(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160487
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 9/02 20060101AFI20221012BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B01D9/02 602E
B01D9/02 601C
B01D9/02 615Z
B01D9/02 605
B01D9/02 608B
B01D9/02 618A
B01D9/02 622
B01D9/02 604
B01D9/02 603E
B01D9/02 607Z
B01D9/02 609A
B01D9/02 613
B01D9/02 616
B01D9/02 625D
B01D9/02 625Z
C01B25/45 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115836
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2018099984の分割
【原出願日】2018-05-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 昌次郎
(72)【発明者】
【氏名】財前 亜美
(57)【要約】
【課題】短絡流の発生を抑制して反応槽内の流動状態をより均一にすることができ、難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることが可能な被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法を提供する。
【解決手段】通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域11a、11bを備え、被処理液及び被処理液の被除去イオンと反応するイオンを含む液を上向流で通水し、被処理液中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる反応部11と、反応部11の上方に連続し、反応部11で生成した結晶を反応部11へと沈降させて分離する沈降分離部12とを備える反応槽1を備える被処理液の処理装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域を備え、被処理液及び前記被処理液の被除去イオンと反応するイオンを含む液を上向流で通水し、前記被処理液中の前記被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる反応部と、
前記反応部の上方に連続し、前記反応部で生成した前記結晶を前記反応部へと沈降させて分離する沈降分離部と
を備える反応槽を備え、
前記反応部が、
第1の水平断面積を有する第1の反応領域と、
前記第1の反応領域の上方に前記第1の反応領域と連続し、第2の水平断面積を有する第2の反応領域と
を備え、
前記第1の水平断面積が、前記第2の水平断面積よりも小さいと共に、
前記第1の反応領域と前記第2の反応領域との境界部分に設けられたテーパー部分の水平面とのなす角度αが50~75°であることを特徴とする被処理液の処理装置。
【請求項2】
前記第1の水平断面積が、前記第2の水平断面積の0.3~0.8倍であることを含む請求項1に記載の被処理液の処理装置。
【請求項3】
前記反応部を流れる上向流の液の総通水時間をt時間とした場合に、前記第1の反応領域の通水時間が0.1t~0.5t時間であり、前記第1の反応領域と前記第2の反応領域との容積比が0.2~1.0となるように構成されている請求項1又は2に記載の被処理液の処理装置。
【請求項4】
前記反応部が3以上の反応領域を備える場合に、第nの反応領域(nは2以上の整数)の通水速度が、第nの反応領域の下方に位置する第n-1の反応領域の通水速度よりも小さくなるように、各反応領域の水平断面積及び容積が調整されていることを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の被処理液の処理装置。
【請求項5】
前記反応槽が、
前記反応槽内の液の一部を引き抜く引き抜き手段と、
前記反応槽内から引き抜いた液を塔内循環液とし、前記反応槽内に旋回流を発生させるように、前記塔内循環液、前記被処理液及び前記被除去イオンと反応するイオンを含む液を、前記反応槽の下部から前記反応槽の横断面に対して接線方向に供給する複数の供給管と
を更に備える請求項1~4のいずれか1項に記載の被処理液の処理装置。
【請求項6】
前記引き抜き手段が、前記沈降分離部の最下端又は前記最下端から上方に向かって3割以内の高さに接続されていることを含む請求項5に記載の被処理液の処理装置。
【請求項7】
前記反応槽を2以上備え、第1の反応槽で得られた前記難溶性塩の結晶を第2の反応槽以降の反応槽へ導入し、前記第2の反応槽以降の反応槽で得られる難溶性塩の結晶を前記第1の反応槽へ返送することを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の被処理液の処理装置。
【請求項8】
