(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160673
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20221012BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
H01F27/00 Q
H01F17/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128320
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019103853の分割
【原出願日】2019-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 力也
(72)【発明者】
【氏名】神原 寛幸
(57)【要約】
【課題】マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができるインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品は、素体と、前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極とを備え、前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高く、前記マーク層は、マーク層中結晶を含み、前記マーク層中結晶は、黒色顔料を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、
前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高く、
前記マーク層は、マーク層中結晶を含み、前記マーク層中結晶は、黒色顔料を含む、インダクタ部品。
【請求項2】
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、
前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高く、
前記マーク層は、前記素体の最外層の両側に存在し、当該両側のマーク層は、貫通穴を有する、インダクタ部品。
【請求項3】
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、
前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高く、
前記マーク層は、前記素体の最外層の両側に存在し、当該両側のマーク層は、貫通穴を有し、
前記絶縁層の一部は、前記マーク層の前記貫通穴に入り込んで、前記絶縁層の一部の外表面と前記マーク層の外表面とは、同一面となる、インダクタ部品。
【請求項4】
前記絶縁層は、非晶質である絶縁層中母材と、絶縁層中結晶とを含み、
前記マーク層は、非晶質であるマーク層中母材と、少なくとも1種以上の顔料を含むマーク層中結晶とを含む、請求項1から3の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、前記マーク層中結晶の前記顔料の反射率の最大値は、前記絶縁層中結晶の反射率の最大値よりも大きい、請求項4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、前記マーク層中結晶の前記顔料の前記反射率が最大値となる波長は、前記絶縁層中結晶の前記反射率が最大値となる波長と異なる、請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、前記絶縁層中結晶の反射率は、0.4以下である、請求項5または6に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記絶縁層中結晶は、クオーツである、請求項4から7の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記顔料は、Ti、Co、Al、Zrの少なくとも一つを含む酸化物である、請求項4から8の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記マーク層中母材は、B、Si、O、Kを主成分とする非晶質ガラスである、請求項4から9の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記絶縁層中母材は、B、Si、O、Kを主成分とする非晶質ガラスである、請求項4から10の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記マーク層は、識別マークを構成する貫通穴を有し、
