(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016070
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】労働実績に連動した社内融資システム、装置、プログラム、及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20120101AFI20220114BHJP
G06Q 40/00 20120101ALI20220114BHJP
【FI】
G06Q40/02 300
G06Q40/00 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119341
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】517420522
【氏名又は名称】きらぼしテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩司
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB23
5L055BB65
(57)【要約】
【課題】労働の対価についての労働者の多様な支払い形態の要望に応える。
【解決手段】社内融資システムは、利用者端末16と、労働データ処理コンピュータ12と、決済コンピュータ14を備える。労働データ処理コンピュータ12は、利用者端末16から送信されたリクエストデータを入力し、リクエスト金額データで特定される金額と利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に比率データで特定される現金額を所定の金利条件下の社内融資として労働者に対して支払うための振込データを作成して出力し、比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下の社内融資として労働者の利用者端末16にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して決済コンピュータ14に出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
労働者の利用端末と、
前記労働者の利用端末とデータ送受信可能に接続された融資装置と、
前記利用端末及び前記融資装置とデータ送受信可能に接続された決済装置と、
を備える労働実績に連動した社内融資システムであって、
前記労働者の前記利用端末は、
リクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを任意タイミングで前記融資装置に送信するリクエストデータ送信手段
を備え、
前記融資装置は、
前記労働者の前記利用端末から送信された前記リクエストデータを入力する入力手段と、
前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に融資実行された金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して前記決済装置に出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段と、
を備え、
前記決済装置は、
前記融資装置からの前記電子マネー発行依頼データに基づき前記電子マネー額に応じた額の電子マネーを発行して前記労働者の前記利用者端末にチャージ処理する電子マネー処理手段と、
を備える、労働実績に連動した社内融資システム。
【請求項2】
請求項1に記載の労働実績に連動した社内融資システムにおいて、
前記労働者の前記利用端末は、
前記融資装置からの、前記比率データのデフォルト値を入力するデフォルト値入力手段と、
前記比率データの前記デフォルト値を表示する表示手段と、
前記デフォルト値を前記労働者が調整可能な操作手段と、
を備え、
前記融資装置は、
前記労働者の前記利用端末から入力した、前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて記憶する比率データ記憶手段と、
前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整する調整手段と、調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信するデフォルト値送信手段と、
を備える労働実績に連動した社内融資システム。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の労働実績に連動した社内融資システムにおいて、
前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、
前記処理手段は、前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して前記労働者の前記利用端末に出力する、労働実績に連動した社内融資システム。
【請求項4】
労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを入力する入力手段と、
前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段と、
を有する労働実績に連動した社内融資装置。
【請求項5】
請求項4に記載の労働実績に連動した社内融資装置において、
前記労働者の前記利用端末から入力した、前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて記憶する比率データ記憶手段と、
前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整する調整手段と、
調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信する送信手段と、
を有する労働実績に連動した社内融資装置。
【請求項6】
請求項4,5のいずれかに記載の労働実績に連動した社内融資装置において、
前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、
前記処理手段は、前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して出力する、労働実績に連動した社内融資装置。
【請求項7】
コンピュータのプロセッサに、
労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを入力するステップと、
前記労働者の日給データを記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否するステップと、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込むステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムにおいて、さらに、
前記労働者の前記利用端末から入力した、前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて前記記憶手段に記憶するステップと、
前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整するステップと、
調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項9】
請求項7,8のいずれかに記載のプログラムにおいて、さらに、
前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、
前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して出力するステップ
を実行させるプログラム。
【請求項10】
コンピュータのプロセッサに、
融資装置から利用可能額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データのデフォルト値を入力するステップと、
前記利用可能額及び前記比率データのデフォルト値を表示手段に表示するステップと、
操作部からの操作に応じて、リクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを作成するステップと、
前記リクエストデータを前記融資装置に送信するステップと、
決済装置から前記比率データで特定される電子マネー額の電子マネーデータを受信してチャージ処理するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムにおいて、さらに、
前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、
前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記社内融資装置から前記比率データで特定される労働バリュー額の労働バリューデータを受信してチャージ処理するステップ
を実行させるプログラム。
【請求項12】
労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを入力し、
前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、
前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、
前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、
前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否し、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む、
労働実績に連動した社内融資方法。
【請求項13】
請求項12に記載の労働実績に連動した社内融資方法において、さらに、
前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて記憶手段に記憶し、
前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整し、
調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信する、
労働実績に連動した社内融資方法。
【請求項14】
請求項12,13のいずれかに記載の労働実績に連動した社内融資方法において、さらに、
前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、
前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して出力する、
