(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160705
(43)【公開日】2022-10-19
(54)【発明の名称】殺菌方法
(51)【国際特許分類】
B65B 55/02 20060101AFI20221012BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20221012BHJP
【FI】
B65B55/02 E
B65B55/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129411
(22)【出願日】2022-08-15
(62)【分割の表示】P 2021544595の分割
【原出願日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2020085425
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】早川 睦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することが可能な、殺菌方法を提供する。
【解決手段】殺菌剤を、ヒーター(H)で加熱しながら循環ライン(53)により循環させる循環工程と、ヒーター(H)で加熱された殺菌剤を充填チャンバー(42)に供給することにより、充填チャンバー(42)を殺菌する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤を加熱するヒーターが介在された循環ラインと、
前記循環ラインに連結された主チャンバーとを備える殺菌システムにおける殺菌方法において、
前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させる循環工程と、
前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記主チャンバーに供給することにより、前記主チャンバーを殺菌する殺菌工程と、を備える殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料をボトル等の容器に充填するシステムとして、飲料自体を殺菌するとともに、サージタンク、配管、充填ノズル等を殺菌して無菌状態にする内容物充填システムが知られている。このような内容物充填システムでは、例えば飲料の種類を切り替える際に、CIP(Cleaning in Place)をし、さらに、SIP(Sterilization in Place)をしている(例えば、特許文献1乃至3)。
【0003】
CIPは、飲料の流路やタンクに付着した前回の飲料の残留物等を除去するためのものであり、飲料の流路に、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流した後に、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。
【0004】
SIPは、飲料の流路やタンクを殺菌処理し、無菌状態にするためのものであり、例えば、CIPで洗浄した流路内に加熱蒸気または熱水を流すことによって行われる。
【0005】
また、内容物を充填するための充填装置が配置される充填チャンバー内も、浄化のためCOP(Cleaning out of Place)およびSOP(Sterilizing out of Place)が行われる(例えば、特許文献4乃至7)。
【0006】
充填チャンバー内には、各種噴射ノズルが配置されており、COPおよびSOPが行われる際には、これらのノズルから、アルカリ洗浄剤、過酢酸洗浄剤、過酸化水素水等の殺菌剤や無菌水等が、充填チャンバー内で順に噴霧状またはシャワー状に噴射される。この殺菌剤や無菌水のミスト、シャワー等によって、充填チャンバーの内壁面や充填装置(フィラー)等の機器の表面が浄化され、無菌化される。
【0007】
ところで、充填チャンバー内に噴射される殺菌剤は、殺菌剤原液に水を加えることにより作製される場合がある。しかしながら、殺菌剤原液に加えられる水内に予め菌が生残している可能性がある。この場合、殺菌剤内に菌が生残してしまうおそれがある。このように、殺菌剤内に予め菌が生残していた場合、充填チャンバー内に殺菌剤を噴射した場合であっても、殺菌剤内に生残する菌が充填チャンバー内に残存してしまう可能性がある。このため、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうおそれがあり、充填チャンバー内の殺菌が不十分になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-331801号公報
【特許文献2】特開2000-153245号公報
【特許文献3】特開2007-22600号公報
【特許文献4】特許第3315918号公報
【特許文献5】特開2004-299723号公報
【特許文献6】特開2010-189034号公報
【特許文献7】特開2018-135134号公報
【0009】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであり、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することが可能な、殺菌方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0010】
