(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160407
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】ポリエステルポリマーを調製する方法、及びそれにより得られるポリエステルポリマー
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20221012BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20221012BHJP
C08K 5/11 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/06
C08K5/11
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022106024
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2019517007の分割
【原出願日】2017-09-27
(31)【優先権主張番号】16191553.3
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17167599.4
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17167601.8
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515169326
【氏名又は名称】ズルツァー マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コスタ、リボリオ イヴァノ
(72)【発明者】
【氏名】フレッケンシュタイン、ペーター ヨーアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンボーム、ヤン - ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ストルティ、ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】モルビデッリ、マッシモ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可塑剤の存在下で、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物の重合によりポリエステルポリマーを生成する方法、並びにそれにより得られるポリエステルポリマーを提供する。
【解決手段】(i)場合により置換されているフェニルエーテル、イオン液体、場合により置換されているキシレン、ポリエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される可塑剤、(ii)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、並びに(iii)ポリエチレンフランジカルボキシレート又はポリテトラメチレンフランジカルボキシレートのいずれかを含有する組成物。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリマーを調製する方法であって、
・フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物の開環重合
を含み、開環重合を可塑剤の存在下で実行することを特徴とする、方法。
【請求項2】
可塑剤が、超臨界流体、場合により置換されているフェニルエーテル、イオン液体、場合により置換されているキシレン、ポリエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
超臨界流体が二酸化炭素である、又は、ポリエーテルがグリム、好ましくはテトラエチレングリコールジメチルエーテルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒の存在下で重合工程が実行され、好ましくは、触媒が環状ジブチルスズ化合物、Sb2O3、及びSnOct2から選択され、より好ましくは環状ジブチルスズ化合物が1,1,6,6-テトラ-n-ブチル-1,6-ジスタンナ-2,5,7,10-テトラオキシアシクロデカンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、好ましくは得られるポリエステルポリマー組成物であって、
(i)場合により置換されているフェニルエーテル、イオン液体、場合により置換されているキシレン、ポリエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される可塑剤、
(ii)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、並びに
(iii)(a)構造
【化1】
を含むPEFポリマー、又は
(b)構造
【化2】
を含むPBFポリマー
(式中、nは、10から100,000、好ましくは100から10,000の整数である)
のいずれか
を含有する組成物。
【請求項6】
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物が、以下の工程
・(I)構造Y
1の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件下にて、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C
1又はD
1を反応させる工程であって、モノマー成分C
1が、構造
【化3】
(式中、基Aのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、lは1から100、好ましくは2から50、最も好ましくは3から25の整数であり、
R
1=OH、OR、ハロゲン又はO-A-OHであり、
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、
R
2=H又は
【化4】
である)
を含み、モノマー成分D
1が、構造
【化5】
(式中、Aは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、基Xのそれぞれは、OH、ハロゲン、又は場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Aがn-ブチルである場合は基XがOHではない)
を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
1が、
Y
1
(式中、mは1から20、好ましくは2から15、最も好ましくは3から10の整数である)
である工程、
又は
(II)構造Y
2の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件下にて閉環オリゴマー化工程において任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C
2若しくはD
2を反応させる工程であって、モノマー成分C
2が、構造
【化6】
(式中、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、lは上で定義されている通りの整数であり、n’は1から20、好ましくは2から10の整数であり、
R
3=OH、OR、ハロゲン又はO-(B-O)
n’-Hであり、
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、
R
4=H又は
【化7】
である)
を含み、モノマー成分D
2が、構造
【化8】
(式中、基Xのそれぞれは、OH、ハロゲン、又は場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ若しくはアリールオキシであり、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、n’は上で定義されている通りの整数である)
を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
2が
【化9】
(式中、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、n’は上で定義されている通りの整数であり、mは1から20、好ましくは2から15、最も好ましくは3から10の整数である)
である工程
のうちのいずれかの工程、並びに
・フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種を、環状オリゴマー組成物から分離及び除去する、後続の工程(III)
を含み、
・閉環オリゴマー化工程において任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C1若しくはD1又はC
2若しくはD
2を反応させる工程が、溶媒の存在下で実行され、溶媒がイオン液体、場合により置換されているナプタレン、場合により置換されている芳香族化合物、及びそれらの混合物からなる群から選択され、場合によりゼオライトの存在下で実行されてゼオライト上に不純物を吸収させ、
・フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種を、環状オリゴマー組成物から分離及び除去する、後続の工程(III)が、以下のサブ工程
・ゼオライトを添加して、ゼオライト上に不純物を吸収させるサブ工程、
・フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを析出させるために、環状オリゴマー組成物を冷却するサブ工程、
・フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを析出させるために、逆溶剤を添加するサブ工程、
・環状オリゴマー組成物から吸収された不純物を有するゼオライトを分離するサブ工程
のうちの1つ又は複数を含む
方法で調製されたものである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、以下のいずれかである方法。
(I)
・モノマー成分がC1であり、Aは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキルであり、lは3から25の整数であり、mは3から10の整数であり、
又は
・モノマー成分がD1であり、Aは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキルであり、Xはハロゲン、若しくは場合により置換されているアルキルオキシ若しくはフェノキシであり、mは本請求項で既に定義されている通りであり、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造がY1の構造であり、
又は
(II)
・モノマー成分がC2であり、Bは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキルであり、l及びmは上で定義されている整数であり、n’は2から10の整数であり、
又は
・モノマー成分がD2であり、式中XはOH、ハロゲン、若しくは場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Bは場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、又はフェニルであり、n’及びmは本請求項において既に定義されている整数であり、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造がY2の構造である。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法であって、以下のいずれかである方法。
・モノマー成分がC1であり、Aは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状C1からC6アルキルであり、lは3から25の整数であり、mは3から10の整数であり、
・モノマー成分がD1であり、Aは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状C1からC6アルキルであり、Xはハロゲン、若しくは場合により置換されているアルキルオキシ若しくはフェノキシであり、mは上で定義されている通りの整数であり、
・モノマー成分がC2であり、式中Bは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状C1からC6アルキルであり、l及びmは上で定義されている整数であり、n’は2から10の整数であり、
又は
・モノマー成分がD2、Xはハロゲン、若しくは場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ若しくはアリールオキシであり、Bは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状C1からC6アルキル若しくはフェニルであり、n’及びmは請求項2で定義された整数である。
