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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160610
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20221012BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20221012BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20221012BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221012BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20221012BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20221012BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01L29/78 657A
H01L29/78 657D
H01L29/78 655F
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 652P
H01L29/78 658H
H01L29/78 658Z
H01L29/78 652T
H01L29/91 J
H01L29/91 L
H01L29/91 F
H01L29/91 B
H01L29/91 D
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126638
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2018034260の分割
【原出願日】2018-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】百田 聖自
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 忠志
(57)【要約】
【課題】半導体装置においては、損失等の特性がよいことが好ましい。
【解決手段】第1の厚みを有する第1領域と、前記第1の厚みと異なる第2の厚みを有する第2領域と、を含む半導体基板と、前記半導体基板の上面の上方に設けられた上面電極と、を備え、前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記半導体基板の下面に露出する、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のカソード領域と、前記第1領域において、前記ドリフト領域と前記半導体基板の上面との間に設けられた第2導電型のベース領域と、前記第2領域において、前記ドリフト領域と前記半導体基板の上面との間に設けられた第2導電型のアノード領域と、を含む半導体装置を提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の厚みを有する第1領域と、前記第1の厚みと異なる第2の厚みを有する第2領域と、を含む半導体基板と、
前記半導体基板の上面の上方に設けられた上面電極と、
を備え、
前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板の下面に露出する、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のカソード領域と、
前記第1領域において、前記ドリフト領域と前記半導体基板の上面との間に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記第2領域において、前記ドリフト領域と前記半導体基板の上面との間に設けられた第2導電型のアノード領域と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記ベース領域は、前記第1領域に形成される第1ダイオード部のアノードであり、
前記アノード領域は、前記第2領域に形成される第2ダイオード部のアノードである
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1領域には、メイン素子部が設けられていて、
前記第2領域は、前記メイン素子部以外の領域に設けられている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板の上面において前記メイン素子部を囲むガードリングを有する耐圧構造部を含み、
前記第2ダイオード部は、前記半導体基板の上面において前記ガードリングが囲む領域に配置されている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の上面から前記ドリフト領域に達するまで設けられ、上面視において第1方向に沿って直線形状に延伸する直線部分を有するトレンチ部を含み、
前記ベース領域は、それぞれの前記トレンチ部の前記直線部分に挟まれた領域に設けられている
請求項2から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ダイオード部および前記第2ダイオード部は、前記ドリフト領域の厚みが異なる
請求項2から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板の上面の上方に設けられたゲート配線部を含み、
前記第1領域の前記第1ダイオード部および前記第2領域の前記第2ダイオード部は、ゲート配線部を挟んで配置されている
請求項2から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1ダイオード部の前記ベース領域と、前記第2ダイオード部の前記アノード領域とは、ドーピング濃度が異なる
請求項2から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記上面電極は、前記第1ダイオード部の前記ベース領域および前記第2ダイオード部の前記アノード領域と接している
請求項2から8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1ダイオード部の前記ベース領域および前記第2ダイオード部の前記アノード領域の少なくとも一方の上方に、前記上面電極と接続されたポリシリコンを含む
請求項2から9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2ダイオード部は、前記半導体基板の上面から前記アノード領域よりも深い位置まで設けられ、前記アノード領域よりもドーピング濃度が高い第2導電型の分離ウェル領域を有し、
前記第1ダイオード部および前記第2ダイオード部は、前記分離ウェル領域により分離されている
請求項2から10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2領域の前記第2の厚みは、前記第1領域の前記第1の厚みよりも小さい
請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2領域の前記第2の厚みは、前記第1領域の前記第1の厚みよりも大きい
請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板は、シリコン基板である
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板は、炭化シリコン基板である
