(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016061
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】評価装置および評価方法
(51)【国際特許分類】
H01H 33/00 20060101AFI20220114BHJP
G01H 1/00 20060101ALI20220114BHJP
H02B 13/035 20060101ALI20220114BHJP
H02B 13/065 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01H33/00 A
G01H1/00 Z
H02B13/035 301G
H02B13/065 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119329
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山里 将史
(72)【発明者】
【氏名】堀越 和彦
【テーマコード(参考)】
2G064
5G017
5G027
【Fターム(参考)】
2G064AA12
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BA28
2G064CC30
2G064CC60
5G017BB01
5G017EE06
5G027AA23
(57)【要約】
【課題】従来よりも簡略的な構成によって、開閉装置の接触子の劣化を評価する。
【解決手段】評価装置(1)において、タイミング決定部(21)は、圧電素子(11)が取得したGIS(101)の振動波形に基づき、接触子(40)の可動アーキングコンタクト(410a)と固定アーキングコンタクト(410b)とが接触した時点である第1接触時点と、接触子(40)の可動メインコンタクト(420a)と固定メインコンタクト(420b)とが接触した時点である第2接触時点と、を決定する。評価部(22)は、第2接触時点と第1接触時点との時間差に基づき、接触子(40)の劣化の程度を示す劣化評価値を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉装置の接触子の状態を評価する評価装置であって、
前記接触子は、
アーキングコンタクトとして可動アーキングコンタクトと固定アーキングコンタクトとを含んでいるとともに、
メインコンタクトとして可動メインコンタクトと固定メインコンタクトとを含んでおり、
前記評価装置は、
前記開閉装置の振動波形を取得する振動検出部と、
前記振動波形に基づき、
(i)前記可動アーキングコンタクトが前記固定アーキングコンタクトに接触した時点である第1接触時点と、
(ii)前記可動メインコンタクトが前記固定メインコンタクトに接触した時点である第2接触時点と、を決定するタイミング決定部と、
前記第2接触時点と前記第1接触時点との時間差に基づき、前記接触子の劣化の程度を示す劣化評価値を算出する評価部と、を備えている、評価装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記劣化評価値として、前記アーキングコンタクトの損耗量を算出する、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記劣化評価値として、前記アーキングコンタクトの余寿命を算出する、請求項1に記載の評価装置。
【請求項4】
前記振動検出部は、圧電素子である、請求項1から3のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項5】
前記開閉装置は、前記可動アーキングコンタクトおよび前記可動メインコンタクトを移動させる操作器を備えており、
前記振動検出部を、第1振動検出部と称し、
前記第1振動検出部によって検出された前記振動波形を、第1振動波形と称し、
前記評価装置は、
前記操作器の振動波形である第2振動波形を取得する第2振動検出部と、
前記第1振動波形と前記第2振動波形との差分波形を導出する差分算出部と、をさらに備えており、
前記タイミング決定部は、前記差分波形に基づき、前記第1接触時点と前記第2接触時点とを決定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項6】
前記評価装置は、前記時間差に亘る前記可動アーキングコンタクトおよび前記可動メインコンタクトの変位量を取得する変位検出部をさらに備えており、
前記評価部は、前記変位量にさらに基づき、前記劣化評価値を算出する、請求項1から5のいずれか1項に記載の評価装置。
【請求項7】
開閉装置の接触子の状態を評価する評価方法であって、
前記接触子は、