【請求項9】
モノマー成分がC1若しくはC2であり、反応温度が100から350、好ましくは150から300、最も好ましくは180から280℃であり、反応時間が30から600、好ましくは40から400、最も好ましくは50から300分であるか、
又は
モノマー成分がD1若しくはD2であり、反応温度が-10から150、好ましくは-5から100、最も好ましくは0から80℃であり、反応時間が5から240、好ましくは10から180、最も好ましくは15から120分である、
請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
モノマー成分C
1が、特定の構造
【化10】
を含み、又はモノマー成分D
1が、特定の構造
【化11】
を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
1が、特定の構造Y
1’
【化12】
であり、式中、
R
5=OH、OR、ハロゲン又はO-CH
2CH
2-OHであり、
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、
R
6=H又は
【化13】
である、
請求項6から9のいずれか一項に記載の方法であって、
X、l及びmが、前記請求項(単数又は複数)に示した通りに定義される、
方法。
【請求項11】
モノマー成分C
1が、特定の構造C
1”
【化14】
を含み、又はモノマー成分D
1が、特定の構造D
1”
【化15】
を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
1が、特定の構造Y
1”
【化16】
であり、
R
7=OH、OR、ハロゲン又はO-CH
2CH
2CH
2CH
2-OHであり、
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、
R
8=H又は
【化17】
である、
請求項6から10のいずれか一項に記載の方法であって、
X、l及びmが、前記請求項(単数又は複数)に示した通りに定義される、
方法。
【請求項12】
任意の有機塩基Eが存在し、有機塩基Eが、モノアミン化合物、又は構造
【化18】
(式中、基R
9からR
12のそれぞれは、水素、場合により置換されているアルキル、フェニル、アリール又はアルカリールであり、基R
9からR
12のそれぞれは、場合により、任意の環状有機塩基Eにおいて、環式置換基の一部としての単結合又は二重結合基で共に結合できる)
を有する化合物である、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
任意の有機塩基Eが存在し、有機塩基Eが
(i)構造
【化19】
を有するDABCO、
又は
(ii)構造
【化20】
を有するDBU、
のいずれかであり、DABCO又はDBUが、場合によりアルキルアミン、より好ましくはトリエチルアミンと共に使用される、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
任意の触媒が存在しない、又は存在し、触媒が、金属アルコキシド若しくは金属カルボキシラートであり、好ましくはスズ、亜鉛、チタン若しくはアルミニウムの1つであり、
又は
任意の有機塩基Eが、本方法において反応体として使用される全モノマー成分種1molに対して0.5から6、好ましくは1から4、より好ましくは2から3molの化学量論比で存在する、
請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種を環状オリゴマー組成物から分離及び除去する工程(III)が、環状オリゴマー組成物である移動相の固定相通過、選択的沈殿、蒸留、抽出、結晶化又はそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数の追加の分離サブ工程を含む、請求項6から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物からポリエステルポリマーを調製する方法、及びそれにより得られるポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族の構成成分を有するバイオベースポリマーが、環境への配慮及び良好な機械的性質のため、今日高度に求められている。関心を集めている種類のバイオベース芳香族モノマーは、フラン系化合物、例えばフラン-2,5-ジカルボン酸(FDA)、5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-カルボン酸(HMFA)並びに2,5-ビス(ヒドロキシルメチル)フラン(BHMF)であり、これらは、中間体(ペントース(C5)及びヘキソース(C6)の酸触媒を用いた加熱脱水により生成され得るフルフラール(2-フランカルボキシアルデヒド)及び5-ヒドロキシメチル2-フランカルボキシアルデヒド(HMF))から調製され得る。フラン環のフェニル環に対する化学的類似性により、フェニルベースのポリマー、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)をフランベースのポリマーに置き換えることが可能になる。
【0003】
有機金属又は酸触媒の存在下において、高温でジオール及びジアシッド(diacid)又はジエステル(モノマー)の混合物を加熱することを伴う重縮合反応による、フランの構成成分からのポリエステルの生成は、例えば、米国特許第2,551,731号及び米国特許第8,143,355B2号から公知である。この平衡反応をポリマー形成へと進展させるために、形成された水又は副生物、例えばアルコールを、典型的には、プロセス中に上昇温度で圧力又はガス流を低下させることにより除去しなければならない。したがって、複雑且つコストのかかる反応及び脱揮設備(devolatilization equipment)が必要である。その結果、重縮合及び脱揮が不十分である場合は、有用な機械的及び他の性質を有する高分子量ポリエステルは、生成されないであろう。さらに、高温及び長い滞留時間は、望ましくない副反応、例えばモノマー、オリゴマー又はポリマーの劣化、分岐を引き起こす分子間結合の形成、及び最終生成物の酸化、を生じることが多く、結果として色が発現する。
【0004】
最近、工業規模の重合プラントで、フランの構成成分からポリエステルを調製するために従来から使用される、ジオール及びジアシッド又はジエステルモノマーに代わる新たな代替原料が開発された。国際公開第2014/139603(A1)号は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件下にて、閉環オリゴマー化工程において、モノマー成分を反応させる工程を含む方法で、環状ポリエステルオリゴマーを容易に調製できることについて開示する。そのような環状ポリエステルオリゴマーは、国際公開第2014/139602A1号に開示されているように、有利に、大量の水又はアルコール副生物を生成せず、重合を推進して完了させるために、複雑な反応も必要としないし、脱揮能力が高い設備、又は激しい高温反応工程及び脱揮工程も必要としない。
【0005】
それにもかかわらず、国際公開第2014/139603(A1)号の環状ポリエステルオリゴマー中には、平衡時に、低レベルのジアシッド、ジオール及びアシドールモノマー及び/又はダイマー及び/又はオリゴマー種が存在し、これらは除去されるべきであり、オリゴマーの貯蔵安定性、又は後続の重合処理挙動に有害な影響を与え得ると報告された。これらの望ましくない不純物は、従来の方法、例えばクロマトグラフィー、選択的沈殿、蒸留、抽出及び結晶化、並びに実施例で教示されていた濾過及びクロマトグラフィーの組み合わせで、オリゴマー生成物から除去できることが開示されていた。そのような精製方法は、効果的であるが、それにもかかわらず、それと同じくらい、好ましくはそれより効果的且つ選択的であり、特に大規模な商業生産で、大量の溶媒、長い時間又は複合的な組み合わせを必要としないものを有することが望ましい。
【0006】
そのような環状オリゴマーからの、溶融重合によるポリエステルポリマーの生成は、より温和な熱的条件(色及び劣化を最小限に抑える)下にて、及び国際公開第2014/139602A1号における重縮合反応よりも簡素な設備で可能と示されているが、それにもかかわらず、環状オリゴマー種の一部は、非常に高い融点を有する。例えば、主要な環状ダイマーは、約370℃の融点を有することが多い。したがって、そのようなオリゴマー組成物は、より温和な温度300℃未満で容易に重合できるが、著しく温度が高く、条件が激しいと、その重合の前に原料の溶融に必要とされることがあり、それにより、部分的に熱感受性の脂肪族オリゴマーの劣化及び変色が引き起こされる。
【0007】
結論として、そのような環状ポリエステルオリゴマーを生成するためにも、並びにそれらを重合するためにも、改善した方法を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この現状技術を発端として、本発明の目的は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物からフラン単位を有するポリエステルポリマーを調製する改善した方法であって、上記の欠点に悩まされることのない方法を提供することである。関連する本発明の目的は、そのような環状ポリエステルオリゴマー組成物を調製する改善した方法を提供することである。
【0009】
第1の目的は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物の開環重合を含むポリエステルポリマーを調製する方法によって達成され、開環重合は、可塑剤の存在下で実行する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において、「フラン単位」は、フラン誘導体、例えばモノマーであるFDA、HMFA、BHMFをベースとした誘導体、及びそれらを部分的若しくは完全に反応させたモノエステル又はジエステル誘導体を指す。フラン単位を有することは、そのようなモノマーの完全に又は部分的に反応した誘導体が、ポリエステルポリマー又は環状ポリエステルオリゴマーに組み込まれていることを意味する。
【0011】
本発明によれば、可塑剤は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、好ましくは環状ダイマーの融点及び/又は粘度を低下させることが可能な化合物である。
【0012】
可塑剤が存在すると、いくつかの有利な効果がある。第一に、環状種の一部、例えば環状ダイマーは、非常に高い融点を有し、可塑剤が存在すると融点は効果的に低下する。したがって、大半の環状オリゴマー組成物は、300C未満の好ましい温度では溶融せず、これを超えると、オリゴマー及びそのポリマー生成物のいずれも熱劣化により、ポリマー生成物における著しい着色及び達成された分子量の減少が引き起こされる。その結果、可塑剤は、溶融重合の前に、組成物の初期の完全溶融及びあらゆる保持中における、反応体環状オリゴマー組成物の熱プロファイル(温度及び/又は時間)を有利に最小限に抑えられる。さらに、可塑剤は、環状オリゴマー組成物の重合を、その融点より十分に低い温度、したがってより温和な条件下にて促進する。
【0013】
さらに、望ましい重合触媒の多くは、液体ではなく固体である。例は、環状スタノキサンを含み、これにより、商用用途の高分子量ポリマーが容易に得られ、並びに金属酸化物、例えばSb2O3及びBi2O3を含み、これにより、スズ系触媒で得られるものに対して色が減少したポリマー生成物が得られる。不活性可塑剤は、環状オリゴマー組成物と、これらの固体状態の重合触媒の間の密接な接触及び混合を促すことにより重合を促進する。
【0014】
好ましい実施形態では、重合中の可塑剤の量は、初期の未反応環状オリゴマー組成物の融点を、少なくとも10、好ましくは25、より好ましくは50、最も好ましくは約75℃低下させるのに十分である。好ましい実施形態では、重合中の可塑剤の量は、環状オリゴマー組成物を含む反応混合物の初期の溶融粘度を、少なくとも10、好ましくは25、より好ましくは50%低下させるのに十分である。ある他の好ましい実施形態では、可塑剤の量は、初期の環状ポリエステルオリゴマー組成物の質量に基づいて1から75、好ましくは5から60、より好ましくは10から50質量、最も好ましくは15から40質量%である。溶融粘度は、当技術分野で一般的に公知の方法に従って、レオメータを使用して測定できる。
【0015】
具体的に好ましい実施形態では、可塑剤は、超臨界流体、場合により置換されているフェニルエーテル、イオン液体、場合により置換されているキシレン、ポリエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数である。本方法のより具体的な好ましい実施形態では、超臨界流体は二酸化炭素であり、又はポリエーテルはグリム、好ましくはテトラエチレングリコールジメチルエーテルである。代替実施形態において、可塑剤は、環状ポリエステルオリゴマーのポリエステルポリマー、好ましくはPEFポリマー、好ましくは約15,000から30,000g/molの分子量を有するもの(融点約220℃)、又はPEFオリゴマー、好ましくは約1,000から約15,000g/mol未満の分子量を有するものである。先述の分子量は、ポリスチレン標準に対するSECにより測定される。さらに別の好ましい実施形態では、上述の可塑剤のいずれかの混合物が使用される。
