(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160564
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】リンパ指向性プロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07C 69/40 20060101AFI20221012BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20221012BHJP
C07C 271/30 20060101ALI20221012BHJP
C07C 205/42 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/568 20060101ALI20221012BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221012BHJP
C07D 307/88 20060101ALI20221012BHJP
C07D 489/02 20060101ALI20221012BHJP
C07J 1/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20221012BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20221012BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221012BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221012BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20221012BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221012BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20221012BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20221012BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
C07C69/40
C07F7/18 J CSP
C07C271/30
C07C205/42
A61K31/365
A61K31/485
A61K31/568
A61K45/00
C07D307/88
C07D489/02
C07J1/00
A61P7/06
A61P7/10
A61P11/00
A61P31/18
A61P35/00
A61P37/08
A61P43/00 111
A61P15/00
A61P9/04
A61P37/06
A61P17/04
A61K47/54
A61K31/135
A61K31/192
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124051
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2018530942の分割
【原出願日】2016-09-08
(31)【優先権主張番号】2015903661
(32)【優先日】2015-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】501249191
【氏名又は名称】モナッシュ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,クリス
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】トレバスキス,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】コーク,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】フー,ルオジュアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬剤のリンパ系への輸送を促進し、続いて親薬物の放出を増進する化合物およびそれらの使用、特にプロドラッグの形態の化合物を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
[R
1及びR
2は、独立して、HまたはC
2~C
28脂肪酸の残基;-X-は、-O-、-NH-等;
は、薬剤の残基;-L-は、-OC(O)-等;-Y-は、置換/非置換の-C
1~C
20アルキルC(O)OCH
2-等である]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、独立して、HまたはC
2~C
28脂肪酸の残基を表し、
-X-は、-O-、-NH-、および-S-から選択され、
【化2】
は、薬剤の残基を表し、
-L-は、-OC(O)-または-X’-であり、
-Y-は、-L-が-OC(O)-である場合、置換されていてもよい-C
1~C
20アルキルC(O)OCH
2-、-C
2~C
20アルケニルC(O)OCH
2-、または-C
2~C
20アルキニルC(O)OCH
2-基を表し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基の炭素原子のうちの1個または複数は、NH、S、O、C
5~C
8芳香族もしくは脂肪族の環状基、またはC
5~C
8芳香族もしくは脂肪族の複素環基で置き換えられていてもよく(但し、前記アルキル、アルケニル、またはアルキニル基が、直鎖C
20アルキル基に等しい長さを上回らないことを条件とする)、または
-Y-は、-L-が-X’-である場合、置換されていてもよい-C
1~C
2アルキルC(O)R
3-基、または-C
2アルケニルC(O)R
3-、または-C
2アルキニルC(O)R
3-基を表し、
R
3は、自壊性基であり、
X’は、O、S、N(R
4)、またはN(H)S(O)
2であり、
R
4は、HまたはC
1~C
4アルキルである]、または
薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
R
3は、
【化3】
[式中、
【化4】
は、前記薬剤の残基および前記-Y-基との結合点を示す]
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(II)によって表される、請求項1に記載の化合物:
【化5】
[式中、
R
1、R
2、および-X-は、請求項1において定義された通りであり、
R
3は、自壊性基であり、
【化6】
は、薬剤の残基を表し、
-L-は、-X’-であり、
X’は、O、S、N(R
4)、またはN(H)S(O)
2であり、
R
4は、HまたはC
1~C
4アルキルであり、
R
5は、水素およびC
1~C
4アルキルから選択される]、または
薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
式(III)によって表される、請求項1に記載の化合物:
【化7】
[式中、
R
1、R
2、および-X-は、請求項3において定義された通りであり、
R
3は、自壊性基であり、
【化8】
は、薬剤の残基を表し、
-L-は、-X’-であり、
X’は、O、S、N(R
4)、またはN(H)S(O)
2であり、
R
4は、HまたはC
1~C
4アルキルであり、
R
5およびR
6は、水素およびC
1~C
4アルキルから個別に選択される]、または
薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
式(IV)によって表される、請求項1に記載の化合物:
【化9】
[式中、
R
1、R
2、および-X-は、請求項3において定義された通りであり、
【化10】
は、薬剤の残基を表し、
R
5およびR
6は、水素およびC
1~C
4アルキルから個別に選択され、
R
7は、水素またはC
1~C
4アルキルであり、
nは、0~18である]、または
薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
前記薬剤は、50%を超える初回通過代謝率を呈するものであるか、または経口投与後に高度に変動する初回通過代謝率を有するものである、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記薬剤は、テストステロン、ミコフェノール酸、エストロゲン(エストロゲン)、オピエート、例えばモルヒネ、テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオール、メトプロロール、ラロキシフェン、アルファキソロン、スタチン、例えばアトルバスタチン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、プロプラノロール、L-DOPA、リドカイン、クロルプロマジン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、オクスプレノロール、ラベタロール、サルブタモール、エピチオスタノール、メルファラン、またはロバスタチンから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記薬剤は、テストステロンであり、前記化合物は、式(V)によって表される、請求項7に記載の化合物:
【化11】
[式中、R
1、R
2、および-X-は、請求項1において定義された通りであり、
R
5およびR
6は、水素およびC
1~C
4アルキルから個別に選択され、
R
3は、自壊性基である]、または
薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
R5はメチルであり、R6は水素である、請求項4から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R5は水素であり、R6はメチルである、請求項4から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Xは酸素である、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R1およびR2は、パルミチン酸の残基である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
テストステロンレベルの上昇が有益である疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項8から12のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項14】
前記疾患または障害が、性腺機能低下症、骨髄機能不全に起因する貧血症、腎不全に起因する貧血症、慢性呼吸不全、慢性心不全、ステロイド依存性の自己免疫障害、エイズ消耗症、遺伝性血管浮腫もしくはじんま疹、末期乳がん、または月経閉止である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
薬剤のリンパ輸送および全身放出を促進する方法であって、医薬化合物に、式(VI)のプロドラッグ残基:
【化12】
[式中、
R
1およびR
2は、独立して、HまたはC
2~C
28脂肪酸の残基を表し、
-X-は、-O-、-NH-、および-S-から選択され、
-Y-は、置換されていてもよい-C
1~C
2アルキルC(O)R
3-基、または-C
2アルケニルC(O)R
3-、または-C
2アルキニルC(O)R
3-基を表し、
R
3は、自壊性基であり、
【化13】
は、リンカーが前記薬学的活性剤にコンジュゲートする点を示す]、または
薬学的に許容されるその塩をコンジュゲートさせることを含む方法。
【請求項16】
R
3は、
【化14】
[式中、
【化15】
は、前記薬剤の残基および前記-Y-基との結合点を示す]
から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物は、腸リンパへの輸送を促進するように、食物とともに経口投与される、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、腸リンパへの輸送を促進するように、脂質系製剤とともに経口的に同時投与される、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物は、酵素阻害剤とともに経口的に同時投与される、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
リンパ系内での前記薬剤の標的化送達を容易にするように選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記薬剤は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン)、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ)、コルチコステロイド抗炎症薬(例えばプレドニゾロン、デキサメタゾン)、抗マラリア薬(例えばヒドロキシクロロキン)、ニトロソウレア、メトトレキサート、ダクチノマイシン、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、イムノフィリンに作用する薬物(例えばシクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)、スルファサラジン、レフルノミド、ミコフェノレート、オピオイド、フィンゴリモド、ミリオシン、クロランブシル、ドキソルビシン、ネララビン、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プララトレキサート、ビンブラスチン、ボルテゾミブ、ネララビン、ダウノルビシン塩酸塩、クロファラビン、シタラビン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ポナチニブ塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ベンダムスチン塩酸塩、フルダラビンリン酸塩、ボスチニブ、ニロチニブ、オマセタキシンメペサクシネート、カペシタビン、パクリタキセル、ゲムシタビン、フルベストラント、タモキシフェン、ラパチニブ、トレミフェン、イクサベピロン、エリブリン、アルベンダゾール、イベルメクチン、ジエチルカルバマジン、アルベンダゾール、ドキシサイクリン、クロサンテル、マラビロック、エンフビルチド、デオキシチミジン、ジドブジン、スタブジン、ジダノシン、ザルシタビン、アバカビル、ラミブジン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、リルピビリン、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ロピナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、リトナビル、アシクロビル、免疫抑制剤、例えばミコフェノール酸、および薬学的活性ペプチドから選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
治療有効量の、請求項1から12、20、もしくは21のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒に含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、プロドラッグの形態の化合物、特に薬剤のリンパ系への輸送を促進し、続いて親薬物の放出を増進する化合物に関する。
【0002】
発明の背景
リンパ系は、血管系と極めて接近して身体全体に分布する、管と結節とリンパ組織との特殊化したネットワークからなる。リンパ系は、免疫応答、体液平衡、栄養吸収、脂質恒常性、および腫瘍の転移において、多くの重要な役割を果たしている。リンパ系の独特な解剖学的特性および生理学的特性に起因して、リンパ系への薬物の標的化送達およびリンパ系を通じた薬物の標的化送達が、薬物動態プロファイルおよび薬物力学プロファイルの両方を改善する手段として提案されている。リンパ薬物輸送は、初回通過代謝の回避を通じて経口バイオアベイラビリティを増進し、全身的な薬物の動態を改変し、かつリンパまたはリンパ球媒介性病理、例えばリンパ腫、白血病、リンパ系腫瘍転移、自己免疫疾患、リンパ常在感染症(lymph resident infections)、および移植片拒絶などに対する有効性を増進する見込みがある。
【0003】
薬物が腸リンパにアクセスするためには、それらの薬物はまず、脂質の吸収に応答して腸管吸収細胞(腸細胞)に集められる腸リンパのリポタンパク質と会合しなければならない。これらのリポタンパク質との会合によって、後続のリンパへの薬物輸送が促進される。これは、リポタンパク質のサイズによって、小腸の内容物が流出する毛細血管を補強する血管内皮を越える迅速な拡散が不可能になるためである。代わりに、これらの大きなコロイド構造体はリンパ毛細管に入る。これは、リンパ内皮が、血管内皮よりもかなり透過性が高いためである。歴史的には、リポタンパク質との物理的会合を促進するために、リンパ輸送が高い薬物は高度に親油性である(通常、logD>5であり、長鎖トリグリセリドにおける溶解度は50mg/gを超えるが、これに限定されない)。したがって、高度に親油性の薬物類似体が、薬物のリンパ輸送を促進する方法の1つとして想定されてきた。しかしながら、親薬物の化学的修飾は効力の低減をもたらす可能性があり、また多くの場合、親油性の顕著な増加は、毒性の増加と相関している。
【0004】
親油性プロドラッグの形態の化合物は、医薬化合物の親油性およびリポタンパク質親和性を一時的に高め、それによってリンパ系の標的指向性を上昇させる手段を提供する。リンパ系を介して輸送されて、プロドラッグは、その標的部位において活性となるように、最終的には親薬物へと復帰する。
【0005】
リンパ指向性プロドラッグとして使用される、薬物の単純脂肪族エステルの可能性について調査するための試験が、いくつか存在している。ウンデカン酸テストステロンが、このアプローチが採用された市販化合物の一例である。経口投与後、テストステロンは、肝臓を通るその初回通過でほぼ完全に代謝されるため、結果として、最小限のバイオアベイラビリティしか有しない。テストステロンのウンデカン酸エステルは、吸収された用量のうちの僅かな割合をリンパ系に向け直し、それによって肝臓の初回通過代謝を回避し、テストステロンの経口バイオアベイラビリティを上昇させる。しかしながら、このプロセスは依然として非常に非効率的であり、ウンデカン酸エステルの経口投与後のテストステロンのバイオアベイラビリティは、5%未満であると考えられている。
【0006】
薬物のリンパ輸送を促進する別のメカニズムは、食物脂質の吸収、輸送、および動態と関連する内在性経路に組み込まれるプロドラッグを採用することである。プロドラッグと
して活用される食物脂質の一例は、トリグリセリドである。親薬物が利用可能なカルボン酸基を含有し、グリセリド骨格に直接コンジュゲートしている薬物-脂質コンジュゲートの例については、多くの先行刊行物に記述されている(Paris,G.Y.et al.,J.Med.Chem.1979,22,(6),683-687、Garzon Aburbeh,A.et al.,J.Med.Chem.1983,26,(8),1200-1203、Deverre,J.R.;et al.,J.Pharm.Pharmacol.1989,41,(3),191-193、Mergen,F.et al.,J.Pharm.Pharmacol.1991,43,(11),815-816、Garzon Aburbeh,A.et al.,J.Med.Chem.1986,29,(5),687-69、およびHan,S.et al.J.Control.Release 2014,177,1-10)。
【0007】
他の例としては、薬物が利用可能なカルボン酸を含有しない場合、薬物-トリグリセリドのコンジュゲーションを容易にするために、短いリンカーが使用されている(Scriba,G.K.E.,Arch.Pharm.(Weinheim).1995,328,(3),271-276、およびScriba,G.K.E.et al.,J.Pharm.Pharmacol.1995,47,(11),945-948)。これらの薬物-脂質コンジュゲートは、利用可能なヒドロキシル官能基に対するコンジュゲーションを容易にするために、コハク酸を採用している。しかしながら、文献では、この構造がまったく有用ではないことが教示されている。例えば、Scribaは、テストステロン-コハク酸-グリセリド脂質コンジュゲートのインビトロ加水分解について調査して、「テストステロンは、本研究においては、血漿エステラーゼによって触媒され、かつリパーゼによって媒介される化学的加水分解に起因して、プロドラッグから非常に緩徐に放出されるに過ぎない。したがって、テストステロンのコンジュゲートは、ステロイドの送達にとっては不良なプロドラッグであるらしい」と結論付けた。
【0008】
他では、グリセリドに対するエーテル結合と、薬物に対するエステル結合とが採用されている(Sugihara,J.et al.,J.Pharmacobiodyn.1988,11,(5),369-376、およびSugihara,J.et al.,J.Pharmacobiodyn.1988,11,(8),555-562)。これらの論文の著者らは、グリセロールとn-アルキル鎖との間のエーテル結合、およびn-アルキル鎖と薬物との間のエステル結合が、薬物の化学的修飾にとって必要であるらしいと明確に述べている。しかしながら、本発明者らは、エーテル結合が実際には非生産的であり、有意なリンパ輸送を可能にはしないことを見出した。
【0009】
したがって、薬剤の腸リンパへの安定した輸送を容易にし、親薬剤へと容易に復帰して活性となる、新規の脂質-薬剤コンジュゲートを開発する必要性が存在する。
【0010】
発明の概要
トリグリセリド単位に対して薬剤を連結するために、自壊性基(self-immolative group)およびある特定のリンカーを使用することで、結果として得られる脂質-薬剤コンジュゲートの最適な薬物動態プロファイルが提供されることがここに見出された。
【0011】
したがって、一態様においては、本発明は、式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、独立して、HまたはC
2~C
28脂肪酸の残基を表し、
-X-は、-O-、-NH-、および-S-から選択され、
【化2】
は、薬剤の残基を表し、
-L-は、-OC(O)-または-X’-であり、
-Y-は、-L-が-OC(O)-である場合、置換されていてもよい-C
1~C
20アルキルC(O)OCH
2-、-C
2~C
20アルケニルC(O)OCH
2-、または-C
2~C
20アルキニルC(O)OCH
2-基を表し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基の炭素原子のうちの1個または複数は、NH、S、O、C
5~C
8芳香族もしくは脂肪族の環状基、またはC
5~C
8芳香族もしくは脂肪族の複素環基で置き換えられていてもよく(但し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基が、直鎖C
20アルキル基に等しい長さを上回らないことを条件とする)、または
-Y-は、-L-が-X’-である場合、置換されていてもよい-C
1~C
2アルキルC(O)R
3-基、または-C
2アルケニルC(O)R
3-、または-C
2アルキニルC(O)R
3-基を表し、
R
3は、自壊性基であり、
X’は、O、S、N(R
4)、またはN(H)S(O)
2であり、
R
4は、HまたはC
1~C
4アルキルである]、または
薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0012】
さらなる態様においては、本発明は、式(V)によって表される式(I)の化合物:
【化3】
[式中、R
1、R
2、および-X-は、式(I)について定義された通りであり、
R
5およびR
6は、水素およびC
1~C
4アルキルから個別に選択され、
R
3は、自壊性基である]、または
薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0013】
