(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160648
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】フェノルドパムの安定な局所用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20221012BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20221012BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221012BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20221012BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221012BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221012BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20221012BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
A61K31/55
A61P17/06
A61P17/00
A61P17/14
A61P17/10
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/107
A61K9/70
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/34
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/06
A61K47/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022127610
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2021553117の分割
【原出願日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】62/815,893
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594059374
【氏名又は名称】タロー・ファーマシューティカル・インダストリーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シフリン,ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】シュライフェル,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーガー,ベレット
(72)【発明者】
【氏名】シュリンガー,ロン
(72)【発明者】
【氏名】シェスキン,ツヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】アヴラモフ,アヴィ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フェノルドパムの安定な局所用組成物を提供する。
【解決手段】約0.1重量%~約5重量%のフェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩、少なくとも一つのポリアクリルアミタイプのゲル化剤、少なくとも一つのセルロースタイプのゲル化剤、および少なくとも一つの溶媒を含むフェノルドパムの物理的および化学的に安定な局所用組成物であって、フェノルドパムは組成物中に実質的に可溶化され、組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも12か月間安定である、局所用組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1重量%~約5重量%のフェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩、少な
くとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤、少なくとも一つのセルロース型ゲル化剤、
および少なくとも一つの溶媒を含むフェノルドパムの局所用組成物であって、前記フェノ
ルドパムは前記組成物中に実質的に可溶化され、前記組成物は、25℃および60%の相
対湿度で少なくとも1ヶ月間、物理的および化学的に安定である、局所用組成物。
【請求項2】
前記フェノルドパムの薬学的に許容される塩は、フェノルドパムメシル酸塩である、請
求項1に記載の局所用組成物。
【請求項3】
約1重量%~約3重量%のフェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩を含む、請
求項1または請求項2に記載の局所用組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤の量は、前記組成
物の約1重量%~約5重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所用組成物
。
【請求項5】
前記組成物中の前記少なくとも一つのセルロース型ゲル化剤の量は、前記組成物の約1
重量%~約5重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項6】
前記ポリアクリルアミド型ゲル化剤は、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリ
ンナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80混合物(Sepine
o(商標)P600)、ポリアクリルアミド/C13-14イソパラフィン/ラウレス-
7混合物(Sepigel(商標)305)、ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロ
イルジメチルタウリンナトリウムコポリマー混合物(Sepinov(商標)EMT10
)、およびヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコ
ポリマー(Sepineo(商標)DERM)から選択される、請求項1~5のいずれか
一項に記載の局所用組成物。
【請求項7】
前記ポリアクリルアミド型ゲル化剤は、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリ
ンナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80混合物(Sepine
o(商標)P600)である、請求項6に記載の局所用組成物。
【請求項8】
前記セルロース型ゲル化剤は、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(商標))、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ース、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の
局所用組成物。
【請求項9】
前記セルロース型ゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項8に記載
の局所用組成物。
【請求項10】
前記組成物は、少なくとも一つの共溶媒をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に
記載の局所用組成物。
【請求項11】
前記溶媒は、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、グリセリン、エタノール
、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエ
ーテル、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記
載の局所用組成物。
【請求項12】
前記共溶媒は、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、グリセリン、エタノー
ル、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールモノエチル
エーテル、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の局所用組成物
。
【請求項13】
前記組成物は、少なくとも一つの皮膚軟化剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか
一項に記載の局所用組成物。
【請求項14】
前記皮膚軟化剤は、PPG-15ステアリルエーテル、PPG-12/SDMIコポリ
マー、イソステアリン酸、セテアリルオクタノエート、シクロメチコン、プロピレングリ
コール、オクチルドデカノール、グリセロール、アジピン酸ジイソプロピル、およびそれ
らの組み合わせから選択される、請求項13に記載の局所用組成物。
【請求項15】
前記フェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩の少なくとも80重量%が可溶化
される、請求項1~14のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項16】
前記フェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩の少なくとも90重量%が可溶化
される、請求項1~15のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項17】
前記組成物中のフェノルドパムの前記重量%は、25℃および60%の相対湿度で1ヶ
月後に約10%未満減少する、請求項1~15のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項18】
前記組成物中のフェノルドパムの前記重量%は、25℃および60%の相対湿度で6ヶ
月後に約10%未満減少する、請求項1~15のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項19】
前記組成物中のフェノルドパムの前記重量%は、25℃および60%の相対湿度で9ヶ
月後に約10%未満減少する、請求項1~15のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項20】
前記組成物中のフェノルドパムの前記重量パーセントは、少なくとも1ヶ月間、フェノ
ルドパムの表示量の90%~110%である、請求項1~16のいずれか一項に記載の局
所用組成物。
【請求項21】
前記組成物中のフェノルドパムの前記重量パーセントは、少なくとも6ヶ月間、フェノ
ルドパムの表示量の90%~110%である、請求項1~16のいずれか一項に記載の局
所用組成物。
【請求項22】
前記組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも1ヶ月後、約1重量%未満
の不純物Bを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項23】
前記組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも6ヶ月後、約1重量%未満
の不純物Bを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項24】
前記組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも1ヶ月間、均質である、請
求項1~23のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項25】
前記組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも6ヶ月間、均質である、請
求項1~23のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項26】
前記組成物は、半固体の局所用剤形または液体の局所用剤形である、請求項1~25の
いずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項27】
前記剤形は、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、スプレー、フォーム、クロス、パッ
チ、ワイプ、またはパッドである、請求項1~26のいずれか一項に記載の局所用組成物
。
【請求項28】