一実施の形態による殺菌方法は、殺菌剤を加熱するヒーターが介在された循環ラインと、前記循環ラインに連結された主チャンバーとを備える殺菌システムにおける殺菌方法において、前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させる循環工程と、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記主チャンバーに供給することにより、前記主チャンバーを殺菌する殺菌工程と、を備える殺菌方法である。
【0011】
一実施の形態による殺菌方法において、前記殺菌システムは、前記循環ラインに連結され、水と殺菌剤原液とによって作製される殺菌剤を貯留するタンクと、前記タンクに前記水を供給する水供給部と、前記タンクに前記殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部と、前記循環ラインと前記タンクとの間に設けられた供給ラインと、を更に備え、前記供給ラインに、前記主チャンバーが介在され、前記主チャンバーに、ボトルに内容物を充填するための充填装置が配置され、前記循環工程において、前記タンク中の前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させ、前記殺菌工程において、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記供給ラインにより前記主チャンバーに供給してもよい。
【0012】
一実施の形態による殺菌方法において、前記主チャンバーに供給された前記殺菌剤を前記タンクに戻す回収工程を更に備えていてもよい。
【0013】
一実施の形態による殺菌方法において、前記殺菌システムは、前記循環ラインに連結され、水と殺菌剤原液とによって作製される殺菌剤を貯留するタンクと、前記タンクに前記水を供給する水供給部と、前記タンクに前記殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部と、を更に備え、前記循環ラインに、前記ヒーターと無菌チャンバーとが順次介在され、前記無菌チャンバーは、前記主チャンバーと、前記主チャンバーの入口側および出口側の少なくとも一方に設けられた副チャンバーとを有し、前記主チャンバーに、ボトルに内容物を充填するための充填装置が配置され、前記循環工程において、前記タンク中の前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら、前記副チャンバーを介して、前記循環ラインにより循環させ、前記殺菌工程において、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記循環ラインにより前記主チャンバーに供給してもよい。
【0014】
一実施の形態による殺菌方法において、前記主チャンバーに供給された前記殺菌剤を前記タンクに戻す回収工程を更に備えていてもよい。
【0015】
一実施の形態による殺菌方法において、前記殺菌システムは、前記循環ラインに水を供給する水供給部と、前記循環ラインに殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部と、を更に備え、前記循環ラインに、前記ヒーターと無菌チャンバーとが順次介在され、前記殺菌剤は、前記水と前記殺菌剤原液とによって作製され、前記無菌チャンバーは、前記主チャンバーと、前記主チャンバーの入口側または出口側の少なくとも一方に設けられた副チャンバーとを有し、前記主チャンバーに、ボトルに内容物を充填するための充填装置が配置され、前記循環工程において、前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら、前記副チャンバーを介して、前記循環ラインにより循環させ、前記殺菌工程において、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記循環ラインにより前記主チャンバーに供給してもよい。
【0016】
一実施の形態による殺菌方法において、前記主チャンバーの容積をx1とし、前記循環ラインにおける前記殺菌剤の流路の容積をx2とし、前記循環工程における前記循環ラインによる前記殺菌剤の循環量をyとしたとき、
2×(x1+x2)≦y≦100×(x1+x2)
という関係を満たしていてもよい。
【0017】
一実施の形態による殺菌方法において、前記殺菌工程において、前記殺菌剤の温度は、40℃以上90℃以下であってもよい。
【0018】
一実施の形態による殺菌方法において、前記循環工程において、前記殺菌剤が前記循環ラインにより循環する循環時間は、5分以上60分以下であってもよい。
【0019】
一実施の形態による殺菌方法において、前記殺菌剤は、過酢酸または過酸化水素を含んでいてもよい。
【0020】
一実施の形態による殺菌方法において、前記殺菌工程において、前記ヒーターによって前記殺菌剤を更に加熱してもよい。
【0021】
一実施の形態による殺菌方法において、前記殺菌工程の前に、アルカリ洗浄剤を前記主チャンバーに供給することにより、前記主チャンバーを洗浄する洗浄工程を更に備えていてもよい。
【0022】
一実施の形態による殺菌システムは、殺菌剤を加熱するヒーターが介在された循環ラインと、前記循環ラインに連結された主チャンバーと、前記循環ラインに接続された制御装置と、を備える殺菌システムにおいて、前記制御装置は、前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させ、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記主チャンバーに供給する殺菌システムである。
【0023】