別の態様においては、本発明は、テストステロンレベルの上昇が有益である疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の式(V)
の化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0014】
さらなる態様においては、本発明は、テストステロンレベルの上昇が有益である疾患または障害を処置または予防するための医薬の製造における式(V)の化合物の使用を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、テストステロンレベルの上昇が有益である疾患または障害の処置または予防において使用するための式(V)の化合物を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、薬剤のリンパ輸送および全身放出を促進する方法であって、薬剤に、式(VI)のプロドラッグ残基:
【化4】
[式中、
R
1およびR
2は、独立して、HまたはC
2~C
28脂肪酸の残基を表し、
-X-は、-O-、-NH-、および-S-から選択され、
-Y-は、-L-が-X’-である場合、置換されていてもよい-C
1~C
2アルキルC(O)R
3-基、または-C
2アルケニルC(O)R
3-、または-C
2アルキニルC(O)R
3-基を表し、
R
3は、自壊性基であり、
【化5】
は、リンカーが薬学的活性剤にコンジュゲートする点を示す]、または
薬学的に許容されるその塩をコンジュゲートさせることを含む方法を提供する。
【0017】
本発明のこれらの態様および他の態様は、添付の実施例および特許請求の範囲と関連する以下の詳細な説明を読むことで、当業者にはより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】テストステロン、ウンデカン酸テストステロン(TU)、化合物21、化合物12、化合物13/14、化合物15、化合物17、および化合物19を十二指腸内注入した後の、麻酔し、腸間膜リンパ管にカニューレを挿入した雌性SDラットにおける、時間に対するテストステロン関連誘導体全体の累積リンパ輸送(投与量の%)のグラフ表示である。
【
図2】テストステロン、ウンデカン酸テストステロン(TU)、化合物12、化合物15、化合物16、化合物17、化合物18、化合物20、および化合物21を、意識のある、頸動脈にカニューレを挿入した雌性SDラットに対して経口強制投与した後の、用量について正規化したテストステロン血漿濃度のグラフ表示である。
【
図3】テストステロン、ウンデカン酸テストステロン(TU)、化合物12、化合物13、化合物13/14、化合物18、および化合物19を、意識のある、頸動脈にカニューレを挿入した雌性SDラットに対して経口強制投与した後の、用量について正規化したテストステロン血漿濃度のグラフ表示である。
【
図4】セルトラリン塩酸塩(SER.HCl)および化合物3を十二指腸内注入した後の、麻酔し、腸間膜リンパ管にカニューレを挿入した雄性SDラットにおける、時間に対するSER関連誘導体全体の累積リンパ輸送(投与量の%)のグラフ表示である。
【
図5】セルトラリン塩酸塩(SER.HCl)、化合物1、化合物2、および化合物3を経口強制投与した後の、用量について正規化したSER血漿濃度のグラフ表示である。
【
図6】ブプレノルフィン(BUP)、化合物6、および化合物7を十二指腸内注入した後の、麻酔し、腸間膜リンパ管にカニューレを挿入した雄性SDラットにおける、時間に対するBUP関連誘導体全体の累積リンパ輸送(投与量の%)のグラフ表示である。
【
図7】ブプレノルフィン(BUP)、化合物5、化合物6、および化合物7を経口強制投与した後の、用量について正規化したBUP血漿濃度のグラフ表示である。
【
図8】ミコフェノール酸(MPA)、化合物10、および化合物11を十二指腸内注入した後の、麻酔し、腸間膜リンパ管にカニューレを挿入した雄性SDラットにおける、時間に対するMPA関連誘導体全体の累積リンパ輸送(投与量の%)のグラフ表示である。
【
図9】ブタ膵臓リパーゼとともにインビトロでインキュベートしている間における、化合物12、化合物13/14、化合物15、化合物16、化合物17、化合物20、および化合物21のモノグリセリド形態の安定性プロファイルのグラフ表示である。
【
図10】1,3-ジパルミトイルグリセロールミコフェノレート(MPA-TG)、化合物10、および化合物11からのMPAの放出のグラフ表示である。
【0019】
発明の詳細な説明
薬物動態特性を改善するために、薬物開発の分野においてプロドラッグ戦略が採用される場合、プロドラッグは通常、生物活性を呈する前に、非特異的な分解または酵素が媒介する生体内変換を介して親化合物へと復帰することが予期される。本発明は、薬剤のリンパ輸送を促進し、化合物の活性薬剤への復帰を改善することが可能である、修飾されたグリセリド系化合物について開示する。
【0020】
トリグリセリドなどの食物脂質は、独特の代謝経路を使用することで、タンパク質および炭水化物などの他の栄養素とは完全に別個の、リンパ(および最終的には体循環)へのアクセスを獲得する。摂取後、食物トリグリセリドは、管腔のリパーゼによって加水分解されて、トリグリセリドの各分子についてモノグリセリド1つと脂肪酸2つとを放出する。その後、モノグリセリドおよび2つの脂肪酸は腸細胞に吸収されて、そこでそれらはトリグリセリドへと再エステル化される。
【0021】
再合成されたトリグリセリドは、腸リポタンパク質(主としてカイロミクロン)へと組み立てられ、このようにして形成されたカイロミクロンは、腸細胞からエキソサイトーシスされた後、腸リンパ管への優先的なアクセスを獲得する。リンパ管内において、カイロミクロンの形態の脂質は、一連の毛細管、結節、および管から流出して、左鎖骨下静脈と内頸静脈の接合部において体循環へとすべて注ぎ込む。血液循環に入った後、カイロミクロンとしてのトリグリセリドは、リポタンパク質リパーゼの発現が高い組織、例えば、脂肪組織、肝臓、および潜在的にはある特定の種類の腫瘍組織などによって、優先的かつ効率的に取り込まれる。
【0022】
脂質模倣化合物は、天然のトリグリセリドと同様に挙動し、体循環に到達する前に、リンパ系へ輸送され、それを通じて輸送されることが予期される。このようにして、親薬剤の薬物動態プロファイルおよび薬物力学プロファイルを操作して、リンパおよびリンパ組織へのアクセスを増進し、それによって初回通過代謝(および潜在的には腸流出)を回避することで、経口バイオアベイラビリティを促進することができる。また、脂質模倣化合物は、リンパ、リンパ節、およびリンパ組織内の部位、ならびに例えば脂肪組織、肝臓、および一部の腫瘍などの脂質の活用およびリポタンパク質リパーゼの発現が高い部位への
薬物標的指向性を促進することもできる。
【0023】
体循環を介して輸送された後、親薬物へと容易に変換される脂質化プロドラッグは、胃腸(GI)管における遊離薬物濃度を低減し、これによって、胃腸の刺激を低減すること、味覚マスキング、腸の胆汁酸塩ミセルとしての薬物の可溶化を促進すること(内因性モノグリセリドとの類似性に起因する)、および受動的膜透過性を増進すること(親油性を高めることによる)において利益を提供することができる。また、脂質化プロドラッグは、脂質を単独で含むか、あるいは脂質と界面活性剤および/または共溶媒との混合物を含む、脂質ビヒクルにおける溶解性も高め、そうすることで、親薬物の場合に可能であったはずの用量よりも、より多くの用量の薬物が溶液として投与されることが可能となる。
【0024】
本発明者らは、驚くべきことに、薬剤をグリセリド単位に連結している、薬物-グリセリドコンジュゲートの一部を修飾して、GI管における薬物-グリセリドコンジュゲートの安定性を改善し、腸リンパへの輸送を促進し、最終的には薬剤-グリセリドプロドラッグからの薬剤の放出を促進できることを見出した。したがって、薬剤をグリセリド単位に連結する「リンカー」を改変することによって、結果として得られる化合物に関して、最適な薬物動態プロファイルを達成することができる。
【0025】
本発明者らは、薬剤とグリセリド単位との間のリンカーに自壊性基を組み込むことによって、リンカーが短鎖リンカー(すなわち、先に報告されたようなコハク酸)である場合でも、改善された、薬物の全身放出および全身曝露がもたらされることを見出した。自壊性基の組み込みによって、体循環における薬剤の放出が増進される。自壊性基は、薬物のリンパ輸送を低減する可能性があるが、リンパ輸送が低減されたとしても、おそらくは体循環における薬物放出が増進されることによって、全身的な薬物曝露は増進されることが初めて見出された。さらに、自壊性基とグリセリド単位との間のリンカーの炭素原子においてメチル置換を採用することで、GI管における安定性を高め、リンパ輸送を高め、かつ体循環における良好な変換をなおも保持できることが見出された。
【0026】
本明細書においては、多くの用語が使用されているが、これらは当業者に周知のものである。それでも、明瞭性を目的として、多くの用語について定義する。
【0027】
本明細書においては、別途定義されない限り、「置換されていてもよい」という用語は、ある基が、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、アルキニルオキシ、アミノ、アミノアシル、チオ、アリールアルキル、アリールアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシルアミノ、カルボキシ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、スルホ、ホスホノ、ホスホリルアミノ、ホスフィニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、トリハロメチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメタンチオ、トリフルオロエテニル、モノ-およびジ-アルキルアミノ、モノ-およびジ-(置換されたアルキル)アミノ、モノ-およびジ-アリールアミノ、モノ-およびジ-ヘテロアリールアミノ、モノ-およびジ-ヘテロシクリル、アミノ、ならびにアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミンから選択される、1種または複数の基によってさらに置換されていてもよく、あるいは置換されていなくてもよいことを意味するように解釈される。
【0028】
本明細書において使用される場合、単独でまたは複合語として使用される「アルキル」という用語は、直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルを示す。「C2~C20」などの接頭辞は、アルキル基内の炭素原子の数(この場合、2~20個)を示すように使用される。直鎖アルキルおよび分岐鎖アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ
プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、5-メチルヘプチル、5-メチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、およびドコシル(C22)が挙げられる。
【0029】
本明細書において使用される場合、単独でまたは複合語として使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素対炭素二重結合を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素残基を示し、エチレン性のモノ、ジ、またはポリ不飽和の、先に定義されたようなアルキルが挙げられる。好ましくは、アルケニル基は、直鎖アルケニル基である。「C2~C20」などの接頭辞は、アルケニル基内の炭素原子の数(この場合、2~20個)を示すように使用される。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、イソ-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、および5-ドコセニル(C22)が挙げられる。
【0030】
本明細書において使用される場合、単独でまたは複合語として使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素対炭素三重結合を含有する直鎖または分岐鎖の炭化水素残基を示す。好ましくは、アルキニル基は、直鎖アルキニル基である。「C2~C20」などの接頭辞は、アルケニル基内の炭素原子の数(この場合、2~20個)を示すように使用される。
【0031】
本明細書において使用される場合、単独でまたは複合語として使用される「複素環」または「複素環基」などの用語は、窒素、硫黄、および酸素からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、飽和、部分不飽和、または完全不飽和の単環式、二環式、または縮合多環式の環系を示す。「C5~C8」などの接頭辞は、基の環状部分内の炭素原子の数(この場合、5~8個)を示すように使用される。好適な複素環置換基の例としては、限定されるものではないが、ピロール、フラン、ベンゾフラン、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、トリアゾール、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、イソキサゾリン、フラザン、オキサジアゾール、ピペリジン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、およびピラジンが挙げられ、これらの各々は、1~3個の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0032】
本明細書において使用される場合、「アリール」または「芳香族環状基」などの用語は、芳香族炭化水素環系の、任意の単核の、または多核の結合または縮合した残基を示す。「C5~C8」などの接頭辞は、アリール基の環状部分内の炭素原子の数(この場合、5~8個)を示すように使用される。アリールの例としては、フェニル(単核)、ナフチル(縮合多核)、ビフェニル(結合した多核)、およびテトラヒドロナフチル(縮合多核)が挙げられる。
【0033】
本明細書において使用される場合、「リンカー」という用語は、本明細書に記載されているような式(I)の化合物について、「X」から「L」へと橋渡しして、薬剤をグリセリド単位に対して連結する部分を示す。
【0034】
本明細書において使用される場合、「自壊性基」という用語は、リンカーと分断可能な結合を形成し、薬剤と安定な結合を形成するが、ここで、薬剤との結合はリンカーを切断した際に不安定となる、化学部分を定義する。自壊性基の例としては、限定されるものではないが、アセタール自壊性基、カルボキシアセタール自壊性基、カルボキシ(メチルアセタール)自壊性基、パラ-ヒドロキシベンジルカルボニル自壊性基、反転(flipped)エステル自壊性基、およびトリメチルロック自壊性基が挙げられる。多くの他の好
適な自壊性基が、例えば、C.A.Blencowe et al.,Polym.Chem.2011,2,773-790およびF.Kratz et al.,ChemMedChem.2008,3(1),20-53に記載されているように、当該技術分野において公知である。
【0035】
本明細書において使用される場合、「薬剤」という用語は、例えば、初回通過代謝を回避するために、またはリンパ系内での標的化送達のために腸リンパ系を介して輸送されることから利益を得ることになる、任意の薬学的活性剤またはイメージング剤(造影剤)を示す。
【0036】
好適な薬学的活性剤の例としては、限定されるものではないが、テストステロン、ミコフェノール酸(MPA)、ブプレノルフィン、エストロゲン(エストロゲン)、オピエート、例えばモルヒネ、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール、メトプロロール、ラロキシフェン、アルファキソロン、スタチン、例えばアトルバスタチン、ペンタゾシン、プロプラノロール、L-DOPA、リドカイン、クロルプロマジン、セルトラリン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ペンタゾシン、三硝酸グリセリル、オクスプレノロール、ラベタロール、サルブタモール、エピチオスタノール、メルファラン、ロバスタチン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン)、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ)、コルチコステロイド抗炎症薬(例えばプレドニゾロン、プレドニゾン、デキサメタゾン)、抗マラリア薬(例えばヒドロキシクロロキン)、ニトロソウレア、メトトレキセート、ダクチノマイシン、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、イムノフィリンに作用する薬物(例えばシクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)、スルファサラジン、レフルノミド、ミコフェノレート、オピオイド、フィンゴリモド、ミリオシン、クロランブシル、ドキソルビシン、ネララビン、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プララトレキサート、ビンブラスチン、ボルテゾミブ、ネララビン、ダウノルビシン塩酸塩、クロファラビン、シタラビン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ポナチニブ塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ベンダムスチン塩酸塩、フルダラビンリン酸塩、ボスチニブ、ニロチニブ、オマセタキシンメペサクシネート、カペシタビン、パクリタキセル、ゲムシタビン、フルベストラント、タモキシフェン、ラパチニブ、トレミフェン、イクサベピロン、エリブリン、アルベンダゾール、イベルメクチン、ジエチルカルバマジン、アルベンダゾール、ドキシサイクリン、クロサンテル、マラビロック、エンフビルチド、デオキシチミジン、ジドブジン、スタブジン、ジダノシン、ザルシタビン、アバカビル、ラミブジン、エムトリシタビン、テノホビル、デラビルジン、リルピビリン、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ロピナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、リトナビル、アシクロビル、および薬学的活性ペプチドが挙げられる。
【0037】
好適なイメージング剤の例としては、限定されるものではないが、蛍光顕微鏡法のため、もしくはフルオロフォアが赤外域で発光スペクトルを有する場合のため、インビボイメージングのための、光学イメージングプローブの、Alexa Fluorシリーズなどのフルオロフォア;ポジトロン放射断層撮影(PET)用に使用することができるガンマ放射体、例えばフルオロデオキシグルコース、または磁気共鳴イメージングプローブをキレートするためのキレート剤、例えばガドリニウムもしくは鉄などが挙げられる。
【0038】
あらゆる疑義を回避するために、「直鎖C20アルキル基に等しい長さ」に対する言及は、20個の単結合した炭素原子が理論的におよぶ長さのことを指す。
【0039】
本発明の一部の好ましい実施形態においては、また一般式(I)または(II)を参照すると、以下の定義のうちの1つまたは複数が当てはまる:
a)R1およびR2は、独立して、HまたはC2~C28脂肪酸の残基を表す。
b)R1はHを表し、かつR2はC2~C28脂肪酸の残基を表す。
c)R2はHを表し、かつR1はC2~C28脂肪酸の残基を表す。
d)R1およびR2は、各々、パルミチン酸を表す。
e)-X-は、-O-である。
f)-X-は、-NH-である。
g)-X-は、-S-である。
h)-L-は、-OC(O)-である。
i)-Y-は、-L-が-OC(O)-である場合、置換されていてもよい-C1~C20アルキルC(O)OCH2-、-C2~C20アルケニルC(O)OCH2-、または-C2~C20アルキニルC(O)OCH2-基を表し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基の炭素原子のうちの1個または複数は、NH、S、O、C5~C8芳香族もしくは脂肪族の環状基、またはC5~C8芳香族もしくは脂肪族の複素環基で置き換えられていてもよい(但し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基が、直鎖C20アルキル基に等しい長さを上回らないことを条件とする)。
j)-Y-は、アルキルによって置換されていてもよい、-C1~C20アルキルC(O)OCH2-、-C2~C20アルケニルC(O)OCH2-、または-C2~C20アルキニルC(O)OCH2-基を表す。
k)-Y-は、メチルによって置換されていてもよい、-C1~C20アルキルC(O)OCH2-、-C2~C20アルケニルC(O)OCH2-、または-C2~C20アルキニルC(O)OCH2-基を表す。
l)-L-は、-X’-である。
m)-Y-は、置換されていてもよい-C1~C2アルキルC(O)R3-基、または-C2アルケニルC(O)R3-、または-C2アルキニルC(O)R3-基を表す。
n)-Y-は、アルキルによって置換されていてもよい、-C1~C2アルキルC(O)R3-基を表す。
o)-Y-は、メチルによって置換されていてもよい、-C1~C2アルキルC(O)R3-基を表す。
p)R3は、アセタール自壊性基、カルボキシアセタール自壊性基、カルボキシ(メチルアセタール)自壊性基、トリメチルロック自壊性基、p-ヒドロキシベンジルカルボニル自壊性基、または反転エステル自壊性基から選択される自壊性基である。
n)X’は、Oである。
o)X’は、Sである。
p)X’は、N(R4)である。
q)X’は、N(H)S(O)2である。
r)R4は、Hである。
s)R4は、C1~C4アルキルである。
t)R4は、メチルである。
【0040】
一実施形態においては、LはX’であり、-Y-は置換されていてもよい-C1アルキルC(O)R3-を表す。
【0041】
したがって、別の実施形態においては、本発明は、式(II)によって表される式(I)の化合物:
【化6】
[式中、
R
1、R
2、および-X-は、式(I)について定義された通りであり、
R
3は、自壊性基であり、
【化7】
は、薬剤の残基を表し、
-L-は、-X’-であり、
X’は、O、S、N(R
4)、またはN(H)S(O)
2であり、
R
4は、HまたはC
1~C
4アルキルであり、
R
5は、水素およびC
1~C
4アルキルから選択される]、または
薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0042】
別の実施形態においては、LはX’であり、-Y-は置換されていてもよい-C2アルキルC(O)R3-を表す。
【0043】
したがって、さらなる実施形態においては、本発明は、式(III)によって表される式(I)の化合物:
【化8】
[式中、
R
1、R
2、および-X-は、式(I)について定義された通りであり、
R
3は、自壊性基であり、
【化9】
は、薬剤の残基を表し、
-L-は、-X’-であり、
X’は、O、S、N(R
4)、またはN(H)S(O)
2であり、
R
4は、HまたはC
1~C
4アルキルであり、
R
5およびR
6は、水素およびC
1~C
4アルキルから個別に選択される]、または
薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0044】
別の実施形態においては、式(III)の化合物は、表1に列挙されているような化合物から選択される。
【0045】
【0046】
別の実施形態においては、Lは-OC(O)-であり、-Y-は、置換されていてもよい-C1~C20アルキルC(O)OCH2-、-C2~C20アルケニルC(O)OCH2-、または-C2~C20アルキニルC(O)OCH2-基を表し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基の炭素原子のうちの1個または複数は、NH、S、O、C5~C8芳香族もしくは脂肪族の環状基、またはC5~C8芳香族もしくは脂肪族の複素環基で置き換えられていてもよい(但し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基が、直鎖C20アルキル基に等しい長さを上回らないことを条件とする)。
