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特開2022-160649光送信サブアセンブリ及び光モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160649
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】光送信サブアセンブリ及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/015 20060101AFI20221012BHJP
【FI】
G02F1/015 502
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127618
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2017241787の分割
【原出願日】2017-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 義博
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 秀明
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で変調器の特性を安定させることを目的とする。
【解決手段】光送信サブアセンブリ10は、光吸収量に対応する電流Iphが、印加電圧Vに対して正の相関関係を有する特性の光変調器30と、第1端子42aに入力される制御信号CSに対応する電流Iが、第2端子42b及び第3端子42cの間を流れるように機能するトランジスタ42と、を有する。光変調器30及びトランジスタ42に印加される駆動電圧VDDは、光変調器30に印加される第1電圧Vと、トランジスタ42に印加される第2電圧Vに分圧される。光変調器30及びトランジスタ42を流れる電流Iは、第1端子42aに入力される制御信号CSに従って決定される。第1電圧Vは、電流Iphに基づいて光変調器30の特性に従って決定される。第2電圧Vは、第1電圧Vに対応して変動するようになっている。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの出力光を変調するように配置され、光吸収量に対応する電流が、印加電圧に対して正の相関関係を有する特性の光変調器と、
第1端子、第2端子及び第3端子を有し、前記第1端子に入力される制御信号に対応する電流が、前記第2端子及び前記第3端子の間を流れるように機能するトランジスタと、
を有し、
前記トランジスタは、前記第2端子で前記光変調器に直列に接続し、
前記光変調器及び前記トランジスタに印加される駆動電圧は、前記光変調器に印加される第1電圧と、前記トランジスタに印加される第2電圧に分圧され、
前記光変調器及び前記トランジスタを流れる駆動電流は、前記第1端子に入力される前記制御信号に従って決定され、
前記第1電圧は、前記駆動電流に基づいて前記光変調器の前記特性に従って決定され、
前記第2電圧は、前記第1電圧に対応して変動するようになっていることを特徴とする光送信サブアセンブリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信サブアセンブリ及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムには情報伝送の大容量化及び低コスト化が求められる。当該要求に対して、光送信モジュールには高速化やサイズ低減などが要求される。光送信モジュールは送信情報に対応した変調信号を生成することを主たる機能とする。光送信モジュールの変調方式は、信号光源であるレーザダイオード(Laser Diode: LD)の光出力強度を直接的に変調する直性変調方式と、一定に保ったレーザダイオードの光出力を外部に備えた光変調器で変調する外部変調方式に大別される。外部変調方式の変調器には、電界吸収型光変調器(Electro-Absorption Optical Modulator:EA変調器)やマッハェンダー型光変調器(Mach-Zehnder Optical Modulator:MZ変調器)などがある。
【0003】
EA変調器は半導体から成る多重量子井戸構造をp型およびn型の導体で挟んだ構造で構成される。量子井戸に印加される電圧に応じて光の吸収端波長が長波長側へシフトする現象を用いて入射光強度の吸収量を変化させ、出力光強度を制御することができる。