アーキングコンタクトとして可動アーキングコンタクトと固定アーキングコンタクトとを含んでいるとともに、
メインコンタクトとして可動メインコンタクトと固定メインコンタクトとを含んでおり、
前記評価方法は、
前記開閉装置の振動波形を取得する振動検出工程と、
前記振動波形に基づき、
(i)前記可動アーキングコンタクトが前記固定アーキングコンタクトに接触した時点である第1接触時点と、
(ii)前記可動メインコンタクトが前記固定メインコンタクトに接触した時点である第2接触時点と、を決定するタイミング決定工程と、
前記第2接触時点と前記第1接触時点との時間差に基づき、前記接触子の劣化の程度を示す劣化評価値を算出する評価工程と、を含んでいる、評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、開閉装置の接触子の劣化を評価する評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気設備においては、ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear)(以降、GISと表記)などの開閉装置が設けられている。開閉装置の動作時には、当該開閉装置の接触子においてアークが発生する。その結果、接触子の損耗が生じる。このため、開閉装置の適切なメンテナンスのために、接触子の劣化を評価する技術が要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、開閉装置の接触子の余寿命を診断する技術が開示されている。具体的には、特許文献1の装置(余寿命診断装置)は、X線撮影装置(X線の照射装置および受光装置)を備えている。特許文献1の装置は、接触子のX線画像に基づき、当該接触子の余寿命を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、接触子の劣化を評価するために、X線撮影装置が必要である。このため、評価装置の大型化および高コスト化が伴う。加えて、X線の取り扱いについての適切な管理も要求される。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題点を鑑みなされたものであり、従来よりも簡略的な構成によって、開閉装置の接触子の劣化を評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、開閉装置の接触子の状態を評価する評価装置であって、前記接触子は、アーキングコンタクトとして可動アーキングコンタクトと固定アーキングコンタクトとを含んでいるとともに、メインコンタクトとして可動メインコンタクトと固定メインコンタクトとを含んでおり、前記評価装置は、前記開閉装置の振動波形を取得する振動検出部と、前記振動波形に基づき、(i)前記可動アーキングコンタクトが前記固定アーキングコンタクトに接触した時点である第1接触時点と、(ii)前記可動メインコンタクトが前記固定メインコンタクトに接触した時点である第2接触時点と、を決定するタイミング決定部と、前記第2接触時点と前記第1接触時点との時間差に基づき、前記接触子の劣化の程度を示す劣化評価値を算出する評価部と、を備えている。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価方法は、開閉装置の接触子の状態を評価する評価方法であって、前記接触子は、アーキングコンタクトとして可動アーキングコンタクトと固定アーキングコンタクトとを含んでいるとともに、メインコンタクトとして可動メインコンタクトと固定メインコンタクトとを含んでおり、前記評価方法は、前記開閉装置の振動波形を取得する振動検出工程と、前記振動波形に基づき、(i)前記可動アーキングコンタクトが前記固定アーキングコンタクトに接触した時点である第1接触時点と、(ii)前記可動メインコンタクトが前記固定メインコンタクトに接触した時点である第2接触時点と、を決定するタイミング決定工程と、前記第2接触時点と前記第1接触時点との時間差に基づき、前記接触子の劣化の程度を示す劣化評価値を算出する評価工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、従来よりも簡略的な構成によって、開閉装置の接触子の劣化を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の評価システムの要部の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る振動波形の一例を概略的に示す図である。
【
図3】劣化評価値を算出する方法を説明するための図である。
【
図4】実施形態2の評価システムの要部の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態2に係る差分波形を生成する方法を説明するための図である。