【0047】
したがって、別の実施形態においては、本発明は、式(IV)によって表される式(I)の化合物:
【化10】
[式中、
R
1、R
2、および-X-は、式(I)について定義された通りであり、
【化11】
は、薬剤の残基を表し、
R
5およびR
6は、水素およびC
1~C
4アルキルから個別に選択され、
R
7は、水素またはC
1~C
4アルキルであり、
nは、0~18である]、または
薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0048】
別の実施形態においては、式(IV)の化合物は、表2に列挙されているような化合物から選択される。
【0049】
【0050】
一実施形態においては、薬剤は、テストステロン、またはその誘導体もしくは類似体である。テストステロン補充療法(TRT)は、一般に、性腺機能低下症(異常に低いテストステロンの血清レベルによって特徴付けられる障害)を有する患者に対して使用されて、患者のテストステロンの血清レベルを正常範囲に回復させることで、気分障害、性的機能不全などの性腺機能低下症の症状の多くを緩和する。
【0051】
したがって、一実施形態においては、本発明は、式(V)によって表される式(I)の化合物:
【化12】
[式中、R
1、R
2、および-X-は、式(I)について定義された通りであり、
R
5およびR
6は、水素およびC
1~C
4アルキルから個別に選択され、
R
3は、自壊性基である]、または
薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0052】
別の実施形態においては、式(V)の化合物は、表3に列挙されているような化合物から選択される。
【0053】
【0054】
別の実施形態においては、本発明は、テストステロンレベルの上昇が有益である疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に対して、治療有効
量の、式(V)による化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0055】
さらなる実施形態においては、本発明は、テストステロンレベルの上昇が有益である疾患または障害を処置または予防するための医薬の製造における式(V)による化合物の使用を提供する。
【0056】
なおも別の実施形態においては、本発明は、テストステロンレベルの上昇が有益である疾患または障害の処置または予防において使用するための式(V)の化合物を提供する。
【0057】
テストステロンレベルの上昇が有益であり得る疾患または障害としては、限定されるものではないが、性腺機能低下症、骨髄機能不全に起因する貧血症、腎不全に起因する貧血症、慢性呼吸不全、慢性心不全、ステロイド依存性の自己免疫障害、エイズ消耗症、遺伝性血管浮腫もしくはじんま疹、末期乳がん、または月経閉止が挙げられる。
【0058】
別の実施形態においては、本発明は、薬剤のリンパ輸送および全身放出を促進する方法であって、医薬化合物に、式(VI)のプロドラッグ残基:
【化13】
[式中、
R
1およびR
2は、独立して、HまたはC
2~C
28脂肪酸の残基を表し、
-X-は、-O-、-NH-、および-S-から選択され、
-Y-は、置換されていてもよい-C
1~C
2アルキルC(O)R
3-基、または-C
2アルケニルC(O)R
3-、または-C
2アルキニルC(O)R
3-基を表し、
R
3は、自壊性基であり、
【化14】
は、リンカーが薬学的活性剤にコンジュゲートする点を示す]、または
薬学的に許容されるその塩をコンジュゲートさせることを含む方法を提供する。
【0059】
一実施形態においては、上に定義されたような化合物に関して、「Y」および「R3」を含むリンカーは、薬剤の腸リンパへの安定な輸送を容易にするように選択されることになる。別の実施形態においては、YおよびR3は、リンパ、リンパ球、リンパ組織、例えば脂肪組織などのリパーゼ活性が高い組織、ある特定のがん、肝臓、または体循環における薬剤の放出を容易にするように選択されることになる。なおも別の実施形態においては、YおよびR3は、薬剤の腸リンパへの安定な輸送を容易にするように、かつリンパ、リンパ球、リンパ組織、例えば脂肪組織などのリパーゼ活性が高い組織、ある特定のがん、肝臓、または体循環における薬剤の放出を容易にするように選択される。
【0060】
本発明の化合物は、薬剤の腸リンパへの安定な輸送、およびリンパ、リンパ球、リンパ組織、例えば脂肪組織などのリパーゼ活性が高い組織、ある特定のがん、肝臓、または体循環における薬剤の放出にとって有用である。本発明の化合物は、特に、初回通過代謝の回避が有益である薬剤、例えば50%を超える初回通過代謝率を呈する化合物の輸送およ
び放出にとって有用である。一実施形態においては、薬剤は、60%を超える初回通過代謝率を呈するであろうことが想定される。別の実施形態においては、薬剤は、70%を超える初回通過代謝率を呈するであろう。さらなる実施形態においては、薬剤は、80%を超える初回通過代謝率を呈するであろう。なおも別の実施形態においては、薬剤は、90%を超える初回通過代謝率を呈するであろう。
【0061】
腸リンパへの安定な輸送、およびリンパ、リンパ球、リンパ組織、例えば脂肪組織などのリパーゼ活性が高い組織、ある特定のがん、肝臓、または体循環における放出から利益を得る可能性がある薬剤としては、限定されるものではないが、テストステロン、ミコフェノール酸、エストロゲン(エストロゲン)、モルヒネ、テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオール、メトプロロール、ラロキシフェン、アルファキソロン、スタチン、例えばアトルバスタチン、ペンタゾシン、プロプラノロール、L-DOPA、ブプレノルフィン、ミダゾラム、リドカイン、クロルプロマジン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ペンタゾシン、二硝酸イソソルビド、三硝酸グリセリル、オクスプレノロール、ラベタロール、ベラパミル、サルブタモール、エピチオスタノール、メルファラン、ロバスタチン、および薬学的活性ペプチドが挙げられる。
【0062】
また、本発明の化合物は、リンパ系、例えばリンパ、リンパ球、およびリン系組織内、ならびに脂肪組織などのリパーゼ活性が高い組織、ある特定のがん、または肝臓における薬剤の標的化放出にとっても有用である。
【0063】
リンパ系内または脂肪組織における標的化放出から利益を得る可能性がある薬剤としては、限定されるものではないが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン)、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ)、コルチコステロイド抗炎症薬(例えばプレドニゾロン、デキサメタゾン)、抗マラリア薬(例えばヒドロキシクロロキン)、シクロホスファミド、PPARアゴニスト(例えばフィブレート)、ニトロソウレア、白金、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、イムノフィリンに作用する薬物(例えばシクロスポリン、タクロリムス、シロリムス)、スルファサラジン、レフルノミド、ミコフェノレート、オピオイド、フィンゴリモド、ミリオシン、クロランブシル、ドキソルビシン、ネララビン、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プララトレキサート、ビンブラスチン、ボルテゾミブ、チオテパ、ネララビン、ダウノルビシン塩酸塩、クロファラビン、シタラビン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ポナチニブ塩酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ベンダムスチン塩酸塩、フルダラビンリン酸塩、ボスチニブ、ニロチニブ、オマセタキシン、メペサクシネート、アナストロゾール、カペシタビン、レトロゾール、パクリタキセル、ゲムシタビン、フルベストラント、タモキシフェン、ラパチニブ、トレミフェン、イクサベピロン、エリブリン、アルベンダゾール、イベルメクチン、ジエチルカルバマジン、ドキシサイクリン、クロサンテル、マラビロック、エンフビルチド、デオキシチミジン、ジドブジン、スタブジン、ジダノシン、ザルシタビン、アバカビル、ラミブジン、エムトリシタビン、テノホビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、リルピビリン、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ロピナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、リトナビル、アシクロビル、ならびに免疫抑制剤、例えばミコフェノール酸、シクロスポリン、タクロリムス、およびシロリムスが挙げられる。
【0064】
一般的戦略として、本発明の化合物は、以下の経路のうちの1つを介して合成することができる。
【0065】
【化15】
スキーム1.一般式(II)の化合物の合成。
【0066】
対応するマロン酸から容易に入手可能である二酸塩化物iを、ピリジンの存在下でジグリセリドiiと反応させることで、酸-トリグリセリド(酸-TG)iiiを得ることができる(スキーム1を参照されたい)。
【0067】
【化16】
スキーム2.一般式(III)の化合物の合成。
【0068】
酸無水物ivが入手可能である場合、酸-TGiiiは、ピリジンの存在下でのジグリセリドiiによる開環によって生成することができる(スキーム2)。この方法は、酸無水物ivのR5およびR6が同一である場合には最良に働くが、R5およびR6が互いに異なる場合には、酸-TGiiiの位置異性体混合物がもたらされることになる。結果として、この状況においては、スキーム3において概説されている方法などの他の方法を採用すべきである。
【0069】
【化17】
スキーム3.R
5=Me、R
6=Hである式(III)の化合物の合成。
【0070】
R5=Meであり、R6=Hである具体的例において、単一の位置異性体としての酸-TGiiiを得るためには、公知のカルボン酸v(Lienard,B.M.R.et al.,Org.Biomol.Chem.2008,6,(13),2282-2292)を、出発点として使用することができる(スキーム3を参照されたい)。標準条件下における酸vと1,3-DGiiとのカップリングによって、TBDPS保護トリグリセリドviが生成され、これをTBAFおよびAcOHで処理することで、アルコールviiを得ることができる。次いで、二段階の酸化プロセス(PCC、次いでKMnO4)を使用することで、中間体アルデヒドviiiを介して、アルコールviiを所望の酸-TGiiiへと変換することができる。
【0071】
【化18】
スキーム4.R
3がアセタール自壊性(ASI)基であり、かつX’=Oである一般式(III)の化合物の合成。
【0072】
薬剤とアルキルスペーサーとの間にアセタール自壊性(ASI)基を含有する化合物を合成する場合、スキーム4において上に概説されているように、酸-トリグリセリドiiiとコンジュゲートさせる前に、アルコールを有する親分子を官能化し、活性化させなければならない。無水酢酸および酢酸の混合物中において、DMSOによってアルコールを処理することで、(メチルチオ)メチル(MTM)エーテルixが形成される。塩化スルフリルを使用してMTMエーテルixを活性化することで、推定スルホキシド種が形成され、これを、酸-トリグリセリドiiiのカルボキシレートと反応させることで、標的化合物xを得ることができる。
【0073】
【化19】
スキーム5.R
3がカルボキシアセタール自壊性(CASI)またはカルボキシ(メチルアセタール)自壊性(CMSI)基であり、X’がOまたはN(R
4)である、式(III)の化合物の合成。
【0074】
薬剤が、アルコール、フェノール、またはアミン(第1級もしくは第2級)官能基を含有する場合、追加的なカルボキシ基が含まれる、アセタール自壊性基の修飾型を使用することができる。親薬物をクロロアルキルクロロホルメートと反応させることで、クロロアルキルカーボネートまたはカルバメートxiが得られる(スキーム5を参照されたい)。次いで、還流トルエン中において、酸-TGiiiに由来するカルボキシレートで処理することによって、ハロゲン脱離基の置き換えが達成されて、標的化合物xiiが得られる。
【0075】
【化20】
スキーム6.R
3がトリメチルロック(TML)自壊性基であり、X’=O、N(R
4)、またはS(O)
2NHである、式(III)の化合物の合成。
【0076】
親分子の全身放出を容易にするために、薬剤とアルキルスペーサーとの間にトリメチルロック(TML)自壊性基(Levine,M.N.;Raines,R.T.Chem.Sci.2012,3,2412-2420)を含有するプロドラッグを合成する場合、スキーム6において概説されているように、薬剤とコンジュゲートさせる前に、酸-トリグリセリドiiiをTML部分で官能化しなければならない。標準条件下における酸-TGiiiとTMLフェノールxiiiとのカップリングによって、トリグリセリドxivが得られ、これを酸性条件下(10-カンファースルホン酸)で脱保護することで、アルコールxvを得ることができる。アルコールxvをまずアルデヒドxviに、その後酸xviiへと順次酸化した後、標準条件下で、アルコール、アミン、またはスルホンアミド含有薬剤にカップリングさせることで、標的化合物xviiiを得ることができる。
【0077】
【化21】
スキーム7.R
3がp-ヒドロキシベンジルカルボニル(PHB)自壊性基であり、X’=O、S、またはNR
4である、式(III)の化合物の合成。
【0078】
p-ヒドロキシベンジル(PHB)カルボニル自壊性基を含有する化合物を合成する場合、まず、p-ヒドロキシベンジルアルコール(xix)の第1級ヒドロキシル基をシリルエーテルとして保護し、フェノール性遊離ヒドロキシル基を酸-TGiiiとカップリングさせることで、PHBトリグリセリドxxiが得られる(スキーム7を参照されたい)。ケイ素保護基を取り除いた後、p-ニトロフェニル(PNP)クロロホルメートで処理することによって第1級アルコールxxiiを活性化して、PNPカーボネートxxiiiを得ることができる。次いで、塩基性条件下で、薬剤(A-X’H)との反応によってPNP基の置き換えが達成されて、所望の化合物xxivが得られる。
【0079】
【化22】
スキーム8.R
3が反転エステル自壊性(FSI)基であり、X’=O、S、またはNR
4である、式(III)の化合物の合成。
【0080】
反転エステル自壊(FSI)基は、環化メカニズムによって遊離薬剤を遊離することで、結果として4-炭素ラクトン(FSI-4)または5-炭素ラクトン(FSI-5)が失われるように設計されている。FSIプロドラッグは、薬剤(A-X’H)と、4-ブロモ酪酸(m=1)または5-ブロモ吉草酸(m=2)(xxv)とをカップリングさせて、臭化物xxviを得ることによって合成することができる(スキーム8を参照されたい)。酸-TGiiiに由来するカルボキシレートを使用した臭化物xxviの置き換えによって、標的化合物xxviiにおける所望のエステル結合が生成される。
【0081】
【0082】
薬剤がカルボン酸を含有する場合、酸-TGiiiは、対応する酸塩化物に変換しなければならず、その後、ZrCl4またはZnCl2の存在下でトリオキサン(R7=H)またはパラアルデヒド(R7=Me)で処理することで、クロロアルキルエステルxxviiiが得られる(スキーム9を参照されたい)。その後、親薬物に由来するカルボキシレートとの反応によって、ハライドの置き換えが達成されて、標的化合物xxixをもたらすことができる。
【0083】
本発明の化合物が精製を必要とする場合、再結晶、ならびに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および順相または逆相シリカゲルクロマトグラフィーを含むクロマトグラフ技法などの技法を使用することができる。化合物は、核磁気共鳴法(NMR)、質量分析法、および/または他の適切な方法によって特徴付けることができる。
【0084】
本発明の化合物は、1つまたは複数の立体異性体の形態(例えばジアステレオマー)で存在してもよいことが理解されるであろう。本発明は、単離された(例えば、エナンチオマー単離)または組み合わせでの(ラセミ混合物およびジアステレオマー混合物を含む)これらの立体異性体の形態のすべてをその範囲内に包含する。
【0085】
したがって、本発明はまた、例えば約90%を超えるジアステレオマー過剰率、例えば約95%~97%のジアステレオマー過剰率、または99%を超えるジアステレオマー過剰率である、実質的に純粋な立体異性体形態の化合物、ならびにそのラセミ混合物を含む混合物にも関する。このようなジアステレオマーは、例えばキラル中間体を使用した不斉合成によって調製されてもよく、あるいは混合物を、従来の方法、例えばクロマトグラフィーまたは分割剤の使用によって分割してもよい。
【0086】
化合物が、プロトン化されていてもよく、あるいは脱プロトン化されていてもよい(例えば、生理的pHにおいて)1つまたは複数の官能基を含む場合、化合物は、薬学的に許容される塩として調製および/または単離することができる。化合物は、所与のpHにおいて両性イオンであってもよいことが理解されるであろう。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される塩」という表現は、医薬品としての投与にとって好適である、所与の化合物の塩を指す。このような塩は、酸または塩基の、それぞれ、アミン基またはカルボン酸基との反応によって形成され得る。
【0087】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製することができる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0088】
薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製することができる。無機塩基に由来する、対応する対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩が挙げられる。有機塩基としては、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミン、天然に存在する置換アミンなどの置換アミン、ならびに環状アミン、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、およびN-エチルピペリジンが挙げられる。
【0089】
酸/塩基付加塩は、対応する遊離酸/塩基形態よりも水性溶媒に可溶性である傾向がある。
【0090】
本発明の化合物は、結晶形態であってもよく、あるいは溶媒和物(例えば水和物)であってもよく、両方の形態が本発明の範囲内にあることが意図される。「溶媒和物」という用語は、溶質および溶媒によって形成される、可変的化学量論の複合体である。このよう
な溶媒は、溶質の生物学的活性に干渉すべきではない。溶媒は、例として、水、エタノール、または酢酸であってもよい。溶媒和の方法は、当該技術分野において一般に公知である。
【0091】
本発明の化合物の投与経路は、経口投与および腸内投与を含むことが意図される。したがって、活性化合物は、不活性の希釈剤または吸収可能な食用担体とともに製剤化されてもよく、あるいは活性化合物は、硬シェルもしくは軟シェルのゼラチンカプセル剤に被包されてもよく、あるいは活性化合物は、錠剤へと圧縮されてもよく、あるいは活性化合物は、食事の食物に直接組み込まれてもよい。経口の治療用投与の場合、活性化合物は、賦形剤と配合され、摂取可能な錠剤、バッカル錠または舌下錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハなどの形態で使用することができる。このような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、好適な投与量が得られるようなものである。
【0092】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、以下に列挙されているような構成成分も含有してもよい:結合剤、例えばガム、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチンなど;賦形剤、例えばリン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど;および甘味剤、例えばスクロース、ラクトース、またはサッカリンなどが添加されていてもよく、あるいは香味剤、例えばペパーミント、冬緑油、またはサクランボ香料などが添加されていてもよい。単位剤形がカプセル剤である場合、それは、上記の種類の材料に加えて、液体担体を含有してもよい。コーティングとして、あるいは投与量単位の物理的形態を別様に修正するために、様々な他の材料が存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、糖、またはこれらの両方でコーティングされていてもよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物と、甘味剤としてのスクロースと、保存料としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベンと、染料と、サクランボ香料またはオレンジ香料などの香料を含有してもよい。無論のこと、任意の単位剤形を調製するのに使用されるあらゆる物質は、薬学的に純粋であり、かつ採用される量において実質的に無毒性であるべきである。加えて、本発明の化合物は、持続放出性調製物および製剤、例えば消化管の特定の領域に対して薬剤を特異的に送達することを可能にするものに組み込まれてもよい。
液体製剤も、胃または食道管を介して、経腸的に投与することができる。
【0093】
一実施形態においては、本発明の化合物は、腸リンパへの輸送を促進するように、食物とともに経口投与されることになる。
【0094】
別の実施形態においては、本発明の化合物は、食物の同時投与を伴って、あるいはそれを伴わずに、腸リンパへの輸送を促進するように、脂質系製剤とともに経口的に同時投与されることになる。
【0095】
経口送達用の脂質系製剤は、当該技術分野において公知であり、例えば、1種または複数の脂質構成成分を典型的には含有する、実質的に非水性のビヒクルを挙げることができる。脂質ビヒクルおよび結果として得られる脂質製剤は、脂質製剤分類システム(LFCS)に従って、それらが共有する共通の特色に応じて下に記載されているように有用に分類することができる(Pouton,C.W.,Eur.J.Pharm.Sci.11(Supp 2),S93-S98,2000、Pouton,C.W.,Eur.J.Pharm.Sci.29,278-287,2006)。
【0096】
したがって、脂質ビヒクルおよび結果として得られる脂質製剤は、任意選択で共溶媒とともに、油/脂質および/または界面活性剤を含有してもよい。I型製剤は、モノ、ジお
よびトリグリセリド、ならびにそれらの組み合わせなどの、消化を必要とする油または脂質を含む。II型製剤は、追加的な水不溶性界面活性剤とともに、I型製剤において使用された脂質および油を含有する、水不溶性の自己乳化性薬物送達系(SEDDS)である。III型製剤は、追加的な水溶性界面活性剤および/または共溶媒とともに(IIIa型)、あるいはより大きな割合の水溶性構成成分とともに(IIIb型)、I型製剤において使用された脂質および油を含有する、SEDDSまたは自己ミクロ乳化性薬物送達系(SMEDDS)である。IV型製剤は、親水性界面活性剤および共溶媒(例えばPEG、プロピレングリコール、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル)を主として含有し、水難溶性ではあるが親油性ではない薬物にとって有用である。任意のこのような脂質製剤(I型~IV型)が、本発明において企図される。
【0097】
一部の実施形態においては、脂質ビヒクルは、追加的な界面活性剤、共界面活性剤、または共乳化剤、または共溶媒を伴わずに、1種または複数の油または脂質を含有し、すなわち、1種または複数の油または脂質から本質的になる。一部のさらなる実施形態においては、脂質ビヒクルは、1種または複数の油または脂質を、1種または複数の水不溶性界面活性剤と一緒に、任意選択で1種または複数の共溶媒と一緒に含有する。一部のさらなる実施形態においては、脂質ビヒクルは、1種または複数の油または脂質を、1種または複数の水溶性界面活性剤と一緒に、任意選択で1種または複数の共溶媒と一緒に含有する。一部の実施形態においては、脂質ビヒクルは、油/脂質と界面活性剤と共溶媒との混合物を含有する。一部の実施形態においては、脂質ビヒクルは、1種または複数の界面活性剤/共界面活性剤/共乳化剤、および/または溶媒/共溶媒から本質的になる。
