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特開2022-160596デフィブロチドの能力を決定する為の細胞に基づく方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160596
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】デフィブロチドの能力を決定する為の細胞に基づく方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20221012BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20221012BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20221012BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12N5/071
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125925
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019217553の分割
【原出願日】2015-11-23
(31)【優先権主張番号】14195277.0
(32)【優先日】2014-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506004610
【氏名又は名称】ゲンチウム エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】テレンツィオ イグノーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジェイ クマール
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ ヴェルガ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デフィブロチドの生物学的活性を決定する為の、細胞に基づく正確且つ信頼出来る方法を提供する。
【解決手段】デフィブロチドの試料バッチの能力を評価する方法であって、培養で哺乳動物細胞を成長させること、該細胞を、少なくとも一つの細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度とを含む溶液でインキュベートすること、インキュベーション期間後に、該細胞の生存率を決定すること、該細胞生存率測定に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を決定すること、を含む、該方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフィブロチドの試料バッチの能力を評価する方法であって、
培養で哺乳動物細胞を成長させること;
該細胞を、少なくとも一つの細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度とを含む溶液でインキュベートすること;
インキュベーション期間後に該細胞の生存率を決定すること;そして
該細胞生存率測定に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を決定すること
を含む、該方法。
【請求項2】
該細胞が、該細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも4つの異なる濃度とでインキュベートされること、及び該細胞生存率が上記濃度のそれぞれについて決定されて、用量応答曲線を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デフィブロチドの該試料バッチについての細胞生存率をデフィブロチドの基準バッチについての細胞生存率と比較すること;及び、該比較に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を計算することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
デフィブロチドの該試料バッチについて測定された細胞生存率が、デフィブロチドの該基準バッチを用いた細胞生存率測定から得られた較正曲線と比較される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
デフィブロチドの該試料バッチの能力を計算することが、デフィブロチドの基準バッチの能力に対する相対的な能力比を決定することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該哺乳動物細胞が、ヒト内皮細胞、ヒト上皮細胞、ヒト肝臓洞様血管内皮細胞、又はヒト微小血管内皮細胞である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該哺乳動物細胞が、約5×104細胞/ml~約5×105細胞/mlの密度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該細胞毒性の剤が、フルダラビン、9-ベータ-D-アラビノフラノシル-2-フルオロアデニン(F-Ara-A)、又はドキソルビシンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
フルダラビン又はF-Ara-Aが約10μg/ml~約50μg/mlの濃度で該溶液中に存在している、又は、ドキソルビシンが約0.1μg/ml~約10μg/mlの濃度で該溶液中に存在している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度が、約1μg/ml~約100μg/mlの範囲にある、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記インキュベーション期間が、少なくとも24時間、少なくとも48時間、又は少なくとも72時間である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
細胞の生存率を決定することが、テトラゾリウム染料の還元に基づく比色分析法を実行することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該テトラゾリウム染料が、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド又は2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞の生存率を決定することが、該細胞を用いるインキュベーション後に該溶液の吸光度を測定することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
デフィブロチドの該試料バッチが、ウシ組織又はブタ組織から抽出されたものである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
医薬物質は、それらが安全に送達されることが出来るように一定の特異的活性で製造されるべきである。例えば、生物学的分子、例えばヘパリン、についてのアッセイは、鎖長、分子量、組成、硫酸化の程度等の点でバッチごとにばらつきがある。天然物質から抽出される他の物質はまた、標準化される必要がある。例えば、米国特許第7,575,886号明細書を参照。一つのそのような物質は、デフィブロチドである。デフィブロチドは、哺乳類の器官から抽出される異なる長さの一本鎖のポリヌクレオチドの不均一混合物である。
【0002】
フィブリン・プレート試験及びユーグロブリン溶解時間のトロンボエラストグラフィー記録を含む、デフィブロチドの生物学的活性を評価する為に利用可能なアッセイがある(Prino G. et al.,「Indagini preliminari sull'attivitfibrinolitica,nell'animale e nell'uomo,di una nuova sostanza presente in diversi organi animali,Simposio Internazionale:La ricerca scientifica nell'industria farmaceutica in Italia」,Rome,2~4 Oct.1975-II Farmaco,Ed.Prat.)(1969),24,552-561)、プラスミン方法(米国特許第7,338,777号明細書)、及びユーグロブリン方法(国際公開第2013/190582号)。これらの方法は有用な医薬製造ツールであるけれども、デフィブロチドの線維素溶解促進性特性に基づく全てのこれらの方法は、単離されたタンパク質又は酵素に対するデフィブロチドの活性の評価を含む。
【発明の概要】
【0003】
従って、例えば、使用される製造工程にかかわらず、基準のデフィブロチド標準調製物をデフィブロチドの新しいバッチと比較することによって、能力を評価する為の正確且つ信頼出来る工程を提供する、細胞の状況におけるデフィブロチドの生物学的活性を決定する新規な方法が当分野で必要である。
【0004】
本発明は、特定の細胞毒性の剤によって誘発される細胞毒性から哺乳動物細胞をデフィブロチドが用量依存的様式に保護するという発見に部分的に基づく。本発明者等は、この細胞保護効果を利用して、デフィブロチド・バッチの能力を評価するための細胞に基づく方法を開発し、効果的且つ安全な投与を容易にする測定装置を定義した。そのような方法は、とりわけ、デフィブロチド製造工程中の品質管理、種々の方法又は起源により製造されるデフィブロチド・バッチの標準化、及びデフィブロチドを用いる患者の一貫した投与を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】MTTアッセイにより測定される場合に、異なる濃度のデフィブロチドの存在又は不存在の下、フルダラビンを用いてインキュベーションされたHMEC細胞の生存率(viability)。HMEC-1が、72時間、デフィブロチド(DF)の異なる濃度(1μg/ml~100μg/ml)の存在又は不存在の下、10μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ、そして該細胞の生存率が該MTTアッセイを用いて測定された。スチューデントt-検定:§p<0.01,F-ara 10μg/ml 対 対照(ctr)で処理された細胞;* p<0.05,1μg/mlのDFで処理された細胞 対 10μg/mlのF-araで処理された細胞;** p<0.001,10及び100μg/mlのDFで処理された細胞 対 10μg/mlのF-araで処理された細胞。
図2】CCK-8アッセイにより測定される場合に、異なる濃度のデフィブロチドの存在又は不存在の下、ドキソルビシンを用いてインキュベーションされたSK-HEP-1細胞の生存率。SK-HEP-1細胞が、72時間、デフィブロチド(DF)の異なる濃度(1μg/ml~100μg/ml)の存在又は不存在の下、0.1μg/mlのドキソルビシン(Dox)を用いてインキュベーションされ、そして該細胞の生存率が該CCK-8アッセイを用いて測定された。スチューデントt-検定:§p<0.01,0.1μg/mlのDoxで処理された細胞 対 対照(ctr)で処理された細胞;* p<0.01,50又は100μg/mlのDFで処理された細胞 対 0.1μg/mlのDoxで処理された細胞。