【
図6】実施形態3の評価システムの要部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、実施形態1の評価システム100について説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、以降の各実施形態では、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、公知技術と同様の事項についても、説明を適宜省略する。各図に示されている装置構成は、説明の便宜上のための単なる一例である。従って、各部材の位置関係は、各図の例に限定されない。
【0012】
(評価システム100の概要)
図1は、評価システム100の要部の構成を示すブロック図である。評価システム100は、評価装置1およびGIS101を備える。評価装置1は、GIS101の劣化を評価する。より具体的には、GIS101の接触子40の状態を評価する。はじめに、評価装置1の構成に先立ち、GIS101の構成について述べる。GIS101は、本発明の一態様に係る開閉装置の一例である。
【0013】
(GIS101の構成)
GIS101は、接触子40、操作器50、結合部51、タンク60、および支持部70を備える。タンク60は、接触子40を収容する部材である。一例として、タンク60は、公知の絶縁性ガスが充填された密閉タンクである。
【0014】
接触子40は、タンク60の内部に設けられている。接触子40は、アーキングコンタクト41およびメインコンタクト42を有する。アーキングコンタクト41およびメインコンタクト42は、電気系統を導通させるための部材である。実施形態1の例では、アーキングコンタクト41およびメインコンタクト42は、公知の金属材料によって構成されている。
【0015】
アーキングコンタクト41は、可動アーキングコンタクト410aおよび固定アーキングコンタクト410bを含む。可動アーキングコンタクト410aと固定アーキングコンタクト410bとは対向している。可動アーキングコンタクト410aは、操作器50の側に位置している。
【0016】
メインコンタクト42は、可動メインコンタクト420aおよび固定メインコンタクト420bを含む。可動メインコンタクト420aと固定メインコンタクト420bとは対向している。可動メインコンタクト420aは、操作器50の側に位置している。
【0017】
可動アーキングコンタクト410aの取付部は、可動メインコンタクト420aと一体に成形されている。可動アーキングコンタクト410aは、取り外し交換が可能であるように構成されている。可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aは、支持部70によって支持されている。
【0018】
固定アーキングコンタクト410bの取付部は、固定メインコンタクト420bと一体に成形されている。固定アーキングコンタクト410bは、取り外し交換が可能であるように構成されている。固定アーキングコンタクト410bは、固定メインコンタクト420bよりも、操作器50の側に突出している。
【0019】
操作器50は、結合部51を介して、可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aを動作(移動)させる。操作器50は、手動または電動によって操作可能である。操作器50は、タンク60の外部に設けられ、結合部51は、タンク60の密閉性を満たしたまま、当該タンク60を貫通している。結合部51は、
図1の上下方向に摺動可能である。
【0020】
一例として、GIS101を閉路する場合について説明する。まず、可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aを、操作器50によって上方向に移動させる。可動アーキングコンタクト410aが固定アーキングコンタクト410bの近傍に位置すると、可動アーキングコンタクト410aと固定アーキングコンタクト410bとの間にアークが発生する。その後、操作器50の動作に伴い、可動アーキングコンタクト410aが固定アーキングコンタクト410bに接触することで、アークが消滅する。
【0021】
続いて、操作器50の動作に伴い、可動メインコンタクト420aが固定メインコンタクト420bの近傍に位置する。上述の通り、可動アーキングコンタクト410aと固定アーキングコンタクト410bとはすでに接触しているため、可動メインコンタクト420aと固定メインコンタクト420bとの間には、アークが発生しない。
【0022】