【0098】
本発明において使用することができる油または脂質の例としては、アーモンド油、ババス油、ブラックカラント種子油、ルリジサ油、カノーラ油、ヒマシ油、ココナッツ油、タラ肝油、コーン油、綿実油、月見草油、魚油、ブドウ種子油、辛子種子油、オリーブ油、パーム核油、パーム油、ピーナッツ油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、サメ肝油、ダイズ油、ヒマワリ油、クルミ油、コムギ胚芽油、アボカド油、米糠油、水素添加ヒマシ油、水素添加ココナッツ油、水素添加綿実油、水素添加パーム油、水素添加ダイズ油、部分水素添加ダイズ油、水素添加植物油、カプリル酸/カプリン酸グリセリド、分画化トリグリセリド、トリカプリン酸グリセリル、トリカプロン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリウンデカン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリルリノール酸グリセリド、飽和ポリグリコール化グリセリド、C8~C12脂肪酸鎖を主として含有する合成中鎖トリグリセリド、C8~C12脂肪酸鎖を主として含有する中鎖トリグリセリド、>C12の脂肪酸鎖を主として含有する長鎖トリグリセリド、修飾されたトリグリセリド、分画化トリグリセリド、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0099】
本発明において使用することができるモノグリセリドおよびジグリセリドの例としては、加水分解されたココナッツ油(例えばCapmul(登録商標)MCM)、加水分解されたコーン油(例えばMaisine(商標)35-1)を含む、8~40個の炭素原子の脂肪酸鎖を有するグリセロールモノエステルおよびグリセロールジエステルが挙げられる。一部の実施形態においては、モノグリセリドおよびジグリセリドは、8~18個の炭素鎖長の脂肪酸鎖を有するグリセロールのモノ-またはジ-飽和脂肪酸エステルである(例えば、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、およびジカプリン酸グリセリル)。
【0100】
脂質製剤における使用にとって好適な界面活性剤としては、Capryol(登録商標)90、Labrafac(登録商標)PG、Lauroglycol(登録商標)FCCなどの商品名で販売されている、例えば限定されるものではないがモノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコールなどのC8~C22脂肪酸のプロピレングリコールモノエステルおよびジエステル、限定されるものではないがパルミチン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ステアリン酸スクロースなどの糖脂肪酸エステル;限定されるものではないがラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;限定されるものではないがポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80、ポリソルベート85などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;限定されるものではないがステアリン酸ポリオキシル40およびオレイン酸ポリオキシル40などのポリオキシエチレンモノ-およびジ-脂肪酸エステル;Labrasol(登録商標)、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)50/13、Labrafil(登録商標)などの商品名で販売されているような、C8~C22脂肪酸のポリオキシエチレンモノエステルおよびジエステルと、C8~C22脂肪酸のグリセリルモノエステル、ジエステル、およびトリエステルとの混合物;Cremophor(登録商標)/Kolliphor EL、Cremophor(登録商標)/Kolliphor(登録商標)RH40、Cremophor(登録商標)/Kollipohor(登録商標)RH60などの商品名で販売されているような、限定されるものではないがポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素添加ヒマシ油、およびポリオキシル60水素添加ヒマシ油などのポリオキシエチレンヒマシ油化合物;限定されるものではないがポリオキシル20セトステアリルエーテルおよびポリオキシル10オレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;商品名で販売されている場合があるようなDL-.アルファ.-トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート;グリセリルモノエステル、ジエステル、およびトリエステル;C8~C22脂肪酸のグリセリルモノエステル、ジエステル、およびトリエステル;スクロースモノエステル、ジエステル、およびトリエステル;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム;限定されるものではないがポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー407などのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー;Brij(登録商標)35、Brij(登録商標)58、Brij(登録商標)78、Brij(登録商標)98などの商品名で販売されている、限定されるものではないがポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエチレンセチルアルコール、ポリオキシエチレンステアリルアルコール、ポリオキシエチレンオレイルアルコールなどのC8~C22脂肪アルコールのポリオキシエチレンエーテル、またはこれらのうちの任意の2種以上の混合物が挙げられる。
【0101】
共乳化剤または共界面活性剤が、製剤において使用されてもよい。好適な共乳化剤または共界面活性剤は、ホスホグリセリド;リン脂質、例えばレシチン、または室温で液体である遊離脂肪酸、例えばイソ-ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、およびカプロン酸であり得る。
【0102】
好適な溶媒/共溶媒としては、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびグリセロールが挙げられる。
【0103】
また、薬物の沈殿を阻止するため、または薬物放出速度を改変するために、ポリマーを製剤において使用することもできる。ある範囲のポリマーは、これらの特性を付与することが示されており、当業者には周知である。好適なポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセチルスクシネート、メチ
ルセルロースなどの他のセルロース由来のポリマー;Eudragit E100などのポリマーのEudragitシリーズなどのポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン、または例えばWarren et al.Mol.Pharmaceutics
2013,10,2823-2848に記載されているような他のものが挙げられる。
【0104】
製剤は、特に、吸収速度を制御するために、胃腸(GI)管における活性物質の持続性放出を提供するように選択され得る。これらの目的を達成するために、GI管において緩徐に分散/浸食される高融点の脂質、または緩徐に浸食されるマトリックスを形成するポリマーの使用などの、多くの異なるアプローチを使用することができる。これらの製剤は、大きな一体化した用量形態の形態を採ってもよく、あるいは例えばMishra,Handbook of Encapsulation and Controlled Release,CRC Press,Boca Raton,(2016)ISBN 978-1-4822-3234-9、Wilson and Crowley Controlled Release in Oral Drug Delivery,Springer,NY,ISBN 978-1-4614-1004-1(2011)、またはWise,Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology,Marcel Dekker,NY,ISBN 0-82467-0369-3(2000)に記載されているように、マイクロまたはナノ微粒子マトリックスとして存在してもよい。
【0105】
また、製剤は、抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)またはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、および微多孔性シリカなどの固化剤、例えばアルミノ-メタ珪酸マグネシウム(Neusilin)などの、液体系製剤に含まれることが当業者には一般に公知である材料を含有してもよい。
【0106】
別の実施形態においては、化合物は、胃腸管または腸細胞におけるプロドラッグの安定性を高めるように、酵素阻害剤とともに経口的に同時投与されてもよい。ある特定の実施形態においては、酵素阻害剤は、膵臓リパーゼを阻害することが想定され、この例としては、限定されるものではないが、AlliおよびOrlistatが挙げられる。他の実施形態においては、酵素阻害剤は、例えばモノアシルグリセロールリパーゼなどの細胞性リパーゼ酵素を阻害することが想定され、この例としては、限定されるものではないが、JZL184(4-ニトロフェニル-4-[ビス(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)(ヒドロキシ)メチル]ピペリジン-1-カルボキシレート)が挙げられる。
【0107】
上に記載されたような化合物または薬学的に許容されるその塩は、対象に対して投与される唯一の活性成分であってもよいが、一方で、この化合物とともに他の活性成分を投与することも、本発明の範囲内にある。1つまたは複数の実施形態においては、本発明の化合物のうちの2種以上の組み合わせが対象に対して投与されることが想定される。
【0108】
また、本発明は、治療有効量の、上に定義されたような化合物、または薬学的に許容されるその塩を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒に含む、医薬組成物も提供する。
【0109】
「組成物」という用語には、活性成分が担体としての材料に被包されて、活性成分が(他の担体とともに、あるいはそれを伴わずに)担体によって取り囲まれているカプセル剤が得られるような製剤も含まれることが意図される。
【0110】
当業者であれば容易に理解するように、薬学的に許容される担体の性質は、処置される状態および哺乳動物の性質に左右されることになる。特定の担体または送達系の選択は、当業者によって容易に決定され得ると考えられる。活性化合物を含有する任意の製剤を調
製する際は、化合物の活性がプロセス中に破壊されないこと、および化合物が破壊されることなくその作用部位まで到達可能であることを確保できるように、注意を払うべきである。一部の状況においては、例えば、マイクロカプセル化などの当該技術分野において公知の手段によって化合物を保護することが必要であり得る。
【0111】
当業者であれば、従来のアプローチを使用して、本発明の化合物にとって適切な製剤を容易に決定することができる。好ましいpH範囲および好適な賦形剤、例えば抗酸化剤の特定は、当該技術分野において慣用的なことである。所望の範囲のpH値を提供するために、緩衝系が慣用的に使用されており、カルボン酸緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、およびコハク酸塩が挙げられる。BHTまたはビタミンEなどのフェノール化合物、メチオニンまたはサルファイトなど還元剤、およびEDTAなどの金属キレート剤を含む様々な抗酸化剤が、このような製剤に関して利用可能である。
【0112】
薬学的に許容されるビヒクルおよび/または希釈剤には、あらゆるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためにそのような媒体および薬剤を使用することは、当該技術分野において周知である。従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合であるような場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企図される。補足的な活性成分を、組成物に組み込むこともできる。
【0113】
また、化合物は、1種または複数の追加的な治療剤と併せて投与されてもよい。併用は、上に記載されたような化合物と、他の活性成分とを、別個に、連続的に、あるいは同時に投与することを可能にし得る。併用は、医薬組成物の形態で提供されてもよい。
【0114】
「併用」という用語は、本明細書において使用される場合、上で定義されたような併用パートナーが依存的にまたは独立して投与されてもよく、あるいは別個の量の併用パートナーを伴う、異なる固定された組み合わせを使用することによって、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与されてもよい、組成物または部品のキットを指す。次いで、併用パートナーは、例えば同時に投与されてもよく、あるいは時間的にずらされて、すなわち異なる時点で、部品のキットの任意の部分について、等しいかもしくは異なった時間間隔で投与されてもよい。例えば、処置される患者の亜集団のニーズまたは単一の患者のニーズに対処するために、併用で投与される併用パートナーの総量の比は変化する可能性がある。これらの異なるニーズは、患者の年齢、性別、体重などに起因し得る。
【0115】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、組成物を単位剤形で製剤化することは特に有利である。単位剤形とは、本明細書において使用される場合、処置される哺乳動物対象のための単一の投与量として適している、物理的に分離した単位のことを指す。各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性物質を、必要とされる薬学的に許容されるビヒクルを伴って含有する。本発明の新規の単位剤形に関する仕様は、(a)活性物質および達成されるべき特定の治療効果の独特の特性、および(b)身体上の健康が本明細書において詳細に開示されているように損なわれている疾患状態を有する生きている対象における疾患の処置のために活性物質を配合するという、当該技術分野に固有の制約によって規定され、かつこれらに直接的に依存する。
【0116】
上述のように、主要な活性成分は、単位剤形で、好適な薬学的に許容されるビヒクルとともに、好都合かつ効果的な投与のために、治療有効量で配合することができる。単位剤形は、例えば0.25μgから約2000mgの範囲の量で、主要な活性化合物を含有することができる。割合で表現すると、活性化合物は、担体1mL当たり約0.25μgから約2000mgで存在することができる。組成物が補足的な活性成分を含有する場合、投与量は、通常の用量と、前記成分の投与様式を参照して決定される。
【0117】
本明細書において使用される場合、「有効量」という用語は、所望の投薬計画に従って投与された場合に、所望の治療活性がもたらされる化合物の量を指す。投薬は1回で行われてもよく、あるいは数分または数時間の間隔で行われてもよく、あるいはこれらの期間のうちのいずれか1つにわたって連続的に行われてもよい。好適な投与量は、各投与量について、体重1kg当たり約0.1ng~体重1kg当たり1gの範囲内にあり得る。典型的な投与量は、各投与量について、体重1kg当たり1μg~1gの範囲、例えば各投与量について、体重1kg当たり1mg~1gの範囲にある。一実施形態においては、投与量は、各投与量について、体重1kg当たり1mg~500mgの範囲であってもよい。別の実施形態においては、投与量は、各投与量について、体重1kg当たり1mg~250mgの範囲であり得る。なおも別の実施形態においては、投与量は、各投与量について、体重1kg当たり1mg~100mgの範囲、例えば各投与量について、体重1kg当たり最大50mgまでであり得る。
【0118】
「処置」および「処置する」という用語は、本明細書において使用される場合、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患のあらゆる処置を網羅し、それには、テストステロンレベルの上昇が有益である任意の疾患または障害の処置が含まれる。「予防」および「予防する」という用語は、本明細書において使用される場合、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患の予防または予防法を網羅し、それには、テストステロンレベルの上昇が有益である任意の疾患または障害の予防が含まれる。
【0119】
本明細書および後に続く特許請求の範囲の全体を通して、別途文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」という語および、例えば「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変化形態は、示された整数、または整数もしくはステップの群が包含されることは示唆するものの、任意の他の整数または整数の群を排除することは示唆しないものとして理解されるであろう。
【0120】
本明細書における、任意の従来刊行物(またはそれに由来する情報)に対する、または公知である任意の事柄に対する言及は、従来刊行物(またはそれに由来する情報)または公知である事柄が、本明細書が関連する目的分野において共通する一般的知識の一部を形成するということに対する承認もしくは了解、またはいかなる形態の示唆でもなく、かつそのようなものとして解釈されるべきではない。
【実施例0121】
これより、本発明については、以下の非限定的な実施例を参照しながら説明する。以下の実施例は、一般式(I)を代表するものであり、本発明の例示的化合物を調製するための詳細な方法を提供するものである。
【0122】
実施例1.酸無水物からの酸-トリグリセリドの合成。
4-((1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-4-オキソブタン酸(iii)
【化24】
【0123】
ピリジン(0.5mL)、CH2Cl2(0.5mL)、およびTHF(0.5mL)中のジグリセリドii(72.2mg、0.127mmol)の溶液に、無水コハク酸(iv)(25.4mg、0.254mmol)およびDMAP(15.5mg、0.127mmol)を添加して、この混合物を室温で17時間撹拌した。この時点でのTLC分析は、未反応のジグリセリドの存在を示したため、追加的な無水コハク酸(25.4mg、0.254mmol)およびDMAP(15.5mg、0.127mmol)を添加して、反応物を、さらに22時間40℃で加熱した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(20mL)で希釈し、1MのHCl(10mL)およびブライン(2×30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(15%~20%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物として酸-TGiii(77.0mg、91%)を得た。
【0124】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.27 (m, 1H), 4.30 (dd, J = 12.0, 4.3 Hz, 2H), 4.15 (dd, J = 12.0, 5.8 Hz, 2H), 2.72 - 2.61 (m, 4H), 2.31 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 1.66 -
1.54 (m, 4H), 1.35 - 1.19 (m, 48H), 0.87 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0125】
4-((1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-3/2-メチル-4-オキソブタン酸(iii)
【化25】
【0126】
ピリジン/THF/CH2Cl2(各2.5mL)中のジグリセリドii(200mg、0.351mmol)およびメチルコハク酸無水物(iv)(101mg、0.882mmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(64.6mg,0.527mmol)を添加して、この混合物を室温で22時間撹拌した。反応物を酢酸エチル(40mL)で希釈し、1MのHCl(30mL)およびブライン(3×30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、無色の固形物として粗製酸-TGiii(約1:1の位置異性体の混合物、240mg、定量的)を得た。これを、精製することなく、次の反応において使用した。
【0127】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.31 - 5.24 (m, 1H), 4.34 - 4.27 (m, 2H), 4.21 - 4.10
(m, 2H), 3.00 - 2.90 (m, 1H), 2.82 - 2.72 (m, 1H), 2.52 - 2.43 (m, 1H), 2.37 - 2.28 (m, 4H), 1.67 - 1.55 (m, 4H), 1.46 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.36 - 1.17 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H).注:積分および多重度が、位置異性体の混合物の存在を反映している。
【0128】
実施例2.R
5がメチル基である酸-トリグリセリドの合成
a)2-((4-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2-メチルブタノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイルジパルミテート(vi)
【化26】
【0129】
CH2Cl2(8mL)中の酸v(175mg、0.491mmol)および1,3-DGii(293mg、0.515mmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、59.9mg、0.491mmol)およびEDC・HCl(235mg、1.23mmol)を添加して、この混合物を室温で16時間撹拌した。反応物を、CH2Cl2(20mL)で希釈し、シリカゲルを添加して、この混合物を減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(3%~10%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の油状物としてトリグリセリドvi(406mg、91%)を得た。
【0130】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.67 - 7.63 (m, 4H), 7.45 - 7.34 (m, 6H), 5.25 (m, 1H), 4.30 - 4.22 (m, 2H), 4.15 - 4.08 (m, 2H), 3.69 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.75 (m, 1H), 2.27 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.25 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.99 (m, 1H), 1.64 - 1.55 (m, 5H), 1.32 - 1.20 (m, 48H), 1.14 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.04 (s, 9H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