前記反応槽を2以上備え、第1の反応槽で得られた前記難溶性塩の結晶を前記反応槽の外部又は他の反応槽内へ供給可能なエアリフト管を備えることを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の被処理液の処理装置。
【請求項9】
通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域を備える反応部及び前記反応部の上方に連続する沈降分離部を備える反応槽であって、前記反応部が、第1の水平断面積を有する筒状の第1の反応領域と、前記第1の反応領域の上方に前記第1の反応領域と連続し、第2の水平断面積を有する筒状の第2の反応領域とを備え、前記第1の水平断面積が、前記第2の水平断面積よりも小さいと共に、前記第1の反応領域と前記第2の反応領域との境界部分に設けられたテーパー部分の水平面とのなす角度αが50~75°である前記反応槽に、被処理液及び前記被処理液の被除去イオンと反応するイオンを含む液を上向流で通水し、前記被処理液中の前記被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させることを含む被処理液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法に関し、特に、被処理液中に含まれるリンなどの被除去イオンを晶析反応により析出させて除去するための被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸イオンを含有する被処理物とマグネシウム化合物とを反応させて、被処理物中のリンをリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)結晶の固体粒子として回収するための反応槽が知られている。
【0003】
例えば、特開2016-175083号公報(特許文献1)には、反応塔の内部に筒状の反応筒体を設けた二重筒構造を備え、上向流となっている内筒部へ被処理液を投入し、反応筒体上部から注入されるマグネシウム塩及びアルカリ剤とともに被処理液を循環させることにより、反応塔内でMAP結晶を造粒することが記載されている。
【0004】
特許第4101506号公報(特許文献2)には、流動層式晶析反応槽の下部から被処理水、被除去イオンと反応するイオン(ここではマグネシウムイオン)を含む液及び処理水の一部の循環水を供給し、被処理水中の被除去イオンを除去する構造が記載されている。
【0005】
特開平11-267665号公報(特許文献3)では、原水を反応塔下部へ導入し、処理水を反応槽上部より取り出すとともに、循環手段により反応塔の上部から処理水の一部を反応塔の下部へ循環させる脱リン装置において、反応塔の下部に反応塔の水平断面積よりも小さい水平断面積を有した貯留部を設け、貯留部に対し、循環手段により水を循環させるようにした脱リン装置の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-175083号公報
【特許文献2】特許第4101506号公報
【特許文献3】特開平11-267665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される反応槽を用いた場合は、被処理液とマグネシウム塩及びアルカリ剤の適正な混合が難しい。混合状態を良好にするために上向流流速を上げると未反応の被処理水が外部へ流出することが懸念される。
【0008】
特許文献2に記載された発明は流動層式晶析反応槽に被処理水および被除去イオンと反応するイオンを含む液(ここではマグネシウムイオンを含む液)および処理水の一部の循環水を供給する構造となっている。被処理水と被除去イオンと反応するイオンを含む液がともに反応槽下部から流入され、結晶粒子を流動させながら結晶粒子表面でMAPを結晶化させるため、被処理水とマグネシウムイオンを含む液が混合されやすく、被処理水が未反応のまま流出するというリスクを低減できる。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されるような反応槽を用いた場合、被処理水と被除去イオンと反応するイオンを含む液とが反応槽内に供給された直後に混合されるため、結晶が回収に適した大きさまで成長できずに微細な粒子のまま装置外部へ流出する懸念がある。また、反応槽において結晶粒子が適切に流動しないと結晶粒子同士が固着し、被処理水と被除去イオンと反応するイオンを含む液が粒子表面で反応できずに短絡流として反応槽外に流出する懸念もある。
【0010】
特許文献3に記載された発明では、反応槽の底部にある貯留部に対して処理水の一部を循環することにより、貯留されたMAP粒子が固形化して反応塔の底部から引き抜きやすくすることが記載又は示唆されているが、特許文献1と同じで、そもそもこの方式は被処理液とマグネシウム塩及びアルカリ剤の適正な混合が難しく、混合のために上向流の流速を上げると未反応の被処理液が流出する場合がある。
【0011】
上記課題を鑑み、本発明は、短絡流の発生を抑制して反応槽内の流動状態をより均一にすることができ、難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることが可能な被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域を設けるように、反応部を多段に形成することが有効であるとの知見を得た。