【0016】
本発明の一態様において、開環重合は、上に記載され、本出願で開示されている可塑剤の存在下で、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む公知の環状オリゴマー組成物、例えば欧州特許出願公開第2931784(A1)号において開示されているものに対しても実行できる。
【0017】
開環重合のさらに別の態様では、上に記載され、本出願で開示されている可塑剤の存在下で、重合は、1つ又は複数の抗酸化剤、例えば置換フェノール及びフェニレンジアミンの誘導体の存在下で実行する。適切な抗酸化剤は、ベンゼンプロパンアミド,N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシの商品名であるIRGANOX 1098;立体障害フェノール抗酸化剤、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナートの式を有するIRGANOX 1076を含む。
【0018】
本発明によれば、関連する目的は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物を調製する方法であって、
・以下の工程
(I)構造Y
1の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件下にて、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C
1又はD
1を反応させる工程であって、モノマー成分C
1が、構造
【化1】
(式中、基Aのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、lは1から100、好ましくは2から50、最も好ましくは3から25の整数であり、
R
1=OH、OR、ハロゲン又はO-A-OHであり、
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、
R
2=H又は
【化2】
である)
を含み、モノマー成分D
1が、構造
【化3】
(式中、Aは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、基Xのそれぞれは、OH、ハロゲン、又は場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ、若しくはアリールオキシであり、Aがn-ブチルである場合は基XがOHではない)
を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
1が
【化4】
(式中、mは1から20、好ましくは2から15、最も好ましくは3から10の整数である)
である上記(I)の工程、又は
(II)構造Y
2の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件下にて、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C
2若しくはD
2を反応させる工程であって、
モノマー成分C
2が、構造
【化5】
(式中、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、lは上で定義されている通りの整数であり、n’は1から20、好ましくは2から10の整数であり、
R
3=OH、OR、ハロゲン又はO-(B-O)
n’-Hであり、
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、
R
4=H又は
【化6】
である)
を含み、モノマー成分D
2が、構造
【化7】
(式中、基Xのそれぞれは、OH、ハロゲン、又は場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ若しくはアリールオキシであり、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、n’は上で定義されている通りの整数である)
を含み、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造Y
2が
【化8】
(式中、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、n’は上で定義されている通りの整数であり、mは1から20、好ましくは2から15、最も好ましくは3から10の整数である)
である上記(II)の工程
のうちのいずれかの工程、並びに
・フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種を、環状オリゴマー組成物から分離及び除去する、後続の工程(III)
を含み、
・閉環オリゴマー化工程において任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C1若しくはD1又はC2若しくはD2を反応させる工程が、溶媒の存在下で実行され、溶媒が、イオン液体、場合により置換されているナフタレン、場合により置換されている芳香族化合物、及びそれらの混合物からなる群から選択され、場合によりゼオライトの存在下で実行されてゼオライト上に不純物を吸収させ、
・フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種を、環状オリゴマー組成物から分離及び除去する、後続の工程(III)が、以下のサブ工程
・ゼオライトを添加してゼオライト上に不純物を吸収させるサブ工程、
・フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを析出させるために、環状オリゴマー組成物を冷却するサブ工程、
・フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを析出させるために、逆溶剤を添加するサブ工程、
・環状オリゴマー組成物から吸収された不純物を有するゼオライトを分離するサブ工程
のうちの1つ又は複数を含む
方法により達成される。
【0019】
そのような環状ポリエステルオリゴマー組成物は、本発明では、可塑剤の存在下での重合方法における使用に好適である。
【0020】
本発明によれば、別のさらなる目的は、最初に、前記方法で得られる環状ポリエステルオリゴマー組成物により達成され、組成物は、組成物の総重量に基づいて、5重量%未満、好ましくは3重量%、最も好ましくは1重量%の直鎖状オリゴマーポリエステル種を含有する。
【0021】
前記環状ポリエステルオリゴマー組成物は、本発明に従って、可塑剤の存在下での重合によるポリエステルポリマーの生成に使用される。
【0022】
本発明は、これらのさらなる目的の一部を達成し、フラン単位を有し、構造Y1又はY2のいずれかを有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を調製する方法によってそれらの問題の解決法を提供する。有利なことに、これらの環状オリゴマーは、高変換率で且つアルコール性及び/又は酸性末端基を有する直鎖状モノマー又はオリゴマー種の含有量が少ない比較的簡単でスケーラブルな方法で、高純度で容易に調製される。
【0023】
これらの結果は、第一に、驚くべきことに、溶媒の存在下で環化反応を実行することにより達成される。溶媒の使用は、希釈反応系における末端基の変換レベルがバルク系の末端基のものよりはるかに低い環状オリゴマーの形成に非常に好ましい。特定の機構に束縛されることを望むものではないが、この効果は、段階成長重合及び環化の2つの独立した可逆性反応間の競合に影響を与える溶媒の存在による可能性があると、本発明者らは考えている。高沸点の芳香族溶媒は、良好な溶解度を示すことが見出されているが、好ましくは、後続の除去を容易にするために、より揮発性のもの、例えばキシレンが選択される。
【0024】
ゼオライトの使用は、環状種よりも直鎖状モノマー及びオリゴマー種の除去に特に効果的なことが見出されているが、その理由は、直鎖状種の構造はより柔軟であり、断面積がより小さいためである。詳細には、ゼオライトにより、直鎖状種を環状種に対して、また、様々な鎖長に関してさえも、選択性を調整できる可能性が得られる。この態様は、達成された純度が99%超の場合、その結果、逆溶剤及びその後続の除去の必要が省かれるので、特に有利である。さらに、ゼオライトは、典型的な環化反応溶媒系において、特に比較的高い温度(例えば200℃)で、シリカゲルより頑丈であり、物理的及び化学的に安定な吸収媒体であることが見出されている。したがって有利なことに、ゼオライトは、環化の終わりに、若しくは終わり近くに、又は方法の中間段階より早くに添加され得る。ゼオライトは、初期のモノマー溶液中に、その環化前に存在することすら可能である。ゼオライト添加は、環化プロセスの終わりに、例えば、環状オリゴマーと総オリゴマーの重量分率が0.6、好ましくは0.7、より好ましくは0.8、最も好ましくは0.9に達した後、次いで、留まった未反応のモノマー、並びに直鎖状オリゴマーの両方が除去されたときが好ましい。
【0025】
環状オリゴマーは、溶媒中で、直鎖状オリゴマー、若しくはとりわけモノマー、又は酸性及び/又はアルコール性官能基を有する他の低分子量種(100g/mol未満)より低い溶解度を有する傾向がある。したがって、環状オリゴマーは、さらに、又は或いは、反応生成物の混合物を冷却すること、及び/又は逆溶剤を添加することにより除去され得る。大半の逆溶剤は、直鎖状種よりも環状種に対して高い選択性を有さないので、環状種が早期に沈殿するように混合物を冷却することは、好ましいことが多い。
【0026】
本出願では、「場合により置換されている」は、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリール基とは異なる化学置換基を指すことに留意する。そのような任意の置換基は、閉環オリゴマー化工程中に一般的に不活性と考えられ、例えば、ハロゲン又はエーテルであり得る。
【0027】
本発明において、「触媒」は、無機又は金属含有化合物、例えば有機金属種又は金属塩を指し、一方、「有機塩基」は、非金属及び塩基性有機種を指す。
【0028】
本方法の別の好ましい実施形態において、任意の触媒は、存在しない、又は金属アルコキシド若しくは金属カルボキシラート、好ましくはスズ、亜鉛、チタン、カルシウム、鉄、アルミニウム若しくはそれらの混合物の1つとして存在するかのいずれかである。触媒を欠くことにより、原料コストが減少し、環状ポリエステルオリゴマーの精製及びさらなる使用が簡素化される。しかし金属ベースの触媒のいくつかは、本発明の方法に高度に有効であり、したがって、相対的に温和な温度及び時間の条件下にて環状ポリエステルオリゴマー組成物を調製できることが本発明者らにより見出されている。これにより、本方法において、生産性が改善され、劣化及び変色が最小限に抑えられる。さらに、いくつかの実施形態では、非金属触媒が使用される。例えば、非金属触媒、例としてラクチドからPLA生成に使用されるものが使用できる。特定の実施形態において、非金属触媒は、N-ヘテロ環状カルベン(NHC);トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C6F5)3);1,3,4-トリフェニル-4,5-ジヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イリデンカルビン;及びDMAP/DMAP.HX(式中、XH=CF3SO3H、CH3SO3H、HCl、(F3CSO2)2NH)又はDMAP/DMAPCH3.X(式中、X=I-、-PF6)からなる群の1つ又は複数から選択され得る。
【0029】
本方法の具体的な好ましい実施形態において、任意の有機塩基Eは、本方法において反応体として使用される全モノマー成分種1molに対して0.5から6、好ましくは1から4、より好ましくは2から3molの化学量論比で存在する。そのような任意の有機塩基を充填して使用することにより、相対的に温和な温度及び時間の条件下にて、閉環オリゴマー化を行いつつ、プロセス中の望ましくない副反応に関する触媒作用を避けることができることが見出された。さらに、後続の熱処理、例えば、得られるポリマーの重合又は押出若しくは成形において、劣化及び/又は変色につながる可能性のある、大量のクエンチしていない残留触媒による、ポリエステルオリゴマー組成物の汚染が避けられる。また、触媒コストと生産性の間の有効なバランスが得られる。
【0030】
本方法の溶媒の好ましい実施形態において、イオン液体は、カチオンが酸性プロトンを含有しないイオン液体であり、より好ましくは、イオン液体が、N-メチル-N-アルキルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR1RTFSI)である。
【0031】
本方法の溶媒の別の好ましい実施形態において、場合により置換されているナプタレンは、ナフタレン、1-メチルナフタレン及び2-メチルナフタレンからなる群から選択される。
【0032】