【0131】
b)2-((4-ヒドロキシ-2-メチルブタノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイルジパルミテート(vii)
【化27】
【0132】
THF(20mL)中のTBDPSエーテルvi(406mg、0.447μmol)の溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF、THF中で1.0M、810μL、0.810μmol)および酢酸(46.1mL、0.810mmol)を0℃で添加して、この混合物を室温で3時間撹拌した。反応物を水(30mL)で希釈し、酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、有機抽出物をブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(0%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物としてアルコールvii(137mg、46%)を得た。
【0133】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.27 (m, 1H), 4.39 (dd, J = 12.0, 4.1 Hz, 1H), 4.32 (dd, J = 11.9, 4.3 Hz, 1H), 4.16 (dd, J = 12.0, 6.0 Hz, 1H), 4.12 (dd, J = 12.0, 5.6 Hz, 1H), 3.74 - 3.63 (m, 2H), 2.66 (m, 1H), 2.316 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.309
(t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.91 (m, 1H), 1.70 (m, 1H), 1.63 - 1.58 (m, 4H), 1.34 - 1.25 (m, 48H), 1.19 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0134】
c)2-((2-メチル-4-オキソブタノイル)オキシ)プロパン-1,3-ジイルジパルミテート(viii)
【化28】
【0135】
CH2Cl2(12mL)中のアルコールvii(137mg、0.205mmol)およびセライト(90mg)の懸濁液に、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC、89.1mg、0.410mmol)を0℃で添加して、この混合物を室温で2.5時間撹拌した。反応物を、シリカゲルの短いパッドを通して濾過し、50%の酢酸エチル/ヘキサンで溶出し、濾液を減圧下で濃縮して、黄色の油状物として粗製アルデヒドviii(134mg、定量的)を得た。これを、精製することなく使用した。
【0136】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.75 (s, 1H), 5.27 (m, 1H), 4.30 (dd, J = 12.0, 4.2 Hz, 2H), 4.16 - 4.09 (m, 2H), 2.99 (m, 1H), 2.89 (ddd, J = 18.1, 7.8, 0.8 Hz, 1H), 2.55 (ddd, J = 18.0, 5.5, 0.9 Hz, 1H), 2.32 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.30 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.64 - 1.58 (m, 4H), 1.33 - 1.25 (m, 48H), 1.22 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
【0137】
d)4-((1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-3-メチル-4-オキソブタン酸(iii)
【化29】
【0138】
アセトン(7.5mL)および水(2.5mL)中のアルデヒドviii(134mg、0.205μmol)に、過マンガン酸カリウム(65.4mg、0.410μmol)を添加して、この混合物を室温で19時間撹拌した。反応物を、水(25mL)で希釈し、1MのHClを使用してpH2に酸性化し、水性層をCH2Cl2(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(10%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物として酸iii(79.6mg、58%)を得た。
【0139】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.27 (m, 1H), 4.32 - 4.27 (m, 2H), 4.18 - 4.12 (m, 2H), 2.92 (m, 1H), 2.78 (dd, J = 16.9, 8.0 Hz, 1H), 2.46 (dd, J = 16.9, 6.0 Hz, 1H), 2.304 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.297 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.62 - 1.56 (m, 4H), 1.31 - 1.19 (m, 51H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0140】
実施例3.R
3がアセタール自壊性(ASI)基である一般式(III)の化合物の合成。
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル((((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シク
ロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)メチル)スクシネート(12)
【化30】
【0141】
CH2Cl2(2mL)中のMTMエーテルix(46.9mg、0.135mmol)の溶液に、CH2Cl2(1mL)中の塩化スルフリル(13.3μL、0.164mmol)の溶液を0℃で添加して、この混合物を0℃で30分間、その後室温でさらに1時間撹拌した。反応物をN2流の下で濃縮し、トルエン(2×5mL)から同時蒸発させ、減圧下で乾燥させた。次いで、粗製残留物を、トルエン(1.5mL)に再溶解させ、予め1時間撹拌したトルエン(1.5mL)中の酸iii(50.0mg、0.0747mmol)およびDBU(16.8μL、0.112mmol)の溶液に添加して、この混合物を室温で2時間撹拌した。反応物をCH2Cl2(20mL)で希釈し、有機相を飽和NaHCO3水溶液(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(10%~25%の酢酸エチル/ヘキサン、0.5%のEt3Nを伴う)による精製によって、淡黄色の油状物として化合物12(8.4mg、12%)を得た。
【0142】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.73 (s, 1H), 5.34 - 5.23 (m, 3H), 4.30 (dd, J = 11.9, 4.4 Hz, 2H), 4.15 (dd, J = 11.9, 5.8 Hz, 2H), 3.54 (dd, J = 8.3, 8.3 Hz, 1H), 2.65 (s, 4H), 2.48 - 2.24 (m, 8H), 2.09 - 1.99 (m, 2H), 1.92 - 1.80 (m, 2H), 1.74 - 1.36 (m, 9H), 1.35 - 1.21 (m, 49H), 1.19 (s, 3H), 1.17 - 0.91 (m, 5H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.80 (s, 3H).
ESI-HRMS: C59H101O10[M + H+]の計算値969.7389; 実測値969.7409.
【0143】
1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)4-((((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)メチル)2/3-メチルスクシネート(13/14)
【化31】
【0144】
CH2Cl2(3mL)中のMTMエーテルix(76.3mg、0.219mmol)の溶液に、CH2Cl2(1.5mL)中の塩化スルフリル(21.4μL、0.264mmol)の溶液を0℃で添加して、0℃で30分間、その後室温でさらに45分間撹
拌した。反応物をN2流の下で濃縮し、トルエン(2×5mL)から同時蒸発させ、減圧下で乾燥させた。次いで、粗製残留物を、トルエン(2.5mL)に再溶解させ、予め45分間撹拌したトルエン(2.5mL)中の酸iii(99.4mg、0.146mmol)およびDBU(32.8μL、0.220mmol)の溶液に添加して、この混合物を室温で3時間撹拌した。反応物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、有機相を飽和NaHCO3水溶液(2×20mL)およびブライン(2×20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(5%~15%の酢酸エチル/ヘキサン、0.5%のEt3Nを伴う)による精製によって、淡黄色の油状物として化合物13および14(1:1の位置異性体の混合物、74.2mg、52%)を得た。
【0145】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.73 (s, 1H), 5.38 - 5.21 (m, 3H), 4.32 - 4.25 (m, 2H), 4.20 - 4.10 (m, 2H), 3.58 - 3.50 (m, 1H), 2.98 - 2.87 (m, 1H), 2.81 - 2.71 (m, 1H), 2.47 - 2.24 (m, 9H), 2.08 - 1.98 (m, 2H), 1.92 - 1.80 (m, 2H), 1.75 - 1.51 (m, 8H), 1.50 - 1.20 (m, 53H), 1.19 (s, 3H), 1.17 - 0.89 (m, 5H), 0.88 (t, J =
7.0 Hz, 6H), 0.80 (s, 1.5H), 0.79 (s, 1.5H).注:積分および多重度が、可能性のあ
るジアステレオ異性体に加えて、1:1の位置異性体の混合物の存在を反映している。
【0146】
1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)4-((((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)メチル)2-メチルスクシネート(13)
【化32】
【0147】
酸-TGiiiのα-メチル位置異性体から、上の通りに調製した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.72 (s, 1H), 5.32 - 5.22 (m, 3H), 4.29/4.27 (各々dd,
J = 12.0, 4.2 Hz, 2H), 4.17/4.14 (各々dd, J = 11.9, 6.0 Hz, 2H), 3.529/3.524 (
各々t, J = 8.3 Hz, 1H), 2.93 (m, 1H), 2.75 (dd, J = 16.8, 7.9 Hz, 1H), 2.49 - 2.23 (m, 9H), 2.08 - 1.96 (m, 2H), 1.91 - 1.79 (m, 2H), 1.71 (m, 1H), 1.67 - 1.51 (m, 8H), 1.49 - 1.07 (m, 51H), 1.22 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.18 (s, 3H), 1.06 - 0.90 (m, 3H), 0.87 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 0.79 (s, 3H).注:二重のシグナル(例えば、
4.29/4.27)は、ジアステレオ異性体の混合物の存在を反映している。
ESI-HRMS: C60H102O10Na [M + Na+]の計算値1005.7365; 実測値1005.7370.
【0148】
実施例4.R
3がカルボキシ-アセタールまたはカルボキシ-メチルアセタール自壊性(CASIまたはCMSI)基である、一般式(III)の化合物の合成。
a)クロロメチル((1S,4S)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)(メチル)カルバメート(xi)
【化33】
【0149】
CH2Cl2(4mL)中のセルトラリン塩酸塩(50.0mg、0.146mmol)に、クロロギ酸クロロメチル(25.9μL、0.292mmol)およびピリジン(41.3μL、0.511mmol)を0℃で添加して、この混合物を0℃で15分間、その後室温で1時間撹拌した。反応物をCH2Cl2(20mL)で希釈し、有機相を飽和NaHCO3水溶液(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、淡黄色の油状物としてカルバミン酸クロロメチルxi(58.2mg、定量的)を得た。これを、精製することなく使用した。
【0150】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.34 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.31 - 7.25 (m, 1H), 7.24 -
7.16 (m, 1H), 7.11 - 7.06 (m, 1H), 6.97 (dd, J = 7.0, 2.0 Hz, 1H), 6.84 - 6.79 (m, 1H), 5.91 - 5.83 (m, 1H), 5.51 (dd, J = 10.4, 6.5 Hz, 0.6H), 5.32 (dd, J = 14.5, 6.1 Hz, 0.4H), 4.20 (dd, J = 5.2, 2.9 Hz, 1H), 2.78 (s, 1.2H), 2.72 (s, 1.8H), 2.36 - 2.22 (m, 1H), 2.07 - 1.99 (m, 1H), 1.87 - 1.70 (m, 2H).注:分数積分は、回転異性体の混合物の存在を反映している。
【0151】
b)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(((((1S,4S)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)(メチル)カルバモイル)オキシ)メチル)スクシネート(1)
【化34】
【0152】
トルエン(1.2mL)中の酸-TGiii(25.1mg、37.5μmol)、カルバミン酸クロロメチルxi(13.0mg、32.6μmol)、およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI、3.6mg、9.8μmol)の懸濁液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(7.8μL、52.2μmol)を添加して、この混合物を還流下で1時間加熱した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(20mL)で希釈し、有機相を水およびブライン(各々20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(15%の酢酸エチル/ヘキサン)によって、無色の油状物として化合物1(29.0mg、86%)を得た。
【0153】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.33 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.30 - 7.24 (m, 1H), 7.22 -
7.17 (m, 2H), 7.09 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.84 - 6.78 (m, 1H), 5.89 - 5.83 (m, 2H), 5.49 (dd, J = 10.1, 6.6 Hz, 0.6H), 5.36 - 5.20 (m,
1.4H), 4.33 - 4.25 (m, 2H), 4.21 - 4.10 (m, 3H), 2.78 - 2.61 (m, 7H), 2.38 - 2.23 (m, 5H), 2.06 - 1.96 (m, 1H), 1.87 - 1.69 (m, 2H), 1.67 - 1.53 (m, 4H), 1.38 -
1.19 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).注:分数積分は、回転異性体の混合物の存
在を反映している。
ESI-HRMS: C58H89Cl2NO10Na [M + Na+]の計算値1052.5756; 実測値1052.5774.
【0154】
a2)1-クロロエチル((1S,4S)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)(メチル)カルバメート(xi)
【化35】
【0155】
CH2Cl2(5mL)中のセルトラリン塩酸塩(50.0mg、0.146mmol)に、クロロギ酸1-クロロエチル(25.2μL、0.233mmol)およびピリジン(35.4μL、0.438mmol)を0℃で添加して、この混合物を0℃で30分間、その後室温で19時間撹拌した。反応物をCH2Cl2(25mL)で希釈し、有機相を飽和NaHCO3水溶液(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(15%の酢酸エチル/ヘキサン、0.5%のEt3Nを伴う)による精製によって、無色の固形物としてカルバミン酸クロロエチルxi(50.4mg、84%)を得た。
【0156】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.34 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.31 - 7.24 (m, 1H), 7.24 -
7.16 (m, 2H), 7.13 - 7.04 (m, 1H), 7.00 - 6.94 (m, 1H), 6.85 - 6.77 (m, 1H), 6.75 - 6.64 (m, 1H), 5.54 - 5.46 (m, 0.6H), 5.41 - 5.33 (m, 0.4H), 4.20 (br s, 1H), 2.74/2.71/2.70 (各々s, 3H), 2.36 - 2.24 (m, 1H), 2.09 - 1.97 (m, 1H), 1.90 - 1.71 (m, 5H).注:分数積分および二重のシグナルは、回転異性体およびジアステレオ異性体両方の存在を反映している。
【0157】
b2)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(1-((((1S,4S)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル)(メチル)カルバモイル)オキシ)エチル)スクシネート(2)
【化36】
【0158】
トルエン(1.2mL)中の酸-TGiii(25.0mg、37.4μmol)、カルバミン酸1-クロロエチルxi(13.4mg、32.5μmol)、およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI、3.6mg、9.7μmol)の懸濁液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(7.8μL、52.0
μmol)を添加して、この混合物を還流下で1時間加熱した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(30mL)で希釈し、有機相を水およびブライン(各々20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(4%~8%の酢酸エチル/トルエン)によって、無色の油状物として化合物2(19.7mg、58%)を得た。
【0159】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.33 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.31 - 7.16 (m, 3H), 7.12 -
7.06 (m, 1H), 6.98 - 6.87 (m, 2H), 6.85 - 6.77 (m, 1H), 5.51 - 5.43 (m, 0.6H), 5.36 - 5.16 (m, 1.4H), 4.35 - 4.24 (m, 2H), 4.21 - 4.11 (m, 3H), 2.77 - 2.56 (m,
7H), 2.37 - 2.24 (m, 5H), 2.06 - 1.95 (m, 1H), 1.85 - 1.71 (m, 2H), 1.65 - 1.49
(m, 7H), 1.37 - 1.19 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H).注:分数積分は、回転異
性体およびジアステレオ異性体両方の存在を反映している。
ESI-HRMS: C59H91Cl2NO10Na [M + Na+]の計算値1066.5912; 実測値1066.5957.
【0160】
以下のカルボキシ-アセタールまたはカルボキシ-メチルアセタール自壊性含有化合物は、上の方法に従って調製した:
a3)クロロメチル((4aS,6R,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-6-((S)-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル)-7-メトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-9-イル)カーボネート(xi)
【化37】
【0161】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.88 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.61 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.88 (s, 1H), 5.82 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.72 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 4.47 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 3.48 (s, 3H), 3.06 - 2.98 (m, 2H), 2.89 (m, 1H), 2.63 (dd, J = 11.9,
5.0 Hz, 1H), 2.40 - 2.23 (m, 4H), 2.12 (t, J = 9.9 Hz, 1H), 2.03 - 1.79 (m, 3H), 1.71 (dd, J = 12.9, 2.5 Hz, 1H), 1.35 (s, 3H), 1.28 (m, 2H), 1.06 (m, 1H), 1.03 (s, 9H), 0.81 (m, 1H), 0.66 (m, 1H), 0.57 - 0.41 (m, 2H), 0.16 - 0.08 (m, 2H).