前記絶縁層は、前記貫通穴から露出している、請求項1または2に記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記絶縁層は、前記貫通穴に入り込んでいる、請求項12に記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記マーク層に直交する方向からみて、前記貫通穴の内面と前記コイルとの最短距離は、10μm以上である、請求項3、12および13の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2017-118089号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、素体と、素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、素体に設けられ、コイルに電気的に接続された外部電極とを備える。素体は、焼結体からなり、複数の絶縁層と、複数の絶縁層の積層方向外側のマーク層とを含む。マーク層は、絶縁層とは色が異なる。
【0003】
インダクタ部品は、磁束の干渉により性能が変化するため、インダクタ部品の実装方向を制御することが重要である。この方向整列性は、素体の絶縁層の積層方向外側を絶縁層の色とは異なるマーク層とすることで、インダクタ部品の方向識別を容易とすることで、実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のインダクタ部品では、マーク層は、白色顔料、黒色顔料といった顔料を含むことで、絶縁層と色を異ならせている。
【0006】
しかし、顔料は、一般に、絶縁層よりも高温で安定な結晶性の材料であるため、顔料を添加したマーク層は、顔料を含まない絶縁層と比べて、良好な焼結状態を得るための焼成温度が高温化してしまう。
【0007】
したがって、従来のインダクタ部品のように、顔料を含むマーク層と顔料を含まない絶縁層とを組み合わせて素体を形成すると、マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることが難しいという問題がある。
【0008】
そこで、本開示は、マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、
前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高い。
【0010】
前記態様によれば、マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができる。
【0011】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、
前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高く、
前記マーク層は、マーク層中結晶を含み、前記マーク層中結晶は、黒色顔料を含む。
【0012】
前記実施形態によれば、マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができる。
【0013】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、
前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高く、
前記マーク層は、前記素体の最外層の両側に存在し、当該両側のマーク層は、貫通穴を有する。
【0014】
前記実施形態によれば、マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができる。
【0015】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と
を備え、
前記素体は、複数の絶縁層と、前記素体の外表面の一部を構成するマーク層とを含み、
前記マーク層中のK存在比率(atom%)は、前記絶縁層中のK存在比率(atom%)よりも高く、
前記マーク層は、前記素体の最外層の両側に存在し、当該両側のマーク層は、貫通穴を有し、
前記絶縁層の一部は、前記マーク層の前記貫通穴に入り込んで、前記絶縁層の一部の外表面と前記マーク層の外表面とは、同一面となる。
【0016】
前記実施形態によれば、マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができる。
【0017】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記絶縁層は、非晶質である絶縁層中母材と、絶縁層中結晶とを含み、
前記マーク層は、非晶質であるマーク層中母材と、少なくとも1種以上の顔料を含むマーク層中結晶とを含み、
380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、前記マーク層中結晶の前記顔料の反射率の最大値は、前記絶縁層中結晶の反射率の最大値よりも大きい。
【0018】