労働実績に連動した社内融資方法。
【請求項15】
労働者の利用端末と、
前記労働者の利用端末とデータ送受信可能に接続された融資装置と、
前記利用端末及び前記融資装置とデータ送受信可能に接続された決済装置と、
を備える労働実績に連動した社内融資システムであって、
前記労働者の前記利用端末は、
リクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを任意タイミングで前記融資装置に送信するリクエストデータ送信手段
を備え、
前記融資装置は、
前記労働者の前記利用端末から送信された前記リクエストデータを入力する入力手段と、
前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に融資実行された金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで選択された現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで選択された電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して前記決済装置に出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段と、
を備え、
前記決済装置は、
前記融資装置からの前記電子マネー発行依頼データに基づき前記電子マネー額に応じた額の電子マネーを発行して前記労働者の前記利用者端末にチャージ処理する電子マネー処理手段と、
を備える、労働実績に連動した社内融資システム。
【請求項16】
労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを入力する入力手段と、
前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで選択された現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで選択された電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段と、
を有する労働実績に連動した社内融資装置。
【請求項17】
コンピュータのプロセッサに、
労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを入力するステップと、
前記労働者の日給データを記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否するステップと、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込むステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項18】
労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを入力し、
前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、
前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、
前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、
前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで選択された現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで選択された電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否し、
前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む、
労働実績に連動した社内融資方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、労働者に対して社内融資するためのシステム、装置、プログラム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
労働の対価としての給与は、企業等により所定の支払日に支払われることが多い。このような場合、所定の締め日における所定期間内の労働の対価の累計から、各種控除を減算した額が所定の支払日に支払われる。
【0003】
しかしながら、かかる方法では、所定の期間内の労働に対して支払われるため、労働を提供した時点から労働の対価を受け取るまでの期間にタイムラグが生じる。
【0004】
特許文献1,2,3では、任意のタイミングで労働者に対して給与を前払いできる技術が提案されている。また、特許文献4では、電子決済サービスの普及に伴い、前払いされた給与を一部電子マネー等で受け取れる技術が提案されている。さらに、引用文献5では、出金希望金額と残給与を比較する金額比較手段を有し、金額比較手段によって出金希望金額が残給与よりも大きいと判定された場合に、出金を希望する労働者の与信を判定し、与信判定により求められた借入枠の範囲内で、出金希望金額と残給与との差額を、残給与に付加して出金額として決定する出金額決定手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3685788号
【特許文献2】特許第3857279号
【特許文献3】特許第4395413号
【特許文献4】特開2019-185540
【特許文献5】特開2009-075925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1~4に記載の技術では、引出可能な金額は、労働者の既勤務日数等に応じて支払われるべき給与の範囲に限られる。引用文献5に記載の技術においては、労働者の勤務実態に対して一定の与信が付与されるが、電子決済等のフレキシブルな支払い方法とタイミングに対応していない。また、近年働き方が多様化しており、決済方法や労働の対価の支給のタイミングについての要求も多様になってきている。また、福利厚生の一部として社内融資制度を柔軟に活用することにより企業価値を高めることについても一定の需要が生じてきている。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、労働者の利用端末と、前記労働者の利用端末とデータ送受信可能に接続された融資装置と、前記利用端末及び前記融資装置とデータ送受信可能に接続された決済装置とを備える労働実績に連動した社内融資システムであって、前記労働者の前記利用端末は、リクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを任意タイミングで前記融資装置に送信するリクエストデータ送信手段を備え、前記融資装置は、前記労働者の前記利用端末から送信された前記リクエストデータを入力する入力手段と、前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に融資実行された金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して前記決済装置に出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段とを備え、前記決済装置は、前記融資装置からの前記電子マネー発行依頼データに基づき前記電子マネー額に応じた額の電子マネーを発行して前記労働者の前記利用者端末にチャージ処理する電子マネー処理手段とを備える労働実績に連動した社内融資システムである。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記労働者の前記利用端末は、前記融資装置からの、前記比率データのデフォルト値を入力するデフォルト値入力手段と、前記比率データの前記デフォルト値を表示する表示手段と、前記デフォルト値を前記労働者が調整可能な操作手段とを備え、前記融資装置は、前記労働者の前記利用端末から入力した、前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて記憶する比率データ記憶手段と、前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整する調整手段と、調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信するデフォルト値送信手段とを備える。
【0010】
本発明の他の実施形態では、前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、前記処理手段は、前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して前記労働者の前記利用端末に出力する。
【0011】
また、本発明は、労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを入力する入力手段と、前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に融資実行された金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段とを有する労働実績に連動した社内融資装置である。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、前記労働者の前記利用端末から入力した、前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて記憶する比率データ記憶手段と、前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整する調整手段と、調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信する送信手段とを有する。
【0013】
本発明の他の実施形態では、前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、前記処理手段は、前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して出力する。
【0014】