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等のトランジスタ素子と、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子とが並列に設けられた半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2009-99690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、損失等の特性がよいことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様においては、第1の厚みを有する第1領域と、前記第1の厚みと異なる第2の厚みを有する第2領域と、を含む半導体基板と、前記半導体基板の上面の上方に設けられた上面電極と、を備え、前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記半導体基板の下面に露出する、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のカソード領域と、前記第1領域において、前記ドリフト領域と前記半導体基板の上面との間に設けられた第2導電型のベース領域と、前記第2領域において、前記ドリフト領域と前記半導体基板の上面との間に設けられた第2導電型のアノード領域と、を含む半導体装置を提供する。
【0005】
前記ベース領域は、前記第1領域に形成される第1ダイオード部のアノードであり、前記アノード領域は、前記第2領域に形成される第2ダイオード部のアノードであってよい。
【0006】
前記第1領域には、メイン素子部が設けられていて、前記第2領域は、前記メイン素子部以外の領域に設けられていてよい。
【0007】
前記半導体基板の上面において前記メイン素子部を囲むガードリングを有する耐圧構造部を含み、前記第2ダイオード部は、前記半導体基板の上面において前記ガードリングが囲む領域に配置されていてよい。
【0008】
前記半導体基板の上面から前記ドリフト領域に達するまで設けられ、上面視において第1方向に沿って直線形状に延伸する直線部分を有するトレンチ部を含み、前記ベース領域は、それぞれの前記トレンチ部の前記直線部分に挟まれた領域に設けられていてよい。
【0009】
前記第1ダイオード部および前記第2ダイオード部は、前記ドリフト領域の厚みが異なってよい。
【0010】
前記半導体基板の上面の上方に設けられたゲート配線部を含み、前記第1領域の前記第1ダイオード部および前記第2領域の前記第2ダイオード部は、ゲート配線部を挟んで配置されていてよい。
【0011】
前記第1ダイオード部の前記ベース領域と、前記第2ダイオード部の前記アノード領域とは、ドーピング濃度が異なってよい。
【0012】
前記上面電極は、前記第1ダイオード部の前記ベース領域および前記第2ダイオード部の前記アノード領域と接していてよい。
【0013】
前記第1ダイオード部の前記ベース領域および前記第2ダイオード部の前記アノード領域の少なくとも一方の上方に、前記上面電極と接続されたポリシリコンを含んでよい。
【0014】
前記第2ダイオード部は、前記半導体基板の上面から前記アノード領域よりも深い位置まで設けられ、前記アノード領域よりもドーピング濃度が高い第2導電型の分離ウェル領域を有し、前記第1ダイオード部および前記第2ダイオード部は、前記分離ウェル領域により分離されていてよい。
【0015】
前記第2領域の前記第2の厚みは、前記第1領域の前記第1の厚みよりも小さくてよい。前記第2領域の前記第2の厚みは、前記第1領域の前記第1の厚みよりも大きくてよい。前記半導体基板は、シリコン基板であってよい。前記半導体基板は、炭化シリコン基板であってよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
図2】半導体基板10の上面を部分的に示す図である。
図3図2におけるA-A断面の一例を示す図である。
図4図2におけるB-B断面の一例を示す図である。
図5図2におけるB-B断面の他の例を示す図である。
図6図2におけるB-B断面の他の例を示す図である。
図7】窪み部154の形成工程の一例を示す図である。
図8図2におけるB-B断面の他の例を示す図である。
図9】半導体装置100を含む、出力装置200の一例を示す図である。
図10図4において説明したように、ベース領域14とアノード領域126とのドーピング濃度を異ならせた半導体装置100における、逆回復時の電流波形の一例を示す図である。
図11】逆回復時の電圧波形の一例を示す。
図12図4において説明したように、ベース領域14とアノード領域126とのドーピング濃度を異ならせた半導体装置100における、逆回復時の損失Errの一例を示す。
図13】半導体装置100の逆回復時における電圧波形の一例を示す。
図14】半導体装置100の逆回復時における電流波形の一例を示す。
図15】ベース領域14とアノード領域126のドーピング濃度比を変更した場合における、逆回復時におけるピーク電圧Vak-pと、電流波形の傾きdi/dtの一例を示す。
図16】半導体装置100の上面における構成の他の例を示す。
図17】半導体装置100の上面における構成の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0020】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0021】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。また、NまたはPは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。NまたはPに記載した+または-について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、-はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。
【0022】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。半導体装置100は、半導体基板10を備える。本例の半導体装置100は、半導体基板10に形成された半導体チップである。本例では、半導体基板10の上面と平行な面をXY面として、XY面と垂直な方向(すなわち、半導体基板10の深さ方向)をZ軸方向とする。本例の半導体基板10は、上面視において、X軸に平行な辺と、Y軸に平行な辺とを有する矩形形状である。
【0023】
半導体装置100は、半導体基板10に設けられたトランジスタ部70、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120を備える。トランジスタ部70には、IGBT等のトランジスタが設けられており、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120にはFWD等のダイオードが設けられている。
【0024】
本例では、トランジスタ部70および第1ダイオード部80は、X軸方向において交互に配置されている。トランジスタ部70および第1ダイオード部80のそれぞれは、Y軸方向に長手を有するストライプ形状であってよい。トランジスタ部70および第1ダイオード部80が設けられた領域をメイン素子部110と称する。
【0025】
第2ダイオード部120は、メイン素子部110において、トランジスタ部70および第1ダイオード部80と順番に配置されていてよく、図1に示すようにメイン素子部110以外の領域に配置されていてもよい。半導体装置100は、メイン素子部110以外の領域に配置された1つ以上のパッド114を備える。
【0026】
パッド114は、例えばエミッタ電極、ゲート電極等の、半導体基板10の上方に配置された上面電極と接続されている。また、いずれかのパッド114は、半導体基板10に設けられた温度検出用のダイオードに電気的に接続されていてもよい。図1の例では、第2ダイオード部120は、メイン素子部110以外の領域において、パッド114とX軸方向に並んで配置されている。ただし、第2ダイオード部120の配置は、これに限定されない。
【0027】
第1ダイオード部80および第2ダイオード部120は、互いに並列に設けられる。本例では、半導体基板10の上面には上面電極が設けられ、下面には下面電極が設けられる。第1ダイオード部80および第2ダイオード部120は、共通の上面電極および下面電極に接続されている。