前記実施形態によれば、マーク層中結晶と絶縁層中結晶の可視光域に対する反射率の最大値が異なるため、マーク層と絶縁層の間における外観上の識別性が良好に得られる。
【0019】
また、インダクタ部品の一実施形態では、380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、前記マーク層中結晶の前記顔料の前記反射率が最大値となる波長は、前記絶縁層中結晶の前記反射率が最大値となる波長と異なる。
【0020】
前記実施形態によれば、マーク層中結晶と絶縁層中結晶の可視光域に対する反射率が最大値となる波長が異なることで、互いの色が明確に異なるため、マーク層と絶縁層の間において外観上の識別性が良好に得られる。
【0021】
また、インダクタ部品の一実施形態では、380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、前記絶縁層中結晶の反射率は、0.4以下である。
【0022】
前記実施形態によれば、顔料を含むマーク層と絶縁層の間の良好な識別性を得られる。
【0023】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記絶縁層中結晶は、クオーツである。
【0024】
前記実施形態によれば、絶縁層中結晶の屈折率を小さくすることができる。
【0025】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記顔料は、Ti、Co、Al、Zrの少なくとも一つを含む酸化物である。
【0026】
前記実施形態によれば、良好な視認性を有するマーク層を得ることができる。
【0027】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記マーク層中母材は、B、Si、O、Kを主成分とする非晶質ガラスである。
【0028】
前記実施形態によれば、十分な機械強度と絶縁信頼性を有するマーク層を得ることができる。
【0029】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記絶縁層中母材は、B、Si、O、Kを主成分とする非晶質ガラスである。
【0030】
前記実施形態によれば、十分な機械強度と絶縁信頼性を有する絶縁層を得ることができる。
【0031】
また、インダクタ部品の一実施形態では、
前記マーク層は、識別マークを構成する貫通穴を有し、
前記絶縁層は、前記貫通穴から露出している。
【0032】
前記実施形態によれば、識別マークを用いた画像認識が可能となり、機械的な選別除去ができる。
【0033】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記絶縁層は、前記貫通穴に入り込んでいる。
【0034】
前記実施形態によれば、貫通穴に充填された絶縁層を除去する工程が不要となり、工数を削減できる。
【0035】
また、インダクタ部品の一実施形態では、前記マーク層に直交する方向からみて、前記貫通穴の内面と前記コイルとの最短距離は、10μm以上である。
【0036】
前記実施形態によれば、コイルが貫通穴に近づくことを防止でき、安定した識別性を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、マーク層と絶縁層の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のインダクタ部品の第1実施形態を示す透視斜視図である。
【
図5】マーク層中結晶と絶縁層中結晶における波長と反射率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す斜視図である。
図2は、インダクタ部品の分解斜視図である。
図3は、インダクタ部品のYZ断面図である。
図1と
図2と
図3に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10の内部に設けられた螺旋状のコイル20と、素体10に設けられコイル20に電気的に接続された第1外部電極30および第2外部電極40とを有する。
【0041】
インダクタ部品1は、第1、第2外部電極30,40を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ部品1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0042】
素体10は、略直方体状に形成されている。素体10の外表面は、第1側面13と、第1側面13に対向する第2側面14と、第1側面13と第2側面14の間に接続された第1端面15と、第1端面15に対向する第2端面16と、第1端面15と第2端面16の間に接続された底面17と、底面17に対向する天面18とから構成される。なお、図示するように、X方向は、第1端面15と第2端面16に垂直な方向であり、Y方向は、第1側面13と第2側面14に垂直な方向であり、Z方向は、底面17と天面18に垂直な方向である。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。なお、素体10は、例えば、X方向が0.4mm、Y方向が0.2mm、Z方向が0.2mmである。
