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特開2022-160605sGC刺激薬による中枢神経系疾患の治療
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  • 特開-sGC刺激薬による中枢神経系疾患の治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160605
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】sGC刺激薬による中枢神経系疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20221012BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221012BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20221012BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K31/5025
A61K31/506
A61K31/519
A61P25/00 101
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/14
A61P25/36
A61P25/24
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022126467
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2019545723の分割
【原出願日】2017-11-07
(31)【優先権主張番号】62/419,059
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519163876
【氏名又は名称】サイクレリオン・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,トーマス・ワイ-ホー
(72)【発明者】
【氏名】アイアンガー,ラジェシュ・アール
(72)【発明者】
【氏名】パール,ニコラス・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジェルマーノ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】リバデネイラ,マリア・ディー
(72)【発明者】
【氏名】タン,キム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CNS疾患の処置を必要としている被験対象におけるその処置方法において使用するための、化合物または医薬的に許容しうるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】例えば、下記に示す化合物などの可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激剤、医薬的に許容しうるその塩、およびそれらを含む医薬製剤または剤形の、単独または1以上の追加的薬剤との組み合わせでの使用を提供する。これに関し、sGC刺激の増大、または酸化窒素(NO)もしくは環状グアノシン3’,5’-一リン酸(cGMP)もしくはその両方の濃度上昇、またはNO経路のアップレギュレーションが望ましい。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNS疾患の処置を必要としている被験対象におけるその処置方法において使用するための、化合物または医薬的に許容しうるその塩を含む医薬組成物であって、CNS疾患が、シナプス可塑性およびシナプスプロセスの相対的低下を特徴とする障害、例えば、脆弱X、レット障害、ウィリアムズ症候群、レンペニング症候群、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害または小児期崩壊性障害から選択され、該化合物は、表Iに示す化合物、または医薬的に許容しうるその塩から選択される:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
医薬組成物。
【請求項2】
CNS疾患の処置を必要としている被験対象におけるその処置方法において使用するための、化合物または医薬的に許容しうるその塩を含む医薬組成物であって、CNS障害が、ケモブレイン、レボドパ誘発性嗜癖行動、アルコール依存症、またはアンフェタミン、アヘンもしくは他の物質に対するものを含む麻薬依存症、または薬物乱用から選択され、該化合物は、表Iに示す化合物、または医薬的に許容しうるその塩から選択される:
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき、2016年11月8日出願の米国仮特許出願第62/419059号の出願日の利益を主張するものである。上記出願の内容全体を、本明細書中で参考として援用する。
【0002】
[0002]本開示は、さまざまなCNS疾患を処置するための、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激剤、医薬的に許容しうるその塩、およびそれらを含む医薬製剤または剤形の、単独または1以上の追加的薬剤との組み合わせでの使用に関する。これに関し、sGC刺激の増大、または酸化窒素(NO)もしくは環状グアノシン3’,5’-一リン酸(cGMP)もしくはその両方の濃度上昇、またはNO経路のアップレギュレーションが望ましい。
【背景技術】
【0003】
[0003]可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)は、in vivoにおける酸化窒素(NO)の主要な受容体である。sGCは、NO依存性およびNO非依存性の両機序を介して活性化されることができる。この活性化に応答して、sGCはグアノシン5’-三リン酸(GTP)を二次伝達物質の環状グアノシン3’,5’-一リン酸(cGMP)に変換する。cGMPのレベル上昇は、つぎに、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ(PDE)およびイオンチャネルを含む下流エフェクターの活性を調整する。
【0004】
[0004]体内において、NOは、さまざまな酸化窒素シンターゼ(NOS)酵素により、および無機硝酸塩の逐次還元により、アルギニンおよび酸素から合成される。NOSの3つの異なるアイソフォームが同定されている:活性化マクロファージ細胞に見いだされる誘発性NOS(iNOSまたはNOS II);神経伝達および長期増強に関与する構成性ニューロンNOS(nNOSまたはNOS I);ならびに、平滑筋弛緩および血圧を調節する構成性内皮NOS(eNOSまたはNOS III)。実験的および臨床的証拠は、内因的に産生されるNOの濃度、生物学的利用能および/または該NOに対する応答性の低下が、多数の疾患の発現に寄与することを示している。
【0005】
[0005]NO非依存性、ヘム依存性のsGC刺激剤は、他のタイプのsGCモジュレーターと比較した場合、それらの活性に関する還元された補欠分子ヘム部分の存在への極めて重大な依存性、NOと組み合わせた場合の強い相乗的酵素活性化、およびNOに依存しないsGCの直接刺激によるcGMP合成の刺激を含む、いくつかの重要な識別特性を有する。ベンジルインダゾール化合物YC-1は、はじめて同定されたsGC刺激剤であった。それ以来、sGCに対する改善された効力および特異性を有する追加的なsGC刺激剤が開発されてきた。
【0006】
[0006]NOに依存しないでsGCを刺激する化合物は、異常なNO経路を標的とするか、またはNO経路のアップレギュレーションが有益であり得る疾患を標的とする、現行の他の代替療法と比べ大きな利点を提供する。sGCの新規刺激剤の開発が必要とされている。これらの化合物はさまざまな疾患の処置に有用であり、その際、疾患または障害は、sGCの刺激、またはNOもしくはcGMPもしくはその両方の濃度上昇が有益であると思われるもの、あるいはNO経路のアップレギュレーションが望ましいものである。
【0007】
[0007]血液脳関門を通過し、脳に浸透することができるsGC刺激剤は、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に追加的な利点を提供する。本明細書中に記載するsGC刺激剤は、血液脳関門を通過する能力があるため、CNSの疾患の処置に有用である。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本発明は、CNS疾患、健康状態または障害の処置または予防を必要としている被験対象におけるその処置または予防方法であって、治療的有効量の化合物または医薬的に許容しうるその塩を、単独または併用療法で被験対象に投与することを含む方法を対象とし、これに関し、該化合物は、表Iに示すものから選択される。
【0009】
[0009]本発明はまた、表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩と、少なくとも1つの医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーとを含む医薬組成物を対象とする。本発明はまた、前記医薬組成物を含む剤形を対象とする。
【0010】
[0010]本発明はまた、CNS疾患、健康状態または障害の処置または予防を必要としている被験対象におけるその処置または予防方法であって、表Iに示す化合物または医薬的に許容しうるその塩を含む医薬組成物または剤形を、単独または併用療法で投与することを含む方法を対象とする。
【0011】
[0011]本発明はさらに、表Iに示すsGC刺激剤もしくは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を、CNS疾患の処置のために使用することを対象とする。
【0012】
[0012]本発明はさらに、CNS疾患の処置に用いるためのsGC刺激剤、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を対象とし、これに関し、sGC刺激剤は、表Iに示すものまたはその医薬的に許容しうるその塩である。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
【表3】
【0016】
【表4】
【0017】
[0013]いくつかの態様において、CNS疾患、健康状態または障害は、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルー・ゲーリック病)、ダウン症候群、認知症、血管性認知症(VD)、血管性認知機能障害、混合型認知症、ビンスワンガー型認知症(皮質下動脈硬化性脳症)、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASILまたはCADASIL症候群)、前頭側頭葉変性症または認知症、HIV関連認知症(例えば、無症候性神経認知機能障害(ANI)、軽度神経認知障害(MND)、およびHIV関連認知症(HAD)(AIDS認知症症候群(AIDS dementia complex)[ADC]またはHIV脳症ともよばれる)、レビー小体型認知症、初老期認知症(軽度認知機能障害またはMCI)、緑内障、ハンチントン病(またはハンチントン舞踏病、HD)、多発性硬化症(MS)、多系統萎縮症(MSA)、パーキンソン病(PD)、パーキンソニズム・プラス、脊髄小脳運動失調症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー疾患(進行性核上性麻痺)、注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)から選択される。
【0018】
[0014]他の態様において、疾患、健康状態または障害は、アルツハイマー病またはプレアルツハイマー病(pre-Alzheimer's disease)、軽度~中等度のアルツハイマー病または
中等度~重度のアルツハイマー病から選択される、CNS障害または状態である。
【0019】
[0015]他の態様において、CNS障害は、外傷性(非開放性または開放性)穿通性頭部損傷、外傷性脳損傷(TBI)、脳への非外傷性損傷(例えば、脳卒中(とりわけ虚血性
脳卒中)、動脈瘤、低酸素症)、あるいは脳損傷または神経変性障害に起因する認知機能障害または機能不全のいずれかから選択される。
【0020】
[0016]他の態様において、CNS疾患または障害は、ジストニア、例えば、全身性、局所性、分節性、性的、中間型、遺伝性/原発性ジストニアまたは急性ジストニア反応など;あるいは、ジスキネジア、例えば、急性、慢性/遅発性、および非運動性およびレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)などから選択される。
【0021】
[0017]他の態様において、CNS疾患または障害は、シナプス可塑性およびシナプスプロセスの相対的低下を特徴とする障害、例えば、脆弱X、レット障害(Rhett's disorder)、ウィリアムズ症候群、レンペニング症候群(Renpenning's syndrome)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害または小児期崩壊性障害などから選択される。
【0022】
[0018]他の態様において、CNS障害は神経障害痛である。
[0019]他の態様において、CNS障害は、双極性障害、統合失調症、一般的精神病、薬物誘発性精神病、妄想性障害、統合失調感情障害、強迫性障害(OCD)、抑うつ障害、不安障害、パニック障害、または心的外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される精神医学的、精神的、気分的または情動的障害である。
【0023】
[0020]他の態様において、CNS障害は、ケモブレイン、レボドパ誘発性嗜癖行動、アルコール依存症、麻薬依存症(例えば、限定されるものではないが、アンフェタミン、アヘンまたは他の物質)および薬物乱用から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[0021]
図1図1は、野生型(WT)マウス海馬スライス(中間の曲線)、R6/2マウス海馬スライス(1番下の曲線)、および855nMの化合物I-5で処理したR6/2マウス海馬スライス(1番上の曲線)の長期増強のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0022]ここで、本発明の特定の態様について詳細に記載し、その例を、添付の構造および化学式で例示する。本発明を列挙態様と併せて記載するが、これは本発明をその態様に限定することを意図したものではないことは理解されるであろう。むしろ、本発明は、請求項によって定義されるような本発明の範囲内に包含されることができるすべての選択肢、修正および等価物を対象とすることを意図している。本発明は、本明細書中に記載する方法および材料に限定されず、本発明を実施する際に用いることができる本明細書中に記載するものと同様または同等のあらゆる方法および材料を包含する。組み込んだ参照文献、特許または同様の材料の1以上が、本出願、例えば、限定されるものではないが、定義された用語、用語の使用法、記載される技術などと異なるか相反する場合、本出願を優先する。
定義および一般的専門用語
[0023]本開示の目的に関し、化学元素は、元素の周期表、CASバージョン、およびHandbook of Chemistry and Physics,第75版、1994年に従って識別される。これに加えて、有機化学の一般的原理は、“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999年、および“March’s Advanced Organic Chemistry”,第5版,Smith,M.B.およびMarch,J.,編集,John Wiley & Sons,New York:2001年に記載されており、これらを全体として本明細書中で参考として援用する。
【0026】
[0024]表Iの化合物または本明細書中に記載する他の化合物のような化合物は、フリーな形態(例えば、非晶質形態、または結晶質形態、または多形体)で存在することができる。特定の条件下で、化合物は、コ-形態(co-form)を形成することもできる。本明細書
中で用いる場合、コ-形態という用語は、多成分結晶質形態という用語と同意語である。塩の形成は、混合物を形成するパートナー間のpKaの差の大きさによって決定される。本開示の目的に関し、化合物は、“医薬的に許容しうる塩”という用語が明確に言及されていなくても、医薬的に許容しうる塩を包含する。
【0027】
[0025]異性体の1つのみが具体的に記載または命名されている場合を除き、本明細書中で表現される構造はまた、構造のすべての立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、アトロプ異性体およびシス-トランス異性体)形態;例えば、各不斉中心に関するRおよびS配置、各不斉軸に関するRaおよびSa配置、(Z)および(E)二重結合配置、ならびにシスおよびトランス配座異性体を包含することが意図される。したがって、本化合物の単一の立体化学的異性体のほか、ラセミ化合物、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマーおよびシス-トランス異性体(二重結合または配座異性体)の混合物は、本開示の範囲内にある。特記しない限り、本開示の化合物のすべての互変異性形態も、本発明の範囲内にある。
【0028】
[0026]本開示はまた、本明細書中に挙げる化合物と同一であるが、実際は、1以上の原子が、自然に通常見いだされる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられている、同位体標識化合物を包含する。明記する任意の特定の原子または元素のすべての同位体は、本発明の化合物およびそれらの使用の範囲内にあると意図される。本発明の化合物に組み込むことができる代表的同位体としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123Iおよび125Iが挙げられる。本発明の特定の同位体標識化合物(例えば、Hおよび14Cで標識されているもの)は、化合物および/または基質組織分布アッセイに有用である。トリチウム化(すなわちH)および炭素-14(すなわち14C)同位体は、調製が容易で検出能が高いため有用である。さらに、ジュウテリウム(すなわちH)など、より重い同位体での置換は、より高い代謝的安定性に起因する特定の治療上の利点(例えば、in vivo半減期の延長または必要投与量の減少)を提供することができ、したがって、状況によっては好ましい可能性がある。15O、13N、11Cおよび18Fなどの陽電子放出同位体は、基質受容体占有率を試験するための陽電子放射断層撮影(PET)試験に有用である。本発明の同位体標識化合物は、一般に、本明細書中の以下のスキームおよび/または実施例に記載するものに類似する手順に従って、同位体標識試薬で非同位体標識試薬を置き換えることにより、調製することができる。
化合物
[0027]本発明は、表Iの化合物、医薬的に許容しうるその塩、医薬組成物および剤形の医学的使用を対象とする。
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
[0028]本明細書中で用いる場合、“医薬的に許容しうる塩”というフレーズは、本明細書中に記載する化合物(例えば、表Iの化合物)の医薬的に許容しうる有機または無機塩をさす。本明細書中に記載する化合物の医薬的に許容しうる塩は、医薬品に用いられる。しかしながら、医薬的に許容しえない塩は、本明細書中に記載する化合物または医薬的に許容しうるその塩の調製に有用であることができる。医薬的に許容しうる塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンのような他の分子の包含を含むことができる。対イオンは、親化合物の電荷を安定化する任意の有機または無機部分であることができる。さらに、医薬的に許容しうる塩は、構造中に1より多くの荷電原子を有することができる。複数の荷電原子が医薬的に許容しうる塩の一部である例は、複数の対イオンを有することができる。したがって、医薬的に許容しうる塩は、1以上の荷電原子および/または1以上の対イオンを有することができる。
【0034】
[0029]本明細書中に記載する化合物の医薬的に許容しうる塩は、無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基を含む化合物から誘導されるものを包含する。いくつかの態様において、塩は、化合物の最終的な単離および精製中にその場で調製することができる。他の態様において、塩は、別個の合成段階において遊離形態の化合物から調製することができる。
【0035】
[0030]本明細書中に記載する化合物が酸性であるか、十分に酸性の生物学的等価体を含有する場合、適した“医薬的に許容しうる塩”は、無機塩基および有機塩基を含む医薬的
に許容しうる非毒性塩基から調製される塩をさす。無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特定の態様としては、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩が挙げられる。医薬的に許容しうる有機非毒性塩基から誘導される塩としては、第一級、第二級および第三級アミンの塩、天然由来の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。
【0036】
[0031]本明細書中に記載する化合物が塩基性であるか、十分に塩基性の生物学的等価体を含有する場合、塩は、無機および有機酸を含む医薬的に許容しうる非毒性酸から調製することができる。そのような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などが挙げられる。特定の態様としては、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が挙げられる。他の代表的塩としては、限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が挙げられる。
【0037】
[0032]上記医薬的に許容しうる塩および他の典型的な医薬的に許容しうる塩の調製法は、Berg et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1-19により詳細に記載されており、これを全体として本明細書中で参考として援用する。
【0038】
[0033]本明細書中に記載する化合物に加え、それらの医薬的に許容しうる塩も、本明細書中で特定される障害を処置または予防するための組成物に採用することができる。
医薬組成物、剤形および投与方法。
【0039】
[0034]本明細書中に記載する化合物、およびそれらの医薬的に許容しうる塩は、医薬組成物または“製剤”として配合することができる。
[0035]典型的な製剤は、本明細書中に記載する化合物または医薬的に許容しうるその塩と、キャリヤー、希釈剤または賦形剤を混合することにより調製する。適したキャリヤー、希釈剤および賦形剤は当業者に周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性および/または水膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などのような材料を包含する。用いる特定のキャリヤー、希釈剤または賦形剤は、本明細書中に記載する化合物を配合する手段および目的に依存する。溶媒は、一般に、哺乳類に投与するのに安全である(GRAS-一般に安全とみなされる(Generally Regarded as Safe))と当業者に認められている溶媒に基づき選択する。一般に、安全な溶媒は、水などの非毒性水性溶媒、および水中で溶解性または混和性を示す他の非毒性溶媒である。適した水性溶媒としては、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)など、およびそれらの混合物が挙げられる。製剤はまた、印象の良い薬物(すなわち、本明細書中に記載する化合物またはその医薬組成物)を提供するために、または医薬製品(すなわち医薬品)の製造を補助するために、他のタイプの賦形剤、例えば、1以上の緩衝剤、安定剤、付着防止剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、バインダー、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、収着剤、コーティング(例えば、腸溶性または徐放性)、防腐剤、酸化防止剤、不透明化剤(opaquing agent)、流動促進剤(glidant)、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味剤および他の公知の添加剤を包含することができる。
【0040】
[0036]製剤は、従来の溶解および混合手順を用いて調製することができる。例えば、バク原薬(すなわち、本明細書中に記載する化合物、医薬的に許容しうるその塩、または該化合物の安定化形態、例えば、シクロデキストリン誘導体もしくは他の公知の錯体形成剤との錯体)を、1以上の上記賦形剤の存在下で、適した溶媒に溶解する。望ましい純度を有する化合物を、凍結乾燥製剤、ミル粉砕粉末または水溶液の形態で、医薬的に許容しうる希釈剤、キャリヤー、賦形剤または安定剤と混合してもよい。配合は、周囲温度、適したpH、および望ましい純度で、生理学的に許容しうるキャリヤーと一緒に混合することにより行うことができる。製剤のpHはおもに化合物の特定用途および濃度に依存するが、約3~約8の範囲であることができる。本明細書中に記載する薬剤が、溶媒プロセスによって形成される固体非晶質分散物である場合、溶液中に添加剤を溶解または懸濁させてスラリーを形成してから噴霧乾燥することができるように、混合物を形成するときに添加剤を噴霧乾燥溶液に直接加えてもよい。あるいは、添加剤は、最終的な配合製品の形成を補助するために、噴霧乾燥プロセス後に加えてもよい。
【0041】
[0037]本明細書中に記載する化合物または医薬的に許容しうるその塩は、典型的には、容易に制御可能な薬物投与量を提供し、処方されたレジメンでの患者の服薬順守を可能にするような、医薬剤形に配合される。本明細書中に記載する化合物または医薬的に許容しうるその塩の医薬製剤は、さまざまな投与経路および投与タイプに合わせて調製することができる。異なる医学的状態では異なる投与経路が当然必要であり得るので、同一化合物に関しさまざまな剤形が存在することができる。
【0042】