【0028】
第1ダイオード部80および第2ダイオード部120は、半導体基板10の深さ方向における抵抗率が異なる。本明細書では、半導体基板10の上面における単位面積あたりの、上面電極と下面電極との間の抵抗を抵抗率と称する。つまり、それぞれのダイオード部の、上面電極と下面電極との間の抵抗値を、それぞれのダイオード部の面積で除算したものを、抵抗率を称する。抵抗率は、半導体基板10の抵抗値だけで算出してよく、基板の抵抗に加えて半導体基板10の上面および下面に配置された電極、パッド、抵抗体等の抵抗を考慮して算出してもよい。半導体基板10の抵抗値として、ダイオード部がオン動作しているときのオン抵抗の値を用いてよい。
【0029】
抵抗率が異なる第1ダイオード部80および第2ダイオード部120を用いることで、半導体装置100の特性を容易に調整できる。例えば、いずれかのダイオード部の抵抗率を上げることで、ダイオード部の逆回復時における電流ピークIrpを抑制できる。
【0030】
また、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120は、総面積が異なっていてもよい。また、第1ダイオード部80の一つあたりの面積が、第2ダイオード部120の一つあたりの面積と異なっていてもよい。一例として、第2ダイオード部120は、一つあたりの面積が第1ダイオード部80の一つ当たりの面積より小さく、且つ、第2ダイオード部120の総面積は、第1ダイオード部80の総面積よりも小さい。本例では、トランジスタ部70で分離された領域を、一つの第1ダイオード部80とする。また、後述するように、分離ウェル領域で分離された領域を、一つの第2ダイオード部120としてよい。
【0031】
それぞれのダイオード部の総面積を異ならせることで、半導体装置100の特性を調整することが更に容易になる。例えば、半導体装置100を製品に実装すると、実装上やむを得ないインダクタンス成分が存在する。インダクタンス成分が大きくなると、サージ電圧が大きくなり、発振が生じる。これに対して、面積の小さいダイオード部の抵抗率を大面積ダイオード部の抵抗率よりも高くすることで、小面積ダイオード部の逆回復時のピーク電流Irpが抑制できる。さらに、小面積ダイオード部は、容量が小さいことによる高速応答性と、インピーダンス成分が小さくインピーダンス遅れが小さいことによる高速応答性とを有するので、ダイオード部の逆回復時における発振を抑制できる。
【0032】
また、小面積ダイオード部の抵抗率を、大面積ダイオード部の抵抗率よりも小さくする(すなわち、大面積ダイオード部の抵抗率を相対的に大きくする)と、ダイオード部全体としてのキャリアの注入量が大きく抑制されるので、逆回復時におけるピーク電流Irpを大きく抑制でき、また、ピーク電流Irpから電流が収束するときの電流の時間変化(-di/dt)を小さくできる。また、アノード・カソード間の電圧の立ち上がりおよび立下りが電流に追従して高速になり、半導体装置100のオン損失および逆回復損失を低減できる。
【0033】
本例では、第1ダイオード部80の総面積に比べて、第2ダイオード部120の総面積が小さいとするが、面積の関係は逆であってもよい。第2ダイオード部120の総面積は、第1ダイオード部80の総面積の1/1000倍以上、1/10倍以下であってよい。このような面積比とすることで、第1ダイオード部80による所定のダイオード特性を維持しつつ、逆回復時における特性を向上できる。第1ダイオード部80および第2ダイオード部120の抵抗率の差は、10%以上、200%以下であってよい。
【0034】
本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面においてメイン素子部110を囲んで設けられた耐圧構造部112を備える。耐圧構造部112は、ガードリングまたはフィールドプレート等を有しており、半導体基板10の内部の空乏層を半導体基板10の端部まで延伸させる。これにより、半導体装置100の耐圧を向上させている。
【0035】
本例においてそれぞれのパッド114は、半導体基板10の上面において耐圧構造部112が囲む領域に配置される。第2ダイオード部120は、半導体基板10の上面において耐圧構造部112が囲む領域に配置されてよく、耐圧構造部112の外側に配置されてもよい。図1の例では、第2ダイオード部120は、半導体基板10の上面において耐圧構造部112が囲む領域に配置されている。
【0036】
図2は、半導体基板10の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、メイン素子部110において、半導体基板10の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ソース領域12、ベース領域14、コンタクト領域15および第1ウェル領域17を備える。
【0037】
本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたゲート配線部51を備える。また、半導体基板10の上面の上方には、エミッタ電極が形成されているが、図2では省略している。エミッタ電極は、アルミニウム等の導電材料で形成されている。ゲート配線部51は、不純物がドープされたポリシリコン等の導電材料で形成されている。エミッタ電極は、メイン素子部110および第2ダイオード部120の両方において、半導体基板10の上面の上方に設けられている。メイン素子部110および第2ダイオード部120に設けられたエミッタ電極は一体に形成されていてよい。
【0038】
エミッタ電極とゲート配線部51との間、および、エミッタ電極と半導体基板10の上面との間には絶縁膜が設けられるが、図2では省略している。本例では、コンタクトホール54およびコンタクトホール56が、当該絶縁膜を貫通して設けられる。
【0039】
エミッタ電極は、コンタクトホール54等を通って、半導体基板10の上面におけるソース領域12、コンタクト領域15、ベース領域14および第1ウェル領域17と接触する。本例のコンタクトホール54は、X軸方向に沿って配列されたそれぞれのトレンチ部の間に設けられている。また、エミッタ電極は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部57が設けられてよい。接続部57は、熱酸化膜等の絶縁膜を挟んで、半導体基板10の上面に設けられる。本例においてコンタクトホール56は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端に配置される。
【0040】
ゲート配線部51と半導体基板10との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が設けられる。ゲート配線部51は、半導体基板10の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲート配線部51は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0041】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面においてX軸方向に沿って所定の間隔で配列される。トランジスタ部70においては、1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30が、X軸方向に沿って交互に配置されている。第1ダイオード部80においては、1つ以上のダミートレンチ部30が、X軸方向に沿って配置されている。
【0042】
本例のゲートトレンチ部40は、Y軸方向に沿って直線形状に延伸する直線部分41と、直線部分41の先端において2つの直線部分41を接続する先端部分43を有してよい。先端部分43の少なくとも一部は、半導体基板10の上面において曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの直線部分41の先端を先端部分43で接続することで、直線部分41の端部における電界集中を緩和できる。