【0043】
素体10は、複数の絶縁層11と、素体10の外表面の一部を構成するマーク層12とを含む。複数の絶縁層11は、Y方向に積層されている。マーク層12は、素体10の最外層として、絶縁層11の積層方向の両側に積層されている。マーク層12は、
図2ではハッチングで示す。マーク層12は、素体10の外表面の一部である第1側面13および第2側面14を構成する。絶縁層11およびマーク層12は、Y方向の積層方向に直交するXZ平面に広がった層状である。なお、複数の絶縁層11は、焼成などによって、隣り合う2つの絶縁層11の界面が明確となっていない場合がある。
【0044】
絶縁層11は、非晶質である絶縁層中母材と、絶縁層中結晶とを含む。絶縁層中結晶は、絶縁性を有し、好ましくは、クオーツ(結晶石英)である。クオーツの結晶化度は、特に限定されない。これにより、絶縁層中結晶の屈折率を小さくすることができる。絶縁層中母材は、絶縁性を有する固体である。絶縁層中母材は、好ましくは、B、Si、O、Kを主成分とするホウケイ酸ガラスなどの非晶質ガラスである。これにより、十分な機械強度と絶縁信頼性を有する絶縁層を得ることができる。なお、ガラスとしては、ホウケイ酸ガラス以外に、例えば、SiO2、B2O3、K2O、Li2O、CaO、ZnO、Bi2O3、および/またはAl2O3などを含むガラス、例えば、SiO2-B2O3-K2O系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO系ガラス、SiO2-B2O3-Li2O-CaO-ZnO系ガラス、またはBi2O3-B2O3-SiO2-Al2O3系ガラスであってもよい。これらのガラス成分が、2種以上組み合わせたものでもよい。また、絶縁層中母材は、ガラスでなくてもよく、他の無機材料であってもよいし、樹脂などの有機材料であってもよく、この場合も非晶質であることが好ましい。さらに、上記無機材料と有機材料とが組み合わされたものであってもよい。なお、絶縁層11が、絶縁層中結晶を含んでいない構成であってもよい。
【0045】
マーク層12は、絶縁層11と比べて外観上の識別性を有し、インダクタ部品1の良好な方向整列性を実現できる。マーク層12は、非晶質であるマーク層中母材と、マーク層中結晶とを含む。マーク層中母材は、絶縁層中母材と同様であり、好ましくは、B、Si、O、Kを主成分とするホウケイ酸ガラスなどの非晶質ガラスである。これにより、十分な機械強度と絶縁信頼性を有する絶縁層を得ることができる。マーク層中結晶は、少なくとも1種以上の結晶性の顔料を含む。このように顔料を添加することで、マーク層12を着色でき、マーク層12に視認性(識別性)を持たせることができる。顔料は、好ましくは、Ti、Co、Al、Zrの少なくとも一つを含む酸化物であり、例えば、CoAl2O2(コバルトブルー)、TiO2(チタニア)である。これにより、良好な視認性を有するマーク層12を得ることができる。
【0046】
第1外部電極30および第2外部電極40は、例えば、Ag、Cu、Auなどの導電性材料、及び、ガラス粒子から構成される。第1外部電極30は、第1端面15と底面17に渡って設けられたL字形状である。第2外部電極40は、第2端面16と底面17に渡って設けられたL字形状である。第1外部電極30は、互いに面接触して積層された複数層の外部電極導体層33から構成されている。第2外部電極40は、互いに面接触して積層された複数層の外部電極導体層43から構成されている。
【0047】
コイル20は、例えば、第1、第2外部電極30,40と同様の導電性材料及びガラス粒子から構成される。コイル20は、絶縁層11の積層方向に沿って、螺旋状に巻き回されている。コイル20の第1端は、第1外部電極30に接続され、コイル20の第2端は、第2外部電極40に接続されている。なお、本実施形態では、コイル20と第1、第2外部電極30,40とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、コイルと外部電極とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。また、第1外部電極30、第2外部電極40およびコイル20はガラス粒子を含んでいなくてもよい。
【0048】
コイル20は、軸方向からみて、略長円形に形成されているが、この形状に限定されない。コイル20の形状は、例えば、円形、楕円形、長方形、その他の多角形などであってもよい。コイル20の軸方向とは、コイル20が巻き回された螺旋の中心軸に平行な方向を指す。コイル20の軸方向と絶縁層11の積層方向は、同一方向である。本願における「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。
