(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160467
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】医薬品(2)
(51)【国際特許分類】
A61K 31/472 20060101AFI20221012BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/4725 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61K31/472
A61P27/02
A61K31/4725
A61K9/08
A61K47/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113726
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2019503077の分割
【原出願日】2018-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2017037417
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山北 佳央
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イソキノリン-6-アミノ誘導体を、眼科用剤等として安定的に製剤化する技術を確立すること。
【解決手段】{4-[(2S)-3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル]フェニル}メチル2,4-ジメチルベンゾエート等のイソキノリン-6-アミノ誘導体を含有する水性組成物が、ポリエステル系樹脂製容器又はポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、いくつかのイソキノリン-6-アミノ誘導体が、高眼圧症や緑内障等の眼疾患の予防や治療に有用であることが知られている。
具体的には例えば、以下の構造式:
【0003】
【0004】
で表される化合物(化学名:{4-[(2S)-3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル]フェニル}メチル 2,4-ジメチルベンゾエート([4-[(2S)-3-amino-1-(isoquinolin-6-ylamino)-1-oxopropan-2-yl]phenyl]methyl 2,4-dimethylbenzoate)、国際一般名:netarsudil。なお、以下、本明細書において、「ネタースジル」と表記することがある。)は、AR-13324としても知られ、Rhoキナーゼ阻害作用、ノルエピネフリントランスポーター阻害作用等の薬理作用を有し、高眼圧症や緑内障等の眼疾患の予防や治療に有用であることが報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献1、2)。
【0005】
また、同様に、以下の構造式:
【0006】
【0007】
で表される化合物(化学名:rac-(2R)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド(rac-(2R)-2-(dimethylamino)-N-(1-oxo-1,2-dihydroisoquinolin-6-yl)-2-(thiophen-3-yl)acetamide)、国際一般名:verosudil。なお、以下、本明細書において、「ヴェロスジル」と表記することがある。)は、AR-12286としても知られ、Rhoキナーゼ阻害作用を有し、高眼圧症等の眼疾患の予防や治療に有用であることが報告されている(例えば、特許文献2、非特許文献1、3)。
そのため、これらのイソキノリン-6-アミノ誘導体を、例えば眼科用剤等として安定的に製剤化する技術を確立することは、極めて有用である。
【0008】
ところで、特許文献3には、ネタースジルやヴェロスジルを含有する組成物を150mLプラスチック容器中にて調製したことが記載されている。しかしながら、当該文献において、各組成物の調製は薬理試験での使用に向けてなされたものであり、組成物中のネタースジルやヴェロスジルの安定性については一切記載されておらず、また、当該容器がいかなる材質・特性のものであるかについても一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2012-525386号公報
【特許文献2】WO2009/091898号パンフレット
【特許文献3】特表2016-515520号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bacharach J. et al., Ophthalmology 122 (2) 302-7 (2015)
【非特許文献2】Sturdivant JM. et al., Bioorg Med Chem Lett. 26(10) 2475-80 (2016)
【非特許文献3】Williams RD. et al., Am. J. Ophthalmol. 152(5) 834-41 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ネタースジルやヴェロスジルなどのイソキノリン-6-アミノ誘導体を、眼科用剤等として安定的に製剤化する技術を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
眼科用剤等は、通常、水を含有する組成物(水性組成物)である。そこで本発明者は、ネタースジルなどのイソキノリン-6-アミノ誘導体を含有する水性組成物を調製し、これを容器に収容してその保存性を確認した。しかるところ、意外なことに、高温で長期間保存すると、イソキノリン-6-アミノ誘導体の含量が低下することが明らかとなった。
そこで、本発明者は、イソキノリン-6-アミノ誘導体の、水性組成物中での熱に対する安定性を改善するため更に鋭意検討した。しかるところ、イソキノリン-6-アミノ誘導体を含有する水性組成物を、ポリエステル系樹脂製容器又はポリオレフィン系樹脂製容器という特定の容器に収容した場合に、高温保存時の含量低下が抑制され、熱安定性の改善された医薬製剤となることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の一般式(1)
【0014】
【0015】
(式中、R1とR2はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C4アルキル基を示し、
R3は水素原子又はヒドロキシ基を示し、