図3A】MTTアッセイにより測定される場合に、異なる濃度のデフィブロチド、AC、又はACTGの存在又は不存在の下、フルダラビンを用いてインキュベーションされたHMEC-1細胞の生存率。HMEC-1細胞が、72時間、異なる濃度(1~500μg/ml)の約16kDaのランダム合成アデニン-シトシン(AC)オリゴヌクレオチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3A)、72時間、異なる濃度(12.5~50μg/ml)の約17kDaのランダム合成アデニン-シトシン-グアニン-チミン(ACGT)オリゴヌクレオチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3B)、72時間、異なる濃度(5~100μg/ml)のデフィブロチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3C)、そして該細胞の生存率が該MTTアッセイを用いて測定された。スチューデントt-検定:* p<0.01,50μg/mlのF-araで処理された細胞 対 対照(Ctr)で処理された細胞,** p<0.01 50μg/mlのF-araで処理された細胞 対 デフィブロチドで処理された細胞。合成オリゴヌクレオチドのいずれによっても有意な保護はなかった。
図3B】MTTアッセイにより測定される場合に、異なる濃度のデフィブロチド、AC、又はACTGの存在又は不存在の下、フルダラビンを用いてインキュベーションされたHMEC-1細胞の生存率。HMEC-1細胞が、72時間、異なる濃度(1~500μg/ml)の約16kDaのランダム合成アデニン-シトシン(AC)オリゴヌクレオチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3A)、72時間、異なる濃度(12.5~50μg/ml)の約17kDaのランダム合成アデニン-シトシン-グアニン-チミン(ACGT)オリゴヌクレオチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3B)、72時間、異なる濃度(5~100μg/ml)のデフィブロチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3C)、そして該細胞の生存率が該MTTアッセイを用いて測定された。スチューデントt-検定:* p<0.01,50μg/mlのF-araで処理された細胞 対 対照(Ctr)で処理された細胞,** p<0.01 50μg/mlのF-araで処理された細胞 対 デフィブロチドで処理された細胞。合成オリゴヌクレオチドのいずれによっても有意な保護はなかった。
図3C】MTTアッセイにより測定される場合に、異なる濃度のデフィブロチド、AC、又はACTGの存在又は不存在の下、フルダラビンを用いてインキュベーションされたHMEC-1細胞の生存率。HMEC-1細胞が、72時間、異なる濃度(1~500μg/ml)の約16kDaのランダム合成アデニン-シトシン(AC)オリゴヌクレオチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3A)、72時間、異なる濃度(12.5~50μg/ml)の約17kDaのランダム合成アデニン-シトシン-グアニン-チミン(ACGT)オリゴヌクレオチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3B)、72時間、異なる濃度(5~100μg/ml)のデフィブロチドの存在又は不存在の下、50μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ(図3C)、そして該細胞の生存率が該MTTアッセイを用いて測定された。スチューデントt-検定:* p<0.01,50μg/mlのF-araで処理された細胞 対 対照(Ctr)で処理された細胞,** p<0.01 50μg/mlのF-araで処理された細胞 対 デフィブロチドで処理された細胞。合成オリゴヌクレオチドのいずれによっても有意な保護はなかった。
図4】CCK-8アッセイにより測定される場合に、異なる濃度のACTG、tpA又はグルタチオンの存在又は不存在の下、フルダラビンを用いてインキュベーションされたSK-HEP-1細胞の生存率。SK-HEP-1細胞が、72時間、異なる濃度(1.25~80μg/ml)の約17kDaのランダム合成アデニン-シトシン-グアニン-チミン(ACGT)オリゴヌクレオチド、異なる濃度(10~320IU/ml)のtPA、又は異なる濃度(1.25~80μg/ml)のグルタチオンの存在又は不存在の下(A~G)、10μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ、そして該細胞の生存率がCCK-8アッセイを用いて測定された。スチューデントt-検定:* p<0.01,F-Ara 10μg/ml 対 対照(Ctr)。ACGT、tPA、又はグルタチオンによるF-Ara誘発性細胞毒性から有意な保護はなかった。
図5A】細胞保護アッセイにおける、標準デフィブロチドの用量応答曲線 対 細胞保護アッセイにおける、酸性ストレスに付された(図5A)及び塩基性ストレスに付された(図5B)デフィブロチド試料の用量応答曲線の比較。未処理の吸光度データが、PLA2統計解析プログラム(4-パラメータ・ロジスティック関数解析)を使用して処理された。該細胞生存率指標染料(CCK-8)の吸光度が、「応答」としてY軸上にプロットされる。用量がX軸上にプロットされ、そしてアッセイにおけるデフィブロチドの2-倍希釈系列(1.25~80μg/ml)である;STDは基準標準デフィブロチドを示す。ストレスを受けた試料に対応する各パネル中のより低いトレースは、低減された能力を示す。この統計解析プログラムを使用して、ストレスを受けた試料の両方が、許容の統計的基準を満たさなかった。
図5B】細胞保護アッセイにおける、標準デフィブロチドの用量応答曲線 対 細胞保護アッセイにおける、酸性ストレスに付された(図5A)及び塩基性ストレスに付された(図5B)デフィブロチド試料の用量応答曲線の比較。未処理の吸光度データが、PLA2統計解析プログラム(4-パラメータ・ロジスティック関数解析)を使用して処理された。該細胞生存率指標染料(CCK-8)の吸光度が、「応答」としてY軸上にプロットされる。用量がX軸上にプロットされ、そしてアッセイにおけるデフィブロチドの2-倍希釈系列(1.25~80μg/ml)である;STDは基準標準デフィブロチドを示す。ストレスを受けた試料に対応する各パネル中のより低いトレースは、低減された能力を示す。この統計解析プログラムを使用して、ストレスを受けた試料の両方が、許容の統計的基準を満たさなかった。
図6】CCK-8アッセイにより測定される場合に、異なる濃度のデフィブロチドの存在又は不存在の下、フルダラビンを用いてインキュベーションされたSK-HEP-1細胞の生存率。SK-HEP-1細胞が、72時間、デフィブロチド(DF)の異なる濃度(1μg/ml~100μg/ml)の存在又は不存在の下、10μg/mlのフルダラビン(F-Ara)を用いてインキュベーションされ、そして該細胞の生存率がCCK-8アッセイを用いて測定された。スチューデントt-検定:p<0.01,10μg/mlのF-Araで処理された細胞 対 対照(Ctr)で処理された細胞、及び >1μg/mlのDFで処理された細胞 対 10μg/mlのF-Araで処理された細胞。
図7】標準化された基準デフィブロチド試料(標準)と未知の生物学的活性のデフィブロチドの試料との間の能力比の評価。SK-HEP-1細胞が、標準及び試料のデフィブロチドの6系列希釈(1:2)に曝露されて、フルダラビン(F-Ara)(10μg/ml)の存在下において80、40、20、10、5、2.5、及び1.25μg/mlの濃度を与えた。標準及び試料の各濃度は、4回の反復実験からなる。37℃の72時間のインキュベーション後に、該細胞の生存率が上記CCK-8アッセイを用いて測定された。該吸光度測定が、試料能力決定の為の統計解析(4-パラメータ・ロジスティック解析)に付された。
【0006】
[発明の効果]
本発明は、或る細胞毒性の剤の効果から生存細胞を保護するデフィブロチドが能力に基づいてデフィブロチドの生物学的活性を決定する為の信頼出来る方法を提供する。この細胞保護効果は、医薬品としてのデフィブロチドの使用の為に重要である。この方法は、種々の方法又は起源によって得られるデフィブロチドについての活性の標準化を許す。該方法はまた、測定の装置の確立及び割り当てを可能にし、デフィブロチドの効果的且つ安全な投与を容易にする。
【0007】
[課題を解決するための手段]
本発明の一つの実施態様において、デフィブロチドの試料バッチの能力を評価するた方法は、(i)培養で哺乳動物細胞を成長させること、(ii)該細胞を、少なくとも一つの細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度とを含む溶液でインキュベートすること、(iii)インキュベーション期間後に該細胞の生存率を決定すること、そして(iv)該細胞生存率測定に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を決定すること、を含む。幾つかの実施態様において、該方法はさらに、デフィブロチドの該試料バッチについての細胞生存率をデフィブロチドの基準バッチについての細胞生存率と比較すること;及び、該比較に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を計算することをさらに含む。
【0008】
本発明の目的において、語「能力」は、特に細胞毒性の剤の効果から生存細胞を保護するデフィブロチドの能力の尺度に基づく、デフィブロチドの生物学的活性の尺度をいう。
【0009】
デフィブロチド(メルク・インデックス,1996,第2915番;CAS番号83712-60-1)は、天然起源の物質である。それは、動物の器官からの抽出によって得られる低分子量ポリデオキシリボヌクレオチドのナトリウム塩である。デフィブロチドは、14~19kDaの分子量(MW)を有することが知られているが、特定の測定技術は、デフィブロチドが、SEC-HPLC技術によって決定される場合には約16.1kDa±2.0kDaの平均分子量(MW)を有することを示し;PAGE技術によって決定される場合には約17.6kDa±1.0kDの分子量を有することを示し;及び、マルチアングルレーザー光散乱技術によって決定される場合には約16.7kDa±1.6kDaの分子量を有することを示す。「Analysis of Aggregates and Particles in Protein Pharmaceuticals」,H. Mahler and W. Jiskoot (eds.) ,2012 John Wiley & Sons,Inc.
【0010】
デフィブロチドは、抗血栓剤(米国特許第3,829,567号明細書)、末梢動脈疾患の治療、急性腎不全の治療(米国特許第4,694,134号明細書)、及び、急性心筋虚血の治療(米国特許第4,693,995号明細書)としての使用を含む、数多くの治療的用途がある。最近になって、デフィブロチドは、類洞閉塞症候群/静脈閉塞疾病の為に使用されている(EU clinical trial EudraCT:2004-000592-33,US clinical trial 2005-01 (ClinicalTrials.gov identifier:NCT00358501)。デフィブロチドの他の使用が、以下の特許及び特許出願において記載されており、それらのそれぞれが、参照によってその全体が本明細書中に取り込まれる:米国特許第3,770,720号明細書;米国特許第3,829,567号明細書;米国特許第3,899,481号明細書;米国特許第4,693,134号明細書;米国特許第4,693,995号明細書;米国特許第4,938,873号明細書;米国特許第4,985,552号明細書;米国特許第5,081,109号明細書;米国特許第5,116,617号明細書;米国特許第5,223,609号明細書;米国特許第5,646,127号明細書;米国特許第5,646,268号明細書;米国特許第5,977,083号明細書;米国特許第6,046,172号明細書;米国特許第6,699,985号明細書;米国特許第6,767,554号明細書;米国特許第7,338,777号明細書;米国特許第8,551,967号明細書;米国特許第8,771,663号明細書、米国特許出願公開第2008/0194506号明細書;米国特許出願公開第2009/0131362号明細書;2011/0092576号明細書;米国特許出願公開第2013/0231470号明細書;米国特許出願公開第2014/0005256号明細書;米国特許出願番号第14/323,918号;及び国際公開第2013/190582号。
