
【0003】
合成樹脂製の発泡シートは気泡を形成している気泡膜及びこの近傍部を帯電させることによってセラミックスに匹敵する非常に高い圧電性を示すことが知られている。このような合成樹脂製の発泡シートを用いたエレクトレットは、その優れた感度を利用して音響ピックアップや各種圧力センサなどへの応用が提案されている。
【0004】
エレクトレットシートとして、特許文献1には、塩素化ポリオレフィンが付与されているシートであって、かつ、該シートが1×10-10クーロン/cm2以上の表面電荷密度を有するエレクトレットシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-284063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のエレクトレットシートは、高温環境下において圧電性が低下するという問題点を有している。
【0007】
本発明は、高温環境下においても高い圧電性を保持するエレクトレットシートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレクトレットシートは、帯電された多孔質シートを含み、25℃における体積抵抗率が1.0×1015Ω・cm以上で且つ25℃における絶縁破壊電圧が7kV以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエレクトレットシートは、上述の如き構成を有していることから、高温環境下においても電荷の放出が低減されており、優れた圧電性を保持する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエレクトレットシートは、帯電された多孔質シートを含む。多孔質シートとしては、内部に空隙部を有しておれば特に限定されないが、合成樹脂発泡シートが好ましい。合成樹脂発泡シートを構成する合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸、液晶樹脂などが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、ポリプロピレン系樹脂を含むことがより好ましい。
【0011】
合成樹脂は絶縁性に優れていることが好ましく、合成樹脂としては、JIS K6911に準拠して印可電圧500Vにて電圧印可1分後の体積固有抵抗値(以下、単に「体積固有抵抗値」という)が1.0×1010Ω・m以上である合成樹脂が好ましい。
【0012】
合成樹脂の上記体積固有抵抗値は、エレクトレットシートがより優れた圧電性を有することから、1.0×1012Ω・m以上が好ましく、1.0×1014Ω・m以上がより好ましい。
【0013】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、又は、エチレン成分を50質量%を超えて含有するエチレンと少なくとも1種の炭素数が3~20のα―オレフィンとの共重合体を挙げることができる。エチレン単独重合体としては、高圧下でラジカル重合させた低密度ポリエチレン(LDPE)、中低圧で触媒存在下で重合させた中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)などを挙げることができる。エチレンとα-オレフィンを共重合させることで直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を得ることができ、α―オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、炭素数が4~10のα-オレフィンが好ましい。なお、直鎖状低密度ポリエチレン中におけるα-オレフィンの含有量は通常、1~15質量%である。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分を50質量%を超えて含有しておれば、特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数が20以下のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。なお、ポリプロピレン系樹脂は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと少なくとも1種のプロピレン以外の炭素数が20以下のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
【0015】
なお、プロピレンと共重合されるα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0016】
合成樹脂発泡シートの発泡倍率は3~15倍が好ましく、4~10倍がより好ましい。合成樹脂発泡シートの発泡倍率が3倍以上であると、エレクトレットシートの柔軟性が向上し、圧力に対する変形度合いが大きくなり、エレクトレットシートの圧電性が高くなり好ましい。合成樹脂発泡シートの発泡倍率が15倍以下であると、エレクトレットシートの機械的強度が向上し、圧縮永久歪みも小さくなり、エレクトレットシートは長期間に亘って優れた圧電性を維持し好ましい。なお、合成樹脂発泡シートの発泡倍率は、合成樹脂発泡シートを構成している合成樹脂全体の密度を合成樹脂発泡シートの密度で除した値をいう。