[0038]キャリヤー材料と組み合わせて単一剤形をもたらすことができる活性成分の量は、処置する被験対象および特定の投与方法に応じて変動する。例えば、ヒトへの経口投与を意図した持効性製剤は、約1~1000mgの活性材料を、全組成物の約5~約95%(重量:重量)であることができる適切で好都合な量のキャリヤー材料と配合して、含有することができる。医薬組成物は、容易に測定可能な投与量が提供されるように調製することができる。例えば、静脈内注入を意図した水溶液は、約30mL/時間の割合での適した注入容量をもたらすことができるように、溶液1ミリリットルにつき約3~500μgの活性成分を含有することができる。一般的計画として、投与される阻害薬の初期医薬的有効量は1用量あたり約0.01~100mg/kg、すなわち1日あたり患者の体重1kgにつき約0.1~20mg/kgの範囲であり、用いられる化合物の典型的な初期範囲は0.3~15mg/kg/日である。
【0043】
[0039]本明細書中で用いる“治療的有効量”という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床家により探求されている組織、系、動物またはヒトにおける生物学的または医薬的応答を生じさせる、活性化合物または医薬品の量を意味する。投与される化合物の治療的または医薬的有効量は、そのような考慮対象に制限され、疾患または障害またはその1以上の症状の改善、治癒または処置に必要な最小量である。
【0044】
[0040]表Iの化合物の医薬組成物は、優良医療規範(good medical practice)と一致す
る方法、すなわち、量、濃度、スケジュール、コース、ビヒクルおよび投与経路で、配合され、投与量に分けられ(dosed)、投与される(administered)。この文脈における考慮対
象の要因としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医療従事者に知られている他の要因、例えば、個々の患者の年齢、体重および応答が挙げられる。
【0045】
[0041]“予防的有効量”という用語は、疾患もしくは障害を防ぐまたは疾患もしくは障害を獲得する可能性を実質的に低下させるか、疾患または障害の獲得前にその疾患または障害の重症度を低下させるか、症状が発現する前に1以上の症状の重症度を低下させるのに有効な量をさす。おおまかに、予防的方策は、一次予防(疾患の発現を予防する)と二次予防(疾患が既に発現している場合に、この経過の悪化から患者を保護する)に分けられる。
【0046】
[0042]許容しうる希釈剤、キャリヤー、賦形剤および安定剤は、採用される投与量および濃度において受容者に毒性を示さないものであり、緩衝剤、例えば、ホスフェート、シトレート、および他の有機酸;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート化剤、例えばEDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を包含する。活性医薬成分は、例えば、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおいてコアセルベーション技術または界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、封入することもできる。そのような技術は、Remington’s:The Science and Practice of Pharmacy,第21版,University of the Sciences in Philadelphia編集,2005年(以下、“Remington’s”)に記載されている。
【0047】
[0043]“制御された薬物送達システム”では、薬物が、薬物および処置される状態に適合するように正確に制御された方法で身体に供給される。おもな目的は、作用部位において望ましい持続期間にわたり治療的薬物濃度を達成することである。“制御放出”という用語は、剤形からの薬物の放出を改変するさまざまな方法をさすために用いられることが多い。この用語は、“徐放性放出”、“遅延放出”、“改変(modified)放出”または“持続放出”とよばれる調製物を包含する。一般に、本明細書中に記載する薬剤の制御放出は、多種多様なポリマーキャリヤーおよび制御放出システム、例えば、浸食性および非浸食性マトリックス、浸透圧制御デバイス、さまざまなレザバーデバイス、腸溶性コーティングならびに多微粒子性制御デバイスの使用により、提供することができる。
【0048】
[0044]“持続放出調製物”は、制御放出のもっとも一般的な適用である。持続放出調製
物の適した例としては、化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、該マトリックスは、造形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態をしている。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許公報第3773919号に記載されているものなど)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0049】
[0045]“即時放出性調製物”を調製することもできる。これらの製剤の目的は、薬物を血流に入れて作用部位にできるだけ迅速に到達させることである。例えば、迅速に溶解させるために、ほとんどの錠剤は、顆粒への急速な崩壊を経た後、微粒子に脱凝集(deaggregation)するように設計されている。これにより、溶解媒体に暴露される表面積がより大きくなり、より迅速な溶解速度がもたらされる。
【0050】
[0046]本明細書中に記載する薬剤は、浸食性または非浸食性ポリマーマトリックス制御放出デバイスに組み込むことができる。浸食性マトリックスとは、純水中で浸食性または膨潤性または可溶性であるか、あるいは、浸食または溶解が生じるようにポリマーマトリックスを十分にイオン化するのに酸または塩基の存在が必要であるという意味において、水性浸食性または水膨潤性または水溶性であることを意味する。水性使用環境と接触すると、浸食性ポリマーマトリックスは水を吸収して水性膨潤ゲルまたはマトリックスを形成し、これが本明細書中に記載する薬剤を取り込む。水性膨潤マトリックスは、使用環境において徐々に浸食、膨潤、崩壊または溶解し、これにより、使用環境への本明細書中に記載する化合物の放出が制御される。この水膨潤マトリックスの一成分が、水膨潤性、浸食性、または可溶性ポリマーであり、これは一般に、オスモポリマー、ヒドロゲル、または水膨潤性ポリマーと記載することができる。そのようなポリマーは、線状、分枝状であるか、または架橋していることができる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであることができる。特定の態様において、これらは、ビニル、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、エステルおよびオキシドモノマーから誘導される合成ポリマーであることができる。他の態様において、これらは、天然由来のポリマーの誘導体、例えば、多糖類(例えば、キチン、キトサン、デキストランおよびプルラン;寒天ゴム、アラビアゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、トラガカントゴム、カラゲナン、ガッティガム、グアーガム、キサンタンガムおよびスクレログルカン)、デンプン(例えば、デキストリンおよびマルトデキストリン)、親水性コロイド(例えば、ペクチン)、リン脂質(例えば、レシチン)、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、カリウムまたはカルシウム、プロピレングリコールアルギネート)、ゼラチン、コラーゲン、およびセルロース系材料であることができる。セルロース系材料は、糖の繰り返し単位上のヒドロキシル基の少なくとも一部を化合物と反応させてエステル連結またはエーテル連結置換基を形成することにより修飾されている、セルロースポリマーである。
【0051】
[0047]例えば、セルロース系エチルセルロースは、サッカリドの繰り返し単位に付着しているエーテル連結エチル置換基を有し、セルロース系酢酸セルロースは、エステル連結アセテート置換基を有する。特定の態様において、浸食性マトリックスのためのセルロース系材料は水溶性および水浸食性セルロース系材料を含み、例えば、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、およびエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)を挙げることができる。特定の態様において、セルロース系材料は、さまざまなグレードの低粘度(50000ダルトン以下の分子量、例えば、Dow MethocelTMシリーズE5、E15LV、E50LVおよびK100LY)および高粘度(50000ダルトンをこえる分子量、例えば、E4MCR、E10MCR、K4M、K15MおよびK100M、ならびにMethocelTM Kシリーズ)HPMCを含む。他の市販のタイプのHPMCとしては、Shin Etsu Metolose 90SHシリーズが挙げられる。
【0052】
[0048]浸食性マトリックス材料として有用な他の材料としては、限定されるものではないが、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America, Inc.,Piscataway,ニュージャージー州)、ならびに他のアクリル酸誘導体、例えば、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレートおよび(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロリドのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0053】
[0049]あるいは、本発明の薬剤を、非浸食性マトリックスデバイスによって投与するか、またはそれに組み込むことができる。そのようなデバイスでは、本明細書中に記載する薬剤を、不活性マトリックス中に分散させる。薬剤は、不活性マトリックスを通して拡散することによって放出される。不活性マトリックスに適した材料の例としては、不溶性プラスチック(例えば、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン)、親水性ポリマー(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドンとしても知られる))、および脂肪族化合物(例えば、カルナバろう、マイクロクリスタリンワックス、およびトリグリセリド)が挙げられる。そのようなデバイスは、Remington:The Science and
Practice of Pharmacy,第20版(2000)においてさらに記載されている。
【0054】
[0050]上記のように、本明細書中に記載する薬剤は、浸透性制御デバイスに組み込むこともできる。そのようなデバイスは一般に、本明細書中に記載するような1以上の薬剤を含有するコアと、該コアを包囲する透水性で非溶解性の非浸食性コーティングとを含み、該コーティングは、使用環境へのコアの一部またはすべての押し出しによって薬物放出がもたらされるように、水性使用環境からコア内への水の流入を制御する。特定の態様において、コーティングは、ポリマーであり、透水性であり、少なくとも1つの送達ポートを有する。浸透性デバイスのコアは、そのような半透膜を介して周囲環境から水を吸収するように作用する浸透圧剤を含んでいてもよい。このデバイスのコアに含有される浸透圧剤は、水膨潤性親水性ポリマーであることができ、または、オスマゲント(osmagent)としても知られるオスモゲン(osmogen)であることができる。デバイス内で圧力が生じ、これに
より、薬剤(1以上)は、オリフィス(静水圧ヘッドの増大を防止しつつ、溶質拡散を最小限に抑えるように設計されたサイズのもの)を介してデバイスの外へと押し出される。浸透性制御デバイスの非限定的例は、米国特許出願公開第09/495061号に記載されている。
【0055】
[0051]コア内に存在する水膨潤性親水性ポリマーの量は、約5~約80重量%(例えば10~50重量%など)の範囲であることができる。コア材料の非限定的例としては、親水性ビニルおよびアクリルポリマー、アルギン酸カルシウムなどの多糖類、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタクリル)酸、ポリビニルピロリドン(PVP)および架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVPコポリマー、およびメタクリル酸メチル、酢酸ビニルなどのような疎水性モノマーとのPVA/PVPコポリマー、大きなPEOブロックを含有する親水性ポリウレタン、クロスカルメロースナトリウム、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびカルボキシエチルセルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ゼラチン、キサンタンガム、およびデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられる。他の材料としては、付加重合または縮合重合によって形成することができるポリマーの相互貫入網目構造を含むヒドロゲルが挙げられ、それらの構成要素は、まさに上記したもののような親水性および疎水性モノマーを含むことができる。水膨潤性親水性ポリマーとしては、限定されるものではないが、PEO、PEG、PVP、クロスカルメロースナトリウム、HPMC、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリアクリル酸、およびそれらの架橋バージョンまたは混合物が挙げられる。
【0056】
[0052]コアは、オスモゲン(またはオスマゲント)を包含することもできる。コア中に存在するオスモゲンの量は、約2~約70重量%(例えば、10~50重量%など)の範囲であることができる。適したオスモゲンの典型的なクラスは、水を吸収して、それにより周囲コーティングのバリアを横切る浸透圧勾配をもたらすことができる、水溶性有機酸、塩および糖である。典型的な有用なオスモゲンとしては、限定されるものではないが、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、マンニトール、キシリトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、クエン酸、コハク酸、酒石酸、およびそれらの混合物が挙げられる。特定の態様において、オスモゲンは、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、キシリトール、塩化ナトリウムであり、それらの組み合わせを含む。
【0057】
[0053]薬物送達の速度は、コーティングの透過性および厚さ、薬物含有層の浸透圧、ヒドロゲル層の親水性の程度、およびデバイスの表面積などの要因によって制御される。当業者なら、コーティングの厚さが増大するにつれて放出速度は低下するが、以下のいずれかが放出速度を上昇させることを、理解するであろう:コーティングの透過性の上昇;ヒドロゲル層の親水性の上昇;薬物含有層の浸透圧の上昇;またはデバイスの表面積の増大。
【0058】
[0054]特定の態様において、本明細書中に記載する薬剤の粒子は、そのような浸透性デバイスの動作中に押し出される流体中に取り込まれること(entrainment)が望ましい。粒
子が十分に取り込まれるように、粒子が錠剤コアに沈降する状況になる前に、薬剤薬物形態を流体に分散させる。これを達成する手段の1つは、圧縮コアをその微粒子構成要素に解体する働きをする崩壊剤を加えることによる。標準的な崩壊剤の非限定的例としては、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、ExplotabTM CLV)、微結晶セルロース(例えば、AvicelTM)、微結晶ケイ化セルロース(例えば、ProSolvTM)およびクロスカルメロースナトリウム(例えば、Ac-Di-SolTM)などの材料、ならびに当業者に公知の他の崩壊剤が挙げられる。特定の製剤によっては、いくつかの崩壊剤は他のものよりも良好に作用する。いくつかの崩壊剤は水で膨潤するとゲルを形成し、これにより、デバイスからの薬物送達を妨げる傾向がある。非ゲル化性で非膨潤性の崩壊剤は、水がコアに入ると、コア内での薬物粒子のより迅速な分散をもたらす。特定の態様において、非ゲル化性で非膨潤性の崩壊剤は、樹脂、例えばイオン交換樹脂である。一態様において、樹脂はAmberliteTM IRP88(Rohm and Haas,Philadelphia,ペンシルベニア州から入手可能)である。用いる場合、崩壊剤は、コア薬剤の約1~25%の範囲の量で存在する。
【0059】
[0055]浸透性デバイスの他の例は、浸透性カプセルである。カプセルシェルまたはカプセルシェルの一部は、半透性であることができる。カプセルには、本明細書中に記載する薬剤、水を吸収して浸透ポテンシャルをもたらす賦形剤、および/または水膨潤性ポリマー、または所望により可溶化賦形剤、からなる粉末または液体のいずれかを充填することができる。カプセルコアは、上記の二層、三層または同心形状に類似する二層または多層剤を有するように作製することもできる。
【0060】
[0056]本発明に有用な浸透性デバイスの他のクラスは、例えば欧州特許EP378404号に記載されているような、コーティングされた膨潤性錠剤を含む。コーティングされた膨潤性錠剤は、本明細書中に記載する薬剤および膨潤性材料、好ましくは親水性ポリマーを含む錠剤コアを含み、該コアは、水性使用環境において親水性ポリマーが薬剤を押し出して外へ出すことができる穴または細孔を含有する膜でコーティングされている。あるいは、膜は、ポリマーまたは低分子量水溶性ポロシゲン(porosigen)を含有することができる。ポロシゲンは、水性使用環境において溶解して、親水性ポリマーおよび薬剤が押し出されることができる細孔をもたらす。ポロシゲンの例は、HPMC、PEGなどの水溶性ポリマー、ならびに、グリセロール、スクロース、グルコースおよび塩化ナトリウムなどの低分子量化合物である。これに加えて、レーザーまたは他の機械的手段を用いてコーティング中に穴を開けることによって、細孔をコーティング中に形成することができる。このクラスの浸透性デバイスでは、錠剤コア上に付着した膜が多孔質であるか、水溶性ポロシゲンを含有するか、水の進入および薬物放出のための肉眼的穴を持つという条件で、膜材料は任意のフィルム形成性ポリマー、例えば、水透過性または不透過性であるポリマーを含むことができる。このクラスの持続放出デバイスの態様は、例えば、欧州特許EP378404号に記載されているように、多層であることもできる。
【0061】
[0057]本明細書中に記載する薬剤が、液体または油、例えば、国際公開WO05/011634に記載されているような脂質ビヒクル製剤などである場合、浸透性制御放出デバイスは、複合壁で形成され、液体製剤を含む、ソフトゲルまたはゼラチンカプセルを含むことができる。これに関し、該壁は、カプセルの外表面上に形成されたバリヤー層、バリヤー層上に形成された膨脹性層、および膨脹性層上に形成された半透性層を含む。送達ポートにより、液体製剤は水性使用環境に接続される。そのようなデバイスは、例えば、米国特許公報第6419952号、同第6342249号、同第5324280号、同第4672850号、同第4627850号、同第4203440号、および同第3995631号に記載されている。
【0062】
[0058]さらに上記したように、本明細書中に記載する薬剤は、概して約10μm~約2mm(例えば、直径約100μm~1mmなど)の範囲のサイズである微小微粒子の形態で提供することができる。そのような多微粒子(multiparticulate)は、例えば、ゼラチンカプセル、またはHPMCAS、HPMCもしくはデンプンなどの水溶性ポリマーから形成されるカプセルなどのカプセルにパッケージするか;液体中の懸濁液またはスラリーとして投与するか;あるいは、圧縮または当分野で公知の他のプロセスによって錠剤、カプレットまたは丸剤に形成することができる。そのような多微粒子は、湿式および乾式造粒プロセス、押出/球状化(spheronization)、ローラー圧縮、溶融凝固など任意の公知のプロセスによるか、またはシードコアの噴霧コーティングによって、作製することができる。例えば、湿式および乾式造粒プロセスでは、本明細書中に記載する薬剤および所望による賦形剤を、望ましいサイズの多微粒子が形成するように造粒することができる。
【0063】
[0059]薬剤は、界面活性剤分子の界面フィルムによって安定化されていて、概して熱力学的に安定な、油と水のような2つの不混和性液体の等方的に明澄な分散液であるマイクロエマルションに、組み込むことができる(Encyclopedia of Pharm
aceutical Technology,New York: Marcel Dekker,1992,第9巻)。マイクロエマルションを調製するためには、界面活性剤(乳化剤)、補助界面活性剤(補助乳化剤)、油相および水相が必要である。適した界面活性剤としては、エマルションの調製に有用な任意の界面活性剤、例えば、典型的にはクリームの調製に用いられる乳化剤が挙げられる。補助界面活性剤(または“補助乳化剤”)は一般に、ポリグリセロール誘導体、グリセロール誘導体、および脂肪族アルコールの群より選択される。好ましい乳化剤/補助乳化剤の組み合わせは一般に、必ずしもではないが、モノステアリン酸グリセリルおよびポリオキシエチレンステアレート;ポリエチレングリコールおよびエチレングリコールパルミトステアレート;ならびにカプリル酸およびカプリン酸トリグリセリドおよびオレオイルマクロゴールグリセリド;からなる群より選択される。水相としては、水だけでなく、典型的には、緩衝剤、グルコース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは、低分子量ポリエチレングリコール、例えば、PEG300およびPEG400)、および/またはグリセロールなどが挙げられ、油相は一般に、例えば、脂肪酸エステル、変性植物油、シリコーン油、モノ-、ジ-およびトリグリセリドの混合物、PEGのモノ-およびジ-エステル(例えば、オレオイルマクロゴールグリセリド)などを含む。
【0064】
[0060]本明細書に記載する化合物は、医薬的に許容しうるナノ粒子、ナノ球体およびナノカプセル製剤に組み込むことができる(DelieおよびBlanco-Prieto,2005,Molecule 10:65~80)。ナノカプセルは一般に、安定的かつ再現可能な状態で、化合物を閉じ込めることができる。細胞内ポリマー過負荷による副作用を回避するために、in vivoで分解され得るポリマー(例えば、生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子)を用いて、超微粒子(約0.1μmのサイズ)を設計することができる。そのような粒子は、従来技術に記載されている。
【0065】
[0061]本発明の化合物でコーティングされた埋め込み型デバイスは、本発明のもう一つの態様である。化合物をビーズなどの埋め込み型医療デバイス上にコーティングするか、ポリマーまたは他の分子と合剤化して“デポ剤”を提供することもでき、これにより、薬物の水溶液を投与した場合より長期間にわたり薬物を放出させることが可能なる。コーティングされた埋め込み型デバイスの適したコーティングおよび一般的調製物は、米国特許公報第6099562号;同第5886026号;および同第5304121号に記載されている。コーティングは、典型的には、生体適合性ポリマー材料、例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびそれらの混合物である。コーティングを、所望により、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの適したトップコートによりさらに覆って、組成物に制御放出特性を付与してもよい。
【0066】
[0062]製剤としては、本明細書中に詳述する投与経路に適したものが挙げられる。製剤は、単位剤形で好都合に提供されることができ、薬学技術分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。技術および配合は一般に、Remington’sに見いだされる。そのような方法は、活性成分を、1以上の補足成分を構成するキャリヤーと関連づける段階を包含する。一般に、製剤は、活性成分を液体キャリヤーまたは微粉固体キャリヤーまたは両方と均一かつ密接に関連づけた後、必要に応じて、産生物を付形することにより調製する。
【0067】
[0063]本発明の化合物、組成物または製剤に関する“投与する”、“投与すること”または“投与”という用語は、該化合物を、処置を必要としている動物の器官系に導入することを意味する。本発明の化合物を1以上の他の活性薬剤と組み合わせて提供する場合、“投与”およびその変形はそれぞれ、化合物および他の活性薬剤を同時および/または逐
次的に導入することを包含すると理解する。
【0068】
[0064]本明細書中に記載する組成物は、処置される疾患の重症度およびタイプに応じて、全身的に、または局所的に、例えば、経口的に(例えば、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、錠剤、舌下錠剤などを用いて)、吸入により(例えば、エアロゾル、ガス、吸入器、ネブライザーなどで)、耳に(例えば点耳液を用いて)、局所に(例えば、クリーム、ゲル、リニメント剤、ローション、軟膏、ペースト、経皮パッチなどを用いて)、眼に(例えば、点眼液、眼科用ゲル、眼軟膏で)、経直腸的に(例えば、浣腸剤または坐剤を用いて)、経鼻的に、口腔内に、経膣的に(例えば、潅注液、子宮内器具、膣坐剤、膣リングまたは膣錠などを用いて)、埋め込まれたレザバーなどを介して、または非経口的に、投与することができる。本明細書中で用いる場合、“非経口的”という用語は、限定されるものではないが、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術を包含する。組成物は、経口、腹腔内または静脈内に投与されることが好ましい。
【0069】
[0065]本明細書中に記載する医薬組成物は、任意の経口的に許容しうる剤形、例えば、限定されるものではないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液または水溶液で、経口投与することができる。経口投与のための液体剤形としては、限定されるものではないが、医薬的に許容しうるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に用いられている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(とりわけ、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有することができる。不活性希釈剤のほかに、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤および芳香剤などのアジュバントも包含することができる。