【0011】
本明細書に記載された該方法は、種々の方法によって製造された又は種々の動物器官から抽出されたデフィブロチド・バッチの能力を評価する為に使用されることが出来る。例えば、幾つかの実施態様において、該デフィブロチド試料バッチは、ウシ組織、例えばウシの肺、腸、又は粘膜、から抽出される。他の実施態様において、該デフィブロチド試料バッチは、ブタ組織、例えばブタの肺、腸、又は粘膜、から抽出される。デフィブロチド試料バッチはまた、ヒツジ及びウマを包含する他の動物種からの他の器官から抽出されうる。
【0012】
或る実施態様において、本明細書に記載された該方法によって能力について評価されるべき該デフィブロチド試料バッチは、例えば米国特許第4,985,552号明細書及び米国特許第5,223,609号明細書(それらの両方が、参照によってそれらの全体が本明細書中に取り込まれる)において記載された工程によって製造されうる。特に、この工程を用いて得られるデフィブロチドは、以下の式のランダム配列に対応するポリデオキシリボヌクレオチドである:
P1-5,(dAp)12-24,(dGp)10-20,(dTp)13-26,(dCp)10-20
ここで:
P=リン酸ラジカル
dAp=デオキシアデニル酸モノマー
dGp=デオキシグアニル酸モノマー
dTp=デオキシチミジル酸モノマー
dCp=デオキシシチジル酸モノマー。
【0013】
該デフィブロチド試料バッチは、1以上又は全ての以下の化学物理的特性を有しうる:電気泳動=均質な陽極移動度;吸光係数,260±1nmのE1cm 1%=220±10;吸光係数,E230/E260=0.45±0.04;モル吸光係数(リンを参照される),ε(P)=7750±500;回転力[α]D20°=53°±6;可逆性ハイパークロミシティ,天然DNAにおいて%として示される,h=15±5;及び、0.95±0.5のプリン:ピリミジン比。
【0014】
或る実施態様において、本発明の方法により能力について評価されるべきデフィブロチド試料バッチは、物理化学的ストレスに付されていてもよく、又は、物理化学的ストレス、例えば高温、極端なpH、過酸化水素など、に曝露されている疑いがあってもよい。従って、本発明の方法はまた、デフィブロチド・バッチ又は準最適な条件で若しくは長期間保存されているデフィブロチドを含む組成物の能力を評価する為に使用されることが出来る。或る実施態様において、該方法は、例えば貯蔵寿命を予測する為に、デフィブロチド・バッチ又はデフィブロチドを含む組成物の安定性を監視する為に使用されることが出来る。
【0015】
本発明の方法は、培養で哺乳動物細胞を成長させることを含む。或る実施態様において、該哺乳動物細胞はヒト細胞である。幾つかの実施態様において、該ヒト細胞はヒト上皮細胞である。他の実施態様において、該ヒト細胞はヒト内皮細胞である。一つの特定の実施態様において、該ヒト内皮細胞は、ヒト肝臓洞様血管内皮細胞、例えばSK-HEP-1細胞、である。他の特定の実施態様において、該ヒト内皮細胞は、ヒト微小血管内皮細胞、例えばHMEC-1細胞、である。他の特定の実施態様において、該上皮細胞は、角化細胞(例えば、HaCaT細胞)又は肺胞上皮細胞(例えば、A549細胞)である。哺乳動物細胞は、認定された寄託機関、例えばアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC:American Type Culture Collection)、並びに他の供給源から得られることが出来る。
【0016】
培養で哺乳動物細胞を成長させる為の適切な成長培地は当分野において周知であり、且つ、例えば「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications」 R. I. Freshney, 2010, Wiley-Blackwellに開示されている。細胞の各タイプ為に最適な培地は、該細胞の特定された供給者(例えば:ATCC-LGC,MI,イタリア;CDC,Atlanta,GA,米国)から得られることが出来る。或る実施態様において、該哺乳動物細胞が、10%(容量/容量)のウシ胎仔血清(FBS)、100ユニット/mLのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び2.5μg/mlのアムホテリシンBで補填されたイーグル最小必須培地(EMEM)において成長される。他の実施態様において、該哺乳動物細胞は、10%(容量/容量)のウシ胎仔血清(FBS)、100ユニット/mLペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び2.5μg/mlのアムホテリシンBで補填されたRPMI 1640培地において成長される。或る実施態様において、該成長培地は、L-グルタミン(例えば、2mM)、ヒドロコルチゾン(例えば、10μg/ml)、及び上皮成長因子(例えば、10μg/ml)を含みうる。
【0017】
該哺乳動物細胞の密度は、約5×104細胞/ml~約5×105細胞/ml、約2.5×104細胞/ml~約2.5×105細胞/ml、又は約5×104細胞/ml~約2×105細胞/mlでありうる。最適なアッセイ応答を得る為に、該細胞密度は、或る実施態様において、細胞毒性の剤の性質及びアッセイの為に使用される細胞のタイプを考慮して最適化されうる。例えば、ヒト内皮細胞が該アッセイの為に使用される態様において、特に適切な細胞密度は、約2.5×104細胞/ml~約2×105細胞/ml、好ましくは約5×104細胞/ml、の範囲である。これら細胞密度は、ドキソルビシン又はフルダラビンが細胞毒性の剤であるアッセイにおいて特に適切である。
【0018】
本発明の他の観点において、該方法は、細胞毒性の剤と、評価下の試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度とを含む溶液を用いて培養で哺乳動物細胞を成長させることを含む。本明細書において使用される場合に、語「細胞毒性の剤」は、細胞に対する毒性効果、例えば細胞壊死を誘発すること、細胞成長若しくは細胞分裂を阻害すること、又は細胞アポトーシスを誘発すること、を有する化合物を云う。化合物の該細胞毒性は、代謝拮抗物質特性、アルキル化特性、核酸インターカレート特性、又はアポトーシス特性を含むがこれらに制限されない様々な特性を生じることが出来る。
【0019】
代謝拮抗物質特性は、生体分子、例えばDNA及びRNA、の適切な合成を妨害する化合物又はその代謝物の能力である。代謝拮抗物質特性を有する化合物の例は、核酸塩基類縁体(例えば、プリン及びピリミジンの類縁体)、ヌクレオシド及びヌクレオチド類縁体、及び葉酸拮抗化合物を含む。細胞毒性効果を有する例示的な核酸塩基及びヌクレオシド類縁体は、アザチオプリン、チオプリン類(例えば、チオグアニン、メルカプトプリン)、フルダラビン、ペントスタチン、5-フルオロウラシル、6-アザウラシル、クロファラビン、ネララビン、クラドリビン、シタラビン、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、アザシチジン、及びデシタビンを含むがこれらに制限されない。葉酸代謝拮抗剤の例は、メトトレキサート、アミノプテリン、ペメトレキセド、プララトレキサート、及びラルチトレキセドを含む。
【0020】
アルキル化特性は、アルキル基を生体分子に転移する化合物又はその代謝物又は生物学的分子内の反応性基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、及びリン酸基)を用いて共有結合を形成する化合物又はその代謝物の能力であり、それはそれらの生物学的機能を不活性化し又は妨害することが出来る。多くのアルキル化剤はDNA複製を損なうDNA鎖を架橋することが出来、それはアポトーシスの誘発をもたらすことが出来る。アルキル化剤の例は、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、及びブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、N-ニトロソ-N-メチル尿素、カルムスチン、ロムスチン、及びセムスチン、フォテムスチン、及びストレプトゾトシン)、テトラジン類(例えば、ダカルバジン、ミトゾロミド、及びテモゾロミド)、アジリジン類(例えば、チオテパ、マイトマイシン、及びジアジクオン)、並びに、シスプラチン類(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチン)を含む。
【0021】
核酸インターカレート特性は、DNA二重らせん内に挿入する化合物又はその代謝物の能力であり、それは突然変異を生じさせる又はRNAのヘリックス構造の領域内にインターカレートさせることが出来る。挿入剤の例は、臭化エチジウム、マイトマイシン、アクチノマイシン、プリカマイシン、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、及びミトキサントロン)、サリドマイド、及びブレオマイシンを含む。
【0022】
アポトーシス特性は、プログラムされた細胞死を誘発する化合物又はその代謝産物の能力である。アポトーシスを誘導することが出来る化合物の1つの特定のクラスは微小管阻害剤であり、それは有糸分裂を妨害し、細胞周期停止をもたらし、それによってアポトーシスを誘発する。微小管阻害剤は、ビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、及びビンフルニン、並びに、タキサン類、例えばパクリタキセル及びドセタキセル、を含む。
【0023】
トポイソメラーゼ阻害剤がまた、DNA複製及び転写を防止する能力による、及び/又はDNA鎖切断を引き起こし、それによってアポトーシスを誘発することによる細胞傷害性である。トポイソメラーゼ阻害剤は、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、及びテニポシドを含むが、これらに制限されない。
【0024】
本発明の方法において使用される細胞毒性の剤は、一般に、合成、半合成、又は天然化合物である。該化合物は、上記した1以上の特性を有しうる。該細胞毒性の剤は、本明細書において記載される該化合物又はその代謝物のいずれかであることが出来る。幾つかの実施態様において、該細胞毒性の剤が、フルダラビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ブスルファン、メルファラン、シスプラチン、臭化エチジウム、ドキソルビシン、アントラサイクリン、サリドマイド、又はそれらの組み合わせから選択されうる。或る実施態様において、本発明の方法において使用される細胞毒性の剤は、フルダラビン又はその活性代謝物、9-ベータ-D-アラビノフラノシル-2-フルオロアデニン(F-Ara-A)である。他の実施態様において、本発明の方法において使用される細胞毒性の剤は、ドキソルビシンである。
【0025】