【0013】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は一側面において、通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域を備え、被処理液及び被処理液の被除去イオンと反応するイオンを含む液を上向流で通水し、被処理液中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる反応部と、反応部の上方に連続し、反応部で生成した結晶を反応部へと沈降させて分離する沈降分離部とを備える反応槽を備える被処理液の処理装置である。
【0014】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は一実施態様において、反応部が、第1の水平断面積を有する第1の反応領域と、第1の反応領域の上方に第1の反応領域と連続し、第2の水平断面積を有する第2の反応領域とを備え、第1の水平断面積が、第2の水平断面積の0.3~0.8倍であることを含む。
【0015】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は別の一実施態様において、反応部を流れる上向流の液の総通水時間をt時間とした場合に、第1の反応領域の通水時間が0.1t~0.5t時間であり、第1の反応領域と第2の反応領域との容積比が0.2~1.0となるように構成されている。
【0016】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は更に別の一実施態様において、第1の反応領域の上向流の液の通水速度が30~70m/hであり、第2の反応領域の上向流の液の通水速度が10~50m/hであることを含む。
【0017】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は更に別の一実施態様において、反応部が3以上の反応領域を備える場合に、第nの反応領域(nは2以上の整数)の通水速度が、第nの反応領域の下方に位置する第n-1の反応領域の通水速度よりも小さくなるように、各反応領域の水平断面積及び容積が調整されていることを含む。
【0018】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は更に別の一実施態様において、反応槽が、反応槽内の液の一部を引き抜く引き抜き手段と、反応槽内から引き抜いた液を塔内循環液とし、反応槽内に旋回流を発生させるように、塔内循環液、被処理液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を、反応槽の下部から反応槽の横断面に対して接線方向に供給する複数の供給管とを更に備える。
【0019】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は更に別の一実施態様において、引き抜き手段が、沈降分離部の最下端又は最下端から上方に向かって3割以内の高さに接続されていることを含む。
【0020】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は更に別の一実施態様において、反応槽を2以上備え、第1の反応槽で得られた難溶性塩の結晶を第2の反応槽以降の反応槽へ導入し、第2の反応槽以降の反応槽で得られる難溶性塩の結晶を第1の反応槽へ返送することを含む。
【0021】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置は更に別の一実施態様において、反応槽を2以上備え、第1の反応槽で得られた難溶性塩の結晶を反応槽の外部又は他の反応槽内へ供給可能なエアリフト管を備えることを含む。
【0022】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理方法は一側面において、通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域を備える反応部及び反応部の上方に連続する沈降分離部を備える反応槽において、被処理液及び被処理液の被除去イオンと反応するイオンを含む液を上向流で通水し、被処理液中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させることを含む被処理液の処理方法である。
【0023】
本発明の実施の形態に係る被処理液の処理方法は一実施態様において、反応槽内の液の一部を引き抜くことと、反応槽内から引き抜いた液を塔内循環液とし、反応槽内に旋回流を発生させるように、塔内循環液、被処理液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を、反応槽の下部から反応槽の横断面に対して接線方向に供給することとを更に含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、短絡流の発生を抑制して反応槽内の流動状態をより均一にすることができ、難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることが可能な被処理液の処理装置及び被処理液の処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る被処理液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図2】塔内循環液、被処理液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を供給する供給管の接続位置を説明する断面概略図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る被処理液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態に係る被処理液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図6】