本方法の溶媒のさらになお別の好ましい実施形態において、場合により置換されている芳香族の化合物は、ジフェニルエーテル、ジクロロベンゼン又はキシレン、好ましくはp-キシレンである。
【0033】
本方法の好ましい実施形態において、ゼオライトは、ゼオライトY又はゼオライトBのいずれかから選択され、吸収される不純物は、フラン及び/又はアルコール単位を有する1つ又は複数の直鎖状オリゴマーポリエステル種を含む。場合により、直鎖状モノマー酸/オール、ジアシッド、ジエステル、又はジオール種、並びに酸性又はアルコール性基を有する他の低分子量(100g/mol未満)の不純物も、好ましくは除去される。本方法のさらになお好ましい実施形態において、ゼオライトのアルミナ(SiO2/Al2O3、mol/mol)に対するシリカの比は、5より大きく、好ましくは20より大きく、より一層好ましくは40より大きい。
【0034】
フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種が、環状オリゴマー組成物から分離及び除去される後続の工程(III)のサブ工程において、添加されるゼオライト及び吸収される不純物は、上記のものであってよい。
【0035】
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを析出させるために環状オリゴマー組成物を冷却するサブ工程は、好ましくは、50から125℃及び5から180分、好ましくは60から110℃及び30から120分、より好ましくは80から100℃及び45から90分の温度及び時間条件下で実行する。
【0036】
フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを析出させるために逆溶剤を添加するサブ工程は、1つ又は複数の炭化水素又はモノエステルから選択される逆溶剤を、5から95、好ましくは25から75、より好ましくは30から60重量%の量で添加することにより実行する。好ましい実施形態では、炭化水素は、アルカン、好ましくはヘキサンであり、エステルは、サリチル酸エステル、好ましくはサリチル酸メチルである。
【0037】
吸収された不純物を有するゼオライトを環状オリゴマー組成物から分離するサブ工程は、好ましくは、以下の方法、濾過、沈渣及び遠心分離の1つ又は複数によって実行する。或いは、ゼオライトは、固相担体に固定化し、例えば、カラムに充填し、溶液に流体相としてカラムを通過させることにより、これらを溶液と接触させる。
【0038】
フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種が、環状オリゴマー組成物から分離及び除去される工程(III)は、固定相を通る環状オリゴマー組成物の移動相の通過、選択的沈殿、蒸留、抽出、結晶化又はそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数の追加の分離サブ工程を含んでよい。
【0039】
本発明の別の態様は、本発明による方法により得ることができる、好ましくは得られる環状ポリエステルオリゴマー組成物に関わり、組成物は、(i)5、好ましくは2、より好ましくは1重量%未満の濃度の残留溶媒を含有し、残留溶媒は、イオン液体、場合により置換されているナプタレン、場合により置換されている芳香族化合物、及びそれらの混合物からなる群から選択され;(ii)フラン単位を有し、5%、好ましくは3、最も好ましくは1重量%未満の濃度で存在する直鎖状オリゴマーポリエステル種を含有し;並びに(iii)場合によりゼオライトを、5、好ましくは2、より好ましくは1重量%未満の濃度で含有し、前述の重量の百分率は、環状ポリエステルオリゴマー組成物の総重量に対するものである。
【0040】
本発明における、フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種は、典型的には、2から50、好ましくは2から20、より好ましくは2から10のモノマー繰り返し単位(エステル結合は、本発明におけるジアシッド又はジエステルモノマー及びジオールの反応により形成される)を含有する。そのような少量の直鎖状種を含有する組成物は、後続の重合を効率的且つ再生可能に実行できる点で有利である。環状オリゴマー組成物における大量の、及び/又は可変レベルの直鎖状種は、後続の重合を化学量論的に変化させ、したがって、重合の際に得られる分子量に影響を与え得る。さらに、直鎖状オリゴマー又はモノマー種の酸性、アルコール性又はエステル末端基は、不利に反応して、重合中に揮発性種を放出する可能性がある。さらに反応性の酸性種は、作用して塩基触媒をクエンチすることがあり、及び/又は処理設備に対して腐食性であることがある。
【0041】
本組成物の好ましい実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物中の残留モノマー成分、例えばC1、D1、C2又はD2は、組成物の総重量に基づいて5重量パーセント未満、好ましくは3重量パーセント、及び最も好ましくは1重量パーセントである。
【0042】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の好ましい一実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、ハロゲン化不純物、好ましくは酸塩化物及び/又はその残渣を含有する。本明細書では、残渣は、反応生成物又は副産物、例えば、ハロゲン酸、その例としてHCl、又はハロゲン塩、その例として塩化物塩、と定義される。そのような不純物は、酸ハロゲン化物である反応体、例えば酸塩化物の使用の副産物であり、オリゴマー組成物の生成において、アルコールとカルボン酸の反応より好ましい反応速度及び平衡をいずれも有する。しかしハロゲン化種は、腐食性であり、それにより、後続の重合プラントに特殊で高価な建設材料を必要とする。したがって、本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物中のそれらの含有量は、例えば、後続の分離及び除去工程中の除去により、好ましくは低く保たれるであろう。
【0043】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の別の好ましい実施形態において、組成物は、構造Y
1’
【化9】
(式中、mは1から20、好ましくは2から15、最も好ましくは3から10の整数である)
のフラン単位を有する特定の環状ポリエステルオリゴマーを含む。この実施形態は、ポリ(2,5-エチレンフランジカルボキシラート)(PEF)の生成に適切な原料であり、したがって、このオリゴマー組成物を生成する方法に関して、先に説明した利点を有する。
【0044】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の好ましい代替実施形態において、組成物は、構造Y1”
【化10】
(式中、mは1から20、好ましくは2から15、最も好ましくは3から10の整数である)
のフラン単位を有する特定の環状ポリエステルオリゴマーを含む。この実施形態は、ポリ(2,5-エチレンフランジカルボキシラート)(PBF)の生成に適切な原料であり、したがってこのオリゴマー組成物を生成する方法に関して、先に説明した利点を有する。
【0045】
本発明の別の態様は、(i)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を調製するための本発明の方法、と共に(ii)ポリエステルポリマーを生成するための後続の重合工程、とを含む、ポリエステルポリマーを生成する方法である。
【0046】
本方法の好ましい実施形態において、後続の重合は、可塑剤の存在下で実行する。本発明のこの態様の代替実施形態において、後続の重合は、可塑剤の存在下で、当技術分野で公知の方法により得ることができる、好ましくは得られる、好ましくは既に論じられている国際公開第2014/139603号で開示されている環状オリゴマー組成物に対して実行する。
【0047】
この本発明に関連する態様は、ポリエステルポリマーの生成における、本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物の使用である。この重合方法及び使用により、重合方法における原料としてのオリゴマー組成物の望ましい性質(例えば好ましい反応速度、腐食酸性種がないこと、重合中に著しい量の揮発性種の形成がないこと)が有利に利用される。
【0048】
当業者は、本発明の様々なクレーム及び実施形態の主題の組み合わせが、そのような組み合わせが技術的に実行可能な程度にまで本発明を限定することなしで可能であることを理解するであろう。この組み合わせにおいて、任意の1つのクレームの主題は、他のクレームの1つ又は複数の主題と組み合わせることができる。主題のこの組み合わせにおいて、任意の1つの方法クレームの主題は、他の方法クレームの1つ若しくは複数の主題、又は組成物クレームの1つ若しくは複数の主題、又は方法クレーム及び組成物クレームの1つ若しくは複数の混合の主題と組み合わせることができる。類推により、任意の1つの組成物クレームの主題は、他の組成物クレームの1つ若しくは複数の主題、又は方法クレームの1つ若しくは複数の主題、又は方法クレーム及びシステムクレームの1つ若しくは複数の混合の主題と組み合わせることができる。当業者はまた、本発明の様々な実施形態の主題の組み合わせが、そのような組み合わせが技術的に実行可能な程度にまで本発明を限定することなしでもまた可能であることを理解するであろう。
【0049】
本発明を、本発明の様々な実施形態及び図を参照して、以下により詳細に説明する。概略図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】閉環オリゴマー化工程におけるモノマー成分C
1又はD
1の反応から、構造Y
1の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す図である。
【
図2】閉環オリゴマー化工程におけるモノマー成分C
2又はD
2の反応から、構造Y
2の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す図である。
【
図3】閉環オリゴマー化工程における特定のモノマー成分C
1’又はD
1’の反応から、PEF生成に有用であり、フラン単位を有し、構造Y
1’の、特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す図である。
【
図4】閉環オリゴマー化工程における特定のモノマー成分C
1”又はD
1”の反応から、PBF生成に有用であり、フラン単位を有し、構造Y
1”の、特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示す図である。
【
図5】開環重合中の環状PEFダイマーの変換率に対する可塑化の効果を示す図である。
【
図6】環状PEFポリエステルオリゴマーの回収手順に対するHPLCの結果を示す図である。
【
図7】DSC(左)及びTGA(右)による、環状PEFポリエステルオリゴマー種及び組成物の熱分析の結果を示す図である。
【
図8】様々な環状PEFポリエステルオリゴマー及びPEFポリマー種、並びに組成物の融点の表を示す図である。
【
図9】280Cにて保持された精製環状PEFポリエステルオリゴマーのSECトレース(左)、並びに添加剤と共に、及び添加剤なしで保持された環状PEFダイマーの変換プロット(右)を示す図である。
【
図10】異なる反応条件(可塑剤含有量50%)でのPEF ROPの変換及び分子量の展開を示す図である。
【
図11】テトラグリム(可塑剤)が、その沸点の近くのROP作業による蒸発で、反応混合物からどの程度放出されるかを示す図である。
【
図12】異なる反応条件下でPEFを生成するROPに対する、変換及び分子量の展開を例証する図である。
【
図13】cyOEFの質量当たり50質量%の量の可塑剤を使用するPEFの合成に対して、ROPの選択結果の表を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
特許請求の範囲に記載された本発明は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/139603(A1)号から公知のものを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物からポリエステルポリマーを調製する方法に関する。本発明は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む、そのような環状ポリエステルオリゴマー組成物にも関する。
【0052】
本発明は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物の開環重合を含むポリエステルポリマーを調製する方法に関わり、開環重合は、可塑剤の存在下で実行する。
【0053】
一実施形態では、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、構造
【化11】
(式中、mは、典型的には1から20の整数である)
の、フラン単位を有する1つ又は複数の環状ポリエステルオリゴマー(cyOEF)を含み、組成物は、PEFポリマー又はコポリマーの生成に使用される。