【0049】
コイル20は、平面に沿って巻回されたコイル配線21を含む。複数のコイル配線21は、軸方向に沿って積層されている。コイル配線21は、軸方向に直交する絶縁層11の主面(XZ平面)上に巻回されて形成される。積層方向に隣り合うコイル配線21は、絶縁層11を厚み方向(Y方向)に貫通するビア配線26を介して、電気的に直列に接続される。このように、複数のコイル配線21は、互いに電気的に直列に接続されながら、螺旋を構成している。具体的には、コイル20は、互いに電気的に直列に接続され、巻回数が1周未満の複数のコイル配線21が積層された構成を有し、コイル20はヘリカル形状である。コイル配線21は、1層のコイル導体層から構成される。なお、コイル配線21は、互いに面接触して積層された複数層のコイル導体層から構成されていてもよく、アスペクト比が高く、かつ、矩形度が高いコイル配線21を形成することができる。また、コイル配線21は1周以上のスパイラル形状であってもよい。
【0050】
素体10は、絶縁層11とマーク層12を含み、マーク層12中のK(カリウム)の存在比率(atom%:以下、「K存在比率」とする)は、絶縁層11中のK存在比率(atom%)よりも高い。当然ながら、絶縁層11中のK存在比率は、0であってもよい。
【0051】
ここで、この開示におけるK存在比率の求め方を説明すると、インダクタ部品1の素体10の中心を通り、積層方向に平行なDPA(Destructive Physical Analysis)断面をSEM(Scanning Electron Microscope)-EDX(Energy Dispersive X―ray spectrometry)/WDX(Wavelength Dispersive X―ray spectrometry)により組成分析(定量分析)を行うことで測定可能となる。これにより、少なくとも絶縁層11とマーク層12の比較は明らかに識別できる。
【0052】
したがって、マーク層12中のK存在比率は、絶縁層11中のK存在比率(atom%)よりも高いので、マーク層12と絶縁層11の両方について、良好な焼結状態を同時に得ることができる。
【0053】
この理由を説明すると、ガラス中のK原子は、イオン半径の大きさから、-Si-O-Si-O-のガラス骨子に干渉しストレスを与えることで、ガラス結合を不安定化し、ガラス軟化点を低温化する働きがある。したがって、マーク層12中のK存在比率を絶縁層11中のK存在比率よりも高くすることで、マーク層12への顔料の添加によるガラス軟化点の高温化と相殺され、マーク層12のガラス軟化点が絶縁層11のガラス軟化点に近づく。これにより、インダクタ部品1では、マーク層12と絶縁層11について、良好な焼結状態を同時に得られる焼成温度を設定することができる。したがって、インダクタ部品1では、素体10の強度や絶縁信頼性を高めることができる。
【0054】
K存在比率の高いマーク層12を製造する方法を説明すると、例えば、予めKを多くしたマーク層12を準備してもよく、または、製造時において絶縁層11やマーク層12のKがマーク層12に凝集するように調整するようにしてもよい。
【0055】
図1と
図2と
図3に示すように、マーク層12は、好ましくは、識別マークを構成する貫通穴12aを有している。絶縁層11は、貫通穴12aから露出している。これにより、識別マークを用いた画像認識が可能となり、機械的な選別除去ができる。さらに、外観選別の際に、画像選別装置を用いて識別マークを認識することで、異なる識別マークを持つインダクタ部品1を選別除去でき、多品種生産に有用である。特に、識別マークを設けることで、同じマーク層、絶縁層、チップサイズの商品間でも、方向整列性を維持したまま、識別を行うことができ、他品種混入リスクをより低減することができる。貫通穴12aの形状は、四角形であるが、円形であってもよい。貫通穴12aの形状を四角形または円形とすることで、画像認識により識別し易くなる。
【0056】
図2と
図3に示すように、Y方向の下側のマーク層12の貫通穴12aには、絶縁層11の一部が入り込んでいる。例えば、絶縁層11が貫通穴12aに充填されて、絶縁層11の下面とマーク層12の下面が、同一面となっている。これにより、貫通穴12aに充填された絶縁層11を除去する工程が不要となり、工数を削減できる。
【0057】
この理由を説明すると、積層方向の最下層でマーク層12を形成すると、上層の絶縁層11を形成した際に、マーク層12の貫通穴12aに絶縁層11の一部が充填される。このため、貫通穴12aを空洞とするには、貫通穴12aに充填された絶縁層11を除去する工程が必要となってしまう。しかし、貫通穴12aに絶縁層11を充填することを許容することで、この工数を削減できる。なお、Y方向の上側のマーク層12の貫通穴12aにも、絶縁層11の一部が入り込んでいる。
【0058】