【0070】
[0066]経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒が挙げられる。そのような固体剤形では、活性化合物を、少なくとも1つの不活性な医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤー、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/またはa)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)バインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアなど、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)溶液抑制剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、ならびにi)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合する。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、あるいは、公知の技術、例えば、不快な味を隠すため、または胃腸管での崩壊および吸収を遅らせて、これにより長期間にわたる持続作用をもたらすためのマイクロカプセル化により、コーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの遅延材料を、単独またはワックスと一緒に採用することができる。水溶性味質マスキング剤、例えば、ヒドロキシプロピル-メチルセルロースまたはヒドロキシプロピル-セルロースを採用してもよい。
【0071】
[0067]経口投与に適した本明細書中に記載する化合物の製剤は、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、硬もしくは軟カプセル、例えばゼラチンカプセル、シロップ、またはエリキシル剤などの別個の単位として、調製することができる。経口使用を意図した化合物の製剤は、医薬組成物の製造に関する当技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができる。
【0072】
[0068]圧縮錠は、粉末または顆粒など自由に流動する形態にある活性成分を、所望により、バインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤または分散剤と混合して、適した機械で圧縮することにより調製することができる。湿製錠(molded tablet)は、不
活性液体希釈剤で湿らせた粉末状活性成分の混合物を適した機械で成形することにより作製することができる。
【0073】
[0069]経口使用のための製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルとして、あるいは、活性成分が、ポリエチレングリコールなどの水溶性キャリヤー、または油性媒体、例えば、落花生油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルとして、提供することもできる。
【0074】
[0070]活性化合物は、1以上の上記賦形剤と一緒にマイクロカプセル化された形態にあることもできる。
[0071]水性懸濁液が経口使用で求められている場合、活性成分を乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。望ましい場合、特定の甘味剤および/または香味剤を加えてもよい。シロップおよびエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースと一緒に配合することができる。そのような製剤は、粘滑剤、防腐剤、香味剤および着色剤および酸化防止剤を含有することもできる。
【0075】
[0072]本明細書中に記載する組成物の滅菌注射用形態(例えば、非経口投与用)は、水性または油性懸濁液であることができる。これらの懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当技術分野で公知の技術に従って配合することができる。滅菌注射用調製物は、非毒性で非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であることもできる。採用することができる許容しうるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液および生理食塩水がある。これに加えて、従来、滅菌固定油が溶媒または懸濁化媒体として採用されている。この目的では、任意の無菌性固定油、例えば、合成モノ-またはジ-グリセリドを採用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、天然の医薬的に許容しうる油、例えば、特にポリオキシエチル化バージョンのオリーブ油またはヒマシ油のように、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、またはエマルションおよび懸濁液など医薬的に許容しうる剤形の製剤に一般に用いられている同様の分散剤を、含有することもできる。他の一般に用いられている界面活性剤、例えば、Tween、Span、および医薬的に許容しうる固体、液体または他の剤形の製造に一般に用いられている他の乳化剤または生物学的利用能増強剤も、注射用製剤の目的に用いることができる。
【0076】
[0073]油状懸濁液は、本明細書中に記載の化合物を、植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油か、または液体パラフィンのような鉱油中に懸濁させることにより、配合することができる。油状懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜ろう、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。口当たりがいい経口調製物を提供するために、上記のような甘味剤、および香味剤を加えてもよい。これらの組成物は、酸化防止剤、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはアルファ-トコフェロールを添加することにより保存することができる。
【0077】
[0074]本明細書中に記載する化合物の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混加物(admixture)中に活性材料を含有する。そのような賦形剤としては、懸濁化剤
、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴム、ならびに分散剤または湿潤剤、例えば、天然由来のホスファチド(例えばレクチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。水性懸濁液は、1以上の防腐剤、例えばエチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾエート、1以上の着色剤、1以上の香味剤、および1以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含有することもできる。
【0078】
[0075]注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターに通して濾過することによるか、あるいは、使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態にある滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
【0079】
[0076]本明細書中に記載する化合物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉注射からの化合物の吸収を遅くすることがしばしば望ましい。これは、水溶性が低い結晶質または非晶質材料の液体懸濁液を用いることにより、達成することができる。つまり、化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は、結晶サイズおよび結晶質形態に依存することができる。あるいは、非経口投与された化合物形態の遅延吸収は、化合物を油状ビヒクル中に溶解または懸濁することにより達成される。注射用デポ形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中の化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。化合物とポリマーの比、および採用する特定ポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポ注射用製剤は、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション中に化合物を閉じ込めることによっても調製される。
【0080】
[0077]注射用溶液またはマイクロエマルションは、局所ボーラス注射によって患者の血流中に導入することができる。あるいは、本化合物の血中濃度が一定に維持されるように溶液またはマイクロエマルションを投与することが、有利である可能性がある。そのような一定濃度を維持するために、連続式静脈内送達デバイスを用いることができる。そのようなデバイスの例は、Deltec CADD-PLUSTM モデル5400静脈ポンプである。
【0081】
[0078]直腸内または膣内投与のための組成物は、本明細書中に記載する化合物を、適した非刺激性賦形剤またはキャリヤー、例えば、ココアバター、蜜ろう、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスと混合することにより調製することができる坐剤であって、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔内で溶融して活性化合物を放出するものであることが好ましい。膣内投与に適した他の製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレーとして提供することができる。
【0082】
[0079]本明細書中に記載する医薬組成物は、特に、処置の標的が、眼、耳、皮膚または下部腸管の疾患など、局所施用により容易に到達することができる領域または器官を包含する場合、局所投与することもできる。適した局所製剤は、これらの領域または器官のそ
れぞれについて容易に調製される。
【0083】
[0080]本明細書中に記載する化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性構成要素を、滅菌条件下で、医薬的に許容しうるキャリヤー、および要求に応じて、任意の必要な防腐剤または緩衝剤と一緒に混合する。眼科用製剤、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内にあることが企図される。これに加えて、本発明は、経皮パッチの使用を企図しており、これは、体への化合物の制御送達を提供するという追加的利点を有する。そのような剤形は、化合物を適した媒体に溶解または分配することにより作製することができる。皮膚を通る化合物の流束を増大させるために、吸収増強剤を用いることもできる。速度は、速度制御膜を提供するか、化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることにより、制御することができる。下部腸管に関する局所施用は、肛門坐剤製剤(上記参照)または適した浣腸製剤で達成することができる。局所的な経皮パッチを用いることもできる。
【0084】
[0081]局所施用の場合、医薬組成物を、1以上のキャリヤーに懸濁または溶解させた活性構成要素を含有する適した軟膏状に配合することができる。本発明の化合物の局所施用のためのキャリヤーとしては、限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられる。あるいは、医薬組成物を、1以上の医薬的に許容しうるキャリヤーに懸濁または溶解させた活性構成要素を含有する適したローションまたはクリーム状に配合することができる。適したキャリヤーとしては、限定されるものではないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0085】
[0082]眼科的使用の場合、医薬組成物を、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤の有無にかかわらず、pH調整された等張性滅菌生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または、好ましくは、pH調整された等張性滅菌生理食塩水中の溶液として、配合することができる。あるいは、眼科的使用の場合、医薬組成物を、ワセリンなどの軟膏状に配合してもよい。眼または他の外部組織、例えば口および皮膚の処置の場合、製剤を、活性成分(1以上)を例えば0.075~20%重量/重量の量で含有する局所軟膏またはクリームとして施用することができる。軟膏状に配合する場合、活性成分を、油性、パラフィン系または水混和性軟膏ベースのいずれかと一緒に用いることができる。
【0086】
[0083]あるいは、活性成分を、水中油型クリームベースを用いてクリーム状に配合してもよい。望ましい場合、クリームベースの水性相は、多価アルコール、すなわち、2以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400を含む)およびそれらの混合物を包含することができる。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の患部を通る活性成分の吸収または浸透を促進する化合物を包含することができる。そのような皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連類似体が挙げられる。
【0087】
[0084]本明細書中に記載する化合物を用いて調製されるエマルションの油相は、公知の方法で公知の成分から構成されることができる。該相は乳化剤(ほかにエマルゲント(emulgent)として知られる)のみを含むことができるが、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪または油、または脂肪および油の両方との混合物を含むことが望ましい。親水性乳化剤を、安定剤として働く親油性乳化剤と一緒に包含させてもよい。いくつかの態様において、乳化剤は、油および脂肪の両方を包含する。総合して、安定剤(1以上)の有無にかかわらず乳化剤(1以上)はいわゆる乳化ワックスをもたらし、該ワックスは、油および脂肪と一緒になって、クリーム製剤の油状分散相を形成するいわゆる乳化軟膏ベースをもたらす。本明細書中に記載する化合物の配合における使用に適したエマルゲントおよびエマルション安定剤としては、TweenTM-60、SpanTM-80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0088】
[0085]医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入により投与することもできる。そのような組成物は、医薬製剤の技術分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適した防腐剤、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製することができる。肺内投与または経鼻投与に適した製剤は、例えば0.1~500ミクロンの範囲にある粒子サイズ(例えば0.5、1、30、35ミクロンなどのミクロンのきざみで0.1~500ミクロンの範囲にある粒子を含む)を有し、肺胞嚢に達するように鼻道を経る急速吸入または口を経る吸入により投与される。
【0089】
[0086]使用するための医薬組成物(または製剤)は、薬物の投与に用いられる方法に応じて多様な方法でパッケージすることができる。一般に、分配品は、適した形態の医薬製剤が入っている容器を包含する。適した容器は当業者に周知であり、ボトル(プラスチックおよびガラス)、小袋、アンプル、プラスチック袋、金属シリンダーなどの材料を包含する。容器は、パッケージの内容物への無分別な接近を防ぐために、不正開封防止機能が付いたセット(assemblage)を包含することもできる。これに加えて、容器の上部には、容器内容物を記載したラベルを付着させておく。ラベルは、適した注意書きを包含することもできる。
【0090】
[0087]製剤は、単位用量または複数回用量のための容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルにパッケージすることができ、使用直前に注射用滅菌液体キャリヤー、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管することができる。即時調合注射溶液または懸濁液は、上記種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製する。好ましい単位投与製剤は、本明細書中で先に挙げた1日用量または単位1日サブ用量、またはその適した部分(fraction)の活性成分を含有するものである。
【0091】
[0088]他の観点において、本明細書中に記載する化合物または医薬的に許容しうるその塩は、獣医学的キャリヤーを含む獣医学的組成物の状態に配合することができる。獣医学的キャリヤーは、組成物の投与の目的に有用な材料であり、通常なら不活性である固体、液体またはガス状材料であることができる。獣医学分野において、活性成分に適合する。これらの獣医学的組成物は、非経口、経口または他の任意の望ましい経路により、投与することができる。
治療法
[0089]本発明は、CNS疾患、健康状態または障害の処置または予防を必要としている被験対象におけるその処置または予防方法であって、治療的有効量の化合物または医薬的に許容しうるその塩を、単独または併用療法で被験対象に投与することを含む方法を対象とし、これに関し、該化合物は、表Iに示すものから選択される。
【0092】
[0090]本発明はまた、表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩と、少なくとも1つの医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーとを含む医薬組成物を対象とする。本発明はまた、前記医薬組成物を含む剤形を対象とする。
【0093】
[0091]本発明はまた、CNS疾患、健康状態または障害の処置または予防を必要としている被験対象におけるその処置または予防方法であって、表Iに示す化合物または医薬的
に許容しうるその塩を含む医薬組成物または剤形を、単独または併用療法で投与することを含む方法を対象とする。
【0094】
[0092]本発明はさらに、表Iに示すsGC刺激剤もしくは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を、CNS疾患の処置のために使用することを対象とする。
【0095】
[0093]本発明はさらに、CNS疾患の処置に用いるためのsGC刺激剤、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を対象とし、これに関し、sGC刺激剤は、表Iに示すものまたはその医薬的に許容しうるその塩である。
【0096】
[0094]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、神経炎症の増大を特徴とする疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。本発明の一態様は、神経炎症の低減を必要としている被験対象における神経炎症の低減方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。
【0097】
[0095]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、神経毒性の増大を特徴とする疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。本発明の一態様は、神経毒性の低減を必要としている被験対象における神経毒性の低減方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。
【0098】
[0096]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、神経再生の障害を特徴とする疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。本発明の一態様は、神経再生の回復を必要としている被験対象における神経再生の回復方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。
【0099】
[0097]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、シナプス機能の障害を特徴とする疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。本発明の一態様は、シナプス機能の回復を必要としている被験対象におけるシナプス機能の回復方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。
【0100】
[0098]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、神経伝達物質のダウンレギュレーションを特徴とする疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。本発明の一態様は、神経伝達物質の正常化を必要としている被験対象における神経伝達物質の正常化方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。具体的には、疾患はアルツハイマー病である。具体的には、疾患は混合型認知症である。
【0101】
[0099]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、脳血流の障害を特徴とする疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。本発明の一態様は、脳血流の回復を必要としている被験対象における脳血流の回復方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。具体的には、疾患は血管性認知症またはアルツハイマー病である。具体的には、疾患は混合型認知症である。他の態様において、CNS障害は、脳への外傷性(非開放性または開放性の穿通性頭部損傷)、外傷性脳損傷(TBI)、または非外傷性(脳卒中(とりわけ虚血性脳卒中)、動脈瘤、低酸素症)損傷、あるいは脳損傷または神経変性疾患に起因する認知機能障害または機能不全から選択される。
【0102】
[00100]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、神経変性の増大を特徴と
する疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。本発明の一態様は、神経変性の低減を必要としている被験対象における神経変性の低減方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。
【0103】
[00101]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、神経保護性であるsGC
刺激剤である。とりわけ、表Iに示す化合物または医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形は、神経の保護を必要としてる被験者において神経を保護するのに有用であることができる。
【0104】
[00102]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、オーファン性疼痛の徴候(orphan pain indication)の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺
激剤である。本発明の一態様は、オーファン性疼痛の徴候の処置を必要としている被験対象におけるオーファン性疼痛の徴候の処置方法であって、被験対象に、表Iに示す化合物のいずれか1つまたは医薬的に許容しうるその塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは剤形を投与することによる方法である。とりわけ、オーファン性疼痛の徴候は、アセタゾラミド応答性ミオトニー、自己赤血球感作症候群、常染色体優性シャルコー・マリー・トゥース病 タイプ2V、神経障害痛を伴う常染色体優性中間型シャルコー・マリー・トゥース病、常染色体劣性肢帯筋ジストロフィー タイプ2A、チャネロパチーが関連する先天性無痛症、髄腔内無痛を要する慢性疼痛、複合型局所疼痛症候群、複合型局所疼痛症候群タイプ1、複合型局所疼痛症候群タイプ2、発汗過多を伴う先天性無痛症、重度の知的障害を伴う先天性無痛症、先天性無痛症-発汗減少症候群、有痛性のひび割れを伴うびまん性掌蹠角皮症、家族性偶発性疼痛症候群、主に下肢が関与する家族性偶発性疼痛症候群、主に上半身が関与する家族性偶発性疼痛症候群、遺伝性有痛性胼胝、遺伝性の感覚性および自律性神経障害 タイプ4、遺伝性の感覚性および自律性神経障害 タイプ5、遺伝性の感覚性および自律性神経障害 タイプ7、間質性膀胱炎、有痛性の眼窩および全身性神経線維腫-マルファン様体質症候群(marfanoid habitus syndrome)、発作性激痛性障害、持続性特発性顔面痛、カルパインの質的または量的欠乏、ならびにトローザ・ハント症候群から選択される。
【0105】
[00103]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、高所(高山)病、脳小血