Aは-CH(R4)-又は-CH2-CH(R4)-(ここでR4は置換基を有してもよいC6~C10アリール基、又は置換基を有してもよい5~10員のヘテロアリール基を示す。)を示し、
さらに、式(1)には、その互変異性体も含まれる。)
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、ポリエステル系樹脂製容器又はポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ネタースジルに代表されるイソキノリン-6-アミノ誘導体の、水性組成物中での安定性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「一般式(1)
【0018】
【0019】
(式中、R1とR2はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C4アルキル基を示し、
R3は水素原子又はヒドロキシ基を示し、
Aは-CH(R4)-又は-CH2-CH(R4)-(ここでR4は置換基を有してもよいC6~C10アリール基、又は置換基を有してもよい5~10員のヘテロアリール基を示す。)を示し、
さらに、式(1)には、その互変異性体も含まれる。)
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」には、一般式(1)で表される化合物そのもののほか、その塩や溶媒和物も含まれる。
【0020】
ここで、一般式(1)で表される化合物の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されず、具体的には例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、塩酸塩、メタンスルホン酸塩が好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物やその塩の溶媒和物としては、水和物やアルコール和物等が挙げられる。
さらに、一般式(1)で表される化合物の化学構造中に不斉炭素が存する場合には、種々の立体異性体が存在し得るが、一般式(1)で表される化合物としてはその立体配置は特に限定されず、単一の立体異性体でも、各種立体異性体の任意の割合の混合物でもよい。
なお、本明細書において、各種の式で表される化合物がその化学構造中に不斉炭素を有する場合においては、特に立体配置を指定しない限り、斯かる式は各種立体異性体単独及びそれらの任意の割合の混合物の全てを包含する。従って、特に立体配置を指定しない式で表される化合物は、単一の立体異性体であってもよく、また、各種立体異性体の任意の割合の混合物であってもよい。
【0021】
また、一般式(1)には、一般式(1)で直接的に表される化合物そのもののほか、その互変異性体も包含される。具体的には例えば、R3がヒドロキシ基である下記一般式(1a)の場合には、その互変異性体(一般式(1b))が生じ得るが、「一般式(1)で表される化合物」には、下記一般式(1a)で表される化合物のほか、一般式(1b)で表される化合物も包含される。
【0022】
【0023】
【0024】
本明細書において、「C1~C4アルキル基」とは、直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭素数1~4のアルキル基を意味する。「C1~C4アルキル基」としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
本明細書において、「C6~C10アリール基」とは、炭素数6~10のアリール基を意味する。「C6~C10アリール基」としては、具体的には例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0025】
本明細書において、「5~10員のヘテロアリール基」とは、酸素原子、イオウ原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を環構成原子として1~4個含有する5~10員の単環式、多環式又は縮合環式の芳香族へテロ環基を意味する。「5~10員のヘテロアリール基」としては、具体的には例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、プリニル基、プテリジニル基、フロピリジル基、チエノピリジル基、ピロロピリジル基、オキサゾロピリジル基、チアゾロピリジル基、イミダゾピリジル基等が挙げられ、チエニル基が好ましい。
【0026】
本明細書において、「置換基を有してもよいC6~C10アリール基」、「置換基を有してもよい5~10員のヘテロアリール基」における「置換基」としては、具体的には例えば、ハロゲン原子、-CH2-OC(=O)-R5(ここで、R5としては、置換基としてC1~C4アルキル基を1~3個有してもよいC6~C10アリール基(例えば、2,4-ジメチルフェニル基)を意味する。)が挙げられ、塩素原子、2,4-ジメチルフェニルカルボキシメチル基が好ましい。
本明細書において、「置換基を有してもよいC6~C10アリール基」としては、4-クロロフェニル基、4-(2,4-ジメチルフェニルカルボキシメチル)フェニル基が好ましい。
本明細書において、「置換基を有してもよい5~10員のヘテロアリール基」としては、3-チエニル基が好ましい。
R3がヒドロキシ基である場合、R3の置換位置はイソキノリン環上であれば限定されないが、イソキノリン環の1位が好ましい。
【0027】
本明細書において、「一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」としては、下記式(2):
【0028】
【0029】
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が好ましく、下記式(3):
【0030】
【0031】
で表される化合物(ネタースジル)(化学名:{4-[(2S)-3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル]フェニル}メチル 2,4-ジメチルベンゾエート([4-[(2S)-3-amino-1-(isoquinolin-6-ylamino)-1-oxopropan-2-yl]phenyl]methyl 2,4-dimethylbenzoate)、国際一般名:netarsudil)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がより好ましく、下記式(4):
【0032】
【0033】