図4は、インダクタ部品の平面図である。なお、本開示において、「平面図」は積層方向(Y方向)からインダクタ部品1を見た図を意味する。
図4に示すように、マーク層12に直交する方向(Y方向)からみて、貫通穴12aの内面とコイル20との最短距離Dは、好ましくは、10μm以上である。したがって、コイル20が貫通穴12aに近づくことを防止でき、安定した識別性を得ることができる。この理由を説明すると、貫通穴12aにコイル20が近付くことを防止できると、貫通穴12aから露出する絶縁層11を介して素体10内のコイル20が透けて見えにくくなる。これにより、製造時の方向整列や外観選別などにおいて、誤判定などのリスクを低減できる。また、最短距離Dが10μm以上である場合、インダクタ部品1の製造時に、絶縁層11やマーク層12に多少の積層ズレが発生しても、貫通穴12aから露出する絶縁層11を介してコイル20が透けて見えることを抑制できるため、不具合検出の精度が向上し、ひいては歩留まりを向上できる。
【0059】
図5は、マーク層中結晶と絶縁層中結晶における波長と反射率の関係を示すグラフである。
図5に示すように、380nm以上780nm以下の波長(つまり、可視光域)の光に対する反射スペクトルにおいて、マーク層12のマーク層中結晶の顔料の反射率の最大値は、好ましくは、絶縁層11の絶縁層中結晶の反射率の最大値よりも大きい。なお、
図5では、横軸に反射スペクトルを測定する波長を示し、縦軸に当該波長の光に対する反射率を示し、マーク層中結晶の顔料の反射率のグラフをL1で示し、絶縁層中結晶の反射率のグラフをL2で示す。
【0060】
ここで、この開示における反射率の求め方を説明すると、インダクタ部品1のDPA断面のXRD(X―Ray Diffraction)等による結晶構造解析と、SEM-EDX/WDXによる組成分析を組み合わせることで、インダクタ部品に含まれる結晶の組成、構造を特定することができる。このようにして、結晶の組成、構造が特定できれば、化学便覧等のデータベースを参照することで光の波長に対する反射スペクトル特性を求めることができ、これにより反射率の最大値を求めることができる。
【0061】
これにより、インダクタ部品1では、マーク層中結晶と絶縁層中結晶の可視光域に対する反射率の最大値が異なるため、マーク層12と絶縁層11の間における外観上の識別性が良好に得られる。これにより、インダクタ部品1では、良好な方向整列性を実現できる。
【0062】
好ましくは、380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、マーク層中結晶の顔料の反射率が最大値となる波長は、絶縁層中結晶の反射率が最大値となる波長と異なる。したがって、マーク層中結晶と絶縁層中結晶の可視光域に対する反射率が最大値となる波長が異なることで、互いの色が明確に異なるため、マーク層12と絶縁層11の間において外観上の識別性が良好に得られる。これにより、インダクタ部品1では良好な方向整列性が実現できる。
【0063】
好ましくは、380nm以上780nm以下の波長の光に対する反射スペクトルにおいて、絶縁層中結晶の反射率は、0.4以下である。これにより、顔料を含むマーク層12と絶縁層11の間の良好な識別性を得られる。また、絶縁層11をフォトリソグラフィ法で形成する場合に、解像性を向上できる。
【0064】
この理由を説明すると、絶縁層中結晶の可視光域での反射率を小さくすることで、少なくとも1種の顔料を含み、反射率が比較的大きいマーク層中結晶との反射率の差をつけやすくなる。さらに、フォトリソグラフィ工法では、水銀ランプのg線(λ=435nm)やh線(λ=405um)を用いて絶縁層11を露光・感光させていることが多く、可視光域中の紫~青色の波長域は絶縁層11の感光に寄与するため、絶縁層中結晶の可視広域での反射率を小さくすることで、絶縁層中結晶によって照射光が散乱されることによる解像性低下を防ぐことができる。
【0065】
(第2実施形態)
図6および
図7Aから
図7Oは、マーク層の複数の形態を示す平面図である。複数の形態のマーク層では、貫通穴の形状、数量、方向、配置が相違し、この相違する構成を以下に説明する。
【0066】
図6に示すように、マーク層12は、前記第1実施形態のマーク層12であり、貫通穴12aは、長方形であり、貫通穴12aの長手方向は、左右方向(X方向)に一致する。
図7Aに示すように、マーク層12Aにおいて、貫通穴12aの長手方向は、上下方向(Z方向)に一致する。
図7Bに示すように、マーク層12Bにおいて、貫通穴12aの長手方向は、右斜め上方向に一致する。
図7Cに示すように、マーク層12Cにおいて、貫通穴12aの長手方向は、上下方向に一致し、貫通穴12aは、マーク層12Cの右寄りに位置する。
【0067】
図7Dに示すように、マーク層12Dにおいて、貫通穴12aの長手方向は、左右方向に一致し、2つの貫通穴12aが、上下方向に配列されている。