【0004】
EA変調器は温度や入力光パワー(LD光出力パワー)などの外的要因により変調特性、すなわち消光比が変化する。外的要因が変化しても所望の特性を保つためのフィードバック制御と組み合わせて用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、光波形を維持するためにEA変調器に流れる電流(フォトカレント)を検出し、EA変調器に印可する駆動電圧を制御する例が開示されている。また、特許文献2には、EA変調器を含んだ半導体LDモジュールの温度を検知し、その温度からEA変調器に印可する電圧を制御する公知例が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-76776号公報
【特許文献2】特開2004-61556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EA変調器の動作状態において、温度などの外的要因が変化した際、正常な通信状態を維持するために消光比あるいは光出力を一定に保つ必要がある。代表的なその方法の一つにフィードバック制御が挙げられる。具体的には、EA部に流れる電流、いわゆるフォトカレントを検出し、EA部への印可電圧を制御する方法である。しかし、これは時間平均したフォトカレントを使用する。つまり、ハイレベルとローレベルの点におけるフォトカレントを正確に検出しているわけではない。したがって、温度変化などにより消光特性が非線形に変化した場合は消光比制御ができない。これを解決するためには外的要因に対する消光比、光出力の変化を予め測定し、適した補正値を設定するフィードフォワード制御をおこなう必要がある。しかし、これには個体毎の調整が必要になることが多く、大量生産が必要とされる場面ではコスト的に不利となる場合がある。
【0007】
本発明は、簡単な構造で変調器の特性を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る光送信サブアセンブリは、光源と、前記光源からの出力光を変調するように配置され、光吸収量に対応する電流が、印加電圧に対して正の相関関係を有する特性の光変調器と、第1端子、第2端子及び第3端子を有し、前記第1端子に入力される制御信号に対応する電流が、前記第2端子及び前記第3端子の間を流れるように機能するトランジスタと、を有し、前記トランジスタは、前記第2端子で前記光変調器に直列に接続し、前記光変調器及び前記トランジスタに印加される駆動電圧は、前記光変調器に印加される第1電圧と、前記トランジスタに印加される第2電圧に分圧され、前記光変調器及び前記トランジスタを流れる駆動電流は、前記第1端子に入力される前記制御信号に従って決定され、前記第1電圧は、前記駆動電流に基づいて前記光変調器の前記特性に従って決定され、前記第2電圧は、前記第1電圧に対応して変動するようになっていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、トランジスタを使用した簡単な構造で変調器の特性を安定させることができる。
【0010】
(2)(1)に記載の光送信サブアセンブリは、前記トランジスタは、電界効果トランジスタであり、前記制御信号は、電圧信号であることを特徴としてもよい。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載の光送信サブアセンブリは、サブマウントをさらに有し、前記サブマウントに前記光源及び前記光変調器が搭載されていることを特徴としてもよい。
【0012】
(4)(3)に記載の光送信サブアセンブリは、前記サブマウントに前記トランジスタも搭載されていることを特徴としてもよい。
【0013】
(5)(3)に記載の光送信サブアセンブリは、中継基板をさらに有し、前記中継基板に前記トランジスタが搭載されていることを特徴としてもよい。
【0014】
(6)本発明に係る光モジュールは、(1)から(5)のいずれか1項に記載の光送信サブアセンブリと、光受信サブアセンブリと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る光送信サブアセンブリを含む光モジュールの概要図である。
図2図1に示す光モジュールの内部構造を示す概要図である。
図3】光送信サブアセンブリの断面構造を示す概念図である。
図4図3に示す光送信サブアセンブリの内部の平面図である。