当業者に共通に知られている代替の細胞毒性の剤は、本発明の方法における使用の為に等しく適切である。例えば、幾つかの実施態様において、該細胞毒性の剤は、細胞周期の進行を遅延若しくは停止させる、及び/又は細胞のアポトーシス誘発する。細胞毒性の剤のそのようなタイプは、スタウロスポリン、ベンダムスチン、カルムスチン、イマチニブ、及びそれらの塩(Gleevecとして市販されている)、Ara-C、ゲムツズマブ(例えば、Gemtuzumab ozogamicin、Mylotargとして市販されている)、アザシチジン(Vidazaとして市販されている)、デシタビン(Dacogenとして市販されている)、Vorinostat(Zolinzaとして市販されている)、及びタブシガルギン、H2O2、及びホルボールミリスチン酸アセテートを含む。Antineoplastic and Other Hazardous Drugs in Healthcare Settings 2012,HHS,Publication,No.2012-150のNIOSHリスト(http://www.cdc.gov/niosh/docs/2012-150/pdfs/2012-150.pdf)をまた参照。
【0026】
本発明の方法において使用される細胞毒性の剤の濃度は、使用される特定の細胞毒性の剤及び哺乳類細胞型に依存して、変化するだろう。フルダラビン又はF-Ara-Aが該細胞毒性の剤である実施態様において、該剤は、約10μg/ml~約50μg/mlの最終濃度で成長培地中に存在する。他の実施態様において、ドキソルビシンが細胞毒性の剤であり、該剤は、約0.1μg/ml~約10μg/mlの最終濃度で成長培地中に存在する。
【0027】
該細胞毒性の剤は、単独で使用されうる又は2、3、4、5、6、又はそれ以上の剤の組み合わせにおいて使用されうる。或る実施態様において、単一のデフィブロチドの試料バッチの能力は、2つの異なる細胞毒性の剤についてのその細胞保護効果を独立に評価することによって評価されうる。例として、デフィブロチドの該試料バッチの第1の能力値は、第1の細胞毒性の剤(例えば、フルダラビン)を用いて該方法を実行することによって得られうり、及び、第2の能力値は、第2の細胞毒性の剤(例えば、ドキソルビシン)を用いて該方法を実行することによって得られうる。デフィブロチド試料バッチの全体的な能力が、該第1の能力値と該第2の能力値との数学的比較によって、例えば2つの値を平均すること又は2つの値の比を計算することによって、決定されうる。
【0028】
或る実施態様において、培養条件の特定のセットは、特定の細胞毒性の剤又は剤を使用するというよりも該哺乳動物細胞の細胞毒性を誘発するために使用されうる。例えば、該方法は、デフィブロチドの少なくとも一つの濃度の存在下において、哺乳動物細胞をアポトーシスを誘発する培養培地に曝露すること、インキュベーション期間後に該細胞の生存率を決定すること、そして該細胞生存率測定に基づいて、該デフィブロチドの能力を決定することを含みうる。アポトーシスを誘発する培養培地は、酸性pH(例えば、約2~約6又は約4.5~約6.5のpH)又は塩基性pH(例えば、約7.5~約10又は約8~約9.5のpH)を有する培地を含むことが出来る。
成長因子の回収がアポトーシスの誘発剤として認識される場合に、アポトーシスを誘発する培養培地はまた、必須成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、血小板由来成長因子)を含まない培地を含む。本明細書において使用される場合に、「アポトーシスを誘発する培地」がまた、アポトーシスを誘発する特定の温度範囲(例えば、37℃よりも大きい)又は酸素濃度範囲(5%未満の酸素)の培地を云うことが出来る。該アポトーシスを誘発する培養培地又は条件は、該方法で使用される特定の哺乳類細胞型の為に当業者によって容易に調製されることが出来る。U.V.又は他の種類の放射線がまた、アポトーシスを誘発するために使用されることが出来る。幾つかの実施態様において、該インキュベーション溶液は、該細胞毒性の剤に加えて、評価下で、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度を含む。該試料バッチからのデフィブロチドの濃度(例えば、細胞含有培地における最終濃度)が、約1μg/ml~約1mg/ml、約1μg/ml~約100μg/ml、約1.25μg/ml~約80μg/ml、又は約5μg/ml~約50μg/mlの範囲であることが出来る。
【0029】
或る実施態様において、該試料バッチからのデフィブロチドの複数の濃度が試験される。例えば、一つの実施態様において、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも2つの異なる濃度が個々に試験される。他の実施態様において、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも3つの異なる濃度が個々に試験される。特定の実施態様において、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも4つの異なる濃度が個々に試験される。該試料バッチからのデフィブロチドの複数の濃度が、好ましくは上記された範囲内である。幾つかの実施態様において、該試料バッチからのデフィブロチドの複数の濃度が、ストック溶液の係属的な1:2希釈によって調製される。
【0030】
幾つかの実施態様において、該方法はさらに、基準デフィブロチド・バッチを該デフィブロチド試料バッチ同時にテストすることを含む。該基準デフィブロチド・バッチは典型的に、デフィブロチドの様々な濃度で試験される。該基準デフィブロチド・バッチの複数の濃度が、幾つかの実施態様において試験される。該デフィブロチド試料バッチの複数の濃度と同様にに、該デフィブロチド基準バッチの複数の濃度が、所定の希釈因子に従って、貯蔵溶液の連続希釈によって調製されることが出来る。該基準バッチからのデフィブロチドの濃度は好ましくは、試料バッチからのデフィブロチドの濃度と同じ濃度範囲にある。例えば、該基準バッチからのデフィブロチドの濃度(例えば、細胞含有培地中の最終濃度)は、約1μg/ml~約1mg/ml、約1μg/ml~約100μg/ml、約1.25μg/ml~約80μg/ml、又は約5μg/ml~約50μg/mlであることが出来る。
【0031】
該方法の幾つかの実施態様において、少なくとも4つの濃度の該デフィブロチド試料バッチと該デフィブロチド基準バッチとが、該試料バッチの各濃度及び基準バッチについて少なくとも3回の反復実験で調製される。
【0032】
或る実施態様において、該方法は、細胞毒性の陽性対照を含む。例えば、該哺乳動物細胞は、同じ条件下で、該細胞毒性の剤単独(すなわち、いかなるデフィブロチド無しで)を用いてインキュベーションされる。
【0033】
幾つかの実施態様において、該方法は、細胞毒性の陰性対照を含む。例えば、一つの実施態様において、該哺乳動物細胞は、同じ条件下で、いかなるデフィブロチド又は細胞毒性の剤なしで溶液中でインキュベーションされる。そのような溶液は、該細胞成長培地、及び任意的に何らかの媒体物又は溶媒を含みうる。
【0034】
一つの特定の実施態様において、デフィブロチド(基準バッチ及び試料バッチ、陽性対照及び陰性対照)を用いて又は用いないで該哺乳動物細胞の該細胞毒性の剤との該インキュベーションが、複数のウェルマイクロタイター・プレート(例えば、96ウェル)において実行される。細胞生存率のその後の決定がまた、該マイクロタイター・プレートにおいて実行されうる。幾つかの関連した実施態様において、該マイクロタイター・プレートの該ウェルが、細胞付着マトリックス、例えばポリ-D-リジン、で被覆される。
【0035】
許容可能なアッセイ応答を得る為のインキュベーション期間が、該方法において使用される細胞毒性の剤及び細胞の種類に関連して、最適化されることが出来る。当業者は、共通の一般的知識に基づいてこれらのパラメータを調節することが出来る。
【0036】
該方法の或る実施態様において、該細胞が、約12~約120時間、約24~約96時間、約48~約72時間、又は約48~約96時間の範囲の期間について該細胞毒性の剤と料及び/又は基準バッチからのデフィブロチドを用いてインキュベーションされうる。一つの実施態様において、該インキュベーション期間は、少なくとも約24時間である。他の実施態様において、該インキュベーション期間は、少なくとも約48時間である。なお、他の実施態様において、該インキュベーション期間は、少なくとも約72時間である。
【0037】
特異的な哺乳類細胞型についての適切なインキュベーション条件が、一般的な実験マニュアル、例えば「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications」,R. I. Freshney,2010,Wiley-Blackwellにおいて見つけられることが出来る。該インキュベーション期間の間、温度及びCO2%についての設定値が、アッセイ応答を最適化する為に調製されることが出来るたの変数である。本発明の一つの実施態様に従うと、該哺乳動物細胞が、約35℃~約39℃の温度でインキュベーションされる。他の実施態様において、該哺乳動物細胞が、約36℃~約38℃の範囲の温度でインキュベーションされる。本発明の更なる観点に従うと、該哺乳動物細胞が、細胞成長の為の該培地の最適なpHを維持する為に、約0~約10%(容量/容量)の範囲のCO2濃度でインキュベーションされる。他の実施態様において、該CO2濃度は、約1~約5%でありうる。
【0038】
本発明の方法の他の観点において、該哺乳動物細胞の生存率が、該細胞毒性の剤と、試料バッチからのデフィブロチドとのインキュベーションの後に決定される。複数の技術が、細胞の生存率を評価する為に利用可能であり(例えば、Assay Guidance Manual,NCBI,2013,G. Sitta Sittampalam et al. Eds., http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK53196/のインターネット上で利用可能;Stoddart MJ., Cell viability assays:introduction;Methods Mol Biol.2011;740:1~6及びRiss et al., ASSAY and Drug Development Technologies,Vol.2(1):51~62,2004を参照、その両方が、参照によってそれらの全体が本明細書中に取り込まれる)、及び、本明細書において記載された任意の特定の技術は単なる例示である。幾つかの実施態様において、細胞生存率が、商業的に利用可能なキット、例えば細胞カウンティング・キット8(Cell Counting Kit 8)(Dojindo Molecular Technology Inc.;シグマ アルドリッチ)を使用することによって評価され、及び、それらは、Life Technologies(http://www.lifetechnologies.com/us/en/home/references/molecular-probes-the-handbook/assays-for-cell-viability-proliferation-and-function.htmlを参照)及びThermo Scientific(http://www.piercenet.com/product/alamarblue-cell-viability-assay-reagentを参照)から入手可能である。
【0039】