で表される、前記式(3)で表される化合物の2メタンスルホン酸塩(化学名:{4-[(2S)-3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル]フェニル}メチル 2,4-ジメチルベンゾエート 2メタンスルホン酸塩( [4-[(2S)-3-amino-1-(isoquinolin-6-ylamino)-1-oxopropan- 2-yl]phenyl]methyl 2,4-dimethylbenzoate dimethanesulfonate)。なお、以下、本明細書において特に「ネタースジル2メシル酸塩」と表記することがある。)が特に好ましい。
また、別の態様として、「一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」としては、下記式(5)又は(5'):
【0034】
【0035】
【0036】
で表される化合物若しくはそれらの塩又はそれらの溶媒和物が好ましく、下記式(6):
【0037】
【0038】
で表される化合物(ヴェロスジル)(化学名:rac-(2R)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド(rac-(2R)-2-(dimethylamino)-N-(1-oxo-1,2-dihydroisoquinolin-6-yl)-2-(thiophen-3-yl)acetamide)、国際一般名:verosudil。)、その互変異性体若しくはそれらの塩又はそれらの溶媒和物がより好ましく、下記式(7):
【0039】
【0040】
で表される、前記式(6)で表される化合物の1塩酸塩(化学名:rac-(2R)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-オキソ-1,2-ジヒドロイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド 1塩酸塩(rac-(2R)-2-(dimethylamino)-N-(1-oxo-1,2-dihydroisoquinolin-6-yl)-2-(thiophen-3-yl)acetamide monohydrochloride)。なお、以下、本明細書において特に「ヴェロスジル1塩酸塩」と表記することがある。)が特に好ましい。
【0041】
さらに、別の態様として、「一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」としては、下記式(8):
【0042】
【0043】
で表される化合物(3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)-N-(イソキノリン-6-イル)プロパンアミド)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が好ましい。
【0044】
一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造できる。具体的には例えば、特許文献1~3に記載の方法や、非特許文献2記載の方法を参考に製造することが出来る。なお、これらの文献の内容は、参照として本明細書に組み込まれる。
また、一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は市販されており、これらの市販品を用いてもよい。市販品としては、具体的には例えば、Medchemexpress社製やChemscene LLS社製のネタースジル2メシル酸塩(式(4)で表される化合物)や、Shanghai biopharmaleader社製のネタースジルの1塩酸塩(式(3)で表される化合物の1塩酸塩)、MedKoo biosciences社製のヴェロスジル(式(6)で表される化合物のフリー体)などが挙げられる。
【0045】
水性組成物中の一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定されず、適用疾患や患者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定すればよいが、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、一般式(1)で表される化合物をフリー体に換算して0.0001~5w/v%含有するのが好ましく、0.001~3w/v%含有するのがより好ましく、0.005~2w/v%含有するのがさらに好ましく、0.01~1w/v%含有するのが特に好ましい。
特に、一般式(1)で表される化合物としてネタースジルを使用する場合においては、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、ネタースジルをフリー体に換算して0.0001~1w/v%含有するのが好ましく、0.001~0.5w/v%含有するのがより好ましく、0.005~0.1w/v%含有するのがさらに好ましく、0.01~0.04w/v%含有するのが特に好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物としてヴェロスジルを使用する場合においては、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、ヴェロスジルをフリー体に換算して0.01~3.5w/v%含有するのが好ましく、0.1~2.5w/v%含有するのがより好ましく、0.2~1.5w/v%含有するのがさらに好ましく、0.3~0.8w/v%含有するのが特に好ましい。
さらに、一般式(1)で表される化合物として式(8)で表される化合物を使用する場合においては、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、式(8)で表される化合物をフリー体に換算して0.0001~3w/v%含有するのが好ましく、0.001~2w/v%含有するのがより好ましく、0.005~1w/v%含有するのがさらに好ましく、0.01~0.5w/v%含有するのが特に好ましい。
【0046】
本明細書において、「水性組成物」とは、少なくとも水を含有する組成物を意味し、その性状としては、後述する容器に収容可能なものである限り特に限定されず、例えば、液状(溶液又は懸濁液)、半固形状(軟膏)が挙げられる。なお、組成物中の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
水性組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、90~99.99質量%が特に好ましい。
【0047】
水性組成物は、上記した以外に、剤形に応じて、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んでいても良い。このような添加物としては、例えば、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