前記組成物は無水組成物である、請求項1~27のいずれか一項に記載の局所用組成物
。
【請求項29】
前記無水組成物は無水ゲルである、請求項28に記載の局所用組成物。
【請求項30】
前記組成物は水をさらに含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項31】
前記組成物はO/Wエマルジョンである、請求項30に記載の局所用組成物。
【請求項32】
前記組成物は、pH調整剤をさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の局所
用組成物。
【請求項33】
前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、トロラミン、クエン酸、クエン酸緩衝液、リン
酸緩衝液、および炭酸緩衝液から選択される、請求項32に記載の局所用組成物。
【請求項34】
前記組成物のpHは、25℃および60%の相対湿度で少なくとも1ヶ月後、約4~約
5である、請求項1~33のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項35】
前記組成物のpHは、25℃および60%の相対湿度で少なくとも6ヶ月後、約4~約
5である、請求項1~33のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項36】
前記組成物は、少なくとも一つの防腐剤、少なくとも一つの浸透促進剤、少なくとも一
つの安定剤、少なくとも一つの粘度増加剤、少なくとも一つの増粘剤、少なくとも一つの
発泡剤、少なくとも一つのキレート剤、または少なくとも一つの抗酸化剤をさらに含む、
請求項1~35のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項37】
前記組成物は、皮膚疾患の治療に使用され、前記皮膚疾患は、ドーパミンD1受容体媒
介性の皮膚疾患である、請求項1~36のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項38】
前記D1受容体媒介性の皮膚疾患は、乾癬、アトピー性皮膚炎、脱毛症、にきび、酒さ
および白斑から選択される、請求項37に記載の局所用組成物。
【請求項39】
前記D1受容体媒介性の皮膚疾患は、乾癬およびアトピー性皮膚炎から選択される、請
求項37に記載の局所用組成物。
【請求項40】
治療を必要とする対象においてD1受容体媒介性の皮膚疾患を治療する方法であって、
前記方法は、前記対象の皮膚患部に請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物を局所
投与することを含み、前記D1受容体媒介性の皮膚疾患は、乾癬またはアトピー性皮膚炎
から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、局所用フェノルドパム組成物、例えば、約0.1重量%~約5重量%のフェ
ノルドパムまたはその薬学的に許容される塩、少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲ
ル化剤、少なくとも一つのセルロース型ゲル化剤、および少なくとも一つの溶媒を含むフ
ェノルドパムの物理的および化学的に安定な組成物に関し、フェノルドパムは組成物中に
実質的に可溶化され、組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも12ヶ月間
安定である。
【背景技術】
【0002】
乾癬は、世界中の多くの人々に影響を与える皮膚疾患である。乾癬は、その皮膚症状に
加えて、患者の生活の質に重大な影響を与える可能性がある。乾癬は、ケラチノサイトお
よび内皮細胞の表皮の過剰増殖、および炎症細胞(例えば、活性化T細胞)の蓄積を特徴
とする慢性の免疫介在性炎症性皮膚疾患である。尋常性乾癬と呼ばれる慢性の尋常性乾癬
は、この疾患の一般的な形態であり、境界の明瞭な紅斑性のうろこ状のプラークを特徴と
し、皮膚の任意の部分に、一般的には伸筋表面(例えば肘や膝)および頭皮に影響を与え
る。
【0003】
乾癬の治療には、外用薬、光線療法、従来の全身薬、および生物学的薬剤が含まれる。
治療方法は多くの場合、疾患の重症度によって決定される。軽度の乾癬を呈する患者は、
局所用抗炎症副腎皮質ステロイドで治療されることができる。しかし、副腎皮質ステロイ
ドの長期使用は、全身性または局所的な重度の副作用につながる可能性があることが報告
されている。中等度から重度の乾癬の患者は、全身治療、例えばメトトレキサートまたは
シクロスポリンと光線療法との併用を受ける可能性があるが、最も重度の乾癬の患者は、
生物療法で治療される可能性がある。
【0004】
フェノルドパムメシル酸塩、化学的に6-クロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1
-(4-ヒドロキシフェニル)1H-3-ベンザゼピン-7,8-ジオール、メタンスル
ホン酸塩は、ドーパミンD1受容体(D1R)の選択性の高いアゴニストであり、これは
、主に重度の高血圧の治療における血管拡張作用のために、静脈内投与によってクリニッ
クで使用されてきた。何らかの全身的血管拡張作用を有するフェノルドパムの最低血中濃
度は、1~10ng/mLの範囲である(FDA Clinical Pharmaco
logy & Biopharmaceutics Review,DA 19922,
Corlopam(登録商標))。
【0005】
参照により本明細書に開示されるPCT国際公開第2018/042352号は、治療
有効量のフェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩を局所的に投与することによっ
て、皮膚疾患、好ましくはT細胞媒介性の自己免疫性皮膚炎症疾患を治療する方法に関す
る。PCT国際公開第2018/042352号に報告された疾患にはD1受容体媒介性
の皮膚疾患、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、脱毛症、および白斑が含まれる。
【0006】
フェノルドパムには、特に水性製剤において、溶解性および安定性の両方の課題がある
。フェノルドパムメシル酸塩は、水、エタノール、およびメタノールにわずかに難溶性で
あり、プロピレングリコールに可溶性である。さらに、製剤のpHは、その安定性に影響
を及ぼすことが知られている。
【0007】
静脈内注射用Collopam(登録商標)は、滅菌水溶液中にフェノルドパムメシル
酸塩、クエン酸、プロピレングリコール、クエン酸ナトリウム二水和物、およびメタ重亜
硫酸ナトリウムを含有する。生成物を水の存在下で安定に保つために、そのpHは2.8
~3.8の範囲の酸性である。さらに、希釈溶液は、室温で4時間後、または冷蔵温度で
24時間後に廃棄する必要があり、水の存在下でのフェノルドパムの安定性の問題を強調
する必要がある。
【0008】
高血圧の治療のためのフェノルドパムの経皮投与に関する米国特許第6,699,49
7号および第6,960,353号は、フェノルドパムおよび状態の安定性の問題を開示
し、水性製剤を使用する場合、安定なフェノルドパム製剤を提供するために、pHを約5
.5未満、より好ましくは約pH2~4.5の間に維持することが好ましいと述べている
。PCT国際公開第2018/042352号は、pHを4未満に維持することで、フェ
ノルドパムが劣化するのを防ぐことを実験に基づいて示した。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、約0.1重量%~約5重量%のフェノルドパムまたはその薬学的に許容され
る塩、少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤、少なくとも一つのセルロース型
ゲル化剤、および少なくとも一つの溶媒を含むフェノルドパムの局所用組成物に関し、フ
ェノルドパムは組成物に実質的に可溶化され、組成物は、25℃および60%の相対湿度
で少なくとも1ヶ月間、物理的および化学的に安定である。
【0010】
本開示の出願人は、効果的な局所用医薬組成物に必要な重要な特徴を示すフェノルドパ
ムの局所用組成物の開発に成功した。具体的には、局所的に有効な組成物を達成するため
に、皮膚への浸透を促進するために、医薬品有効成分(API)が組成物に可溶化される
こと、および皮膚の炎症を避けるために、組成物は4~6の範囲のpH値を有することが
望ましい。さらに、組成物は、保存中に物理的および化学的に安定である必要がある。予
想外に、本開示の出願人は、有効成分としてのフェノルドパムの溶解性および安定性の課
題を克服し、少なくとも0.1重量%のフェノルドパムを含む治療有効量のフェノルドパ
ムを含む局所用組成物を開発することができた。
【0011】
本開示の出願人は、治療有効量のフェノルドパムを含む局所用組成物の物理的および化
学的安定性は、少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤と少なくとも一つのセル
ロース型ゲル化剤との組み合わせを使用することにより達成されることができることを予
想外に発見した。予想外に、これらのゲル化剤の組み合わせは、組成物の物理的安定性だ
けでなく、少なくとも12ヶ月の期間にわたるフェノルドパムの化学的安定性も改善する
。
【0012】
さらに、本開示の出願人は、組成物中の少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化
剤と少なくとも一つのセルロース型ゲル化剤との組み合わせの存在が、含水組成物におい
ておよび局所投与に好適な範囲である4以上のpH値においてさえ、フェノルドパムの物
理的および化学的安定性ならびに溶解性を維持すること予想外に発見した。
【0013】
さらに、本開示の局所用組成物は、フェノルドパムの皮膚への浸透を可能にし、皮膚疾
患の治療に治療効果がある。
【0014】
本開示によれば、局所用フェノルドパム組成物は、治療有効量のフェノルドパムまたは
その塩、および(a)少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤と、(b)少なく
とも一つのセルロース型ゲル化剤と、(c)少なくとも一つの溶媒と、の組み合わせ、を
含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、組成物は、その塩基形態でフェノルドパムを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物はフェノルドパムの塩を含む。好ましい実施形態では
、フェノルドパムの塩はフェノルドパムメシル酸塩である。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの治療有効量は、組成物の約0.
1重量%~約5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの有
効量は、組成物の約0.5重量%~約4重量%である。好ましい実施形態では、組成物中
のフェノルドパムの有効量は、組成物の約1重量%~約3重量%である。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態によれば、局所用組成物は、少なくとも一つのポリアクリ
ルアミド型ゲル化剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリアクリルアミド型ゲル化剤は
、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー/イソヘキサデ
カン/ポリソルベート80混合物(Sepineo(商標)P600)、ポリアクリルア
ミド/C13-14イソパラフィン/ラウレス-7混合物(Sepigel(商標)30
5)、ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリ
マー混合物(Sepinov(商標)EMT10)、およびヒドロキシエチルアクリレー
ト/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー(Sepineo(商標)DE
RM)から選択される。好ましい実施形態では、ポリアクリルアミド型ゲル化剤は、アク
リルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/
ポリソルベート80混合物(Sepineo(商標)P600)である。
【0019】
本開示の様々な実施形態によれば、局所用組成物は、セルロース型ゲル化剤をさらに含
む。好ましい実施形態では、セルロース型ゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースで
ある。いくつかの実施形態では、セルロース型ゲル化剤は、エチルセルロース、メチルセ
ルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel
(商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース
、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0020】
好ましい実施形態によれば、局所用組成物は、Sepineo(商標)P600とヒド
ロキシプロピルセルロースとの組み合わせを含む。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態によれば、組成物中のポリアクリルアミド型ゲル化剤の量
は、組成物の約1重量%~約5重量%である。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によれば、組成物中のセルロース型ゲル化剤の量は、組成
物の約1重量%~約5重量%である。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態によれば、局所用組成物は、少なくとも一つの共溶媒を含
む。別の実施形態によると、組成物は、少なくとも一つの溶媒および少なくとも一つの共
溶媒を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、プロピレングリコール、ジメチルイソソ
ルビド、グリセリン、エタノール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジ
エチレングリコールモノエチルエーテル、およびそれらの組み合わせから選択される。い
くつかの実施形態では、共溶媒は、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、グリ
セリン、エタノール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリ
コールモノエチルエーテル、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0024】
別の実施形態では、局所用組成物は、少なくとも一つの皮膚軟化剤をさらに含む。いく
つかの実施形態では、皮膚軟化剤は、PPG-15ステアリルエーテル、PPG-12/
SDMIコポリマー、イソステアリン酸、セテアリルオクタノエート、シクロメチコン、
プロピレングリコール、オクチルドデカノール、グリセロール、アジピン酸ジイソプロピ
ル、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0025】
本開示によれば、フェノルドパムは組成物中で実質的に可溶化される。いくつかの実施
形態では、フェノルドパムの少なくとも約80%は、組成物中で可溶化される。いくつか
の実施形態では、フェノルドパムの少なくとも約90%は、組成物中で可溶化される。い
くつかの実施形態では、フェノルドパムの少なくとも約95%は、組成物中で可溶化され
る。いくつかの実施形態では、フェノルドパムの約100%は、組成物中で可溶化される
。
【0026】
いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの重量%は、25℃および60%
の相対湿度で1ヶ月後に約10%未満減少する。いくつかの実施形態では、組成物中のフ
ェノルドパムの重量%は、25℃および60%の相対湿度で6ヶ月後に約10%未満減少
する。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの重量%は、25℃および6
0%の相対湿度で9ヶ月後に約10%未満減少する。いくつかの実施形態では、組成物中
のフェノルドパムの重量パーセントは、少なくとも1ヶ月間、フェノルドパムの表示量の
90%~110%の間である。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの重
量パーセントは、少なくとも6ヶ月間、フェノルドパムの表示量の90%~110%であ
る。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの重量パーセントは、少なくと
も12ヶ月間、18ヶ月間、24ヶ月間、30ヶ月間、または36ヶ月間、フェノルドパ
ムの表示量の90%~110%である。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも1ヶ
月後に、約0.2重量%未満の不純物Bを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、2
5℃および60%の相対湿度で少なくとも6ヶ月後に、約0.2重量%未満の不純物Bを
含む。いくつかの実施形態では、組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも
9ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、24ヶ月後、30ヶ月後、または36ヶ月後に、約
0.2重量%未満の不純物Bを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、25℃および
60%の相対湿度で少なくとも1ヶ月間均質である。いくつかの実施形態では、組成物は
、25℃および60%の相対湿度で少なくとも6ヶ月間均質である。いくつかの実施形態
では、組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも9ヶ月間、12ヶ月間、1
8ヶ月間、24ヶ月間、30ヶ月間、または36ヶ月間均質である。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、半固体の局所用剤形または液体の局所用剤形であ
る。いくつかの実施形態では、剤形は、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、スプレー、
フォーム、クロス、パッチ、ワイプ、またはパッドである。
【0029】
本開示の様々な実施形態によれば、局所用フェノルドパム組成物は、無水組成物または
水含有組成物とすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、局所用組成物は、無水組成物である。好ましい実施形態によ
れば、無水組成物は、無水ゲルである。
【0031】
いくつかの実施形態では、局所用組成物は、水をさらに含む。好ましい実施形態によれ
ば、水含有組成物は、O/Wエマルジョンである。いくつかの実施形態では、O/Wエマ
ルジョンは、クリームの形態である。
【0032】
いくつかの実施形態では、水含有組成物は、局所投与に好適なpHレベルを維持するた
めに、少なくとも一つのpH調整剤を含む。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、水
酸化ナトリウム、トロラミン、クエン酸、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、および炭酸緩
衝液から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、水含有組成物は、約3.5~約6.0、より好ましくは約4
.0~約5.0のpH範囲を有する。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、25℃
および60%の相対湿度で少なくとも1ヶ月後に、約4~約5である。いくつかの実施形
態では、組成物のpHは、25℃および60%の相対湿度で少なくとも6ヶ月後に、約4
~約5である。
【0034】
いくつかの実施形態では、局所用組成物は、例えば、防腐剤、浸透促進剤、安定剤、粘
度増加剤、増粘剤、発泡剤、キレート剤または抗酸化剤を含む追加の賦形剤をさらに含む
。
【0035】
本開示によれば、フェノルドパム局所用組成物は、室温条件下(25℃および60%の
相対湿度)で、最大12ヶ月間、物理的にも化学的にも安定である。
【0036】
本開示によれば、フェノルドパム局所用組成物は、加速条件下(40℃および75%の
相対湿度)で、少なくとも3ヶ月間、物理的にも化学的にも安定である。
【0037】
別の実施形態によれば、組成物の化学的安定性は、フェノルドパムの重量%として表さ
れる薬物の分析値が、指定された期間を通して最大10%減少し、不純物Bの濃度が期間
を通して約0.2%未満である場合、得られる。いくつかの実施形態では、特定の期間は
1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月、または3
6ヶ月である。
【0038】
別の実施形態によれば、組成物の化学的安定性は、フェノルドパムの重量パーセントが
、特定の期間、フェノルドパムの表示量の90%~110%の間である場合、得られる。
いくつかの実施形態では、特定の期間は、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、
18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月、または36ヶ月である。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、組成物の物理的安定性は、少なくとも1ヶ月、3ヶ月、
6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月、または36ヶ月の期間を通
して、組成物の一貫した巨視的および微視的外観、pHレベル、ならびに粘度を維持する
ことによって決定される。
【0040】
別の実施形態によれば、組成物の物理的安定性は、均質な外観および相分離の非存在を
、少なくとも1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ
月、または36ヶ月の期間、達成することによって決定される。別の実施形態では、組成
物の安定性は、少なくとも1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24
ヶ月、30ヶ月、または36ヶ月の期間、約4~約5の範囲の安定なpHを達成すること
によって決定される。
【0041】
本開示の別の実施形態によれば、本開示のフェノルドパム局所用組成物は、皮膚疾患の
治療に使用される。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、T細胞媒介性の免疫炎症性疾
患である。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、D1受容体媒介性の皮膚疾患である。
【0042】
別の実施形態によれば、皮膚疾患は、乾癬、アトピー性皮膚炎、脱毛症、にきび、酒さ
および白斑から選択される。好ましい実施形態では、皮膚疾患は、乾癬またはアトピー性
皮膚炎である。より好ましくは、皮膚疾患は乾癬である。
【0043】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療を必要とする対象においてD1受容体媒介性
の皮膚疾患を治療する方法に関し、この方法は、対象の皮膚患部に組成物を局所投与する
ことを含み、D1受容体媒介性の皮膚疾患は、乾癬またはアトピー性皮膚炎から選択され
る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、乾癬異種移植の炎症マーカーである。全ての治療群対ビヒクル治療群-p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示は、約0.1重量%~約5重量%のフェノルドパムまたはその薬学的に許容され
る塩、ならびに(a)少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤と、(b)少なく
とも一つのセルロース型ゲル化剤と、(c)少なくとも一つの溶媒と、の組み合わせを含
む物理的および化学的に安定なフェノルドパムの局所用組成物に関し、フェノルドパムは
、組成物に実質的に可溶化され、組成物は少なくとも1ヶ月間安定であり、皮膚疾患の効
率的な治療のための局所適用に好適である。
【0046】
特に指定がない限り、本明細書で使用する場合、用語「フェノルドパム」は、フェノル
ドパムの塩基形態、およびフェノルドパムの薬学的に許容される塩、水和物、または溶媒
和物を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、その塩基形態においてフ
ェノルドパムを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、フェノルドパムの薬学的に許
容される塩、水和物、または溶媒和物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、フェ
ノルドパムの薬学的に許容される塩を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、フェノルドパムの塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、またはメシ