図5に示す処理装置における塔内循環液、被処理液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を供給する供給管の接続位置を説明する断面概略図である。
【
図7】従来の供給管の反応槽への接続位置を説明する断面概略図である。
【
図8】本発明の第4の実施の形態に係る被処理液の処理装置の一例を示す概略図である。
【
図9】本発明の第5の実施の形態に係る被処理液の処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る被処理液2の処理装置は、通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域11a、11bを備え、被処理液2及び被処理液2の被除去イオンと反応するイオンを含む液を上向流で通水し、被処理液2中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる反応部11と、反応部11の上方に連続し、反応部11で生成した結晶を反応部11へと沈降させて分離する沈降分離部12とを備える反応槽1を備える。
【0028】
反応槽1は、被処理液2を上向流で通水し、反応槽1内で流動する粒子と接触させることにより、被処理液2中の被除去イオンを難溶性塩の結晶として析出させる反応槽を利用することができ、例えば、被処理液を上向流で通水する流動層方式の晶析反応槽が好適に用いられる。反応槽1における晶析反応によって、被処理液2中に含まれる所望の被除去イオン、例えば、リン酸イオン、カルシウムイオン、フッ素イオン、炭酸イオン、硫酸イオン等が除去される。
【0029】
反応槽1内には、被除去イオンをその表面で結晶化させるための粒子(種晶)及び被除去イオンと反応するためのイオンを含む薬剤が装入され、図示しないpH計などにより、反応槽1内が晶析反応に好適な条件に維持されている。難溶性塩の結晶は、反応部11の上方の沈降分離部12において沈降分離され、反応部11の底部に接続された配管24を介して外部へ排出することができる。
【0030】
図1に示すように、反応槽1は反応部11よりも沈降分離部12の水平断面積が大きくなるように形成された多段の円筒形状を有している。反応部11は、第1の水平断面積を有する円筒形の第1の反応領域11aと、第1の反応領域11aの上方に第1の反応領域11aと連続し、第2の水平断面積を有する第2の反応領域11bとを備える。
【0031】
第1の水平断面積は、第2の水平断面積よりも小さくなるように構成されており、第1の水平断面積が第2の水平断面積の0.3~0.8倍であることが好ましい。第1の水平断面積が第2の水平断面積よりも小さくなるように構成されることにより、第1の反応領域11a及び第2の反応領域11bの通水速度を変化させることができる。
【0032】
反応部11において通水速度の異なる複数の反応領域11a、11bを配置することにより、短絡流の発生を抑制して反応槽内の流動状態をより均一にすることができ、難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることが可能となる。一実施態様では、第1の水平断面積は、第2の水平断面積の0.4~0.7倍程度とすることができ、別の一実施態様では、第1の水平断面積は、第2の水平断面積の0.5~0.6倍程度とすることができる。
【0033】
図1の例では、第1の反応領域11aは、反応槽1の上部へ向けてその断面積が次第に大きくなるテーパー部分とテーパー部分に連続する円管状の管状部分を備える。第2の反応領域11bは、第1の反応領域11aの管状部分と連続し、反応槽1の上部に向けてその断面積が次第に大きくなるテーパー部分とテーパー部分に連続する円管状の管状部分とを備える。本実施形態において「水平断面積」とは円管状の管状部分の水平方向の円の断面積のことを指す。
【0034】
第1の反応領域11aと第1の反応領域11aと第2の反応領域11bとの境界部分に設けられたテーパー部分の水平面とのなす角度αは30~75°とすることが好ましく、より好ましくは50~70°であり、更に好ましくは約60°である。
【0035】
更に、反応部11を流れる上向流の液の総通水時間をt時間とした場合に、第1の反応領域11aの通水時間が0.1t~0.5t時間であり、第1の反応領域11aと第2の反応領域11bとの容積比が0.2~1.0となるように構成されることが好ましい。
【0036】