本発明の方法で使用されることが出来る細胞生存率を決定する為の幾つかの適切な方法は、膜完全性を評価する方法、還元又は酸化を測定するアッセイ、細胞のATP含量を測定する方法、ミトコンドリア活性アッセイ、及びカスパーゼ・アッセイを含む。膜完全性を評価する方法(例えば、細胞溶解アッセイ又は膜リークアッセイ)は、生細胞染色色素排除(vital dye exclusion methods)、例えば、トリプタン・ブルー(Trypan Blue)、ヨウ化プロピジウム、エリスロシンB、又は7-アミノアクチノマイシンDを利用する方法、ラクトースデヒドロゲナーゼアッセイ、及びプロテアーゼバイオマーカーのアッセイを含む。そのような方法は一般に、細胞外環境における細胞内の酵素(例えば、ラクトースデヒドロゲナーゼ)の存在又は損傷した細胞膜の指標としての膜不透過性色素の存在を細胞内で測定することを伴う。
【0040】
酸化還元に基づくアッセイは、典型的に、或るクラスの化合物(染料/染色)が生存細胞によって実行される生化学反応の結果として色又は蛍光を変化させる比色法又は蛍光法である。アッセイのこれらのタイプの一つの例は、細胞性オキシドレダクターゼ酵素がテトラゾリウム染料 MTT 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドをその不溶性ホルマザン(それは紫色を有する)に還元するMTTアッセイを含む。他の密接に関連したテトラゾリウム染料は、細胞性生存率を測定する同様なアッセイにおいて使用されることが出来る。従って、本発明の方法の或る実施態様において、細胞生存率は、テトラゾリウム染料の還元に基づいて比色分析法を実行することによって決定される。適切なテトラゾリウム染料は、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)、2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキシアニリド(XTT)、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)、及び水溶性のテトラゾリウム塩、例えばWST-1及びWST-8(2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)、を含む。そのような技術は当分野において周知であり、且つ例えば、Mosmann,「Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival:application to proliferation and cytotoxicity assays」,J Immunol Methods. 1983 Dec 16;65:55~63(当該文献は、参照によってその全体が本明細書中に取り込まれる)に記載されている。細胞生存率を決定する為の同様な酸化還元に基づくアッセイは、蛍光染料、レサズリン(7-ヒドロキシ-3H-フェノキサジン-3-オン 10-オキシド)を利用する。レサズリンは、生細胞中で赤色蛍光レゾルフィンに非常に還元され、従って細胞生存率は、該染料の存在下において蛍光における増加を測定することによって決定されることが出来る。
【0041】
細胞生存率がまた、細胞内のプロセスにおける変化、例えば細胞内の遊離基(例えば、活性酸素種、一酸化窒素)遊離イオン濃度(例えば、Ca2+、Mg2+、Zn2+)及び膜電位における変化を測定することによって評価されることが出来る。そのような変化を監視し且つ定量する為の蛍光指標が、様々な起源、例えばLife Technologies and Promegaから入手可能な蛍光に基づく試薬、から商業的に入手可能である。一つのそのようなアッセイは、細胞エステラーゼの基質である細胞透過性染料であるカルセインAMの使用を含む。生細胞における酵素活性は、カルセインAMを蛍光産物に変換し、それによって蛍光における増加による生細胞の数の決定を可能にする。アデノシン三リン酸(ATP)含量の定量がまた、細胞生存率のマーカとして用いられている。細胞性ATP含量は、例えばルミノメータを使用して、ルシフェラーゼ酵素との反応を通じて生産される光の量によって測定されることが出来る。
【0042】
幾つかの実施態様において、細胞生存率は、手動によって、例えば適切な顕微鏡の助けを用いて生存細胞を計測することによって、又は、分光光度計、分光蛍光光度計、フローサイトメーター、若しくはそれらの組み合わせから選択される吸光度/蛍光の変化を評価する適切な装置によって測定されうる。細胞生存率を評価する為の他の技術は、当業者に知られており、且つ、本発明の方法の使用の為に採用されうる。
【0043】
細胞生存率を評価する為に使用される該アッセイに依存して、該細胞生存率測定値は、細胞含有溶液若しくは培地の吸光度若しくは蛍光における変化、生存細胞のパーセント若しくは数、又は死細胞のパーセント若しくは数でありうる。幾つかの実施態様において、吸光度又は蛍光における変化は、生存細胞のパーセント若しくは数、又は死細胞のパーセント若しくは数に変換されることが出来る。例えば、色又は蛍光における変化が、損傷した細胞膜を浸透する染料又は染色(例えば、トリプタン・ブルー、エリスロシンB又はヨウ化プロピジウム)の結果として生じる実施態様において、特定の波長での吸光度又は蛍光における増加が、死細胞の数における増加を示す。色又は蛍光における変化が、細胞反応の結果(例えば、MTTアッセイ、カルセインAMアッセイ)の結果として生じる他の実施態様において、生細胞の数は、特定の波長での吸光度又は蛍における増加と相関する。従って、本発明の方法の或る実施態様において、細胞生存率は、細胞毒性の剤及びデフィブロチドを用いてインキュベーション後に、該哺乳動物細胞を含む溶液の吸光度又は蛍光を測定することによって決定される。一つの実施態様において、該試料バッチからのデフィブロチドの各濃度についての該細胞生存率(例えば、吸光度又は蛍光)(例えば、該試料バッチからのデフィブロチドの種々の濃度を含むマイクロタイター・プレートの各ウェルの吸光度/蛍光)が測定され、そしてデフィブロチドの対応する濃度に対してプロットされて、用量応答曲線を生成する。幾つかの実施態様において、該用量応答曲線は、シグモイド曲線(すなわち、「S字形」)である。試験されるデフィブロチド濃度の範囲は、シグモイド用量応答曲線を得るために拡大されてもよく、又は追加された濃度の追加された数でありうる。
【0044】
該試料(例えば、陽性対照及び陰性対照、デフィブロチド基準バッチ、及びデフィブロチド試料バッチ)のそれぞれについての吸光度又は蛍光の読み取り値又は他の細胞生存率測定値(例えば、生細胞の数又はパーセント;例えば、死細胞の数又はパーセント)、生データとして知られている、は、処理されて、そして更なる統計解析に付されることが出来る。専用のソフトウェアが、統計解析、例えばバイオアッセイ評価用に特に設計されたもの、例えばPLA2(Stegmann Systems GmbH,ドイツ)、又は、代替的に、生物学的アッセイデータの統計的評価の為にカスタマイズされた商用オフ・ザ・シェルフ・スプレッドシート、の為に使用されることが出来る。
【0045】
或る実施態様において、本発明の方法は、デフィブロチドの試料バッチを含む試料について測定された該細胞生存率を、デフィブロチドの基準バッチについて測定された該細胞生存率と比較することを含む。幾つかの実施態様において、デフィブロチドの該基準バッチについての該細胞生存率測定値は、デフィブロチドの該試料バッチの解析の前に得られた。デフィブロチドの基準バッチについてのそのような事前測定値は、基準データベース又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されることが出来る。或る実施態様において、該基準バッチについての該細胞生存率測定値は、デフィブロチド基準バッチの集団から得られた細胞生存率測定値の平均を表す。従って、該デフィブロチド試料バッチの能力が、デフィブロチド基準バッチ又はデフィブロチド・バッチの集団の事前解析から得られる標準較正曲線と比較することによって、該試料バッチについての該細胞生存率測定値に基づいて計算されることが出来る。他の実施態様において、デフィブロチドの該基準バッチについての該細胞生存率測定値が、デフィブロチドの該試料バッチについての該細胞生存率測定値と同時に取得される。例えば、該デフィブロチド試料バッチについての一連の濃度が、該デフィブロチド基準バッチについての一連の濃度と並行して実行される。
【0046】
デフィブロチドの該基準バッチは好ましくは、知られている生物学的活性(例えば、プロフィブリン溶解活性、細胞保護活性)を有する標準化されたデフィブロチド・バッチである。例えば、一つの特定の実施態様において、該デフィブロチドの基準バッチは、630~905ユニット/mgの細胞保護活性を有する。該標準化されたデフィブロチド・バッチが、1以上の以下の特徴を有することが出来る:SEC-HPLCによって測定された場合に、約14~約19kDaの平均分子量、約207~233の吸光係数(ε1%)、約0.41~0.49の消光比(E最小/E最大)、約0.80よりも大きいプリン対ピリミジン比(例えば、約0.80~約1.50)、約7200~約8400のモル吸光係数(ε(P)、リンを基準として)、約45°~約60°の旋光性([α]D20°)、及び約8~約22の天然DNA(h)の%として示された可逆性高色度。幾つかの実施態様において、デフィブロチドの該基準バッチは、臨床的利用の為のGMP条件下で製造されたデフィブロチドのバッチである。他の実施態様において、デフィブロチドの該基準バッチは、ヂェンツィウム(Gentium)(ヴィッラ・グアルディア、イタリア)から入手可能なデフィブロチドの商業的バッチである。
【0047】
幾つかの実施態様において、該基準バッチからのデフィブロチドの複数の濃度についての細胞生存率測定値が、較正曲線を生成する為に取得される。一つの実施態様において、該較正曲線を生成することは、該基準バッチからのデフィブロチドの既知の濃度増大で該試料に関連する吸光度データを獲得し、そしてそれらデータの統計学的処理をして、校正曲線を得ることを含み、それは、細胞毒性の剤の存在下での細胞生存率における増加とデフィブロチドの容量との間の相関を表す。或る実施態様において、該デフィブロチドの試料バッチについて測定された該細胞生存率は、デフィブロチドの基準バッチを用いて細胞生存率測定値から得られた較正曲線と比較されて、デフィブロチドの試料バッチの能力を決定する。
【0048】
幾つかの実施態様において、該デフィブロチド試料バッチからの細胞生存率測定値から得られた用量応答曲線が、デフィブロチドの基準バッチを用いて細胞生存率測定値から得られた較正曲線と比較される。そのような実施態様において、該用量応答曲線及び該較正曲線は、シグモイド曲線でありうる(例えば、図7を参照)。2つの曲線間の違いは、該デフィブロチド試料バッチと該デフィブロチド基準バッチとの間の生物学的活性における差の関数である。この違いは、該基準バッチと比較された、デフィブロチドの試料バッチの能力である。一つの実施態様において、4-パラメータ・ロジスティック関数モデル(4-PL、ヨーロッパ薬局方、第5.3.2節)が、該デフィブロチド試料バッチについての用量応答曲線と該デフィブロチド基準バッチとの間の差を決定し、デフィブロチドの該試料バッチの能力を計算する為に使用される。他の実施態様において、5-パラメータ・ロジスティック関数モデル(5-PL,R.A.Dudley et al.,“Guidelines for immunoassay data processing,”Clin.Chem.,1985,31:1264~1271)が、該デフィブロチド試料バッチについての用量応答曲線と該デフィブロチド基準バッチについての較正曲線との間の差を決定し、デフィブロチドの試料バッチの能力を計算する為に使用される。
【0049】