【0054】
別の実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、構造
【化12】
(式中、mは、典型的には1から20の整数である)
の、フラン単位を有する1つ又は複数の環状ポリエステルオリゴマー(cyOBF)を含み、組成物は、PBFポリマー又はコポリマーの生成に使用される。
【0055】
可塑剤の使用は、融点が高い環状種、例えばcyOEF又はcyOEFでは、mが2であるダイマー種の含有量がより多い組成物においてきわめて有利であることが見出されている。様々な実施形態での組成物におけるダイマー種の量は、少なくとも40、60又は80重量%であろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、開環重合は、可塑剤の存在下で、より高い分子量のPEF又はPBFポリマー又はコポリマーを調製するために、例えば、プラスチックボトルの生成用に使用されるであろう。そのような実施形態の一部では、数平均分子量Mnは、少なくとも25,000、好ましくは30,000、より好ましくは35,000ダルトンであろう。他のそのような実施形態において、固有粘度は、少なくとも0.6、好ましくは0.7、より好ましくは0.85dL/gであろう。
【0057】
代替実施形態において、開環重合は、可塑剤の存在下で、より低い分子量のPEF又はPBFポリマー又はコポリマーを調製するために、例えば、繊維製品、フィルム、シート又はタイヤの生成用に使用されるであろう。そのような実施形態の一部では、数平均分子量Mnは、約10,000から約25,000、好ましくは約12,000から約22,000、より好ましくは約15,000から約20,000ダルトンであろう。他の実施形態において、固有粘度は、0.40から0.70、0.72から0.98、0.60から0.70、又は0.70から1.00dL/gの範囲であろう。
【0058】
開環重合の反応温度は、可塑剤の存在下で、典型的には、約220から約300、好ましくは約230から約290、より好ましくは約240から約280℃の範囲であろう。
【0059】
開環重合の反応時間は、可塑剤の存在下で、典型的には90、好ましくは60、より好ましくは30分未満であろう。
【0060】
使用される最適な、又は好ましい量の可塑剤は、可塑剤のタイプ及び組成物、並びに特定の環状オリゴマー組成物に若干依存し、特に、一般的に、以前に記載されている最小重合反応温度を十分に超える温度、及び以前に記載されている最大重合温度に近い、又はさらにそれを超える温度でしか溶融しない、融点が高いダイマー及び他の環状ポリエステルオリゴマー種の含有量に依存すると考えられる。一実施形態では、融点が高い種は、フラン単位を有し、少なくとも270、280、340又は360℃の融点を有する1つ又は複数の環状ポリエステルオリゴマーである。そのような種は、C2、C3、C4又はC5(m=2、3、4又は5)のcyOEF又はcyOBF種を含む。ダイマーC2(m=2)種を含有する組成物に対し、可塑化の使用は特に重要である。それにもかかわらず、開環重合における可塑剤の典型的な量は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの総重量に対して、可塑剤約25から約75、好ましくは約35から約65、より好ましくは約40から60重量%であろう。例えば押出機における反応のための、環状ポリエステルオリゴマー及び触媒の密接な接触を伴うある実施形態において、可塑剤の典型的な量は、より低い可能性があり、例えば、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの総重量に対して、少なくとも1、25、又は40重量%の可塑剤を使用できる。
【0061】
そのような大量の可塑剤は、生じたポリエステルポリマー生成物の物理的性質に対して、望ましくない効果を有する恐れがあることが留意される。したがって、いくつかの実施形態では、可塑剤は、開環重合中、及び/又は1つ又は複数の後続の脱揮工程中の蒸発により、少なくとも部分的に除去されるであろう。液体テトラグリムは、比較的沸点が低いため、可塑剤として好ましいことがある。既に記載されている開環重合の反応温度範囲内の沸点を有する他の可塑剤も、この観点において有用であり得る。いくつかの実施形態では、開環重合の開始時に存在する可塑剤の少なくとも60%、好ましくは90%が、重合中又は重合後に除去されるであろう。詳細な実施形態では、可塑剤の含有量は、重合中又は重合後に、1,000、好ましくは750、より好ましくは500ppm未満のレベルに有利に低下するであろう。
【0062】
一実施形態では、環状オリゴマー組成物は、開環重合を実行する前に、触媒と共に、粉砕され、押し出され、又は別の方法で加工されて、その結果、触媒が均一に分散し、反応させるオリゴマーと触媒の間で密接に接触する。本方法の密接な混合は、添加した可塑剤の存在下で実行しても、添加した可塑剤なしで実行してもよい。添加した液体可塑剤がないと、可塑化は、組成物の内部に含有されるオリゴマー性又はポリマー性ポリエステル種自体により、内部で行われるであろう。したがって、ポリエステルポリマーは、例えばPEF又はPBFは、それ自体が可塑剤として作用し得、典型的にはそのようなポリエステル可塑剤は、約1000から約50,000、好ましくは約10,000から約40,000、より好ましくは約15,000から約30,000ダルトンの数平均分子量Mnを有するであろう。そのようなポリエステルポリマー可塑剤は、ポリエステルポリマー生成物の物理的性質に対して広く悪影響を及ぼすことはないと考えられ、したがってこれらが、開環重合後に除去又は脱揮される必要がなくなり得るという、有用な利益を有する。
【0063】
一実施形態では、密接な混合及び開環重合は、1つ又は複数の押出機で、好ましくは反応性押出プロセスにおいて実行される。
【0064】
本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物は、具体的に限定されず、フラン単位を有し、構造Y1又はY2を含むポリエステルポリマーに添加し、他の成分も含み得る。例えば、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、少量の、1つ又は複数の未反応及び/又は未除去の反応成分、例えば環状ポリエステルオリゴマーの調製に使用されるモノマー成分(未反応のジアシッド、ジオール又はアシドール試薬)、触媒、鋳型剤、塩基、触媒クエンチ剤、溶媒をさらに含み得る。環状ポリエステルオリゴマー中のこれらの不純物の量は、環状ポリエステルオリゴマーの総重量に基づいて、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より一層好ましくは3重量%未満、及び最も好ましくは1重量%未満であろう。
【0065】
さらに、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、反応成分の1つに異物(contaminant)として導入される、又は、閉環オリゴマー化工程若しくは任意の追加工程、例えば後続の脱揮工程中における副反応のために形成される、少量の不純物をさらに含み得る。そのような不純物の例は、フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種である。最終的に、環状ポリエステルオリゴマー組成物は、追加の成分、例えば、生成中に、又は使用する前に添加される典型的なモノマー添加剤(例として酸化、熱劣化、光又はUV照射に対する安定剤)をさらに含み得る。当業者は、様々なモノマーの好ましい性質を組み合わせるために、他のモノマーとのブレンドも本発明の範囲内にあるものとして検討されることを理解するであろう。
【0066】
一実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物中のジアシッド、ジオール又はアシドールモノマーの含有量は、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。本出願において、ジアシッド、ジオール又はアシドールモノマーの含有量は、可溶性種の抽出、続いてGC-MS分析により測定したそれらの含有量を指す。
【0067】
図1に示されているように、フラン単位を有する構造Y
1の環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を調製するための本発明の方法は、(I)構造Y
1の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件下にて、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C
1又はD
1を反応させる工程であって、モノマー成分C
1が、構造
【化13】
(式中、基Aのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、lは1から100、好ましくは2から50、最も好ましくは3から25の整数であり、
R
1=OH、OR、ハロゲン又はO-A-OHであり
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり
R
2=H又は
【化14】
である)
を含み、モノマー成分D
1が、構造
【化15】
(式中、Aは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、基Xのそれぞれは、OH、ハロゲン、又は場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ若しくはアリールオキシであり、Aがn-ブチルである場合、基XがOHではない)
を含む上記工程を含む。
【0068】
図2に示されているように、フラン単位を有する構造Y
2の環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を調製するための本発明の方法は、(II)構造Y
2の、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件下にて、閉環オリゴマー化工程において、任意の触媒及び/又は任意の有機塩基の存在下でモノマー成分C
2又はD
2を反応させる工程であって、モノマー成分C
2が、構造
【化16】
(式中、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、lは上で定義されている通りの整数であり、n’は1から20、好ましくは2から10の整数であり
R
3=OH、OR、ハロゲン又はO-(B-O)
n’-Hであり、
R=場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、
R
4=H又は
【化17】
である)
を含み、モノマー成分D
2が、構造
【化18】
(式中、基Xのそれぞれは、OH、ハロゲン、又は場合により置換されているアルキルオキシ、フェノキシ若しくはアリールオキシであり、基Bのそれぞれは、場合により置換されている直鎖、分岐若しくは環状アルキル、フェニル、アリール又はアルキルアリールであり、n’はY
2に関して既に定義されている整数である)
を含む上記工程を含む。
【0069】
(I)又は(II)後の工程(III)において、フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種は、環状オリゴマー組成物から分離及び除去される。
【0070】
図3は、閉環オリゴマー化工程における、特定のモノマー成分C
1’又はD
1’の反応から、PEF生成に有用であり、フラン単位を有する、構造Y
1’の特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示し、
図4は、閉環オリゴマー化工程における、特定のモノマー成分C
1”又はD
1”の反応から、PBF生成に有用であり、フラン単位を有する、構造Y
1”の特定の環状ポリエステルオリゴマーを合成するための反応スキームを示し、両方の図の例で、l、m及びnは既に定義されている通りである。
【0071】
具体的に指示がない限り、従来の閉環オリゴマー化プロセス並びにその様々な試薬、作動パラメータ及び条件、例えば、国際公開第2014/139603(A1)号から公知のものは、構造Y1、Y2、Y1’又はY1’’を有する環状ポリエステルオリゴマーを調製する際に、本発明による方法に使用できる。
【0072】
閉環オリゴマー化工程における、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを得るために十分な反応温度及び反応時間の条件は、具体的に限定されない。本明細書では、十分という語は、反応温度及び時間が閉環反応を発生させるために十分であり、請求項に記載されたmの値を有するオリゴマーがモノマー成分から生成されることを意味する。当業者は、適切な特定の反応温度及び反応時間は、反応温度と反応時間の間の相互の影響のために幾分変化し得ることを理解するであろう。
【0073】