管疾患、脳血管炎、脳血管攣縮、肝性脳症、モヤモヤ病、パーキンソン病の嚥下障害、血管拡張性失調症(ataxia telangliectasia)、自閉症スペクトラム障害、慢性疲労、慢性外傷性脳症(CTE)、糖尿病に関連する認知機能障害、多発性硬化症に関連する認知機能障害、閉塞性睡眠時無呼吸に関連する認知機能障害、統合失調症に関連する認知機能障害(CIAS)、鎌状赤血球に関連する認知機能障害、振盪症、網膜症、糖尿病性網膜症(増殖性および非増殖性を含む)、嚥下障害、眼線維症、ファブリー病、ゴーシェ病、グリア芽細胞腫、大脳マラリアに起因する脳炎(SoC)、伝染性疾患に起因する脳炎、知的障害、近視性脈絡膜血管新生、視神経脊髄炎、多発性硬化症に伴う神経障害痛、帯状疱疹(帯状ヘルペス)に伴う神経障害痛、脊椎手術に伴う神経障害痛、パーキンソン病の認知症、末梢性および自律性神経障害、末梢性網膜変性、外傷後ストレス症候群、ヘルペス後神経痛、術後認知症、増殖性硝子体網膜症(vitroretinopathy)、放射線誘発性脳線維症、神経根障害、難治性てんかん、網膜静脈閉塞、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎亜脱臼、タウオパチー、および湿潤加齢性黄斑変性症の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤である。
【0106】
[00104]本発明のsGC刺激剤での処置が有益であり得るCNS疾患は、NO濃度の増
大、もしくはcGMP濃度の増大、もしくはその両方、またはNO経路のアップレギュレーションが望ましい可能性があるCNS疾患である。
【0107】
[00105]本明細書中に記載する化合物、および医薬的に許容しうるその塩は、血液脳関
門を通過することができるsGC刺激剤として、脳におけるsGC刺激が有益であり得るCNS疾患、状態および障害の予防/処置に有用である。
【0108】
[00106]いくつかの態様において、CNS疾患、健康状態または障害は、アルツハイマ
ー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルー・ゲーリック病)、ダウン症候群、認知症、血管性認知症(VD)、血管性認知機能障害、混合型認知症、ビンスワンガー型認知症(皮質下動脈硬化性脳症)、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASILまたはCADASIL症候群)、前頭側頭葉変性症または認知症、HIV関連認知症(例えば、無症候性神経認知機能障害(ANI)、軽度神経認知障害(MND)、およびHIV関連認知症(HAD)(AIDS認知症症候群[ADC]またはHIV脳症ともよばれる)、レビー小体型認知症、初老期認知症(軽度認知機能障害またはMCI)、緑内障、ハンチントン病(またはハンチントン舞踏病、HD)、多発性硬化症(MS)(臨床的に分離される症候群(Clinically isolated syndrome)(CIS)、再発寛解型MS(PPMS)、一次性進行性MS(PPMS)、および二次性進行性MS(SPMS)を含む)、多系統萎縮症(MSA)、パーキンソン病(PD)、パーキンソニズム・プラス、脊髄小脳運動失調症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー疾患(進行性核上性麻痺)、注意欠陥障害(ADD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)から選択される。
【0109】
[00107]他の態様において、疾患、健康状態または障害は、アルツハイマー病またはプ
レアルツハイマー病、軽度~中等度のアルツハイマー病または中等度~重度のアルツハイマー病から選択される、CNS障害または状態である。
【0110】
[00108]他の態様において、CNS障害は、外傷性(非開放性または開放性)穿通性頭
部損傷、外傷性脳損傷(TBI)、例えば振盪症および慢性外傷性脳症(CTE)など、脳への非外傷性損傷(例えば、脳卒中(とりわけ虚血性脳卒中)、動脈瘤、低酸素症)、あるいは脳損傷または神経変性障害に起因する認知機能障害または機能不全のいずれかから選択される。
【0111】
[00109]他の態様において、CNS疾患または障害は、ジストニア、例えば、全身性、
局所性、分節性、性的、中間型、遺伝性/原発性ジストニアまたは急性ジストニア反応など;あるいは、ジスキネジア、例えば、急性、慢性/遅発性、および非運動性およびレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)などから選択される。
【0112】
[00110]他の態様において、CNS疾患または障害は、シナプス可塑性およびシナプス
プロセスの相対的低下を特徴とする障害、例えば、脆弱X、レット障害、ウィリアムズ症候群、レンペニング症候群、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害または小児期崩壊性障害などから選択される。
【0113】
[00111]他の態様において、CNS障害は神経障害痛である。
[00112]他の態様において、CNS障害は、双極性障害、統合失調症、一般的精神病、
薬物誘発性精神病、妄想性障害、統合失調感情障害、強迫性障害(OCD)、抑うつ障害
、不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される精神医学的、精神的、気分的または情動的障害である。
【0114】
[00113]他の態様において、CNS障害は、加齢に伴う記憶障害、混合型認知症、睡眠
覚醒障害、およびスネドン症候群から選択される。
[00114]他の態様において、疾患または状態は、急性疼痛、中枢性疼痛症候群、化学療
法誘発性の神経障害および神経障害痛、糖尿病性神経障害、線維筋痛症、炎症性疼痛、神経障害痛、CNS疾患に関連する神経障害痛、有痛性糖尿病性末梢神経障害、術後疼痛、持続性疼痛、および内臓痛から選択される。
【0115】
[00115]他の態様において、CNS障害は、ケモブレイン、レボドパ誘発性嗜癖行動、
アルコール依存症、麻薬依存症(例えば、限定されるものではないが、アンフェタミン、アヘンまたは他の物質)および薬物乱用から選択される。
【0116】
[00116]本明細書中、“疾患”、“障害”、“健康状態”および“状態”という用語は
、sGC、cGMPおよび/またはNOが媒介するCNSの医学的または病理学的状態、あるいは通常ならNO経路のアップレギュレーションが有益であり得るCNSの疾患をさすために、互換的に用いることができる。
【0117】
[00117]本明細書中で用いる場合、“被験対象”および“患者”という用語は、互換的
に用いられる。“被験対象”および“患者”という用語は、動物(例えば、ニワトリ、ウズラもしくはシチメンチョウなどの鳥類、または哺乳類)、具体的には、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌおよびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよびヒト)を含む“哺乳類”、より具体的にはヒトをさす。いくつかの態様において、被験対象は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタまたはヒツジ)またはペット(例えば、イヌ、ネコ、モルモットまたはウサギ)のような非ヒト動物である。いくつかの態様において、被験対象はヒトである。
【0118】
[00118]本発明はまた、被験対象において上記疾患、状態および障害の1つを処置する
ための方法であって、処置を必要としている被験対象に、治療的有効量の本明細書中に記載する化合物または医薬的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。あるいは、本発明は、これらの疾患、状態および障害の1つの処置での、処置を必要としている被験対象における、本明細書中に記載する化合物または医薬的に許容しうるその塩の使用を提供する。
【0119】
[00119]本明細書中で用いる場合、“生体試料”という用語は、in vitroまた
はex vivo試料をさし、制限なしで、細胞培養物またはその抽出物;哺乳類から得られる生検材料またはその抽出物;血液、唾液、尿、糞便、精液、涙、リンパ液、眼液、硝子体液、脳脊髄液(CSF)、もしくは他の体液、またはそれらの抽出物を包含する。
【0120】
[00120]障害または疾患に関する“処置する”、“処置している”または“処置”は、
障害または疾患の原因および/または作用を改善または妨げることをさす。本明細書中で用いる場合、“処置する”、“処置”および“処置している”という用語は、1以上の治療(例えば、表Iの化合物またはその組成物もしくは剤形のような1以上の治療薬)の投与に起因する、sGC、cGMPおよび/またはNOが媒介する状態の進行、重症度および/または持続期間の低減または改善、あるいは前記状態の症状の1以上(好ましくは、1以上の識別可能な症状)の改善(すなわち、状態を“治癒”させることなく“制御”すること)をさす。具体的態様において、“処置する”、“処置”および“処置している”という用語は、sGC、cGMPおよび/またはNOが媒介する状態、あるいはNO経路のアップレギュレーションが有益である疾患の測定可能な身体的パラメーターの少なくと
も1つの改善をさす。他の態様において、“処置する”、“処置”および“処置している”という用語は、sGC、cGMPおよび/またはNOが媒介する状態、あるいはNO経路のアップレギュレーションが有益である疾患の進行を、例えば識別可能な症状の安定化により身体的に、または例えば身体的パラメーターの安定化により生理学的に、またはその両方により、阻害することをさす。
【0121】
[00121]本明細書中で用いられる“予防すること”という用語は、疾患または障害の1
以上の症状の出現を回避または未然に防ぐために、事前に医薬品を投与することをさす。医学分野の当業者なら、“予防する”という用語が絶対的な用語ではないことを認識している。医学分野において、それは、ある状態、またはその状態の症状の可能性または重篤性を実質的に低減するための薬物の予防的投与をさすと理解され、これが、本開示で意図する意味である。当分野の標準的テキストであるPhysician’s Desk Referenceでは、“予防する”という用語が数百回用いられている。このテキストで用いられている場合、障害または疾患に関する“予防する”、“予防すること”および“予防”という用語は、疾患または障害が完全に発現する前に、あるいは障害が診断される前に、疾患または障害の原因、作用、症状または進行を回避することをさす。
【0122】
[00122]一態様において、本発明の方法は、sGC、cGMPおよび/またはNOが関
連する疾患、障害または症状を発現する素因(例えば遺伝学的素因)を有する患者、具体的にはヒトに対する予防的または“先制的”手段である。
【0123】
[00123]他の態様において、本発明の方法は、sGC、cGMPまたはNOが関連する
疾患、障害または症状を発現するリスクをもたらす疾患、障害または状態を患っている患者、具体的にはヒトに対する予防的または“先制的”手段である。
【0124】
[00124]本明細書中に記載する化合物および組成物は、コンパニオンアニマル、外来動
物および家畜、例えば、制限なしで、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、モルモット、ウサギ、ウマ、ブタおよびウシの獣医学的処置にも有用である。
【0125】
[00125]他の態様において、本発明は、生体試料においてsGC活性を刺激する方法で
あって、前記生体試料を表Iの化合物、または医薬的に許容しうるその塩、組成物もしくは剤形と接触させることを含む方法を提供する。生体試料におけるsGC刺激剤の使用は、当業者に公知のさまざまな目的に関し有用である。そのような目的の例としては、制限なしで、生物学的アッセイおよび生物試料の保存が挙げられる。
【0126】
[00126]本明細書中に記載する化合物および医薬組成物は、sGC、cGMPおよび/
またはNOによって媒介、調節、または影響される疾患または障害を処置または予防するために、単独または併用療法で用いることができる。
【0127】
併用療法
[00127]本明細書中に記載する化合物および医薬組成物は、1以上の追加的治療薬との
併用療法に用いることができる。活性薬剤が別個の投薬製剤中にある1より多くの活性薬剤との併用処置の場合、活性薬剤は、別個に、または併せて投与することができる。これに加えて、1つの要素の投与は、他の薬剤の投与前、投与と同時、または投与後であることができる。
【0128】
[00128]他の薬剤と“同時投与”する場合、例えば、他の医薬と同時投与する場合、第
2の薬剤の“有効量”は、用いる薬物のタイプに依存する。適した投与量は、承認薬の場合は公知であり、当業者なら、被験対象の状態、処置される状態(1以上)のタイプ、および用いられる本明細書中に記載する化合物の量に従って調整することができる。量が明
示されていない場合、有効量は推測すべきである。例えば、本明細書中に記載する化合物は、約0.01~約10000mg/kg体重/日、約0.01~約5000mg/kg体重/日、約0.01~約3000mg/kg体重/日、約0.01~約1000mg/kg体重/日、約0.01~約500mg/kg体重/日、約0.01~約300mg/kg体重/日、約0.01~約100mg/kg体重/日の投与量範囲で、被験対象に投与することができる。
【0129】
[00129]“併用療法”を採用する場合、有効量は、第1の量の表Iの化合物または医薬
的に許容しうるその塩と、第2の量の追加的な適した治療薬を用いて達成することができる。
【0130】
[00130]本発明の一態様において、表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩、お
よび追加的治療薬はそれぞれ、有効量(すなわち、それぞれ、単独で投与した場合に治療的に有効であろう量)で投与される。他の態様において、表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩、および追加的治療薬はそれぞれ、単独では治療効果をもたらさない量(治療量未満の用量)で投与される。さらに他の態様において、表Iの化合物は有効量で投与することができるが、追加的治療薬は治療量未満の用量で投与される。さらに他の態様において、表Iの化合物は治療量未満の用量で投与することができるが、追加的治療薬、例えば、適したがん治療薬は、有効量で投与される。
【0131】
[00131]本明細書中で用いる場合、“組み合わせで”または“同時投与”という用語は
、1より多くの治療(例えば、1以上の予防薬および/または治療薬)の使用をさすために互換的に用いることができる。該用語の使用は、治療(例えば、予防薬および/または治療薬)を被験対象に投与する順序を限定するわけではない。
【0132】
[00132]同時投与は、第1および第2の量の化合物を、例えば、固定比率の第1および
第2の量を有するカプセルもしくは錠剤のように単一の医薬組成物で、または、それぞれ多数の別個のカプセルもしくは錠剤で、実質的に同時に投与することを包含する。これに加えて、そのような同時投与は、各化合物をいずれかの順序で逐次的に使用することも包含する。同時投与が、第1の量の表Iの化合物と第2の量の追加的治療薬を別個に投与することを包含する場合、化合物は、望ましい治療効果を有するのに十分な接近した時間内に投与される。例えば、望ましい治療効果をもたらすことができる各投与間の時間は、数分~数時間であることができ、各化合物の特性、例えば、効力、溶解度、生物学的利用能、血漿内半減期、および動態学的プロフィールを考慮して決定することができる。例えば、表Iの化合物および第2の治療薬は、任意の順序で、互いに約24時間以内に、互いに約16時間以内に、互いに約8時間以内に、互いに約4時間以内に、互いに約1時間以内に、または互いに約30分以内に、投与することができる。
【0133】
[00133]より詳細には、第1の治療(例えば、本明細書中に記載する化合物などの予防
薬または治療薬)は、第2の治療(例えば、抗がん剤などの予防薬または治療薬)の投与前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、投与と同時に、または投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に、被験対象に投与することができる。
【0134】
[00134]別個に、または同一の医薬組成物で投与される、表Iの化合物または医薬的に
許容しうるその塩と組み合わせることができる他の治療薬の例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:
(1)内皮由来の放出因子(EDRF)またはNOガス。
【0135】
(2)NO供与体、例えば、ニトロソチオール、ニトリット、シドノンイミン、NONOエート、N-ニトロソアミン、N-ヒドロキシルニトロソアミン、ニトロソイミン(nitrosimine)、ニトロチロシン、ジアゼチンジオキシド(diazetine dioxide)、オキサトリアゾール5-イミン、オキシム、ヒドロキシルアミン、N-ヒドロキシグアニジン、ヒドロキシ尿素またはフロキサン。これらのタイプの化合物のいくつかの例としては、以下が挙げられる:三硝酸グリセリン(GTN、ニトログリセリン(nitroglycerin)、ニトログリセリン(nitroglycerine)およびトリニトログリセリンとしても知られる)、グリセロールの硝酸エステル;酸化窒素分子が金属鉄に配位して正方形両錐錯体(square bipyramidal complex)を形成している、ニトロプルシドナトリウム(SNP);モルホリンとシドノンイミンの組み合わせによって形成される両性イオン性化合物である、3-モルホリノシドノンイミン(SIN-1);ニトロソチオール官能基を有するN-アセチル化アミノ酸誘導体である、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP);ジエチレントリアミンに共有結合している酸化窒素化合物である、ジエチレントリアミン/NO(DETA/NO);アセチルサリチル酸のm-ニトロキシメチルフェニルエステル。これらのクラスのNO供与体のいくつかのより詳細な例としては、以下が挙げられる:標準的なニトロ血管拡張薬、例えば、有機硝酸エステルおよび亜硝酸エステル、例えば、ニトログリセリン、亜硝酸アミル、二硝酸イソソルビド、5-一硝酸イソソルビド、およびニコランジル;イソソルビド(Dilatrate(登録商標)-SR、Imdur(登録商標)、Ismo(登録商標)、Isordil(登録商標)、Isordil(登録商標)、Titradose(登録商標)、Monoket(登録商標))、3-モルホリノシドノンイミン;リンシドミンクロロ水和物(“SIN-1”);S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(“SNAP”);S-ニトロソグルタチオン(GSNO)、ニトロプルシドナトリウム、S-ニトロソグルタチオン モノエチルエステル(GSNO-エステル)、6-(2-ヒドロキシ-1-メチル-ニトロソヒドラジノ)-N-メチル-1-ヘキサンアミンまたはジエチルアミンNONOエート。
【0136】
(3)cGMP濃度を上昇させる他の物質、例えば、プロトポルフィリンIX、アラキドン酸およびフェニルヒドラジン誘導体。
(4)酸化窒素シンターゼ基質:例えば、N-ヒドロキシグアニジンに基づく類似体、例えば、N[G]-ヒドロキシ-L-アルギニン(NOHA)、1-(3,4-ジメトキシ-2-クロロベンジリデンアミノ)-3-ヒドロキシグアニジン、およびPR5(1-(3,4-ジメトキシ-2-クロロベンジリデンアミノ)-3-ヒドロキシグアニジン);L-アルギニン誘導体(例えば、ホモ-Arg、ホモ-NOHA、N-tert-ブチルオキシ-およびN-(3-メチル-2-ブテニル)オキシ-L-アルギニン、カナバニン、イプシロングアニジン-カプロン酸(carpoic acid)、アグマチン、ヒドロキシル-アグマチン、およびL-チロシル-L-アルギニン);N-アルキル-N’-ヒドロキシグアニジン(N-シクロプロピル-N’-ヒドロキシグアニジンおよびN-ブチル-N’-ヒドロキシグアニジンなど)、N-アリール-N’-ヒドロキシグアニジン(N-フェニル-N’-ヒドロキシグアニジン、およびそれぞれ-F、-Cl、-メチル、-OH置換基を持つそのパラ置換誘導体など);3-(トリフルオロメチル)プロピルグアニジンなどのグアニジン誘導体。
【0137】
(5)eNOS転写を増強する化合物。
(6)NO非依存性ヘム非依存性sGC活性化因子、例えば、限定されるものではないが:BAY58-2667(特許公報DE19943635号に記載)
【0138】
【化1】
【0139】
HMR-1766(アタシグアトナトリウム、特許公報WO2000002851号に記載)
【0140】
【化2】
【0141】
S3448(2-(4-クロロ-フェニルスルホニルアミノ)-4,5-ジメトキシ-N-(4-(チオモルホリン-4-スルホニル)-フェニル)-ベンズアミド(特許公報DE19830430号およびWO2000002851号に記載)
【0142】
【化3】
【0143】
および
HMR-1069(Sanofi-Aventis)。
(7)ヘム依存性NO非依存性sGC刺激剤、例えば、限定されるものではないが:
YC-1(特許公報EP667345号およびDE19744026号参照)
【0144】
【化4】
【0145】
リオシグアト(BAY63-2521、Adempas(登録商標)、DE19834044号に記載)
【0146】
【化5】
【0147】
ネリシグアト(BAY60-4552、WO2003095451号に記載)
【0148】
【化6】
【0149】
ベリシグアト(BAY1021189)
【0150】
【化7】
【0151】
BAY41-2272(DE19834047号およびDE19942809号に記載)
【0152】
【化8】
【0153】
BAY41-8543(DE19834044号に記載)
【0154】
【化9】
【0155】
エトリシグアト(WO2003086407号に記載)
【0156】
【化10】
【0157】
CFM-1571(特許公報WO2000027394号に記載)
【0158】
【化11】
【0159】
A-344905、そのアクリルアミド類似体A-350619およびアミノピリミジン類似体A-778935
【0160】
【化12】
【0161】
および、公報:米国特許出願公開第20090209556号、米国特許公報第8455638号、米国特許出願公開第20110118282号(WO2009032249号)、米国特許出願公開第20100292192号、同第20110201621号、米国特許公報第7947664号、同第8053455号(WO2009094242号)、米国特許出願公開第20100216764号、米国特許公報第8507512号、(WO2010099054号)米国特許出願公開第20110218202号(WO2010065275号)、同第20130012511号(WO2011119518号)、同第20130072492号(WO2011149921号)、同第20130210798号(WO2012058132号)の1つに記載されている他のsGC刺激剤、およびTetrahedron Letters(2003),44(48):8661-8663に記載されている他の化合物。
【0162】
(8)cGMPの分解を阻害する化合物、例えば:
PDE5阻害剤、例えば、シルデナフィル(Viagra(登録商標))、および関連薬剤、例えば、アバナフィル、ロデナフィル、ミロデナフィル、クエン酸シルデナフィル(Revatio(登録商標))、タダラフィル(Cialis(登録商標)またはAdcirca(登録商標))、バルデナフィル(Levitra(登録商標))およびウデ
ナフィル;アルプロスタジル;ジピリダモールおよびPF-00489791など;および
PDE9阻害剤、例えばPF-04447943など;および
PDE10阻害剤、例えばPF-02545920(PF-10)など。
【0163】
(9)以下のタイプのカルシウムチャネル遮断薬:
ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬、例えば、アムロジピン(Norvasc(登録商標))、アラニジピン(Sapresta(登録商標))、アゼルニジピン(Calblock(登録商標))、バルニジピン(HypoCa(登録商標))、ベニジピン(Coniel(登録商標))、シルニジピン(Atelec(登録商標)、Cinalong(登録商標)、Siscard(登録商標))、クレビジピン(Cleviprex(登録商標))、ジルチアゼム、エホニジピン(Landel(登録商標))、フェロジピン(Plendil(登録商標))、ラシジピン(Motens(登録商標)、Lacipil(登録商標))、レルカニジピン(Zanidip(登録商標))、マニジピン(Calslot(登録商標)、Madipine(登録商標))、ニカルジピン(Cardene(登録商標)、Carden SR(登録商標))、ニフェジピン(Procardia(登録商標)、Adalat(登録商標))、ニルバジピン(Nivadil(登録商標))、ニモジピン(Nimotop(登録商標))、ニソルジピン(Baymycard(登録商標)、Sular(登録商標)、Syscor(登録商標))、ニトレンジピン(Cardif(登録商標)、Nitrepin(登録商標)、Baylotensin(登録商標))、プラニジピン(Acalas(登録商標))、イスラジピン(Lomir(登録商標));
フェニルアルキルアミンカルシウムチャネル遮断薬、例えば、ベラパミル(Calan(登録商標)、Isoptin(登録商標))
【0164】
【化13】
【0165】
およびガロパミル(Procorum(登録商標)、D600);
ベンゾチアゼピン、例えば、ジルチアゼム(Cardizem(登録商標));
【0166】
【化14】
【0167】
および
非選択性カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ミベフラジル、ベプリジル、フルスピリレン、およびフェンジリン。
【0168】
(10)エンドセリン受容体アンタゴニスト(ERA)、例えば、二重(ETおよびET)エンドセリン受容体アンタゴニストのボセンタン(Tracleer(登録商標))、シタキセンタン(Thelin(登録商標))またはアンブリセンタン(Letairis(登録商標))。
【0169】
(11)プロスタサイクリン誘導体または類似体、例えば、プロスタサイクリン(プロスタグランジンI)、エポプロステノール(合成プロスタサイクリン、Flolan(
登録商標))、トレプロスチニル(Remodulin(登録商標))、イロプロスト(I
lomedin(登録商標))、イロプロスト(Ventavis(登録商標));開発中の経口および吸入形態のRemodulin(登録商標)。
【0170】
(12)以下のタイプのような抗脂質異常症薬:
胆汁酸金属イオン封鎖剤、例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレスチラン、コレセベラムまたはセベラマー;
スタチン、例えば、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンおよびプラバスタチン;
コレステロール吸収阻害剤、例えばエゼチミブ;
他の脂質低下薬、例えば、イコサペントエチルエステル、オメガ-3-脂肪酸エチルエステル、レデュコール(reducol);