また、本発明は、コンピュータのプロセッサに、労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを入力するステップと、前記労働者の日給データを記憶手段に記憶するステップと、前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に融資実行された金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否するステップと、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込むステップとを実行させるプログラムである。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記労働者の前記利用端末から入力した、前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて前記記憶手段に記憶するステップと、前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整するステップと、調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信するステップとを実行させる。
【0016】
本発明の他の実施形態では、さらに、前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して出力するステップを実行させる。
【0017】
また、本発明は、コンピュータのプロセッサに、融資装置から利用可能額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データのデフォルト値を入力するステップと、前記利用可能額及び前記比率データのデフォルト値を表示手段に表示するステップと、操作部からの操作に応じて、リクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを作成するステップと、前記リクエストデータを前記融資装置に送信するステップと、決済装置から前記比率データで特定される電子マネー額の電子マネーデータを受信してチャージ処理するステップとを実行させる。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記融資装置から前記比率データで特定される労働バリュー額の労働バリューデータを受信してチャージ処理するステップを実行させる。
【0019】
また、本発明は、労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の比率データを含むリクエストデータを入力し、前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に融資実行された金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記比率データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、かつ、前記比率データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否し、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む労働実績に連動した社内融資方法である。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記比率データの履歴を前記労働者に関連付けて記憶手段に記憶し、前記比率データの履歴を用いて前記労働者の比率のデフォルト値を調整し、調整後の比率のデフォルト値を前記労働者の前記利用者端末に送信する。
【0021】
本発明の他の実施形態では、さらに、前記電子マネー額には労働バリュー額が含まれ、前記比率データで特定される前記労働バリュー額が0でない場合に、前記比率データで特定される労働バリュー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための労働バリューデータを作成して出力する。
【0022】
また、本発明は、労働者の利用端末と、前記労働者の利用端末とデータ送受信可能に接続された融資装置と、前記利用端末及び前記融資装置とデータ送受信可能に接続された決済装置とを備える労働実績に連動した社内融資システムであって、前記労働者の前記利用端末は、リクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを任意タイミングで前記融資装置に送信するリクエストデータ送信手段を備え、前記融資装置は、前記労働者の前記利用端末から送信された前記リクエストデータを入力する入力手段と、前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に融資実行された金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで選択された現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで選択された電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して前記決済装置に出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段とを備え、前記決済装置は、前記融資装置からの前記電子マネー発行依頼データに基づき前記電子マネー額に応じた額の電子マネーを発行して前記労働者の前記利用者端末にチャージ処理する電子マネー処理手段とを備える、労働実績に連動した社内融資システムである。
【0023】
また、本発明は、労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを入力する入力手段と、前記労働者の日給データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで選択された現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで選択された電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否する処理手段と、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む手段とを有する労働実績に連動した社内融資装置である。
【0024】
また、本発明は、コンピュータのプロセッサに、労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを入力するステップと、前記労働者の日給データを記憶手段に記憶するステップと、前記記憶手段に記憶された前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで特定される現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで特定される電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否するステップと、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込むステップとを実行させるプログラムである。
【0025】
また、本発明は、労働者の利用端末からリクエスト金額データ、及び現金額と電子マネー額の選択データを含むリクエストデータを入力し、前記労働者の日給データの所定開始日から前記リクエストデータを入力した日までの期間における累計データを算出し、前記累計データから前記労働者に既に前払いされた金額データの前記期間における累計データを減算して得られた金額データに基づいて利用可能額データを算出し、前記リクエスト金額データで特定される金額と前記利用可能額データで特定される金額とを大小比較し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超えない場合に前記選択データで選択された現金額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資するための振込データを作成して出力し、前記選択データで選択された電子マネー額を所定の金利条件下で前記労働者に対して融資すべく前記労働者の前記利用端末にチャージするための電子マネー発行依頼データを作成して出力し、前記リクエスト金額データで特定される金額が前記利用可能額データで特定される金額を超える場合に前記振込データの作成を拒否し、前記振込データに基づいて前記労働者の口座に前記現金額を振り込む、労働実績に連動した社内融資方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、労働者は、多様な形態で自己の労働実績に応じて社内融資を受けることができる。特に、本発明によれば、労働者は、自己の労働実績に応じて社内融資として現金と電子マネーを任意の比率で受けることができる。すなわち、現金として受け取ることもできるし、あるいは電子マネーとして受け取ることもできる。さらに、本発明によれば、労働者に対してその労働実績内での社内融資、より詳しくは低金利、あるいは金利0%の社内融資として資金を提供することができるので、円滑な処理が可能である。なお、融資における金利は社会の経済状況により一変するものでもあり、使用者と労働者との間で法的に整理がなされている限り、前記金利は0%~100%の間の任意の利率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】実施形態における企業側コンピュータの機能ブロック図である。
【
図3】実施形態における労働データ処理コンピュータの機能ブロック図である。
【
図4】実施形態における決済コンピュータの機能ブロック図である。
【
図5】実施形態における利用者端末の機能ブロック図である。
【
図6】実施形態における販売者端末の機能ブロック図である。
【
図7】実施形態における労働データ処理コンピュータの構成ブロック図である。
【
図8】実施形態における時給単価テーブルの一例を示す説明図である。
【
図9】実施形態におけるユーザテーブルの一例を示す説明図である。
【
図10】実施形態におけるリクエストテーブルの一例を示す説明図である。
【
図11】実施形態における労働者毎のリクエスト金額比率の経時変化を示すグラフ図である。
【
図12】実施形態における労働者毎のリクエスト金額比率のデフォルト値を示すグラフ図である。
【
図13】実施形態におけるユーザデータテーブルの一例を示す説明図である。
【
図14】実施形態におけるトランザクションテーブルの一例を示す説明図である。
【
図15】実施形態におけるデータの流れを示す説明図(その1)である。
【
図16】実施形態におけるデータの流れを示す説明図(その2)である。
【
図17】実施形態における労働データ処理コンピュータの処理フローチャートである。
【
図18】実施形態における利用者端末の構成ブロック図である。
【
図19】実施形態における利用者端末の処理フローチャートである。
【
図20】実施形態における利用者端末の画面説明図(その1)である。
【
図21】実施形態における利用者端末の画面説明図(その2)である。
【
図22】実施形態における利用者端末の画面説明図(その3)である。
【