本開示によれば、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1Aは、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法によって殺菌される内容物充填システムを示す概略平面図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法によって殺菌される内容物充填システムの変形例を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法を行う殺菌システムを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法の変形例を示すブロック図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法の変形例を示すブロック図である。
【
図6C】
図6Cは、本開示の第1の実施の形態による殺菌方法の変形例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本開示の第2の実施の形態による殺菌方法を行う殺菌システムを示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本開示の第2の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本開示の第2の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本開示の第2の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本開示の第3の実施の形態による殺菌方法を行う殺菌システムを示すブロック図である。
【
図12】
図12は、本開示の第3の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、本開示の第3の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、本開示の第3の実施の形態による殺菌方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して第1の実施の形態について説明する。
図1A乃至
図5は第1の実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0026】
(内容物充填システム)
まず、
図1Aにより本実施の形態による殺菌方法によって殺菌される充填チャンバー(主チャンバー)が設けられる内容物充填システム(無菌充填システム、アセプティック充填システム)について説明する。
【0027】
図1Aに示す内容物充填システム10は、ボトル30に対して飲料等の内容物を充填するシステムである。ボトル30は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製することができる。ボトル30の材料としては、熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、又はPEN(ポリエチレンナフタレート)を使用することが好ましい。このほか、容器としては、ガラス、缶、紙、パウチ、またはこれらの複合容器であっても良い。本実施の形態においては、容器として合成樹脂製のボトルを用いる場合を例にとって説明する。
【0028】
図1Aに示すように、内容物充填システム10は、ボトル供給部21と、ボトル殺菌装置11と、エアリンス装置14と、無菌水リンス装置15と、充填装置(フィラー)20と、キャップ装着装置(キャッパー、巻締及び打栓機)16と、製品ボトル搬出部22とを備えている。これらボトル供給部21、ボトル殺菌装置11、エアリンス装置14、無菌水リンス装置15、充填装置20、キャップ装着装置16、および製品ボトル搬出部22は、ボトル30の搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。また、ボトル殺菌装置11、エアリンス装置14、無菌水リンス装置15、充填装置20、およびキャップ装着装置16の間には、これらの装置間でボトル30を搬送する複数の搬送ホイール12が設けられている。
【0029】
ボトル供給部21は、外部から内容物充填システム10へ空のボトル30を順次受け入れ、受け入れたボトル30をボトル殺菌装置11へ向けて搬送するものである。
【0030】
ボトル殺菌装置11は、内容物が充填される前のボトル30を殺菌するためのものであり、殺菌剤をボトル30に噴射することにより、ボトル30内を殺菌するものである。殺菌剤としては、例えば過酸化水素水溶液が用いられる。ボトル殺菌装置11においては、1重量%以上、好ましくは35重量%の濃度の過酸化水素水溶液を一旦気化させた後に凝縮したミスト又はガスが生成され、このミスト又はガスがボトル30の内外面に噴霧される。このようにボトル30内が過酸化水素水溶液のミスト又はガスで殺菌されるので、ボトル30の内面がムラなく殺菌される。
【0031】
エアリンス装置14は、ボトル30に無菌の加熱エア又は常温エアを供給することにより、過酸化水素の活性化を行いつつ、ボトル30内から異物、過酸化水素等を除去するものである。
【0032】
無菌水リンス装置15は、殺菌剤である過酸化水素により殺菌されたボトル30に対して、無菌の15℃以上85℃以下の水による洗浄を行うものである。これによりボトル30に付着した過酸化水素を洗い流し、且つ異物が除去される。
【0033】
充填装置20は、ボトル30の口部からボトル30内へ、予め殺菌処理された内容物を充填するものである。この充填装置20において、空の状態のボトル30に対して内容物が充填される。この充填装置20において、複数のボトル30が回転(公転)されながら、ボトル30の内部へ内容物が充填される。この内容物は常温でボトル30内に充填されても良い。内容物は予め加熱等により殺菌処理され、3℃以上かつ40℃以下の常温まで冷やされた上でボトル30内に充填される。なお、充填装置20で充填される内容物としては、例えば茶系飲料、ミルク系飲料等の飲料が挙げられる。