例えば、反応温度の上昇により、短時間で反応を起こすことができ、又は反応時間の増加により、より低い反応温度を使用できる。より低い分子量の環状ポリエステルオリゴマーが生成されることになる場合、及び/又はモノマー成分のオリゴマーへのより低度な変換が許容され得る場合は、より低い反応温度及び/又はより短い反応時間が、適切になり得る。或いは、より高い分子量の環状ポリエステルオリゴマーが生成されることになる場合、及び/又はモノマー成分のより高度な変換が望ましい場合、より高い反応温度及び/又はより長い反応時間が、適切になり得る。
【0074】
さらに、より効果的な触媒若しくは塩基、又はより高濃度の触媒若しくは有機塩基の使用により、より温和な反応条件(例えば、より低い反応温度及びより短い反応時間)を使用できる。反対に、不純物、特に触媒をクエンチする、又は鎖を妨害する(chain-stopping)不純物が存在すると、より強力な反応条件を必要とすることがある。
【0075】
一実施形態において、環化反応温度は100から350、好ましくは150から300、最も好ましくは180から280℃であり、反応時間は30から600、好ましくは40から400、最も好ましくは50から300分である。ある特定の実施形態において、これらの開示範囲の任意の組み合わせによって得られる、様々な特定の温度及び時間範囲の組み合わせが使用され得る。より好ましい実施形態において、これらの温度及び/又は時間範囲は、モノマー成分C1又はC2と共に、閉環オリゴマー化工程に使用される。
【0076】
別の実施形態において、環化反応温度は-10から150、好ましくは-5から100、最も好ましくは0から80℃であり、反応時間は5から240、好ましくは10から180、最も好ましくは15から120分である。ある特定の実施形態において、これらの開示範囲の任意の組み合わせによって得られる、様々な特定の温度及び時間範囲の組み合わせが使用され得る。より好ましい実施形態において、これらの温度及び/又は時間範囲は、モノマー成分D1又はD2と共に、閉環オリゴマー化工程に使用される。
【0077】
本発明の実施において、閉環オリゴマー化を触媒して環状ポリエステルオリゴマーを形成できるいかなる触媒も使用され得る。本発明における使用に適切な触媒は、環状エステルの重合用に当技術分野で公知のもの、例えば無機塩基、好ましくは金属アルコキシド、金属カルボキシラート、又はルイス酸触媒である。ルイス酸触媒は、1を超える安定な酸化状態を有する金属イオンを含む金属配位化合物であってもよい。この種類の触媒のうち、スズ-又は亜鉛を含有する化合物が好ましく、それらのうちアルコキシド及びカルボキシラートがより好ましく、スズオクタアートが最も好ましい触媒である。
【0078】
閉環オリゴマー化工程は、好ましくは、任意の有機塩基の存在下で行われる。有機塩基は具体的に限定されず、無機又は有機塩基であってよい。一実施形態において、有機塩基は一般構造Eを有し、他の実施形態では、アルキルアミン、例えばトリエチルアミン又はピリジンである。さらに他の実施形態において、有機塩基はE及びアルキルアミンの組み合わせである。本出願において、「触媒」は、無機又は金属含有化合物、例えば有機金属種又は金属塩を指し;一方、「有機塩基」は、非金属及び有機塩基種を指す。
【0079】
触媒及び塩基の特定の組み合わせは、特に効果的であることがあり、それらの使用が好ましい。好ましい一実施形態において、触媒はスズ、亜鉛、チタン若しくはアルミニウムアルコキシド又はカルボキシラートであり、有機塩基はDABCO(CAS No.280-57-9)又はDBU(CAS No.83329-50-4)であって、好ましくはトリエチルアミンを伴う。モノマー成分は、触媒及び/又は有機塩基と混合される場合、固相であることがある。しかし、溶媒を使用してモノマー成分を溶融相又は液相とし、次いでその後、触媒及び/又は有機塩基を添加することが好ましい。
【0080】
本発明の方法における触媒及び/又は有機塩基の量は、具体的に限定されない。一般に、触媒及び/又は有機塩基の量は、選択した反応温度及び時間に対して閉環オリゴマー化工程を発生させるために十分なので、請求項に記載されたlの値を有するオリゴマーは、モノマー成分から生成される。一実施形態において、触媒及び/又は有機塩基が存在し、触媒は、モノマー成分の総重量に対して、1ppmから1重量%、好ましくは10から1,000ppm、より好ましくは50から500ppmの量で存在し、有機塩基は、方法において反応体として使用される全モノマー成分種1molに対して0.5から6、好ましくは1から4、より好ましくは2から3molの化学量論比で存在する。触媒及び有機塩基の濃度は、モノマー成分の質量又は質量流量に対する、これらの試薬の使用される質量又は質量流量により容易に測定できる。
【0081】
本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物を調製する方法は、具体的に限定されず、バッチ式、半連続式又は連続式で実施され得る。本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物を調製するために適しているオリゴマー化の方法は、2つの群(溶媒の存在下での溶液オリゴマー化、又は溶媒を実質的に伴わないオリゴマー化、例えば、モノマー成分及びオリゴマー種の溶融温度を上回る温度で実行される溶融オリゴマー化)に分けることができる。
【0082】
相当量の未反応のモノマー成分が存在すると、直鎖状オリゴマー、又は環状ポリエステルオリゴマー組成物中の他の低分子量種、特に酸性又は他の遊離OH基を有するものは、オリゴマー組成物の貯蔵安定性及び/又は重合処理挙動に有害な影響を与え得、環状ポリエステルオリゴマー組成物には、直鎖状オリゴマーポリエステル種、並びに場合により他の不純物、例えば酸性及び/又はヒドロキシル基を有する低分子量(例えば100g/mol未満)種が除去される工程を施す。
【0083】
フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種、並びに場合により他の不純物を、本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物から分離及び除去する工程は、具体的に限定されない。他の不純物の例は、未反応の出発原料、例えばジアシッド若しくはジオール、又は残留した試薬、例えば塩基若しくはその残渣(例えばアミン残渣)であることがある。分離及び精製方法は、例えば、「実験用化学物質の精製(Purification of Laboratory Chemicals)」、第6版、W.E.Armarego及びC.L.L.Chai著、2009年、Elsevier刊、Oxford(ISBN-13:978-1856175678)並びに「分子の世界、分離、精製及び同定(The Molecular World,Separation,Purification and Identification)」L.E.Smart著、2002年、the Royal Society of Chemistry刊、Cambridge(ISBN:978-1-84755-783-4)に開示されているように当技術分野で周知である。
【0084】
具体的に指示がない限り、従来の分離及び精製プロセス、並びにそれらの様々な装置、作動パラメータ及び条件は、本発明の方法において、構造Y1、Y2、Y1’又はY1”の環状ポリエステルオリゴマー、及びそれらの組成物を調製する際に使用できる。
【0085】
一実施形態において、直鎖状オリゴマー種及び場合により他の不純物が除去される分離工程は、環状オリゴマー組成物である移動相の固定相通過、選択的沈殿、蒸留、抽出、結晶化又はそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数の分離サブ工程を含む。
【0086】
分離工程後に得られる環状ポリエステルオリゴマー組成物である生成物において、フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種は、一般的に、環状ポリエステルオリゴマー組成物の総重量に対して5重量%未満の量、より具体的には3重量%未満の量、さらに、より具体的には1重量%未満の量で存在する。本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物における、フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種の含有量は、従来の方法により容易に測定できる。例えば、直鎖状オリゴマー種の含有量は、エレクトロスプレー質量分析、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析、質量スペクトロノミーと合わせた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、及びゲル濾過クロマトグラフィーにより測定できる。本出願及び発明において、フラン単位を有する直鎖状オリゴマーポリエステル種の濃度は、HPLCにより測定された濃度を指す。
【0087】
組成物の好ましい実施形態において、環状ポリエステルオリゴマー組成物中の残留モノマー成分、例えばC1、D1、C2又はD2の含有量は、組成物の総重量に基づいて5重量パーセント未満、好ましくは3重量パーセント、及び最も好ましくは1重量パーセントである。そのような残留モノマー(又は溶媒)成分の含有量は、組成物のFTIR又はNMRスペクトル分析により測定できる。或いは、含有量は、クロマトグラフ法、例えばHPLC又はGCにより測定できる。本出願及び発明において、残留モノマー(及び溶媒)成分の濃度は、HPLCにより測定された濃度を指す。
【0088】
本発明は、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状ポリエステルオリゴマー組成物であって、フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーの構造がY1又はY2であり、ポリエステルポリマー組成物が上記の方法により得られるポリエステルポリマー組成物に関する。前記環状ポリエステルオリゴマー組成物は、組成物が、(i)5、好ましくは2、より好ましくは1重量%未満の濃度であり、イオン液体、場合により置換されているナプタレン、場合により置換されている芳香族化合物、並びにそれらの混合物からなる群から選択される残留溶媒、(ii)フラン単位を有し、5%、好ましくは3、最も好ましくは1重量%未満の濃度で存在する直鎖状オリゴマーポリエステル種、並びに(iii)場合により、5、好ましくは2、より好ましくは1重量%未満の濃度のゼオライトを含有し、重量の百分率は、環状ポリエステルオリゴマー組成物の総重量に対することを特徴とする。そのようなオリゴマー組成物は、現在の重合用途により生じる要求の大半に答えることができる。
【0089】
別の好ましい実施形態において、組成物は、ハロゲン化不純物、好ましくは酸塩化物及び/又はその残渣を含む。オリゴマー中のハロゲン化不純物の検出方法は周知であり、燃焼イオンクロマトグラフィー(IC)、光学原子分光法及びX線蛍光分析(XRF)を含む。しかし、ハロゲン化種は、腐食性であることがあるので、後続の重合プラントに、特殊で高価な建設材料を必要とする。したがって、本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物中のそれらの含有量は、例えば後続の分離及び除去工程中に除去することにより、好ましくは低く保たれるであろう。
【0090】
環状ポリエステルオリゴマー組成物の好ましい実施形態において、フラン単位を有する特定の環状ポリエステルオリゴマーは、構造Y1’又はY1”の一方であり、mは1から20、好ましくは2から15、最も好ましくは3から10の整数である。
【0091】
本発明のさらに別の態様は、(i)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマーを含む環状オリゴマー組成物を調製するための本発明の方法、と共に(ii)ポリエステルポリマーを生成する後続の重合工程とを含む、ポリエステルポリマーを生成する方法である。適切な開環重合触媒、加工条件、装置及び方法は、既に論じられている国際公開第2014/139602号で開示されているものであり、これは、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の環状ポリエステルオリゴマー組成物を使用する態様は、ポリエステルポリマーの生成に関して、この態様に関連している。この方法又は使用の好ましい実施形態は、ポリエステルポリマーがPEFポリマー又はPBFポリマーの実施形態である。
【0092】