なお、第1の反応領域11aと第2の反応領域11bの高さを同一とした場合、第2の反応領域11bに対する第1の反応領域11aの水平断面積比を0.3~0.8倍とすると、第1の反応領域11aと第2の反応領域11bの通水速度を晶析に適切な速度とすることができ、反応槽1内の流動状態をより均一にして難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることができる。この場合の第2の反応領域11bに対する第1の反応領域11aの容積比は、0.3~0.8となる。実際は、第2の反応領域11bの高さを第1の反応領域11aの高さよりも若干高くするなどして、第1の反応領域11a及び第2の反応領域11bをそれぞれ異なる高さになるように反応部11を形成する態様もまた好ましい。よって、第2の反応領域11bに対する第1の反応領域11aの容積比は、0.2~1.0となるように構成されることが好ましい。
【0037】
具体的には、第1の反応領域11aの上向流の液の通水速度が30~70m/hであり、第2の反応領域11bの上向流の液の通水速度が10~50m/hとなるように調整されることが好ましい。
【0038】
図3に示すように、反応部11が備える反応領域11a・・・11n-1、11nの数は必要に応じて3以上設けることができる。反応部11が3以上の反応領域11a・・・11n-1、11nを備える場合には、第nの反応領域(nは2以上の整数)11nの通水速度が、第nの反応領域の下方に位置する第n-1の反応領域11n-1の通水速度よりも小さくなるように、各反応領域11a・・・11n-1、11nの水平断面積及び容積が調整されていることが好ましい。
【0039】
反応槽1は、反応槽1内の液の一部を引き抜く引き抜き手段16と、反応槽1内から引き抜いた液を塔内循環液とし、反応槽1内に旋回流を発生させるように、塔内循環液、被処理液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を、反応槽1の下部から反応槽1の横断面に対して接線方向に供給する複数の供給管21、22、23とを更に備えることが好ましい。ここで「塔内循環液」とは、反応槽1から引き抜かれた液を直接、反応槽1へと戻す態様を表す。なお、必要に応じて、塔内循環液に対して、pH調整剤5等の薬剤を添加してもよい。
【0040】
引き抜き手段16は、沈降分離部12の最下端Bとなる反応部11の管状部分と沈降分離部のテーパー部分の境界部分、又は沈降分離部12の最下端Bを0%、最上端Tを100%とした場合に、最下端Bから反応槽1の上方に向かって3割(30%)以内の高さに接続されることが好ましい。このような位置に引き抜き手段16が接続されることにより、引き抜き手段16が、晶析反応はほぼ完了しているが、晶析反応で得られた難溶性の結晶の沈降分離が完了していない処理水を塔内循環水として引き抜くことができる。このような処理水を塔内循環水として用いることで、反応槽1下部の晶析反応を阻害することなく、且つ反応槽1下部の通水速度を増大させることができるようになる。
【0041】
引き抜き手段16は、沈降分離部12の最下端B又は最下端Bから上方に向かって3割以内の高さから反応槽1内の液(処理水)をポンプ61により引き抜くように構成されている。引き抜き手段16の引き抜き位置を適切にすることにより、塔内循環液の循環流量を大きくしても沈降分離部12を大きく変更することなく、反応槽1の上部から未反応の被処理液及び微細な結晶粒子の装置外部への流出を抑制でき、且つ難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることができる。
【0042】
引き抜き手段16による処理水の引き抜き位置が低すぎると、反応部11に挿入された種晶を引き抜いてしまい、引き抜き手段16ないしポンプ61に閉塞等のトラブルを起こす懸念が生じる場合がある。一方、引き抜き手段16による処理水の引き抜き位置が高すぎると、沈降分離部12に昇向する流量が増加し、それらを最適に沈降分離するために沈降分離部12の形状を大きくする必要があり、装置コストの増大に繋がる懸念が生じる場合がある。引き抜き手段16による処理水の引き抜き位置は、沈降分離部12の最下端Bから20%の範囲の高さに接続されていることがより好ましく、沈降分離部12の最下端Bの高さとすることが更に好ましい。
【0043】
反応槽1の反応部11の第1の反応領域11aの下部には、複数の供給管21、22が接続されている。
図2の例では、塔内循環液、被処理液2及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を反応槽1内へ供給するために3本の供給管21、22、23が反応槽1の下部に接続されており、旋回流の上流側から順に供給管21、供給管22、供給管23が接続されている。塔内循環液、被処理液2及び被除去イオンと反応するイオンを含む液は、流速の大きい液から順に旋回流の上流側の供給管21、22、23へと接続されるようになっている。
【0044】
塔内循環液、被処理液2及び被除去イオンと反応するイオンを含む液のうち、流速の大きい液から順に旋回流の上流側の供給管21、22、23へ接続されることにより、旋回流の流れをより長時間持続させることができ、反応槽1の反応部11内を流動する粒子をより均一に流動させることができる。
【0045】
供給管21、22、23は反応槽1に対してそれぞれ水平方向に実質的に同一な高さに接続されているが、多少上下にずれて接続されていても構わない。供給管21、22、23は、反応部11のテーパー部分に沈積する粗大な粒子を流動させることができるような位置に配置されていることが好ましい。これにより、反応部11の底部の粒子を流動させて粒子同士の固着を抑制することができる。