図5】本実施形態に係る光送信サブアセンブリの等価回路を示す図である。
図6】本実施形態に係る光送信サブアセンブリの動作を説明する図である。
図7】本発明の実施形態の変形例1に係る光送信サブアセンブリの断面構造を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る光送信サブアセンブリを含む光モジュール1の概要図である。光モジュール1は、光送信機能を有する光送信サブアセンブリ(TOSA)10と、光受信機能を有する光受信サブアセンブリ(ROSA)12を備えるトランシーバ(光送受信モジュール)である。光モジュール1は外部のホスト装置で電気信号をやり取りする。伝送される高周波の電気入力信号ESINは、ドライバIC(集積回路)14や図示しないクロック・データ・リカバリ(Clock Data Recovery:CDR)を介して光送信サブアセンブリ10に入力され、光送信サブアセンブリ10にて光出力信号OSOUTに変換され、外部の光ファイバなどに伝達される。逆に外部の光ファイバより入力される光入力信号OSINを受けた光受信サブアセンブリ12は、これを高周波の電気信号に変換し、変換された電気信号は増幅器16などで増幅されて、外部のホスト装置へ電気出力信号ESOUTとして出力される。
【0018】
図2は、図1に示す光モジュール1の内部構造を示す概要図である。光モジュール1内にはドライバIC14や増幅器16(図1)などを搭載するプリント回路基板(PCB)18が備わっている。プリント回路基板18は、フレキシブル基板(FPC)20で、光送信サブアセンブリ10や光受信サブアセンブリ12(図1)に接続される。なお、光送信サブアセンブリ10又は光受信サブアセンブリ12とフレキシブル基板20は、光送信サブアセンブリ10又は光受信サブアセンブリ12に設けられたフィードスルー22に接続される。
【0019】
図3は、光送信サブアセンブリ10の断面構造を示す概念図である。図4は、図3に示す光送信サブアセンブリ10の内部の平面図である。
【0020】
光送信サブアセンブリ10は、箱型の金属などで形成されたパッケージ24を有する。フィードスルー22はパッケージ24の内外の電気接続の機能を有している。フィードスルー22は、セラミック基板26を有し、その表面には、複数の配線(Interconnect Line)L~Lが形成されている。セラミック基板26の裏面には、図示しないグランドプレーンが形成されている。図示しないビアを介して、配線Lがグランドプレーンに接続される。
【0021】
パッケージ24内には、光源28及び光変調器30が収容されている。光変調器30は光源28からの出力光を変調するように配置されている。光変調器30の特性では、光吸収量に対応する電流が、印加電圧に対して正の相関関係を有する(例えば比例する)。光源28は半導体レーザ(レーザーダイオード)であり、光変調器30は電界吸収型光変調器(EA変調器)であり、これらが一体的に集積された電界吸収型光変調器集積レーザ(EA-DFB-LD)32が、セラミックからなるサブマウント34に搭載されて、パッケージ24に格納されている。
【0022】
サブマウント34上には配線パターンが形成されており、サブマウント34とフィードスルー22とはワイヤW~Wにて電気的に接続されている。サブマウント34は、表面に、接地電位(GND)に接続されるグランドパターン36を有する。サブマウント34の裏面には、図示しないグランドプレーンが形成されている。図示しないビアを介して、グランドパターン36が、図示しないグランドプレーンに接続される。
【0023】
サブマウント34には、電界吸収型光変調器集積レーザ32(光源28及び光変調器30)が搭載されてハンダなどで固定されている。電界吸収型光変調器集積レーザ32の表面には、光変調器30及び光源28それぞれのp型電極30p,28p及びn型電極30n,28nが形成されている。本構造は、例えば、半絶縁性半導体基板の表面に光変調器30及び光源28を形成することで実現できる。
【0024】
サブマウント34には、光源28に光源用電源Vを供給するための光源用電源線38が形成され、光源28のp型電極28pと光源用電源線38がワイヤWによって接続されている。フィードスルー22は、光源用電源Vに接続するための配線Lを有し、この配線Lと光源用電源線38はワイヤWによって接続されている。光源28のn型電極28nはワイヤWによってグランドパターン36に接続されている。グランドパターン36は、ワイヤW,Wによって、フィードスルー22の配線L,Lに接続される。