図23】実施形態における利用者端末の画面説明図(その4)である。
【
図24】実施形態における利用者端末の画面説明図(その5)である。
【
図25】実施形態における利用者端末の画面説明図(その6)である。
【
図26】実施形態における利用者端末の画面説明図(その7)である。
【
図27】実施形態における利用者端末の画面説明図(その8)である。
【
図28】実施形態における利用者端末の画面説明図(その9)である。
【
図29】実施形態における利用者端末の画面説明図(その10)である。
【
図30】実施形態における利用者端末の画面説明図(その11)である。
【
図31】実施形態における利用者端末の画面説明図(その12)である。
【
図32】実施形態における利用者端末の画面説明図(その13)である。
【
図33】実施形態におけるデータの流れを示す説明図(その3)である。
【
図34】他の実施形態のおける利用者端末の画面説明図(その1)である。
【
図35】他の実施形態における利用者端末の画面説明図(その2)である。
【
図36】他の実施形態における利用者端末の画面説明図(その3)である。
【
図37】他の実施形態における利用者端末の画面説明図(その4)である。
【
図38】他の実施形態における利用者端末の画面説明図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0029】
図1は、実施形態における労働実績に連動した社内融資システムの全体構成図を示す。社内融資システムは、労働者の雇用者である企業に備えられる企業側コンピュータ10と、銀行あるいはその関連会社等に備えられる労働データ処理コンピュータ12と、電子マネー事業者(電子マネー発行会社)等に備えられる決済コンピュータ14と、労働者が操作する利用者端末16と、商品やサービスを提供する販売者が操作する販売者端末18を備え、これらはデータ送受信可能に通信ネットワーク20に接続される。
【0030】
企業側コンピュータ10は、労働者の就業状況を管理するコンピュータであり、公知の勤怠管理アプリケーションがインストールされていてもよい。企業側コンピュータ10は、通信ネットワーク20を介して労働者の就業状況を労働データとして労働データ処理コンピュータ12に所定タイミングで送信する。
図1では、企業側コンピュータ10は1個のみ示されているが、複数の企業の企業側コンピュータ10が通信ネットワーク20に接続されていてもよい。
【0031】
労働データ処理コンピュータ12は、社内融資装置として機能し、1又は複数のサーバコンピュータが使用され得る。労働データ処理コンピュータ12は、労働者の労働データを蓄積して管理するとともに、労働者の使用する利用者端末16からの社内融資のリクエストを通信ネットワーク20を介して受信して、労働者の銀行口座への振込処理を実行する。すなわち、労働データ処理コンピュータ12は、銀行内や銀行間において使用される決済システムとして機能する。労働データ処理コンピュータ12は、労働データを管理するコンピュータと、銀行決済コンピュータとに物理的に分離していてもよい。また、労働データ処理コンピュータ12は、利用者端末16からの社内融資のリクエストに応じ、労働者の労働対価の一部又は全部を電子マネーに変換するための電子マネー発行要求を決済コンピュータ14に送信する。
【0032】
決済コンピュータ14は、決済装置として機能し、電子決済を行うコンピュータであり、1又は複数のサーバコンピュータが使用され得る。決済コンピュータ14は、労働データ処理コンピュータ12からの電子マネー発行要求に応じて電子マネーを発行し、労働データ処理コンピュータ12にその旨を通知するとともに、利用者端末16に電子マネーデータを供給して電子マネーをチャージする。また、決済コンピュータ14は、労働者が利用者端末16を用いて電子マネーにより商品やサービスを購入すると、販売者端末18からの決済要求に応じて電子マネーによる決済を実行する。
【0033】
利用者端末16は、労働者が利用する利用端末であり、スマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)等である。利用者端末16には、労働データ処理コンピュータ12に対して社内融資のリクエストおよび社内融資の条件を決定および表示するためのアプリケーションプログラム(社内融資アプリケーション)がインストールされる。社内融資アプリケーションプログラムは、例えば労働データ処理コンピュータ12が管理するホームページ(HP)からダウンロードし得る。本実施形態において、社内融資の条件とは、労働者の利用可能額データに影響を与えるものである。例えば、勤務状況が優良な労働者においては、利用可能額データに1.0を超える係数をかけた金額を利用可能データとして、労働者からのリクエスト金額データで特定される金額と大小比較を行うことができる。また、勤務状況があまり評価されない労働者あるいは就労間もない労働者は1.0未満の利率とすることもできる。このような利率は、前記社内融資アプリケーションにおいて、前記労働者の属性、労働データ処理コンピュータにおける労働者データ等から決定することができる。
【0034】
販売者端末18は、商品やサービスの販売者が使用する端末であり、タブレット端末やPC、あるいはPOSシステムであってもよい。販売者端末18には、決済コンピュータ14で電子マネーを用いて決済するための決済アプリケーションプログラムがインストールされる。決済アプリケーションプログラムが、決済コンピュータ14からダウンロードし得る。
【0035】
通信ネットワーク20は、1又は複数のネットワークから構成される。通信ネットワーク20は専用回線、公衆回線を問わず、有線、無線を問わない。通信ネットワーク20の一部又は全部は電話回線でもよく、インターネット、あるいはVPNでもよい。
【0036】
図2は、企業側コンピュータ10の機能ブロック図を示す。企業側コンピュータ10は、機能ブロックとして、労働データ入出力部100及び労働データ記憶部101を備える。
【0037】
労働データ入出力部100は、労働者の労働データ、すなわち労働者の基本的情報及び就業状況を入力し、所定タイミングで労働データ処理コンピュータ12に出力する。労働者の基本的情報には、労働者を特定するための各種情報、例えば労働者の氏名、住所、年齢、取引銀行名、支店名、口座番号、及び労働者の給与を計算するための時給単価等が含まれる。労働者は、パートタイム、アルバイト、契約社員、非正規社員の他、いわゆる正規社員であってもよい。
【0038】
労働データ記憶部101は、労働者の労働データを順次記憶する。労働データは、時間単位であってもよく、日単位であってもよい。
【0039】
図3は、労働データ処理コンピュータ12の機能ブロック図を示す。労働データ処理コンピュータ12は、機能ブロックとして、労働データ入力部120、給与計算部121、リクエスト処理部122、承認部123、振込テーブル作成部124、時給単価テーブル記憶部125、ユーザテーブル記憶部126、リクエストテーブル記憶部127、比率テーブル記憶部128、及び電子マネー変換指示部129を備える。
【0040】
労働データ入力部120は、企業側コンピュータ10からの労働データを入力する。
【0041】
給与計算部121は、入力した労働データを用いて労働者毎の所定開始日からの累計給与額を算出する。また、給与計算部121は、労働者に既に所定の金利条件下で融資実行した額の累計も計算し、累計給与額から融資実行累計額を控除した累計給与残高を算出する。
【0042】
リクエスト処理部122は、利用者端末16からのリクエストデータを入力して処理する。リクエスト処理部122は、労働者毎の過去の比率の履歴に応じて労働者毎に比率のデフォルト値を算出し、利用者端末16に送信する。ここで、比率は、労働者が社内融資を受ける際の、現金と電子マネーの比率を意味する。
【0043】
承認部123は、利用者端末16からの社内融資のリクエストを承認する。具体的には、リクエスト時点における累計給与残高に前記労働者毎の一定の係数を乗じた額を利用可能額とし、この利用可能額とリクエスト金額とを大小比較し、リクエスト金額が利用可能額の範囲内であればリクエストを承認する。他方で、リクエスト金額が利用可能額を超える場合にはリクエストを拒否する。リクエスト処理部122は、承認部123で拒否された場合、その旨を利用者端末16に送信する。
【0044】
振込テーブル作成部124は、承認部123で承認された場合に、リクエスト金額のうち現金の比率で特定される現金額を所定の金利条件下で社内融資すべく労働者の口座に振り込むための振込テーブルを作成する。本実施形態における所定の金利とは振込テーブル作成部124において、あらかじめ決められていてもよいし、適宜銀行または関連会社がこれを設定してもよい。当該設定においては、事前に雇用者を通じて労働者の合意を得ておくものとする。本実施形態における所定の金利条件下とは、労働者の福利厚生の範囲で不当に高い金利となるものではなく、労働者の利用状況および融資額を鑑みて0%とすることもできる。通常、0.1%~0%の間で適宜設定することができる。
【0045】
時給単価テーブル記憶部125は、労働者毎の時給単価テーブルを記憶する。この時給単価テーブルには、労働者を特定するための各種情報、例えば労働者の氏名、住所、年齢、取引銀行名、支店名、口座番号等も含まれる。これらのデータは、企業側コンピュータ10から入力する。
【0046】
ユーザテーブル記憶部126は、労働者毎の労働データテーブルを記憶する。このユーザテーブルには、労働者毎の就業日や就業時間が含まれる。給与計算部121は、時給単価テーブルで管理される労働者毎の時給単価と、ユーザテーブルで管理される労働者毎の就業日、就業時間を用いて労働者毎の日給、及び所定開始日からの累計給与を算出する。給与計算部121で算出される、労働者毎の日給、及び累計給与は、このユーザテーブルに記録され管理される。
【0047】
リクエストテーブル記憶部127は、利用者端末16から入力したリクエストデータに関するリクエストテーブルを記憶する。リクエストテーブルには、リクエストした労働者を特定する情報、リクエスト日、リクエストを特定する識別子(ID)、リクエスト金額、比率等が含まれる。これらのデータは、承認部123で承認された場合に記録され管理される。給与計算部121は、ユーザテーブル及びリクエストテーブルを参照することで、累計給与額から既に融資実行した額(リクエスト金額)を控除した累計給与残高を算出し、このリクエストテーブルに記録する。承認部123は、リクエストを承認する際に、リクエストテーブルで管理される累計給与残高を参照して承認/拒否を決定する。
【0048】
比率テーブル記憶部128は、比率テーブルを記憶する。比率テーブルには、リクエストテーブルに含まれる比率、すなわち現金と電子マネーの比率が含まれる。比率テーブルにより、労働者毎の過去の比率の履歴が管理される。リクエスト処理部122は、比率テーブルで管理される比率の履歴に基づいて、労働者毎に比率の傾向を分析し、この分析結果に応じて労働者毎に比率のデフォルト値を調整する。調整後の比率のデフォルト値は、比率テーブルに記録され管理される。例えば、ある労働者について、