【0046】
塔内循環液、被処理液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液の流速の合計は、供給管21、22、23が接続された反応槽1の水平断面CS(
図2参照)の外周の長さ(全長)よりも大きくなるように、各流速が調整されることが好ましい。反応槽1内に0.2~1.0mmの粒子を流動させた場合において塔内循環液、被処理液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を反応槽1内に水平方向に供給した場合、その水平方向の流れが失速して液流が上向流になる時間は、およそ0.1~0.3秒である。
【0047】
反応槽1下部の水平方向の液流の失速時間を考慮すると、塔内循環液、被処理液2及び被除去イオンと反応するイオンを含む液の流速の合計が、水平断面CSの外周の長さよりも大きくなるように、より好ましくは1~8倍、別の態様では1~2倍、更に別の態様では4倍~6倍となるように、各液の流速を調整することが好ましい。これにより、反応槽1内の液及び粒子が流動しないデッドゾーンを発生させることなく、より均一な流動状態を達成することができ、難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させ、被処理液中の被除去イオンの除去率を向上させることが可能となる。
【0048】
3本の供給管21、22、23は、それぞれ近接して配置されることが好ましい。以下に限定されるものではないが、旋回流の最も下流側に配置される供給管21の液の流入方向Xと、旋回流の最も上流側に配置される供給管23の液の流入方向Yとが、
図2の実線で示される供給管21の場合のように180°異なるか、或いは、
図2の点線で示される供給管21の場合のように、旋回流の最も下流側に配置される供給管21の液の流入方向Xと、Xから半時計方向側に配置した供給管23の液の流入方向Yとのなす角度θが180°以下であることが好ましく、より好ましくは150°以下であり、更に好ましくは120°以下、更には100°以下となるように、供給管21、22、23が互いに近接して配置されることが好ましい。供給管21、22、23を互いに近接させて配置することにより、各液の流入部分近傍において反応槽1の横断面の外周に沿って強い旋回流を発生させることができ、反応槽1内の液及び粒子が流動しないデッドゾーンを発生させることなく、より均一な流動状態を達成することができる。
【0049】
被除去イオンと反応するイオンを含む液は、処理槽3内で調整されて、ポンプ62を介して供給管21、22、23(
図1では供給管22)から反応槽1内へ供給される。処理槽3内には被除去イオンと反応するイオン4、例えば、反応槽1内で被処理液中のリンを除去したい場合には、マグネシウムイオンが図示しない添加手段を介して添加される。マグネシウムイオンは水酸化マグネシウム又は塩化マグネシウムとして添加することが好ましい。また、反応槽1内の液のpHを調整するためのpH調整剤5が図示しない添加手段を介して添加される。pH調整剤5は、被処理液2中に添加してもよいし、塔内循環液中に添加することもできる。
【0050】
図示していないが、反応槽1の下部へ気体を供給し、反応槽1の下部に沈降した難溶性塩の結晶からなる粒子を流動させることもまた可能である。粒径の大きな粒子は、沈降しやすく流動しにくいため、被処理水、塔内循環液及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を反応槽1の下部へ供給するだけでは、旋回流が十分得られない場合も考えられるため、反応槽1の下部から例えば圧縮空気などの気体を供給することで、反応槽1内に適切な旋回流及び粒子及び液の流動状態を作り出すことが容易になる。
【0051】
従来の晶析反応槽においては、
図7に示すように、供給管211、221の反応槽1への接続位置が、反応槽1の高さ方向に垂直な断面に沿った円形状の反応槽断面の接線方向に対して垂直になるように接続されていた。そのため、従来の晶析反応槽内へ供給される液体は、晶析反応槽内部に供給された直後に混合され、微細な粒子が生成され、この微細な粒子が槽内部の上向流に乗って晶析反応槽の外部へ排出される場合があった。
【0052】
更に、従来の晶析反応槽においては、被処理水と被除去イオンと反応するイオンを含む液と晶析反応槽で処理された処理水(上澄液)を、反応槽1への循環水として反応槽1の下部より流入させ、反応槽1内が晶析に適したイオン積となるように希釈させるような手法をとってきた。
【0053】
しかしながら、上澄液の循環水量を多くすると、沈降分離部12において粒子の沈降処理が完全に終了していない処理水を引き抜いてしまう場合があり、結晶粒子の回収効率を十分に高くできない場合がある。一方で、沈降分離部12において粒子の沈降処理を完全に終了させることにより得られた上澄液を用いるとともに反応槽1の下部に旋回流を生じさせる程度の循環水量を確保するためには、沈降分離部12の容積を大きくしなければならないため、装置が大型化する。そのため、上澄液を反応槽1の下部に循環させるだけでは、反応槽1の下部を適切に流動させることが困難である。
【0054】