【0043】
ゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分41の間には、1つ以上のダミートレンチ部30が設けられる。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、2つの直線部分と先端部分を有するU字形状であってよく、先端部分を有さずに直線部分だけの直線形状であってもよく、U字形状と直線形状が混在していてもよい。ダミートレンチ部30は、ゲート配線部51とは重ならない位置に設けられる。
【0044】
半導体基板10の上面において、それぞれのトレンチ部の直線部分に挟まれた領域には、第2導電型のベース領域14が設けられる。本例のベース領域14はP-型である。ベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型(本例ではP+型)のコンタクト領域15が選択的に設けられる。なお、第1ダイオード部80に、コンタクト領域15が設けられなくてもよい。本例においてドーピング濃度は、単位体積当たりにおける不純物の濃度を指す。ドーピング濃度は、ドナーまたはアクセプタとして活性化している不純物の濃度を指してもよい。また、各領域のドーピング濃度は、当該領域における最大のドーピング濃度を指してよい。
【0045】
トランジスタ部70におけるベース領域14の上面には、第1導電型のソース領域12が選択的に形成される。本例のソース領域12はN+型である。本例において、トランジスタ部70のコンタクト領域15およびソース領域12は、Y軸方向に沿って交互に半導体基板10の上面に露出するように設けられる。ただし、コンタクト領域15およびソース領域12の配置はこれに限定されない。ソース領域12が、ゲートトレンチ部40の直線部分41に沿って配置されていてもよい。第1ダイオード部80には、ソース領域12が形成されていない。
【0046】
第1ウェル領域17は、半導体基板10の上面において、ゲートトレンチ部40の先端部分43と重って設けられる。つまり、半導体基板10の上面と平行な面において、第1ウェル領域17が設けられた領域内に、ゲートトレンチ部40の先端部分43が配置されている。先端部分43のうち、少なくともY軸方向における最端部が、第1ウェル領域17と重なって配置される。本例の第1ウェル領域17は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高いP+型の領域である。
【0047】
第1ウェル領域17は、半導体基板10の上面において、全てのゲートトレンチ部40および全てのダミートレンチ部30を囲むように設けられてよい。半導体基板10の上面において第1ウェル領域17が囲む領域内に、全てのソース領域12が配置されてよい。
【0048】
本例の第2ダイオード部120は、半導体基板10の上面において、第1ウェル領域17の外側に設けられている。第1ウェル領域17の外側とは、半導体基板10の上面において、第1ウェル領域17を挟んで、ソース領域12とは逆側の領域を指してよい。半導体基板10の上面において第1ウェル領域17が所定の領域を囲んで設けられている場合、第1ウェル領域17の外側とは、第1ウェル領域17が囲んでいない領域を指してもよい。
【0049】
本例の第2ダイオード部120は、半導体基板10の上面に露出する第2導電型(本例ではP-型)のアノード領域126を有する。アノード領域126と、半導体基板10の内部に形成された第1導電型のドリフト領域とがPN接合を形成する。他の例では、第2ダイオード部120は、ショットキーダイオードであってもよい。
【0050】
第2ダイオード部120は、半導体基板10の上面において、アノード領域126を囲んで設けられた第2ウェル領域122を有してよい。第2ウェル領域122は、分離ウェル領域の一例である。第2ウェル領域122は、アノード領域126およびベース領域14のいずれよりもドーピング濃度の高い第2導電型(本例ではP+型)である。図2に示すように、第2ダイオード部120および第1ダイオード部80は、ゲート配線部51を挟んで配置されてよく、ゲート配線部51に対して同じ側に配置されていてもよい。
【0051】
図3は、図2におけるA-A断面の一例を示す図である。本例のA-A断面は、メイン素子部110におけるソース領域12を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、絶縁膜26、エミッタ電極52およびコレクタ電極58を有する。コレクタ電極58は、エミッタ電極52と同一の材料で形成されてよい。エミッタ電極52は上面電極の一例であり、コレクタ電極58は下面電極の一例である。半導体基板10に形成されたトランジスタ部70および第1ダイオード部80は、エミッタ電極52およびコレクタ電極58に接続されている。
【0052】
絶縁膜26は、例えばボロンおよびリン等の不純物が添加されたシリケートガラスである。絶縁膜26は、半導体基板10の上面21において選択的に形成される。エミッタ電極52は、半導体基板10の上面の上方に設けられる。エミッタ電極52および半導体基板10の間には絶縁膜26が設けられる。エミッタ電極52は、絶縁膜26に設けられたコンタクトホール54、56を介して半導体基板10と接触する。コレクタ電極58は、半導体基板10の下面23に設けられる。コレクタ電極58は、半導体基板10の下面23と接して設けられてよい。コレクタ電極58は、半導体基板10の下面23全体に設けられてよい。
【0053】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
【0054】
半導体基板10の内部には、N-型のドリフト領域18が設けられる。当該断面においてドリフト領域18と半導体基板10の上面21との間には、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高いN+型のソース領域12が設けられる。当該断面においてソース領域12とドリフト領域18との間には、P-型のベース領域14が設けられる。当該断面におけるドリフト領域18は、半導体基板10のうち、ソース領域12、ベース領域14、バッファ領域20、コレクタ領域22およびカソード領域82が形成されずに残存した領域である。
【0055】
ベース領域14は、半導体基板10の上面からボロン等のP型の不純物を注入することで形成されてよい。ソース領域12は、半導体基板10の上面からリンや砒素等のN型の不純物を注入することで形成されてよい。
【0056】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで形成され、側壁においてソース領域12およびベース領域14と接している。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21から、ソース領域12およびベース領域14を貫通して設けられる。
【0057】
ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで形成され、側壁においてベース領域14と接している。ダミートレンチ部30の側壁のうち、ゲートトレンチ部40と対向する側壁は、ソース領域12およびベース領域14と接していてよい。
【0058】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下面側に形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0059】
トランジスタ部70においてバッファ領域20の下面側には、P+型のコレクタ領域22が形成される。第1ダイオード部80においてバッファ領域20の下面側には、N+型のカソード領域82が形成される。
【0060】