フィブリン酸誘導体、例えば、クロフィブラート、ベザフィブラート、クリノフィブラート、ゲムフィブロジル、ロニフィブラート、ビニフィブラート、フェノフィブラート、シプロフィブラート、コリンフェノフィブラート;
ニコチン酸誘導体、例えば、アシピモックスおよびナイアシン;
スタチン、ナイアシンおよび腸コレステロール吸収阻害サプリメント(エゼチミブなど)およびフィブラートの組み合わせ;ならびに
抗血小板療法、例えば、重硫酸クロピドグレル。
【0171】
(13)以下のタイプのような抗凝固薬:
クマリン(ビタミンKアンタゴニスト)、例えば、ワルファリン(Coumadin(登録商標))、セノクマロール(cenocoumarol)、フェンプロクモンおよびフェニンジオン;
ヘパリンおよび誘導体、例えば、低分子量ヘパリン、フォンダパリヌクスおよびイドラパリヌクス;
直接トロンビン阻害剤、例えば、アルガトロバン、レピルジン、ビバリルジン、ダビガトランおよびキシメラガトラン(Exanta(登録商標));ならびに
血餅を融解し動脈の閉塞を取り除くために用いる組織プラスミノーゲン活性化因子、例えばアルテプラーゼ。
【0172】
(14)抗血小板薬、例えば、トロピドグレル、チクロピリジン、ジピリダモールおよびアスピリンなど。
(15)ACE阻害薬、例えば以下のタイプ:
スルフヒドリル含有薬、例えば、カプトプリル(Capoten(登録商標))およびゾフェノプリル;
ジカルボキシレート含有薬、例えば、エナラプリル(Vasotec/Renitec(登録商標))、ラミプリル(Altace(登録商標)/Tritace(登録商標)/Ramace(登録商標)/Ramiwin(登録商標))、キナプリル(Accupril(登録商標))、ペリンドプリル(Coversyl(登録商標)/Aceon(登録商標))、リシノプリル(Lisodur(登録商標)/Lopril(登録商標)/Novatec(登録商標)/Prinivil(登録商標)/Zestril(登録商標))およびベナゼプリル(Lotensin(登録商標));
ホスホネート含有薬、例えばフォシノプリル;
天然由来のACE阻害薬、例えば、カソキニンおよびラクトキニン、これらは、乳製品、特に発酵乳の摂取後に自然に生じるカゼインおよび乳清の分解産物である;
プロバイオティックLactobacillus helveticusによって産生されるか、同様にACE阻害作用および抗高血圧作用を有するカゼインから誘導される、ラクトトリペプチドVal-Pro-ProおよびIle-Pro-Pro;
他のACE阻害薬、例えば、アラセプリル、デラプリル、シラザプリル、イミダプリル、トランドラプリル、テモカプリル、モエキシプリルおよびピラプリル。
【0173】
(16)酸素補給療法。
(17)以下のタイプのようなベータ遮断薬:
非選択性薬剤、例えば、アルプレノロール、ブシンドロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、オキシプレノロール (oxprenonol)、アセブトロール、ソタロール、メピンドロール、セリプロロール、アロチノロール、テルタトロール、アモスラロール、ニプラジロール、プロプラノロールおよびチモロール;
β選択性薬剤、例えば、セブトロール(cebutolol)、アテノロール、ベタキソロール
、ビソプロロール、セリプロロール、ドブタミン塩酸塩、イルソグラジンマレイン酸塩、カルベジロール、タリノロール、エスモロール、メトロプロロールおよびネビボロール;ならびに
β選択性薬剤、例えばブタキサミン。
【0174】
(18)以下のタイプのような抗不整脈薬:
タイプI(ナトリウムチャネル遮断薬)、例えば、キニジン、リドカイン、フェニトイン、プロパフェノン;
タイプIII(カリウムチャネル遮断薬)、例えば、アミオダロン、ドフェチリドおよびソタロール;ならびに
タイプV、例えば、アデノシンおよびジゴキシン。
【0175】
(19)利尿薬、例えば、チアジド利尿薬、例えば、クロロチアジド、クロルタリドンおよびヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、シクロペンチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、キネタゾン、キシパミド、メトラゾン、インダパミド、シクレタニン;ループ利尿薬、例えば、フロセミドおよびトレサミド(toresamide);カリウム保持性利尿薬、例えば、アミロリド、スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、エプレレノンおよびトリアムテレン;これらの薬剤の組み合わせ;他の利尿薬、例えば、アセタゾラミドおよびカルペリチド。
【0176】
(20)直接作用性血管拡張薬、例えば、塩酸ヒドララジン、ジアゾキシド、ニトロプルシドナトリウム、カドララジン;他の血管拡張薬、例えば、二硝酸イソソルビドおよび5-一硝酸イソソルビド。
【0177】
(21)外因性血管拡張薬、例えば、Adenocard(登録商標)およびアルファ遮断薬。
(22)アルファ-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、例えば、プラゾシン、インドラミン、ウラピジル、ブナゾシン、テラゾシンおよびドキサゾシン;心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、エタノール、ヒスタミン誘発物質、テトラヒドロカンナビノール(THC)およびパパベリン。
【0178】
(23)以下のタイプの気管支拡張薬:
短時間作用型βアゴニスト、例えば、アルブタモールまたはアルブテロール(Ven
tolin(登録商標))およびテルブタリン;
長時間作用型βアゴニスト(LABA)、例えば、サルメテロールおよびホルモテロール;
抗コリン作用薬、例えば、プラトロピウム(pratropium)およびチオトロピウム;ならびに
気管支拡張薬およびホスホジエステラーゼ阻害薬であるテオフィリン。
【0179】
(24)コルチコステロイド、例えば、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルチカゾン、フルニソリド、ヒドロコルチゾン、およびコルチコステロイド類似体、例えばブデソニド。
【0180】
(25)栄養補助食品、例えば、オメガ-3油;葉酸、ナイアシン、亜鉛、銅、高麗紅参根、イチョウ、松樹皮、Tribulus terrestris、アルギニン、Avena sativa、ホーニーゴートウィード(horny goat weed)、マカ根、ムイラプ
アマ、ノコギリヤシ、およびスウェーデンフラワーポーレン(Swedish flower pollen);
ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK2;テストステロンサプリメント、テストステロン経皮パッチ;ゾラキセル(zoraxel)、ナルトレキソン、ブレメラノチドおよびメラノタン
II。
【0181】
(26)PGD2受容体アンタゴニスト。
(27)免疫抑制薬、例えば、シクロスポリン(シクロスポリンA、Sandimmune(登録商標)、Neoral(登録商標))、タクロリムス(FK-506、Prograf(登録商標))、ラパマイシン(Sirolimus(登録商標)、Rapamune(登録商標))および他のFK-506タイプの免疫抑制薬、ミコフェノレート、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標))。
【0182】
(28)非ステロイド性抗喘息薬、例えば、β2-アゴニスト、例えば、テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール、サルメテロール、ビトルテロールおよびピルブテロール;β2-アゴニスト-コルチコステロイドの組み合わせ、例えば、サルメテロール-フルチカゾン(Advair(登録商標)、ホルモテロール-ブデソニド(Symbicort(登録商標))、テオフィリン、クロモリン、クロモリンナトリウム、ネドクロミル、アトロピン、イプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、およびロイコトリエン生合成阻害薬(ジロートン、BAY1005)。
【0183】
(29)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、プロピオン酸誘導体、例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン);酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、オキシピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシンおよびゾメピラク;フェナム酸誘導体、例えば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸;ビフェニルカルボン酸誘導体、例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサル;オキシカム、例えば、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカム(tenoxican);サリチレート、例えば、アセチルサリチル酸およびスルファサラジン;およびピラゾロン、例えば、アパゾン、ベズピペリロン(bezpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾンおよびフェニルブタゾン。
【0184】
(30)シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、例えば、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、バルデコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブおよびルミラコキシブ;オピオイド鎮痛薬、例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィンおよびペンタゾシン。
【0185】
(31)抗糖尿病薬、例えば、インスリンおよびインスリン模倣薬;スルホニル尿素、例えば、グリブリド、グリベンクラミド、グリピジド、グリクラジド、グリキドン、グリメピリド、メグリナチド(meglinatide)、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキ
サミドおよびオラザミド(olazamide);ビグアニド、例えば、メトホルミン(Gluco
phage(登録商標));α-グルコシダーゼ阻害薬、例えば、アカルボース、エパルレスタット、ボグリボース、ミグリトール;チアゾリジノン化合物、例えば、ロシグリタゾン(Avandia(登録商標))、トログリタゾン(Rezulin(登録商標))、シグリタゾン、ピオグリタゾン(Actos(登録商標))およびエングリタゾン;インスリン増感薬、例えば、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾン;インスリン分泌促進物質、例えば、レパグリニド、ナテグリニドおよびミチグリニド;インクレチン模倣薬、例えば、エキセナチド(exanatide)およびリラグルチド;アミリン類似体、例えば、プラムリンチド;グルコース降下薬、例えば、ビオチンと組み合わされていてもよいピコリン酸クロム;ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチンおよびリナグリプチン。
【0186】
(32)HDLコレステロール上昇剤、例えば、アナセトラピブおよびダルセトラピブ。
(33)抗肥満薬、例えば、塩酸メタンフェタミン、塩酸アンフェプラモン(Tenuate(登録商標))、フェンテルミン(Ionamin(登録商標))、塩酸ベンズフェタミン(Didrex(登録商標))、酒石酸フェンジメトラジン(Bontril(登録商標)、Prelu-2(登録商標)、Plegine(登録商標))、マジンドール(Sanorex(登録商標))、オルリスタット(Xenical(登録商標))、塩酸シブトラミン一水和物(Meridia(登録商標)、Reductil(登録商標))、リモナバン(Acomplia(登録商標))、アンフェプラモン、ピコリン酸クロム;フェンテルミン/トピラマート、ブプロピオン/ナルトレキソン、シブトラミン/メトホルミン、ブプロピオンSR/ゾニサミドSR、サルメテロール、キシナホエート/プロピオン酸フルチカゾンなどの組み合わせ;塩酸ロルカセリン、フェンテルミン/トピラマート、セチリスタット、エキセナチド、リラグルチド、塩酸メトホルミン、シブトラミン/メトホルミン、ブプロピオンSR/ゾニサミドSR、CORT-108297、カナグリフロジン、ピコリン酸クロム、GSK-1521498、LY-377604、メトレレプチン、オビネピチド(obinepitide)、P-57AS3、PSN-821、キシナホ酸サルメテロール/プロピオン酸フルチカゾン、タングステン酸ナトリウム、ソマトロピン(組み換え型)、テサモレリン、テソフェンシン、ベルネペリト、ゾニサミド、ヘミシュウ酸ベロラニブ(beloranib hemioxalate)、インスリノトロピン、レスベラトロール、ソベチロム、テトラヒドロカンナビバリン、およびベータ-ラパコン。
【0187】
(34)アンギオテンシン受容体遮断薬、例えば、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、シレキセチル、エプロサルタン(eprosaran)、イルベサルタン、テルミサルタ
ン、オルメサルタン(olmesartran)、メドキソミル、アジルサルタンおよびメドキソミル
【0188】
(35)レニン阻害剤、例えばアリスキレンヘミフマル酸塩(aliskiren hemifumirate)

(36)中枢作用性アルファ-2-アドレナリン受容体アゴニスト、例えば、メチルドパ、クロニジン、およびグアンファシン。
【0189】
(37)アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、例えば、グアネチジンおよびグアナドレル。
(38)イミダゾリンI-1受容体アゴニスト、例えば、リン酸二水素リルメニジン(rimenidine)および塩酸モキソニジン水和物。
【0190】
(39)アルドステロンアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトンおよびエプレレノン。
(40)カリウムチャネル活性化因子、例えばピナシジル。
【0191】
(41)ドパミンD1アゴニスト、例えば、メシル酸フェノルドパム;他のドパミンアゴニスト、例えば、イボパミン、ドペキサミンおよびドカルパミン。
(42)5-HT2アンタゴニスト、例えばケタンセリン。
【0192】
(43)バソプレシンアンタゴニスト、例えばトルバプタン。
(44)カルシウムチャネル増感薬、例えば、レボシメンダン、またはニコランジルなどの活性化因子。
【0193】
(45)PDE-3阻害剤、例えば、アムリノン、ミルリノン、エノキシモン、ベスナリノン、ピモベンダン、およびオルプリノン。
(46)アデニル酸シクラーゼ活性化因子、例えばコルホルシンダロパート(dapropate)塩酸塩。
【0194】
(47)陽性変力薬、例えば、ジゴキシンおよびメチルジゴキシン;代謝性強心剤、例えばユビデカレノン;脳性ナトリウム利尿ペプチド、例えばネシリチド。
(48)勃起障害の処置に用いられる薬物、例えば、アルプロスタジル、アビプタジル、およびメシル酸フェントラミン。
【0195】
(49)肥満の処置に用いられる薬物、例えば、限定されるものではないが、塩酸メタンフェタミン(Desoxyn(登録商標))、塩酸アンフェプラモン(Tenuate(登録商標))、フェンテルミン(Ionamin(登録商標))、塩酸ベンズフェタミン(Didrex(登録商標))、塩酸フェンジメトラジン((Bontril(登録商標)、Prelu-2(登録商標)、Plegine(登録商標))、マジンドール(Sanorex(登録商標))およびオルリスタット(Xenical(登録商標))。
【0196】
(50)以下のタイプのような、アルツハイマー病および認知症の処置に用いられる薬物:
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ガランタミン(Razadyne(登録商標))、リバスチグミン(Exelon(登録商標))、ドネペジル(Aricept(登録商標))およびタクリン(Cognex(登録商標));
NMDA受容体アンタゴニスト、例えばメマンチン(Namenda(登録商標));および
オキシドレダクターゼ阻害薬、例えばイデベノン。
【0197】
(51)以下のタイプような精神医学的薬物療法:
ジプラシドン(GeodonTM)、リスペリドン(RisperdalTM)、 オ
ランザピン(ZyprexaTM)、バルプロエート;
ドパミンD4受容体アンタゴニスト、例えばクロザピン;
ドパミンD2受容体アンタゴニスト、例えばネモナプリド;
混合型ドパミンD1/D2受容体アンタゴニスト、例えばズクロペンチキソール;
GABA A受容体モジュレーター、例えばカルバマゼピン;
ナトリウムチャネル阻害薬、例えばラモトリギン;
モノアミンオキシダーゼ阻害薬、例えば、モクロベミドおよびインデロキサジン;
プリマバンセリン(primavanserin)、ペロスピロン;および
PDE4阻害薬、例えば、ロルミラスト(rolumilast)。
【0198】
(52)以下のタイプのような、運動障害または症状の処置に用いられる薬物:
カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害薬、例えばエンタカポン;
モノアミンオキシダーゼB阻害薬、例えばセレギリン;
ドパミン受容体モジュレーター、例えばレボドパ;
ドパミンD3受容体アゴニスト、例えばプラミペキソール;
デカルボキシラーゼ阻害薬、例えばカルビドパ;
他のドパミン受容体アゴニスト、例えば、ペルゴリド、ロピニロール、カベルゴリン;リチゴニド(ritigonide)、イストラデフィリン、タリペキソール、ゾニサミドおよびサフィナミド;ならびに
シナプス小胞アミントランスポーター阻害薬、例えばテトラベナジン。
【0199】
(53)以下のタイプのような、気分的もしくは情動的障害またはOCDの処置に用いられる薬物:
三環系抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、デシプラミン(Norpramin(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、アモキサピン(Asendin(登録商標))、ノルトリプチリンおよびクロミプラミン;
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えば、パロキセチン(Paxil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、およびシトラロプラム(Celexa(登録商標));
ドキセピン(Sinequan(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))およびアゴメラチン;
選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、例えば、ベンラファキシン、レボキセチンおよびアトモキセチン;ドパミン作動性抗うつ薬、例えば、ブプロピオンおよびアミネプチン。
【0200】
(54)以下のタイプのようなシナプス可塑性を増強するための薬物:
ニコチン性受容体アンタゴニスト、例えばメカミラミン;および
混合5-HT、ドパミンおよびノルエピネフリン受容体アゴニスト、例えばルラシドン。
【0201】
(55)ADHDの処置に用いられる薬物、例えばアンフェタミン;5-HT受容体モジュレーター、例えばボルチオキセチン、およびアルファ-2-アドレナリン受容体アゴニスト、例えばクロニジン。
【0202】
(56)中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害薬、例えば、サクビトリル、オマパトリラート;ならびに
(57)メチレンブルー(MB)。
キット
[00135]本明細書中に記載する化合物および医薬製剤は、キットに含有させることがで
きる。キットは、それぞれ個々にパッケージもしくは配合されている2以上の薬剤の単回
もしくは複数回用量、または組み合わせてパッケージもしくは配合されている2以上の薬剤の単回もしくは複数回用量を包含することができる。したがって、1以上の薬剤が第1の容器に存在することができ、キットは、所望により1以上の薬剤を第2の容器に包含することができる。容器または容器(複数)はパッケージ内に置かれ、パッケージは、所望により投与または用量の使用説明書を包含することができる。キットは、追加的な構成要素、例えば、シリンジ、または薬剤および希釈剤を投与するための他の手段、または他の配合手段を包含することができる。したがって、キットは、a)本明細書中に記載する化合物と、医薬的に許容しうるキャリヤー、ビヒクルまたは希釈剤とを含む医薬組成物;ならびにb)容器またはパッケージを含むことができる。キットは、所望により、本明細書中に記載する1以上の方法(例えば、本明細書中に記載する疾患および障害の1以上の予防または処置)での医薬組成物の使用方法を記載した使用説明書を含んでいてもよい。キットは、所望により、同時療法で使用するための本明細書中に記載する1以上の追加的薬剤を含む第2の医薬組成物、医薬的に許容しうるキャリヤー、ビヒクルまたは希釈剤を含んでいてもよい。本明細書中に記載する化合物を含む医薬組成物と、キットに含有される第2の医薬組成物は、所望により、同一の医薬組成物の中で組み合わせてもよい。
【0203】
[00136]キットは、医薬組成物を含有するための容器またはパッケージを包含し、分割
ボトルまたは分割ホイルパケットなどの分割容器を包含することもできる。容器は、例えば、紙もしくは段ボール製の箱、ガラスもしくはブラスチック製のボトルもしくはジャー、再封止可能な袋(例えば、別の容器に入れるための錠剤の“レフィル”を保持するためのもの)、または治療スケジュールに従ってパックから押し出すための個別用量を有するブリスターパックであることができる。単一剤形を市販するために、1より多くの容器を単一パッケージで一緒に用いることができるようにすることは、実現可能である。例えば、錠剤をボトルに入れ、これを箱に入れることができる。
【0204】
[00137]キットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックはパッケ
ージ業界で周知であり、医薬単位剤形(錠剤、カプセルなど)のパッケージに広く用いられている。ブリスターパックは一般に、透明プラスチック材料であることが好ましいホイルで覆われた比較的硬い材料のシートからなる。パッケージ工程中に、プラスチックホイルに凹部を形成する。凹部は、パッケージされる個々の錠剤またはカプセルのサイズおよび形状を有し、あるいは、パッケージされる複数の錠剤および/またはカプセルを収容できるサイズおよび形状を有していてもよい。つぎに、錠剤またはカプセルを適宜に凹部に置き、比較的硬い材料のシートによって、プラスチックホイルを、ホイルの、凹部が形成された方向とは逆の面において密封する。結果として、錠剤またはカプセルは、要望に応じて、プラスチックホイルとシートの間の凹部に個々に密封されるか、集合的に密封される。シートの強度は、凹部に手で圧力を加え、これにより凹部の位置でシートに開口部を形成することによって、錠剤またはカプセルをブリスターパックから取り出すことができるような強度であることが好ましい。その後、錠剤またはカプセルを前記開口部から取り出すことができる。
【0205】
[00138]投薬を受ける時期に関する情報および/または指示を含有する、医師、薬剤師
または被験対象に向けた書面による記憶補助手段が提供されることは、望ましい可能性がある。“1日用量”は、所定の日に摂取すべき単一の錠剤もしくはカプセルまたはいくつかの錠剤もしくはカプセルであることができる。キットが別個の組成物を含有する場合、キットの1以上の組成物の1日用量は1つの錠剤またはカプセルからなることができる一方、キットの他の1以上の組成物の1日用量は、いくつかの錠剤またはカプセルからなることができる。キットは、意図した使用順に1日用量を1つずつ分配するように設計されたディスペンサーの形態をとることができる。ディスペンサーは、さらにレジメンの服薬順守を促進するために、記憶補助手段を備えていることができる。そのような記憶補助手段の例は、分配し終えた1日用量の数を示す機械的計数器である。そのような記憶補助手
段の他の例は、液晶の読み出しと連結された電池式のマイクロチップメモリー、あるいは、例えば最後の1日用量を摂取した日付を読み出し、および/または次の用量を摂取すべき時期を思い出させる、可聴式リマインダー信号である。
【実施例0206】
[00139]実施例で提供される参考資料はすべて、本明細書中で参考として援用する。本
明細書中で用いるすべての略語、記号および慣例は、現代の科学文献で用いられているものと一致している。例えば、Janet S.Dodd,編集,The ACS Style Guide:A Manual for Authors and Editors,第2版,Washington,D.C.:American Chemical Society,1997参照。これを、全体として本明細書中で参考として援用する。本明細書中に記載する化合物は、Roberts et al.(Bioorg.Med.Chem.Lett.,21,6515-6518(2011))に従って調製した。
【0207】
実施例1:化合物の合成
中間体1 (1-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-カルボニトリル)
【0208】
【化15】
【0209】
表題化合物を2段階で合成した。
[00140]段階1:1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-カルボニトリルの合成
シアン化亜鉛(II)(1.0g、8.6mmol)および2-ヨード-1H-ピラゾ
ロ[3,4-b]ピリジン(1.4g、5.7mmol)を周囲温度においてDMF(40mL)中で混合し、窒素流を溶液中で5分間バブリングさせた。[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(Pd(dppf)Cl・CHCl)(0.33g、0.40mmol)を添加し、溶液をさらに10分間脱ガスした。反応物を正の窒素雰囲気下で維持し、130℃で48時間加熱した。混合物を周囲温度まで冷却し、濾過し、残渣を酢酸エチルで洗浄した。合わせた濾液をCelite(登録商標)上で減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(20~70% EtOAc/ヘキサン勾配)で精製して、表題化合物を淡黄色固体として得た(0.51g、収率62%)。
1H NMR (500 MHz,メタノール-d4)δ(ppm) 8.67 (dd, 1 H), 8.34 (dd, 1 H), 7.44 (dd, 1 H).