当初の比率のデフォルト値:50%
調整後の比率のデフォルト値:70%
等である。
【0049】
電子マネー変換指示部129は、承認部123で承認された場合に、リクエスト金額のうち電子マネーの比率で特定される電子マネー額の発行を決済コンピュータ14に依頼する。電子マネー発行依頼データには、労働者を特定する情報、電子マネーに変換されるべき額、及び電子マネーを送信すべき端末の情報(本実施形態では利用者端末16)が含まれる。
【0050】
承認部123で承認された場合の処理をまとめると以下のようになる。
【0051】
承認部123で承認された場合、承認部123は、リクエストテーブル記憶部127に記憶されているリクエストテーブルに新たに承認されたリクエストデータのリクエスト金額及び比率を記録して更新する。また、比率テーブル記憶部128に記憶されている比率テーブルに新たに承認されたリクエストデータの比率を記録して更新する。また、承認部123は、承認されたリクエストデータの比率に応じて、振込テーブル作成部124に振込テーブルの作成を指示するとともに、電子マネー変換指示部129に電子マネーの発行依頼を指示する。具体的には、承認部123は、現金の比率が100%の場合には、振込テーブル作成部124に振込テーブルの作成を指示し、電子マネー変換指示部129には電子マネーの発行依頼を指示しない。現金の比率が0%で電子マネーの比率が100%の場合には、振込テーブル作成部124には振込テーブルの作成を指示せず、電子マネー変換指示部129に電子マネーの発行依頼を指示する。現金の比率が0%と100%の間である場合、振込テーブル作成部124に振込テーブルの作成を指示するとともに、電子マネー変換指示部129に電子マネーの発行依頼を指示する。
【0052】
なお、承認部123での承認の結果に応じて、リクエスト処理部122が比率に応じて振込テーブル作成部124及び電子マネー変換指示部129に指示してもよい。
【0053】
図4は、決済コンピュータ14の機能ブロック図を示す。決済コンピュータ14は、機能ブロックとして、決済処理部141、ユーザデータ記憶部142、及びトランザクション記憶部143を備える。
【0054】
決済処理部141は、労働データ処理コンピュータ12からの依頼に応じて、電子マネーを発行し、発行した電子マネーデータを指定された端末、本実施形態では利用者端末16に送信する。また、決済処理部141は、販売者端末18からの決済要求に応じて電子マネーを用いた決済処理を実行する。
【0055】
ユーザデータ記憶部142は、ユーザデータを記憶する。ユーザデータには、労働者毎の電子マネー額、取引ID、取引日等が含まれる。決済処理部141は、労働データ処理コンピュータ12からの依頼に応じて電子マネーを発行した場合に、当該労働者の電子マネー額を更新してユーザデータ記憶部142に記憶する。
【0056】
トランザクション記憶部143は、取引データを記憶する。取引データには、販売者端末18からの決済要求に応じて決済処理するときの、取引ID、取引日、決済金額等が含まれる。
【0057】
図5は、利用者端末16の機能ブロック図を示す。利用者端末16は、機能ブロックとして、社内融資アプリケーション部161、操作部162、表示部163、及び記憶部164を備える。
【0058】
社内融資アプリケーション部161は、インストールされた社内融資アプリケーションプログラムの実行により実現される機能ブロックであり、大別して、処理モジュールと、電子マネー管理モジュールと、労働バリュー管理モジュールを備える。処理モジュールは、社内融資処理を全体的に管理するモジュールであり、表示部163に操作画面(UI画面)を表示し、利用者である労働者からのリクエストを受け付けて通信ネットワーク20を介してリクエストデータを労働データ処理コンピュータ12に送信する。また、労働データ処理コンピュータ12からのデータを受信して表示部163に表示する。
【0059】
電子マネー管理モジュールは、電子マネーの入出金を管理する。
【0060】
労働バリュー管理モジュールは、労働バリューの入出力を管理する。ここで、「労働バリュー」とは、労働者が就業により得た労働対価であり、金銭と同等の価値を有する電子データである。労働バリューの単位は任意であり、円でもよく、あるいは「**コイン」であってもよい。「**コイン」とする場合、円との交換レートは適宜設定され得る。
【0061】
労働バリューは、電子マネーの一種と考えることができる。但し、本実施形態において、電子マネーは、電子マネー事業者が管理運営する決済コンピュータ14に対して発行依頼することで得られるものであるのに対し、労働バリューは、このような処理を要しない点で相違する。すなわち、労働データ処理コンピュータ12で労働により順次蓄積される給与データそのものが労働バリューとして機能するといえる。
【0062】
処理モジュールは、必要に応じて電子マネー管理モジュールあるいは労働バリュー管理モジュールを起動するためのAPIを発行して電子マネー管理モジュールあるいは労働バリュー管理モジュールを起動し、電子マネーの管理処理、あるいは労働バリューの管理処理を制御する。電子マネー管理モジュール及び労働バリュー管理モジュールは、処理モジュールとは別に設けられていてもよく、処理モジュール内に一体的に組み込まれていてもよい。
【0063】
操作部162は、タッチパネルやキーボード、マウス等で構成され、利用者である労働者が操作して入力する。
【0064】
表示部163は、液晶パネルや有機ELパネル等で構成され、各種画面を表示する。
【0065】
記憶部164は、利用者情報を記憶する。
【0066】
図6は、販売者端末18の機能ブロック図を示す。販売者端末18は、機能ブロックとして、決済アプリケーション部181及び店ID記憶部182を備える。
【0067】
決済アプリケーション部181は、インストールされた決済アプリケーションプログラムの実行により実現される機能ブロックであり、労働者が利用者端末16にチャージされた電子マネーを用いて商品やサービスを購入する際に、決済要求を決済コンピュータ14に送信する。決済要求には、労働者、すなわち利用者端末16を特定するためのID、販売者、すなわち販売者端末18を特定するためのID、決済金額が含まれる。
【0068】
店ID記憶部182は、販売者端末18を特定するためのIDとして店IDを記憶する。
【0069】
図7は、労働データ処理コンピュータ12の構成ブロック図を示す。労働データ処理コンピュータ12は、CPU12a、ROM12b、RAM12c、入出力インターフェイス(I/F)12d、記憶装置12e、通信I/F12f、入力装置12g、及び表示装置12hを備え、これらはバスで接続される。
【0070】
1又は複数のCPU12aは、ROM12bあるいは記憶装置12eに記憶された処理プログラムを読み出し、RAM12cをワーキングメモリとして用いて各種処理を実行する。各種処理には、労働データの入力、蓄積、労働者毎の給与計算、リクエストデータの受信及びリクエストデータの処理、振込テーブルの作成処理、銀行口座への振込処理、電子マネーの発行依頼処理、労働バリュー処理、比率管理処理が含まれる。CPU12aは、
図3における給与計算部121、リクエスト処理部122、承認部123、振込テーブル作成部124、及び電子マネー変換指示部129を構成する。本実施形態の特徴の一つは、利用者である労働者が、自己の労働実績の範囲内において社内融資を要求する際に、現金と電子マネーの比率を任意に設定し得る点にある。より特定的には、労働実績の範囲内において社内融資の形態で電子マネーを直接得ることができる点である。この点については、さらに後述する。
【0071】
入出力I/F12dは、入力装置12gや表示装置12hと接続され、データを入出力する。
【0072】
記憶装置12eは、HDDやSSD等で構成され、各種データを記憶する。記憶装置12eは、
図3における時給単価テーブル記憶部125、ユーザテーブル記憶部126、リクエストテーブル記憶部127、及び比率テーブル記憶部128を構成する。時給単価テーブル及びユーザテーブルは、単一のテーブルとして一括管理してもよい。
【0073】
通信I/F12fは、通信ネットワーク20を介して企業側コンピュータ10、決済コンピュータ14、利用者端末16とデータを送受信する。通信I/F12fは、
図3における労働データ入力部120を構成する。
【0074】
図8は、時給単価テーブル記憶部125に記憶される時給単価テーブルの一例を示す。時給単価テーブルにおいては、企業コードに対応付けて従業員コードが記憶され、さらに従業員コードに対応する名前が記憶される。さらに、銀行番号、銀行名、支店番号、支店名、口座番号、口座名、就業開始日、時給単価、最終更新日、預金種別、及びメールアドレスが記憶される。時給単価は労働時間から給与を計算する際に必要なデータであり、銀行名や銀行口座等は振込テーブルを作成して給与を振り込む際に必要なデータである。
【0075】
図9は、ユーザテーブル記憶部126に記憶されるユーザテーブルの一例を示す。企業コード毎、かつ従業員コード毎、かつ就業日毎の労働者の労働データが記憶される。すなわち、企業コード及び従業員コード及び就業日に対応付けて、該従業員コードにより特定される従業員の就業時間が記憶される。また、時給単価と就業時間を乗算して得られる給与額、及び給与額を累計した給与総額が記憶される。
【0076】
図10は、リクエストテーブル記憶部127に記憶されるリクエストテーブルの一例を示す。企業コード毎、かつ従業員コード毎、かつリクエスト毎のリクエストデータが記憶される。すなわち、企業コード及び従業員コードに対応付けて、リクエスト日、リクエストID、リクエスト金額、内訳:比率、及び給与残高が記憶される。リクエスト日は、利用者端末16からリクエストを受信した日である。リクエストIDは、利用者端末16から送信されるリクエストデータに一意に付与されるIDである。リクエスト金額は、利用者端末16を操作して労働者が所望する社内融資金額である。内訳:比率は、労働者が所望する社内融資の内訳とその割合である。本実施形態では、社内融資形態として、
・現金
・電子マネー
のいずれかによる社内融資を任意に選択し得る。労働バリューは電子マネーの一種であるが、これを電子マネーと区別して別の支払い形態とみなすと、
・現金
・電子マネー
・労働バリュー
のいずれかによる社内融資を任意に選択し得るといえる。また、仮想通貨による支払いを許容して、
・現金
・電子マネー
・労働バリュー
・仮想通貨
のいずれかによる社内融資を任意に選択し得るように構成してもよい。また、労働者が閲覧するリクエストテーブルには金利条件が視認可能となっている。
【0077】