本発明の開環重合方法により得ることができる、好ましくは得られるポリエステルポリマー組成物は、特に好ましく、組成物は、(i)場合により置換されているフェニルエーテル、イオン液体、場合により置換されているキシレン、ポリエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される可塑剤、(ii)フラン単位を有する環状ポリエステルオリゴマー、並びに(iii)(a)PEFポリマー又は(b)PBFポリマーのいずれかを含有する。残留可塑剤は、好ましくは10、より好ましくは5、より一層好ましくは2、及び最も好ましくは1重量%未満の量で存在する。ポリマーにおける可塑剤の含有量は、従来の方法、例えば、トレーサー化合物の直接分析によるポリマー可塑剤含有量の定量化(Quantifying Polymer Plasticizer Content Through Direct Analysis of Tracer Compounds)、IP.com開示番号:IPCOM000246667D、公開日:2016年6月24日で開示されているものにより測定できる。フラン単位を有する未反応の残留環状ポリエステルオリゴマーは、好ましくは5、より好ましくは2、より一層好ましくは1重量%未満の量で存在する。いくつかの実施形態では、残留可塑剤の含有量、及び未反応の環状オリゴマーは、溶媒抽出、高温蒸留又はカラムクロマトグラフィーによりポリマーから分離することで、測定し、次いでUV、NMR又はIR分光法及び/又は質量分析によるその同定が続く。PEF及びPBFポリマーは、SECにより測定して、ポリスチレン標準に対して、好ましくは少なくとも10,000、好ましくは15,000、より好ましくは20,000ダルトンの分子量を有することが多いであろう。
【実施例0093】
以下の例は、本特許請求の範囲に記載された方法、ポリエステルポリマー組成物、及び使用がどのように評価されるかについて詳細な説明を当業者に示すために明記されており、それらは、本発明者らが、自分たちの発明とみなすものの範囲を限定することを意図していない。
【0094】
これらの例において、以下の特性決定方法及びパラメータを、本例で調製した環状ポリエステルオリゴマー組成物の特性決定に使用した。
【0095】
SEC-MALS
290nmで作動させるAgilent 1100 VWD/UV検出器に直列に接続した2つのPFGリニアMカラム(PSS)を使用した、Agilent 1100 GPCでの多角度光散乱(SEC-MALS)、DAWN HELEOS II多角度レーザー光散乱(MALS)検出器(Wyatt Technology Europe)、続いてAgilent 1100 RI検出器と合わせたサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、ポリエステルの変換及び分子量分布を分析した。試料は、0.02M K-TFAcを1mL/分で室温にて用いて、HFIP中で溶出した。
【0096】
1H NMR
周波数300MHzで作動させ、CDCl3を溶媒として使用したBruker AV300という分光計で測定を行った。
【0097】
HPLC-MS
クォーターナリーポンプ、オートサンプラー及びUV検出器を有するAgilent 1200 Series HPLCは、Agilent Eclipse XDB-C18、5m、4.6×150mmカラムを備えていた。溶離液混合物は、(A)ギ酸で安定化させた水(1mL/L)及び(B)ギ酸で安定化させたアセトニトリル(1mL/L)で構成されていた。グラジエントは、1mL/分で60分実行した。Bの溶媒比は、11分間に20%から45.2%、次いで29分間に45.2%から80%に、続いて10分で97%、及び10分で20%に直線的に変化させた。試料をHFIP/CHCl3(15%)中に1mg/mLで溶解した。インジェクション容量は、10μLであり、UV検出を280nmで実行した。ピークは、Agilent 1640シングル四重極MSを用いたオンライン質量分光法により特徴付けられた。
【0098】
MALDI-TOF
マトリックスはT-2-[3-(4-t-ブチル-フェニル)-2-メチル-2-プロペニリデン]マロノニトリル(DCTB)+Naミックス10:1であり、機器の種類は、Bruker Daltonics Ultraflex IIであり、収集モードはリフレクタであった。
【0099】
(例1)
PEFを生成するための環状ポリエステルオリゴマー組成物(Y
1’の実施形態)
この例では、
図3に示されている環状ポリエステルオリゴマーの調製が記載されており、次いでこれは、PEF、すなわちポリ(2,5-エチレンフランジカルボキシラート)の調製に使用され得る。40gのme-FDCAを、20mLのEGと共に、撹拌機を備えたガラス反応器中に入れた。反応は、不活性雰囲気下で、0.50gの触媒(Bu
2SnO)の存在下で、140℃の開始温度にて実行し、最終温度180℃まで徐々に加熱した。1時間後、反応圧力が700mbarに低下し;40分後、圧力が400mbarに再度低下し、30分後、200mbarにさらに低下した。最終的に、圧力は、段階的に10mbarまで低下した。温度は、200℃まで上昇し、系は、この条件下で2時間放置した。この系を室温に冷却し、固体生成物を除去し、粉砕し、乾燥させた。得られたプレポリマーは、HPLC及びGPCで特徴付けられ、その同一性は、C
1’であると確認された。
【0100】
プレポリマーC1’を、濃度が10g/lの溶媒としての2-メチルナフタレン中に溶解し、生じた溶液を、200℃にて、プレポリマーC1’を環状オリゴマーY1’に変形させるために、不活性雰囲気下で3時間反応させた(追加で添加される触媒なしで)。次のゼオライトYを、10g/lの濃度で添加した。HPLC分析により、環状オリゴマー(m=2から5)の濃度は、本質的に未変化のままであるが、直鎖状種(l=1から8)は、本質的に溶液から除去されたことを確認した。この結果、未反応の直鎖状残留種は、ゼオライト上での吸着により、反応系から容易に除去できることが確認される。
【0101】
(比較例1及び2)
低量の可塑剤の存在下での触媒を用いない又は触媒若しくは可塑剤を用いない環状ポリエステルオリゴマー組成物(Y1’)のかなりの重合の欠如
この例では、例1の環状オリゴマーY1’(m=2)を、260℃から320℃の間のそれぞれ異なる温度にて、不活性雰囲気下で、可塑剤としてのテトラ-グリムと、環状オリゴマーY1’180mg当たりテトラ-グリム60uLの濃度で、触媒を添加せずに30分反応させた。反応は発生せず、材料は未変化のままであった。
【0102】
第2の比較例では、例1の混合環状オリゴマーY1’(m=2から7)は、可塑剤又は触媒を添加せずに、280℃の温度にて60分反応させた。GPC分析により、発生したm=2の環状オリゴマーの反応がほとんどない、又はないことを確認した。したがって、これらの比較例から、典型的には最も多い種の低Mw環状オリゴマー(m=2)は、一般的に、触媒又は可塑剤がないと、妥当な時間内でそれほど重合しないであろうことが示される。
【0103】
(例2)
低分子量の可塑剤の存在下での触媒を用いた環状ポリエステルオリゴマー組成物(Y1’)からのPEFの生成
この例では、例1の環状オリゴマーY1’(m=2)は、比較例1のように、しかし、環状オリゴマー繰り返し単位1mol当たり0.1mol%の濃度の、触媒としての環状スタノキサンの存在下で、反応させた。この例では、95%超の変換率が20分以内に達成された。
【0104】
図5は、環状PEFダイマーと、より低い(1/3 v/m)及びより高い(2/3 v/m)濃度両方のテトラ-グリム可塑剤の変換率の比較のデータを示す図である。
【0105】
他の重合を実行する際には、他の金属酸化物触媒、例えばSb2O3又はBi2O3を、スズ系触媒と比較した。Sb2O3又はBi2O3を使用して調製したポリマーは、スズ系触媒で得られるやや黄褐色のものよりもさらに無色透明な外観であることを観察した。
【0106】
(例3)
より多量の可塑剤の存在下での触媒を用いない環状ポリエステルオリゴマー組成物(Y1’)からのPEFの生成
この例では、例1の環状オリゴマーY1’(m=2)を、可塑剤としてのテトラ-グリムと、環状オリゴマーY1’180mg当たりテトラ-グリム240uLのより高い濃度で、比較例1のように反応させた。この例では、95%超の変換率が、あらゆる温度にて60分以内に達成された。
【0107】
(例4)
開環重合による環状ポリエステルオリゴマー組成物からのPEFの生成に対する反応条件の影響
この例では、高分子量のPEFポリマーを、本出願の説明、並びに国際公開第2014/139603(A1)号で既に記載されているように調製した環状PEFオリゴマー(cyOEF)から調製した。
【0108】
以下のサブセクションは、環状PEFオリゴマー(cyOEF)からのPEFポリマーの合成に対する、様々な反応条件の影響を実施例により実証するために使用される化学物質、設備及び分析デバイスを概説する。
【0109】
材料
ジブチルスズ酸化物(Bu2SnO、≧98%)、無水エチレングリコール(EG、99.8%)、2,5-フランジカルボン酸ジメチル(meFDCA、99%)、2-エチルヘキサン酸スズ(II)(オクト酸スズ、SnOct2、95%)、1-ドデカノール(98%)、トリフルオロ酢酸(TFA、99%)及びトリフルオロ酢酸カリウム(K-TFAc、98%)、2-メチルナフタレン(95%又は97%)、アセトニトリル(ACN、≧99.7%)、n-ヘキサン(≧95%)、トルエン(≧99.7%)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム、99%)、ジエチルエーテル(Et2O、≧99.8%)、ジクロロメタン(DCM、99.99%)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、99.9%)、クロロホルム-d(CDCl3、≧99.8%)及びトリフルオロ酢酸-d(TFA-d、99.5%)を、実験材料供給商店から入手したままの状態で使用した。開始剤の1-ドデカノール及びテトラグリムは、窒素雰囲気下でグローブボックスに保存した。これらの同材料は一般に、以前の実施例でも同様に使用されたことに留意する。
【0110】
生成されたPEF例の、ボトルグレードPETに対するベンチマークに関しては、後者の試料は市販のPETプラスチックボトルから得た。ポリマー分子量分析の精度を確認するために、PET及びPMMA標準を、PSS Polymer Standards Service、Germanyから分析した。
【0111】
分析論
1H NMR(300MHz、400MHz)スペクトルをBruker Avance III分光計で記録した。1H NMRスペクトルは、残留溶媒シグナルを基準とした。変換率(X)、PET及びPEF試料の数平均及び重量平均絶対分子量Mn及びMw値は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により判定した。290nmで作動させるAgilent 1100 VWD/UV検出器に直列に接続した2つのPFGリニアMカラム(PSS)を備えたAgilent 1100 GPC/SECユニット、DAWN HELEOS II多角度レーザー光散乱(MALS)検出器(Wyatt Technology Europe)、続いてWyattのOptilab T-rEX RI検出器を使用した。試料は、0.02M K-TFAcを1mL/分で室温にて用いて、HFIP中で溶出した。変換率を、PSS WinGPC Unichromソフトウェアで、PEF対UVシグナル総面積の分率として評価した。絶対分子量を、Wyatt ASTRA ソフトウェア、及び本発明者らの分析設定に基づくdn/dc値(dn/dc(PEF)=0.227mL/g、dn/dc(PET)=0.249mL/g)で評価した。さらなる絶対分子量は、TFA-d中のPET及びPEFの試料0.4mg/mLを使用して、拡散(DOSY)NMR測定から得た。
【0112】
cyOEF環サイズ組成物及び残留直鎖からの純度の分析は、280nmで、UV検出器を有するAgilent 1100 HPLCで、続いて Agilent 1640シングル四重極ESI-TOF質量分析計で、評価した。直鎖状及び環状種は、このHPLC-MS設定によりはっきり同定され、cyOEF純度は、環状オリゴマーのピークに関連するHPLC面積対HPLC総面積として評価された。直鎖状及び環状種のUV吸光係数は、公平な評価を確保するために、これらの測定の前に評価し、すべての種で同じと見出した。試料は、15%(v/v)HFIP/CHCl3中に溶解し、20/80から80/20のアセトニトリル/H2OグラジエントでEclipse XD8-C18カラム(150×4.6mm、3.5μm孔径)を通して40分かけて1mL/分で溶出した。ギ酸0.1%(v/v)を安定剤として、有機及び水性相の両方に添加し、ミリポア水を水性相として、また、アセトニトリルを有機相として使用した。インジェクション容量を10μLで一定に維持した。
【0113】
熱的性質分析は、インジウム及び亜鉛標準で較正した機械Mettler Toledo DSC Polymerで行った。加熱速度は、窒素流下で10℃/分であった。環状オリゴマー融点は、第1の加熱曲線、ガラス転移温度(Tg)から算出され、PEFの融点(Tm)は、液体窒素中でクエンチ後の第2の加熱曲線から算出した。Tgは、中間温度で記録した。熱安定性及び劣化は、窒素流下で10℃/分の加熱速度を使用して、Mettler Toledo TGA/SDTA 851で分析した。
【0114】
偏光光学顕微鏡(POM)画像は、Linkam LTS350温度制御ステージ及びDP72デジタルカメラを備えたOlympus BX51顕微鏡で取得した。粉末回折パターンは、Ge-モノクロメーターに焦点を合わせたCu-Kアルファ1放射線及びDectris Mythenケイ素ストリップ検出器を有するStoe&Cie STADI P 粉末回折計で記録した。ICP-OES分析は、Perkin Elmer Optima 8300で行った。ROP系PEF及びPETフィルムのガス透過性分析は、23℃及び50%相対湿度にて、溶液製膜から得られる厚さ35~45μmのフィルムを使用して、MOCON Ox-Tranデバイスで行った。フィルムの調製は、70℃にて加熱したガラス板上で、HFIP中の約200mg/mL PEFの溶液製膜により行ってHFIPを蒸発させ、その後、フィルムの厚さを測定した。