[00141]段階2:1-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-1H-ピラゾ
ロ[3,4-b]ピリジン-3-カルボニトリルの合成
DCM/THF(1:1、4.0mL)中のトリフェニルホスフィン(0.19g、0.72mmol)の溶液を0℃に冷却し、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)
(0.14mL、0.72mmol)を2分間かけて滴下して加えた。30分後、0℃において、反応混合物をTHF(4.0mL)中の(2-メチルピリミジン-5-イル)メタノール(0.09g、0.72mmol)および1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-カルボニトリル(0.08g、0.56mmol)の溶液に加えた。得られた混合物を3時間かけて周囲温度まで温めた。反応物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(3×10mL)およびブラインで洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィー(25~100% EtOAc/ヘキサン勾配)による精製により、表題化合物を白色固体として得た(89mg、収率64%)。
1H NMR (500 MHz,クロロホルム-d)δ(ppm)8.81 (s, 2 H), 8.72 (dd, 1 H), 8.23 (dd, 1
H), 7.41 (dd, 1 H), 5.77 (s, 2 H), 2.74 (s, 3 H).
[00142]以下の関連中間体は、市販されているか、または文献の方法に従って合成した
(Roberts,L.R.et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.2011,21,6515-6518)。
【0210】
1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-カルボニトリル;
8-(2-フルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリミジン-6-カルボニトリル;
7-(2-フルオロベンジル)イミダゾ[1,5-b]ピリダジン-5-カルボニトリル;
1-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-カルボニトリル;
1-(ピリミジン-5-イルメチル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-カルボニトリル;および
1-(2-フルオロベンジル)イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-カルボニトリル。
化合物I-1
【0211】
【化16】
【0212】
[00143]この化合物は一般手順Aにより合成した。
[00144] 無水エタノール(3.0mL)(注:無水メタノールを溶媒として用いることもできる)中の1-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-カルボニトリル(中間体1、85mg、0.34mmol)の溶液に、無水ヒドラジン(0.10g、3.2mmol)を加えた。周囲温度で3日間撹拌した後、60℃で1日間撹拌すると、出発材料の完全な消失が観察された。反応物を減圧濃縮し、残渣を一晩減圧乾燥した。残渣をDCM(5.0mL)に取り、2,2,2-トリフルオロ酢酸無水物(0.05mL、0.34mmol)を滴下して加えた。この反応物を、アミドラゾン中間体が完全に消費されるまで周囲温度で攪拌した。トルエン(5.0mL)を加えた後、三塩化ホスホリル(0.10mL、1.0mmol)を滴下して加えた。
【0213】
[00145]得られた混合物を、密封バイアル中、65℃で30分間加熱した。反応混合物
をEtOAc(100mL)に注ぎ入れ、10%NaHCO水溶液(2×10mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥し、濾過し、減圧
濃縮した。カラムクロマトグラフィー(30~100% EtOAc/ヘキサンの勾配)により精製して、表題化合物を白色固体として得た(74mg、収率60%)。
1H NMR (500 MHz,クロロホルム-d)δ(ppm)14.5 (br s, 1 H), 9.03 (s, 2 H), 8.83 (dd,
1 H), 8.72 (dd, 1 H), 7.40 (dd, 1 H), 5.84 (s, 2 H), 2.87 (s, 3 H).
化合物I-2
【0214】
【化17】
【0215】
[00146]一般的手順Aに従って白色固体(54mg、収率40%)として合成した。反
応条件(試薬比、温度および反応時間など)は、必要に応じて変更した。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 15.7 (br s, 1 H), 8.76 (dd, 1 H), 8.67 (dd, 1 H), 7.50 (dd, 1 H), 7.37 (m, 1 H), 7.24 (m, 1 H), 7.21 (m, 1 H), 7.16 (app. t, 1 H), 5.90 (s, 2 H).
化合物I-3
【0216】
【化18】
【0217】
[00147]一般的手順Aに従って白色固体(85mg、収率58%)として合成した。反
応条件(試薬比、温度および反応時間など)は、必要に応じて変更した。
1H NMR (500 MHz,メタノール-d4)δ(ppm) 9.29 - 9.35 (m, 1 H), 7.63 - 7.69 (m, 1 H), 7.29 - 7.35 (m, 1 H), 7.19 - 7.26 (m, 1 H), 6.92 - 7.11 (m, 4 H), 4.35 (d, 2 H).
化合物I-4
【0218】
【化19】
【0219】
[00148]一般的手順Aに従って白色固体(34mg、収率58%)として合成した。反
応条件(試薬比、温度および反応時間など)は、必要に応じて変更した。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 15.6 (br s, 1 H), 9.22 (d, 1 H), 8.67 (s, 2 H),
7.96 (d, 1 H), 7.10 (m, 2 H), 4.33 (s, 2 H), 2.56 (s, 3 H).
化合物I-5
【0220】
【化20】
【0221】
[00149]文献の方法(Roberts,L.R.et al. Bioorg. Me
d.Chem.Lett.2011,21,6515-6518)に従って黄褐色固体(800mg)として合成した。反応条件(試薬比、温度および反応時間など)は、必要に応じて変更した。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 15.60 (s, 1 H), 9.22 (d, 1 H), 9.05 (s, 1 H), 8.80 (s, 2 H) 7.99 (d, 1 H), 7.08 - 7.14 (m, 2 H), 4.40 (s, 2 H).
化合物I-6
【0222】
【化21】
【0223】
[00150]一般的手順Aに従って黄色固体(12mg、収率24%)として合成した。反
応条件(試薬比、温度および反応時間など)は、必要に応じて変更した。
1H NMR (500 MHz,メタノール-d4)δ(ppm) 8.58 (dd, 1 H), 8.36 (dd, 1 H), 7.25 - 7.3
3 (m, 2 H), 7.07 - 7.13 (m, 2 H), 6.99 (dd, 1 H), 4.58 (s, 2 H).
化合物I-7
【0224】
【化22】
【0225】
[00151]無水メタノール(3.0mL)中の8-(2-フルオロベンジル)イミダゾ[
1,5-a]ピリミジン-6-カルボニトリル(110mg、0.44mmol)の溶液に、無水ヒドラジン(0.08mL、2.7mmol)を加えた。周囲温度で46時間攪拌した後、出発材料の完全な消失が観察された。反応物を減圧濃縮し、残渣を一晩減圧乾燥した。残渣(5-アミノ-4-(2-フルオロベンジル)-1H-イミダゾール-2-カルボキシイミドヒドラジド)をTHF(3.0mL)に取り、2,2,2-トリフルオロ酢酸無水物(0.07mL、0.54mmol)を滴下して加えた。追加量の2,2,2-トリフルオロ酢酸無水物(0.05mL、0.36mmol)を添加して、アミドラゾン中間体の完全な消費を促した。反応物を減圧濃縮し、残渣をDCM/トルエン(比率1:1、6.0mL)に溶解した後、三塩化ホスホリル(0.13mL、1.3mmol)を滴下して加えた。反応混合物を、密封バイアル中、75℃でで一晩加熱した。周囲温度に冷却した後、NaOH水溶液(1.0N、15mL)およびDCM(20mL)を加えた。3日間攪拌した後、得られた混合物を6.0N HCl溶液で約6~7のpHに中和し、DCM/イソプロパノール(比率5:1、4×30mL)で抽出した。有機層を合わせたものをNaSO上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色オイルを得た。残渣(4-(2-フルオロベンジル)-2-(3-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)-1H-イミダゾール-5-アミン)を無水エタノール(4.0mL)に取り、1,1,3,3-テトラメトキシプロパン(0.37mL、2.2mmol)で処理した。マイクロ波中で5時間加熱した後、追加量の1,1,3,3-テトラメトキシプロパン(0.18mL、1.1mmol)を加え、混合物をマイクロ波中でさらに6時間加熱した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を逆相分取HPLC(添加剤として0.1%ギ酸を含む30~80%アセトニトリル/水の勾配)を用いて精製して、表題化合物(6.4mg、収率4.0%)を黄褐色固体として単離した。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 15.8 (br s, 1 H), 9.42 (dd, 1 H), 8.45 (dd, 1 H), 7.31-7.23 (m, 2 H), 7.19-7.14 (m, 2 H), 7.09 (app. t, 1 H), 4.38 (s, 2 H).
[00152]化合物I-8~I-16の合成は、Roberts,L.R.et al.
Bioorg.Med.Chem.Lett.2011,21,6515-6518に記載されている。
実施例2:384ウェル形式のcGMP GloSensor細胞ベースのアッセイによる生物学的活性測定
[00153]GloSensorTM 40F cGMP(品番:CS182801、Pr
omega)を発現するヒト胎児腎細胞(HEK293)細胞を用いて、試験化合物の活性を評価した。これらの細胞に組み込まれた発光性バイオセンサー(人工的ルシフェラーゼ)は、sGC酵素を刺激する化合物によって形成されるcGMPを検出し、ルミネセンスを放出する。
【0226】
[00154]cGMP GloSensor細胞を、ウシ胎仔血清(FBS、最終的に10
%)およびハイグロマイシン(200μg/mL)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で保持した。アッセイ前日に、細胞を、ポリ-D-リシンでコーティングした384ウェルの白色平底プレート(Corningカタログ番号35661)において、50μL容量の10%FBSを含むDMEMに1.5×10細胞/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を、5%のCOを含む加湿チャンバーにおいて37℃で一晩インキュベートした。翌日、培地を除去し、細胞を、40μL/ウェルのGloSensorTM 、2mM(Promegaカタログ番号E1291)で置き換えた。細胞を25℃で90分間処理して、基質が細胞中で平衡化するのを可能にした。試験化合物およびジエチレントリアミンNONOエート(DETA-NONOエート)を、血清を含まないCO非依存性培地で3mM(20×)に希釈し、4倍希釈で連続的に希釈して5倍用量曲線を作成し、ここから10μLをウェルに加えた(試験化合物溶液ではxμM濃度で、DETA-NONOエート溶液では10μM濃度;xは以下の最終濃度の1つである:30μM、7.5μM、1.9μM、469nM、117nM、29.3nM、7.3nM、1.83nM、0.46nM、0.11nM、0.03nM)。
【0227】
[00155]動態研究では、すぐにEnvision(Perkin Elmer)を用い
て1ウェルあたり0.2秒にわたりルミネセンスを測定した。エンドポイントSARスクリーニングについては、室温で55分間インキュベートした後にデータを収集した。
【0228】
[00156]データは、以下の式を用いて高コントロールに対し正規化した:100×(試
料-低コントロール)/(高コントロール-低コントロール)、式中、低コントロールは1%DMSOで処理した16試料の平均であり、高コントロールは30μMの以下に示す化合物Yで処理した16試料の平均である。すべての化合物について、GraphPad
Prismソフトウェアv.5.n=2を用い、4パラメーターフィット(log(ア
ゴニスト)対反応-変数勾配)を用いてデータをフィットさせた。絶対(Abs)EC50を曲線フィットから内挿し、上記のようなデータ正規化後、所定の化合物が高コントロール反応の50%を引き起こす濃度として定義する。50%の最小反応を引き起こすことができない化合物を>30μMまたはNDとして報告する。2回または2回より多いn回繰り返して実施した化合物の場合、本明細書中に示した結果は、得られたいくつかの結果の幾何平均である。表2に、このアッセイで本発明の選択された化合物について得られた結果をまとめる。
【0229】
【化23】
【0230】
【表9】
【0231】
GloSensorアッセイによって決定されるHEK細胞におけるsGC酵素活性の値。(~)sGC酵素活性の値に関するコード定義、これに関し、sGC酵素活性は、データ正規化後に所定の化合物が高コントロール反応(化合物Y)の50%をもたらす濃度として定義される絶対EC50で表わされる:Abs EC50≦10nM=A;10nM<Abs EC50≦100nM=B;100nM<Abs EC50=C。50%の最小反応を引き起こすことができない化合物を>30μMまたはNDとして報告する。
実施例3:cGMP神経細胞ベースのアッセイによる生物学的活性測定
[00157]ラット一次ニューロンを、妊娠18日目の雌Sprague-Dawleyの
胎仔から単離した。胎仔をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に収集し、脳を迅速に取り出した。脳海馬を単離し、機械的に破砕した。さらに、37℃において15分間、Ca2+およびMg2+を含まないHBSS中の0.25%(重量/体積)トリプシン溶液で組織消化を実施した。トリプシン処理の後、細胞を洗浄し、0.5mM L-グルタミン、12.5μMグルタミン酸、2%B-27および100U/mLペニシリン、および100μg/mLストレプトマイシンを補充したneurobasal培地に再懸濁化した。細胞を、ポリ-D-リシンでコーティングした384ウェルの透明平底プレート(Corningカタログ番号354662)に、4×10細胞/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を、5%のCOを含む加湿チャンバーにおいて37℃で6~7日間インキュベートした。培地を除去し、細胞を、Ca2+およびMg2+を含有するHBSSで1回洗浄し、0.5mM IBMXを含有する40μLのHBSSで置き換え、37℃で15分間インキュベートした。ジエチレントリアミンNONOエート(DETA-NO)を含む試験化合物の5×保存溶液を10μL加えた。DETA-NOの最終濃度は30μMであった。細胞を37℃で20分間インキュベートした。培地を除去し、50μLの氷冷10%酢酸を加え、4℃で60分間インキュベートした。4℃で5分間、ペレット細胞デブリに1000×gで遠心分離した後、上清を清浄なプレートに吸引し、試料をcGMP含量に関し分析した。LC-MS/MSを用いて各試料からcGMP濃度を決定した。
【0232】
[00158]データは、以下の式を用いて高コントロールに対し正規化した:100×(試
料-低コントロール)/(高コントロール-低コントロール)、式中、低コントロールは1%DMSOで処理した15試料の平均であり、高コントロールは10μMの公知のsGC刺激剤化合物Y(実施例2で図示)で処理した15試料の平均である。すべての化合物について、GraphPad Prismソフトウェアv.5.n=2を用い、4パラメ
ーターフィット(log(アゴニスト)対反応-変数勾配)を用いてデータをフィットさせた。絶対EC50を曲線フィットから内挿し、データ正規化後、所定の化合物が高コントロール反応の50%を引き起こす濃度として定義する。50%の最小反応を引き起こすことができない化合物を>30μMとして報告する。2回または2回より多いn回繰り返
して実施した化合物の場合、本明細書中に示した結果は、得られたいくつかの結果の幾何平均である。表3に、このアッセイで本発明の選択された化合物について得られた結果をまとめる。
【0233】
【表10】
【0234】
ニューロンに基づく細胞アッセイ。AbsEC50≦100nM=A;100nM<AbsEC50≦1000nM=B;1000nM<AbsEC50=C。50%の最小反応を引き起こすことができない化合物を>30μMまたはNDとして報告する。
実施例4:ラット脳脊髄液(CSF)薬物動態特性
プロトコル:
[00159]ラットのPKを経口投与後に決定した。経口(PO)投与の実験では、大槽に
留置カテーテルを取り付けた6匹の雄Sprague-Dawleyラットの群を用いた。PO群には、PEG400中の溶液として配合した化合物を3または10mg/kgで投与した。PO用量は強制経口飼養により投与し、シリンジおよび強制飼養チューブを用いて胃に送達させた。経口投与量の投与後、全用量を確実に完全に送達させるために、強制飼養チューブを約0.5mLの水でフラッシュした。
【0235】
[00160]血漿およびCSF試料を以下のように収集した:CSFおよび血液の試料を、
投与の1時間後および2時間後に収集した。CSF試料(0.05mL)は槽内カテーテルにより収集した。血液試料(0.25mL)は眼窩後サンプリングにより収集した。これらの試料を、血漿について処理するまで氷上で保持した。血液試料は、収集後1時間以内に、約5℃において3200rpmで5分間遠心分離した。血漿を96ウェルプレートチューブ(0.125mL)に直接移した。チューブに栓蓋を付け、管を約-70℃で凍結させ、分析まで保管した。
【0236】
[00161]血漿を収集し、化合物の存在について分析した。
化合物の定量
[00162]当該化合物および内部標準を、沈殿により血漿およびCSFから抽出した。試
料は、エレクトロスプレーイオン化を用いるタンデム質量分析検出(MS/MS)を備える液体クロマトグラフィー(LC)を用いて分析した。標準曲線範囲は1~1000ng/mLであった。このアッセイにおける本実施例に記載する化合物の結果を、以下の表4に例示する。
【0237】
[00163]Kp,uuを、CSF中の非結合薬物と血漿中の非結合薬物の濃度比と定義す
る。血漿中の非結合薬物(または遊離血漿濃度)は、全血漿濃度に、血漿タンパク結合によって決定される非結合率をかけることにより計算する。その後、CSF濃度を遊離血漿濃度で割って、Kp,uuを決定する(Di et al.,J.Med.Chem.,
56,2-12(2013)参照)。
【0238】
【表11】
【0239】
実施例5:R6/2マウス海馬スライスにおけるシナプス伝達および可塑性の障害に対する本発明の化合物の評価
[00164]長期増強(LTP)によって測定されるシナプス伝達および可塑性の改善は、
記憶力の増強に対する化合物の可能性を示すと考えられる。LTPは、一般に学習および記憶を推進する細胞現象と称される電気生理学的現象である。
【0240】
[00165]プロトコル。
[00166]急性マウス海馬スライスの調製。実験は、Jackson Laborato