アーキングコンタクト41において(すなわち、可動アーキングコンタクト410aと固定アーキングコンタクト410bとの間において)発生したアークにより、アーキングコンタクト41(可動アーキングコンタクト410aおよび固定アーキングコンタクト410b)の表面が蒸発する。このように、アーキングコンタクト41においてアークが発生することにより、アーキングコンタクト41の損耗が生じる。
【0023】
なお、GIS101を開路する(遮断する)場合には、固定アーキングコンタクト410bと接触状態にある可動アーキングコンタクト410aを、当該固定アーキングコンタクト410bから引き離す動作が行われる。すなわち、可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aを、操作器50によって下方向に移動させる動作が行われる。この場合においても、上記の例と同様に、アーキングコンタクト41にのみアークが発生する。その結果、アーキングコンタクト41の損耗が生じる。
【0024】
(評価装置1の構成)
続いて、評価装置1について説明する。評価装置1は、圧電素子11と、制御部20と、記憶部31と、警報部32とを備える。制御部20は、評価装置1の各部を統括的に制御する。制御部20は、タイミング決定部21と、評価部22とを備える。
【0025】
圧電素子11は、GIS101の振動波形を検出(取得)するセンサの一例である。一例として、圧電素子11は、タンク60の振動波形を取得するために、当該タンク60の外壁に取り付けられている。圧電素子11は、各時刻において検出した検出値(振動の大きさ)を、記憶部31に送信する。
【0026】
圧電素子11は、操作器50の動作に伴ってGIS101に発生する振動をより適切に検出するために、支持部70の裏側に設置されることが望ましい。但し、圧電素子11が配置される位置は、特に限定されない。圧電素子11は、タンク60の底部の任意の位置に配置されてもよい。あるいは、圧電素子11は、タンク60の頂部に配置されてよい。
【0027】
記憶部31は、制御部20の処理に用いられる各種のデータおよびプログラムを格納する。実施形態1では、記憶部31は、圧電素子11によって検出された振動波形(すなわち、圧電素子11によって検出された検出値の時系列データ)を記憶する。
【0028】
タイミング決定部21は、記憶部31から、振動波形を取得する。タイミング決定部21は、振動波形に基づき、(i)可動アーキングコンタクト410aが固定アーキングコンタクト410bに接触した時刻(以下、第1接触時刻)と、(ii)可動メインコンタクト420aが固定メインコンタクト420bに接触した時刻(以下、第2接触時刻)と、を決定(特定)する。第1接触時刻および第2接触時刻の決定方法については、後述する。
【0029】
第1接触時刻および第2接触時刻は、GIS101が開路している状態(遮断状態)から閉路している状態(導通状態)へと遷移する過程における時刻である。タイミング決定部21は、第1接触時刻および第2接触時刻を示す情報を、評価部22に送信する。なお、本明細書における「時刻」は、「時点」の一例である。従って、第1接触時刻および第2接触時刻はそれぞれ、第1接触時点および第2接触時点と読み替えられてもよい。
【0030】
評価部22は、第1接触時刻および第2接触時刻に基づき、接触子40の劣化の程度を表す劣化評価値を算出する。具体的には、評価部22は、第2接触時刻と第1接触時刻との時間差(以下、「接触時間差」とも称する)に基づき、劣化評価値を算出する。
【0031】
実施形態1では、評価装置1によって、接触子40の劣化(より具体的には、アーキングコンタクト41の劣化)を評価する場合を例示する。劣化評価値の一例としては、アーキングコンタクト41の損耗量を例示できる。劣化評価値の別の例としては、アーキングコンタクトの余寿命を例示できる。但し、劣化評価値は、これらの例に限定されず、接触子40の劣化の程度(より具体的には、アーキングコンタクト41の劣化の程度)を示す任意の指標値であってよい。
【0032】
評価部22は、劣化評価値を所定の劣化評価閾値と比較してもよい。そして、評価部22は、劣化評価値と劣化評価閾値との比較結果に基づき、警報部32を動作させてよい。一例として、劣化評価値がアーキングコンタクト41の損耗量である場合を考える。この場合、評価部22は、劣化評価値が劣化評価閾値を超えた場合に、警報部32に動作指令を与えてよい。
【0033】
警報部32は、評価部22から動作指令を取得したことを契機として、GIS101に劣化が生じている旨の警報を発する。一例として、警報部32は、スピーカであってよい。この場合、警報部32は、評価部22から動作指令を取得したことを契機として、所定のアラート音を出力してよい。
【0034】
(評価装置1の動作)
図2は、実施形態1における振動波形の一例を概略的に示す図である。