比率は、現金100%、電子マネー100%、現金50%と電子マネー50%等である。ある労働者は、常に現金100%での前払を希望し、別の労働者は常に電子マネー100%での社内融資を希望し、さらに別の希望者はあるタイミングでは現金100%を希望し、別のタイミングで現金50%、電子マネー50%の社内融資を希望し得る。比率テーブル記憶部128は、労働者毎の比率を記憶し、労働者毎の比率の傾向を分析するための基礎データを提供する。
【0078】
図11は、比率テーブル記憶部128に記憶される労働者毎の比率変化の一例を示す。従業員コード「001」の労働者は、常に現金100%のリクエストを行い、従業員コード「002」の労働者は、時々現金50%、電子マネー50%のリクエストを行い、従業員コード「003」の労働者は、常に現金30%、電子マネー70%のリクエストを行い、従業員コード「004」の労働者は、当初は現金100%であったが徐々に電子マネーの比率が増大していくようなリクエストを行う。
【0079】
リクエスト処理部122は、このような労働者毎の比率の傾向を比率テーブル記憶部128に記憶されている比率テーブルを参照することで解析し、比率の傾向に基づいて労働者に提供する比率のデフォルト値を動的に変化させて調整し、労働者のリクエスト入力時の利便性を向上させる。
【0080】
図12は、労働者毎の比率のデフォルト値の調整例を示す。デフォルトの比率は、労働者が利用者端末16を用いて社内融資を労働データ処理コンピュータ12に対してリクエストする際に、予めシステム側で設定している比率である。従業員コード「001」の労働者は、
図11に示すように常に現金100%をリクエストしているから、これに応じてデフォルトの比率も現金100%とする。従業員コード「002」の労働者は、時々現金50%、電子マネー50%をリクエストしているから、これに応じてデフォルトの比率を現金70%、電子マネー30%とする。従業員「003」の労働者は、常に現金30%、電子マネー70%をリクエストしているから、これに応じてデフォルトの比率を現金30%、電子マネー70%とする。従業員「004」の労働者は、順次電子マネーの比率を増大させてリクエストしているから、これに応じてデフォルトの比率も現金の比率を減少させつつ電子マネーの比率を増大させる。調整後の比率のデフォルト値は、既述したように比率テーブルに記録され管理される。
【0081】
なお、比率テーブルが存在しない労働者、つまり最初に社内融資システムを利用して社内融資を受ける労働者に対しては、例えばデフォルトの比率を現金100%に設定し得る。
【0082】
図13は、決済コンピュータ14のユーザデータ記憶部142に記憶されるユーザテーブルの一例を示す。
【0083】
ユーザデータとして、ユーザID毎に、取引ID、取引日、決済金額、店ID、及び電子マネー残高が記録され管理される。電子マネー残高は、労働データ処理コンピュータ12からの電子マネー発行依頼に応じて新たに電子マネーが発行されるとその分だけ増額更新される。
【0084】
図14は、決済コンピュータ14のトランザクション記憶部143に記憶されるトランザクションテーブルの一例を示す。
【0085】
取引データとして、店ID毎に、取引ID(決済ID)、取引日、決済金額、及びユーザIDが記録され管理される。
【0086】
次に、本実施形態におけるデータ処理の流れについて説明する。
【0087】
図15は、社内融資システムでのデータの流れを時系列で示す。労働者が労働を提供してから社内融資をリクエストし、融資を現金その他で受け取るまでの流れである。
【0088】
I:労働提供
まず、利用者端末16の使用者である労働者は、雇用者に対して労働契約に基づいて労働を提供する。雇用者が管理する企業側コンピュータ10では、労働者の労働データを入力し記憶する。
【0089】
II:労働データ送信
次に、企業側コンピュータ10は、労働データを労働データ処理コンピュータ12に送信する。送信のタイミングは任意であり、毎日、あるいは一定日間隔で送信してもよい。
【0090】
III:リクエスト
次に、労働者は、利用者端末16を操作して労働データ処理コンピュータに対して社内融資のリクエストを送信する。労働データ処理コンピュータ12は、リクエストを受信すると、労働者のユーザテーブルを参照してリクエストを受信した日における当該労働者の給与残高を確認して利用者端末16に送信するとともに、比率テーブルを参照して当該労働者の過去の比率履歴から得られた比率のデフォルト値を送信する。労働データ処理コンピュータ12は、利用者端末16から社内融資額としてのリクエスト金額及びその内訳:比率を受信すると、その内訳:比率に応じた所定の金利条件下での社内融資処理を実行する。
【0091】
IV:電子マネー発行依頼
労働データ処理コンピュータ12は、利用者端末16からのリクエストデータの内訳に電子マネーが含まれている場合、例えば現金50%、電子マネー50%等の場合、例えば、金利0%での社内融資処理を行う場合、決済コンピュータ14に対してリクエスト金額の電子マネー分の比率に相当する現金を電子マネーとして発行するように依頼する。また、労働データ処理コンピュータ12は、電子マネーの発行依頼に伴い、電子マネー額に相当する金額を決済コンピュータ14の事業者が指定する口座に振り込むための振込テーブルを作成して振込処理を実行する。
【0092】
労働データ処理コンピュータ12は、電子マネーの比率が0%の場合、決済コンピュータ14に対する電子マネー発行依頼は行わず、次のV:口座振込処理に移行する。
【0093】
V:口座振込/電子マネーのチャージ
労働データ処理コンピュータ12は、利用者端末16からのリクエストデータの内訳に現金の比率が存在する場合、つまり現金が0%でない場合に、所定の金利条件下での社内融資処理として、その比率に相当する分の現金を振り込むための振込テーブルを作成し、労働者の銀行口座に振り込む。また、これと並行して、電子マネーの比率が0%でない場合、決済コンピュータ14は、当該労働者に対して発行した電子マネーを利用者端末16に送信する。ここで、決済コンピュータ14は、労働データ処理コンピュータ12からの電子マネー額に相当する金額の自社指定口座への振り込みを確認した後に、電子マネーデータを利用者端末16に送信する。利用者端末16の電子マネー管理モジュールは、決済コンピュータ14からの電子マネーデータを処理して当該電子マネーのチャージ処理を実行する。決済コンピュータ14は、労働データ処理コンピュータ12からの電子マネー額に相当する金額の振込日の当日若しくは翌日には電子マネーデータを利用者端末16に送信するのが好適である。
【0094】
VI:給与残高振込
所定の給与支払日になると、労働データ処理コンピュータ12は、労働者の給与から融資実行した金額を控除した残りの給与残高について振込テーブルを作成し、労働者の銀行口座に振り込む。前記融資を実行した金額には、所定の金利条件が反映されている。本実施形態において、前記金利条件は低く設定されていることから、例えば現金で100,000円の融資を受けたとしても、金利が0.1%であれば100円となることから、控除される融資を実行した金額は100,100円となり、この額が控除された額が前記労働者の銀行口座に振り込まれる。
【0095】
図16は、決済コンピュータ14で発行され、利用者端末16の電子マネー管理モジュールでチャージ処理された電子マネーを用いて商品やサービスを購入する場合のデータの流れを示す。
【0096】
I:決済IDの発行
決済コンピュータ14は、利用者端末16を利用する労働者からの要求に応じて決済IDを発行して利用者端末16に送信する。利用者端末16の電子マネー管理モジュールは、決済IDを通信ネットワーク20を介して受信し、記憶する。
【0097】
II:商品、サービスの購入に伴う決済IDの提供
労働者は、販売者の商品やサービスを購入する際に、利用者端末16から当該決済IDを販売者端末18に提供する。決済IDは、利用者端末16から販売者端末18に近距離無線通信で送信されてもよく、あるいは販売者端末18のイメージセンサから光学的に読み取ることで提供してもよい。決済IDの形態は任意であり、1次元バーコードあるいは2次元バーコード(QRコード(登録商標))であってもよい。決済IDは、
図13及び
図14におけるユーザIDと同一のIDである。
【0098】
III:決済要求
利用者端末16から決済IDを取得した販売者端末18は、決済コンピュータ14に決済要求を送信する。決済要求には、決済ID及び決済金額のデータが含まれる。決済コンピュータ14は、決済要求に対応するトランザクションID(取引ID)を生成して決済処理を実行する。決済コンピュータ14は、販売者端末18に取引IDを含む販売データを送信し、利用者端末16に取引IDを含む購買データを送信する。
【0099】
このように、労働者は、自己の労働実績に連動して社内融資を希望する際に、現金として受け取る他に所望の比率で電子マネーとして受け取ることができ、電子マネーで商品やサービスを購入することができる。
【0100】
次に、労働データ処理コンピュータ12及び利用者端末16における処理について、より詳細に説明する。
【0101】
図17は、労働データ処理コンピュータ12の処理フローチャートを示す。ROM12bあるいは記憶装置12eに記憶された処理プログラムをCPU12aが実行することにより実現される処理である。
【0102】
まず、労働データ処理コンピュータ12は、所定のタイミングで企業側コンピュータ10から労働者の労働データを受信する(S101)。
【0103】
次に、労働者(従業員)毎のその時点までの給与累計を算出する(S102)。
【0104】
次に、利用者端末16から社内融資のリクエストを受信したか否かを判定する(S103)。リクエストを受信しない場合には、S101~S103の処理を繰り返し実行して労働者毎の給与累計を順次算出していく。
【0105】
リクエストを受信した場合、比率テーブル記憶部128に記憶されている当該労働者の過去の比率に基づいてその労働者に対する比率のデフォルト値を決定する(S104)。決定された比率のデフォルト値は、リクエストを送信した労働者の利用者端末16に送信される。
【0106】
次に、利用者端末16から送信されたリクエストデータに基づき、前払リクエストにおける電子マネーの比率を判定する(S105)。電子マネーの比率は、0%、100%、及びそれ以外に分類される。なお、ここでは便宜上、現金と電子マネーの2種類のみ(労働バリューは無視)とする。
【0107】
電子マネーの比率が0%、つまり現金100%の場合、リクエストデータに含まれるリクエスト金額に応じて振込テーブルを作成し、労働者の銀行口座に振り込む(S107)。この際に、所定の手数料を控除した金額を振り込んでもよい。ここで、本実施形態では、金利を0%で社内融資として労働者に給付するので、振込手数料を労働者負担とすることもできる。そして、振り込んだ金額を融資実行額として給与累計から控除して給与残高の更新処理を実行する(S108)。
【0108】