【0034】
キャップ装着装置16は、充填装置20で内容物が充填されたボトル30の口部にキャップ33を装着することにより、ボトル30を閉栓するものである。キャップ装着装置16において、ボトル30の口部はキャップ33により閉じられ、ボトル30内に外部の空気や微生物が侵入しないように密封される。キャップ装着装置16において、内容物が充填された複数のボトル30が回転(公転)しながらその口部にキャップ33が装着される。このようにして、ボトル30の口部にキャップ33を装着することにより、製品ボトル35が得られる。
【0035】
キャップ33は、予めキャップ殺菌装置17によって殺菌される。キャップ殺菌装置17は、例えば無菌チャンバー40(後述)の外側であってキャップ装着装置16の近傍に配置されている。キャップ殺菌装置17において、外部から搬入されたキャップ33は、キャップ装着装置16に向かって順番に搬送される。キャップ33がキャップ装着装置16に向かう途中で、過酸化水素のミスト又はガスがキャップ33の内外面に向かって吹き付けられた後、ホットエアで乾燥し、殺菌処理される。
【0036】
製品ボトル搬出部22は、キャップ装着装置16でキャップ33を装着された製品ボトル35を、内容物充填システム10の外部へ向けて連続的に搬出するものである。
【0037】
このような内容物充填システム10は、無菌チャンバー40を備えている。この無菌チャンバー40は、殺菌チャンバー41(副チャンバー)と、充填チャンバー42(主チャンバー)と、出口チャンバー43(副チャンバー)とを有している。殺菌チャンバー41(副チャンバー)は、充填チャンバー42(主チャンバー)の入口側に設けられており、出口チャンバー43(副チャンバー)は、充填チャンバー42(主チャンバー)の出口側に設けられている。このため、殺菌チャンバー41、充填チャンバー42および出口チャンバー43は、ボトル30の搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。また、殺菌チャンバー41には、ボトル殺菌装置11とエアリンス装置14と無菌水リンス装置15とが配置され、充填チャンバー42には、充填装置20とキャップ装着装置16とが配置されている。さらに、出口チャンバー43には、製品ボトル搬出部22が配置されている。これらの殺菌チャンバー41、充填チャンバー42および出口チャンバー43には、内容物充填システム10をCOPおよび/またはSOPする際に、殺菌剤等を噴霧状またはシャワー状に噴射するための噴射ノズル41a、42a、43a(
図2参照)がそれぞれ設けられている。このような内容物充填システム10は、例えば無菌充填システムからなっていても良い。この場合、無菌チャンバー40の内部が無菌状態に保持されている。
【0038】
あるいは、内容物充填システム10は、85℃以上かつ100℃未満の高温下で内容物を充填する高温充填システムであっても良い。また、55℃以上かつ85℃未満の中温下で内容物を充填する中温充填システムであっても良い。
【0039】
なお、
図1Bに示すように、ボトル殺菌装置11の上流側に、プリフォーム30aを二軸延伸ブロー成形することによりボトル30の成形を行うボトル成形部100が設けられていても良い。このように、ボトル成形部100が、プリフォーム30aを受け入れるとともにボトル30の成形を行うように構成されていることにより、内容物充填システム10において、プリフォーム30aの供給からボトル30の成形を経て、ボトル30への内容物の充填および閉栓に至る工程を連続して行うことができる。この場合、外部から内容物充填システム10まで、容積の大きいボトル30の形態ではなく容積の小さいプリフォーム30aの形態で運搬することができるので、運送費を低減することができるとともに、内容物充填システム10を構成する設備をコンパクトにすることができる。
【0040】
図1Bに示す例において、ボトル成形部100は、外部からプリフォーム30aを順次受け入れ、ボトル30の成形を経て、成形されたボトル30をボトル殺菌装置11へ向けて搬送して供給するものである。
【0041】
ボトル成形部100は、プリフォーム30aを搬送するプリフォーム搬送部101と、プリフォームに対してブロー成形を施すことによりボトル30を成形するブロー成形部102と、成形されたボトル30を搬送するボトル搬送部103と、を有している。
【0042】
このうち、プリフォーム搬送部101は、プリフォーム供給装置110からプリフォーム供給コンベア111を介して供給されるプリフォームを受け取る受取部104と、受取部104からプリフォームを受け取り、搬送しながらプリフォームを加熱する加熱部105と、加熱部105により加熱されたプリフォームを受け取り、ブロー成形部102に受け渡す受渡部106と、を含んでいる。このうち、受取部104には、プリフォーム30aを殺菌するためのプリフォーム殺菌装置104aが設けられている。このプリフォーム殺菌装置104aにより、過酸化水素水溶液のミスト又はガスがプリフォーム30aに吹き付けられ、プリフォーム30aが殺菌されるようになっている(予備殺菌)。プリフォーム30aを殺菌するための殺菌剤としては、微生物を不活性化させる性質を有していればよく、例えば過酸化水素のほか、過酢酸、酢酸、過硝酸、硝酸、塩素系薬剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、二酸化塩素、オゾン水、酸性水、界面活性剤を単体で用いても良く、これらのうち2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