本発明の第1の実施の形態に係る被処理液の処理方法及び処理装置によれば、水平断面積及び通水速度が異なる少なくとも2以上の反応領域11a、11bで晶析反応を進行させることにより、反応槽1の上部から未反応の被処理液及び微細な粒子の流出を抑制しながら、粒子を適正な大きさに成長させることができる。
【0055】
更には、反応槽1内から引き抜き手段16を介して反応槽1内の液を引き抜くとともに、引き抜いた液を塔内循環液とし、反応槽1内に旋回流を発生させるように、塔内循環液、被処理液2及び被除去イオンと反応するイオンを含む液を、反応槽1の下部から反応槽1の横断面に対して接線方向に供給する。これにより、反応槽1の反応部11により確実に旋回流を発生させて反応槽1の反応部11の液及び流動する粒子の流動状態を均一にすることができる。
【0056】
更に、引き抜き手段16によって、特に反応槽1の晶析反応が進行する反応部11の直ぐ上方にある沈降分離部12の最下端B付近の処理水を引き抜くことによって、反応槽1の反応部11における粒子の均一な流動に必要な上向流の線速度(LV)を確保することができる。これにより、反応部11で生成される難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることができ、被処理液中の被除去イオンの除去率を向上させることができる。
【0057】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る被処理液の処理装置は、
図4に示すように、沈降分離部12の上方から得られた上澄液を処理槽3へ循環させる循環手段25を更に備える点が、
図1に示す処理装置と異なる。他は
図1の処理装置と実質的に同様であるので記載を省略する。
【0058】
循環手段25により循環された上澄液の一部は処理槽3に供給され、ポンプ62を介して供給管21、22、23を介して反応槽1の下部へ再供給される。第2の実施の形態に係る被処理液の処理装置及び処理方法によれば、上澄液を用いて被除去イオンと反応するイオンを含む液を希釈することができるため、被処理液2のリン濃度が高い場合などには処理槽3で希釈液を作製して反応槽1へ供給することができるため、希釈水を新たに追加せずに処理を進めることができる。また、上澄液中に残存する未反応の被除去イオンをより確実に反応槽1内において除去することができるため、被除去イオンの回収効率が更に高まる。
【0059】
処理槽3内に希釈水として供給される上澄液は、沈降分離部12において粒子の沈降処理がほぼ完全に終了しているため、反応槽1の下部へ旋回流を発生させるための循環水として利用することもできる。しかしながら、希釈水として供給される上澄液を処理槽3から反応部11へ循環させるだけでは、反応部11の下部に旋回流を発生させるためのLVを確保することは困難な場合がある。反応部11の下部に旋回流を発生させるのに十分なLVを上澄液で補うためには、希釈水として必要な量以上の上澄液を供給することが必要であり、すなわち沈降分離部12の大きさを大きくする必要があるが、装置が大型化し、かつ安定した沈降分離ができない場合がある。
【0060】
本発明の第2の実施の形態に係る被処理液の処理装置では、晶析反応は完了しているが沈降分離が未完了の処理水を引き抜き手段16によって引き抜いて塔内循環水として反応部11へ循環させるとともに、更に、循環手段25により循環された上澄液を処理槽3において被除去イオンと反応するイオンを含む液と混合し、その混合液を、ポンプ62を介して供給管21、22、23を介して反応槽1の下部へ再供給する。
【0061】
これにより、沈降分離部12の大型化を図ることなく反応部11のLVをより確実に確保することができ、沈降分離部12における処理水の沈降分離処理も安定的に行うことができる。なお、反応部11へ循環させる塔内循環水と、反応部11へ循環させる上記の上澄液を含めた被除去イオンと反応するイオンを含む液の供給量は、体積比で9:1~6:4となるように、より好ましくは9:1~7:3となるように調節して反応部11の下部へ供給することが好ましい。
【0062】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る被処理液の処理装置は、
図5に示すように、引き抜き手段16が被処理液2を反応槽1へ供給する管に接続されており、引き抜き手段16により引き抜かれた塔内循環液を、反応槽1内に流入させる前に被処理液2と合流させることができるような構成になっている点が、
図4に示す処理装置と異なる。他は
図4の処理装置と実質的に同様であるので記載を省略する。
【0063】
第3の実施の形態に係る被処理液の処理装置及び処理方法によれば、
図6に示すように、反応槽1へ供給する供給管21、22は2本で済むため、供給管21、22の数を少なくして装置の小型化及び簡略化を図ることができる。
図6の例では、供給管21、22の供給方向が約180°異なる例を示しているが、反応槽1内でより大きい旋回流を確実に発生させるためには
図2に示すように、供給管21、22を互いに近接させて配置してもよいことは勿論である。
【0064】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る被処理液の処理装置は、
図8に示すように、反応槽1を2槽以上備える点が、
図1~
図5に示す処理装置と異なる。即ち、