電子マネーの比率が100%の場合、つまり現金0%の場合、決済コンピュータ14に対してリクエスト金額に応じた電子マネーの発行依頼を行う(S109)。決済コンピュータ14は、この発行依頼に応じてリクエスト金額相当分を電子マネーに変換し、利用者端末16に送信して電子マネーをチャージする。決済コンピュータ14は、電子マネーをチャージした旨を労働データ処理コンピュータ12に送信する。労働データ処理コンピュータ12は、電子マネーに変換した金額を融資実行額として給与累計から控除して給与残高の更新処理を実行する(S110)。
【0109】
電子マネーの比率がそれ以外、例えば現金50%、電子マネー50%等の場合、決済コンピュータ14に対してリクエスト金額の電子マネー比率に応じた金額に相当する電子マネーの発行依頼を行う(S111)。決済コンピュータ14は、この発行依頼に応じて比率金額相当分を電子マネーに変換し、利用者端末16に送信して電子マネーをチャージする。決済コンピュータ14は、電子マネーをチャージした旨を労働データ処理コンピュータ12に送信する。また、これと並行して、労働データ処理コンピュータ12は、リクエスト金額の現金比率に応じた金額の振込テーブルを作成し、労働者の銀行口座に振り込む(S112)。この際に、所定の手数料を控除した金額を振り込んでもよい。振込金額及び電子マネーに変換した金額を給与累計から控除して給与残高の更新処理を実行する(S113)。
【0110】
図18は、利用者端末16の構成ブロック図を示す。利用者端末16は、スマートフォンやタブレット端末、PC等であり、これらの情報端末が備える構成を有する。利用者端末16は、CPU165、ROM166、RAM167、操作部162、表示部163、通信I/F168、及び記憶部164を備える。CPU165は、ROM166あるいは記憶部164に記憶された処理プログラムを実行することで各種処理を実現する。処理プログラムには、社内融資アプリケーションプログラムが含まれる。社内融資アプリケーションプログラムは、労働データ処理コンピュータ12あるいは通信ネットワーク20に接続された所定のサーバコンピュータからダウンロードしてインストールされ得る。電子マネー管理モジュールは、社内融資アプリケーションプログラムに組み込まれていてもよいが、別途、決済コンピュータ14あるいは他のサーバコンピュータからダウンロードしてインストールされ得る。
【0111】
通信I/F168は、通信ネットワーク20を介して労働データ処理コンピュータ12、決済コンピュータ14、及び販売者端末18とデータを送受信する。すなわち、労働データ処理コンピュータ12に対しては、社内融資のリクエストを送信し、労働データ処理コンピュータ12から比率のデフォルト値を受信し、リクエスト金額及び所望の比率を含むリクエストデータを送信する。決済コンピュータ14に対しては、電子マネーを受信して電子マネー管理モジュールにチャージし、決済IDを要求して発行された決済IDを受信する。販売者端末18に対しては、商品やサービスの購入時に決済IDを送信する。
【0112】
図19は、利用者端末16の処理フローチャートを示す。ROM166あるいは記憶部164に記憶された社内融資アプリケーションプログラムをCPU165が実行することにより実現される処理である。
【0113】
労働者が利用者端末16を操作して社内融資アプリケーションプログラムを起動すると(S201)、社内融資アプリケーションの処理モジュールは、まずログイン画面を表示部163に表示する(S202)。このログイン画面では、労働者は、企業コードや利用者コード等を入力する。処理モジュールは、入力された情報を労働データ処理コンピュータ12に送信する。労働データ処理コンピュータ12は、入力されたデータと時給単価テーブルとを照合し、ログインを許可するか否かを判定する。労働者が社内融資システムを利用し得る労働者であると判定した場合、労働データ処理コンピュータ12は、ログインを許可し、その旨の通知を利用者端末16に送信する。
【0114】
次に、処理モジュールは、ログインOKかNGかを判定する(S203)。労働データ処理コンピュータ12から許可通知を受信すると、ログインOKであると判定し、社内融資の申し込み画面を表示部163に表示する(S204)。この申し込み画面では、労働者は、社内融資の申し込みを行うか、あるいは利用可能額を照会するか等を入力する。処理モジュールは、入力された情報を労働データ処理コンピュータ12に送信することでリクエスト要求を送信する(S205)。労働データ処理コンピュータ12は、社内融資の申し込みを受信すると、ユーザテーブルを参照するとともに比率テーブルを参照し、当該労働者の現時点での給与残高に基づいて社内融資の利用可能額を取得するとともに、当該労働者の過去の比率データを用いて比率のデフォルト値を取得し、利用者端末16に送信する。
【0115】
処理モジュールは、労働データ処理コンピュータ12からの利用可能額及び比率のデフォルト値をユーザデータとして受信し(S206)、これらのデータを用いて詳細画面を表示部163に表示する(S207)。この詳細画面では、労働者は、社内融資を希望する金額及びその内訳、比率を入力する。処理モジュールは、入力された情報を労働データ処理コンピュータ12に送信することでリクエスト要求を送信する(S208)。
【0116】
次に、処理モジュールは、電子マネーの比率が0%か0%以外かを判定する(S209)。電子マネーの比率が0%である場合、S211の処理に移行する。電子マネーの比率が0%以外の場合、処理モジュールは、コマンドあるいはAPIを発行して電子マネー管理モジュールを起動し、決済コンピュータ14から送信された電子マネーデータを用いてチャージ処理する(S210)。このチャージ処理では、表示部163に現在の電子マネー残高を表示するとともに、新たにチャージされた電子マネーにより当該残高額が増大する画面を表示してもよい。
【0117】
電子マネーの比率が0%の場合、及びS210で電子マネーのチャージ処理を実行した場合、処理モジュールは、次に労働バリューの比率が0%か0%以外かを判定する(S211)。労働バリューの比率が0%の場合は処理を終了する。労働バリューの比率が0%以外の場合、処理モジュールはコマンドあるいはAPIを発行して労働バリュー管理モジュールを起動し、労働データ処理コンピュータ12から送信された労働バリューデータを用いてチャージ処理する(S212)。
【0118】
なお、労働者が現金比率100%とした場合、S209及びS211でいずれも0%と判定されるので、処理モジュールはS210及びS212の処理を実行しない。この場合には、労働データ処理コンピュータ12は、社内融資のリクエスト金額に応じた振込テーブルを作成して労働者の銀行口座に振り込み処理を実行するので、労働者は自己の銀行口座に振り込まれた融資金額を適宜引き出し得る。
【0119】
以下、利用者端末16の表示部163に表示される画面(UI画面)を具体的に説明する。なお、利用者端末16としてスマートフォン、表示部163としてタッチパネルを例示するが、これに限定されるものではない。
【0120】
図20は、S202で表示されるログイン画面例を示す。企業コード、利用者コード、及びパスワードを入力するための入力フィールドが表示される。労働者は、これらの情報を入力して「ログイン」ボタンをタッチしてこれらの情報を労働データ処理コンピュータ12に送信する。
【0121】
図21は、S204で表示される申し込み画面例を示す。社内融資のトップメニューであり、ログインした労働者の氏名(利用者名)及び前回ログイン日時が表示され、
・利用申し込み
・利用可能金額照会
・利用申し込み履歴照会
・パスワード変更
のいずれかを選択するためのチェックボックスが表示される。労働者は、いずれかの項目にタッチしてチェックボックスにチェックを入れる。ここでは、労働者は、「利用申し込み」のチェックボックスにチェックを入れて労働データ処理コンピュータ12に送信するものとする。
【0122】
図22は、S207で表示される詳細画面例を示す。ログインした労働者に対する利用可能額が表示され、申し込み額及び内訳の入力フィールド、並びにスライドバーが表示される。
【0123】
利用可能額は、
図9に示されるユーザテーブルで管理される、社内融資リクエスト時点での当該労働者の給与総額(既に融資実行された場合にはその融資額を控除した額)の範囲内の額である。労働者を雇用する企業により融資を利用できる範囲を決めている場合にはその範囲内(例えば給与総額の70%等)である。
【0124】
申し込み額は、労働者が希望する融資額である。図では、利用可能額の100,000円に対し、50,000円を希望した場合が示されている。
【0125】
内訳は、
・現金
・電子マネーa
・電子マネーb
・労働バリュー
を選択するためのチェックボックスが表示されるとともに、比率の入力フィールドが表示される。
【0126】
スライドバーは、内訳のうちいずれか2つが選択された場合の比率を入力するためのバーであり、スライダーをクリックして左右に移動させることで選択した2つの比率を設定することができる。スライドバーは、当初は非表示であり、内訳のうちいずれか2つが選択された場合に自動的に表示されるように構成し得る。
【0127】
【0128】
図23は、労働者が現金のみを選択するパターンである。現金のチェックボックスのみがチェックされる。この場合、現金100%であるので比率の設定は不要である。
【0129】
図24は、労働者が電子マネーaのみを選択するパターンである。電子マネーaのチェックボックスのみがチェックされる。なお、電子マネーa及び電子マネーbは、異なる電子マネー事業者が発行する異なる種類の電子マネーである。この場合、電子マネーa100%であるので比率の設定は不要である。
【0130】
図25は、労働者が現金と電子マネーaの2つを選択するパターンである。現金と電子マネーaのチェックボックスがチェックされる。この場合、現金と電子マネーaの比率を別途設定する必要がある。
【0131】
図26は、労働者が労働バリューのみを選択するパターンである。労働バリューのチェックボックスのみがチェックされる。この場合、比率の選択は不要である。
【0132】
図27は、労働者が現金と労働バリューの2つを選択するパターンである。現金と労働バリューのチェックボックスがチェックされる。この場合、現金と労働バリューの比率を別途設定する必要がある。
【0133】
図28は、労働者が現金及び電子マネーaの2つを選択した場合の詳細画面例を示す。当該労働者の比率のデフォルト値を現金50%とすると、スライドバーのスライダーはバーの中央位置に表示され、かつ、現金と電子マネーaの比率入力フィールドには、
現金:50%
電子マネー:50%
と表示される。
【0134】
労働者は、この比率でOKであれば、利用者端末16を操作してそのままリクエストデータとして労働データ処理コンピュータ12に送信する。
【0135】
労働者は、比率のデフォルト値を調整したい場合には、スライダーを左右に移動させる。スライダーの位置は比率の値に連動しており、スライダーを左に移動させると現金の比率が減少し、逆に右に移動させると現金の比率が増大する。
【0136】