ル酸塩を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、フェノルドパムの塩
はフェノルドパムメシル酸塩である。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物はラセミフェノルドパムを含む。別の実施形態では、
組成物はR-フェノルドパムを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムは、組成物の約0.1重量%~約
5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムは、組成物の約0
.5重量%~約5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムは
、組成物の約0.5重量%~約4重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中のフ
ェノルドパムは、組成物の約1重量%~約3重量%である。
【0050】
いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの塩は、組成物の約0.1重量%
~約5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムの塩は、組成
物の約0.5重量%~約5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノル
ドパムの塩は、組成物の約0.5重量%~約4重量%である。いくつかの実施形態では、
組成物中のフェノルドパムの塩は、組成物の約1重量%~約3重量%である。
【0051】
いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムメシル酸塩は、組成物の約0.1
重量%~約5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中のフェノルドパムメシル
酸塩は、組成物の約0.5重量%~約5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物
中のフェノルドパムメシル酸塩は、組成物の約0.5重量%~約4重量%である。いくつ
かの実施形態では、組成物中のフェノルドパムメシル酸塩は、組成物の約1重量%~約3
重量%である。
【0052】
本開示の一実施形態によれば、フェノルドパムの局所用組成物は、室温で少なくとも1
ヶ月間物理的に安定である。別の実施形態によれば、フェノルドパム局所用組成物は、室
温で少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、
少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、または少なくとも36ヶ月の期間、物理的に
安定である。
【0053】
本開示の一実施形態によれば、フェノルドパムの局所用組成物は、室温で少なくとも1
ヶ月間化学的に安定である。別の実施形態によれば、フェノルドパム局所用組成物は、室
温で少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、
少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、または少なくとも36ヶ月の期間、化学的に
安定である。
【0054】
本開示の一実施形態によれば、フェノルドパムの局所用組成物は、室温で最大12ヶ月
間物理的にも化学的にも安定である。別の実施形態によれば、フェノルドパム局所用組成
物は、室温で少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも1
8ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも30ヶ月、または少なくとも36ヶ月の期間、
物理的にも化学的にも安定である。
【0055】
本開示の一実施形態によれば、フェノルドパムの局所用組成物は、加速条件で少なくと
も1ヶ月、少なくとも3ヶ月、または少なくとも6ヶ月の期間、物理的に安定である。本
開示の一実施形態によれば、フェノルドパムの局所用組成物は、加速条件で少なくとも1
ヶ月、少なくとも3ヶ月、または少なくとも6ヶ月の期間、化学的に安定である。本開示
の別の実施形態によれば、フェノルドパムの局所用組成物は、加速条件で少なくとも1ヶ
月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも9ヶ月の期間、物理的にも
化学的にも安定である。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「安定」は、特定の期間にわたる、局所用組成物中の活
性剤の化学的安定性および/または組成物の物理的安定性を指す。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「物理的安定性」は、パラメーター、例えば、色、均質
性、相分離の非存在、結晶の非存在、一定の液滴サイズを含むがこれらに限定されない巨
視的および微視的外観において、ならびに特定の期間を通して組成物のpHおよび粘度ま
たは展延性を含む特性において、一貫性を維持することを指す。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「化学的に安定な局所用組成物」は、組成物中のフェノ
ルドパムの重量パーセントが、25℃および60%の湿度で1ヶ月後に約10%未満減少
する、または25℃および60%の湿度で6ヶ月後に約10%未満減少する、または25
℃および60%の湿度で9ヶ月後に約10%未満減少する局所用組成物を指すことができ
る。。いくつかの実施形態では、本明細書で使用する場合、用語「化学的に安定な局所用
組成物」は、組成物中のフェノルドパムの重量パーセントが、25℃および60%の湿度
で1ヶ月後に、約0.01%~約10%、約0.1%~約5%、約1%~約5%減少する
局所用組成物を指すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用する場合、
用語「化学的に安定な局所用組成物」は、組成物中のフェノルドパムの重量パーセントが
、25℃および60%の湿度で1ヶ月後に、約4.5%未満、約4%未満、約3.5%未
満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満減少する局所用組成物を指すことができ
る。いくつかの実施形態では、本明細書で使用する場合、用語「化学的に安定な局所用組
成物」は、組成物中のフェノルドパムの重量パーセントが、25℃および60%の湿度で
6ヶ月後に、約0.01%~約10%、約0.1%~約5%、約1%~約5%減少する局
所用組成物を指すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用する場合、用
語「化学的に安定な局所用組成物」は、組成物中のフェノルドパムの重量パーセントが、
25℃および60%の湿度で6ヶ月後に、約4.5%未満、約4%未満、約3.5%未満
、約3%未満、約2%未満、または約1%未満減少する局所用組成物を指すことができる
。
【0059】
いくつかの実施形態では、組成物の化学的安定性は、フェノルドパムの重量パーセント
が、特定の期間、フェノルドパムの表示量の90%~110%の間である場合、得られる
。いくつかの実施形態では、特定の期間は1ヶ月である。いくつかの実施形態では、特定
の期間は、3ヶ月、6ヶ月、または9ヶ月である。用語「表示量」は、本開示の組成物を
含む製品に関連する有効成分、例えばフェノルドパムの示された重量パーセントである。
したがって、例えば、「2%フェノルドパム組成物」の表示量を有する製品は、T=0に
おいておよび特定の期間、1.8重量%~2.2重量%(すなわち、90%~110%)
のフェノルドパムを有することとなる。いくつかの実施形態では、組成物の化学的安定性
は、フェノルドパムの重量パーセントが、25℃および60%の湿度で1ヶ月間、フェノ
ルドパムの表示量の90%~110%である場合に得られる。いくつかの実施形態では、
組成物の化学的安定性は、フェノルドパムの重量パーセントが、40℃および75%の相
対湿度で1ヶ月間、フェノルドパムの表示量の90%~110%である場合に得られる。
いくつかの実施形態では、組成物の化学的安定性は、フェノルドパムの重量パーセントが
、25℃および60%の湿度で6ヶ月間、フェノルドパムの表示量の90%~110%で
ある場合に得られる。いくつかの実施形態では、組成物の化学的安定性は、フェノルドパ
ムの重量パーセントが、40℃および75%の相対湿度で6ヶ月間、フェノルドパムの表
示量の90%~110%である場合に得られる。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「化学的に安定な局所用組成物」は、組成物が、25℃
および60%の湿度で1ヶ月後に、約0.2重量%未満の不純物Bを含む局所用組成物を
指すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用する場合、用語「化学的に
安定な局所用組成物」は、組成物が、25℃および60%の湿度で1ヶ月後に、約1重量
%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、または0.02重量%未満の不純
物Bを含む局所用組成物を指すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用
する場合、用語「化学的に安定な局所用組成物」は、組成物が、25℃および60%の湿
度で6ヶ月後に、約1重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、または
0.02重量%未満の不純物Bを含む局所用組成物を指すことができる。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「化学的に安定な局所用組成物」は、組成物が、25℃
および60%の湿度で1ヶ月後に、約1%未満の任意の個々の不明な不純物を含む局所用
組成物を指すことができる。本明細書で使用する場合、用語「化学的に安定な局所用組成
物」は、組成物が、25℃および60%の湿度で6ヶ月後に、約1%未満の任意の個々の
不明な不純物を含む局所用組成物を指すことができる。いくつかの実施形態では、用語「
化学的に安定な局所用組成物」は、組成物が、25℃および60%の湿度で1ヶ月後に、
約0.5%未満の任意の個々の不明な不純物を含む局所用組成物を指すことができる。い
くつかの実施形態では、用語「化学的に安定な局所用組成物」は、組成物が、25℃およ
び60%の湿度で6ヶ月後に、約0.5%未満の任意の個々の不明な不純物を含む局所用
組成物を指すことができる。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「無水組成物」は、1重量%未満の水、例えば、0.5
重量%未満、0.2重量%未満、または0.1重量%未満の水を含む局所用組成物を指す
ことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用する場合、用語「化学的に安定な局所用組成
物」は、25℃および60%の湿度で1ヶ月後に、組成物中のフェノルドパムの重量パー
セントが、約10%未満、例えば、約5%未満減少し、ならびに組成物が約0.2重量%
未満の不純物Bを含む局所用組成物を指すことができる。化学的および物理的安定性パラ
メーターは、25℃および60%の相対湿度(「RT条件」と呼ばれる)、中間(INT
)条件(30℃、65%の湿度)、または40℃および75%の相対湿度(「加速(AC
C)条件」と呼ばれる)で、1、3、6、12、18、または24ヶ月の特定の期間評価
される。
【0064】
用語「組成物」と「製剤」は、同じ意味で使用される。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「アッセイ」は、HPLCなどの特定の分析手順による
組成物中の薬物含有量の測定(すなわち、薬物アッセイ)を指す。製剤は必要な量の原薬
を含む必要があり、アッセイはT=0での薬物含有量からの割合として表される。薬剤ア
ッセイは、組成物の安定性の指標である。
【0066】
用語「不純物」はまた、「関連化合物」(RC)を指すことができる。これらは、原薬
の既知または不明な不純物であることができる。フェノルドパムメシル酸塩関連化合物B
または不純物B(ImpB)は、本明細書で言及されるように、2,3,4,5-テトラ
ヒドロ-1-(4-ヒドロキシフェニル)-1H-3-ベンザゼピン-7,8-ジオール
メタンスルホン酸塩(デスクロロ-フェノルドパムメシル酸塩)であり、フェノルドパム