【0017】
合成樹脂発泡シートの厚みは、10~300μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。合成樹脂発泡シートの厚みが10μm以上であると、厚み方向の気泡数を確保することができ、エレクトレットシートの圧電性が向上し好ましい。合成樹脂発泡シートの厚みが300μm以下であると、エレクトレットシートの気泡壁に分極状態で効果的に帯電させることができ、エレクトレットシートの圧電性の安定性が向上し好ましい。
【0018】
合成樹脂発泡シートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂及び熱分解型発泡剤、並びに必要に応じて多官能モノマーを押出機に供給して熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度にて溶融混練し押出機に取り付けたTダイから発泡性合成樹脂シートを押出し、この発泡性合成樹脂シートを必要に応じて架橋した上で、発泡性合成樹脂シートを熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させて合成樹脂発泡シートを製造する方法が挙げられる。
【0019】
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられる。
【0020】
合成樹脂発泡シートは多官能モノマーを用いて架橋されていることが好ましい。多官能モノマーを用いることによって、合成樹脂の架橋効率を向上させることができ、エレクトレットシートは、微弱な応力下においても優れた圧電性を発揮する。
【0021】
多官能モノマーとしては、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、シアノエチルアクリレート、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0022】
多官能モノマーの量は、合成樹脂100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部が好ましい。多官能モノマーの量が0.1質量部以上であると、合成樹脂の架橋効率を十分に向上させることができる。多官能モノマーの量が10質量部以下であると、エレクトレットシートは、微弱な応力下においても優れた圧電性を発揮する。
【0023】
上記製造方法において、発泡性合成樹脂シートを養生することが好ましい。発泡性合成樹脂シートを養生することによって、合成樹脂中の残留歪みが開放され、得られる合成樹脂発泡シートの気泡が均一で且つ微細になり、得られるエレクトレットシートは、高温環境下においても高い圧電性を保持する。
【0024】
発泡性合成樹脂シートを養生するときの雰囲気温度は、20~70℃が好ましく、20~50℃がより好ましい。発泡性合成樹脂シートの養生温度は、20℃以上であると、養生時間を短縮することができ、合成樹脂発泡シートの製造効率が向上する。発泡性合成樹脂シートの養生温度は、70℃以下であると、合成樹脂発泡シートの気泡が均一となり、得られるエレクトレットシートは、高温環境下においても高い圧電性を保持する。
【0025】
発泡性合成樹脂シートの養生時間は、1~120時間が好ましく、2~72時間がより好ましく、20~72時間が特に好ましい。発泡性合成樹脂シートの養生時間が1時間以上であると、得られる合成樹脂発泡シートの気泡が均一になり、得られるエレクトレットシートは、高温環境下においても高い圧電性を保持する。発泡性合成樹脂シートの養生時間が120時間以下であると、表面平滑性に優れた合成樹脂発泡シートを得ることができ、エレクトレットシートは、高温環境下においても高い圧電性を保持する。
【0026】
合成樹脂発泡シートは、合成樹脂発泡シートの電荷保持力を向上させることができるので、延伸されていることが好ましく、一軸延伸されていることがより好ましく、押出方向に対して直交する方向にのみ一軸延伸されていることが特に好ましい。合成樹脂発泡シートの延伸方法としては、例えば、(1)合成樹脂発泡シートの長さ方向(押出方向)又は幅方向(押出方向に直交する方向)に延伸を行う一軸延伸法、(2)合成樹脂発泡シートの長さ方向(押出方向)及び幅方向(押出方向に直交する方向)の双方向に延伸を行う二軸延伸法、(3)合成樹脂発泡シートの幅方向(押出方向に直交する方向)を固定した状態で長さ方向(押出方向)に延伸を行う延伸法、及び(4)合成樹脂発泡シートの長さ方向(押出方向)を固定した状態で幅方向(押出方向に直交する方向)に延伸を行う延伸法などが挙げられる。
【0027】
多孔質シートを帯電させることによってエレクトレットシートが構成されている。多孔質シートを帯電させる方法としては、特に限定されず、例えば、多孔質シートに直流電界を加える方法などが挙げられる。
【0028】