【0162】
b3)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル((((((4aS,6R,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-6-((S)-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル)-7-メトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-9-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)メチル)スクシネート(4)
【化38】
【0163】
化合物4は、以下に記載される通り、化合物1および2に関して上で使用した方法の代替的方法を使用して調製した。DMF(0.6mL)中の酸-TGiii(12.9mg、19.3μmol)に、炭酸銀(3.1mg、11.2μmol)を添加して、この混合物を室温で1時間撹拌した。反応物を減圧下で濃縮して、灰色の残留物を得た。これに、トルエン(0.6mL)およびTBAI(1.8mg、4.8μmol)中の炭酸クロロメチルxi(9.0mg、16.1μmol)を添加して、この混合物を還流下で1.5時間加熱した。反応物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル(30mL)で希釈した。有機相を水(25mL)およびブライン(25mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(5%~15%の酢酸エチル/ヘキサン)によって、無色の固形物として化合物4(3.7mg、19%)を得た。
【0164】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.88 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.86 (s, 1H), 5.82 (s, 2H), 5.27 (m, 1H), 4.46 (s, 1H), 4.30 (dd, J = 12.0, 4.3 Hz, 2H), 4.15 (dd, J = 12.0, 5.9 Hz, 2H), 3.49 (s, 3H), 3.06 - 2.98 (m, 2H), 2.89
(m, 1H), 2.73 - 2.60 (m, 5H), 2.39 - 2.22 (m, 8H), 2.12 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 2.01 (m, 1H), 1.93 - 1.80 (m, 2H), 1.75 - 1.49 (m, 5H), 1.35 (s, 3H), 1.34 - 1.20 (m, 49H), 1.05 (m, 1H), 1.03 (s, 9H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.80 (m, 1H), 0.66 (m, 1H), 0.56 - 0.44 (m, 2H), 0.16 - 0.09 (m, 2H).
ESI-HRMS: C70H114NO14[M + H+]の計算値1192.8234; 実測値1192.8244.
【0165】
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(1-(((((4aS,6R,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-6-((S)-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル)-7-メトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-9-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)エチル)スクシネート(5)
【化39】
【0166】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.88/6.87 (各々d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.77 (m, 1H), 6.59
(d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.89/5.88 (各々s, 1H), 5.25 (m, 1H), 4.46 (br s, 1H), 4.33
- 4.26 (m, 2H), 4.19 - 4.11 (m, 2H), 3.49/3.48 (各々s, 3H), 3.06 - 2.98 (m, 2H), 2.89 (m, 1H), 2.74 - 2.57 (m, 5H), 2.38 - 2.20 (m, 8H), 2.12 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 1.98 (td, J = 12.5, 5.5 Hz, 1H), 1.91 - 1.77 (m, 2H), 1.70 (dd, J = 13.4, 2.9 Hz, 1H), 1.64 - 1.52 (m, 7H), 1.35 (s, 3H), 1.33 - 1.18 (m, 49H), 1.06 (m, 1H), 1.03 (s, 5H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.81 (m, 1H), 0.66 (m, 1H), 0.55 - 0.43 (m, 2H), 0.15 - 0.07 (m, 2H).注:二重のシグナルは、ジアステレオ異性体の混合物の存在を反映している。
ESI-HRMS:C71H116NO14[M+H+]の計算値1206.8390、実測値1206.8401.
【0167】
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(1-(((((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)エチル)スクシネート(20)
【化40】
【0168】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.75 (m, 1H), 5.73 (s, 1H), 5.25 (m, 1H), 4.53 (m, 1H), 4.34 - 4.26 (m, 2H), 4.18 - 4.11 (m, 2H), 2.73 - 2.58 (m, 4H), 2.48 - 2.15 (m, 9H), 2.02 (m, 1H), 1.91 - 1.82 (m, 2H), 1.78 - 1.55 (m, 8H), 1.521 (d, J = 5.4
Hz, 1.5H), 1.517 (d, J = 5.4 Hz, 1.5H), 1.47 - 1.20 (m, 52H), 1.19 (s, 3H), 1.11 - 0.90 (m, 3H), 0.88 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 0.86 (s, 3H).注:二重のシグナルは、
ジアステレオ異性体の混合物の存在を反映している。
ESI-HRMS: C61H102O12Na [M + Na+]の計算値1049.7263; 実測値1049.7273.
【0169】
実施例5.R
3がトリメチルロック(TML)自壊性基である一般式(III)の化合物の合成。
a)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(2-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-メチルブタン-2-イル)-3,5-ジメチルフェニル)スクシネート(xiv)
【化41】
【0170】
CH2Cl2(4mL)中の酸-TGiii(100mg、0.149mmol)およびフェノールxiii(53.0mg、0.164mmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、18.3mg、0.149mmol)およびEDC・HCl(71.6mg、0.374mmol)を添加して、この混合物を室温で19時間撹拌した。反応物を、CH2Cl2(10mL)で希釈し、シリカゲルを添加して、この混合物を減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(3%~7.5%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の油状物としてTMLトリグリセリドxiv(84.6mg、58%)を得た。
【0171】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.80 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.55 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 5.29 (m, 1H), 4.31 (dd, J = 11.9, 4.4 Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 12.0, 5.8 Hz, 2H), 3.51 - 3.44 (m, 2H), 2.85 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.75 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.51 (s,
3H), 2.30 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.22 (s, 3H), 2.06 - 1.99 (m, 2H), 1.65 - 1.56 (m, 4H), 1.46 (s, 6H), 1.37 - 1.20 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.84 (s, 9H), -0.03 (s, 6H).
【0172】
b)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(2-(4-ヒドロキシ-2-メチルブタン-2-イル)-3,5-ジメチルフェニル)スクシネート(xv)
【化42】
【0173】
CH2Cl2(1mL)およびMeOH(1mL)中のTBSエーテルxiv(83.7mg、86.0μmol)に、10-カンファースルホン酸(3.0mg、12.9μmol)を添加して、この混合物を室温で1時間撹拌した。反応物を水(10mL)で希釈し、水性層をCH2Cl2(3×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、飽和NaHCO3水溶液およびブライン(各々15mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(15%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の油状物としてアルコールxv(59.9mg、81%)を得た。
【0174】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.81 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 5.28 (m, 1H), 4.30 (dd, J = 12.0, 4.4 Hz, 2H), 4.17 (dd, J = 12.0, 5.8 Hz, 2H), 3
.51 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.88 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.75 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.52 (s, 3H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.22 (s, 3H), 2.05 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.65 - 1.57 (m, 4H), 1.50 (s, 6H), 1.37 - 1.20 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0175】
c)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(3,5-ジメチル-2-(2-メチル-4-オキソブタン-2-イル)フェニル)スクシネート(xvi)
【化43】
【0176】
CH2Cl2(3mL)中のアルコールxv(59.9mg、0.0697mmol)およびセライト(30mg)の懸濁液に、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC、30.1mg、0.139mmol)を0℃で添加して、この混合物を室温で2時間撹拌した。反応物を、シリカゲルの短いパッドを通して濾過し、50%の酢酸エチル/ヘキサンで溶出し、濾液を減圧下で濃縮して、黄色の油状物として粗製アルデヒドxvi(59.8mg、定量的)を得た。これを、精製することなく使用した。
【0177】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.54 (t, J = 2.6 Hz, 1H), 6.84 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 5.28 (m, 1H), 4.30 (dd, J = 12.0, 4.3 Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 12.0, 5.8 Hz, 2H), 2.86 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.83 (d, J = 2.6 Hz, 2H), 2.75 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.53 (s, 3H), 2.30 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.23 (s, 3H), 1.64 - 1.58 (m, 4H), 1.56 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 1.32 - 1.22 (m, 48H), 0.88 (t, J =
6.9 Hz, 6H).
【0178】
d)1,3-(2-((4-((1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-4-オキソブタノイル)オキシ)-4,6-ジメチルフェニル)-3-メチルブタン酸(xvii)
【化44】
【0179】
アセトン(2.4mL)および水(0.8mL)中のアルデヒドxvi(59.8mg、69.7μmol)に、過マンガン酸カリウム(12.2mg、76.7μmol)を添加して、この混合物を室温で17時間撹拌した。反応物を、水(10mL)で希釈し、1MのHClを使用してpH2に酸性化し、水性層をCH2Cl2(3×15mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(10%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物として酸xvii(30.4mg、50%)を得た。
【0180】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.81 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 5.28 (m, 1H), 4.30 (dd, J = 11.9, 4.4 Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 12.0, 5.8 Hz, 2H), 2.88 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.84 (s, 2H), 2.75 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.53 (s, 3H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.22 (s, 3H), 1.64 - 1.58 (m, 4H), 1.57 (s, 6H), 1.34 -
1.20 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0181】
e)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(2-(4-(((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13-14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)-2-メチル-4-オキソブタン-2-イル)-3,5-ジメチルフェニル)スクシネート(15)
【化45】
【0182】
CH2Cl2(1.2mL)中の酸xvii(29.0mg、33.2μmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、4.1mg、33.2μmol)、EDC・HCl(16.0mg、83.0μmol)、およびテストステロン(17.2mg、60.0μmol)を添加して、この混合物を室温で19時間撹拌した。反応物を、CH2Cl2(5mL)で希釈し、シリカゲルを添加して、この混合物を減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(12.5%~20%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物として化合物15(15.0mg、40%)を得た。
【0183】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.80 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.57 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 5.72 (s, 1H), 5.28 (m, 1H), 4.46 (dd, J = 9.1, 7.3 Hz, 1H), 4.31 (dd, J = 11.9, 4.4 Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 11.9, 5.8 Hz, 2H), 2.88 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.81 (d, J = 11.4 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.54 (s, 3H), 2.50 - 2.23 (m, 8H), 2.21 (s, 3H), 2.14 - 1.96 (m, 2H), 1.81 (m, 1H), 1.69 (m, 1H), 1.65 - 1.47 (m, 14H), 1.40 - 1.20 (m, 51H), 1.17 (s, 3H), 1.10 - 0.92 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.66 (s, 3H).
ESI-HRMS: C71H115O11[M + H+]の計算値1143.8434; 実測値1143.8443.
【0184】
以下のトリメチルロック自壊性基含有化合物は、上の方法に従って調製した:
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(2-(4-(((1S,4S)-4-(3,4-ジクロロフェニル)-1,2,3,4-テトラ-ヒドロナフタレン-1-イル)(メチル)アミノ)-2-メチル-4-オキソブタン-2-イル)-3,5-ジメチルフェニル)スクシネート(3)
【化46】
【0185】
CH2Cl2(1mL)中のセルトラリン塩酸塩(10.2mg、29.8μmol)および酸xvii(20.0mg、22.9μmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、2.8mg、22.9μmol)、EDC・HCl(11.0mg、57.3μmol)、およびトリエチルアミン(8.0μL、57.3μmol)を添加して、この混合物を室温で16時間撹拌した。反応物を、CH2Cl2(5mL)で希釈し、シリカゲルを添加して、この混合物を減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(15%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物として化合物3(22.2mg、83%)を得た。
【0186】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.32 (d, J = 8.3 Hz, 0.7H), 7.31 (d, J = 8.3 Hz, 0.3H), 7.25 - 7.11 (m, 2H), 7.08 - 7.02 (m, 1.3H), 6.97 - 6.85 (m, 1.7H), 6.83 - 6.79 (m, 1.7H), 6.73 (dd, J = 8.3, 2.0 Hz, 0.3H), 6.60 (d, J = 1.8 Hz, 0.7H), 6.57 (d, J = 1.7 Hz, 0.3H), 5.88 (dd, J = 10.5, 6.3 Hz, 0.7H), 5.24 (m, 1H), 4.96 (dd, J = 10.9, 5.7 Hz, 0.3H), 4.32 - 4.25 (m, 2H), 4.20 - 4.10 (m, 3H), 3.09 (d, J = 15.5 Hz, 0.7H), 3.01 (d, J = 8.2 Hz, 0.3H), 2.92 - 2.73 (m, 4.3H), 2.70 - 2.64
(m, 3H), 2.60 - 2.56 (m, 3.7H), 2.29 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 2.23 (s, 2.1H), 2.21 (s, 0.9H), 2.21 (m, 1H), 1.95 (m, 1H), 1.69 (s, 2.1H), 1.66 (s, 0.9H), 1.62 (s, 3H), 1.70 - 1.52 (m, 6H), 1.34 - 1.20 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).注:分
数積分は、回転異性体の混合物の存在を反映している。
ESI-HRMS: C69H103Cl2NO9Na [M + Na+]の計算値1182.6902; 実測値1182.6904.
【0187】
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(2-(4-(((4aS,6R,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピル-メチル)-6-((S)-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル)-7-メトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-9-イル)オキシ)-2-メチル-4-オキソブタン-2-イル)-3,5-ジメチルフェニル)スクシネート(6)
【化47】
【0188】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.80 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 6.61 - 6.57 (m, 2H), 6.53 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.90 (s, 1H), 5.28 (m, 1H), 4.39 (s, 1H), 4.30 (dd, J = 11.9
, 4.4 Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 11.9, 5.8 Hz, 2H), 3.37 (s, 3H), 3.06 (ABq, 2H), 3.01 - 2.81 (m, 5H), 2.76 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.60 (dd, J = 11.6, 4.8 Hz, 1H), 2.55 (s, 3H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.37 - 2.18 (m, 4H), 2.21 (s, 3H), 2.10 (t, J = 9.8 Hz, 1H), 1.95 (td, J = 12.6, 5.4 Hz, 1H), 1.89 - 1.74 (m, 2H), 1.71 - 1.51 (m, 11H), 1.33 (s, 3H), 1.45 - 1.14 (m, 49H), 1.02 (s, 9H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.83 - 0.61 (m, 2H), 0.54 - 0.42 (m, 2H). 0.14 - 0.07 (m, 2H).
ESI-HRMS: C81H128NO13[M + H+]の計算値1322.9380; 実測値1322.9404.
【0189】
実施例6.R
3がp-ヒドロキシベンジル(PHB)カルボニル自壊性基である一般式(III)の化合物の合成。
a)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(4-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-フェニル)スクシネート(xxi)
【化48】
【0190】
CH2Cl2(15mL)中の酸-TGiii(200mg、0.300mmol)およびフェノールxx(93.1mg、0.391mmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、48.0mg、0.393mmol)およびEDC・HCl(123mg、0.639mmol)を添加して、この混合物を室温で21時間撹拌した。反応物を、CH2Cl2(15mL)で希釈し、シリカゲルを添加して、この混合物を減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(5%~15%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の油状物としてPHBトリグリセリドxxi(202mg、76%)を得た。
【0191】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.34 - 7.29 (m, 2H), 7.07 - 7.02 (m, 2H), 5.30 (m, 1H), 4.72 (s, 2H), 4.31 (dd, J = 12.0, 4.3 Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 12.0, 5.9 Hz, 2H), 2.88 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 4H),
1.63 - 1.55 (m, 4H), 1.33 - 1.20 (m, 48H), 0.94 (s, 9H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.09 (s, 6H).
【0192】
b)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)スクシネート(xxii)
【化49】
【0193】
CH2Cl2(2.5mL)およびMeOH(2.5mL)中のTBSエーテルxxi(181mg、0.203mmol)に、10-カンファースルホン酸(8.0mg、0.0344mmol)を添加して、この混合物を室温で3.5時間撹拌した。反応物をCH2Cl2(30mL)で希釈し、有機相を飽和NaHCO3水溶液(2×20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、粗生
成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(10%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物としてアルコールxxii(128mg、81%)を得た。
【0194】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.40 - 7.35 (m, 2H), 7.11 - 7.06 (m, 2H), 5.30 (m, 1H), 4.69 (d, J = 5.9 Hz, 2H), 4.31 (dd, J = 12.0, 4.3 Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 12.0, 5.9 Hz, 2H), 2.92 - 2.86 (m, 2H), 2.79 - 2.73 (m, 2H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 1.64 - 1.55 (m, 4H), 1.34 - 1.19 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0195】
c)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)-フェニル)スクシネート(xxiii)
【化50】
CH
2Cl
2(2mL)中のアルコールxxii(20.0mg、25.8μmol)に、クロロギ酸4-ニトロフェニル(8.4mg、41.6μmol)およびピリジン(3.8μL、47.0μmol)を0℃で添加して、この混合物を0℃で30分間、その後室温で4.5時間撹拌した。反応物をCH
2Cl
2(30mL)で希釈し、有機相を飽和NaHCO
3水溶液およびブライン(各々3×25mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(10%~20%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物としてPNPカーボネートxxiii(15.7mg、65%)を得た。
【0196】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.31 - 8.25 (m, 2H), 7.48 - 7.43 (m, 2H), 7.41 - 7.36
(m, 2H), 7.17 - 7.11 (m, 2H), 5.29 (m, 1H), 5.28 (s, 2H), 4.32 (dd, J = 12.0, 4.3 Hz, 2H), 4.17 (dd, J = 12.0, 5.8 Hz, 2H), 2.93 - 2.87 (m, 2H), 2.79 - 2.73 (m, 2H), 2.30 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 1.63 - 1.51 (m, 4H), 1.34 - 1.18 (m, 48H), 0.88
(t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0197】
d)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(4-((((((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロ-ペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)スクシネート(16)
【化51】
【0198】
CH2Cl2(10mL)中のテストステロン(48.0mg、0.166mmol)お
よびPNPカーボネートxxiii(127mg、0.135mmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、21.3mg、0.174mmol)およびDIPEA(7.1μL、0.0406mmol)を添加して、この混合物を室温で5日間撹拌した。反応物をCH2Cl2(20mL)で希釈し、1MのHCl、水、およびブライン(各々20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(5%の酢酸エチル/トルエン)による精製によって、無色の固形物として化合物16(20.4mg、14%)を得た。
【0199】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.42 - 7.37 (m, 2H), 7.12 - 7.05 (m, 2H), 5.73 (s, 1H), 5.29 (m, 1H), 5.12 (s, 2H), 4.52 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 4.31 (dd, J = 12.0, 4.3
Hz, 2H), 4.16 (dd, J = 12.0, 5.9 Hz, 2H), 2.89 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.47 - 2.34 (m, 3H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.34 - 2.16 (m, 2H), 2.02 (m, 1H), 1.89 - 1.80 (m, 2H), 1.74 - 1.53 (m, 8H), 1.47 - 1.19 (m, 51H),
1.18 (s, 3H), 1.10 - 0.92 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.85 (s, 3H).