図2の振動波形を、振動波形91と称する。上述の通り、振動波形91は、圧電素子11によって測定されており、かつ、記憶部31に格納されている。なお、後述の振動波形92との区別のため、振動波形91は、第1振動波形と称されてもよい。同様に、後述の圧電素子12との区別のため、圧電素子11は、第1圧電素子(あるいは、第1振動検出部)と称されてもよい。
【0035】
図2に示す振動波形91は、4つのピーク部(ピーク部71~74)を有している。
図2のグラフにおける横軸は、時間tを表す。tは、操作器50が動作を開始した時点(動作開始時点)からの経過時間である。
図2のグラフにおける縦軸は、振動波形91の信号値(具体的には、圧電素子11によって検出された振動の大きさH)を表す。
【0036】
動作開始時点(t=0)からt=t1までの期間において存在するピーク部71(第1ピーク部)は、操作器50の動作開始に伴って生じる。t=t1からt=t2までの期間において存在するピーク部72(第2ピーク部)は、可動アーキングコンタクト410aと固定アーキングコンタクト410bとの接触に伴って生じる。t=t2からt=t3までの期間において存在するピーク部73(第3ピーク部)は、可動メインコンタクト420aと固定メインコンタクト420bとの接触に伴って生じる。t=t3からt=t4までの期間において存在するピーク部74(第4ピーク部)は、操作器50の動作停止に伴って生じる。t4は、操作器50が動作を停止した時点(動作停止時点)を表す。
【0037】
実施形態1において、タイミング決定部21は、振動波形91を解析することにより、第1接触時刻および第2接触時刻を決定する。例えば、タイミング決定部21は、ピーク部72の立ち上がりタイミング(
図2の時刻t11)として検出する。一例として、タイミング決定部21は、ピーク部72の立ち上がり部分において、Hが一定の立ち上がり閾値(
図2のth1)以上となったタイミングを、t11として検出する。そして、タイミング決定部21は、t11を、第1接触時刻として決定する。
【0038】
続いて、タイミング決定部21は、ピーク部73の立ち上がりタイミング(
図2の時刻t12)を検出する。一例として、タイミング決定部21は、ピーク部73の立ち上がり部分において、Hが一定の立ち上がり閾値(
図2のth2)以上となったタイミングを、t12として検出する。そして、タイミング決定部21は、t12を、第2接触時刻として決定する。その後、タイミング決定部21は、接触時間差(
図2のΔt)を算出する。すなわち、タイミング決定部21は、Δt=t2-t1として、Δtを算出する。
【0039】
但し、第1接触時刻の決定方法は、上記の例に限定されない。すなわち、第1接触時刻は、ピーク部72の立ち上がりタイミングに限定されない。例えば、第1接触時刻は、ピーク部72の立ち下がり部分において、Hが一定の立ち下がり閾値以下となったタイミングとして決定されてもよい。あるいは、ピーク部72に対して公知のパターン認識を施すことにより、第1接触時刻が決定されてもよい。このように、第1接触時刻は、当業者が想到し得る任意の方法によって決定されてよい。当然ながら、第1接触時刻に関するこれらの説明は、第2接触時刻についても同様に当てはまる。
【0040】
図2に示されるように、t0からt4までの期間に亘って、圧電素子11によってGIS101の振動を測定した場合、上述した第1ピーク部~第4ピーク部の順に、4つのピーク部を有する振動波形91が得られることが一般的である。そこで、タイミング決定部21は、4つのピーク部のうち、時間の進展に伴って2番目に登場するピーク部を、第2ピーク部(ピーク部72)として特定してよい。同様に、タイミング決定部21は、4つのピーク部のうち、時間の進展に伴って3番目に登場するピーク部を、第3ピーク部(ピーク部73)として特定してよい。
【0041】
図3は、劣化評価値を算出する方法を説明するための図である。上述の通り、
図3のグラフ81におけるWは、アーキングコンタクト41の損耗量を表す。
図3のグラフ82におけるLは、アーキングコンタクト41の余寿命を表す。
【0042】
グラフ81は、横軸にΔtを、縦軸にWをプロットしたグラフである。アークの発生により、可動アーキングコンタクト410aおよび固定アーキングコンタクト410bのそれぞれの長さが短くなる。従って、グラフ81に示される通り、Δtが大きい場合、すなわち可動アーキングコンタクト410aが可動メインコンタクト420aよりも十分に長い場合には、Wは小さい。これに対し、Δtが小さい場合、すなわち可動アーキングコンタクト410aの長さが可動メインコンタクト420aの長さに近い場合には、Wは大きい。
【0043】
このように、Wは、Δtの増加に伴って減少する傾向を有していると考えられる。そこで、評価部22は、Δtに基づいて、W(より詳細には、Wの推定値)を算出してよい。上述の通り、Wは、劣化評価値の一例である。一例として、評価部22は、予め設定された推定式を用いて、Δtに基づいて、Wを算出してよい。