【0025】
サブマウント34には、光変調器30に逆バイアスを印加するための駆動線40が形成され、光変調器30のn型電極30nと駆動線40がワイヤWによって接続されている。フィードスルー22は、駆動電圧VDDが印加される配線Lを有し、配線Lと駆動線40はワイヤWによって接続されている。
【0026】
サブマウント34には、トランジスタ42(例えば電界効果トランジスタ)が搭載されている。トランジスタ42は、第1端子42a(ゲート)、第2端子42b(ドレイン)及び第3端子42c(ソース)を有する。図5に示すように、第1端子42aに入力される制御信号CS(例えば電圧信号)に対応する電流Iが、第2端子42b及び第3端子42cの間を流れるように機能する。第1端子42a、第2端子42b及び第3端子42cは、それぞれ、電気信号(高周波信号)を伝えるための信号線44、パッド46及びグランドパターン36に接続されている。信号線44は、ワイヤWによって、フィードスルー22の配線Lに接続されている。パッド46は、ワイヤWによって、光変調器30のp型電極30pに接続されている。つまり、ワイヤWによって、トランジスタ42と光変調器30は、第2端子42bで、直列に接続されている。ワイヤWを短くするために、トランジスタ42及び光変調器30は、できるだけ接近していることが好ましい。
【0027】
図5は、本実施形態に係る光送信サブアセンブリ10の等価回路を示す図である。トランジスタ42の第1端子42a(ゲート)は、信号源48に接続されて、制御信号CS(高周波信号)が入力されるようになっている。なお、制御信号CSはドライバIC(図示なし)により増幅されてもよい。また、第1端子42aは、終端抵抗50に接続されており、制御信号CSの反射を回避している。
【0028】
光源28は、光源用電源V及び接地電位GNDに接続され、電流が流れることで発光する。トランジスタ42は、n型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。直列に接続されたトランジスタ42及び光変調器30は、光変調器30に対して逆バイアスとなるように、駆動電圧VDD及び接地電位GNDに接続されている。光源28からの光を受けて、印加される電圧に基づいて、光変調器30には電流Iphが流れる。電流Iphは、トランジスタ42の第2端子42b(ドレイン)及び第3端子42c(ソース)の間を流れる電流Iに等しい。
【0029】
光変調器30及びトランジスタ42は直列に接続されているので、これらに印加される駆動電圧VDDは、光変調器30に印加される第1電圧Vと、トランジスタ42に印加される第2電圧Vに分圧される。光変調器30及びトランジスタ42を流れる駆動電流(電流Iph、電流I)は、第1端子42aに入力される制御信号CSに従って決定される。第1電圧Vは、駆動電流(電流Iph、電流I)に基づいて光変調器30の特性に従って決定される。第2電圧Vは、第1電圧Vに対応して変動するようになっている。
【0030】
以下、光変調器30の動作及び制御について説明する。本実施形態では、光源28からの光の一部を光変調器30が吸収することで、出力光を変調する。光変調器30の消光量によって、出力光は、ハイレベル又はローレベルの光出力強度になるように調整される。光変調器30の特性として、消光比(Extinction ratio:ER)もしくはOMA(Optical Modulation Amplitude)がある。
【0031】
消光量は、電流Iphに依存しており、電流Iphを一定に保つことが出来れば、消光量又はOMAを一定値に保つことができる。光源28からの光の光出力強度、つまり光変調器30に入力される光の光出力強度は、一定に保たれていることが前提になっており、これにより消光比を一定に保つことが出来る。本実施形態では、電流Iphを所望の値に保つためにトランジスタ42の特性を利用した。以下、その動作について説明する。
【0032】
図6は、本実施形態に係る光送信サブアセンブリ10の動作を説明する図である。詳しくは、駆動電圧VDDを3Vとし、ゲート・ソース間電圧VGS(VGS1~VGS5)ごとに、ドレイン・ソース間電圧VDSと電流Iの関係を示した。トランジスタ42は、ゲート・ソース間電圧VGSの値に応じて流れる電流Iが、ドレイン・ソース間電圧VDSに関わらず、概ね一定になるという特性がある。電流Iの大きさはゲート・ソース間電圧VGSの大きさに比例する。
【0033】