【0048】
こうした添加物としては、具体的には例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルギン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、イプシロン-アミノカプロン酸、ウイキョウ油、エタノール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エデト酸ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、カルボキシビニルポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d-カンフル、dl-カンフル、キシリトール、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、グリセリン、グルコン酸、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、クレアチニン、クロルヘキシジングルコン酸塩液、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酸化チタン、ジェランガム、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、臭化べンゾドデシニウム、酒石酸、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、D-ソルビトール、ソルビトール液、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、チメロサール、チロキサポール、デヒドロ酢酸ナトリウム、トロメタモール、濃グリセリン、濃縮混合トコフェロール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、濃ベンザルコニウム塩化物液50、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒアルロン酸ナトリウム、人血清アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、氷酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物液、ホウ砂、ホウ酸又はその塩(例えば、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂)、ポビドン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングルコール(70)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、d-ボルネオール、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D-マンニトール、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタンスルホン酸、メチルセルロース、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸、硫酸オキシキノリン、流動パラフィン、リュウノウ、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リンゴ酸、ワセリン等が例示される。
【0049】
添加物としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、グリセリン、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、濃グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ホウ砂、ホウ酸又はその塩、ポビドン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メチルセルロース、モノエタノールアミン、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、ヒアルロン酸ナトリウム、ブドウ糖、l-メントール等が好ましい。
【0050】
水性組成物は、さらに、上記した以外に、適用疾患等に応じて、他の薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;ブリモニジン酒石酸塩などのブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アプラクロニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体作動薬;カルテオロール塩酸塩などのカルテオロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ニプラジロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;ドルゾラミド塩酸塩などのドルゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ブリンゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水酵素阻害剤;イソプロピルウノプロストン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、タフルプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、クロプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フルプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むプロスタグランジンやその誘導体(例えばプロスタグランジンF2α誘導体);リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、Y-39983、H-1129を含むRhoキナーゼ阻害剤;ジピべフリン塩酸塩などのジピべフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交感神経作動薬;ジスチグミン臭化物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ピロカルピン、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカルシウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