ry(米国)によって提供された11~12週齢のR6/2およびWTマウスで行った。海馬スライス(厚さ350μm)は、氷冷酸素化スクロース溶液(mMでサッカロース 250、グルコース 11、NaHCO 26、KCl 2、NaHPO 1.2、MgCl 7、およびCaCl 0.5)中でMacllwain組織チョッパーで切断した。スライスを、室温において、以下の組成のACSF中で1時間インキュベートした:mMで、グルコース 11、NaHCO 25、NaCl 126、KCl 3.5、NaHPO 1.2、MgCl 1.3、およびCaCl 2。その後、スライスを少なくとも1時間にわたり回復させた。
【0241】
[00167]スライスの潅流および温度制御。実験中、蠕動ポンプを用いて、スライスを3
mL/分の速度でACSF(95%O-5%COでバブリング)で継続的に潅流した(MEAチャンバー体積:~約1mL)。MEAチャンバーの完全な溶液交換は、溶液のスイッチ後20秒で達成した。潅流液は、加熱潅流カニューレ(PH01、MultiChannel Systems、Reutlingen、ドイツ)を用いて、MEAチャンバーに達する直前に継続的に37℃で予熱した。MEAチャンバーの温度は、MEA増幅器のヘッドステージに位置する加熱素子で37±1℃に維持した。
【0242】
[00168]刺激プロトコル/化合物の施用
[00169]入力/出力(I/O)曲線:100μAきざみで100~800μA。その後
、短期および長期シナプス可塑性測定では、刺激強度を250μAの固定値に設定した。
【0243】
[00170]短期可塑性特性:刺激間隔が短くなっていく(例えば、300ミリ秒、200
ミリ秒、100ミリ秒、50ミリ秒、25ミリ秒)2つのパルスを施用した。化合物の施用:fEPSPを対照条件で10分間記録し(ベースラインの安定性を確認するため)、続いて化合物に15分間(または、対照スライスのみビヒクルの存在下で25分間)暴露した。第2のI/Oプロトコルおよび対パルスプロトコルを、上記のように、化合物の継続的存在下で施用した。
【0244】
[00171]長期増強(LTP):10分間の対照期間(化合物または対照スライスの場合
はビヒクルの存在下)の後、10×TBSによりLTPを誘発した。その後、シナプス伝達の増強を、さらに60分間モニタリングした(化合物または対照スライスの場合はビヒクルの継続的存在下で)。
【0245】
[00172]結果
[00173]I/O特性は、855nMの化合物I-5をR6/2海馬スライスに暴露した
後、有意に高かった(p値=0.0416、双方向ANOVA)。対パルス特性は、855nMの化合物I-5をR6/2海馬スライスに暴露した後、有意に高かった(p値<0.001、双方向ANOVA)。855nMの化合物I-5を15分間暴露しても、fEPSPの振幅は変化しなかった。
【0246】
[00174]WTマウス海馬スライス(対照条件)において、HFSは、約35%で安定化
した誘発-応答振幅の増強をもたらした(終点で、fEPSPは36±5%増大した)。R6/2マウス海馬スライス(対照条件)では、HFSは、約15%で安定化した誘発-応答振幅の増強をもたらした(終点で、fEPSPは15±2%増大した)。855nMの化合物I-5への暴露後、HFSは、約40%の誘発応答振幅の増強をもたらした(終点で、fEPSPは40±6%増大した)。(図1)したがって、R6/2スライスにおける増強は、R6/2対照スライスと比較して有意に増大した(p値=0.0002、双方向ANOVA)。
【0247】
[00175]結論。
[00176]I/O特性および対パルス特性は、R6/2マウス海馬スライスを855nM
の化合物I-5に暴露した後、増大した。855nMの化合物I-5は、15分の暴露期間では、R6/2マウス海馬スライスにおける基底シナプス伝達に対し効果がなかった。海馬R6/2スライスのLTP欠損は、855nMの化合物I-5への暴露後にWT海馬スライスのLTPの振幅レベルに回復した。
実施例6:マウス脳における化合物誘発性cGMP
[00177]目的。マウス脳のさまざまな領域(皮質、海馬、小脳および線条体)において
、cGMP応答における本発明の化合物の効果を決定すること。
【0248】
[00178]プロトコル。マウス(実験条件につきn=9~10)に、ビヒクル(1%ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース、0.2% Tween 80、0.5%メチルセルロース)を経口投与し、10mg/Kgの化合物I-2を経口投与した。投与の30分後、イソフルラン麻酔下で各マウスを断頭し、脳を取り出し、どろどろした解剖溶液(95%O・5%COで飽和)を含有する氷冷したペトリ皿内に置いた。氷冷したスパチュラを用いて、脳を、以下の図で図示するような(単に概要を示すためのもので、縮尺どおりではない)、1mm間隔でスライスするためのコロナル空間を備えるマウス用ブレインマトリックスに移した。
【0249】
【化24】
【0250】
[00179]スライスした脳を、IBMX 0.5mMを含むどろどろした解剖溶液(95
%O/5%COで飽和)を含有するペトリ皿内に戻した。背側線条体を最初に切り出した後、2番目に海馬、つづいて3番目に内側前頭前皮質、最後に、小脳を4番目に切り出す。各領域を切り出した後、組織の“大きな塊”を、迅速に、予め30分間ドライアイ
ス上に置いておいたエッペンドルフに入れた。組織の小片は、非常に速く、約10秒以内に凍結した。すべての領域をエッペンドルフに入れた後、液体窒素に浸漬することによりエッペンドルフを急速凍結させた。組織試料を-80℃で保管した。脳のcGMPレベルをLC/MSにより決定した。脳試料を、超音波プローブを用いて、80:20(体積/体積%)の水:酢酸からなる水性緩衝液中でホモジナイズした。sGC化合物およびまたはcGMPを含有する脳ホモジネートを、内部標準(IS)を含有する有機溶媒でのタンパク質沈殿の後、濾過し、Phenomenex(登録商標)PhreeTMリン脂質除去プレートを用いてリン脂質を除去することにより、脳組織から抽出した。試料を、エレクトロスプレーイオン化を用いるタンデム質量分析検出(MS/MS)を備える液体クロマトグラフィー(LC)を用いて分析した。cGMPおよびまたはsGC化合物(1以上)の定量に用いられる標準曲線濃度は、0.2~400ng/mLであった。脳試料のタンパク質の定量は、BCAタンパク質アッセイキットを用いて決定した。
【0251】
[00180]結論:マウスに10mg/Kgの化合物I-2を急性経口投与すると、海馬(
ANOVA p=0.0022;ビヒクル対化合物I-2 p=0.0035)、小脳(ANOVA p<0.0001;ビヒクル対化合物I-2 p=0.0001)および皮質(ANOVA p=0.012;ビヒクル対化合物I-2 p=0.017)においてcGMPの有意な増大が生じた。
【0252】
【表12】
【0253】
【表13】
【0254】
【表14】
【0255】
【表15】
【0256】
実施例7.新規物体認識(NOR)試験
[00181]目的。MK-801によって引き起こされる記憶障害の逆転における本発明の
化合物の有効性を、雄Long Evansラットでの新規物体認識(NOR)試験を用いて評価する。NORは、認識、学習および記憶回復の試験であり、見慣れた物と比較して新規物体を探索するという、げっ歯類の自発的な優先傾向を活用するものである(EnnaceurおよびDelacour,1988)。研究により、NOR手順には、嗅周皮質(Ennaceur et al.1996,1997およびAggleton et al.1997)および海馬(Wood et al.1993およびClark et al.2000)を含む、いくつかの脳領域が関与することが示されている。NOR試験は、新規試験化合物の潜在的な認知増強特性を評価するために幅広く採用されてきた。NORのパラダイムに褒美または有害刺激は関与しないので、ヒト臨床試験で行われている類似試験に変換したときにもたらされる交絡変数が少ない。本試験では、記憶保持モデルを用いて新規化合物を試験した--NMDA受容体の非競合的アンタゴニストであるMK-801(ジゾシルピン)を用いて、認識記憶の欠損を引き起こした。本発明の化合物を、記憶障害の逆転における有効性により評価した。
【0257】
[00182]材料および方法。
[00183]動物。成体雄Long-Evansラット(インディアナ州Indianap
olisのEnvigoから到着時に275~299グラム)を本試験に用いた。ラットを実験室に置き、独自の識別番号(テイルマーク)を割り当てた。ラットを、上部にフィルターが付いているポリカーボネート製ケージに、1ケージあたり2匹ずつ収容し、試験前に少なくとも7日間にわたり順化させた。動物飼育室は、12/12時間の明/暗周期(東部標準時間の07:00に点灯)、22±1℃、および約50%の相対湿度が維持されていた。食餌および水は自由に提供した。試験前にすべての動物を検査し、馴らし、体重測定して、適切な健康状態であることを保証し、試験に関係する非特異的ストレスを最小限に抑えた。各動物を、処置群に無作為に割り当てた。実験は、動物の明周期段階で行
った。
【0258】
[00184]試験化合物。本試験には以下の化合物を用いた:
[00185]MK-801(0.1mg/kg;Sigma-Aldrich)を生理食塩
水に溶解し、NOR訓練の15分前に腹腔内注射した。
【0259】
[00186]ガランタミン(1mg/kg;Tocris)を生理食塩水に溶解し、訓練の
15分前に腹腔内注射した。
[00187]化合物I-2(0.1、1および10mg/kg)を訓練の60分前に経口投
与した。ビヒクルは、濾過水中の0.5%メチルセルロース、0.2% Tweenおよび1% HPMCであった。投与容量は4mL/kgであった。
【0260】
[00188]実験手順。NOR試験は、照明を薄暗くした防音室に置いたオープンフィール
ドアリーナ(40×40cm)で実施した。各ラットを別個に試験し、試験間およびラット間にアリーナおよび試験物体を70%アルコールで清浄にすることにより、嗅覚/味覚によるきっかけを取り除くように配慮した。すべての訓練および試験を録画し、処置内容を知らない観察者が採点した。
【0261】
[00189]1日目および2日目に、5分間の馴化期間にラットを放置してアリーナ(内部
に物体なし)を自由に探索させた。3日目(訓練および試験日)に、ラットにビヒクル(生理食塩水)、ガランタミンまたは化合物溶液、つづいてMK-801またはビヒクル(生理食塩水)を投与した。前処置時間の後、各動物を、2つの同一物体が存在する試験アリーナに置いた。各ラットを、アリーナ内の同じ位置に同じ方向を向くように置き、3分の訓練期間(T1)中に物体を積極的に探索するのにかけた時間を記録した。訓練後、ラットをホームケージに戻した。NOR試験(T2)は、T1の1時間後に実施した。各ラットを、見慣れた物体が1つと新規物体が1つ存在している試験アリーナに5分間戻して置き、両物体を探索するのにかけた時間を、0~1、0~3、および0~5分の時間範囲中に記録した。T2での物体の提示順序および位置(左/右)はラット間で無作為化して、順序または場所の優先傾向からの先入観を防止した。
【0262】
[00190]統計解析。NOR試験(T2)のデータを認識指数として表した。これは、試
験期間中に両物体の探索にかけた合計時間に対する、新規物体の探索にかけた時間の比(新規/(見慣れた物+新規)×100%)として定義される。データは、一方向ANOVA、つづいてFisherのLSD post hoc試験を用いて、0~1、0~3および0~5分の時間範囲で別個に、有意性をp<0.05に設定して解析した。5分の試験期間中の全体的物体探索時間が10秒未満だった動物は排除した;認識指数が90%を超えるか30%未満であったラットも、2つの物体間に強い(非記憶)先入観が示唆されるため排除した。そして、平均値からの2つの標準偏差を超えるかそれ未満である統計的異常値は、最終解析から除去した。
【0263】
[00191]結果。本試験では、いずれの用量でも明らかな副作用を示したラットはなかっ
た。ラットは、正常な覚醒状態、活動および物体に対する探索レベルを維持した。ANOVAは、0~1分の時間範囲中に認識指数において有意でない主要処置効果を示した[F(5.79)=1.305、P>0.05]。これは、おもに、MK-801処置ラットがこの時間範囲で比較的良好な認識記憶を維持するためであった。試験開始時は物体の“新規性”および“見慣れている状態”が比較的はっきりしているため、0~1分でのこの結果は、このバージョンのNORで稀ではない。通常、記憶増強剤を施用しない限り、ラットは徐々に悪化していく。0~3分の時間範囲中、ANOVAで有意な主要処置効果が見いだされた[F(5.79)=4.237、P<0.01]。Post hoc試験は、認識指数がチャンスレベル(50%)に近づき、0.1mg/kgのMK-801が強い記憶障害を引き起こすことを示した。ガランタミン(1mg/kg)および0.1mg/kgでの化合物I-2は、MK-801が誘発した記憶障害を有意に逆転させた(ビヒクル/MK-801群と比較して、それぞれP<0.001およびP<0.05)。同様に、0~5分の時間範囲中、ANOVAで有意な主要処置効果が示された[F(5.79)=3.851、P<0.01]。Post hoc試験は、認識指数がチャンスレベル(50%)に近づき、0.1mg/kgのMK-801が強い記憶障害を引き起こすことを示した。ガランタミン(1mg/kg)および0.1mg/kgでの化合物I-2は、MK-801が誘発した記憶障害を有意に逆転させた(ビヒクル/MK-801群と比較して、それぞれP<0.001およびP<0.05)。
【0264】
【表16】
【0265】
[00192]まとめ。参照化合物であるガランタミン(1mg/kg)は、0.1mg/k
gのMK-801によって誘発された認知障害を有意に逆転させ、試験の妥当性を示唆している。0.1mg/kgでの化合物I-2は、MK-801の処置後のNOR記憶保持において有効性を示しており、この化合物が記憶増強特性を持つことを示唆している。
実施例8:ラット一次ニューロンにおけるpCREBリン酸化反応
[00193]目的。ラット一次ニューロンにおいてcAMP応答配列結合タンパク(CRE
B)を活性化する、化合物I-5の能力を評価する。CREBは細胞転写因子である。それは、cAMP応答配列(CRE)とよばれるDNA配列に結合し、下流遺伝子の転写を調節する(Bourtchuladze R,et al.,Cell 1994;79
(1):59-68参照)。CREBは脳での神経可塑性および長期記憶形成において十分に裏付けされた役割を有し、空間記憶の形成に不可欠であることが示されている(Silva AJ,et al.,Annual Review of Neuroscience 1998;21:127-148参照)。CREBタンパクは、さまざまなキ
ナーゼ、例えば、cAMP-依存性プロテインキナーゼまたはプロテインキナーゼA(PKA)、cGMP依存性プロテインキナーゼまたはプロテインキナーゼG(PKG)、およびCa2+/カルモジュリン-依存性プロテインキナーゼによる、セリン133のリン酸化によって活性化される(Shaywitz AJおよびGreenberg ME,Annual Review of Biochemistry 1999;68 (1):821-861ならびにWong JC,et al.,J Cell Bioch
em 2012:113(11):3587-98参照)。CREBの刺激は、認知、神経可塑性、およびまたは神経機能が損傷を受けている疾患で、治療的に有効であると思われる。
【0266】
[00194]材料および方法
[00195]化合物。化合物I-5を10mM溶液としてDMSOに溶解し、-20℃で保
存した。望ましい試験濃度を達成するために、保存濃度を連続的にDMSOで希釈した後、アッセイ緩衝液中で適した濃度に希釈した。
【0267】
[00196]ラット一次ニューロン培養。胎生18日(E18)のSprague-Daw
leyラット胎仔からニューロンを単離した。各ラットから約10匹の胎仔を得て、胎仔から全脳を単離した。海馬および皮質は、2本の精密ピンセットを用いて実体顕微鏡下で脳から切り出した。髄膜を慎重に除去した。切り出した後、組織をチョッパーにかけ、15mLコニカルチューブ内で10mLのCa2+およびMg2+を含まないハンクス溶液(HBSS、Corningカタログ番号21-022-CM)を用いて静かに1回洗浄した。洗浄後、0.25%トリプシン(Invitrogenカタログ番号15090-046)および0.1%デオキシリボヌクレアーゼI(DNase I、Sigmaカタログ番号DN-25)の溶液5mLをチューブ内の組織に加えた後、これを37℃で15分間インキュベートした。インキュベーションおよび酵素消化の後、組織を氷冷HBSSで3回洗浄した。洗浄後、0.1%のDNase Iの溶液3mLをチューブに加え、ガラス製パスツールピペットを用いて組織をゆっくり12回取り出し、つづいて500×gで10分間遠心分離した。細胞ペレットを培地(Neurobasal medium、Gibcoカタログ番号21103-049)、2%のB27サプリメント(Gibcoカタログ番号17504-044)、0.5mM L-グルタミン(Corningカタログ番号25-005-Cl)、25μM L-グルタミン酸(Sigmaカタログ番号G1251)および1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibcoカタログ番号15070-063)に再懸濁化した。その後、細胞懸濁液を、ポリ-D-リシンでコーティングした96ウェルのプレートに、100000細胞/ウェルでプレーティングした。プレーティングの24時間後、培地の半分を取り出し、上記どおりであるがグルタミン酸を含まない培地で置き換えた。細胞を、5%のCOを含む37℃の加湿インキュベーターで保持し、6~10日目の間に使用した。
【0268】
[00197]アッセイ条件。化合物I-5を、100% DMSO中で最終アッセイ濃度の
100倍に希釈した。アッセイの直前に、化合物I-5を、100μM DETA-NONOエート(最終アッセイ濃度の10倍)を含有するHBSS(カルシウムおよびマグネシウム含有)(最終アッセイ濃度の10倍)中に10倍希釈した。培地を取り出し、細胞を90μL HBSS(Corningカタログ番号21-023-CV)で1回洗浄した。その後、37℃において細胞を90μL HBSSで30分間インキュベートした。。試験品/HBSS/DETA-NONOエートプレートから10μLを細胞に加え、これを37℃でさらに30分間インキュベートした。最終DMSO濃度は1%であり、最終DETA-NONOエート濃度は30μMであり;最終化合物I-5濃度は、10000nM、1000nM、100nM、10nM、1nM、0.1nM、0.01nM、および0.0nMであった。培地を取り出し、細胞を溶解し、Cisbioプロトコル(phospho-CREB(Ser133)カタログ番号64CREPEG)に従ってアッセイを実施し、Envision機器(PerkinElmer)を用いてプレートを読んだ。
【0269】
[00198]データ解析。データは、GraphPad Prismソフトウェアv.7を用い、4パラメーターフィット(log(アゴニスト)対反応-変数勾配)で解析した。EC50を曲線フィットから内挿し、化合物I-5が最大反応の50%を引き起こす濃度として定義する。
【0270】
[00199]結果。化合物I-5によって刺激されたSer133でのCREBのリン酸化
は濃度依存性であり、EC50は0.55nMであった。95%信頼区間は0.07nM~4.44nMであった。
実施例9.疼痛モデルおよび試験における本発明の化合物の評価
[00200]目的。急性および持続性疼痛、神経障害痛、炎症性疼痛、術後疼痛および内臓
痛における本発明の化合物の有効性を評価する。
【0271】
[00201]材料および方法:
[00202]足加圧試験(Paw Pressure Test)。静的機械的痛覚過敏を測定した。本試験では、平面と先端が尖っていないポインターの間で後足に次第に圧を加えていくことが必要である。化合物の鎮痛作用を評価するために、動物の後足の一方に注射による炎症または結紮による損傷を与え、もう一方の後足には損傷および炎症を起こさせなかった。装置で後足に力を安定的に増加させながら加えた。反応の閾値を、後足を引っ込める、および/または声を発するのに要する圧力(g)として決定した。実験者は動物を丁寧に扱い、静的機械的痛覚過敏を両後足について2回評価した。
【0272】
[00203]テイルフリック試験(Tail Flick Test)。尾部に放射熱を加えた。ラットは不快に感じたら、尾を突然動かす(テイルフリック)ことにより反応した。これにより、刺激と、動物反応時間または侵害反応潜伏時間(刺激の最初から動物応答の検出までの期間)による測定用のタイマーは、自動的に停止した。組織損傷を防ぐため、カットオフを予め10秒に固定した。