図7Eに示すように、マーク層12Eにおいて、貫通穴12aの長手方向は、上下方向に一致し、2つの貫通穴12aが、左右方向に配列されている。
図7Fに示すように、マーク層12Fにおいて、貫通穴12aの長手方向は、右斜め上方向に一致し、2つの貫通穴12aが、左斜め上方向に配列されている。
図7Gに示すように、マーク層12Gにおいて、貫通穴12aの長手方向は、左右方向に一致し、貫通穴12aは、マーク層12Gの下寄りに位置する。
【0068】
図7Hに示すように、マーク層12Hにおいて、貫通穴12bは、円形であり、貫通穴12bは、マーク層12Hの中央に位置する。
図7Iに示すように、マーク層12Iにおいて、貫通穴12bは、マーク層12Iの左寄りに位置する。
図7Jに示すように、マーク層12Jにおいて、貫通穴12bは、マーク層12Jの上寄りに位置する。
図7Kに示すように、マーク層12Kにおいて、2つの貫通穴12bが、上下方向に配列されている。
【0069】
図7Lに示すように、マーク層12Lにおいて、2つの貫通穴12bが、左右方向に配列されている。
図7Mに示すように、マーク層12Mにおいて、2つの貫通穴12bが、右斜め上方向に配列されている。
図7Nに示すように、マーク層12Nにおいて、長方形の貫通穴12aの長手方向は、上下方向に一致し、この貫通穴12aは、マーク層12Nの右側に位置し、円形の貫通穴12bは、マーク層12Nの左側に位置している。
図7Oに示すように、マーク層12Oにおいて、長方形の貫通穴12aの長手方向は、左右方向に一致し、この貫通穴12aは、マーク層12Oの右側に位置し、円形の貫通穴12bは、マーク層12Oの左側に位置している。
【0070】
このように、マーク層の貫通穴の形状、数量、方向、配置を異ならせることにより、識別の種類を多くすることができる。特に、上記のマーク層の貫通穴の形状、数量、方向、配置は例示であって、これ以外の形状、数量、方向、配置であってもよい。例えば、マーク層12,12A~12Oにおける貫通穴12a,12bのいずれか2つ以上を組み合わせても良いし、いずれかの形状、数量、方向、配置を部分的に組み合わせてもよい。また、インダクタ部品1において、X方向、Y方向およびZ方向は、説明の便宜上のものであるので、これらの方向を適宜入れ替えて得られるマーク層の貫通穴の態様を用いてもよい。
【0071】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1と第2実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0072】
前記実施形態では、マーク層は、素体の外表面のうちの第1側面および第2側面を構成しているが、素体の外表面のうちの少なくとも1つの面を構成すればよい。具体的には、積層方向(Y方向)の最上層および最下層のいずれかがマーク層であればよく、反対側は絶縁層であってもよい。
【0073】
前記実施形態では、コイルの軸は、素体の第1側面と第2側面の対向方向に一致するように配置されている(つまり、コイルは横巻である)が、コイルの軸は、素体の底面と天面の対向方向に一致するように配置されていてもよい(つまり、コイルは縦巻である)。
【0074】
前記実施形態では、外部電極は、L字電極であるが、底面電極や5面電極であってもよい。
【0075】
(インダクタ部品の製造方法の実施例)
次に、インダクタ部品の製造方法の実施例を説明する。
【0076】
まず、CoAl2O2や、TiO2などの顔料を含み、硼珪酸ガラスの粉末を主成分とするマーク層ペースト、クオーツなどの結晶をフィラーとして含み、硼珪酸ガラスの粉末を主成分とする絶縁ペースト、Agを主成分とする導電ペーストを用意する。マーク層ペースト、絶縁ペーストは、後述する焼成後にそれぞれマーク層、絶縁層となる。また、このとき、絶縁層は、非晶質の硼珪酸ガラスである絶縁層中母材と、フィラーである絶縁層中結晶とを含み、マーク層は、非晶質の硼珪酸ガラスであるマーク層中母材と、顔料であるマーク層中結晶とを含む。導電ペーストは、後述する焼成後に、塗布する位置によってコイル配線、ビア配線、第1、第2外部電極となる。なお、本実施例では、フォトリソグラフィ法を用いるため、マーク層ペースト、絶縁ペーストおよび導電ペーストは感光性を有する。
【0077】
次に、キャリアフィルム上にマーク層ペーストをスクリーン印刷により必要量塗布し、最下層を形成する。この最下層は、積層方向の下側のマーク層となる部分である。この際、必要に応じて、フォトリソグラフィ方によるパターニング工程により、最下層に貫通穴を形成してもよい。
次に、最下層上に、絶縁ペーストをスクリーン印刷により必要量塗布し、絶縁層となる部分を形成する。
【0078】
次に、塗布された絶縁ペースト上に、スクリーン印刷により導電ペーストを必要量塗布形成し、フォトリソグラフィ法によるパターニング工程により、コイル配線、第1、第2外部電極となる部分を形成する。
【0079】