ゲートトレンチ部40は、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42に覆われている。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0061】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において絶縁膜26により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0062】
本例のダミートレンチ部30は、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチ部30の内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32により覆われている。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において絶縁膜26により覆われる。
【0063】
ダミートレンチ部30を設けることで、キャリアの蓄積効果を高めて伝導度変調を促進し、オン電圧を低下させることができる。また、ゲートトレンチ部40に対するダミートレンチ部30の割合を調整することで、半導体装置100のスイッチング速度を調整することができる。
【0064】
図4は、図2におけるB-B断面の一例を示す図である。本例のB-B断面は、第2ダイオード部120の全体と、第1ダイオード部80の一部を横切る、YZ面に平行な断面である。
【0065】
エミッタ電極52は、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120の両方の上方に配置されている。エミッタ電極52は、ゲート配線部51の上方を通って、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120の両方に跨って配置されていてよい。ただし、ゲート配線部51の上方にゲート電極が設けられている領域には、エミッタ電極52は設けられていない。
【0066】
エミッタ電極52と半導体基板10との間には、絶縁膜26が設けられる。絶縁膜26にはコンタクトホール54、56が形成されており、当該コンタクトホール54、56を介してエミッタ電極52と半導体基板10とが接触する。当該断面において、エミッタ電極52と、第1ウェル領域17とが接触する。図2においてコンタクトホール54が設けられている領域では、エミッタ電極52は、ベース領域14およびコンタクト領域15とも接触する。第1ウェル領域17においてエミッタ電極52と接触する領域には、第1ウェル領域17よりも高濃度のP型のオーミック領域128が設けられてよい。オーミック領域128は、後述する第2ウェル領域122にも設けられてよい。
【0067】
図2に示したように、第1ウェル領域17は、XY面においてゲートトレンチ部40の先端部分43を囲んで設けられる。また、YZ面においても、第1ウェル領域17は、ゲートトレンチ部40の先端部分43を囲んで設けられてよい。第1ウェル領域17は、ゲートトレンチ部40の先端部分43よりもZ軸方向において深くまで形成されている。
【0068】
第1ウェル領域17の内側(本例ではY軸正側)には、ベース領域14が形成されている。第1ダイオード部80におけるベース領域14は、アノード領域として機能する。当該断面において、ベース領域14の上面には、コンタクト領域15が選択的に設けられている。なお、第1ダイオード部80に、コンタクト領域15が設けられなくてもよい。
【0069】
第2ダイオード部120において、エミッタ電極52は、第2ウェル領域122およびアノード領域126と電気的に接続されている。アノード領域126は、半導体基板10の上面21と、ドリフト領域18との間に設けられている。
【0070】
第1ダイオード部80および第2ダイオード部120においては、半導体基板10の下面23に露出するカソード領域82が設けられている。第2ダイオード部120におけるカソード領域82は、第1ダイオード部80におけるカソード領域82と同一のドーピング濃度を有し、同一の深さ位置に設けられてよい。第1ダイオード部80および第2ダイオード部120におけるカソード領域82は、共通のコレクタ電極58と電気的に接続されている。
【0071】
第1ダイオード部80の面積は、半導体基板10の上面21にベース領域14が設けられ、且つ、半導体基板10の下面23にカソード領域82が設けられた領域のXY面における面積を指してよい。また、第2ダイオード部120の面積は、半導体基板10の上面21にアノード領域126が設けられ、且つ、半導体基板10の下面23にカソード領域82が設けられた領域のXY面における面積を指してよい。
【0072】
第2ダイオード部120のアノード領域126のドーピング濃度と、第1ダイオード部80のベース領域14(アノード領域)のドーピング濃度とを異ならせることで、第1ダイオード部80と第2ダイオード部120の抵抗率を異ならせることができる。例えば、ドーピング濃度をより高くすることで、キャリアの注入量が増大するので、抵抗率を下げることができる。
【0073】
第2ダイオード部120のアノード領域126のドーピング濃度は、第1ダイオード部80のベース領域14(アノード領域)のドーピング濃度より高くてよい。本明細書に添付した図面では、アノード領域126およびベース領域14のドーピング濃度を、ともにP-で示しているが、アノード領域126およびベース領域14のドーピング濃度は異なっていてよい。この場合、第2ダイオード部120の抵抗率を、第1ダイオード部80の抵抗率よりも低くできる。第2ダイオード部120のアノード領域126のドーピング濃度は、第1ダイオード部80のベース領域14(アノード領域)のドーピング濃度より低くてよい。この場合、第2ダイオード部120の抵抗率を、第1ダイオード部80の抵抗率よりも高くできる。
【0074】
第2ダイオード部120のアノード領域126のドーピング濃度と、第1ダイオード部80のベース領域14(アノード領域)のドーピング濃度との差は、第2ダイオード部120のアノード領域126のドーピング濃度の10%以上、200%以下であってよい。
【0075】
また、第2ダイオード部120のアノード領域126を囲むように、第2ウェル領域122を設けることで、第1ダイオード部80およびトランジスタ部70と、第2ダイオード部120との間でキャリアが移動することを抑制できる。つまり、第2ウェル領域122により、第2ダイオード部120は、第1ダイオード部80およびトランジスタ部70と分離されている。第2ウェル領域122は、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで設けられる。
【0076】
なお、第2ウェル領域122のドーピング濃度および深さD2、および幅Wを設定することで、第2ダイオード部120の耐圧を調整できる。例えば、第2ダイオード部120の耐圧が、トランジスタ部70の耐圧よりもわずかに大きくなるように、第2ウェル領域122のドーピング濃度等を設定してよい。これにより、トランジスタ部70よりも第2ダイオード部120が先に降伏することを抑制して、比較的に面積の小さい第2ダイオード部120に電流が集中することを抑制できる。第2ダイオード部120は、第2ウェル領域122よりも外側に第3、第4のウェル領域を有してもよい。
【0077】
第2ダイオード部120およびトランジスタ部70は、同一の半導体基板10に形成されるので、耐圧はほぼ同一となる。これに対して、第2ウェル領域122を設けることで、第2ダイオード部120の耐圧を向上させることができる。第2ウェル領域122と第1ウェル領域17の距離を離すほど耐圧が向上する。
【0078】
また、第2ウェル領域122の深さD2は、第1ウェル領域17の深さD1よりも深くてよいし同じでよい。各領域の深さとは、半導体基板10の上面21から、各領域の最下端までのZ軸方向の距離を指す。
【0079】
第2ウェル領域122を深く形成することで、メイン素子部110からアノード領域126にキャリアが流れることを抑制できる。これにより、メイン素子部110と、第2ダイオード部120とをより分離できる。
【0080】