なお、加熱部105には、プリフォーム30aを加熱するヒーター105aが設けられている。このヒーター105aは、例えば赤外線ヒーターであっても良い。このヒーター105aにより、プリフォーム30aは、例えば90℃以上130℃以下程度に加熱される。なお、プリフォーム30aの口部の温度は、変形等を防止するため70℃以下の温度に抑えられる。
【0044】
また、ブロー成形部102は、図示しない金型を含んでおり、この金型を用いてプリフォーム30aに対してブロー成形を施すことにより、ボトル30が成形される。このブロー成形部102は、成形部チャンバー120内に配置されている。
【0045】
また、ボトル成形部100と、ボトル殺菌装置11との間に、ボトル成形部100のボトル搬送部103からボトル30を受け取り、ボトル殺菌装置11へボトル30を受け渡す調整搬送部130が設けられている。この調整搬送部130は、雰囲気遮断チャンバー131内に配置されている。このように、調整搬送部130が雰囲気遮断チャンバー131内に配置されていることにより、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41内で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が、ボトル成形部100が配置された成形部チャンバー120に流入する不具合を抑制することができる。
【0046】
(殺菌システム)
次に、
図2により本実施の形態による殺菌方法を行う殺菌システムについて説明する。
【0047】
図2に示すように、殺菌システム50は、殺菌剤を加熱するヒーターHが介在された循環ライン53と、循環ライン53に連結された充填チャンバー(主チャンバー)42と、循環ライン53に接続された制御装置50Aと、を備えている。また、殺菌システム50は、循環ライン53に連結され、殺菌剤を貯留するタンクTと、タンクTに水を供給する水供給部51と、タンクTに殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部52と、循環ライン53とタンクTとの間に設けられた供給ライン54と、を備えている。
【0048】
タンクTは、上述したように殺菌剤を貯留するためのものである。タンクTに殺菌剤を貯留することにより、製品の製造中等に予め殺菌剤を作製しておくことができるため、ダウンタイムを短縮することができる。このタンクTに貯留される殺菌剤は、水と殺菌剤原液とによって作製されるものであり、後述するように、アルカリ洗浄剤、過酢酸洗浄剤、過酸化水素水等であってもよい。
【0049】
タンクTの容積は、殺菌する充填チャンバー42の容積の2倍以上100倍以下であることが好ましい。タンクTの容積が充填チャンバー42の容積の2倍以上であることにより、充填チャンバー42を殺菌する際に、殺菌剤が不足してしまうことを抑制することができる。これにより、不足した殺菌剤を再度作製することによって、充填チャンバー42の殺菌が中断されてしまうことを抑制することができる。このため、充填チャンバー42の殺菌時間を短縮させることができる。また、タンクTの容積が充填チャンバー42の容積の100倍以下であることにより、必要以上の殺菌剤が作製されることを抑制することができる。このため、省エネルギー化を図ることができる。このタンクTの容積は、殺菌する充填チャンバー42の容積にもよるが、例えば、0.1m3以上5.0m3以下、好ましくは1.5m3以上3.0m3以下程度であってもよい。
【0050】
水供給部51は、殺菌剤原液を希釈するための水をタンクT内に供給するためのものである。この水供給部51から供給される水は、無菌水でなくてもよい。水供給部51から供給される水が無菌水でないことにより、殺菌剤を作製する際のコストを低減することができる。水供給部51から供給される水は、例えば、RO水、純水、イオン交換水、一般水(水道水)などであってもよい。また、水供給部51から供給される水の温度は、10℃以上30℃以下程度であってもよく、一例として15℃前後であってもよい。
【0051】
殺菌剤原液供給部52は、殺菌剤を作製するための殺菌剤原液をタンクTに供給するためのものである。この殺菌剤原液供給部52から供給される殺菌剤原液は、水酸化ナトリウム等をアルカリ成分として含むアルカリ性水溶液であってもよく、過酢酸水溶液、過酸化水素水等であってもよい。例えば、殺菌剤原液が水酸化ナトリウムを含むアルカリ性水溶液である場合、20重量%以上50重量%以下程度の水酸化ナトリウムを含むアルカリ性水溶液であってもよい。また、殺菌剤原液が過酢酸水溶液である場合、10重量%以上15重量%以下程度の過酢酸を含む過酢酸水溶液であってもよい。さらに、殺菌剤原液が過酸化水素水である場合、0.5重量%以上35重量%以下程度の過酸化水素を含む過酸化水素水であってもよい。その他、水酸化カリウム、次亜塩素酸ナトリウムなど微生物を不活性化させるものであれば、殺菌剤原液として適用可能である。
【0052】
このような殺菌剤原液から作製される殺菌剤は、例えば、水酸化ナトリウムを0.5重量%以上5重量%以下程度含んだものであってもよい。また、殺菌剤は、過酢酸を0.15重量%以上0.4重量%以下程度含んだものであってもよい。さらに、殺菌剤は、過酸化水素を0.5重量%以上35重量%以下程度含んだものであってもよい。
【0053】
循環ライン53は、タンクT内に貯留された殺菌剤を循環させるとともに、当該殺菌剤を所望の温度まで加熱するためのものである。この循環ライン53には、殺菌剤を加熱するヒーターHが介在されている。具体的には、循環ライン53は、タンクTに連結された第1供給配管53aと、第1供給配管53aに連結された第1帰還配管53bとを含んでいる。このうち第1供給配管53aは、タンクTから殺菌剤が供給される配管である。この第1供給配管53aに、上述したヒーターHと、殺菌剤を循環させるためのポンプP1とが介在されている。一方、第1帰還配管53bは、第1供給配管53aを通過した殺菌剤をタンクT内に戻すための配管である。この第1帰還配管53bは、タンクTに連結されている。なお、上述したヒーターHは、第1帰還配管53bに介在されていてもよい。