ESI-HRMS: C66H105O12[M + H+]の計算値1089.7601; 実測値1089.7617.
【0200】
実施例7.R
3が反転エステル自壊性(FSI)基である一般式(III)の化合物の合成。
a)(8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル4-ブロモブタノエート(xxvi)
【化52】
【0201】
CH2Cl2(3mL)中のテストステロン(29.9mg、0.100mmol)および4-ブロモ酪酸(xxv)(21.0mg、0.130mmol)の溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、15.5mg、0.130mmol)およびDCC(43.8mg、0.210mmol)を添加して、この混合物を室温で24時間撹拌した。別の0.6当量の酸、1当量のDCC、0.6当量のDMAPを添加して、この混合物を室温でさらに2日間撹拌した。反応物を、CH2Cl2(10mL)で希釈し、シリカゲルを添加して、この混合物を減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(25%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、無色の固形物として臭化物xxvi(26.7mg、59%)を得た。
【0202】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.73 (s, 1H), 4.62 (dd, J = 9.1, 7.9 Hz, 1H), 3.47 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.50 (td, J = 7.1, 1.0 Hz, 2H), 2.47 - 2.23 (m, 4H), 2.22 - 2.13 (m, 3H), 2.06 - 1.99 (m, 1H), 1.85 (m, 1H), 1.78 (m, 1H), 1.74 - 1.63 (m, 2H), 1.61 - 1.53 (m, 2H), 1.52 - 1.32 (m, 3H), 1.23 - 1.15 (m, 1H), 1.19 (s, 3H) 1.11 - 0.91 (m, 3H), 0.83 (s, 3H).
【0203】
b)1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(4-(((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1
H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)-4-オキソブチル)スクシネート(17)
【化53】
【0204】
トルエン(1.5mL)中の酸-TGiii(30.9mg、46.2μmol)および臭化物xxvi(18.3mg、41.8μmol)の懸濁液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(9.9μL、66.2μmol)を添加して、この混合物を還流下で21時間加熱した。反応物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル(20mL)で希釈した。有機相を水(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(15%~25%の酢酸エチル/ヘキサン)によって、無色の固形物として化合物17(21.6mg、50%)を得た。
【0205】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.73 (s, 1H), 5.26 (m, 1H), 4.62 (dd, J = 9.1, 7.9 Hz, 1H), 4.30 (dd, J = 11.9, 4.4 Hz, 2H), 4.15 (dd, J = 11.9, 5.8 Hz, 2H), 4.13 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.69 - 2.58 (m, 4H), 2.47 - 2.25 (m, 9H), 2.19 (m, 1H), 2.07 - 1.91 (m, 3H), 1.85 (m, 1H), 1.78 (m, 1H), 1.75 - 1.45 (m, 9H), 1.44 - 1.21 (m,
59H), 1.19 (s, 3H), 1.16 - 0.91 (m, 5H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.83 (s, 3H).
ESI-HRMS: C62H104O11Na [M + Na+]の計算値1047.7471; 実測値1047.7460.
【0206】
以下の反転エステル自壊性基含有化合物は、上の方法に従って調製した:
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(5-(((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)-5-オキソペンチル)スクシネート(18)
【化54】
【0207】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.73 (s, 1H), 5.26 (m, 1H), 4.61 (dd, J = 9.1, 7.9 Hz, 1H), 4.29 (dd, J = 11.9, 4.4 Hz, 2H), 4.15 (dd, J = 11.9, 5.8 Hz, 2H), 4.10 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.68 - 2.58 (m, 4H), 2.47 - 2.25 (m, 10H), 2.18 (m, 1H), 2.02
(ddd, J = 13.3, 4.9, 3.3 Hz, 1H), 1.85 (m, 1H), 1.77 (m, 1H), 1.74 - 1.45 (m, 13H), 1.44 - 1.21 (m, 50H), 1.19 (s, 3H), 1.18 - 0.91 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.9 H
z, 6H), 0.83 (s, 3H).
ESI-HRMS: C63H107O11Na [M + Na+]の計算値1061.7627; 実測値1061.7654.
【0208】
1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)4-(5-(((8R,9S,10R,13S,14S,17S)-10,13-ジメチル-3-オキソ-2,3,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)オキシ)-5-オキソペンチル)2-メチルスクシネート(19)
【化55】
【0209】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.73 (s, 1H), 5.26 (m, 1H), 4.61 (dd, J = 9.1, 7.9 Hz, 1H), 4.33 - 4.24 (m, 2H), 4.21 - 4.04 (m, 4H), 2.91 (m, 1H), 2.76/2.72 (各々dd, J = 13.9, 7.9 Hz, 1H), 2.47 - 2.26 (m, 11H), 2.18 (m, 1H), 2.02 (m, 1H), 1.84 (m, 1H), 1.77 (m, 1H), 1.74 - 1.44 (m, 13H), 1.43 - 1.14 (m, 51H), 1.223/1.214 (各々d, J = 7.2 Hz, 3H), 1.19 (s, 3H), 1.11 - 0.92 (m, 3H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.83 (s, 3H).
注:二重のシグナルは、ジアステレオ異性体の混合物の存在を反映している。
ESI-HRMS: C64H109O11[M + H+]の計算値1053.7964; 実測値1053.7984.
【0210】
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(5-(((4aS,6R,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-6-((S)-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル)-7-メトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-9-イル)オキシ)-5-オキソペンチル)スクシネート(7)
【化56】
【0211】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.77 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.88 (s, 1H), 5.26 (m, 1H), 4.42 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 4.29 (dd, J = 11.9, 4.4 Hz,
2H), 4.15 (dd, J = 12.0, 5.8 Hz, 2H), 4.11 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.45 (s, 3H), 3.02 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 2.99 (s, 1H), 2.88 (m, 1H), 2.67 - 2.54 (m, 7H), 2.38 - 2.22 (m, 8H), 2.11 (t, J = 10.1 Hz, 1H), 1.97 (td, J = 12.7, 5.6 Hz, 1H), 1.91
- 1.84 (m, 2H), 1.82 - 1.68 (m, 5H), 1.65 - 1.57 (m, 4H), 1.35 (s, 3H), 1.35 - 1.19 (m, 49H), 1.05 (m, 1H), 1.03 (s, 9H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 0.84 - 0.76
(m, 1H), 0.75 - 0.63 (m, 1H), 0.55 - 0.43 (m, 2H), 0.17 - 0.08 (m, 2H).
ESI-HRMS: C73H120NO13[M + H+]の計算値1218.8754; 実測値1218.8775.
【0212】
1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)4-(5-(((4aS,6R,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-6-((S)-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル)-7-メトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-9-イル)オキシ)-5-オキソペンチル)2-メチルスクシネート(8)
【化57】
【0213】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.77 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.88 (s, 1H), 5.26 (m, 1H), 4.42 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 4.32 - 4.24 (m, 2H), 4.20 -
4.06 (m, 4H), 3.45 (s, 3H), 3.02 (d, J = 13.3 Hz, 1H), 2.99 (s, 1H), 2.96 - 2.84 (m, 2H), 2.74 (ddd, J = 16.6, 13.4, 8.0 Hz, 1H), 2.66 - 2.53 (m, 3H), 2.46 - 2.21 (m, 9H), 2.11 (t, J = 9.9 Hz, 1H), 1.97 (td, J = 12.5, 5.6 Hz, 1H), 1.92 - 1.67 (m, 7H), 1.65 - 1.56 (m, 4H), 1.35 (s, 3H), 1.34 - 1.17 (m, 49H), 1.222 (d, J = 7.2 Hz, 1.5H), 1.116 (d, J = 7.2 Hz, 1.5H), 1.05 (m, 1H), 1.03 (s, 9H), 0.88
(t, J = 6.8 Hz, 6H), 0.80 (m, 1H), 0.67 (m, 1H), 0.55 - 0.42 (m, 2H), 0.15 - 0.08 (m, 2H).
ESI-HRMS: C74H122NO13[M + H+]の計算値1232.8911; 実測値1232.8925.
【0214】
1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル(5-((1-(イソプロピルアミノ)-3-(4-(2-メトキシエチル)-フェノキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-5-オキソペンチル)スクシネート(9)
【化58】
【0215】
CH2Cl2(1.2mL)中のBoc保護プロドラッグxxvii(9.2mg、8.2μmol)に、トリフルオロ酢酸(TFA、6.1μL、82.2μmol)を0℃で添加して、この混合物を室温で21時間撹拌した。反応物をN2ガス流の下で濃縮して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(1%~3.5%のメタノール/CH
2Cl2)によって、淡黄色の油状物として化合物9(6.8mg、81%)を得た。
【0216】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.13 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.84 - 6.77 (m, 2H), 5.38 (m, 1H), 5.24 (m, 1H), 4.28 (dd, J = 11.9, 4.5 Hz, 2H), 4.18 - 4.10 (m, 4H), 4.06
(t, J = 5.7 Hz, 2H), 3.55 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.34 (s, 3H), 3.38 - 3.24 (m, 3H), 2.81 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.66 - 2.56 (m, 4H), 2.48 - 2.35 (m, 2H), 2.31 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 1.69 - 1.54 (m, 8H), 1.32 (d, J = 6.4 Hz, 6H), 1.37 - 1.19 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
ESI-HRMS: C59H104NO12[M + H+]の計算値1018.7553; 実測値1018.7568.
【0217】
実施例8.薬剤がミコフェノール酸(MPA)である一般式(IV)の化合物の合成。a)1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)5-(クロロメチル)3-メチルペンタンジオエート(xviii)
【化59】
【0218】
酸-TGiii(75.0mg、0.108mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、1滴)、およびSOCl2(78.0μL、1.08mmol)の混合物を還流下で45分間加熱した後、室温に冷却した。反応物を減圧下で濃縮し、次いでトルエン(各々3mL)から3回同時蒸発させ、減圧下で乾燥させた。結果として得られた酸塩化物を、CH2Cl2(1mL)に再溶解させ、CH2Cl2(0.5mL)中の無水ZrCl4(25.1mg、0.108mmol)に滴加し、室温で15分間撹拌した後、0℃に冷却した。1,3,5-トリオキサン(9.7mg、0.108mmol)を添加して、混合物を室温で20時間撹拌した。反応物をCH2Cl2(15mL)で希釈し、有機相を水およびブライン(各々15mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(5%~12.5%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、黄色の油状物としてクロロメチルエステルxxviii(19.2mg、24%)を得た。
【0219】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.72 - 5.67 (m, 2H), 5.27 (m, 1H), 4.31 (dd, J = 11.9, 4.2 Hz, 2H), 4.13 (dd, J = 12.0, 6.1 Hz, 2H), 2.53 - 2.34 (m, 5H), 2.31 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 1.67 - 1.53 (m, 4H), 1.37 - 1.19 (m, 48H), 1.05 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
【0220】
b)(E)-1-(((6-(4-(アリルオキシ)-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-4-メチルヘキサ-4-エノイル)オキシ)メチル)5-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)3-メチルペンタンジオエート(xxxi)
【化60】
【0221】
トルエン(0.8mL)中のMPA(OAll)xxx(12.9mg、35.7μmol)、およびクロロメチルエステルxxviii(19.0mg、25.5μmol)、およびTBAI(4.7mg、12.7μmol)の懸濁液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(6.9μL、45.9μmol)を添加して、この混合物を80℃で2時間加熱した。反応物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル(20mL)で希釈した。有機相を水およびブライン(各々20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(15%~20%の酢酸エチル/ヘキサン)によって、無色の固形物として保護プロドラッグxxxi(16.7mg、61%)を得た。
【0222】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.09 (m, 1H), 5.69 (s, 2H), 5.36 (m, 1H), 5.31 - 5.22
(m, 2H), 5.18 (td, J = 6.7, 1.2 Hz, 1H), 5.13 (s, 2H), 4.78 (dt, J = 5.9, 1.2 Hz, 2H), 4.292/4.288 (各々dd, J = 11.9, 4.3 Hz, 2H), 4.13 (dd, J = 11.9, 5.9 Hz, 2H), 3.76 (s, 3H), 3.41 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 2.50 - 2.37 (m, 5H), 2.34 - 2.23 (m, 8H), 2.18 (s, 3H), 1.77 (s, 3H), 1.64 - 1.56 (m, 4H), 1.35 - 1.18 (m, 48H), 1.02 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 0.87 (t, J = 6.9 Hz, 6H).注:二重のシグナルは、ジアステ
レオ異性体の混合物の存在を反映している。
【0223】
c)(E)-1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)5-(((6-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-4-メチルヘキサ-4-エノイル)オキシ)メチル)3-メチル-ペンタンジオエート(10)
【化61】
【0224】
CH2Cl2(0.5mL)中のアリルエーテルxxxi(16.7mg、15.6μmol)に、1,3-ジメチルバルビツール酸(4.9mg、31.2μmol)およびPd(PPh3)4(5.4mg、4.7μmol)を添加して、この混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を、シリカゲルの短いパッドに直接適用し、50%の酢酸エチル/ヘキサンで溶出した。溶離液を減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(5%~10%の酢酸エチル/トルエン)によって精製して、無色の固形物として化合物10(10.1mg、63%)を得た。
【0225】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.68 (s, 1H), 5.70 (s, 2H), 5.30 - 5.21 (m, 2H), 5.20
(s, 2H), 4.296/4.291 (各々dd, J = 11.9, 4.3 Hz, 2H), 4.13 (dd, J = 11.9, 6.0 Hz, 2H), 3.76 (s, 3H), 3.38 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 2.49 - 2.38 (m, 5H), 2.34 - 2.25 (m, 8H), 2.15 (s, 3H), 1.79 (s, 3H), 1.66 - 1.54 (m, 4H), 1.35 - 1.19 (m, 48H), 1.02 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).注:二重のシグナルは、ジアス
テレオ異性体の混合物の存在を反映している。
ESI-HRMS: C59H97O14[M + H+]の計算値1029.6873; 実測値1029.6890.
【0226】
以下の一般式(IV)の化合物は、上の方法に従って調製した:
a2)1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)5-(1-クロロエチル)3-メチルペンタンジオエート(xxviii)
【化62】
【0227】
酸-TGiii(120mg、0.172mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、1滴)、およびSOCl2(125μL、1.72mmol)の混合物を還流下で1.25時間加熱した後、室温に冷却した。反応物を減圧下で濃縮し、次いでトルエン(各々3mL)から3回同時蒸発させ、減圧下で乾燥させた。結果として得られた酸塩化物を、CH2Cl2(1.5mL)に再溶解させ、CH2Cl2(0.5mL)中の無水ZnCl2(23.5mg、0.172mmol)に0℃で滴加し、0℃で5分間撹拌した。パラアルデヒド(45.6μL、0.344mmol)を添加して、この混合物を0℃で10分間および室温で1時間撹拌した。反応物をCH2Cl2(20mL)で希釈し、有機相を水およびブライン(各々20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(5%~15%の酢酸エチル/ヘキサン)による精製によって、黄色の油状物として1-クロロエチルエステルxxviii(14.9mg、11%)を得た。
【0228】
b2)(E)-1-(1,3-ビス(パルミトイルオキシ)プロパン-2-イル)5-(1-((6-(4-ヒドロキシ-6-メトキシ-7-メチル-3-オキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-イル)-4-メチルヘキサ-4-エノイル)オキシ)エチル)3-メチルペンタンジオエート(11)
【化63】
【0229】
1H NMR (401 MHz, CDCl3) δ 7.68 (s, 1H), 6.80 (q, J = 5.4 Hz, 1H), 5.29 - 5.21 (m, 2H), 5.20 (s, 2H), 4.32 - 4.26 (m, 2H), 4.132/4.127 (各々dd, J = 11.9, 6.0 Hz, 2H), 3.76 (s, 3H), 3.38 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 2.48 - 2.35 (m, 5H), 2.32 - 2.18 (m, 8H), 2.15 (s, 3H), 1.79 (s, 3H), 1.64 - 1.54 (m, 4H), 1.41 (d, J = 5.4 Hz, 3H), 1.36 - 1.18 (m, 48H), 1.01 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).注
:二重のシグナルは、ジアステレオ異性体の混合物の存在を反映している。
ESI-HRMS: C60H99O14Na [M + Na+]の計算値1065.6849; 実測値1065.6879.