【0044】
グラフ82は、横軸に(Δt0-Δt)を、縦軸にLをプロットしたグラフである。ここで、Δt0は、GIS101の初期状態におけるΔtを表す。一例として、Δt0は、GIS101の工場出荷時におけるΔtである。(Δt0-Δt)は、初期状態からのΔtの減少量とも表現できる。
【0045】
アークの発生により、可動アーキングコンタクト410aおよび固定アーキングコンタクト410bのそれぞれの長さが短くなる。このため、時間の進展に伴い、初期状態に比べ、Δtは短くなる。第1接触時刻から第2接触時刻までの時間差が短くなったことは、アーキングコンタクト41の余寿命が短くなったことを示唆しているとも言える。
【0046】
それゆえ、グラフ82に示される通り、Lは、(Δt0-Δt)の増加に伴って減少する傾向を有していると考えられる。そこで、評価部22は、Δtに基づいて、より具体的には、(Δt0-Δt)に基づいて、L(より詳細には、Lの推定値)を算出してよい。上述の通り、Lは、劣化評価値の別の例である。一例として、評価部22は、予め設定された推定式を用いて、(Δt0-Δt)に基づいて、Lを算出してよい。
【0047】
(評価装置1の効果)
以上の通り、評価装置1によれば、振動波形に基づき、接触子40の劣化を評価できる(より詳細には、劣化評価値を算出できる)。このように、評価装置1によれば、従来の技術(例:特許文献1の技術)とは異なり、X線撮影装置を設けることなく、接触子の劣化を評価できる。すなわち、従来よりも簡略的な構成によって、接触子の劣化を評価することが可能となる。
【0048】
〔実施形態2〕
図4は、実施形態2の評価システム200の要部の構成を示すブロック図である。評価システム200の評価装置を、評価装置2と称する。評価装置2は、評価装置1とは異なり、圧電素子12をさらに備えている。圧電素子12は、第2圧電素子(あるいは、第2振動検出部)と称されてもよい。また、評価装置2の制御部を、制御部20aと称する。制御部20aは、制御部20とは異なり、差分算出部23をさらに備えている。
【0049】
圧電素子12は、操作器50の振動波形(第2振動波形)を取得するセンサの一例である。一例として、圧電素子12は、操作器50の振動波形を取得するために、当該操作器50に取り付けられている。圧電素子12は、各時刻において検出した検出値(振動の大きさ)を、記憶部31に送信する。実施形態2では、記憶部31は、圧電素子12によって検出された第2振動波形(すなわち、圧電素子12によって検出された検出値の時系列データ)をさらに記憶する。
【0050】
差分算出部23は、記憶部31から第1振動波形および第2振動波形を取得する。そして、差分算出部23は、第1振動波形と第2振動波形との差分波形を導出する。より具体的には、差分算出部23は、第1振動波形から第2振動波形を減算することにより、差分波形を生成する。
【0051】
図5は、差分波形を生成する方法を説明するための図である。
図5には、第1振動波形の一例として、上述の振動波形91が示されている。上述の通り、振動波形91は、4つのピーク部(ピーク部71~74)を有している。
図5の振動波形92は、第2振動波形の一例である。振動波形92は、2つのピーク部(ピーク部71aおよびピーク部74a)を有する。
【0052】
ピーク部71aは、ピーク部71と同様に、操作器50の動作開始に伴って生じる。また、ピーク部74aは、ピーク部74と同様に、操作器50の動作停止に伴って生じる。従って、
図5に示される通り、振動波形92のピーク部71aおよびピーク部74aはそれぞれ、振動波形91のピーク部71およびピーク部74に対応する。
【0053】
図5の振動波形93は、振動波形91から振動波形92を減算することによって得られた、差分波形の一例である。振動波形93は、2つのピーク部(ピーク部72bおよびピーク部73b)を有する。
図5に示される通り、振動波形93のピーク部72bおよびピーク部73bはそれぞれ、振動波形91のピーク部72およびピーク部73に対応する。このように、振動波形93では、振動波形91とは異なり、操作器50の動作開始および動作終了に起因するピーク部は含まれていない。
【0054】
図5に示される通り、振動波形93では、振動波形91とは異なり、操作器50の動作開始および動作停止に起因する振動の影響が排除されている。そこで、評価装置2では、タイミング決定部21は、振動波形93に基づき、第1接触時刻および第2接触時刻を決定する。具体的には、タイミング決定部21は、振動波形93を解析することにより、第1接触時刻および第2接触時刻を決定する。一例として、タイミング決定部21は、(i)ピーク部72bの立ち上がりタイミングを第1接触時刻として決定するとともに、(ii)ピーク部73bの立ち上がりタイミングを第2接触時刻として決定する。