【0054】
供給ライン54は、循環ライン53によって加熱された殺菌剤を下流側に送るためのものである。この供給ライン54には、無菌チャンバー40(殺菌チャンバー41、充填チャンバー42および出口チャンバー43)が介在されている。具体的には、供給ライン54は、循環ライン53の第1供給配管53aおよび第1帰還配管53bに連結され、無菌チャンバー40の上流側に設けられた第2供給配管54aと、無菌チャンバー40に連結されるとともに、無菌チャンバー40の下流側に設けられた第2帰還配管54bと、第2帰還配管54bに連結されたドレン配管54cを含んでいる。このうち第2供給配管54aは、無菌チャンバー40の上流側において、複数の配管に分岐しており、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41、充填チャンバー42および出口チャンバー43に対して、それぞれ独立して殺菌剤を供給することができるように構成されている。第2帰還配管54bは、無菌チャンバー40から殺菌剤を排出するとともに、無菌チャンバー40を通過した殺菌剤をタンクT内に戻すための配管である。この第2帰還配管54bは、タンクTに連結されている。また、第2帰還配管54bには、殺菌剤をタンクTに戻すためのポンプP2が介在されている。ドレン配管54cは、無菌チャンバー40を殺菌後に、殺菌剤を排液として外部に排出するためのものである。
【0055】
制御装置50Aは、内容物充填システム10を制御するものである。この制御装置50Aは、上述した水供給部51、殺菌剤原液供給部52およびポンプP1、P2を制御するように構成されている。そして、制御装置50Aは、殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら循環ライン53により循環させるようになっている。また、制御装置50Aは、ヒーターHで加熱された殺菌剤を充填チャンバー(主チャンバー)42に供給するようになっている。
【0056】
なお、図示しないが、循環ライン53および供給ライン54(以下、単に循環ライン53等と記す)には、流路の切り換えを行うためのバルブ等が設けられている。また、図示はしないが、循環ライン53等には、それぞれ温度計が設けられおり、これらの温度計によって測定された温度の情報が、制御装置50Aへ送信されるようになっている。また、循環ライン53等には、上述した図示しないバルブや温度計、あるいは図示しないアクチュエータのほか、流量計若しくは濃度計といった各種計器、各種切換え弁、およびフィルター等が設けられており、これらも制御装置50Aからの信号によって制御されようになっている。
【0057】
(殺菌方法)
次に、本実施の形態による作用について説明する。ここでは、殺菌システム50を用いた殺菌方法について、
図3乃至
図5により説明する。本実施の形態による殺菌方法は、例えば、内容物充填システム10のCIPおよびSIP後に行われ得る、内容物充填システム10のCOPおよびSOPに好適に適用することができる。なお、
図3乃至
図5において、水、殺菌剤原液または殺菌剤が通る配管等を太線で示している。
【0058】
まず、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、水供給部51からタンクTに水が供給される。また、殺菌剤原液供給部52からタンクTに殺菌剤原液が供給される。これにより、タンクT内において殺菌剤原液が希釈され、殺菌剤が作製される。この場合、殺菌剤としては、水酸化ナトリウムを0.5重量%以上5重量%以下程度含んだアルカリ性水溶液や、過酢酸を0.15重量%以上0.4重量%以下程度含んだ過酢酸水溶液であってもよい。また、殺菌剤としては、過酸化水素を0.5重量%以上35重量%以下程度含んだ過酸化水素水であってもよい。
【0059】
(循環工程)
次に、殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら循環ライン53により循環させる。この際、タンクT中の殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら循環ライン53により循環させる。この場合、循環ライン53のポンプP1が駆動され、タンクTに供給された殺菌剤が循環ライン53を循環する(
図3参照)。この際、図示しないバルブにより、第1供給配管53aと第1帰還配管53bとが連通する。一方、第1供給配管53aと、供給ライン54の第2供給配管54aとは連通しない。このようにして、殺菌剤が所望の温度に加熱されるまで、充填チャンバー42には殺菌剤が供給されないようになっている。このため、後述するように、タンクT内で作製された殺菌剤内に菌が生残していた場合であっても、当該菌が生残する殺菌剤が充填チャンバー42に供給されてしまうことが抑制される。
【0060】
殺菌剤が循環ライン53を循環する際、循環ライン53のヒーターHが駆動され、当該ヒーターHにより、殺菌剤が加熱される。殺菌剤は、例えば、40℃以上90℃以下、好ましくは50℃以上80℃以下、より好ましくは60℃以上80℃以下の温度に加熱される。ここで、殺菌剤が循環ライン53により循環する循環時間は、5分以上60分以下であってもよい。殺菌剤の循環時間が5分以上であることにより、大型のヒーターや複数のヒーターを設置することなく、殺菌剤を所望の温度まで容易に加熱することができる。また、殺菌剤の循環時間が60分以下であることにより、殺菌時間が長くなり過ぎることを抑制することができ、ダウンタイムを短縮させることができる。