メシル酸塩の既知の関連化合物である。
【0067】
本開示のいくつかの実施形態によれば、組成物の化学的安定性は、初期アッセイ値と比
較して10%未満減少する薬物アッセイ値によって決定される。本開示のいくつかの実施
形態によれば、組成物の化学的安定性は、初期アッセイ値と比較して5%未満減少する薬
物アッセイ値によって決定される。
【0068】
別の実施形態によれば、化学安定性は、少なくとも1ヶ月の期間を通して約1.0%未
満、少なくとも1ヶ月の期間を通して約0.75%未満、または少なくとも1ヶ月の期間
を通して約0.5%未満である不純物Bの濃度によってさらに決定される。いくつかの実
施形態では、化学安定性は、少なくとも6ヶ月の期間を通して約1.0%未満、少なくと
も6ヶ月の期間を通して約0.75%未満、または少なくとも6ヶ月の期間を通して約0
.5%未満である不純物Bの濃度によってさらに決定される。より好ましくは、化学的安
定性は、少なくとも1ヶ月の期間を通して約0.2%未満の不純物Bの濃度によってさら
に決定される。
【0069】
別の実施形態によれば、化学安定性は、少なくとも1ヶ月の期間を通して約1.0%未
満、少なくとも1ヶ月の期間を通して約0.75%未満、または少なくとも1ヶ月の期間
を通して約0.5%未満である任意の個々の不明な不純物の濃度によってさらに決定され
る。いくつかの実施形態では、化学安定性は、少なくとも6ヶ月の期間を通して約1.0
%未満、少なくとも6ヶ月の期間を通して約0.75%未満、または少なくとも6ヶ月の
期間を通して約0.5%未満である任意の個々の不明な不純物の濃度によってさらに決定
される。より好ましくは、化学的安定性は、少なくとも1ヶ月の期間を通して約0.2%
未満の任意の個々の不明な不純物の濃度によってさらに決定される。
【0070】
さらに別の実施形態によれば、化学安定性は、少なくとも1ヶ月の期間を通して、約1
0%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の総不
純物の濃度によってさらに決定される。いくつかの実施形態では、化学的安定性は、少な
くとも6ヶ月間を通して、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%
未満、または約1%未満の総不純物の濃度によってさらに決定される。
【0071】
いくつかの実施形態では、組成物の化学的安定性が得られ、組成物中のフェノルドパム
の重量%は、特定期間の間で約5%未満減少し、および不純物Bの濃度は、特定期間の間
で約0.2%未満である。いくつかの実施形態では、特定の期間は1ヶ月である。いくつ
かの実施形態では、特定の期間は、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24
ヶ月、30ヶ月、または36ヶ月である。
【0072】
別の実施形態によれば、組成物の物理的安定性は、少なくとも1ヶ月間、均質な外観お
よび/または相分離の非存在を維持することによって決定される。別の実施形態では、組
成物のpHは、少なくとも1ヶ月間、約4~約5である。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量のフェノルドパムまたはその薬学的に
許容される塩、ならびに(a)少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤、(b)
少なくとも一つのセルロース型ゲル化剤、および(c)少なくとも一つの溶媒を含む局所
用組成物を提供する。
【0074】
本開示の様々な実施形態によれば、局所用組成物は、少なくとも一つのポリアクリルア
ミド型ゲル化剤を含む。ポリアクリルアミド型のゲル化剤の例としては、アクリルアミド
/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベ
ート80混合物(Sepineo(商標)P600またはSimulgel(商標)60
0)、ポリアクリルアミド/C13-14イソパラフィン/ラウレス-7混合物(Sep
igel(商標)305)、ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウ
リンナトリウムコポリマー混合物(Sepinov(商標)EMT10)、およびヒドロ
キシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー(Sep
ineo(商標)DERM)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形
態では、ゲル化剤は、Sepineo(商標)P600である。
【0075】
本開示の様々な実施形態によれば、局所用組成物は、少なくとも一つのセルロース型ゲ
ル化剤をさらに含む。セルロースであるゲル化剤の例としては、アルキルセルロース、例
えばエチルセルロースおよびメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、例えば
ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(商標
))、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースおよびヒドロキシブチルメチルセルロース、ならびにカルボキシアルキルセルロース
、例えばカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。いくつか
の実施形態では、セルロース型ゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0076】
好ましい実施形態によれば、局所用組成物は、Sepineo(商標)P600および
ヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態によれば、組成物中のポリアクリルアミド型ゲル化剤の量
は、組成物の約1重量%~約5重量%、または組成物の約1重量%、約2重量%、約3重
量%、約4重量%、または約5重量%である。
【0078】
本開示のいくつかの実施形態によれば、組成物中のセルロース型ゲル化剤のそれぞれの
量は、組成物の約1重量%~約5重量%、または組成物の約1重量%、約2重量%、約3
重量%、約4重量%、または約5重量%である。
【0079】
本明細書で言及されるゲル化剤はまた、乳化剤、増粘剤、または粘度増加剤と呼ばれる
ことができる。
【0080】
Sepineo(商標)P600は、イソヘキサデカンおよびポリソルベート80中の
アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマーの濃縮分散体であ
る。本開示の局所用組成物中のフェノルドパムを化学的に安定化する、ポリアクリルアミ
ド型ゲル化剤、例えばSepineo(商標)P600の驚くべき能力は、本開示におい
て示される。
【0081】
いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、メシレートと同様に、アクリロイル
ジメチルタウレートは、分子の硫酸基のためにフェノルドパムと共に塩を形成することが
できることが示唆される。フェノルドパムで塩を形成すると、Sepineo(商標)P
600の存在下で組成物中のフェノルドパムの安定化をもたらすことができる。
【0082】
本開示のいくつかの実施形態によれば、局所用組成物は、少なくとも一つの共溶媒をさ
らに含む。
【0083】
好適な溶媒としては、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、グリセリン、エ
タノール、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキシレングリコール、ジエチレングリ
コールモノエチルエーテル、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに
限定されない。
【0084】
好適な共溶媒としては、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、グリセリン、
エタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキシレングリコール、ジエチレング
リコールモノエチルエーテル、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これら
に限定されない。
【0085】
いくつかの実施形態では、溶媒と共溶媒は同一である。いくつかの実施形態では、溶媒
と共溶媒は異なっている。
【0086】
本開示のいくつかの実施形態によれば、フェノルドパムは組成物中で実質的に可溶化さ
れる。いくつかの実施形態では、フェノルドパムの少なくとも約80%は、組成物中で可
溶化される。いくつかの実施形態では、フェノルドパムの少なくとも約90%は、組成物
中で可溶化される。いくつかの実施形態では、フェノルドパムの少なくとも約95%は、
組成物中で可溶化される。いくつかの実施形態では、フェノルドパムの約100%は、組
成物中で可溶化される。
【0087】
別の実施形態では、局所用組成物は、少なくとも一つの皮膚軟化剤をさらに含む。
【0088】
皮膚軟化剤の非限定的な例としては、PPG-15ステアリルエーテル、PPG-12
/SDMIコポリマー、イソステアリン酸、セテアリルオクタノエート、シクロメチコン
、プロピレングリコール、オクチルドデカノール、グリセロール、アジピン酸ジイソプロ
ピル、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、皮膚軟化剤は、P
PG-15ステアリルエーテルおよびイソステアリン酸である。
【0089】
いくつかの実施形態では、皮膚軟化剤は、組成物の約10重量%~約35重量%、組成
物の約10重量%~約30重量%、または組成物の約10重量%~約25重量%である。
【0090】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも一つの防腐剤をさらに含む。
【0091】
好適な防腐剤としては、安息香酸ならびにその塩およびエステル、ベンジルアルコール
、尿素誘導体、例えばジアゾリジニル尿素、イミダゾリジニル尿素、ならびにDMDMヒ
ダントイン、ソルビン酸およびその塩等が挙げられるが、これらに限定されない。その目
的のためにのみ使用される防腐剤は、一般的に、最終局所用製剤の1%(w/w)以下を
形成する。いくつかの実施形態では、防腐剤は、ソルビン酸または安息香酸である。
【0092】
いくつかの実施形態では、局所用組成物は、例えば浸透促進剤、安定剤、粘度増加剤、
増粘剤、発泡剤、キレート剤または抗酸化剤を含む別の賦形剤をさらに含む。
【0093】
好適な浸透促進剤としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノラ
ウレート、およびブタンジオールを含むポリオールおよびエステル;ジエチレングリコー
ルモノエチルエーテル(例えば、Transcutol.P)およびジエチレングリコー
ルモノメチルエーテル;ラウリン酸、オレイン酸、および吉草酸を含む脂肪酸;ミリスチ
ン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、およびオレイン酸
エチルを含む脂肪酸エステル;尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド2-
ピロリドン、エタノールアミン、メチル-2-ピロリドン、ジエタノールアミン、および
トリエタノールアミンを含む窒素化合物;テルペン;アルカノン;サリチル酸、クエン酸
、およびコハク酸を含む有機酸;ならびにそれらの任意の混合物が挙げられるが、これら
に限定されない。
【0094】
好適な増粘剤としては、ポリクオタニウム-10、Sepino(商標)P600、P
EG120メチルグルコースジオレエート、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、セル
ロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチ
ルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、グアーガムもしくはその誘導体、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせが
挙げられる。
【0095】
水溶性抗酸化剤の例としては、チオール、例えばチオグリセロール、チオソルビトール
、チオ尿素、チオグリコール酸、およびシステイン等が挙げられる。油溶性抗酸化剤の例
としては、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソ
ール)、トコフェロール(ビタミンE)、酢酸トコフェリル、パルミチン酸アスコルビル