【0055】
評価装置2によれば、操作器50の動作開始および動作停止に起因する振動の影響を排除して、第1接触時刻および第2接触時刻を決定できる。それゆえ、評価装置1に比べて、第1接触時刻および第2接触時刻をより高精度に決定できる。その結果、評価装置2によれば、開閉装置の接触子の劣化をより高精度に評価できる。
【0056】
〔実施形態3〕
図6は、実施形態3の評価システム300の要部の構成を示すブロック図である。評価システム300の評価装置を、評価装置3と称する。評価装置3は、評価装置1とは異なり、ポテンショメータ13(変位検出部)をさらに備えている。また、評価装置3の制御部を、制御部20bと称する。制御部20bの評価部を、評価部22bと称する。
【0057】
ポテンショメータ13は、可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aの変位量を検出(取得)するセンサの一例である。ポテンショメータ13は、Δtに亘る可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aの変位量ΔXを検出する。実施形態3では、記憶部31は、ポテンショメータ13によって検出されたΔXをさらに記憶する。評価部22bは、記憶部31からΔXを取得する。
【0058】
時間の進展に伴いΔXが小さくなったことは、アーキングコンタクト41の損耗が進展していることを示唆していると言える。そこで、評価部22bは、ΔXにさらに基づき、劣化評価値を算出する。一例として、評価部22bは、予め設定された推定式を用いて、ΔtおよびΔXに基づいて、Lを算出してよい。
【0059】
評価装置3によれば、ΔXをさらに考慮して、劣化評価値を算出できる。それゆえ、開閉装置の接触子の劣化をより高精度に評価できる。
【0060】
〔変形例〕
(1)本発明の一態様に係る振動検出部は、振動を検出可能な任意のセンサであればよく、圧電素子に限定されない。一例として、当該振動検出部は、加速度センサであってもよい。
【0061】
但し、本発明の一態様に係る振動検出部は、圧電素子であることが好ましい。圧電素子は、小型かつ低コストな振動センサであるためである。また、振動検出部として圧電素子を用いた場合には、当該振動検出部を駆動するための電源を設ける必要がない。このため、振動検出部として圧電素子を用いることにより、低コストかつ簡易な構成の評価装置を実現できる。
【0062】
(2)本発明の一態様に係る変位検出部は、可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aの変位量(ΔX)を検出できればよく、ポテンショメータに限定されない。当該変位検出部は、例えば、エンコーダであってもよい。
【0063】
あるいは、速度センサによって、可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aの速度を検出してもよい。この場合、当該速度に基づいて、ΔXが算出されてもよい。例えば、当該速度とΔtとの積を取ることにより、ΔXが算出されてよい。さらに別の例として、加速度センサによって、可動アーキングコンタクト410aおよび可動メインコンタクト420aの加速度を検出してもよい。この場合、当該加速度に基づいて、ΔXが算出されてもよい。
【0064】
〔ソフトウェアによる実現例〕
評価システム100~300の制御ブロック(特に制御部20~20b)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0065】
後者の場合、評価装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0066】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3 評価装置
11 圧電素子(振動検出部、第1振動検出部)
12 圧電素子(第2振動検出部)
13 ポテンショメータ(変位検出部)
21 タイミング決定部
22、22b 評価部
23 差分算出部
40 接触子
41 アーキングコンタクト
42 メインコンタクト
50 操作器
91 振動波形(第1振動波形)
92 振動波形(第2振動波形)
93 振動波形(差分波形)
100、200、300 評価システム
101 GIS(開閉装置)
410a 可動アーキングコンタクト
410b 固定アーキングコンタクト
420a 可動メインコンタクト
420b 固定メインコンタクト
t11 第1接触時刻(第1接触時点)
t12 第2接触時刻(第2接触時点)
Δt 接触時間差(第2接触時点と第1接触時点との時間差)
W アーキングコンタクトの損耗量
L アーキングコンタクトの余寿命