【0115】
環状スタノキサン(cySTOX)開始剤の調製、及び脱重合による環状フラン酸オリゴエチレン(cyOEF)の調製
1,1,6,6-テトラ-n-ブチル-1,6-ジスタンナ-2,5,7,10-テトラオキサシクロデカン、又は一般的には環状スタノキサン(cySTOX)呼ばれるものは、文献の方法を使用して合成した。
【0116】
環状PEFオリゴマー(cyOEF)は、本出願、並びに国際公開第2014/139603(A1)号で既に記載されている方法に従って調製した。脱重合による経路では、詳細には、400gの2,5-フランジカルボン酸ジメチル(400g、2.17mol、1当量)、エチレングリコール(270g、4.35mol、2当量)及びBu2SnO(2g、8mmol、0.004当量)を、N2雰囲気下で、電磁撹拌機を備えた3口丸底フラスコに入れた。溶液を200℃にて撹拌し、メタノールを縮合生成物として蒸留し、2時間かけて除去した。過剰なエチレングリコールを真空下で終夜除去して、固体生成物を得た。このPEFプレポリマー(linOEF)を、グローブボックスに保存し、10gのlinOEFバッチのプレポリマーを、N2雰囲気下で、電磁撹拌機を備えた3口丸底フラスコ中の1Lの2-メチルナフタレン(2-MN)に、200℃にて溶解した。溶液を6時間撹拌し、このとき、linOEFのcyOEFへの変換率は、およそ80%で平衡を保つ。cyOEF/linOEF生成物は、冷却による沈殿、及び時に1:1 v/vヘキサンの添加、続いて濾過で収集した。
【0117】
cyOEFは、DCM中7.5% v/vまでのEt2Oで、短いシリカゲルカラムを通して溶出することにより直鎖状種から精製した。生成物を濃縮し、>99%までの純度で環状種を白色粉末として得た。個々の環状種は、Et2O/DCM(7.5/92.5 v/v)を移動相として使用したシリカゲルを通して、DCM中の粗生成物を溶出することにより分画することもできる。すべての精製生成物を収集し、その純度をHPLC-MSにより分析し、これらは1H NMRにより特徴付けられた。
【0118】
ROPによるフラン酸ポリエチレン(PEF)の合成
溶融した開環重合(ROP)のすべてのバッチに対して、グローブボックスにおいて、電磁撹拌機を備えたシュレンク管反応器中でcyOEFの量を秤量した。前記管を加熱ブロックに移し、真空下で乾燥させた。反応器をヒーターから外し、窒素で真空を解除した。温度を望ましい値に設定し、シュレンク管を加熱ブロックに再導入した。開始剤をニートで、又は可塑剤(テトラグリム)との懸濁液の形態で添加した。開始剤の懸濁液を撹拌しながら70℃に予熱し、とりわけ、SnOct2とは異なり室温にて粉末であるcySTOXに関しては、溶解度を上昇させ、したがって、高温にて開始剤溶液の均一性の向上を観察した。開始剤は、環状ダイマーの例では温度平衡の5分後、又は反応温度への加熱前に、テトラグリム中0.01から0.03Mの濃度で注入した。試料は、反応の間に採取した。視覚的外観及び変色は、サンプリング中に定性的に分析した。望ましい反応時間の後で、生成物は、氷水中に浸漬することによりクエンチし、続いて純粋HFIP中で溶解し、THF中で沈殿させた。生成物は、混合物の濾過又は混合物の遠心分離及び溶媒のデカンテーションによる除去のいずれかによって収集した。固体を、80℃にて真空下で乾燥させ、後に論じられているように、反応条件に応じて白色又は褐色粉末を得、これは、1H NMRにより特徴付けられた。
【0119】
これらの追加の実施例の結果は、初期の環状PEFオリゴマー(cyOEF)、及び後続の代表的な最終PEFポリマーの生成に対する反応パラメータの影響を例証し、
図11で示される。
【0120】
図6は、cyOEF調製後の回収手順の態様を例証する。100℃に冷却すると、環状ダイマーのC2がまず沈殿する。さらに冷却すると、より多くの環状ダイマーが沈殿するが、トリマーC3及び直鎖状鎖(linOEF)は沈殿しない。逆溶剤を使用して、C3も同様に析出させることができる。そのような選択的沈殿方法により、異なる組成のcyOEF材料を調製できる。シリカゲルを介した精製により、残留linOEFの除去が可能となるが、これにより、後続のROP中に、最終的に達成可能な分子量を限定されることがある。
【0121】
図7は、単離した環状ダイマーC2、C3、C3が冷却時に沈殿により除去されてヘキサン沈殿後に全範囲の環サイズを有するcyOEF、及びPEFポリマーの、DSC(左)及びTGA(右)トレースを示す。これらのプロットにより、cyOEFにおける主要成分であり、通常、cyOEF合成、例えば脱重合から生じるC2ダイマーは、2つの温度遷移を有することが実証される。290℃での第1のものは、粉末回折及びPOM分析により明らかなように、再結晶化され、370℃での第2のものは、実際の融点である。DSCにより評価したcyOEF種、並びに異なる組成物及びPEFポリマーの混合物の融点は、
図8で示されている表で要約されており、所定の環サイズの環状PETオリゴマー、及び直鎖状PETポリマーについての文献の値は、比較のために同様に示されている。
【0122】
C2 cyOEFダイマーのきわめて高い融点は、PEFポリマー及びcyOEF劣化の両方の熱的範囲にある(図の右におけるTGAを参照されたい)。したがって、PEF環状オリゴマーのROPは、良好な色を有する満足できるポリマー生成物を得るために、この温度より十分に低い温度で実行されることが必要とされる。この最適化された結果は、以下のサブ実施例で示されているように、可塑化で達成できる。
【0123】
図9は、280℃にて、添加剤なしのニートで保持した、20、60、240及び666分後における精製cyOEF(-)のSECトレースを示し、それぞれ、句読点を増やした(increasing punctuation)破線により表される。反応中に形成されたポリマー(PEFピーク)の対応する分子量は、それぞれ、Mn=33.8、40.5、24.8及び13.8kg/molであった。これらの結果から、C3以上の環状種は、PEFに1時間以内に反応するが、C2の変換の完了には、その劣化によって、達成されるPEF分子量が実質的に少なくなるので、10時間超を必要とすることが例証される。
【0124】
図10は、可塑化(右)の効果を例証する。280℃にて、添加剤なし(□)のニートで保持した精製cyOEFの変換率を、開始剤なしの66%テトラグリム(△)、可塑剤なしで0.1% cySTOX開始剤をcyOEFに粉砕したもの(◇)、33%テトラグリムを添加して、同じく粉砕したもの(◆)及び粉砕なしで、撹拌することにより、開始剤と、可塑剤としてのテトラグリムを予混したもの(○)を使用したROPと比較した。これらの結果から、開始剤のcyOEF原料への粉砕(工業規模の押出機のような)による均一化は、反応速度を実質的に増加させて、非常に不均一にではあるが分子量を高くし、変色をもたらすほど反応時間を長くすることが示される。変換及び変色の観点から最適な結果は、テトラグリムを可塑剤として、及び開始剤の均一な分散の促進剤として使用することにより達成される。
【0125】
図11は、0%(○)、25%(△)、33%(◇)から100%(□)の異なる可塑剤充填量で、テトラグリムが、その沸点(275℃)の近くのROP作業による蒸発で、反応に沿って反応混合物をどの程度放出されるかを示す。
【0126】
図12は、異なる反応条件下での、PEF ROPに対する変換及び分子量の展開を例証する。可塑剤の含有量は、すべての例において50%であった。サブプロットAにより、ROPによる、耐性が最高であり融点が最高の環状種cyOEF C2種のPEFへの完全(95%)変換の実行可能性が実証される。反応条件は、0.1%(+)及び0.2%(×)のSnOct
2、並びに0.07%(○)及び0.15%(△)のcySTOXを開始剤として使用する280℃の温度であった。サブプロットBは、C2及びC4が多くを占め、C3、C5、C6、C7がより少ない精製cyOEFを使用した、反応温度の影響を示す。反応条件は、240℃(○)、260℃(□)、及び280℃(◇)の反応温度での、開始剤としての0.1% cySTOXであった。サブプロットCは、ROPに対する開始剤の含有量の最適化を示す。反応条件は、異なるcySTOX充填量、すなわち0.05%(○)、0.1%(□)、0.2%(◇)及び0.3%(△)を使用する260℃の温度であった。
図13における破線は、劣化が顕著になる前の部分的なリビング挙動(XでのMnの直鎖状傾向)に眼を向けさせるはずである。260℃にて、開始剤として0.1%のcySTOXにより、これらの実施例における最適条件が提示され、分子量低下が顕著になる前に、20分未満で最高分子量に達する。
【0127】
図13は、cyOEFの質量当たり50質量%の量の可塑剤を使用したPEFの合成に対する、ROPの選択結果を示す。環状オリゴマーの純度は、総面積に対するcyOEFのHPLC面積分率として示される。Xは、PEFのSEC面積分率対総面積として定量した変換である。Mn及びMwは、SEC-MALSからの絶対分子量である。
【0128】
テーブルエントリー1及び2は、精製cyOEFが、きわめてゆっくり反応できることが多く、時に、80%の変換率に達するのに10時間超かかることを示す。したがって、ボトルグレード分子量での完全な変換は、一般的に、開始剤及び可塑剤の添加なしでは容易に実行可能ではない。
【0129】
テーブルエントリー3~7は、融点が最高であり、きわめて反応耐性の環状種であるC2のPEFへの変換の実行可能性を示す。2つの開始剤、すなわちSnOct2及び環状スタノキサン(cySTOX)を使用した。SnOct2は、追加の末端基を系に付与し、これにより達成可能な分子量を低下させるSnOc2を活性化するために必要なアルコールのため、より低分子量のPEFポリマーの生成しかできないことが多い。cySTOXは、したがって、これらの実施例では、達成可能な分子量及び反応速度の観点から好ましい開始剤である。
【0130】
テーブルエントリー8~10は、cyOEF純度の効果を示す。純度が低いほど、低分子量のポリマーしか生成できない。任意の機構に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、ポリマーの高分子量を達成するためには約98~99%の純度が必要との結論を得る。
【0131】
テーブルエントリー11~12は、cySTOX開始剤を使用した温度の効果を示す。280℃から260℃とすると、反応速度は遅くなったが、熱劣化が限定されるため、より高い分子量での生成が可能となった。240℃の温度は、これらの特定の例では低すぎ、反応を非常に遅くするので、長い反応時間により、生成物が、潜在的な劣化に過度に長時間曝露された。
【0132】
テーブルエントリー13~15は、この特定の例における特定の反応条件、及び使用される反応設備に関して、反応温度が260℃に最適化された後で、開始剤の含有量の最適化を示した。開始剤の含有量が高いほど、系における末端基及び鎖の数が増えるため、反応が速く、分子量が低くなることを意味する。これらの特定の例における最適な濃度は、cySTOX約0.1mol%(cyOEFの繰り返しに対して)と見出した。
【0133】
テーブルエントリー16~19は、ポリマーの変色に対する、様々なパラメータの影響を評価するために選択されたROP反応のデータを示す。重合16及び17は、高温及び低温にて、純度がより低い(95%)cyOEFを使用して同一の反応時間にわたり実施し、高温は、PEFポリマー生成物の顕著な視覚的変色をきたした一方、低Tは、着色を示さないが、変換も不十分であり、これにより、温度の効果が概説される(ここでは定性的な結果のみ)。重合18及び19は、反応に対する純度の効果を示す。同一の条件を、異なるcyOEF純度(97%対99%)のバッチに適用し、より低い分子量の褐色ポリマー生成物、及びより高い分子量で変色がはるかに少ないPEF生成物をそれぞれ得た。
【0134】
テーブルエントリー20~24は、最適化されていない条件で様々な非スズ開始剤を使用した中間結果を示し、これにより、それらを使用した、PEFのためのROPの実行可能性が同様に実証される。Sb2O3は、酸化アンチモン(III)であり、Bi2O3は、酸化ビスマス(III)であり、FeAcは、酢酸鉄であり、Ca(MeO)2は、カルシウムメトキシドである。
【0135】
この実施例における結果及びその結論は、この実施例の特定の反応器系において実行される特定の反応条件下で評価した、特定の反応組成物に対して適用されるが、他の反応組成物、条件及び反応器系では、多少異なる結果が得られる可能性があることに留意すべきである。
【0136】
様々な実施形態を例示の目的で記載してきたが、上記の説明は、本明細書の範囲を限定するものではない。したがって、当業者であれば、本明細書の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正形態、適応形態及び代替形態を思い浮かべることができる。