本実施形態に係る光送信サブアセンブリ10の基準値では、光源28の光出力強度が10mWであり、光変調器30の消光比が11.82dB、OMAが7.48dBmである。光変調器30に印加される第1電圧Vは、ゲート・ソース間電圧VGSを変えることで設定される。ゲート・ソース間電圧VGSを変えることで、第2端子42b及び第3端子42cの間を流れる電流Iを制御することができる。なお、ゲート・ソース間電圧VGSがトランジスタ42の閾値以下であれば、第2端子42b及び第3端子42cの間には電流Iが流れないため、光変調器30にも実効的に電圧が印加されず、電流Iphはほとんど流れない。
【0034】
ゲート・ソース間電圧VGSの増大に伴って、第2端子42b及び第3端子42cの間に流れる電流Iは増加し、光変調器30に実効的に印加される第1電圧Vも大きくなっていく。ドレイン・ソース間電圧VDS(第2電圧V)が大きくなると、実効的に光変調器30に印加される第1電圧Vは小さくなる。一方、ドレイン・ソース間電圧VDS(第2電圧V)が小さくなると、光変調器30に印加される第1電圧Vは大きくなる。光変調器30には、印加される第1電圧Vに応じた電流Iphが流れる。第1電圧Vに対する電流Iphの変化量は非線形である。つまりドレイン・ソース間電圧VDS(第2電圧V)が大きい場合は、光変調器30に印加される第1電圧Vが小さくなるために、電流Iphは絶対値で小さい。ドレイン・ソース間電圧VDS(第2電圧V)が小さくなるにつれて、電流Iphは絶対値で大きくなる。光変調器30を、出力光のハイレベルとローレベルに対応する二つの吸収状態に変化させることで、「1」及び「0」の変調された出力光を生成する。
【0035】
本実施形態に係る光送信サブアセンブリ10の基準値では、出力光のハイレベルとローレベルに対応して、電流Iphはそれぞれ5mA、12mAであり、消光量はそれぞれ4.002mW、9.6054mWであった。なお光変調器30の長さを200μm、出力光の波長を1.55μmとする。光変調器30に印加される第1電圧Vを調べたところ、ハイレベルで0.5V、ローレベルで1.2Vであった。なお、実際の製造工程における初期調整においてはあくまで電流Iphや消光比を測定しながらゲート・ソース間電圧VGSを設定するだけでよく、第1電圧Vの値がいくつであるかを調べる必要はない。
【0036】
光変調器30の環境温度が、例えば高温側に変化した場合、光変調器30の吸収特性はより吸収する方に変化する。つまり、同じ印加電圧で比較した場合に、吸収係数が大きくなる。なお、光源28の光出力強度は既存の方法にてAPC(Auto Power Control)などにより一定値に保たれているものとする。光源28の光出力強度が一定であり、光変調器30の吸収係数が大きくなると、従来の光送信サブアセンブリであれば、光変調器30に印加される第1電圧Vが変化しないにもかかわらず吸収量が大きくなり(電流Iphが大きくなり)、消光比及びOMAも変化する。
【0037】
しかし、本実施形態では、光変調器30はトランジスタ42に接続されているために、その特性により、電流Iは変化しなくても、ドレイン・ソース間電圧VDSが変化する。ドレイン・ソース間電圧VDS(第2電圧V)が変化することで、第1電圧Vも変化し、結果的に電流Iphは保持される。ハイレベル、ローレベルの第1電圧Vを確認したところ、それぞれ0.4V、0.96Vであり、基準値に近い値であった。
【0038】
以上のように、トランジスタ42の特性を利用することで、光変調器30に流れる電流Iphが一定となるように制御することが可能となり、消光量を一定に保つことができる。本制御は、フィードバックやフィードフォワードのように何らかのモニター値からフィードバックするようなことはせず、トランジスタ42の特性を利用した能動的な制御であり、フィードバック又はフィードフォワード用の制御回路が不要で、小型化に寄与する。また製造段階においては初期値となるゲート・ソース間電圧VGSを設定するだけでよく、個別の調整も少なく、低コストへ寄与することができる。従来の制御手段では、出力光のハイレベルおよびローレベルに対応して、光変調器30に印加する第1電圧Vそのものを変化させることで消光比等が一定となるように制御していた。しかし本実施形態では、ハイレベルおよびローレベルそれぞれに対応するゲート・ソース間電圧VGSは、基準値のまま変化させる必要はなく、トランジスタ42の特性により実際に光変調器30に印加される第1電圧Vを変化させることができるという効果が得られる。
【0039】