また、第2ウェル領域122のドーピング濃度は、第1ウェル領域17のドーピング濃度と同一であってよく、低くてよく、高くてもよい。第2ウェル領域122のドーピング濃度を高くすることで、メイン素子部110の動作が、第2ダイオード部120の動作に与える影響を低減できる。
【0081】
また、第2ウェル領域122のドーピング濃度は、アノード領域126のドーピング濃度よりも高い。一例として第2ウェル領域122のドーピング濃度は、1.0×1013/cm以上、1.0×1017/cm以下である。一例としてアノード領域126およびベース領域14のドーピング濃度は、1.0×1013/cm以上、1.0×1016/cm以下である。
【0082】
図5は、図2におけるB-B断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、図4に示した構造に対して、第1ダイオード部80に設けられたライフタイムキラー150および第2ダイオード部120に設けられたライフタイムキラー152を更に有する。他の構造は、図4に示した構造と同一であってよい。なお、図5の例におけるアノード領域126およびベース領域14のドーピング濃度は、図4の例と同様に異なっていてよく、同一であってもよい。
【0083】
ライフタイムキラー150およびライフタイムキラー152は、半導体基板10の内部に設けられており、キャリアのライフタイムを制御する。ライフタイムキラー150および152は、ヘリウムイオン、プロトンまたは電子線等を半導体基板10に照射することで形成された結晶欠陥であってよい。本例のライフタイムキラー150および152は、半導体基板10の上面側に設けられている。半導体基板10の上面側とは、半導体基板10の深さ方向における中央よりも上側の領域を指す。ライフタイムキラー150および152は、ベース領域14およびアノード領域126の下端よりも、半導体基板10の上面21から見て深い位置に設けられてよい。ライフタイムキラー150および152は、第1ウェル領域17の下端よりも深い位置に設けられてよく、第2ウェル領域122の下端よりも深い位置に設けられてもよい。
【0084】
本例では、ライフタイムキラー150および152の濃度は異なっている。ライフタイムキラー150および152の濃度を調整することで、結晶欠陥に起因するキャリアの再結合の頻度を調整でき、キャリアのライフタイムを調整できる。ライフタイムキラー150およびライフタイムキラー152は、単位体積あたりの濃度が異なってよい。つまり、単位体積あたりの結晶欠陥密度が異なってよい。ライフタイムキラーの濃度を調整することで、キャリアのライフタイムが調整できるので、ダイオード部の抵抗率を調整できる。例えば、ライフタイムキラーの濃度をより高くすることで、キャリアのライフタイムが短くなるので、抵抗率を上げることができる。
【0085】
第2ダイオード部120のライフタイムキラー152の濃度は、第1ダイオード部80のライフタイムキラー150の濃度より高くてよい。この場合、第2ダイオード部120の抵抗率を、第1ダイオード部80の抵抗率よりも高くできる。第2ダイオード部120のライフタイムキラー152の濃度は、第1ダイオード部80のライフタイムキラー150の濃度より低くてもよい。この場合、第2ダイオード部120の抵抗率を、第1ダイオード部80の抵抗率よりも低くできる。
【0086】
第2ダイオード部120のライフタイムキラー152の濃度と、第1ダイオード部80のライフタイムキラー150の濃度との差は、濃度が高い方のライフタイムキラーの濃度の10%以上、200%以下であってよい。なお、ライフタイムキラー150およびライフタイムキラー152は、いずれか一方だけが設けられていてもよい。
【0087】
図6は、図2におけるB-B断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、第1ダイオード部80における半導体基板10の厚みT1と、第2ダイオード部120における半導体基板10の厚みT2とが異なる。半導体基板10の厚みとは、Z軸方向における、上面21と下面23との距離を指す。半導体基板10の厚み以外の構造は、図4または図5に示した構造と同一であってよい。なお、図6の例におけるアノード領域126およびベース領域14のドーピング濃度は、図4の例と同様に異なっていてよく、同一であってもよい。
【0088】
半導体基板10の厚みT1は、ベース領域14およびカソード領域82が設けられている領域における半導体基板10の厚みの最小値を用いてよい。半導体基板10の厚みT2は、アノード領域126およびカソード領域82が設けられている領域における半導体基板10の厚みの最小値を用いてよい。半導体基板10の厚みが小さい領域には、半導体基板10の下面23に窪み部154が設けられている。コレクタ電極58は、窪み部154に沿って設けられている。
【0089】
第1ダイオード部80および第2ダイオード部120は、ドリフト領域18の厚みが異なってよい。ベース領域14とアノード領域126の厚みは同一であってよい。また、バッファ領域20およびカソード領域82の厚みは、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120で同一であってよい。
【0090】
半導体基板10の厚みを異ならせることで、第1ダイオード部80と第2ダイオード部120との抵抗率を異ならせることができる。例えば、半導体基板10を薄くすることで、ダイオード部の抵抗率を小さくできる。
【0091】
第2ダイオード部120の半導体基板10の厚みT2は、第1ダイオード部80の半導体基板10の厚みT1より大きくてよい。この場合、第2ダイオード部120の抵抗率を、第1ダイオード部80の抵抗率よりも高くできる。第2ダイオード部120の半導体基板10の厚みT2は、第1ダイオード部80の半導体基板10の厚みT1より小さくてもよい。この場合、第2ダイオード部120の抵抗率を、第1ダイオード部80の抵抗率よりも低くできる。第2ダイオード部120の半導体基板10の厚みT2と、第1ダイオード部80の半導体基板10の厚みT1との差は、厚みT2の10%以上、30%以下であってよい。
【0092】
図7は、窪み部154の形成工程の一例を示す図である。半導体基板10の下面23に窪み部154を形成する場合、半導体基板10の上面21に、所定のパターンの犠牲層160を形成する(S700)。犠牲層160は、シリケートガラス等であってよく、樹脂等であってよく、他の材料で形成されてもよい。犠牲層160は、窪み部154が形成されるべき領域と対向する位置に設けられる。
【0093】
次に、半導体基板10の上面21の端部が上方に変位するように、半導体基板10をたわませる(S702)。S702においては、例えば半導体基板10の上面21側に基準面を規定する部材を配置して、半導体基板10の上面21を吸引してよく、下面23を押圧してもよい。これにより、半導体基板10の上面21の端部が、犠牲層160の上面と同じ高さ位置となる程度に、半導体基板10の全体がたわむ。これにより、半導体基板10の下面23のうち、犠牲層160と対向する領域が下側に突出する。
【0094】
次に、半導体基板10の下面23側を、CMP等の方法により研削する(S704)。図7においては、研削された部分161を破線で示している。これにより、犠牲層160と対向する下面23の領域が研削される。
【0095】
次に、半導体基板10に対する押圧または吸引を解除して、半導体基板10のたわみを無くす(S706)。これにより、犠牲層160と対向する下面23の領域に、窪み部154を形成できる。この後、犠牲層160を除去する。また、犠牲層160を除去した後に、半導体基板10の内部に不純物を注入して、半導体基板10の内部の各領域を形成してよい。
【0096】
図8は、図2におけるB-B断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120の少なくとも一方に、エミッタ電極52と接続された抵抗部(図8では、第1抵抗部162および第2抵抗部164)を設けている。他の構造は、図4から図6に示した構造と同一であってよい。なお、図8の例におけるアノード領域126およびベース領域14のドーピング濃度は、図4の例と同様に異なっていてよく、同一であってもよい。