幾つかの実施態様において、該デフィブロチド試料バッチを用いて試料の該細胞生存率測定から得られるデータは、該データが有効であることを保証する為に、追加の統計的パラメータについて評価されることが出来る。例えば、該データは、或る統計的基準、例えば規制当局によって要求されるそれら、を満たすことを要求されることが出来る。そのような試験は、例えば0.05の有意レベルでの、線形性、並列性、及び線形回帰についての試験を含むことができ、その結果、例えばヨーロッパ薬局方、第5.3.2節、2014及び米国薬局方 第(1034)章 生物学的アッセイの解析(Analysis of Biological Assays)、2014に記載されている通り、それぞれ、Fnon-linearity<Fcritical、Fnon-parallelism<Fcritical、及びFRegression>Fcriticalである。
【0050】
上記統計的方法から計算される該デフィブロチド試料バッチの能力は、該デフィブロチド基準バッチのパーセント、デフィブロチドの重量当たりの保護活性単位、又は任意のものであっても若しくはそうでなくてもよい他の単位として表されることが出来る。幾つかの実施態様において、デフィブロチド保護活単位は、所与のアッセイ条件下で10μg/mlのフルダラビンの存在下、SK-HEP-1細胞の半最大細胞保護を媒介するデフィブロチドの濃度である。一つの実施態様において、該デフィブロチド試料バッチの能力は、デフィブロチドの該基準バッチの能力と比較した能力比として表される。或る実施態様において、該デフィブロチド試料バッチについての能力比は、以下の式を用いて計算される:
能力比=Cref/Csamp
ここで、Cは、同じ効果を達成する為に必要とされる基準(ref)及び試料(samp)のデフィブロチド物質の濃度である。
【0051】
本明細書において記載された場合のデフィブロチド試料バッチの能力を評価する該方法は、デフィブロチドを含む医薬組成物の調製において使用され、該組成物に含まれるデフィブロチドの量を調節して、当該組成物が正確且つ一貫した用量を含むことを保証することがで出来る。従って、本発明の方法は、製造工程の間に使用されることが出来、異なる場所で、種々の方法によって、又は種々の起源から調製されたデフィブロチドの異なるバッチの能力を評価する。
【0052】
本発明の方法はまた、デフィブロチド・バッチ又はデフィブロチドを含む医薬組成物の安定性を経時的に監視する為に使用されることが出来る。例えば、バッチ又は組成物は、本明細書中に記載されている該方法によって定期的に経時的に(例えば、毎月、年2回、毎年)、又は、該デフィブロチドの活性を監視する為の若しくは劣化されている或いは分解されているバッチ若しくは組成物を識別する為の極端な条件に曝露後に決定されることが出来る。
【0053】
本発明のこれら及び他の観点が、以下の実施例においてより良く説明されるだろう。しかしながら、それは本発明を制限するものとしてみなされない。
【0054】
本開示を通じて参照される全ての特許文献及び非特許文献は、全ての目的の為に本明細書中に参照により取り込まれる。
【実施例0055】
物質及び方法
以下の物質が、以下に本明細書において与えられた該実施例において使用された。
【0056】
装置
種々の発光フィルター及び吸収フィルターを備え付けられたビクター3マイクロプレート・リーダー(パーキンエルマー、ミラノ、イタリア)、ワレック(Wallac)ソフトウェア(パーキンエルマー、ミラノ、イタリア)によって操作される。
分子生物学の為の滅菌チップを備えられた連続的な容量調整を有する単一の又は複数のチャンネル(ギルソン、ミラノ、イタリア)。
温度及びCO2対照を有する細胞インキュベータ(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック、ミラノ、イタリア)。
組織培養モデルHERAcell-150の為の層流フード(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック、ミラノ、イタリア)。
分析天秤AX 26 DR(メトラー、ミラノ、イタリア)。
pHメータ モデル 780(メトローム・イタリア、ミラノ、イタリア)。
細胞培養フラスコ、25及び75cm2、ベント・キャップ(コーニング インコーポレーティッド、ニューヨーク州、米国)。
滅菌済の、透明な96ウェル、ポリ-D-リジンで被覆された又は被覆されていない(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)。
ノイバウエル(Neubauer)計測チャンバ及び光学顕微鏡(カール・ツァイス、ミラノ、イタリア)。
バキューム培地フィルター滅菌ユニット(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)。
【0057】
コンピュータ・プログラム
マイクロソフト エクセル 2003 (マイクロソフト コーポレーション 、レドモンド、ワシントン州、米国)
PLA 2(ステグマン(Stegmann) システムズ GmbH、ドイツ)
【0058】
細胞
ヒト微小血管内皮細胞株(HMEC-1、CDC、アトランタ、ジョージア州、米国)
肝臓洞様血管内皮細胞株(SK-HEP-1、ATCC、マナサス、バージニア州、米国)
【0059】
試薬及び化学薬品
デフィブロチド(Gentium,イタリア)
9-ベータ-D-アラビノフラノシル-2-フルオロアデニン、分析等級(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)、下記の図及び実施例において、フルダラビン又はF-araとして言及される
【0060】
ドキソルビシン,分析等級(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
アムホテリシンB(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
ジメチルスルホキシド(DMSO)(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
ゼラチン、2%水中、組織培養等級(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
ダルベッコ(Dulbecco)のリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
エタノール 無水(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
ウシ胎仔血清(FBS)(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
ペニシリン-ストレプトマイシン100×(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
MTT(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
CCK-8(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
トリプタン・ブルー(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
イーグル最小必須培地(EMEM:Eagle's Minimum Essential Medium) ATCC番号:30-2003 (ATCC、マナサス、バージニア州、米国)
約17KDaのオリゴヌクレオチド(ACGT)n(シグマジェノシス、ミラノ、イタリア)
約17KDaのオリゴヌクレオチド(AC)n(シグマジェノシス、ミラノ、イタリア)
グルタチオン(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
ヒト組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
水 分子生物学等級(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)
【0061】
SK-HEP-1の為の細胞成長培地の調製
SK-HEP-1の為の細胞成長培地は、10%(容量/容量)のウシ胎児血清(FBS)、1×ペニシリン-ストレプトマイシン及び1×アムホテリシンBで補填されたイーグル最小必須培地(EMEM)であった。EMEM培地の500mlから65mlが除かれ、そして50mlのFBS、5mlの100×濃縮のペニシリン-ストレプトマイシン貯蔵液、及び10mlの50×濃縮のアムホテリシンB貯蔵液が添加された。該培地は、培地フィルター滅菌ユニットを使用してフィルター滅菌された。
【0062】
HMEC-1の為の細胞成長培地の調製
HMEC-1の為の細胞成長培地が、10%(容量/容量)FBS、1×ペニシリン-ストレプトマイシン及び1×アムホテリシンBで補填されたRPMI 1640培地であった。RPMI 1640培地の500mlから65mlが除かれ、そして50mlのFBS、5mlの100×濃縮のペニシリン-ストレプトマイシン貯蔵液、及び10mlの50×濃縮のアムホテリシンB貯蔵液、2mM L-グルタミン、10μg/mlのヒドロコルチゾンが添加された。該培地は培地フィルター滅菌ユニットを使用してフィルター滅菌され、そして滅菌上皮成長因子が10μg/mlの濃度まで添加された。
【0063】
SK-HEP-1培養及び調製
ヒト肝臓洞様血管内皮細胞株 SK-HEP-1がアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から得られ、そしてゼラチンで被覆された組織培養フラスコを使用して、37℃で5% CO2を含む加湿された細胞インキュベータにおいて完全EMEM培地中で培養された。該細胞は、該ATCCによって提供された以下の指示書に従って2~3日毎にトリプシンを介したはく離により継体培養された。培養物が80~90%の密集であり且つ継代+3~+10の間に保護アッセイの為に使用された場合に、細胞が、培養フラスコに連続的に移された。すなわち、該ATCCから受領した該細胞の特徴付けられた継代数を超えて3~10継代した。
【0064】
細胞保護アッセイにおいて使用する為にSK-HEP-1の懸濁液が調製され、そして計測された。簡単には、該細胞がD-PBSで洗浄され、そして1mlのトリプシン溶液を用いてはく離され、そして105、2×105、又は4×105細胞/mlの細胞濃度まで完全培地中で再懸濁された。細胞が、トリプタン・ブルーの存在下でノイバウエル計測チャンバを使用して計測され、該培養物の生存率パーセントを評価した。該細胞保護アッセイにおいて使用された該細胞培養物が、90%以上の生存率を有した。
【0065】
HMEC-1培養及び調製
ヒト微小血管内皮細胞株(HMEC-1)が、疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)から得られ、そして37℃で、5% CO2を含む加湿された細胞インキュベータにおいて完全RPMI 1640培地中で培養された。該細胞は、2~3日毎にトリプシンを介したはく離により継体培養され、そして培養物が80~90%の密集であり且つ継代+3~+10の間に保護アッセイの為に使用された場合に、培養フラスコに連続的に移された。
【0066】
細胞保護アッセイにおいて使用する為にHMEC-1の懸濁液が調製され、そして計測された。簡単には、該細胞がD-PBSで洗浄され、そして1mlのトリプシン溶液を用いてはく離され、そして105、2×105、又は4×105細胞/mlの細胞濃度まで完全培地中で再懸濁された。細胞が、トリプタン・ブルーの存在下でノイバウエル計測チャンバを使用して計測され、該培養物の生存率パーセントを評価した。該細胞保護アッセイにおいて使用された該細胞培養物が、90%以上の生存率を有した。
【0067】
貯蔵溶液の調製
1.フルダラビン
10mgバイアルのフルダラビンがる為に1mlのDMSOに溶解されて、10mg/mlの溶液を与え、そして4℃で保存された。該貯蔵溶液は、完全成長培地を用いて1:1に希釈されて、5mg/mlの作業用の貯蔵溶液を与えた。
【0068】
2.デフィブロチド