多孔質シートに直流電界を加える方法としては、特に限定されず、例えば、(1)多孔質シートを一対の平板電極で挟持し、帯電させたい表面に接触させている平板電極を高圧直流電源に接続すると共に他方の平板電極をアースし、多孔質シートに直流又はパルス状の高電圧を印加して合成樹脂に電荷を注入して多孔質シートを帯電させる方法、(2)多孔質シートの第一の面に、アースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、多孔質シートの第二の面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極又はワイヤー電極を配設し、針状電極の先端又はワイヤー電極の表面近傍への電界集中によりコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極又はワイヤー電極の極性により発生した空気イオンを反発させて多孔質シートを帯電させる方法などが挙げられる。
【0029】
多孔質シートに直流電界を加える時の直流処理電圧の絶対値は、5~40kVが好ましく、10~30kVがより好ましい。直流処理電圧を上記範囲に調整することによって、得られるエレクトレットシートの高温における圧電性の保持性が向上する。
【0030】
エレクトレットシートの25℃における体積抵抗率は、1.0×1015Ω・cm以上であり、1.0×1015~1.0×1018Ω・cmが好ましく、1.0×1016~1.0×1018Ω・cmがより好ましい。エレクトレットシートの25℃における体積抵抗率が1.0×1015Ω・cm以上であると、エレクトレットシートの高温雰囲気下における圧電性の保持性が優れている。エレクトレットシートの25℃における体積抵抗率が1.0×1018Ω・cm以下であると、エレクトレットシートの表面に静電気が発生し難くなり、内部電荷の放電が抑制され、エレクトレットシートの圧電性の保持性が向上するので好ましい。
【0031】
エレクトレットシートの37℃における体積抵抗率は、1.0×1014Ω・cm以上が好ましく、1.0×1015~1.0×1018Ω・cmがより好ましく、1.0×1016~1.0×1017Ω・cmが特に好ましい。エレクトレットシートの25℃における体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上であると、エレクトレットシートの高温雰囲気下における圧電性の保持性が優れている。エレクトレットシートの25℃における体積抵抗率が1.0×1018Ω・cm以下であると、エレクトレットシートの表面に静電気が発生し難くなり、内部電荷の放電が抑制され、エレクトレットシートの圧電性の保持性が向上するので好ましい。
【0032】
エレクトレットシートの50℃における体積抵抗率は、1.0×1014Ω・cm以上が好ましく、1.0×1014~1.0×1018Ω・cmがより好ましく、1.0×1015~1.0×1017Ω・cmが特に好ましい。エレクトレットシートの25℃における体積抵抗率が1.0×1014Ω・cm以上であると、エレクトレットシートの高温雰囲気下における圧電性の保持性が優れている。エレクトレットシートの25℃における体積抵抗率が1.0×1018Ω・cm以下であると、エレクトレットシートの表面に静電気が発生し難くなり、内部電荷の放電が抑制され、圧電性の保持性が向上するので好ましい。
【0033】
エレクトレットシートの測定温度における体積抵抗率は下記の要領で測定される。具体的には、10cm角の平面正方形状の試験片を得、この試験片を所定の温度、相対湿度65%の雰囲気下で裏面電極上に載置して10分間放置した後、試験片上に表面電極を載置し、電極間に500V電圧を印加してから1分後の抵抗値(R[Ω])を測定し、体積抵抗率(ρ[Ω・cm])を下記式に基づいて算出した。測定時において、表裏電極によって試験片に加わる荷重が5kPa以下となるように調整した。
ρ=(π×d2/4t)×R
ρ:エレクトレットシートの体積抵抗率[Ω・cm]
π:円周率(3.14)
d:表面電極の直径(5[cm])
t:試験片の厚み(0.01[cm])
R:抵抗値([Ω])
エレクトレットシートの体積抵抗率の測定は、例えば、検出機(ADC社製 デジタル超高抵抗/微小電流計 8340A)、及び温度制御可能な測定用電極(ADC社製 レジスティビティチェンバ 12708)を用いて行うことができる。
【0034】
エレクトレットシートの所定温度における体積抵抗率を上述の範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、エレクトレットシートを構成している多孔質シートを構成している合成樹脂の重量平均分子量を調整する方法、エレクトレットシートを構成している多孔質シートを構成している合成樹脂のメルトフローレイトを調整する方法などが挙げられる。
【0035】
エレクトレットシートの25℃における絶縁破壊電圧は、7kV以上であり、8~12kVが好ましく、9~11kVが好ましい。エレクトレットシートの25℃における絶縁破壊電圧が7kV以上であると、エレクトレットシートの高温雰囲気下における圧電性の保持性が優れている。エレクトレットシートの25℃における絶縁破壊電圧が12kV以下であると、エレクトレットシートの内部まで帯電させやすく、エレクトレットシートは優れた帯電性を有し好ましい。