次に、導体ペーストが塗布、パターニングされた絶縁ペースト上に、スクリーン印刷により絶縁ペーストを必要量塗布する。さらに、フォトリソグラフィ法によるパターニング工程により、絶縁ペーストに開口を設ける。
【0080】
次に、開口が設けられた絶縁ペースト上に、スクリーン印刷により導電ペーストを必要量塗布する。この際、開口に導電ペーストを充填することで、ビア配線、第1、第2外部電極となる部分を形成する。また、上記と同様に、フォトリソグラフィ法によるパターニング工程により、コイル配線及び第1、第2外部電極となる部分を形成する。
【0081】
上記工程を繰り返すことにより、それぞれ、絶縁層、コイル配線、ビア配線及び第1、第2外部電極となる部分がさらに形成される。
【0082】
次に、絶縁ペースト、マーク層ペーストをこの順にスクリーン印刷により必要量塗布することを繰り返して、上層側の絶縁層および最上層を形成する。最上層は、積層方向の上側に位置するマーク層となる部分である。この際、必要に応じて、フォトリソグラフィ方によるパターニング工程により、最上層に貫通穴を形成してもよい。
【0083】
以上の工程を経て、マザー積層体を得る。なお、マザー積層体は、インダクタ部品となる部分が行列状に複数配列するように形成する。次に、ダイシング等によりマザー積層体を複数の未焼成の積層体にカットする。マザー積層体のカット工程では、カットにより形成されるカット面において第1、第2外部電極となる部分を積層体から露出させる。
【0084】
次に、未焼成の積層体を所定条件で焼成し、マーク層、絶縁層、コイル配線、ビア配線、第1、第2外部電極が形成された素体を得る。さらに素体に対してバレル加工を施し、その後、第1、第2外部電極が素体から露出している部分に、バレルめっきにより、2μm~10μmの厚さを有するNiめっき及び2μm~10μmの厚さを有するSnめっきを形成する。以上の工程を経て、インダクタ部品が完成する。
【0085】
なお、マーク層ペースト、絶縁ペーストおよび導体ペーストの形成は、上記のスクリーン印刷およびフォトリソグラフィ法によるパターニングに限定されるものではなく、例えば、開口部を有するスクリーン版による印刷とレーザーによる開口を繰り返し行う印刷積層工法でも良いし、当該印刷と開口を層ごとに行って複数のシートを形成した後、当該シートを圧着するシート積層工法でもよい。また、コイル配線、ビア配線、第1、第2外部電極について、導体ペーストを用いず、スパッタ法や蒸着法、箔の圧着等により形成した導体膜をエッチングによりパターニングして形成する方法であっても良いし、セミアディティブ法のように導体のシード層上にレジストでネガパターンを形成してめっきによりさらに導体をレジストの開口部に形成した後、レジストおよびシード層の不要部を除去する方法であっても良い。さらに、コイル配線となる部分を多段形成することにより高アスペクト化することで、高周波での抵抗による損失を低減することができる。より具体的には、上記フォトリソグラフィ法による導体ペーストの形成・パターニングを繰り返すプロセスであっても良いし、セミアディティブ法で形成した導体膜を繰り返し重ねるプロセスであっても良いし、積み重ねの一部をめっき成長により形成するプロセスであっても良い。
【0086】
また、各材料は上記に例示したもの限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。特に、マーク層、絶縁層に磁性材料のものを用いてもよい。
【0087】
また、絶縁層の形成方法は上記に限定されるものではなく、樹脂材料をスピンコートして形成してもよい、また、絶縁層の開口はドリル加工によって開口してもよい。
【0088】
また、絶縁材料は上記のようなガラスに限定されるものではなく、フェライトなどのセラミックス材料であってもよいし、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリマー樹脂のような有機材料でも良いし、ガラスエポキシ樹脂のような複合材料でも良い。
【0089】
また、インダクタ部品のサイズは0.4mm×0.2mm×0.2mmに限定されるものではなく、例えば0.6mm×0.3mm×0.3mmや0.2mm×0.1mm×0.1mmなどであってもよい。さらに、Y方向とZ方向の長さは等しくなくてもよく、例えば、0.4mm×0.2mm×0.3mmなどであってもよい。また、外部電極の形成方法について、素体内に埋め込んだ第1、第2外部電極をカットにより露出させて、めっき加工を施す方法に限定されるものではなく、素体内には外部電極を埋め込まず、カット後に導体ペーストのディップやスパッタ法等によって外部電極を形成し、その上にめっき加工を施す方法でもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 インダクタ部品
10 素体
11 絶縁層
12,12A-12O マーク層
12a,12b 貫通穴
20 コイル
21 コイル配線
26 ビア配線
30 第1外部電極
40 第2外部電極
D 最短距離