他の薬効成分としては、β遮断薬が好ましく、チモロールが好ましい。
【0051】
なお、水性組成物は、上記プロスタグランジンやその誘導体を含まないものでもよい。例えば、一つの態様の水性組成物としては、以下の<A-1>~<A-10>以外のものが好ましい。
<A-1> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、トラボプロスト、ホウ酸、D-マンニトール、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリエチレングリコール400、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-2> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、トラボプロスト、ホウ酸、D-マンニトール、塩化ベンザルコニウム、クレモフォールRH40、ポリエチレングリコール400、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-3> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、トラボプロスト、ホウ酸、D-マンニトール、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリエチレングリコール400、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-4> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、ラタノプロスト、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウム、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-5> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、ラタノプロスト、ホウ酸、D-マンニトール、塩化ベンザルコニウム、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-6> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、ビマトプロスト、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウム、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-7> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、ビマトプロスト、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウム、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-8> (rac)-2-(ジメチルアミノ)-N-(1-ヒドロキシイソキノリン-6-イル)-2-(チオフェン-3-イル)アセトアミド塩酸塩、ビマトプロスト、ホウ酸、D-マンニトール、及び精製水を含む組成物。
<A-9> 2,4-ジメチル安息香酸(S)-4-(3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンジル、トラボプロスト、ホウ酸、D-マンニトール、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリエチレングリコール400、EDTA、及び精製水を含む組成物。
<A-10> 2,4-ジメチル安息香酸(S)-4-(3-アミノ-1-(イソキノリン-6-イルアミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)ベンジル、ラタノプロスト、ホウ酸、D-マンニトール、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリエチレングリコール400、EDTA、及び精製水を含む組成物。
【0052】
水性組成物のpH(25℃)は特に限定されないが、3~9が好ましく、3.5~8がより好ましく、4~7がさらに好ましく、5~6が特に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、0.6~3が好ましく、0.6~2が特に好ましい。
【0053】
本発明の医薬製剤は、ポリエステル系樹脂製容器又はポリオレフィン系樹脂製容器を用いたものである。
本明細書において、「容器」とは、前記水性組成物を直接的に収容する包装体を意味する。容器は、第十七改正日本薬局方 通則に定義される「密閉容器」、「気密容器」、「密封容器」のいずれをも包含する概念である。
【0054】
当該容器の形態は、前記水性組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず、剤形、医薬製剤の用途等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態としては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙げられる。
容器としては、一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用を有利に利用する観点から、点眼剤用容器であるのが好ましい。
【0055】
本明細書において、「ポリエステル系樹脂製容器」とは、容器のうち少なくとも水性組成物と接する部分が「ポリエステル系樹脂製」である容器を意味する。従って、例えば、水性組成物と接する内層にポリエステル系樹脂の層を設け、その外側に他の材質の樹脂等を積層等させてなる容器も、「ポリエステル系樹脂製容器」に該当する。ここで、ポリエステル系樹脂を構成するジカルボン酸、ジオールは特に限定されず、ジカルボン酸としては例えばフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが、ジオールとしては例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどが挙げられる。また、単一種のポリエステル単位の重合体であっても、複数種のポリエステル単位の重合体であってもよい。また、複数種のポリエステル単位の重合体の場合には、その重合様式は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよい。さらに、その立体規則性(タクティシティー)は特に限定されない。