図29は、労働者がスライダーを左に移動させて現金の比率を減少させた場合を示す。スライダーが図中破線で示す中央位置から左に移動し、これに連動して比率入力フィールドに、
現金:30%
電子マネー:70%
と表示される。
【0137】
図28及び
図29では比率として%で表示しているが、比率を金額で表示してもよい。
【0138】
図30は、比率を金額で表示する場合を示す。申し込み金額が50,000円である場合、現金50%は25,000円となるので、
現金:25,000円
電子マネー:25,000円
と表示される。
【0139】
図28では、比率のデフォルト値を50%としているが、既述したように、労働者毎に比率の履歴は異なるので、労働者毎に比率のデフォルト値も異なり得る。
【0140】
図31は、別の労働者がログインした場合の表示例である。スライダーはバーの中央位置ではなく右端に位置しており、比率入力フィールドに、
現金:100%
電子マネー:0%
と表示される。過去の比率として現金100%が相対的に多い労働者の場合、その都度スライドバーを操作する手間が省け、迅速に比率を設定して労働データ処理コンピュータ12に送信できる。
【0141】
図32は、さらに別の労働者がログインした場合の表示例である。スライダーは当初から中央より左寄りに位置しており、比率入力フィールドに、
現金:30%
電子マネー:70%
と表示される。過去の比率として現金30%が相対的に多い労働者の場合、その都度スライドバーを操作する手間が省け、迅速に比率を設定して労働データ処理コンピュータ12に送信できる。
【0142】
なお、
図23~
図27では、
・現金
・電子マネーa
・電子マネーb
・労働バリュー
のうちのいずれか1つ又は2つを選択する場合を示したが、いずれか2つには電子マネーaと電子マネーb、あるいは電子マネーaと労働バリューの選択も含まれ得る。また、いずれか3つ、例えば現金と電子マネーaと電子マネーbの選択を許容してもよい。この場合、複数のスライドバーあるいはGibbsの三角形を用いて比率を調整し得る。
【0143】
次に、労働バリューについて説明する。
【0144】
労働者は、社内融資を現金として受け取る場合、労働データ処理コンピュータ12による振込処理により自己の銀行口座に一旦振り込まれ、その後に当該銀行口座から引き出すことにより受け取ることができる。これに対し、労働バリューは、現金と等価の価値を有するデータであり、販売者側が労働バリューによる決済を受け入れることを前提として、そのまま商品やサービスの購入代金として充当できるものである。従って、労働バリューによる商品やサービスの購入には現金は不要であり、労働者は自己の銀行口座も不要となる(但し、融資控除後の給与残高の振り込みには銀行口座が必要となる)。
【0145】
図33は、労働者が労働バリューによる社内融資を希望した場合のデータの流れを時系列で示す。
【0146】
I:労働提供
まず、利用者端末16の使用者である労働者は、雇用者に対して労働契約に基づいて労働を提供する。雇用者が管理する企業側コンピュータ10では、労働者の労働データを入力し記憶する。
【0147】
II:労働データ送信
次に、企業側コンピュータ10は、労働データを労働データ処理コンピュータ12に送信する。送信のタイミングは任意であり、毎日、あるいは一定日間隔で送信してもよい。
【0148】
III:リクエスト
次に、労働者は、利用者端末16を操作して労働データ処理コンピュータに対して社内融資のリクエストを送信する。労働データ処理コンピュータ12は、リクエストを受信すると、労働者のユーザテーブルを参照してリクエストを受信した日における当該労働者の給与残高を確認して利用者端末16に送信するとともに、比率テーブルを参照して当該労働者の過去の比率履歴から得られた比率のデフォルト値を送信する。このとき、労働者は融資の内訳として、労働バリュー100%を選択する。
【0149】
IV:労働バリュー送信
労働データ処理コンピュータ12は、利用者端末16からのリクエストデータの内訳が労働バリューである場合、リクエスト金額相当の労働バリューデータを送信する。利用者端末16の労働バリュー管理モジュールは、労働データ処理コンピュータ12からの労働バリューデータを処理して労働バリューのチャージ処理を実行する。
【0150】
V:給与残高振込
所定の給与支払日になると、労働データ処理コンピュータ12は、労働者の給与から社内融資した金額を控除した残りの給与残高について振込テーブルを作成し、労働者の銀行口座に振り込む。
【0151】
図15の場合と異なり、労働データ処理コンピュータ12は、決済コンピュータ14に対する電子マネーの発行依頼を行わず、労働データ処理コンピュータ12及び利用者端末16間のデータ送受信で処理が完了する。
【0152】
本実施形態では、スライドバーにより比率を入力する構成としているが、単に、現金と電子マネーの少なくともいずれかを選択し得る選択メニューとしてもよい。この場合、比率データに代えて、選択データをリクエストデータとして送信するといえる。選択データは、比率データの特定の場合(現金100%で電子マネー0%、あるいは現金0%で電子マネー100%)と解釈することもできる。
【0153】
図34は、S204で表示される他の申し込み画面例を示す。利用申し込みとして、「ウォレット」と「前払」のいずれかを選択可能な選択メニューが表示される。「ウォレット」は、一般に、オンラインバンキングや仮想通貨、暗号通貨の分野において、資産を保管しておく仮想的・概念的な場所をいう。労働者は、このウォレットに電子マネーのデータを蓄積することができる。労働者がこの「ウォレット」を選択すると、ウォレットのアプリケーションが起動し、現在の電子マネー残高等が表示される。労働者は、この画面を視認することで、現在の電子マネー残高等を確認する。
【0154】
他方、「前払」は、本実施形態の社内融資を利用する場合のメニューであり、労働者がこの「前払」を選択すると、利用可能金額が表示される。利用可能金額は、
図9に示されるユーザテーブルで管理される、社内融資リクエスト時点での当該労働者の給与総額(既に融資実行を受けている場合にはその融資額を控除した額)の範囲内の額である。労働者を雇用する企業により融資を利用できる範囲を決めている場合にはその範囲内(例えば給与総額の70%等)である。図では、利用可能金額として「¥50,000」と表示されている。労働者が、前払、すなわち社内融資を利用する場合には、利用可能金額を確認した上で、「利用する」ボタンを押下操作する。
【0155】
図35は、
図34において労働者が「利用する」ボタンを押下操作した場合に表示される画面例を示す。本実施形態の社内融資を利用する場合の利用規約が表示される。利用規約は、具体的には、給与支払の内渡しとしての貸し出しであること、貸し出しの金利は0%であること、振込手数料は利用者、つまり労働者が負担するものであること、及び貸し出しの返済は、支払い給与から控除することで返済すること、等が規定される。また、融資であることを考慮し、労働者が未成年である場合に備え、「未成年」ボタンが表示される。労働者が未成年であり、この「未成年」ボタンを押下操作すると、親権者の同意を得るための画面に遷移する。労働者が未成年でない場合、「同意」ボタンあるいは「同意しない」ボタンのいずれかを選択して押下操作する。規約に同意する労働者は、「同意」ボタンを押下操作する。
【0156】
図36は、
図35において労働者が「同意」ボタンを押下操作した場合に表示される画面例を示す。振込タイミングとともに、利用可能金額が再度表示される。また、引き出し先の選択メニューとして、「アプリのウォレット」と「給料の振込口座」が表示される。ここで、「アプリのウォレット」は、電子マネーとしての給付を受ける場合に選択するメニューである。また、「給料の振込口座」は、現金としての給付を受ける場合に選択するメニューである。いずれの場合も、社内融資として所定の金利条件下において実行される。労働者は、「アプリのウォレット」と「給料の振込口座」のいずれかを選択する。なお、1回目の操作では「アプリのウォレット」を選択し、それに続く2回目の操作では「給料の振込口座」を選択することで、結果として、電子マネーと現金の両方を選択することもできる。「アプリのウォレット」が選択されると、電子マネーの選択データが送信されることになり、「給料の振込口座」が選択されると、現金の選択データが送信されることになる。
【0157】
図37は、
図36において労働者が「アプリのウォレット」を選択し、「利用する」ボタンを押下操作した場合に表示される画面例を示す。電子マネーの依頼金額の入力欄が表示され、「+1,000」、「+5,000」、「+10,000」等の金額調整ボタンを適宜押下操作することで依頼金額を入力する。また、依頼金額入力欄に加え、振込金額(依頼金額と同一)、手数料、合計の申請金額、振込タイミングが表示される。振込タイミングは、所定の給与日前の任意のタイミングであり、労働者が当該画面を使用して利用申請した日、あるいはシステムにおける処理が完了する日(例えば利用申請日の翌日)である。労働者は、依頼金額、手数料、申請金額、及び振込タイミングを確認した上で、「申請する」ボタンを押下操作する。
【0158】
図38は、
図37において「申請する」ボタンを押下操作した場合に表示される画面例を示す。申請が完了した旨、及び振り込まれた電子マネー金額が表示される。振込タイミングの後において、労働者がアプリのウォレットを起動し、その電子マネー残高を確認すると、今回申請した金額分が新たに追加されることになる。
【0159】
以上説明したように、本実施形態では、労働者は、自己の労働実績に応じて所定の金利での社内融資を受け取ることができるとともに、多様な形態で融資を受け取ることができる。本実施形態では、労働者は、社内融資として、所定の給与日前の任意のタイミングにおいて現金あるいは電子マネーを受け取ることができるので、実質的に、所定の給与日前の任意のタイミングにおいて給与を現金あるいは電子マネーの所望の形態で受け取ることができる。給与支払いでは税金計算等の給与控除対応が必要であるが、このような性質の控除額は利用可能額データからあらかじめ控除しておくことも可能である。また、未成年者に対しては、例えば生年月日の登録を義務化して親権者の同意を要することをフロー化することで、円滑な利用が可能である。
【0160】
本実施形態では、あくまで労働者は自己の労働実績に連動し、自己の労働実績の範囲内から大きく離れない限りにおいて社内融資を受けるので、いわゆる借り過ぎのおそれもなく、労働者は安心して本システムを利用することができる。また、使用者にとっても、労働者の多様な給付要求に的確に対応することができる。
【0161】
なお、本実施形態において、労働者が自己の給与の全額を社内融資として電子マネーの形態で受け取ることも可能である。
【符号の説明】
【0162】
10 企業側コンピュータ、12 労働データ処理コンピュータ、14 決済コンピュータ、16 利用者端末、18 販売者端末、20 通信ネットワーク。