本実施形態では、光源28の光出力強度は一定に制御した状態であったが、光出力強度を制御しない場合であっても消光量は初期値を保つことができるためにOMA仕様に対しては有効となる。
【0040】
トランジスタ42の特性(VDS-I特性)では、電流Iはほぼ一定となるが、ゲート・ソース間電圧VGSが大きい値の場合などは、若干傾きを持った特性を示す。この傾きにより、電流Iphに若干のばらつきが生じるとしても、OMA、消光比の仕様は一定の幅を持って規定されているので、電流Iphのばらつき(消光量の変化分)は、仕様の範囲内に十分に収まる量であり、実用上は問題ない。なお、トランジスタ42は、接合型電界効果トランジスタやバイポーラトランジスタであってもよく、薄膜トランジスタであっても構わない。
【0041】
本実施形態よれば、光変調器30に印加される第1電圧Vを簡易的に制御し、電流Iphを一定に保つことで消光比、OMAを一定に保つことが出来る。近年はさらなる大容量化に伴い、4値パルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation-4:PAM4)が使われ始めている。電界吸収型光変調器集積レーザ32を用いたPAM4動作においては、伝送光波形の各信号レベルの間隔が一定になるように光変調器30へ印加する電圧を調整する必要がある。電界吸収型光変調器集積レーザ32の特性は個体毎に異なるため、毎度の調整が必要になり、コストの増大と生産性の低下が発生する。しかし、本実施形態においては、初期値として4つのゲート・ソース間電圧VGSさえ設定しておけば、あとは自動的に各信号レベルの間隔を保つように(消光比、OMAが一定となるように)制御されるために、製造段階のコスト削減に大きく貢献する。
【0042】
図7は、本発明の実施形態の変形例1に係る光送信サブアセンブリ110の断面構造を示す概念図である。本変形例は、フィードスルー122とサブマウント134の間に中継基板152を備えている点で上記実施形態と異なる。それ以外については、上記実施形態の内容が該当する。
【0043】
本変形例では、トランジスタ142はサブマウント134ではなく中継基板152上に配置されている。電界吸収型光変調器集積レーザ132は発熱体であるため、トランジスタ142をサブマウント134に搭載すると、その熱がトランジスタ142にも伝わる。トランジスタ142の温度変化が大きいとそれだけVDS-I特性が変化する。そこで、本変形例では、電界吸収型光変調器集積レーザ132が搭載されるサブマウント134とは異なる中継基板152にトランジスタ142を搭載した。これにより、電界吸収型光変調器集積レーザ132からの熱の流れ込みの影響を低減することができる。なお、トランジスタ142は、図5に示す信号源48と光変調器30との間であればどこに配置されていても効果は得られるが、より安定して動作のためには光変調器30にできるだけ近いことが望ましい。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。例えば、上述した実施形態ではEA変調器と半導体レーザが一体的に集積された例にて説明したが、別体であっても本発明の効果は得られる。
【符号の説明】
【0045】
10 光送信サブアセンブリ、12 光受信サブアセンブリ、14 ドライバIC、16 増幅器、18 プリント回路基板、20 フレキシブル基板、22 フィードスルー、24 パッケージ、26 セラミック基板、28 光源、28n n型電極、28p p型電極、30 光変調器、30 特性の光変調器、30n n型電極、30p p型電極、32 電界吸収型光変調器集積レーザ、34 サブマウント、36 グランドパターン、38 光源用電源線、40 駆動線、42 トランジスタ、42a 第1端子、42b 第2端子、42c 第3端子、44 信号線、46 パッド、48 信号源、50 終端抵抗、110 光送信サブアセンブリ、122 フィードスルー、132 電界吸収型光変調器集積レーザ、134 サブマウント、142 トランジスタ、152 中継基板、CS 制御信号、ESIN 電気入力信号、ESOUT 電気出力信号、GND 接地電位、I 電流、Iph 電流、L~L 配線、OSIN 光入力信号、OSOUT 光出力信号、V 第1電圧、V 第2電圧、VDD 駆動電圧、VDS ドレイン・ソース間電圧、VGS ゲート・ソース間電圧、V 光源用電源、W~W ワイヤ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7