デフィブロチド貯蔵溶液が、使用当日に調製された。約100mgのデフィブロチド原薬が50mlの滅菌チューブ内に正確に秤量され、そして20mlのD-PBSに溶解されて、5mg/mlの溶液を与えた。この溶液は完全成長培地を用いて1:10に希釈されて、濃度希釈系列を生成する為に使用される0.5mg/mlの作業用の貯蔵溶液を与えた。
【0069】
3.組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)
2つの10μgバイアルのt-PA(バイアル当たり、約400,000 IU/mg)の含量が2mlのD-PBSに溶解されて、4000 IU/mlの溶液を与え、そして-80℃で保存された。
【0070】
4.ACGTオリゴヌクレオチド
1mgバイアルのACGTオリゴヌクレオチドが2mlのD-PBSに溶解されて、0.5mg/mlの溶液を与え、そして4℃で保存された。
【0071】
5.グルタチオン
100mgのグルタチオンが20mlのPBSに溶解され、そして完全成長培地を用いて1:10に希釈されて、0.5mg/mlの最終濃度にされた。
【0072】
6.ドキソルビシン
10mgバイアルのドキソルビシンが10mlのDMSOに溶解され、そして-80℃で保存された。作業用の貯蔵液が、完全培地中で200μg/mlに希釈されることによって調製された。
【0073】
プレート堆積
上記された濃度で調製された、50μLの細胞懸濁液又はブランクの為の培地単独が、ポリ-D-リジンで被覆された96ウェルのマイクロタイター・プレートのウェル内に入れられた。該プレートが3時間細胞インキュベータに置かれ、その後50μLのチャレンジ溶液が細胞含有ウェルに添加された。3つ又は4つの複製ウェルが、各実験条件について使用された。デフィブロチドの不存在下又は存在下においてフルダラビン含有溶液の調製が表1に与えられている。該溶液の該ウェルへの添加後に、該プレートが該インキュベータに戻されて、そして細胞生存率が24、48、又は72時間後に評価された。バックグラウンド測定の為に、100μLの完全培地単独が3~4つの複製ウェルに含まれている。
【0074】
【表1】
【0075】
MTTアッセイを用いた細胞生存率
インキュベーションの特定の期間後に、各ウェルにおける細胞生存率が該MTTアッセイを使用して測定された。該MTTアッセイは生細胞中のミトコンドリアデヒドロゲナーゼによるテトラゾリウム塩の開裂に基づき、不溶性ホルマザン染料の生成をもたらす。MTT染料、D-PBS中の10μlの2mg/ml溶液、が各ウェルに添加されて、そして次に該プレートが3時間インキュベーションされた。次に、プレートが遠心分離され、そして各ウェルが吸引された。該染料は200μlのDMSO/エタノール(1:1)混合物を用いて可溶化され、そして該ウェル中の吸光度がマイクロプレートリーダ上で570~590nmで読まれた。培地及び細胞障害性薬物(フルダラビン又はドキソルビシン)のみを含むブランク・ウェルがまた、全ての実験において対照として実行された。
【0076】
CCK-8アッセイを用いた細胞生存率
インキュベーションの特定の期間後に、各ウェルにおける細胞生存率が、以下の製造者指示書を使用してCCK-8細胞カウンティング・キット(シグマ アルドリッチ、ミラノ、イタリア)を使用して測定された。該アッセイは、水溶性のテトラゾリウム塩 WST-8(2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム)の生細胞の脱水酵素活性による還元に基づく。該還元されたホルマザン染料は、組織培養培地中に可溶性である。ホルマザンの量は、生細胞の数に正比例する。CCK-8の検出感度は、他のテトラゾリウム塩、例えばMTT、よりも高い。MTTとは異なり、可溶化工程は必要でなく、従って、該アッセイは連続的に測定されることが出来る。
【0077】
簡単には、特定のインキュベーション期間後に、該供給された試薬がマイクロタイター・プレートの各ウェルに添加され、そして該プレートがインキュベータに戻された。3時間後に、吸光度が、590nmでのバックグラウンド補正を用いて、450nmで測定された。ブランク培地の吸光度が、該テスト試料から差し引かれた。
【0078】
実施例1
本実施例は、フルダラビン及びデフィブロチドの生理学的に関連する濃度でのHMEC-1細胞のフルダラビン誘発性細胞毒性に対するデフィブロチドの保護効果の大きさを示す。
【0079】
HMEC-1細胞が、上記された手順に従って培養された。500,000細胞/mlの細胞密度が、該アッセイの為に使用された。該細胞毒性の剤は、10μg/mlの濃度のフルダラビンであった。デフィブロチドが、100、10、又は1μg/mlの濃度でマイクロプレート・ウェルに添加された。各条件の4回の反復実験が実行された。該HMEC細胞の生存率が、上記されたMTTアッセイを用いて72時間後に評価された。デフィブロチドはフルダラビン誘発性細胞毒性から該細胞を用量依存様式で保護し、50%以上の保護効果が100μg/mlのデフィブロチドで観察された(図1)。
【0080】
実施例2
本実施例は、ドキソルビシン及びデフィブロチドの生理学的に関連する濃度のSK-HEP-1細胞のドキソルビシン誘発性細胞毒性に対するデフィブロチドの保護効果の大きさを示す。
【0081】
SK-HEP-1細胞が、上記された手順に従って成長された。約50,000細胞/mlの細胞密度が、該実験の為に使用された。該細胞毒性の剤は、0.1μg/mlの濃度のドキソルビシンであった。デフィブロチドが、100、50、20、10、5又は1μg/mlの濃度でマイクロプレート・ウェルに添加された。各条件の3回の反復実験が実行された。生存率が、上記されたCCK-8アッセイキットを用いて72時間後に評価された。50μg/ml以上の濃度で、デフィブロチドは、SK-HEP-1細胞をドキソルビシン誘発性細胞毒性から有意に保護した(図2)。
【0082】
実施例3
本実施例は、デフィブロチドの及びデフィブロチドに対して同様な平均長及び塩基組成を有する合成オリゴヌクレオチドのフルダラビン誘発性細胞毒性に対する保護効果を比較する。
【0083】
HMEC-1細胞が、上記された手順に従って培養された。約500,000細胞/mlの細胞密度が、該実験の為に使用された。該細胞毒性の剤は、50μg/mlの濃度のフルダラビンであった。約16kDaの合成オリゴヌクレオチド(アデニン-シトシン(AC)、又は約17kDaのアデニン-シトシン-グアニン-チミン(ACGT))、又はデフィブロチドが、異なる濃度で各ウェルに添加された。特に、該ACオリゴヌクレオチドが1、10、100、又は500の濃度で各ウェルに添加され、一方、該ACGTオリゴヌクレオチドが12.5、25、又は50μg/mlの濃度で各ウェルに添加された。デフィブロチドが、5、25、50、又は100μg/mlの濃度で各ウェルに添加された。各処理条件が3回実行された。生存率が、MTTアッセイを用いて24、48及び72時間後に評価された。
【0084】
図3A及び3Bにおいて示されているように、該ACオリゴヌクレオチド及び該ACGTオリゴヌクレオチドのいずれもが、インキュベーションの72時間後に、HMEC-1細胞のフルダラビン誘発性細胞毒性に対して何らの保護効果を有しなかった。対照的に、デフィブロチドは、フルダラビン誘発性細胞毒性からの該細胞の用量依存保護を示した(図3C)。
【0085】
実施例4
本実施例において記載された実験は、フルダラビン誘発性毒性からSK-HEP-1細胞を保護する為に、合成ACGTオリゴヌクレオチド、tPA、及びグルタチオンの能力を試験した。
【0086】
SK-HEP-1細胞が、上記された手順に従って成長され且つ展開された。約50,000細胞/mlの細胞密度が、該実験の為に使用された。該細胞毒性の剤は、10μg/mlの濃度のフルダラビンであった。ランダム合成オリゴヌクレオチド(ACGT)、tPA、又はグルタチオンが、異なる濃度で各ウェルに添加された。特に、該ACGTオリゴヌクレオチド又はグルタチオンが、1.25、2.5、5、10、20、40、又は80μg/mlの濃度で各ウェルに添加され、一方、tPAが、10、20、40、80、160、又は320 IU/mlの濃度で添加された。各処理条件が3回実行された。生存率が、該CCK-8アッセイキットを用いて72時間のインキュベーション後に評価された。該SK-HEP-1細胞のフルダラビン誘発性細胞毒性からの保護が、3つの化合物のいずれでも観察されなかった(図4)。
【0087】
実施例5
本実施例は、物理化学的ストレスの結果として変性されているデフィブロチドのフルダラビン誘発性細胞毒性に対する保護効果を評価する。
【0088】
デフィブロチド試料が、デフィブロチドの標準試料を1)酸性ストレス、又は2)塩基性ストレスのいずれかに付すことによってストレスを与えられた。該酸性ストレスは、約80℃で18時間、約3のpHを有するリン酸緩衝液中で標準デフィブロチド試料をインキュベーションすることを課した。該塩基性ストレスは、約80℃で18時間、約12のpHを有するリン酸緩衝液中で標準デフィブロチド試料をインキュベーションすることを含んだ。該インキュベーション期間後に、該溶液は、リン酸又は水酸化ナトリウムで中性にされた。
【0089】
SK-HEP-1細胞が、上記された手順に従って成長された。約50,000細胞/mlの細胞密度が、該実験の為に使用された。該細胞毒性の剤は、10μg/mlの濃度のフルダラビンであった。標準のデフィブロチド(未変性)、酸性ストレスに付されたデフィブロチド又は塩基性ストレスに付されたデフィブロチドが、80、40、20、10、5、2.5、又は1.25μg/mlの濃度で各ウェルに添加された。各処理条件が3回実行された。
【0090】
該細胞の生存率が、該CCK-8アッセイキットを用いて72時間のインキュベーション後に評価された。用量応答曲線が、未変性のデフィブロチド、酸性ストレスに付されたデフィブロチド、及び塩基性ストレスに付されたデフィブロチドについて構築された。用量応答曲線の比較が、図5において示されている。該酸性ストレスに付されたデフィブロチド試料及び該塩基性ストレスに付されたデフィブロチド試料の両方が、フルダラビン誘発性細胞毒性からSK-HEP-1細胞を保護する際に未変性のデフィブロチドよりも低い効果であった(図5)。
【0091】
実施例6
本実施例は、デフィブロチド及びフルダラビンの生理学的に関連する濃度のSK-HEP-1細胞のフルダラビン誘発性細胞毒性に対するデフィブロチドの保護効果の大きさを示す。
【0092】
SK-HEP-1細胞が、上記された手順に従って成長され且つ展開された。該細胞が、ポリ-D-リジンで被覆された96-ウェルのマイクロプレート中に約50,000細胞/mlの細胞密度で播かれた。該細胞毒性の剤は、10μg/mlの濃度のフルダラビンであった。デフィブロチドが、100、50、40、20、10、5、又は1μg/mlの濃度で各ウェルに添加された。各処理条件が、4つの複製ウェルにおいて実行された。生存率が、インキュベーションの72時間後に、CCK-8アッセイキットを用いてアッセイされた。デフィブロチドは、フルダラビン誘発性細胞毒性からの用量依存細胞保護効果を生じ、80%よりも多い該細胞が40μg/ml以上のデフィブロチドの濃度で生き残った(図6)。
【0093】
実施例7
本実施例は、未知の生物学的活性のデフィブロチド試料の能力の評価の為の、細胞に基づく保護アッセイの利用を示す。
【0094】
SK-HEP-1細胞が、上記された手順に従って成長され且つ展開された。該細胞が、ポリ-D-リジンで被覆されたマイクロプレート中に、約50,000細胞/mlの細胞密度で播かれた。該細胞毒性の剤は、10μg/mlの濃度のフルダラビンであった。該デフィブロチド基準標準及び該デフィブロチドテスト試料が、80、40、20、10、5、2.5、又は1.25μg/mlの濃度で個々のウェルに添加された。4つの複製ウェルが、各処理条件について実行された。該細胞の生存率が、インキュベーションの72時間後に、CCK-8アッセイキットを用いてアッセイされた。
【0095】