このようなポリエステル系樹脂としては、具体的には例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等)、ポリシクロアルキレンテレフタレート(例えば、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)等)、ポリアリレート(例えば、ビスフェノールとフタル酸で構成された樹脂等)等のホモポリエステルや、これらのホモポリエステル単位を主成分として含むコポリエステル、さらには前記ホモポリエステルの共重合体などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用できる。ポリエステル系樹脂としては、一般式(1)で表される化合物の高温保存時の含量低下を抑制する観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
なお、本明細書において、「ポリエステル系樹脂製」とは、その材質の少なくとも一部にポリエステル系樹脂を含んでいることを意味し、例えば、ポリエステル系樹脂と他の樹脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリエステル系樹脂製」に含まれる。
【0056】
本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂製容器」とは、容器のうち少なくとも水性組成物と接する部分が「ポリオレフィン系樹脂製」である容器を意味する。従って、例えば、水性組成物と接する内層にポリオレフィン系樹脂の層を設け、その外側に他の材質の樹脂等を積層等させてなる容器も、「ポリオレフィン系樹脂製容器」に該当する。ここで、ポリオレフィン系樹脂は特に限定されず、単一種のモノマーの重合体(ホモポリマー)であっても、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、コポリマーである場合においては、その重合様式は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよい。さらに、その立体規則性(タクティシティー)は特に限定されない。
このようなポリオレフィン系樹脂としては、具体的には例えば、ポリエチレン(より詳細には例えば低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用できる。ポリオレフィン系樹脂としては、一般式(1)で表される化合物の高温保存時の含量低下を抑制する観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンが好ましく、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましく、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが特に好ましい。
なお、本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂製」とは、その材質の少なくとも一部にポリオレフィン系樹脂を含んでいることを意味し、例えば、ポリオレフィン系樹脂と他の樹脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリオレフィン系樹脂製」に含まれる。
【0057】
容器には、さらに紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線の透過を妨げる物質を練り込むのが好ましい。これにより、一般式(1)で表される化合物の光に対する安定性が改善される。具体的には例えば、紫外線散乱剤としては、酸化チタン;酸化亜鉛等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(例えば、Tinuvin P:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(例えば、Tinuvin 234:BASF社)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin320:BASF社)、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 326:BASF社)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin327:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(例えば、Tinuvin PA328:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 329:BASF社)、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 360:BASF社)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応生成物(例えば、Tinuvin 213:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(例えば、Tinuvin 571:BASF社)、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5'-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2-ビス{[2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート)(例えば、Uvinul 3030 FF:BASF社)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル(例えば、Uvinul 3035:BASF社)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルへキシル(例えば、Uvinul 3039:BASF社)等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(例えば、Tinuvin 1577 ED:BASF社)等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン(例えば、Chimassorb 81:BASF社)、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン(例えば、Uvinul 3049:BASF社)、2,2'-4,4'-テトラヒドロベンゾフェノン(例えば、Uvinul 3050:BASF社)、オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;グアイアズレン;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル;2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン;パラヒドロキシアニソール;4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン;フェニルベンズイミダゾールスルホン酸;2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0058】