【0230】
実施例9.ラットにおけるリンパ輸送研究
ラットにおける本発明の化合物のリンパ輸送を評価するために、腸間膜リンパの連続的採取を可能にするように、ラットの腸間膜リンパ管にカニューレを挿入した。次いで、目的とする化合物を含有する脂質製剤を動物に投与した。リンパを採取した後、リンパにおける薬物濃度を定量した。
【0231】
本発明の化合物または対照化合物の脂質系製剤を、先に記載されているように調製した(Trevaskis,N.L.et al.,Pharmaceutical Research,2005,22(11),1863-1870)。簡潔に述べれば、およそ
2mgの化合物(化合物19の場合は1.5mg、ならびに化合物6および7の場合は0.05mg)と、40mgのオレイン酸と、25mgのTween 80とを、平衡化するまで、ガラス製のバイアルにおいて混合した(穏やかな加熱(50℃未満)を短時間適用してもよい)。続いて、5.6mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)からなる水性相を脂質相に添加して、室温において240μmの振幅および20kHzの周波数で2分間作動する3.2mmのマイクロプローブチップが備え付けられた超音波処理装置による超音波処理によって、製剤を乳化した。製剤すべてにおける化合物濃度は、HPLC-MS-MSを使用して検証した。
【0232】
薬剤がミコフェノール酸(MPA)、セルトラリン(SER)、またはブプレノルフィン(BUP)であるリンパ輸送研究用に、雄性スプラーグドーリー(SD)ラットを選択した。薬剤がテストステロンである研究用には、雌性SDラットを選択した。これは、雄性ラットにおける相対的に高くかつ変動する内因性テストステロンのレベルが、体外から投与されるテストステロンの定量を妨害する可能性を排除するためだった。ラット(220~320g)は標準飼料で維持し、実験に先立って一晩絶食させ、水は自由摂取とした。麻酔したラットを37℃に加熱したパッド上に置き、先に記載されているように、十二指腸(製剤の投与および水分補給のため)、腸間膜リンパ管(リンパを採取するため)、および頸動脈(採血のため)にカニューレを挿入した(Edwards et al.Advanced Drug Delivery Reviews 2001,50(1),45-60)。手術後、ラットには、通常の生理食塩水を2.8mL/時間で十二指腸内に注入することで、0.5時間水分補給した。脂質製剤を、2.8mL/時間で十二指腸内に2時間注入し、その後、実験の残りの時間は、通常の生理食塩水を2.8mL/時間で注入した。リンパは、1,000IU/mLのヘパリン10μLを含有する予め秤量したエッペンドルフチューブに、最大8時間にわたって連続的に採取した。採取チューブは1時間毎に交換し、リンパの流れを重量測定で測定した。1時間毎のリンパ試料のアリコートは、アッセイ前には-80℃で保存した。
【0233】
リンパにおける薬物濃度は、薬物全体として表され、遊離薬物および異なるグリセリドと会合した薬物を含む。これは、遊離薬物を評価する前に、リンパを加水分解すること(任意の再エステル化されたグリセリドから薬物を遊離させること)によってアッセイされる。
【0234】
各1時間毎の採取時間の間でのリンパへの化合物の輸送は、採取したリンパの体積と、測定したリンパの濃度との積から計算した。
【0235】
図1および表4に示されているように、アセタール自壊性基(ASI)を有する化合物12、トリメチルロック(TML)自壊性基を有する化合物15、および(4-炭素)反転エステル自壊性基(FSI-4)を有する化合物17のリンパ輸送は、それぞれ、(投与された用量の)1.9%、3.2%、および5.2%であった。これは、対応する直鎖テストステロン-コハク酸-TG(化合物21、13.4%)よりも低く、化合物12は、現在市販されているテストステロンプロドラッグ、ウンデカン酸テストステロン(TU)のレベルにまで低下している。自壊性基を含有するプロドラッグのリンパ輸送における低減は、(下の実施例11において記載され、かつ
図9において示されるように)胃腸管におけるプロドラッグのモノグリセリド形態の安定性が不良であることに起因するか、あるいは潜在的には、腸細胞におけるモノグリセリド形態の再エステル化の効率が低減されていることに起因する可能性が高い。化合物21、化合物12、および化合物17のモノグリセリド形態の安定性の順序(すなわち、化合物21-モノグリセリド>化合物17-モノグリセリド>化合物12-モノグリセリド)は、これら3種のプロドラッグのリンパ輸送の並び(すなわち、化合物21>化合物17>化合物12)と一貫している。
【0236】
グリセリド単位に対してアルファ位またはベータ位の炭素におけるメチル基の包含は、プロドラッグのモノグリセリド中間体の安定性を高める。例えば、化合物12に関する安定性の問題に対処するために、メチル保護基を化合物に包含することで、化合物13および14を形成した(これらの化合物は、化合物13および14の混合物として使用した)。
図1および表4から明白であるように、メチル保護基の包含は、化合物12と比較して、化合物13および14のリンパ輸送を有意に増進した。これは、GIの消化条件の下で高められた安定性と一貫している(
図9を参照されたい)。化合物19(メチル分岐を伴う、5-炭素反転エステル自壊性基[FSI-5]を含有する)のリンパ輸送は、(投与された用量の)9.6%であった。これもまた、同様の化合物ではあるがメチル基を欠いている化合物17(FSI-4自壊性基を含有する)のリンパ輸送よりも高い。
【0237】
【0238】
図4および表5に示されているように、TML自壊性基を有する化合物3のリンパ輸送は、(投与された用量の)21.5%であった。対照的に、親薬物SER.HClを投与した後の、親薬物セルトラリン(SER)のリンパ輸送は、(投与された用量の)0.05%に過ぎなかった。
【0239】
【0240】
図6および表4に示されているように、TML自壊性基を有する化合物6および(5-炭素)反転エステル自壊性基(FSI-5)を有する化合物7のリンパ輸送は、(投与された用量の)10.8%および24.5%であった。対照的に、ブプレノルフィン(BUP)を投与した後の、親薬物BUPのリンパ輸送は極めて低く、(投与された用量の)0.01%に過ぎなかった。
【0241】
【0242】
図8および表7に示されているように、アセタール自壊性(ASI)基を有する化合物10およびメチルアセタール自壊性(MASI)基を有する化合物11のリンパ輸送は、(投与された用量の)0.35%および1.22%であった。対照的に、親薬物ミコフェノール酸(MPA)を投与した後の、親薬物MPAのリンパ輸送は、(投与された用量の)0.17%に過ぎなかった。
【0243】
【0244】
実施例10.ラットにおける薬物動態(PK)研究
本発明の化合物の経口バイオアベイラビリティを評価するために、以下の手順を使用して、薬物動態研究を実行した。薬物投与の前日に、雌性(テストステロン関連研究用)および雄性(SERおよびBUP関連研究用)のスプラーグドーリーラット(220~320g)を麻酔し、頸動脈にカニューレを挿入した。次いで、ラットの意識を回復させ、実験の開始に先立って一晩絶食させ、水は自由摂取とした。翌朝、経口強制投与を介して、親化合物またはプロドラッグを含有する製剤を投与して、頸動脈のカニューレから、投薬の5分前から24時間後まで血液試料を採取して、5000rpmで5分間遠心分離を行って、血漿を分離させた。血液試料の採取時間の間、ラットは水を自由摂取したが、薬物投与後さらに8時間絶食させたままにした。血漿試料は、HPLC-MS-MSによるアッセイ前には-80℃で保存した。この場合、試料は、遊離薬物(すなわち、グリセリドと会合していない薬物)に関してアッセイし、アッセイに先立って(リンパ試料の場合とは異なり)加水分解は行わなかった。したがって、このデータは、リンパに輸送された後、体循環において再エステル化された薬物-グリセリド複合体から遊離された薬物について反映している。
【0245】
先に説明したように、薬剤のテストステロンとグリセリド単位との間で短いリンカー(例えばコハク酸、化合物21)を採用するトリグリセリドプロドラッグは、体循環における薬物放出が不良であることによって制限される(Scriba,G.K.E.,Arch.Pharm.(Weinheim).1995,328,(3),271-276およびScriba,G.K.E.et al.,J.Pharm.Pharmacol.1995,47,(11),945-948を参照されたい)。
図2および下の表8に示されているように、リンカーに対して自壊性基を添加することによって、従来は却下されていたコハク酸リンカーと組み合わされた場合でも、薬剤の全身曝露が増加し、それによって薬剤の初回通過代謝が回避され、その経口バイオアベイラビリティが上昇する。
【0246】
図2は、意識のある、頸動脈にカニューレを挿入した雌性SDラットに対してテストステロン製剤を経口強制投与した後の、用量について正規化したテストステロン血漿濃度を示している。製剤は、40mgのオレイン酸、25mgのTween 80、および2mlのPBSにおいて分散された、1mgのTUもしくはTST、またはテストステロンを含有するおよそ2mgの本発明の化合物を含有した。用量は、テストステロンの2mg/kgの等価用量に対して正規化される。データは平均±SEMとして示す。挿入図は、棒グラフの形態の、テストステロンの、用量について正規化した血漿AUC
0-24h(nmol×時間/L)のプロットである。
【0247】
表8は、化合物12~20または21を経口投与した後の、親テストステロンの薬物動態パラメーターを示している。短鎖リンカーにメチル基がまったく含まれていない場合(化合物12、15~18、または20)はすべて、テストステロンの全身曝露は、化合物21(約1.4~18倍の増加)または市販の製品TU(約4~54倍の増加)の全身曝露よりも大きかった。化合物12および化合物17のリンパ輸送は相対的に低い(
図1および表4)ものの、親テストステロンの全身曝露は、両方のプロドラッグを経口投与した後も、依然として遥かに高かった。これは、自壊性基が、体循環における、プロドラッグの親薬物への変換を容易にすることを示唆している。
【0248】
【0249】
プロドラッグの有用性は、プロドラッグのリンパ輸送を高めることによってさらに増進することができる。短鎖リンカーのどちらの端部においても、エステルに対してアルファ位またはベータ位の炭素におけるメチル基の包含は、プロドラッグのモノグリセリド中間体の安定性を高め、したがってリンパ輸送を高めることができる。化合物13/14に対する化合物12のインビトロ消化およびリンパ輸送の結果(
図9、
図1、および表4を参照されたい)は、この示唆を支持するものであり、模擬的な腸条件の下での化合物13/14の有意に増進された安定性を示している。化合物13/14のリンパ輸送における増加、および自壊性基がプロドラッグからのテストステロンの全身放出を促進する可能性における増加と一貫して、化合物13/14の投与後または化合物13単独での投与後のテストステロンの全身曝露は、化合物12よりも約13倍高く、TUよりも95~97倍高い(表8)。加えて、FSIプロドラッグの場合には、短鎖リンカーにメチル基を包含することも、テストステロンのバイオアベイラビリティを増進させた。したがって、化合物19の投与後のテストステロンの全身曝露は、化合物18よりも1.9倍高く、TUより
も105倍高い(表8)。
【0250】
図5は、意識のある、頸動脈にカニューレを挿入した雄性SDラットに対して製剤を経口強制投与した後の、用量について正規化したSER血漿濃度を示している。SER親薬物対照群においては、製剤は、2mlの水中に溶解した0.7mgのSER.HClを含有した。プロドラッグ製剤は、40mgのオレイン酸、25mgのTween 80、および2mlのPBSにおいて分散された、SERを含有する2mgの本発明の化合物を含有した。用量は、SERの2mg/kgの等価用量に対して正規化される。データは平均±SEMとして示す。挿入図は、棒グラフの形態の、SERの、用量について正規化した血漿AUC
0-24h(nmol×時間/L)のプロットである。
【0251】
SER.HCl、化合物1、2および3を投与した後のSERの薬物動態パラメーターを、表9に示す。すべての場合において、プロドラッグを投与した後のSERの全身曝露は、SER.HClの場合の全身曝露よりも大きかった(2~3倍の増加)。このことは、プロドラッグがリンパ的に輸送され(
図4および表5において化合物3によって例示されるように)、自壊性基が体循環におけるプロドラッグの親薬物への変換を容易にすることを示唆している。
【0252】
【0253】
図7は、意識のある、頸動脈にカニューレを挿入した雄性SDラットに対して製剤を経口強制投与した後の、用量について正規化したBUP血漿濃度を示している。BUP親薬物対照群においては、製剤は、2mlの0.1%酢酸水溶液中に溶解した0.02mgのBUPを含有した。プロドラッグ製剤は、40mgのオレイン酸、25mgのTween
80、および2mlのPBSにおいて分散された、BUPを含有する0.05mgの本発明の化合物を含有した。用量は、BUPの0.06mg/kgの等価用量に対して正規化される。データは平均±SEMとして示す。挿入図は、棒グラフの形態の、BUPの、用量について正規化した血漿AUC
0-6h(nmol×時間/L)のプロットである。
【0254】
BUP、化合物5、6および7を投与した後のBUPの薬物動態パラメーターを、表10に示す。すべての場合において、本発明の化合物を投与した後のBUPの全身曝露は、BUPの場合の全身曝露よりも大きかった(7~14倍の増加)。このことは、プロドラッグがリンパ的に輸送され(
図6および表6において化合物6および7によって例示されるように)、自壊性基が体循環におけるプロドラッグの親薬物への変換を容易にすること
を示唆している。
【0255】
【0256】
実施例11.ブタ膵臓リパーゼによる化合物のインビトロ加水分解
テストステロンプロドラッグのインビトロ加水分解を、ブタ膵臓リパーゼとともにインキュベートすることを介して実施した。簡潔に述べれば、加水分解実験の前に、5mlの脂質分解緩衝液中に1gのブタパンクレアチンを分散させることによって、膵臓リパーゼ溶液を調製した。懸濁液をよく混合し、5℃で15分間、3500rpmで遠心分離して上清を提供した。NaOHでpH6.5に調整した、0.474gのトリス-マレイン酸(2mM),0.206gのCaCl2.H2O(1.4mM)、および8.775gのNaCl(150mM)を用いて、1000mlの量の脂質分解緩衝液を調製した。腸におけるプロドラッグ加水分解の可能性を評価するために、20μlのプロドラッグ溶液(1mg/ml、アセトニトリル中に溶解)と、900μlの模擬的な腸のミセル溶液[500mlの脂質分解緩衝液中の0.783gのNaTDC(3mM)および0.291gのホスファチジルコリン(0.75mM)で調製した]と、100μlの酵素溶液とを、37℃でインキュベートした。インキュベート溶液の20μl試料を、インキュベートの0分後、5分後、10分後、15分後、30分後、60分後、90分後、120分後、および180分後に採取し、180μlのACNに添加して脂質分解を停止した。混合物をボルテックスし、5000rpmで5分間遠心分離して、分析の前にタンパク質を沈殿させた。上清を、HPLC-MSによって、残留化合物濃度について分析し、化合物加水分解の潜在的な生成物について分析した。
【0257】
消化酵素とともにインキュベートすると、プロドラッグのモノグリセリド形態が、非常に急速に形成される。したがって、当初の消化プロセスによって生成されるモノグリセリド形態の安定性によって、模擬的腸条件における安定性がより良好に評価される。モノグリセリド形態は、リンパ管に入る前に腸細胞で吸収され、再エステル化されるには、インタクトなままでなければならない。
図9において、新しく調製したブタ膵臓リパーゼとともにインビトロでインキュベートしている間における、化合物12、化合物15~17、および化合物20のモノグリセリド形態の安定性プロファイル(各群についてn=2~3
)を、非自壊性含有化合物21(n=3)のものと比較する。このデータは、アセタール(ASI)、反転エステル(FSI)、カルボキシ(メチルアセタール)(CMSI)、またはp-ヒドロキシベンジルカルボニル(PHB)自壊性基の包含が、プロドラッグのMG形態の、有意に低下した管腔安定性をもたらすことを示している。しかしながら、化合物15のモノグリセリド形態は、化合物21のモノグリセリド形態と同様に安定であるため、トリメチルロック自壊性基は、管腔安定性に対して影響を及ぼさないようである。
【0258】
図9はまた、メチル置換の、アセタール自壊性リンカーを含有するテストステロンプロドラッグの管腔安定性を改善する能力の証拠も提供する(アセタール基は、通常、管腔安定性を低減する)。図に示されているように、化合物12のモノグリセリド形態は、インビトロ脂質分解アッセイにおいては不安定であった。対照的に、アルファおよびベータメチル置換化合物13/14の混合物は、より遥かに安定であった。メチル置換ASIプロドラッグの増進された安定性は、経口投与後の体循環における、インビトロリンパ輸送の顕著な上昇、およびテストステロン曝露テストステロンにおける上昇の要因である可能性が非常に高い。
【0259】
実施例12.リポタンパク質リパーゼを補充されたリンパにおける、プロドラッグからのMPAのインビトロ放出
リンパ管におけるTGプロドラッグからの遊離MPAの放出(MPAの活性部位は、リンパ系に豊富にあるリンパ球にある)について調べるために、MPAプロドラッグを、リポタンパク質リパーゼ(LPL、200単位/ml)を補充されたラットリンパとともにインキュベートした。LPLは、通常の生理学的条件におけるリポタンパク質会合TGの加水分解にとって必要とされる重要な酵素であり、したがって、エステラーゼ加水分解を介した2’位からの薬物放出の前の、TG-模倣物のsn-1およびsn-3位のFAの遊離に大きく起因して、血漿中の再エステル化薬物-TG構築物の脂質分解に対する重要な寄与因子であることが予期される。LPLは、生理学的条件の下では、リンパ球またはリンパ管/血管内皮細胞に対して繋がれている。したがって、本インビトロ研究においては、インビトロの状況をより良好に反映するために、ラットリンパにLPLを補充した。加水分解を開始するために、10μlのLPL溶液(10,000単位/ml)を、10μlのプロドラッグ溶液(1mg/ml、アセトニトリル中に溶解)と、500μlのブランクスプラーグドーリーラットリンパとの混合物に添加した。溶液を、37℃でインキュベートした。インキュベート溶液の試料(20μl)を、インキュベートの0分後、5分後、10分後、15分後、30分後、60分後、90分後、120分後、および180分後に採取し、980μlの9:1(v/v)ACN-水に添加して脂質分解を停止した。混合物をボルテックスし、4500gで5分間遠心分離して、分析の前にタンパク質を沈殿させた。上清を、HPLC-MS/MSによって、MPA濃度について分析した。
【0260】
図10に示されているように(各プロドラッグについてn=1)、LPLを補充したラットのリンパとともにインキュベートすると、化合物10および化合物11からの薬理活性MPAの放出は非常に迅速であった。これら2種のSI基含有プロドラッグからの親MPAの放出速度は、MPA-TG、SI基を有しないプロドラッグからの放出速度よりも遥かに高かった。このデータは、アセタール(ASI)またはメチルアセタール(MASI)自壊性基の包含によって、親化合物の有意に増進された放出がもたらされ、したがって、リンパ系の活性部位へと治療剤を標的化送達するための機会が提供されることを示している。