【0061】
なお、タンクTに水および殺菌剤原液を供給し、循環ライン53に殺菌剤を循環させるタイミングとしては、ヒーターHの能力やタンクTの容量にもよるが、内容物充填システム10における飲料の充填中に行ってもよく、内容物充填システム10のCIP中やSIP中に行ってもよい。ここで、飲料の生産終了後には、充填チャンバー42のCOPやSOPを開始する前に、充填チャンバー42内等に残された包材(ボトル30やキャップ33)を回収する洗浄準備が行われる場合がある。この場合、当該洗浄準備中に、殺菌剤を所定濃度に調整し、循環昇温することが好ましい。このように、本実施の形態においては、内容物充填システム10のCIP中やSIP中等に、予めタンクT内の殺菌剤を所望の温度に加熱することができるため、殺菌処理におけるダウンタイムを短縮させることができる。
【0062】
(殺菌工程)
次に、ヒーターHで加熱された殺菌剤を充填チャンバー(主チャンバー)42に供給することにより、充填チャンバー(主チャンバー)42を殺菌する。この際、ヒーターHで加熱された殺菌剤を供給ライン54により充填チャンバー42に供給する。この場合、まず、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、図示しないバルブが切り替えられ、第1供給配管53aと第2供給配管54aとが連通する。次に、
図4に示すように、タンクTから循環ライン53の第1供給配管53aを介して、供給ライン54の第2供給配管54aに殺菌剤が供給される。なお、この際、殺菌剤は、ヒーターHで更に加熱されてもよい。
【0063】
次に、第2供給配管54aに供給された殺菌剤は、第2供給配管54aを通過し、無菌チャンバー40の充填チャンバー42に供給される。この際、殺菌剤は、充填チャンバー42内に設けられた噴射ノズル42aによって充填チャンバー42内に噴射される。殺菌剤の供給量は、例えば充填チャンバー42の容積が10m3以上170m3以下程度である場合、10m3/h以上50m3/h以下程度であってもよく、好ましくは15m3/h以上30m3/h以下程度であってもよい。なお、この場合、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41および出口チャンバー43に対しても、殺菌剤が供給されてもよい。
【0064】
ところで、水供給部51から供給される水内に予め菌が生残している可能性がある。そして、これらの菌の中には、殺菌剤の成分に対する耐性を有している菌もある。例えば、殺菌剤が過酢酸を含む場合、過酢酸に対する耐性を有する菌としては、セレウス菌(Bacillus cereus)、バチルス ポリミキサ(B.polymyxa)、バチルス メガテリウム(B.megaterium)、パエニバチルス チベンシス(Paenibacillus chibensis)、パエニバチルス ファビスポラス(P.favisporus)、ケトニウム グロボサム(Chaetomium globosum)等が挙げられる。これらの菌のように、菌が殺菌剤の成分に対して耐性を有している場合、タンクT内で作製された殺菌剤内に菌が生残してしまい、殺菌剤を用いて充填チャンバー42を殺菌したとしても、殺菌剤内の菌が充填チャンバー42に残存してしまう可能性がある。とりわけ、殺菌剤の温度・濃度が低い場合や殺菌時間が短い場合、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌を死滅させにくくなり、殺菌剤内に菌が生残してしまう可能性が高くなる。
【0065】
これに対して本実施の形態では、充填チャンバー42に供給される殺菌剤が、循環ライン53に設けられたヒーターHによって加熱されており、殺菌剤が所望の温度になっている。このように、殺菌剤を所望の温度まで加熱することにより、タンクTに供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、当該菌を死滅させることができる。
【0066】
充填チャンバー42に殺菌剤を供給する際、殺菌剤の温度は、40℃以上90℃以下であってもよく、好ましくは50℃以上80℃以下であってもよく、より好ましくは60℃以上70℃以下であってもよい。殺菌剤の温度が40℃以上であることにより、タンクTに供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、当該菌を効率良く死滅させることができる。とりわけ、殺菌剤の温度が60℃以上であることにより、殺菌剤が過酢酸を含み、かつ、タンクTに供給された水内に、過酢酸に対する耐性を有する菌が生残していた場合であっても、当該菌を効率良く死滅させることができる。また、殺菌剤の温度が90℃以下であることにより、省エネルギー化および低コスト化を図ることができる。さらに、殺菌剤の温度が80℃以下であることにより、殺菌剤に含まれる成分(例えば、過酢酸)が分解されてしまうことを抑制することができる。一方、添加剤等によって殺菌剤に含まれる成分の分解を抑制することができる場合や、使用する殺菌剤によっては、殺菌剤の温度は、70℃以上90℃以下であってもよく、好ましくは75℃以上90℃以下であってもよい。殺菌剤の温度が70℃以上、とりわけ75℃以上であることにより、タンクTに供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、当該菌を効率良く死滅させることができる。
【0067】
(回収工程)
次いで、充填チャンバー42に供給された殺菌剤をタンクTに戻す。この際、供給ライン54のポンプP2が駆動され、