、ヒドロキノン、ジ-tブチルヒドロキノン、プロピルガレート等が挙げられる。
【0096】
任意のキレート剤としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびその塩、例え
ば、EDTA二ナトリウム、NTA三ナトリウム、エチドロン酸およびその塩、ジヒドロ
キシエチルグリシン酸ナトリウム、クエン酸およびその塩等が挙げられるが、これらに限
定されない。好ましくは、キレート剤は、EDTAまたはその塩である。
【0097】
好適な着色剤および芳香剤は、製剤と相溶性でなければならないという条件でのみ、そ
れらは選択できる問題となる。
【0098】
上記の賦形剤物質のいくつかは、製剤中に複数の機能を有することができる。例えば、
物質は、溶媒および浸透促進剤、またはゲル化剤および増粘剤の両方であることができる
。上記の材料の分類は、いかなる形においても限定するものとしても、制限するものとし
ても解釈されるべきではない
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、半固体の局所用剤形または液体の局所用
剤形である。いくつかの実施形態では、剤形は、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ス
プレー、または泡である。
【0100】
いくつかの実施形態では、局所用組成物は、無水組成物である。好ましい実施形態によ
れば、無水組成物は、無水ゲルを含む。
【0101】
特定の実施形態では、無水ゲル組成物は、(a)好ましくは約1~3%の量のフェノル
ドパムまたはその薬学的に許容される塩、(b)好ましくは約1~5%の量の少なくとも
一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤、(c)好ましくは約1~5%の量の少なくとも一
つのセルロース型ゲル化剤、(d)好ましくは約30~50%の量の少なくとも一つの溶
媒、(e)好ましくは約20~40%の量の少なくとも一つの充填剤、(f)好ましくは
約15~35%の量の少なくとも一つの皮膚軟化剤、(g)好ましくは約0.2%未満の
量の少なくとも一つの防腐剤、を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、局所用組成物は、水含有組成物である。好ましい実施形態に
よれば、水含有組成物は、水中油型、すなわち、O/W、エマルジョンである。いくつか
の実施形態では、O/Wエマルジョンは、クリームの形態である。
【0103】
いくつかの実施形態では、水含有組成物は、少なくとも一つのpH調整剤をさらに含む
。
【0104】
好適なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、トロラミン、クエン酸、クエン酸緩衝
液、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施
形態では、pH調整剤は、トロラミンまたは水酸化ナトリウムから選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、水含有組成物は、約3.5~約6.0、または約4.0~約
5.0のpH範囲を有する。
【0106】
特定の実施形態では、O/Wエマルジョン組成物は、(a)好ましくは約1~3%の量
のフェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩、(b)好ましくは約1~5%の量の
少なくとも一つのポリアクリルアミド型ゲル化剤、(c)好ましくは約1~5%の量の少
なくとも一つのセルロース型ゲル化剤、(d)好ましくは約5~20%の量の少なくとも
一つの溶媒、(e)好ましくは約5~15%の量の少なくとも一つの共溶媒、(f)好ま
しくは約10~25%の量の少なくとも一つの皮膚軟化剤、(g)好ましくは約50~7
0%の量の水、(g)好ましくは約0.2%未満の量の少なくとも一つの防腐剤、および
場合により(i)必要に応じてpH調整剤、を含む。
【0107】
局所用組成物の重要な特徴は、皮膚層を貫通するその能力である。本開示の局所用組成
物は、活性剤フェノルドパムを皮膚へ浸透させる。
【0108】
本開示の実施形態によれば、適用されたフェノルドパム用量の少なくとも0.01%、
少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくと
も3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくと
も8%、少なくとも9%、または少なくとも10%は、皮膚内に浸透する。いくつかの実
施形態では、浸透用量は、実施例3によって例示されるように決定される。
【0109】
さらに別の実施形態では、局所用フェノルドパム組成物の最大体内吸収は、血液中約1
0ng/ml未満である。別の実施形態では、局所用フェノルドパム組成物の最大体内吸
収は、約5ng/ml未満である。別の実施形態では、局所用フェノルドパム組成物の最
大体内吸収は、約2.5ng/ml未満である。別の実施形態では、局所用フェノルドパ
ム組成物の最大体内吸収は、約1ng/ml未満である。別の実施形態では、局所用フェ
ノルドパム組成物の最大体内吸収は、約0.5ng/ml未満である。別の実施形態では
、局所用フェノルドパム組成物の最大体内吸収は、約0.1ng/ml未満である。
【0110】
別の実施形態によれば、浸透/透過ヒト皮膚研究において、適用されたフェノルドパム
用量の1%以下、0.5%以下、0.1%以下、または0.05%以下が皮膚を通って受
容器細胞中に浸透する。
【0111】
本開示の別の実施形態によれば、フェノルドパム局所用組成物は、皮膚疾患の治療用で
ある。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、T細胞媒介性の免疫炎症性疾患である。い
くつかの実施形態では、皮膚疾患は、D1受容体媒介性の皮膚疾患である。
【0112】
別の実施形態によれば、皮膚疾患は、乾癬、アトピー性皮膚炎、脱毛症、にきび、酒さ
および白斑から選択される。
【0113】
したがって、組成物は、乾癬、アトピー性皮膚炎、脱毛症、にきび、酒さおよび白斑か
ら選択される皮膚疾患を有する対象への適用に好適である。
【0114】
好ましい実施形態では、皮膚疾患は乾癬またはアトピー性皮膚炎である。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、D1受容体媒介性の皮膚疾患を治療する
ために有用な少なくとも一つの別の医薬品と組み合わせて投与される。いくつかの実施形
態では、フェノルドパム治療薬および少なくとも一つの別の医薬品は、同じ医薬組成物で
ある。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの別の医薬品は、例えば、副腎皮質ステ
ロイド、ビタミンAまたはビタミンDまたは類似体、タザロテン、サリチル酸、コールタ
ール、および鎮痒剤から選択される。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示の局所用組成物は、D1受容体媒介性の皮膚疾患に有
効であることが知られている別の治療処置と組み合わせて投与される。いくつかの実施形
態では、別の治療処置は、光線療法または小分子薬剤および生物学的薬剤を含む全身療法
から選択される。
【0117】
別の態様によれば、本開示は、治療を必要とする対象においてD1受容体媒介性の皮膚
疾患を治療する方法を提供し、方法は、対象の皮膚の患部に、治療有効量の約0.1重量
%~約5重量%のフェノルドパムまたはその薬学的に許容される塩、少なくとも一つのポ
リアクリルアミド型ゲル化剤、少なくとも一つのセルロース型ゲル化剤、および少なくと
も一つの溶媒を含む治療有効量のフェノルドパムの局所用組成物を局所投与することを含
み、フェノルドパムは組成物中に実質的に可溶化され、組成物は少なくとも1ヶ月間安定
である。
【0118】
「治療有効量」または「治療有効量」とは、疾患を治療するために対象に投与される場
合、その疾患に対する治療に効果をもたらすのに十分である量を意味する。
【0119】
本明細書で使用する場合、用語、疾患の「治療すること」または「治療」というは、疾
患の素因がある可能性があるが、まだ疾患の症状を経験または示さない対象において疾患
が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患を抑制すること(その進行を遅らせるか停
止させる)、疾患の症状や副作用を軽減させること(緩和治療を含む)、疾患を緩和する
こと(疾患を退行させること)を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェノルドパムを含む物理的および化学的に安定
な局所用製剤を調製するためのプロセスを提供し、局所用製剤は、無水ゲルまたはO/W
エマルジョンである。
【0121】
いくつかの実施形態では、O/Wエマルジョンを調製するためのプロセスは、油相を有
するエマルジョンの形成前に、水相に活性成分を添加することを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、O/Wエマルジョンを調製するためのプロセスは、水相を油
相と混合することによってエマルジョンを形成し、活性成分をエマルジョンに添加するこ
とを含む。
【0123】
好ましい実施形態では、O/Wエマルジョンを調製するためのプロセスは、水相を油相
と混合することによってエマルジョンを形成し、活性成分をエマルジョンに添加すること
を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、O/Wエマルジョンを調製するためのプロセスは、室温(約
15℃~約30℃)で実行される。
【0125】
ここで概ね本発明を説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、同じことが
よりよく理解されるであろう。これらは、例示のみを目的として本明細書に提供され、特
に明記しない限り、本発明も実施形態も限定することを全く意図しない。
【0126】
特許、特許出願、論文、教科書等を含む本明細書に引用される全ての参照文献、および
それらに引用される参照文献は、それらがまだ引用されていない限り、その全体が参照に
より本明細書に組み込まれる。
【実施例0127】
GELOT64を用いた製剤は、物理的および化学的に不安定であった。これは不均質
であり、総不純物濃度は、加速安定条件(ACC)において、T=0で1.3%から3ヶ
月後に21.6%に増加した(表1)。さらに詳細には、APIの分解に関連する不明な
不純物(表1のUnK Imp 1)は、加速条件において3ヶ月後に非常に高い濃度(
3ヶ月ACCで21.6%)で組成物中に現れた。
【0128】
【0129】
製剤2は、0.1%のフェノルドパムを有するゲル化剤としてSepineoおよびカ
ルボマー(カルボポール)を含有する。低濃度、例えば0.1%のフェノルドパムメシル
酸塩では、Sepineoおよびカルボマーを用いた製剤は、化学的および物理的安定性
の両方を示した。しかし、高濃度、例えば1%または2%のフェノルドパムでは、凝集体
の形成により製剤の物理的安定性が損なわれた。
【表4】
【0130】
Sepineo(商標)P600およびヒドロキシプロピルセルロースの存在下で、凝
集体は形成されず、製剤は、幅広い濃度のフェノルドパム中で物理的に安定であった。さ
らに、Sepineo(商標)P600とヒドロキシプロピルセルロースとの組み合わせ
は、驚くべきことに、フェノルドパムアッセイ(T=0で98%、および室温で3ヶ月後
に98.1%)、ならびに室温(RT)で3ヶ月の安定化後、0.2%未満の総不純物濃
度(T=0で0.16%、および室温で3ヶ月後に0.11%)に有意な変化がない、組
成物の物理的安定性および化学的安定性の両方をもたらした。重要なことに、ヒドロキシ
プロピルセルロースおよびSepineo(商標)P600の存在下で、ImpBおよび
任意の個々の不明な不純物(UnK Imp)の濃度は、加速条件下での3ヶ月後であっ
ても、0.2%未満であった(表2)。
【表5】
【0131】
以下の表は、異なる濃度のSepineoおよびその安定性に対するその効果を示す。
Sepineo(商標)P600の濃度は、1.0~5.0%の範囲で増加し、変動した
(製剤4A-4F)。
【表6】
【0132】
プロトタイプ4B(1%フェノルドパム)および4D(2%フェノルドパム)をベース
に調製される代表的な製剤の安定性を、少なくとも1ヶ月間にわたって評価した(表3お
よび表4)。フェノルドパムアッセイの減少は室温で1ヶ月後に5%未満であり(それぞ
れ1%および2%のフェノルドパムの場合、T=0で96%、および室温で1ヶ月で93
.9;T=0で97.1%、および室温で1ヶ月で95.3%)、ならびに総不純物濃度
は同じ、または減少した(それぞれ1%および2%フェノルドパムの場合、T=0で0.