図8に示す処理装置は、2槽の反応槽1、7を備え、反応槽1(第1の反応槽)で得られた難溶性塩の結晶からなる粒子を反応槽7(第2の反応槽)へ導入し、反応槽7で得られる難溶性塩の結晶からなる粒子を反応槽1へ返送することができる。
【0065】
反応槽7は、反応槽1と実質的に同様の構成を備えることができる。反応槽7の下部には、被処理液2と塔内循環液と被除去イオンと反応するイオンを含む液を供給するための供給管71、72を備えることができる。これら供給管71、72も、反応槽7の横断面に対して接線方向に接続されており、反応槽7の横断面に対して接線方向に被処理液2と塔内循環液と被除去イオンと反応するイオンを含む液を供給することができる。
【0066】
反応槽7にも反応槽7の反応部からの処理水を引き抜くための引き抜き手段76が設けられている。ポンプ81を介して引き抜かれた処理水が、塔内循環水として反応槽7の下部から供給される。
【0067】
反応槽7の上澄液は配管75を介して処理槽3へ供給されることができる。処理槽3では被除去イオンと反応するイオン4が添加されて、配管35を介して反応槽1、7の下部から反応槽1、7へ供給される。処理槽3で沈降した結晶粒子は配管34を介して反応槽7へ返送することができる。反応槽7で得られた結晶粒子は配管74を介して反応槽1へ供給することができる。第4の実施の形態に係る被処理液の処理装置及び処理方法によれば、反応槽1、7を2槽以上配置することにより、被除去イオンの除去率をより向上させることができる。
【0068】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る被処理液の処理装置は、
図9に示すように、反応槽1、7にそれぞれ各反応槽1、7で得られる粒子を反応槽1、7の外部へ排出可能なエアリフト管50a、50bがそれぞれ配置されている。
【0069】
エアリフト管50a、50bは、エアリフト管50a、50bを洗浄するための洗浄水を受け入れる洗浄水受入部52a、52bと、洗浄水受入部52a、52bよりも下部に設けられたバルブと51a、51bと、洗浄水受入部よりも上部に設けられた気泡分離部53a、53bと、気泡分離部53a、53bに接続され、気泡分離部53a、53bにおいて気泡が分離された粒子を含む液体を反応槽1、7の外部へ排出するスラリー排出部54a、54bとを備える。
【0070】
洗浄水受入部52a、52bには循環水返送管39が接続され、反応槽1、7の処理水の一部の循環水を洗浄水として利用することが可能である。或いは、洗浄水受入部52a、52bから清水を供給し、この洗浄水として供給するようにしてもよい。エアリフト管50bは、反応槽7で得られる粒子を反応槽1内へ供給することができる。エアリフト管50aは、反応槽1で得られる粒子を反応槽1の外部へ排出することができる。
【0071】
図9に示す被処理液の処理装置及び処理方法によれば、微細な結晶粒子の装置外部への流出を更に抑制することが更に可能となり、装置の洗浄及びメンテナンス作業も容易になる。
【0072】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明の実施の形態に係る被処理液の処理装置及び処理方法は本開示から種々の変形を加えることが可能であり、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲において変形し具体化し得るものである。
【実施例0073】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0074】
(実施例1)
図1に示す反応槽1を模した流動層方式の模擬晶析反応槽において、第1の反応領域11aの管状部分の水平断面積(1段目断面積)、直径及び容積、第2の反応領域11bの管状部分の水平断面積(2段目断面積)、直径及び容積を、表1に示すように変更した反応槽を用いて、沈殿分離部の最下端部に引き抜き手段を接続して模擬晶析反応槽内から引き抜いた処理水を塔内循環液とし、リンを含む被処理液を処理した。
【0075】
処理槽3内でマグネシウムイオンとpH調整剤を添加して、模擬晶析反応槽への供給に適切な液を作製し、0.2~1.0mmのリン酸マグネシウムアンモニウムの結晶粒子が流動する模擬晶析反応槽の側面下部から被処理液、マグネシウムイオンを含む液、及び塔内循環液をその流速の和が20m/hになるようにして、それぞれ接線方向に供給したところ、いずれも短絡流の発生は見られず、難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることが可能であった。
【0076】
【0077】
(実施例2)
図1に示す反応槽1を模した流動層方式の模擬晶析反応槽において、第1の反応領域11aと第2の反応領域11bの上向流の液の通水速度とが、表2に示すような関係となるように、第1の反応領域11aと第2の反応領域11bの容積及び水平断面積を調整して、実施例1と同様に、沈殿分離部の最下端部に引き抜き手段を接続して模擬晶析反応槽内から引き抜いた処理水を塔内循環液とし、リンを含む被処理液を処理した。
【0078】
【0079】
第1の反応領域の液の通水速度を30~70m/hで通水し、第2の反応領域の液の通水速度を10~50m/hで通水したところ、いずれの場合も短絡流の発生は見られず、難溶性塩の結晶粒子を回収に適した大きさにまで成長させることが可能であった。