【0273】
[00204]酢酸試験。0.6%酢酸溶液をラットに腹腔内注射(10mL/kg)するこ
とにより、腹部収縮を誘発させた。のたうち(痛みによる体の捻りまたは捩り)がみられた数を、注射後5分~15分に記録した。
【0274】
[00205]ホルマリン試験。2.5%ホルマリン溶液を、足底下(subplantar)経路により
右後足に注射した。疼痛挙動の採点は、ラットにおいて3分おきに36分間、以下の採点に従って実施した:
0=注射した後肢の挙動は体を支えるのに正常である
1=注射した足が床に少しだけ触れると、体を軽く支えるか、支えない
2=注射した足を完全に引っ込める
3=注射した足を舐める、噛むまたは振るわす
[00206]Bennettモデル。D-14に麻酔ラット(キシラジン10mg/kg腹腔内投与、ケタミン60mg/kg腹腔内投与)の坐骨神経を緩く結紮することにより、末
梢性モノニューロパシーを誘発させた。簡単に述べると、一般的坐骨神経を、大腿二頭筋を通る鈍的切開により大腿中央のレベルで暴露した。坐骨三分岐部(sciatic trifurcation)に近接して、その周囲に4本の結紮糸を約1mmの間隔でゆるく結び付けた。結紮糸を結ぶのには細心の注意を払い、その結果、神経の直径はほとんど圧迫されていないように見えた。手術後、動物を4日間回復させ、回復期間の10日後(すなわち、手術から14日後)に試験を実施した。
【0275】
[00207] オキサリプラチン。誘発:試験の30時間前にオキサリプラチン(6mg/kg、腹腔内)を単回腹腔内注射することにより、急性末梢神経障害を誘発させた。アセトン試験:アセトン試験を用いて冷感異痛を測定した。本試験では、両後足の足底面にアセトン滴(50μL)を、両後足に交互に約2~3分間隔で3回施用した後、後足を引っ込める潜伏期間を測定した。
【0276】
[00208]カラゲナン。誘発:侵害受容閾値を評価する3時間前に、足加圧試験を用いて
、100μLの2%カラゲナン懸濁液を右後足の足底面に注射した。その後、足加圧試験を上記のように実施した。
【0277】
[00209]カオリン。誘発:ラットにおいて、ガス麻酔下(3.5%イソフルラン/3L
/分)で10%カオリン懸濁液を右後足の膝関節に関節内注射することにより、片側関節炎を誘発させた。歩行スコア:歩行スコアは、カオリン投与の3時間30分後に以下により評価した:
0:正常歩行
1:中等度の能力障害(mid disability)
2:足を上げるのが一時的に止まる
3:隆起した足(elevated paw)
[00210]Brennanモデル。外科手術:手術はガス麻酔下(2.5%イソフルラン
/3L/分)で行った。すべてのラットで、左後足の足底面を暴露し、外科用ナイフを用い、踵の近似端から0.5cmの位置から開始して足指まで、足の足底面の皮膚および筋膜を通して、縦1cmの切開を作製した。足底筋は隆起し縦に切り込まれたが、挿入は無傷のままであった。軽く加圧して止血した後、皮膚を縫い目が2つとなるように(two sutures)縫い合わせた。手術後、動物をケージで回復させた。
【0278】
[00211]電子的Von Frey試験:手術の24時間後に電子的Von Frey試
験を用いて、接触性異痛症を評価した。試験では、後足の足底面への加圧を増加させることが必要であった。装置で後足に安定な力を加えた。反応の閾値を、後足を引っ込めるのに要する圧力(g)として決定した。各反応の閾値測定を、両後足に関し、約2~3分間隔で3回繰り返した。
【0279】
[00212]TNBS手術:結腸感受性は、行動試験の7日前(D‐7)にTNBSを外科
的投与することにより誘発した。絶食(一晩)動物に手術を施した。簡単に述べると、麻酔下(キシラジン10mg/kg腹腔内投与、ケタミン60mg/kg腹腔内投与)で、結腸近位部(盲腸から1cm)にTNBS(50mg/kg、1mL/kg)の注射を実施した。手術後、動物を調節された環境にあるホームケージに戻し、D-1まで不断給餌した(動物は、拡張前の24時間絶食させた)。結腸直腸拡張:TNBS注射の7日後(D)に、結腸拡張中に行動反応を誘発するのに必要な結腸内圧を測定することにより、絶食(一晩)動物で結腸感受性を評価した。拡張を実施するために、覚醒動物の結腸の肛門から10cmのところに5cmのバルーンを静かに挿入し、カテーテルを尾の基部にテープで留置した。バルーンを挿入してから30分間の順化期間後、結腸圧を、疼痛行動が証明されるまで、30秒ごとに5mmHgずつ5~75mmHg(カットオフ)に徐々に上昇させた。疼痛行動は、動物の体の後部の隆起と、重度の痙攣に相当する明らかな腹部収縮によって特徴付けられた。2つの決定を行った。
【0280】
[00213]急性および持続性疼痛、神経障害痛、炎症性疼痛、術後疼痛、および内臓痛モ
デル、ならびに10mg/kgの化合物I-1で経口処置した動物の試験の結果は顕著であった。これを以下に示す。
結果。
【0281】
【表17】
【0282】
【表18】
【0283】
試験:処置の120分後。N=4/モデル/試験。結果を、各群に関し、ビヒクル処置動物の平均値から計算した活性の百分率として表し、試験に応じて非実験動物、対照足、またはカットオフと比較する。
【0284】
[00214]結論。化合物I-2は、急性疼痛に関する酢酸およびホルマリン試験において
効果を示した。化合物I-2は、神経障害痛のBennettモデル/足加圧試験およびオキサリプラチン-アセトン試験モデルにおいて効果を示した。化合物I-2は、炎症性疼痛のカラゲナン-足加圧試験およびカオリン-歩行スコアモデルにおいて効果を示した。化合物I-2は、術後疼痛に関するBrennanモデル-電子的Von Frey試験モデルにおいて効果を示した。化合物I-2は、内臓痛に関するTNBS-結腸直腸拡張試験モデルにおいて効果を示した。
実施例10:マウス脳における用量応答性化合物誘発性cGMP
[00215]目的。マウス脳(大脳)において、cGMP応答に対するさまざまな用量の本
発明の化合物の効果を決定すること。
【0285】
[00216]プロトコル。実験1日目:マウスを一晩絶食させ、水は自由に摂取させた。実
験2日目:マウス(実験条件につきn=10)に、ビヒクル(1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.2% Tween 80、0.5%メチルセルロース)、ビヒクル中で調製した3または10mg/Kgの化合物I-2を経口投与した。投与の30分後、イソフルラン麻酔下で各マウスを断頭し、脳を取り出した。各脳から大脳を分離し、別個の15mLファルコンチューブに入れ、液体窒素中に浸漬して急速冷凍した。組織試料を-80℃で保管した。脳のcGMPレベルをLC/MSにより決定した。脳試料を、超音波プローブを用いて、80:20(体積/体積%)の水:酢酸からなる水性緩衝液中でホ
モジナイズした。sGC化合物およびまたはcGMPを含有する脳ホモジネートを、内部標準(IS)を含有する有機溶媒でのタンパク質沈殿の後、濾過し、Phenomenex(登録商標)PhreeTMリン脂質除去プレートを用いてリン脂質を除去することにより、脳組織から抽出した。試料を、エレクトロスプレーイオン化を用いるタンデム質量分析検出(MS/MS)を備える液体クロマトグラフィー(LC)を用いて分析した。cGMPおよびまたはsGC化合物(1以上)の計量に用いられる標準曲線濃度は、0.2~400ng/mLであった。脳試料のタンパク質の定量は、BCAタンパク質アッセイキットを用いて決定した。
【0286】
[00217]結論:10および3mg/Kgの化合物I-2を急性経口投与すると、ビヒク
ル投与動物と比較して、マウス脳においてcGMPが増大する(p<0.0001およびp<00.31、ANOVAの後、計画的比較)。
実施例11:ラット背側線条体におけるBDNFタンパク質への影響
[00218]目的。キノリン酸誘発脳病変モデルにおいて、ラット線条体におけるBDNF
の発現に対する化合物I-2処置の効果を決定すること。
【0287】
[00219]プロトコル。実験1日目:ラットをイソフルランで深く麻酔し、各ラットの背
側線条体に0.25μLの50mMキノリン酸(QA)を片側注入した(左半球または右半球に12.5ナノモルのQA)。各ラットのQA注入に対して反対側の背側線条体に、0.25μLのPBS(対照側)の対照注入を行った。数匹の動物に、QA注入の約30分後にビヒクル(n=5)または10mg/Kgの化合物I-2(n=6)を皮下投与した。実験2~8日目:ラットにビヒクルまたは10mg/Kgの化合物I-2を24時間ごとに経口投与した。ビヒクルまたは化合物I-2の最終投与の約24時間後に、ラットを麻酔し、PBSで灌流し、次いでPBS中の4%パラホルムアルデヒドで灌流し;脳組織を収集し、PBS中の4%パラホルムアルデヒド(PAF)で覆われたファルコンチューブ中に4℃で約14時間置いた後、30%スクロース溶液を含むPBSで約48時間置き換えた。脳組織を40μmのコロナルスライス状に切断し、4℃においてPBS中で保存した。背側線条体を含有するスライスを、マウス抗NeuNおよびウサギ抗BDNF一次抗体とインキュベートした後、Alexa Fluor 594にコンジュゲートした抗ウサギおよびAlexa Fluor 488にコンジュゲートした抗マウス二次抗体とのインキュベーションにより染色した。QA病変周囲の背内側領域または対照半球上の同等の領域からの画像を、共焦点蛍光顕微鏡法を用いて撮影した。画像を、画像Jソフトウェアを用いて分析し、NeuN陽性細胞における平均BDNF強度を決定した。
【0288】
[00220]結論。QA病変(QA側)周辺のNeuN陽性細胞におけるBDNF染色の平
均強度は、対照半球(対照側)のNeuN陽性細胞と比較して有意に低下する;p<0.0001、ANOVAの後、多重比較。10mg/kgの化合物I-2で1日1回、7日間処置すると、ビヒクル処置と比較して、QA病変周辺のNeuN陽性細胞におけるBDNFの平均強度が増大する;p<0.01、ANOVAの後、多重比較。10mg/kgの化合物I-2で1日1回、7日間処置すると、ビヒクル処置と比較して、病変のない背内側線条体(対照側)のNeuN陽性細胞におけるBDNFの平均強度が増大する;p<0.0001、ANOVAの後、多重比較。
【0289】
[00221]本発明のさまざまな態様は、以下のテキストで説明することができる:
[1]. 表Iに示す化合物または医薬的に許容しうるその塩。
[2]. 少なくとも1つの医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーと、上記[1]または本発明の他の態様に従った化合物または医薬的に許容しうるその塩とを含む、医薬組成物。
[3]. 上記[1]または本発明の他の態様に従った医薬組成物を含む剤形。
[4]. CNS疾患、健康状態または障害の処置を必要としている被験対象におけるそ
の処置方法であって、治療的有効量の上記[1]、[2]または[3]または本発明の他の態様に従ったものを、単独または併用療法で被験対象に投与することを含む方法。
[5]. CNS疾患が、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルー・ゲーリック病)、ダウン症候群、認知症、血管性認知症(VD)、血管性認知機能障害、混合型認知症、ビンスワンガー型認知症(皮質下動脈硬化性脳症)、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASILまたはCADASIL症候群)、前頭側頭葉変性症または認知症、HIV関連認知症(例えば、無症候性神経認知機能障害(ANI)、軽度神経認知障害(MND)、およびHIV関連認知症(HAD)(AIDS認知症症候群[ADC]またはHIV脳症ともよばれる)、レビー小体型認知症、初老期認知症(軽度認知機能障害またはMCI)、緑内障、ハンチントン病(またはハンチントン舞踏病、HD)、多発性硬化症(MS)、多系統萎縮症(MSA)、パーキンソン病(PD)、パーキンソニズム・プラス、脊髄小脳運動失調症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー疾患(進行性核上性麻痺)、注意欠陥障害(ADD)または注意欠陥多動性障害(ADHD)から選択される、上記[4]または本発明の他の態様に従った方法。
[6]. CNS疾患がアルツハイマー病である、上記[5]または本発明の他の態様に従った方法。
[7]. 軽度~中等度のアルツハイマー病または中等度~重度のアルツハイマー病である、上記[6]または本発明の他の態様に従った方法。
[8]. CNS疾患が血管性認知症である、上記[5]または本発明の他の態様に従った方法。CNS疾患が混合型認知症である、上記[5]または本発明の他の態様に従った方法。
[9]. CNS疾患がハンチントン病である、上記[5]または本発明の他の態様に従った方法。
[10]. CNS疾患がパーキンソン病である、上記[5]または本発明の他の態様に従った方法。
[11]. CNS疾患がCADASILである、上記[5]または本発明の他の態様に従った方法。
[12]. CNS疾患が軽度認知機能障害である、上記[5]または本発明の他の態様に従った方法。
[13]. CNS疾患が、外傷性(非開放性または開放性)穿通性頭部損傷、外傷性脳損傷(TBI)、脳への非外傷性損傷、脳卒中、(とりわけ虚血性脳卒中)、動脈瘤、低酸素症、あるいは脳損傷または神経変性障害に起因する認知機能障害または機能不全のいずれかから選択される、上記[4]または本発明の他の態様に従った方法。
[14]. CNS疾患が、ジストニア、例えば、全身性、局所性、分節性、性的、中間型、遺伝性/原発性ジストニアまたは急性ジストニア反応;あるいは、ジスキネジア、例えば、急性、慢性/遅発性、または非運動性およびレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)から選択される、上記[4]または本発明の他の態様に従った方法。
[15]. CNS疾患が、双極性障害、統合失調症、一般的精神病、薬物誘発性精神病、妄想性障害、統合失調感情障害、強迫性障害(OCD)、抑うつ障害、不安障害、パニック障害、または心的外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される精神医学的、精神的、気分的または情動的障害である、上記[4]または本発明の他の態様に従った方法。
[16]. CNS疾患が、シナプス可塑性およびシナプスプロセスの相対的低下を特徴とする障害、例えば、脆弱X、レット障害、ウィリアムズ症候群、レンペニング症候群、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害または小児期崩壊性障害から選択される、上記[4]または本発明の他の態様に従った方法。
[17]. CNS障害が、ケモブレイン、レボドパ誘発性嗜癖行動、アルコール依存症、アンフェタミン、アヘンもしくは他の物質に対するものを含む麻薬依存症、または薬物乱用から選択される、上記[4]または本発明の他の態様に従った方法。
[18]. CNS疾患の処置に用いるための上記[1]、[2]もしくは[3]または
本発明の他の態様に従ったもの。
[19]. CNS疾患の処置のための、上記[1]、[2]もしくは[3]または本発明の他の態様に従ったものの使用。
【0290】
[00222]例示するために典型的な態様について述べてきたが、上記記載および実施例は
、本発明の範囲を制限するものとみなすべきではない。したがって、当業者なら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな修正、適応および改変を思いつく可能性がある。本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩と、少なくとも1つの医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーとを含む、医薬組成物:
【表19-1】
【表19-2】
【表19-3】
【表19-4】
[2][1]の医薬組成物を含む剤形。
[3]CNS疾患、健康状態または障害の処置を必要としている被験対象におけるその処置方法であって、治療的有効量の化合物もしくは医薬的に許容しうるその塩、または前記化合物もしくは医薬的に許容しうるその塩を含む医薬組成物もしくは剤形を単独または併用療法で被験対象に投与することを含む方法、これに関し、該化合物は、表Iに示す化合物、または医薬的に許容しうるその塩から選択される:
【表19-5】
【表19-6】
【表19-7】
【表19-8】
[4]CNS疾患が、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルー・ゲーリック病)、ダウン症候群、認知症、血管性認知症(VD)、血管性認知機能障害、ビンスワンガー型認知症(皮質下動脈硬化性脳症)、皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASILまたはCADASIL症候群)、前頭側頭葉変性症または認知症、HIV関連認知症、レビー小体型認知症、初老期認知症(軽度認知機能障害またはMCI)、緑内障、ハンチントン病(またはハンチントン舞踏病、HD)、多発性硬化症(MS)、多系統萎縮症(MSA)、パーキンソン病(PD)、パーキンソニズム・プラス、脊髄小脳運動失調症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー疾患(進行性核上性麻痺)、注意欠陥障害(ADD)または注意欠陥多動性障害(ADHD)から選択される、[3]に記載の方法。
[5]CNS疾患がアルツハイマー病である、[4]に記載の方法。
[6]軽度~中等度のアルツハイマー病または中等度~重度のアルツハイマー病である、[5]に記載の方法。
[7]CNS疾患が血管性認知症である、[4]に記載の方法。
[8]CNS疾患がハンチントン病である、[4]に記載の方法。
[9]CNS疾患がパーキンソン病である、[4]に記載の方法。
[10]CNS疾患がCADASILである、[4]に記載の方法。
[11]CNS疾患が軽度認知機能障害である、[4]に記載の方法。
[12]CNS疾患が、外傷性(非開放性または開放性)穿通性頭部損傷、外傷性脳損傷(TBI)、脳への非外傷性損傷、脳卒中、動脈瘤、低酸素症、あるいは脳損傷または神経変性障害に起因する認知機能障害または機能不全のいずれかから選択される、[3]
に記載の方法。
[13]CNS疾患が、ジストニア、例えば、全身性、局所性、分節性、性的、中間型、遺伝性/原発性ジストニアまたは急性ジストニア反応;あるいは、ジスキネジア、例えば、急性、慢性/遅発性、または非運動性およびレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)から選択される、[3]に記載の方法。
[14]CNS疾患が、双極性障害、統合失調症、一般的精神病、薬物誘発性精神病、妄想性障害、統合失調感情障害、強迫性障害(OCD)、抑うつ障害、不安障害、パニック障害、または心的外傷後ストレス障害(PTSD)から選択される精神医学的、精神的、気分的または情動的障害である、[3]に記載の方法。
[15]CNS疾患が、シナプス可塑性およびシナプスプロセスの相対的低下を特徴とする障害、例えば、脆弱X、レット障害、ウィリアムズ症候群、レンペニング症候群、自閉症スペクトラム障害(ASD)、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害または小児期崩壊性障害から選択される、[3]に記載の方法。
[16]CNS障害が、ケモブレイン、レボドパ誘発性嗜癖行動、アルコール依存症、またはアンフェタミン、アヘンもしくは他の物質に対するものを含む麻薬依存症、または薬物乱用から選択される、[3]に記載の方法。
[17]CNS疾患の処置に用いるためのsGC刺激剤または前記sGC刺激剤を含む医薬組成物もしくは剤形、これに関し、sGC刺激剤は、表Iに示したものまたは医薬的に許容しうるその塩である。
[18]CNS疾患の処置のための、表Iに示したsGC刺激剤、または医薬的に許容しうるその塩、または前記化合物もしくは医薬的に許容しうるその塩を含む医薬組成物もしくは剤形の使用。
[19]CNS疾患が混合型認知症である、[4]に記載の方法。
は剤形の、単独または1以上の追加的薬剤との組み合わせでの使用に関する。これに関し、sGC刺激の増大、または酸化窒素(NO)もしくは環状グアノシン3’,5’-一リン酸(cGMP)もしくはその両方の濃度上昇、またはNO経路のアップレギュレーションが望ましい。
図1
【外国語明細書】