該デフィブロチド基準標準試料及び該デフィブロチドテスト試料について測定された吸光度が、4-パラメータ・ロジスティック関数解析に付された。すなわち、基準及び試料のデフィブロチド曲線の用量応答が、4-パラメータ・ロジスティック関数によって記載されることが出来る:
【0096】
【数1】
【0097】
ここで、νは応答であり、αは上部漸近線であり、δは、下部漸近線であり、βはスロープ・ファクター(slope-factor)であり、及びγはx軸上の試料曲線の水平位置である。デフィブロチドテスト試料の能力が、該デフィブロチド基準標準に対する能力比を計算することによって決定された。該デフィブロチドテスト試料についての能力比は1.157であった(図7)。
【0098】
実施例8
本実施例は、細胞に基づく保護アッセイのデフィブロチド能力決定の精度を評価する。同じデフィブロチドテスト試料の能力が、修飾培地の異なるバッチ、細胞バッチ、及びピペット装置を使用して、異なる分析者による反復アッセイにおいて、デフィブロチド基準標準に対して測定された。
【0099】
SK-HEP-1細胞が、上記された手順に従って成長され且つ展開された。該細胞が、ポリ-D-リジンで被覆されたマイクロプレート中に、約50,000細胞/mlの細胞密度で播かれた。該細胞毒性の剤は、10μg/mlの濃度のフルダラビンであった。該デフィブロチド基準標準及び該デフィブロチドテスト試料が、実施例7において記載された通りの同じ一連の濃度で個々のウェルに添加された。4つの複製ウェルが、各実験条件について実行された。該細胞の生存率が、インキュベーションの72時間後に、CCK-8アッセイキットを用いてアッセイされた。
【0100】
各アッセイ実行における各ウェルについて測定された吸光度は4-パラメータ・ロジスティック関数解析に付され、且つ、該デフィブロチド基準標準に対する能力比が実施例7において記載された通りに計算された。各アッセイ実行における同じデフィブロチドテスト試料の能力比が、表2に示されている。表2に示されている可変条件下での異なる分析者による能力測定から、該アッセイは、高い精度(7.8の相対標準偏差%)且つ低い偏り(<3%)を有する。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例9
本実施例は、デフィブロチドの3つの異なるバッチ及びデフィブロチド基準標準についての細胞に基づく保護アッセイによって決定された場合の能力の比較を示す。
【0103】
SK-HEP-1細胞が、上記された手順に従って成長され且つ展開された。該細胞が、ポリ-D-リジンで被覆されたマイクロプレート中に、約50,000細胞/mlの細胞密度で播かれた。該細胞毒性の剤は、10μg/mlの濃度のフルダラビンであった。該デフィブロチド基準標準及び3つの個々のバッチからの種々のデフィブロチドテスト試料が、80、40、20、10、5、2.5、又は1.25μg/mlの濃度で個々のウェルに添加された。4つの複製ウェルが、各実験条件について実行された。該細胞の生存率が、インキュベーションの72時間後に、CCK-8アッセイキットを用いてアッセイされた。
【0104】
各ウェルについて測定された吸光度は4-パラメータ・ロジスティック関数解析に付され、且つ、デフィブロチドの各バッチについての能力比が実施例7において記載された通りに計算された。3つのバッチからのデフィブロチドテスト試料のそれぞれの、デフィブロチド標準に対する能力比が、表3に示されている。
【0105】
【表3】
【0106】
該開示発明は特定の方法論に限定されず、且つこれらとして記載されたプロトコル及び材料は変更すること出来ることが理解される。本明細書に於いて使用される語は、特定の実施態様を記載する目的のみのものであり、本発明の範囲を制限するものと意図されず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろうことをまた理解する。
【0107】
当業者は、本明細書中に記載された本発明の特定の実施態様に対する多くの等価物をルーチン的な実験だけを使用して認識し、又は確認することが出来るだろう。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0108】
実施例10
本発明の方法をD3の方法と直接的に比較する実験データを追加することは有用である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフィブロチドの基準バッチと比較して0.901~1.135の標準化された能力比でデフィブロチドを含む医薬組成物であって、前記デフィブロチドの前記能力が、
培養で哺乳動物細胞を成長させること;
該細胞を、少なくとも一つの細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度とを含む溶液でインキュベートすること;
インキュベーション期間後に該細胞の生存率を決定すること
前記細胞生存率を、デフィブロチドの基準バッチについての細胞生存率と比較すること;及び、
該比較に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を計算すること
を含む、該医薬組成物
【請求項2】
前記デフィブロチドの少なくとも10μg/mlが、イン・ビトロで、上皮細胞を損傷から保護する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
該細胞が、該細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも4つの異なる濃度とでインキュベートされること、及び該細胞生存率が濃度のそれぞれについて決定されて、用量応答曲線を生成する、請求項1又は2に記載の医薬組成物
【請求項4】
デフィブロチドの該試料バッチについて測定された細胞生存率が、デフィブロチドの該基準バッチを用いた細胞生存率測定から得られた較正曲線と比較される、請求項1又は2に記載の医薬組成物
【請求項5】
該哺乳動物細胞が、ヒト内皮細胞、ヒト上皮細胞、ヒト肝臓洞様血管内皮細胞、又はヒト微小血管内皮細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項6】
該哺乳動物細胞が、5×104細胞/ml~5×105細胞/mlの密度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項7】
該細胞毒性の剤が、フルダラビン、9-ベータ-D-アラビノフラノシル-2-フルオロアデニン(F-Ara-A)、又はドキソルビシンである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項8】
フルダラビン又はF-Ara-Aが10μg/ml~50μg/mlの濃度で該溶液中に存在している、又は、ドキソルビシンが0.1μg/ml~10μg/mlの濃度で該溶液中に存在している、請求項に記載の医薬組成物
【請求項9】
該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度が、1μg/ml~100μg/mlの範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記インキュベーション期間が、少なくとも24時間、少なくとも48時間、又は少なくとも72時間である、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項11】
細胞の生存率を決定することが、テトラゾリウム染料の還元に基づく比色分析法を実行することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
該テトラゾリウム染料が、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド又は2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウムである、請求項11に記載の医薬組成物
【請求項13】
細胞の生存率を決定することが、該細胞を用いるインキュベーション後に該溶液の吸光度を測定することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項14】
デフィブロチドの該試料バッチが、ウシ組織又はブタ組織から抽出されたものである、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項15】
デフィブロチドの基準バッチと比較して0.901~1.135の標準化された能力比でデフィブロチドを含む医薬組成物であって、前記デフィブロチドの前記能力が、
複数のウェルマイクロタイター・プレート中、培養で哺乳動物細胞を成長させること;
該細胞を、少なくとも一つの細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくともつの濃度とを含む溶液でインキュベートすること;
インキュベーション期間後に該細胞の生存率を決定すること
前記細胞生存率を、デフィブロチドの基準バッチについての細胞生存率と比較すること;及び、
該比較に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を計算すること
を含む、該医薬組成物
【請求項16】
前記デフィブロチドの少なくとも10μg/mlが、イン・ビトロで、上皮細胞を損傷から保護する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記方法が、同時に容量応答データを集めることをさらに含む、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記細胞が、1.25~80μg/mlの濃度でデフィブロチド含有溶液でインキュベーションされる、請求項15~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記細胞生存率が、濃度のそれぞれについて決定されて、用量応答曲線を生成する、請求項15~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
細胞毒性の剤である、フルダラビン、又は9-ベータ-D-アラビノフラノシル-2-フルオロアデニン(F-Ara-A)が、10μg/mlの濃度で溶液中に存在する、請求項15~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記複数のウェルマイクロタイター・プレートが、96ウェルプレートである、請求項15~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの細胞毒性剤と、試料バッチからの少なくとも4つの異なる濃度のデフィブロチドと含む溶液で細胞をインキュベートすることを少なくとも3回繰り返す、前記医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
[課題を解決するための手段]
本発明の一つの実施態様において、デフィブロチドの試料バッチの能力を評価するための方法は、(i)培養で哺乳動物細胞を成長させること、(ii)該細胞を、少なくとも一つの細胞毒性の剤と、該試料バッチからのデフィブロチドの少なくとも一つの濃度とを含む溶液でインキュベートすること、(iii)インキュベーション期間後に該細胞の生存率を決定すること、そして(iv)該細胞生存率測定に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を決定すること、を含む。幾つかの実施態様において、該方法はさらに、デフィブロチドの該試料バッチについての細胞生存率をデフィブロチドの基準バッチについての細胞生存率と比較すること;及び、該比較に基づいて、デフィブロチドの該試料バッチの能力を計算することをさらに含む。