なお、紫外線の透過を妨げる物質を容器に練り込む場合、その配合割合は、当該物質の種類等によって異なるが、例えば、容器中に、0.001~50質量%、好ましくは0.002~25質量%、特に好ましくは0.01~10質量%程度とすればよい。
【0059】
容器は、その内部が肉眼で視認可能(観察可能)であるのが好ましい。内部が視認可能であれば、医薬製剤の製造工程において異物混入の有無等の検査が可能となる、医薬製剤の使用者が内容物(水性組成物)の残量を確認できる等のメリットが生ずる。ここで、視認可能性は、少なくとも容器表面の一部において確保されていればよい(例えば、点眼剤用容器の側面がシュリンクフィルム等により見通せなくなっていても、底面が視認可能であれば視認可能と言える。)。容器表面の一部において内部が視認可能であれば、これにより、容器内の水性組成物が確認可能となる。
【0060】
容器への水性組成物の収容手段は特に限定されず、容器の形態等に従って常法により充填等すればよい。
【0061】
医薬製剤あるいは水性組成物は、例えば、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、種々の剤形とすることができる。剤形としては、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤等が挙げられる。剤形としては、一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用を有利に利用する観点から、眼疾患用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
【0062】
医薬製剤の適用疾患は特に限定されず、一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用等に応じて適宜選択すればよい。
具体的には例えば、一般式(1)で表される化合物の有するRhoキナーゼ阻害作用、ノルエピネフリントランスポーター阻害作用や眼圧低下作用に基づき、高眼圧症や緑内障の予防又は治療剤として利用できる。ここで、緑内障としては、より詳細には例えば、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateau iris syndrome、混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障などが挙げられる。
【0063】
なお、水性組成物や医薬製剤を、眼疾患(好適には、高眼圧症及び緑内障から選ばれる疾患)の予防又は治療剤として利用する場合においては、例えば、1日1~3回程度、適量を投与すればよい。
【0064】
本明細書は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の実施形態を開示する。
[1] 下記の一般式(1)
【0065】
【0066】
(式中、R1とR2はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C4アルキル基を示し、
R3は水素原子又はヒドロキシ基を示し、
Aは-CH(R4)-又は-CH2-CH(R4)-(ここでR4は置換基を有してもよいC6~C10アリール基、又は置換基を有してもよい5~10員のヘテロアリール基を示す。)を示し、
さらに、式(1)には、その互変異性体も含まれる。)
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、ポリエステル系樹脂製容器又はポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[2] 前記一般式(1)で表される化合物が、下記式(2)、(5)、(5')又は(8):
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
で表される化合物である、[1]記載の医薬製剤。
[3] 前記一般式(1)で表される化合物が、下記式(3)又は(6):
【0072】
【0073】
【0074】
で表される化合物である、[1]記載の医薬製剤。
【0075】
[4] 前記一般式(1)で表される化合物が、下記式(4)又は(7):
【0076】
【0077】
【0078】
で表される化合物である、[1]記載の医薬製剤。
【0079】
[5] 前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである、[1]~[4]のいずれか記載の医薬製剤。
[6] 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン又はポリプロピレンである、[1]~[5]のいずれか記載の医薬製剤。
[7] 前記容器が、点眼剤用容器である、[1]~[6]のいずれか記載の医薬製剤。
【0080】
[8] 前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物を、ポリエステル系樹脂製容器又はポリオレフィン系樹脂製容器に収容する工程を含む、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の水性組成物中での熱安定性を向上させる方法(ここで、「熱安定性を向上させる方法」とは、高温で保存した場合の含量低下を抑制する方法を意味する。そして、例えば、同一の水性組成物をガラス製の容器に収容した場合と比較して、高温(例えば、80℃)で一定期間(例えば、1週間)保存した後の含量低下が抑制されていれば、「熱安定性を向上させ」たことになる。)。
[9] 前記一般式(1)で表される化合物が、前記式(2)、(5)、(5')又は(8)で表される化合物である、[8]記載の方法。
[10] 前記一般式(1)で表される化合物が、前記式(3)又は(6)で表される化合物である、[8]記載の方法。
[11] 前記一般式(1)で表される化合物が、前記式(4)又は(7)で表される化合物である、[8]記載の方法。
[12] 前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである、[8]~[11]のいずれか記載の方法。