【0036】
エレクトレットシートの37℃における絶縁破壊電圧は、7kV以上が好ましく、7~11kVがより好ましく、8~11kVが特に好ましい。エレクトレットシートの37℃における絶縁破壊電圧が7kV以上であると、エレクトレットシートの高温雰囲気下における圧電性の保持性が優れている。エレクトレットシートの37℃における絶縁破壊電圧が11kV以下であると、エレクトレットシートの内部まで帯電させやすく、エレクトレットシートは優れた帯電性を有し好ましい。
【0037】
エレクトレットシートの50℃における絶縁破壊電圧は、6kV以上が好ましく、6~10kVがより好ましく、7~9kVが特に好ましい。エレクトレットシートの50℃における絶縁破壊電圧が6kV以上であると、エレクトレットシートの高温雰囲気下における圧電性の保持性が優れている。エレクトレットシートの50℃における絶縁破壊電圧が10kV以下であると、エレクトレットシートの内部まで帯電させやすく、エレクトレットシートは優れた帯電性を有し好ましい。
【0038】
なお、エレクトレットシートの測定温度における絶縁破壊電圧は下記の要領で測定された電圧をいう。具体的には、エレクトレットシートから一辺が50mmの平面正方形状の試験片を切り出す。一辺が50mmの平面正方形状の金属板及びアクリル板を用意する。測定温度及び相対湿度50%とした雰囲気下にて試験片を金属板とアクリル板とで挟持する。なお、試験片の厚みが減少しない程度(定圧荷重5kPa)に試験片を金属板とアクリル板とで挟持する。次に、アクリル板の中央部に形成された貫通孔内に電極を差し込み、電極を試験片に接触させ、直流電圧を試験片に印加する。印加した直流電圧によって30秒間通電がなければ、試験片に印加する直流電圧を0.5kVずつ上昇させていき、30秒未満で通電し絶縁破壊した時点において試験片に印加されている直流電圧を絶縁破壊電圧とする。エレクトレットシートの測定温度における絶縁破壊電圧は、例えば、菊水電子株式会社から商品名「TOS5101」にて市販されている測定装置を用いることができる。
【0039】
エレクトレットシートの所定温度における絶縁破壊電圧を上述の範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、エレクトレットシートを構成している多孔質シートを構成している合成樹脂の体積抵抗率を調整する方法、エレクトレットシートを構成している多孔質シートを構成している合成樹脂の重量平均分子量を調整する方法などが挙げられる。
【0040】
エレクトレットシートの第一の面にシグナル電極を積層一体化し且つ第二の面にグランド電極を積層一体化することによって圧電センサが構成される。そして、グランド電極を基準電極としてシグナル電極の電位を測定することによって、圧電センサのエレクトレットシートにて発生した電位を測定することができる。
【0041】
シグナル電極は、エレクトレットシートの第一の面に必要に応じて固定剤を介して積層一体化されている。同様に、グランド電極は、エレクトレットシートの第二の面に必要に応じて固定剤を介して積層一体化されている。なお、シグナル電極及びグランド電極としては、導電性を有しておれば、特に限定されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔などの金属シート、導電性膜などが挙げられる。
【0042】
シグナル電極及びグランド電極を導電性膜で構成する場合、導電性膜は、電気絶縁シート上に形成された上で、エレクトレットシート上に積層一体化されもよいし、又は、エレクトレットシートの表面に直接、形成されてもよい。電気絶縁シート又はエレクトレットシート上に導電性膜を形成する方法としては、例えば、(1)電気絶縁シート又はエレクトレットシート上に、バインダー中に導電性微粒子を含有させてなる導電ペーストを塗布、乾燥させる方法、(2)電気絶縁シート又はエレクトレットシート上に蒸着によって電極を形成する方法などが挙げられる。
【0043】
電気絶縁シートとしては、電気絶縁性を有しておれば、特に限定されず、例えば、ポリイミドシート、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリ塩化ビニルシートなどが挙げられる。
【0044】
固定剤層を構成している固定剤は、反応系・溶剤系・水系・ホットメルト系の接着剤又は粘着剤から構成されており、エレクトレットシートの感度を維持する観点から、誘電率の低い固定剤が好ましい。
【実施例0045】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0046】
下記のポリプロピレン系樹脂A~E及びポリエチレン系樹脂A、Bを用意した。
〔ポリプロピレン系樹脂〕