【0097】
第1抵抗部162は、第1ダイオード部80が接続されたエミッタ電極52の領域の上に設けられている。第1抵抗部162の少なくとも一部は、ベース領域14の上方に配置されている。第2抵抗部164は、第2ダイオード部120が接続されたエミッタ電極52の領域の上に設けられている。第2抵抗部164の少なくとも一部は、アノード領域126の上方に配置されている。
【0098】
第1抵抗部162および第2抵抗部164は、ポリシリコンで形成されてよく、他の材料で形成されていてもよい。第1ダイオード部80の第1抵抗部162と、第2ダイオード部120の第2抵抗部164は、Z軸方向における抵抗値が異なる。それぞれの抵抗部の抵抗値は、例えばポリシリコンにドープする不純物の濃度、Z軸方向における厚み、XY面における面積等で調整できる。第1抵抗部162および第2抵抗部164の上部には、それぞれ独立したパッド166が設けられてよい。パッド166は、ワイヤ等により半導体装置100とは異なる装置と電気的に接続されてよい。
【0099】
第2ダイオード部120の第2抵抗部164の抵抗値は、第1ダイオード部80の第1抵抗部162の抵抗値より高くてよい。この場合、第2ダイオード部120に流れる電流に対する抵抗を、第1ダイオード部80に流れる電流に対する抵抗よりも高くできる。第2ダイオード部120の第2抵抗部164の抵抗値は、第1ダイオード部80の第1抵抗部162の抵抗値より小さくてもよい。この場合、第2ダイオード部120に流れる電流に対する抵抗を、第1ダイオード部80に流れる電流に対する抵抗よりも低くできる。第2抵抗部164と第1抵抗部162の抵抗値の差は、第2抵抗部164および第1抵抗部162のうち高い方の抵抗値の10%以上、200%以下であってよい。
【0100】
なお、図4において説明したベース領域14およびアノード領域126のドーピング濃度を異ならせる構成、図5において説明したライフタイムキラーの濃度を異ならせる構成、図6において説明した半導体基板10の厚みを異ならせる構成、ならびに、図8において説明した抵抗部の抵抗値を異ならせる構成のうち、2以上の構成を組み合わせてもよい。
【0101】
図9は、半導体装置100を含む、出力装置200の一例を示す図である。本例の出力装置200は、半導体装置100-1および半導体装置100-2、保護回路210、ハイサイド駆動回路220、ならびに、ローサイド駆動回路230を備える。
【0102】
それぞれの半導体装置100は、コレクタ端子C、エミッタ端子E、ゲート端子Gおよびセンス端子Vfを備える。コレクタ端子Cはコレクタ電極58に電気的に接続され、エミッタ端子Eはエミッタ電極52に電気的に接続され、ゲート端子Gはゲートトレンチ部40のゲート導電部44に電気的に接続され、センス端子Vfは、エミッタ電極52とは分離して設けられたセンス用電極に電気的に接続される。
【0103】
半導体装置100-1のコレクタ端子Cには、所定の高電圧HVが印加されている。半導体装置100-1のエミッタ端子Eは、半導体装置100-2のコレクタ端子Cに接続されている。半導体装置100-2のエミッタ端子Eは、所定の基準電圧(本例ではグランド電圧)が印加されている。半導体装置100-1のエミッタ端子Eは負荷に接続される。
【0104】
ハイサイド駆動回路220は、半導体装置100-1のゲート端子Gと接続されており、半導体装置100-1を制御する。ローサイド駆動回路230は、半導体装置100-2のゲート端子Gと接続されており、半導体装置100-2を制御する。一例として、半導体装置100-1および半導体装置100-2のトランジスタ部70の一方がオン状態に制御され、他方がオフ状態に制御される。これにより、負荷に所定の電圧および電流を供給する。
【0105】
それぞれの半導体装置100において、センス端子Vfと、コレクタ端子Cとの間には、センスダイオード170が設けられている。センス端子Vfは、半導体基板10の上面21に設けられている。センスダイオード170のアノードは、第1ダイオード部80または第2ダイオード部120と同様の構造を有するが、エミッタ電極52ではなく、センス端子Vfに接続されている。
【0106】
保護回路210は、通常動作時にセンスダイオード170が順バイアスとなり、コレクタ端子Cの電圧が所定値以上となった場合にセンスダイオード170が逆バイアスとなる電圧を、センス端子Vfに印加する。つまり、保護回路210は、センスダイオード170の通常動作時におけるコレクタ電圧より大きい電圧を、センス端子Vfに印加する。保護回路210は、抵抗240を介してセンス端子Vfに接続されてよい。抵抗240を設けることで、第2ダイオード部120に流れる電流を微小にできる。また、保護回路210とセンス端子Vfとを接続する経路には、容量242が並列に接続されている。
【0107】
それぞれの半導体装置100において、第1ダイオード部80と並列に、第2ダイオード部120が設けられている。また、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120における抵抗率の違いを、付加的な抵抗172で示している。本例では、第2ダイオード部120の抵抗率が、第1ダイオード部80の抵抗率より高い。面積の小さい第2ダイオード部120における抵抗率を調整することで、半導体装置100の特性を調整できる。
【0108】
図10は、図4において説明したように、ベース領域14とアノード領域126とのドーピング濃度を異ならせた半導体装置100における、逆回復時の電流波形の一例を示す図である。図11は、逆回復時の電圧波形の一例を示す。図10および図11の例では、第1ダイオード部80の総面積と、第2ダイオード部120の総面積との比が、10:1、100:1、1000:1、10000:1(いずれも、第1ダイオード部80が大面積)の場合を示している。また、ベース領域14のドーピング濃度は、アノード領域126のドーピング濃度の2倍である。つまり、比較的に小面積の第2ダイオード部120の抵抗率を、第1ダイオード部80の抵抗率よりも高くしている。
【0109】
図10および図11に示すように、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120の総面積を調整することで、第1ダイオード部80および第2ダイオード部120の逆回復時における電流および電圧特性を調整できる。具体的には、第2ダイオード部120の総面積をより大きくすることで、逆回復時のピーク電流Irpをより抑制できる。また、第2ダイオード部120の総面積をより大きくすることで、逆回復時のアノード・カソード間電圧Vakの立ち上がりをより高速化できる。
【0110】
図12は、ベース領域14とアノード領域126とのドーピング濃度を異ならせた半導体装置100における、逆回復時の損失Errの一例を示す。図12の例では、第1ダイオード部80の総面積に対する第2ダイオード部120の総面積の割合を横軸として、0%(第2ダイオード部120を設けない)、0.01%(10000:1)、0.1%(1000:1)、1%(100:1)、10%(10:1)の場合の逆回復損失Errを示している。
【0111】
図12に示すように、第2ダイオード部120の面積が、第1ダイオード部80の面積の0.1%以上になると、逆回復損失Errが低下していることがわかる。また、第2ダイオード部120の面積が、第1ダイオード部80の面積の1%近傍で、逆回復損失Errが最小となっている。
【0112】
第2ダイオード部120の総面積は、第1ダイオード部80の総面積の0.1%以上、10%以下であってよい。第2ダイオード部120の総面積は、第1ダイオード部80の総面積の0.5%以上、5%以下であってもよい。
【0113】
図13は、半導体装置100の逆回復時における電圧波形の一例を示す。図13に示す波形は、電圧Vakが立ち上がった後の発振部分を含んでいる。図14は、半導体装置100の逆回復時における電流波形の一例を示す。図14に示す波形は、電流Iakがピーク電流Irpから0Aに収束するときの発振部分を含んでいる。