9%、および室温で1ヶ月で0.9%、ならびにT=0で0.93%、および1ヶ月で0
.81)。重要なことに、不純物B濃度は、室温および加速条件の両方で安定期間を通し
て有意な変化を示さず、0.2%未満であり、ならびに任意の個々の不明な不純物は1%
未満であった。さらに、製剤の粘度に顕著な変化はなく、組成物の安定性をさらに裏付け
た。
【表7】
【表8】
【0133】
結果は、Sepineo(商標)P600およびセルロース誘導体の両方を含む無水ゲ
ル製剤が、化学的および物理的の両方共に安定であることを予想外に示している。具体的
には、不明な不純物の濃度は1%未満であり、薬剤アッセイ値は、初期アッセイ値に対し
て5%以下で減少し、不純物Bの濃度は、25℃および60%の相対湿度で1ヶ月後、約
0.2重量%未満であった。さらに、本開示のこれらの製剤は、高濃度のフェノルドパム
の可溶化を可能にし、したがって効率的な局所適用に適している。
実施例2:フェノルドパムO/Wエマルジョン製剤
【表9】
【表10】
【0134】
加速安定条件下での6ヵ月後、フェノルドパムメシル酸塩の不純物濃度の38.56%
総不純物から6.36%への顕著な減少により反映されたように、Sepineo(商標
)P600は、O/Wエマルジョン製剤中のフェノルドパムの化学安定性を予想外に改善
させた。重要なことに、形成が組成物中の水の存在下で加速される不明なImp 1の濃
度は、Sepineo(商標)P600の添加のより有意に(30.22%から6ヶ月後
の加速安定性条件において4.48%へ)減少した(表5)。しかし、フェノルドパムの
濃度が高い組成物では、化学的安定性のさらなる改善が必要であった。
【表11】
【表12】
【0135】
製剤7は、相分離で物理的に不安定であった。
【表13】
【0136】
製剤8は、多くの凝集体で物理的に不安定であった。
【表14】
【0137】
製剤9A-9Iを、様々な濃度で0.5%~3%のフェノルドパムの、Sepineo
とヒドロキシプロピルセルロースとの組み合わせで調製した。代表的製剤の安定性を、少
なくとも1ヶ月間にわたって評価した(表6および表7)。Sepineoとヒドロキシ
プロピルセルロースとの組み合わせは、組成物の安定性を予想外に改善した。フェノルド
パムアッセイの変化は、室温で1ヶ月後で5%未満(それぞれ1%および2%のフェノル
ドパムの場合、T=0で97.8%、および室温で1ヶ月で97.1;T=0で98.8
%、および室温で1ヶ月で97.0%)であり、ImpBおよび任意の個々の不明な分解
不純物を含む各不純物の濃度は0.2%未満であった。エマルジョンは均質であり、各製
剤内の粘度に顕著な変化はなく、組成物の安定性をさらに裏付けた。最も重要なことに、
様々な濃度のフェノルドパムでの製剤のpHは、安定中に変化せず、4.1~4.2の範
囲で維持された。
【表15】
【表16】
【0138】
結果は、Sepineo(商標)P600およびセルロース誘導体の両方を含むO/W
エマルジョン製剤が、化学的および物理的の両方共に安定であることを予想外に示してい
る。具体的には、不明な不純物の濃度は1%未満であり、薬剤アッセイ値は、初期アッセ
イ値に対して5%以下で減少し、不純物Bの濃度は、25℃および60%の相対湿度で1
ヶ月後、約0.2重量%未満であった。さらに、本開示の製剤は、pH4~5を維持しな
がら高濃度のフェノルドパムの可溶化を可能にし、したがって効率的な局所適用に適して
いる。
【0139】
実施例3:皮膚浸透/透過試験
浸透/透過モデルは、局所的に適用される薬剤の経皮吸収の研究のための十分に検証さ
れた方法である。本モデルは、特別に設計された拡散チャンバーに取り付けられた切除さ
れたヒト皮膚を使用しており、これにより、実際の使用条件に合致する温度および湿度で
皮膚を維持することができる。組成物は皮膚表面に適用され、化合物の浸透は、皮膚層に
おけるその出現の速度、ならびに皮膚試料の下に流れる受容体溶液を監視することによっ
て測定される。また、このインビトロシステムは、投与量、湿度、温度、薬剤安定性、皮
膚の厚さ等の局所適用に関わる潜在的変数の多くを慎重に制御する可能性を有する。
【0140】
採取された皮膚は、二つの半分の拡散セルの間に配置され、角質層はドナーコンパート
メントに面して薬物の適用が可能である。ヒト皮膚を透過する薬物濃度、およびいくつか
の皮膚層内の薬物浸透が測定される。
【0141】
代表的な局所用組成物からフェノルドパムの皮膚への浸透を測定するために、死体皮膚
を使用してインビトロ浸透/透過試験を実施した。皮膚(浸透)内および受容器細胞(透
過)中のフェノルドパムメシル酸塩の総量を分析した。
【0142】
インビトロ皮膚浸透/透過試験は、垂直静止フランツセルを使用して測定された。本試
験では、2人の異なるドナーからの2片の切除された熱分離ヒト皮膚を使用した。合計8
個のセルが、平均適用用量13.36±1.79mg/cm2で各製剤に使用された。透
過試験は、受容体溶液として0.1%v/vのリン酸(0.1%PhA)を用いて実行さ
れた。t0に加えて7つの時点で受容体溶液をサンプリングした。48時間後、皮膚表面
を予め開発された洗浄手順を用いて洗浄し、次いで皮膚表面をテープで剥がした(10回
以下)。テープおよび皮膚抽出を、5.0mLの0.1%リン酸で行い、試料を65℃で
15分間加熱した。洗浄液、テープ、皮膚、および透過試料を分析して、質量バランスを
決定した。全ての試料をHPLC-UVで分析した。全ての皮膚試料の電気抵抗は、10
0Hzで実施される経皮電気抵抗(TER)測定によって測定されて、20kHZより高
いことを確認した。
【0143】
4.1 浸透/透過結果
表8に、表皮(表中で皮膚と定義される)内および角質層(表中でテープと定義される
)内で測定されたフェノルドパムメシル酸塩の、皮膚試料に適用された量に対する割合を
表にまとめた。結果は、2人の異なるドナーから採取した二つの皮膚試料の平均である。
【0144】
表8から明らかなように、フェノルドパムの表皮内への浸透率は、無水ゲル製剤および
o/w製剤の両方において角質層に残留したフェノルドパムの割合よりも高い。さらに、
主にo/w製剤では、フェノルドパム1%と比較して、フェノルドパム2%で、角質層お
よび表皮に浸透したフェノルドパムの割合が高かった。
【表17】
【0145】
表9に、24時間および48時間のインキュベーション後の皮膚サンプルに適用された
量に対する、受容器細胞で測定されたフェノルドパムメシル酸塩の累積割合を表にまとめ
る。結果は、2人の異なるドナーから採取した二つの皮膚試料の平均である。
【0146】
表9から明らかなように、皮膚に適用されたフェノルドパム用量の0.03%未満が、
無水製剤およびo/w製剤の両方において、皮膚を通って受容器細胞に浸透した。
【表18】
【0147】
フェノルドパムの表皮への有意な浸透が、無水およびO/Wエマルジョン製剤の両方で
観察されたと結論付けた。さらに、皮膚を通り受容器細胞への透過は両方の製剤で非常に
低く、O/W製剤では透過率が高いことが観察された。
【0148】
実施例4:乾癬の治療用フェノルドパムメシル酸塩組成物の有効性
乾癬の治療のための本開示に従って開発された局所用安定フェノルドパム組成物の有効
性は、マウスにおけるヒト皮膚異種移植モデルにおいて評価される。ヒト皮膚異種移植モ
デルは、臨床試験を開始する前に、新規の抗乾癬薬/治療戦略を探索する前臨床アッセイ
を実行するのに最も好適である。本試験の目的は、乾癬のヒトT細胞駆動型モデルにおけ
る乾癬の組織学的パラメーターに対するフェノルドパムメシル酸塩製剤の有効性を評価す
ることである。
【0149】
5.1 試験手順
試験に組み入れられた患者は、典型的な尋常性乾癬を患っており、この疾患の治療を受
けていなかった。健康なボランティアの1人からの正常な皮膚が、移植のために採取され
る。
【0150】
0.4mmの幅および1.5×1.5cmの表面積の健康なヒト皮膚片は、Ramba
m Health Care Campus,Haifa,Israelの整形外科より
日常的な形成外科処置の残存皮膚から提供される。さらに、20mLの血液試料を乾癬患
者から採取した。
【0151】
正常な健康なヒトドナー皮膚を、ベージュ-重症複合免疫不全マウス(SCID)(体
重約20g)に移植する。
【0152】
マウスは、いくつかの治療群に分けられる。各群のマウスは、乾癬ドナーからの高レベ
ルのNK細胞受容体を発現する活性化同種T細胞を受け取る。
【0153】
乾癬患者の血液由来の末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、高用量IL-2(100
U/mLの培地)の存在下で14日間培養し、高レベルのNK細胞受容体を発現する同種
T細胞を活性化する。
【0154】
生着の4週間後、各マウスに、乾癬患者由来の1×107個の活性化同種IL2-増強
PBMCを注射する(1×107個の細胞を注射/マウス)。異なる乾癬患者由来の細胞
は、治療群間で均等に分布する。各患者は、各治療群で表される。
【0155】
注射の2週間後、マウスは無作為に分けられ、異なる局所用製剤を用いて14構成日間
毎日処置される。
【0156】
治療開始の14日後(注射の4週間後)、血液試料が採取され、皮膚が採取される。移
植片は、乾癬パラメーターについて組織学的および免疫組織化学的に分析される。
【0157】
実施例5:アトピー性皮膚炎の治療用フェノルドパムメシル酸塩組成物の有効性
本開示に従って成功裏に開発された局所用安定フェノルドパム組成物の有効性は、アト
ピー性皮膚炎の動物モデルで評価される。2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)
の繰り返しの適用は、再現性の利点を有するアトピー性皮膚炎の一般的な動物モデルであ