[13] 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン又はポリプロピレンである、[8]~[12]のいずれか記載の方法。
[14] 前記容器が、点眼剤用容器である、[8]~[13]のいずれか記載の方法。
【実施例0081】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
また、以下の試験例において、HPLCを用いたネタースジルの測定は、カラムとしてODSカラムを、移動相として0.01モル/L リン酸緩衝液とアセトニトリルを、検出器として紫外吸光光度計(波長:254nm)をそれぞれ用いて行った。
【0082】
[試験例1]熱安定性試験
ネタースジルの水性組成物中での熱に対する安定性を、高温条件下で一定期間保存後のネタースジルの含量低下の有無を確認することにより評価した。
すなわち、表1に示す処方の水性組成物を常法により調製した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、低密度ポリエチレン(LDPE)製、高密度ポリエチレン(HDPE)製、又はポリプロピレン(PP)製の容器に入れて、それぞれ実施例1~4の医薬製剤とした。また、別途、同一の水性組成物をガラス製の容器に入れて、比較例の医薬製剤とした。
得られた各医薬製剤を、80℃で1週間保存した。保存後のネタースジルの含量低下の有無を確認するため、各医薬製剤における、保存前後の水性組成物中のネタースジルの濃度を測定した。水性組成物中のネタースジルの濃度は、HPLCを用いて、濃度既知のネタースジル溶液のピーク面積に対する水性組成物中のピーク面積の比率を測定することにより算出した。
そして、得られた水性組成物中のネタースジルの濃度より、以下の式に従い、ネタースジルの残存率(%)を評価した。
【0083】
残存率(%)={(保存後の水性組成物中のネタースジルの濃度)/(保存前の水性組成物中のネタースジルの濃度)}×100
【0084】
結果を表2に示す。
【0085】
【0086】
【0087】
表2記載の結果の通り、ネタースジルを含有する水性組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器(実施例1)、ポリエチレン(LDPE、HDPE)製の容器(実施例2、3)、ポリプロピレン(PP)製の容器(実施例4)に収容した場合に、ガラス製の容器(比較例)に収容した場合と比較して相対的に、高温条件下で保存したときの含量低下が抑制されていた。
特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)製又はポリエチレン(LDPE、HDPE)製の容器に収容した場合、含量低下の抑制の度合いは顕著であった。
【0088】
以上の試験例1の結果から、ネタースジルに代表される前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物を、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂製容器、あるいはポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂製容器に収容することによって、高温条件下で保存した場合でも含量低下が相対的に低く抑えられ、保存安定性に優れたものとなることが明らかとなった。
【0089】
[試験例2]吸着試験
ネタースジルのポリエステル系樹脂製容器への吸着の有無を検討するため、ネタースジルを含有する水性組成物にポリエステル系樹脂製の切片を共存させて一定期間保存した後の、水性組成物中のネタースジルの含量低下の有無を確認した。
すなわち、表3に示す水性組成物を常法により調製した後、そのうち5mLをガラス容器に収容し、さらに、水性組成物にポリエチレンテレフタレート(PET)製の樹脂切片3枚(それぞれ、1cm×2cmの大きさ)を浸漬させて、例1の医薬製剤を得た。また、別途、ポリエチレンテレフタレート製の樹脂切片を浸漬させない以外は例1と同様にして、例2の医薬製剤を得た。
得られた各医薬製剤を、60℃で1週間保存した。保存後のネタースジルの含量低下の有無を確認するため、試験例1と同様の方法により、ネタースジルの残存率(%)を評価した。
結果を表3に示す。
【0090】
【0091】
表3記載の結果の通り、例1と例2の対比より、ネタースジルを含有する水性組成物に、ポリエチレンテレフタレート製の樹脂切片を共存させても含量低下は認められなかった。
【0092】
以上の試験結果から、ネタースジルに代表される一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物をポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂製容器に収容しても、高温条件下で吸着等に起因する含量低下は認められず、ポリエステル系樹脂製容器は水性組成物を収容するのに適していることが明らかとなった。
【0093】
[製造例1~36]
表4~表12に記載の成分及び分量(水性組成物100mL当たりの量(g))を含有する水性組成物を常法により調製し、これをポリエチレンテレフタレート製の点眼剤用容器に収容して、製造例1~36の医薬製剤を製造できる。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
[製造例37~72]
製造例1~36において、ポリエチレンテレフタレート製の代わりに高密度ポリエチレン製の点眼剤用容器を用いて、製造例37~72の医薬製剤を製造できる。
【0104】
[製造例73~108]
製造例1~36において、ポリエチレンテレフタレート製の代わりにポリプロピレン製の点眼剤用容器を用いて、製造例73~108の医薬製剤を製造できる。
【0105】
[製造例109~144]
製造例1~36において、ポリエチレンテレフタレート製の代わりに低密度ポリエチレン製の点眼剤用容器を用いて、製造例109~144の医薬製剤を製造できる。
【0106】
[製造例145~288]
製造例1~144において、ネタースジル2メシル酸塩の代わりに、フリー体として0.5gのヴェロスジル1塩酸塩を用いたものを、製造例145~288の医薬製剤として、常法により製造できる。
【0107】
[製造例289~432]
製造例1~144において、ネタースジル2メシル酸塩の代わりに、フリー体として0.7gのヴェロスジル1塩酸塩を用いたものを、製造例289~432の医薬製剤として、常法により製造できる。
【0108】
[製造例433~576]
製造例1~144において、ネタースジル2メシル酸塩の代わりに、0.02gの式(8)で表される化合物を用いたものを、製造例433~576の医薬製剤として、常法により製造できる。