【0114】
図13および図14では、ベース領域14のドーピング濃度が、アノード領域126のドーピング濃度の2倍の例を実線で示し、1倍の例を破線で示している。図13および図14に示すように、ベース領域14のドーピング濃度を高くすることで、逆回復時の電圧および電流の発振を抑制できている。発振を抑制するために大きなゲート抵抗を接続しなくてよいので、逆回復損失Errを低減できる。
【0115】
図15は、ベース領域14とアノード領域126のドーピング濃度比を変更した場合、すなわちベース領域14とアノード領域126のドーピング濃度比を1:1から2:1に変更した場合における、逆回復時におけるピーク電圧Vak-pと、電流波形の傾きdi/dtの一例を示す。なお、本例では、第1ダイオード部80の総面積が第2ダイオード部120の総面積よりも大きい。したがって、ベース領域14がアノード領域126よりも大きい。ピーク電圧Vak-pは、図13に示すように、電圧Vakが立ち上がった後の最初のピーク(極大値)の電圧を指す。傾きdi/dtは、図14に示すように、電流Iakがピーク電流Irpとなってから、電流Iakが最初に0Aとなるまでの電流の時間変化の平均値を指す。
【0116】
図15においてそれぞれの直線を囲む丸印および当該丸印に付与されている矢印は、それぞれの直線に対応する縦軸を指している。図15においては、ピーク電圧Vak-pを破線で示し、電流波形の傾きdi/dtを実線で示している。図15に示すように、ベース領域14のドーピング濃度を高くすることで、ピーク電圧Vak-pおよび傾きdi/dtを小さくできる。
【0117】
図16は、半導体装置100の上面における構成の他の例を示す。本例では、XY面内において第2ダイオード部120が、第1ダイオード部80の内部に配置されている。本例においても、第2ダイオード部120は、第2ウェル領域122により、第1ダイオード部80と分離されていることが好ましい。つまり、第1ダイオード部80のベース領域14と、第2ダイオード部120のアノード領域126との間に、第2ウェル領域122が設けられている。
【0118】
XY面内において、複数の第2ダイオード部120が分散して配置されていてよい。例えば、それぞれの第1ダイオード部80に、1つ以上の第2ダイオード部120が配置されていてよい。第2ダイオード部120を分散して配置することで、XY面内における半導体装置100の特性のばらつきを抑制できる。
【0119】
また半導体装置100は、半導体基板10に設けられたセンスダイオード部180を更に備えてよい。センスダイオード部180は、メイン素子部110におけるいずれかのノードの電圧が、所定の電圧範囲内か否かを検出する。本例のセンスダイオード部180は、トランジスタ部70に含まれるIGBTのコレクタ電圧が、所定の電圧範囲内か否かを検出する。本例のセンスダイオード部180は、カソード端子にIGBTのコレクタ電圧が印加される。センスダイオード部180のアノード端子には、通常動作時にはセンスダイオード部180が順バイアスとなり、IGBTのコレクタ電圧が所定値以上となった場合にセンスダイオード部180が逆バイアスとなるような電圧が印加される。センスダイオード部180の状態に基づいて、IGBTのコレクタ電圧が所定値以上となったか否かを検出できる。トランジスタ部70に過電流が流れるとIGBTのコレクタ電圧が上昇するので、センスダイオード部180を設けることで過電流を検出できる。
【0120】
センスダイオード部180は、図2および図4において説明した第2ダイオード部120と同一の構造を有してよい。ただし、センスダイオード部180における半導体基板10の抵抗率は、第1ダイオード部80における半導体基板10の抵抗率と同一であってよい。また、半導体基板10の上面におけるセンスダイオード部180の面積は、第2ダイオード部120の総面積より大きくてよく、小さくてもよい。
【0121】
センスダイオード部180は、ゲート制御を行わないので、センス用のトランジスタ素子のように、トランジスタ部70とのスイッチングタイミングのずれが生じない。また、順バイアス時にセンスダイオード部180に流れる電流を小さくすることで、センスダイオード部180における損失は非常に小さくできる。
【0122】
また、センスダイオード部180を第1ダイオード部80と同一の半導体基板10に形成することで、第1ダイオード部80と同一の工程でセンスダイオード部180を形成できる。また、半導体装置100の外部に、センス用のダイオード素子を付加しなくてよいので、部品点数を低減できる。
【0123】
また、センス用のトランジスタを形成する場合、N+型のソース領域等の微細な領域を形成するので特性のバラツキが大きくなるが、センスダイオード部180は微細なソース領域等を形成しないので、特性のバラツキを低減できる。また、センスダイオード部180を微細化することが容易なので、半導体装置100を微細化しても、半導体装置100にセンスダイオード部180を内蔵することが容易となる。
【0124】
センスダイオード部180は、半導体基板10の上面において耐圧構造部112が囲む領域に配置されてよく、耐圧構造部112の外側に配置されてもよい。図16の例では、センスダイオード部180は、半導体基板10の上面において耐圧構造部112が囲む領域に配置されている。また、センスダイオード部180は、図1から図15において説明したいずれの態様に追加してもよい。
【0125】
図17は、半導体装置100の上面における構成の他の例を示す。本例では、XY面内において、2つのトランジスタ部70に挟まれて、第2ダイオード部120がストライプ状に設けられている。第2ダイオード部120のX軸方向の幅は、第1ダイオード部80のX軸方向の幅と同一であってよく、小さくてもよい。第2ダイオード部120のY軸方向における長さは、第1ダイオード部80のY軸方向における長さと同一であってよく、異なっていてもよい。本例においても、第2ダイオード部120とトランジスタ部70との間には、第2ウェル領域122が設けられることが好ましい。また、図17に示す例では、センスダイオード部180を設けているが、半導体装置100はセンスダイオード部180を備えなくともよい。
【0126】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0127】
10・・・半導体基板、12・・・ソース領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、17・・・第1ウェル領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、26・・・絶縁膜、30・・・ダミートレンチ部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・直線部分、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・先端部分、44・・・ゲート導電部、51・・・ゲート配線部、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、57・・・接続部、58・・・コレクタ電極、70・・・トランジスタ部、80・・・第1ダイオード部、82・・・カソード領域、100・・・半導体装置、110・・・メイン素子部、112・・・耐圧構造部、114・・・パッド、120・・・第2ダイオード部、122・・・第2ウェル領域、126・・・アノード領域、128・・・オーミック領域、150、152・・・ライフタイムキラー、154・・・窪み部、160・・・犠牲層、161・・・部分、162、164・・・抵抗部、166・・・パッド、170・・・センスダイオード、172・・・抵抗、180・・・センスダイオード部、200・・・出力装置、210・・・保護回路、220・・・ハイサイド駆動回路、230・・・ローサイド駆動回路、240・・・抵抗、242・・・容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図17