る。
【0158】
6.1 試験手順
Balb/cマウスは、1日目に、剃毛した背後背部皮膚に、アセトン:オリーブオイ
ル(Figaro)3:1中1%DNCBを100マイクロリットル、および1日目から
4日目まで、右耳に、1%のDNCBを10マイクロリットル適用することによって、増
感される。6日目に、デジタル計量秤を用いて動物を計量する。
【0159】
動物は、処置の4時間後にそれらの背後背部皮膚に、アセトン:オリーブオイル(3:
1)中0.5%DNCBを100マイクロリットル、および8日目、10日目、12日目
、14日目に右耳に0.5%DNCB20マイクロリットルの適用を受けた。正常なコン
トロール動物を増感させ、アセトンおよびオリーブオイルのみが課せられる一方で、処置
群の動物をフェノルドパム組成物で処置する。組成物は、6日目から14日目までの9日
間、マウスの背部皮膚上の約5~6cm2の領域に適用される。各プラセボアイテムは、
6日目から14日目まで9日間、マウスの背部皮膚の約5~6cm2の領域に局所的に適
用される。参考として、ベタメタゾン吉草酸クリームが同様に使用される。
【0160】
臨床スコアリングは、適切なコントロールを用いて、試験される組成物の有効性を測定
するために実行される。15日目、背部皮膚重症度スコアは、以下の基準1)紅斑(0-
3)、2)剥脱/びらん(0-3)、3)瘢痕/乾燥度に従って評価され、各基準では、
スコアは、病変なし、0;軽度、1;中等度、2;重度、3である。総計最大累積スコア
は、これらの個々のスコアの合計として定義される9である。
【0161】
試験終了時に、アトピー性皮膚炎パラメーターの別の組織学的および免疫組織化学的分
析のために、動物を犠牲にし、背部皮膚組織を採取する。
【0162】
実施例6:フェノルドパムメシル酸塩による乾癬の治療
この実験は、実験的に誘発された乾癬に対するフェノルドパムメシル酸塩(FMT)の
効果に焦点を当てた。このモデルでは、乾癬様表現型は、乾癬患者に由来するナチュラル
キラー/T細胞の皮内注射により、ベージュ-重度複合免疫不全マウスに移植された正常
なヒト皮膚に誘発される(Gilharら,J Invest Dermatol.20
02年8月;119(2):384-91 )。
【0163】
これらの別の実験の目的は、FMTの治療効果を検証し、二つの異なる製剤(クリーム
対ゲル)の二つの用量(1%対2%)の治療効果を比較することであった。
【0164】
実験の目的に対処するために、乾癬性ヒト化マウスを準備した。10人の乾癬患者を募
集し(男性7人、女性3人)、平均44歳、検査のため22~61歳の範囲とした。すべ
ての患者が典型的な尋常性乾癬を患っていた。いずれの患者も治療を受けていなかった。
健康なボランティアの1人からの正常な皮膚が、移植のために採取された。
【0165】
実験では、72匹のマウスを8つの群に分けた(表10)。全てのマウスに、手順に従
って、乾癬患者から得られたNK受容体を発現するT細胞を注射した。その後、マウスを
以下のように分けた:第1群:非処置コントロール、第2群:デキサメタゾン、第3群:
FMTゲル1%、第4群:FMTゲル2%、第5群:ゲル(ビヒクル)、第6群:FMT
クリーム1%、第7群:FMTクリーム2%、および第8群:クリーム(ビヒクル)。全
ての群を、T細胞注射後14日目から28日目まで処置した。
【表19】
【0166】
予想通り、様々なビヒクルで処置された異種移植の全ては、表皮の過角化症および錯角
化症、表皮肥厚、乳頭間隆起の伸長、ならびに真皮における高密度な単核球浸潤を含む、
組織学的に典型的な乾癬の特徴を示した(表11、12)。デキサメタゾンで処置された
全ての異種移植において、これらの特徴は全く存在しなかった(表11、12)。
【表20】
【表21】
【0167】
FMTゲル2%で処置された異種移植は、6/10のマウスにおいて、平均表皮厚45
1±232μmで、乾癬様の特徴からの回復を示した(表11、12)。同様に、FMT
ゲル1%で処置された異種移植は、5/10のマウスにおいて、平均表皮厚509±21
2μmで回復を示した。ビヒクル(ゲル)で処置された異種移植は、9つの移植片(9/
10)において、増加した平均表皮厚680±238μmで、乾癬様の特徴を示した(表
11、12)。治療効果は、ゲルの代わりにクリームを使用することによっても観察され
た。FMTクリーム1%で処置された異種移植は、5/10の異種移植および422±1
88マイクロメートルの表皮厚において乾癬の特徴のクリーニングを示した。クリーム2
%を用いた処置は、5つの異種移植(5/10)において平均表皮厚460±221で完
全な回復を示した。しかし、ビヒクル(クリーム)で処置された異種移植は、乾癬の特徴
および高レベルの平均表皮厚を有する9/10に対して、一つの異種移植のみで完全な回
復を示した、167±618μm 表11、12)。逆に、デキサメタゾンで処置された
異種移植は、平均表皮厚295±26mで、乾癬の特徴から完全回復(5/6)または部
分回復(1/6)を示した。
【0168】
次いで、KKi-67およびHLA-DRの様々なヒト異種移植に由来する皮膚切片を
染色した:第1は細胞性過剰増殖のマーカー、第2は免疫刺激のためである。KKi-6
7の強力な発現は、全てのコントロールおよびビヒクルの群、ならびに非レスポンダーF
MT異種移植において、表皮の下部に沿って観察された。デキサメタゾン群およびFMT
レスポンダー異種移植において、より弱い発現が観察された(
図1)。ならびに表13お
よび14に示されるように、HLA-DRは、様々なコントロールおよびビヒクルで処置
された異種移植の表皮全体、ならびにほとんどの非レスポンダー異種移植において強く発
現することが見出された。しかし、FMTで処置されたレスポンダー移植体では、表皮に
沿ってHLA-DR発現の弱さまたは欠如が観察された。より具体的には、6/10のF
MTゲル2%処置された異種移植は、表皮に沿って軽度または完全な陰性のHLA-DR
発現を示した。5/10の異種移植において、クリーム2%は表皮HLA-DR発現を減
少させた(および表13、14)。
【表22】
【表23】
【0169】
皮膚における炎症性浸潤を特徴付けるために、Tリンパ球を標示するCD8、CD4お
よびIL-17+細胞の発現を調べた(および表15、16)。これらのマーカーは、様
々なコントロール群およびビヒクル群の真皮の上部、ならびにFMTで処置された非レス
ポンダー異種移植において強く発現するが、デキサメタゾンまたはFMTレスポンダー移
植片のいずれかで処置された異種移植では、たとえ発現しても弱く発現することが判明し
た。より正確には、HLA-DR細胞およびCD4+細胞の発現の弱いまたは不在が、F
MTゲル2%で処置されたレスポンダー異種移植の6/10および7/10で観察された
(および表15、16)。
【表24】
【表25】
【0170】
クリーム2%で処置された異種移植は、5/10で上部真皮に沿ってCD8+およびC
D4+細胞が、ならびに6/10の移植体でIL-17+細胞が、弱いまたは存在しなか
ったことを示した(および表15、16)。上述のように、炎症マーカーの発現は、全て
のコントロールおよびビヒクル群(コントロール非処置、ビヒクルゲル、およびビヒクル
クリーム)で観察され、FMTの治療的介入をさらに裏付けた。これらの所見は、乾癬の
免疫要素に対するFMTの影響の可能性を示唆する。
【0171】
結論として、本試験は、ゲル製剤およびクリーム製剤の両方について、乾癬のヒト化マ
ウスモデルにおけるFMTの治療効果の可能性を確認した。
【0172】
実施例7:フェノルドパム局所用組成物の長期安定性
組成物の長期安定性を評価するために、組成物試料をRT条件下、INT条件下、また
はACC条件下で長期間保つ。物理的安定性は、組成物の巨視的および微視的外観(パラ
メーター、例えば、色、均質性、相分離の非存在、結晶の非存在、エマルジョンの液滴サ
イズを含む)、ならびに特性、例えば、pH(水性組成物中)およびチキソトロピー性(
例えば、展延性を含む)における一貫性を維持することによって評価された。化学的安定
性は、防腐剤の濃度だけではなく、フェノルドパムの濃度(アッセイ結果)、ならびに既
知および不明な不純物の濃度の一貫性によって評価され、これらの保存期間中にHPLC
技術を用いて測定される。
【0173】
本開示は、表17に概説のように無水製剤(ゲル)によって例示される。
【表26】
【表27】
【0174】
本開示は、表18に概説のように、水中油型エマルジョン製剤(クリーム)によっても
例示される。
【表28】
【表29】
【0175】
無水製剤1のT=0、2週間での分析を表19Aに示し、無水製剤8のT=0、2週間
、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、および9ヶ月での分析を表19Bに示す。
【表30】
【表31】
【0176】
製剤11、13および14のT=0、2週間、1ヶ月および3ヶ月での分析を表20、
表20Aおよび表20Bに示す。
【表32】
【表33】
【表34】
【0177】
表18からの代表的な水中油型製剤のT=0、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ
月、および9ヶ月での分析を表21および表22に示す:
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【0178】
安定性試験は、試験された無水ゲル、ならびに少なくとも一つのポリアクリルアミド型
ゲル化剤、少なくとも一つのセルロース型ゲル化剤、および少なくとも一つの溶媒を含む
試験された水中油型エマルジョンが、最大12ヶ月間安定であることを示唆する。