プロピレン-エチレンランダム共重合体(ポリプロピレン系樹脂A、日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックEG8B」、エチレン単位の含有量:5質量%)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(ポリプロピレン系樹脂B、日本ポリプロ社製 商品名「ウィンテックWFW4」、エチレン単位の含有量:2質量%)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(ポリプロピレン系樹脂C、日本ポリプロ社製 商品名「ウィンテックWFX4T」、エチレン単位の含有量:4質量%)
プロピレン-エチレンランダム共重合体(ポリプロピレン系樹脂D、日本ポリプロ社製 商品名「ウィンテックWEG7T」、エチレン単位の含有量:1質量%)
プロピレン-エチレンランダム共重合体E(ポリプロピレン系樹脂E、プライムポリマー社製 商品名「プライムポリプロB241」、エチレン単位の含有量:2.5質量%)
【0047】
〔ポリエチレン系樹脂〕
直鎖状低密度ポリエチレン(ポリエチレン系樹脂A、エクソンケミカル社製 商品名「EXACT3027」)
低密度ポリエチレン(ポリエチレン系樹脂B、日本ポリプロ社製 商品名「ノバテックLE520H」)
【0048】
(実施例1~5、比較例1、2)
ポリプロピレン系樹脂A~E、ポリエチレン系樹脂A、B、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アゾジカルボンアミド及びフェノール系酸化防止剤を表1に示した所定量ずつ押出機に供給して溶融混練してTダイからシート状に押出し、厚みが180μmである発泡性樹脂シートを製造した。発泡性樹脂シートを一辺が30cmの平面正方形状に切り出した。
【0049】
得られた発泡性樹脂シートを雰囲気温度25℃にて48時間養生した。得られた発泡性樹脂シートの両面に電子線を加速電圧500kV及び強度25kGyの条件にて照射し、発泡性樹脂シートを構成しているポリオレフィン系樹脂を架橋した。架橋させた発泡性樹脂シートを250℃に加熱して発泡性樹脂シートを発泡させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。得られたポリオレフィン系樹脂発泡シートをその表面温度が130℃に維持された状態で自動一軸延伸装置(井元製作所社製 商品名「IMC-18C6型」)を用いて厚み200μmになるまで押出方向に対して直交する方向に延伸速度900mm/minにて一軸延伸して200μmのポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。なお、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率及び厚みを表1に示した。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂発泡シートの第一の面に、アースされた平板電極を密着状態に重ね合わせ、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの第二の面側に所定間隔を存して直流の高圧電源に電気的に接続された針状電極を配設し、針状電極の表面近傍への電界集中により、電圧-10kV、放電距離30mm及び電圧印可時間10秒の条件下にてコロナ放電を発生させ、空気分子をイオン化させて、針状電極の極性により発生した空気イオンを反発させてポリオレフィン系樹脂発泡シートに直流電界を加えて電荷を注入してポリオレフィン系樹脂発泡シートを全体的に帯電させた。ヒートガンを用いてポリオレフィン系樹脂発泡シートをその表面温度が40℃となるように維持しながら、ポリオレフィン系樹脂発泡シートに上記帯電処理を施した。その後、電荷を注入したポリオレフィン系樹脂発泡シートを、接地されたアルミニウム箔で包み込んだ状態で3時間に亘って保持してエレクトレットシートを得た。
【0051】
得られたエレクトレットシートについて、25℃、37℃及び50℃における体積抵抗率、並びに、25℃、37℃及び50℃における絶縁破壊電圧を上記の要領で、初期圧電定数d33及び高温圧電定数d33を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0052】
(圧電定数d33)
エレクトレットシートから一辺が10mmの平面正方形状の試験片を切り出し、試験片の両面に金蒸着を施して試験体を作製した。
【0053】
試験体に加振機を用いて荷重Fが2N、動的荷重が±0.25N、周波数が110Hzの条件下にて押圧力を加え、その時に発生する電荷Q(クーロン)を計測した。電荷Q(クーロン)を荷重F(N)で除することによって圧電定数d33を算出した。なお、圧電定数dijはj方向の荷重、i方向の電荷を意味し、d33はエレクトレットシートの厚み方向の荷重及び厚み方向の電荷となる。
【0054】
製造直後のエレクトレットシートの圧電定数d33を測定し、初期圧電定数d33とした。
【0055】
エレクトレットシートをアルミニウム箔で包み込んだ状態で80℃及び相対湿度65%の恒温恒湿槽内に1週間に亘って放置した後、エレクトレットシートを23℃の恒温恒湿槽内に24時間に亘って放置した。このエレクトレットシートの圧電定数d33を測定し、高温圧電定数d33とした。
【0056】
【表1】