図4に示すように、充填チャンバー42に供給された殺菌剤が第2帰還配管54bに供給される。そして、第2帰還配管54bに供給された殺菌剤が、第2帰還配管54bを通過してタンクTに戻される。このようにして、加熱された殺菌剤が、所定の時間、循環ライン53の第1供給配管53aおよび供給ライン54を循環する。
【0068】
その後、
図5に示すように、殺菌剤は、供給ライン54の第2帰還配管54bに設けられたドレン配管54cから排液として外部に排出される。なお、上述した回収工程を行うことなく、充填チャンバー42から第2帰還配管54bに供給された殺菌剤が、ドレン配管54cから排液として外部に排出されてもよい。すなわち、充填チャンバー42から第2帰還配管54bに供給された殺菌剤が、タンクTに戻されなくてもよい。
【0069】
以上のように本実施の形態によれば、殺菌方法が、殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら循環ライン53により循環させる循環工程と、ヒーターHで加熱された殺菌剤を充填チャンバー(主チャンバー)42に供給することにより、充填チャンバー42を殺菌する殺菌工程と、を備えている。これにより、所望の温度に加熱された殺菌剤を、充填チャンバー42に供給することができる。このため、殺菌剤内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、当該菌を死滅させることができる。この結果、殺菌剤内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、循環工程において、タンクT中の殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら循環ライン53により循環させ、殺菌工程において、ヒーターHで加熱された殺菌剤を供給ライン54により充填チャンバー42に供給する。これにより、所望の温度に加熱された殺菌剤を、充填チャンバー42に供給することができる。このため、タンクTに供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、当該菌を死滅させることができる。この結果、タンクTに供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、殺菌方法が、充填チャンバー42に供給された殺菌剤をタンクTに戻す回収工程を更に含んでいる。すなわち、タンクT内の殺菌剤を、循環ライン53の第1供給配管53aおよび供給ライン54により循環させながら、充填チャンバー42を殺菌することができる。これにより、殺菌剤の使用量を低減することができ、充填チャンバー42を殺菌する際のコストを低減することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、殺菌剤が、過酢酸を含んでいる。このように、殺菌剤が過酢酸水溶液である場合であっても、本実施の形態では、過酢酸に対する耐性を有する菌を効率良く死滅させることができる。このため、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態によれば、殺菌工程において、ヒーターHによって殺菌剤を更に加熱する。これにより、殺菌剤が充填チャンバー42に供給される際に、殺菌剤の温度が低下してしまうことを抑制することができる。すなわち、殺菌剤を、温度が高い状態で充填チャンバー42に供給することができる。このため、殺菌剤による殺菌効果を向上させることができる。
【0074】
なお、上述した実施の形態では、無菌チャンバー40が、ボトルに内容物を充填するための充填装置が配置された充填チャンバー42(主チャンバー)と、充填チャンバー42の入口側に設けられた殺菌チャンバー41(副チャンバー)と、出口側に設けられた出口チャンバー43(副チャンバー)とを有する例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、無菌チャンバー40が、充填チャンバー42の入口側に設けられた殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口側に設けられた出口チャンバー43(副チャンバー)のうちの一方のみを有していてもよい。
【0075】
また、上述した実施の形態における各工程間に、その他の工程が行われてもよい。例えば、循環工程と殺菌工程との間に、ヒーターHで加熱された殺菌剤によって供給ライン54の第2供給配管54a内をすすぐ、すすぎ工程が設けられていてもよい。ここで、第2供給配管54a内は無菌状態に維持されていない可能性がある。このため、前回のSOP後に、第2供給配管54a内に残存する水に菌が混入し、前回のSOP後の飲料の生産中に、当該菌が第2供給配管54a内で増殖している可能性がある。これに対して、殺菌工程の前に、第2供給配管54a内をすすぐことにより、当該菌が充填チャンバー42等の内部に混入してしまうことを抑制することができる。
【0076】
すすぎ工程を行う場合、循環工程後に、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、図示しないバルブが切り替えられ、第1供給配管53aと第2供給配管54aとが連通する。また、この際、無菌チャンバー40と第2供給配管54aとが連通しないように、第2供給配管54aに設けられたバルブ等(図示せず)のうち、無菌チャンバー40の最も近くに設けられたバルブ等が切り替えられる。次に、
図6Aに示すように、タンクTから循環ライン53の第1供給配管53aを介して、供給ライン54の第2供給配管54aに殺菌剤が供給される。なお、この際、殺菌剤は、ヒーターHで更に加熱されてもよい。
【0077】
次に、第2供給配管54aに供給された殺菌剤は、第2供給配管54aを通過し、第2供給配管54aに連結されたドレン配管54dから排液として外部に排出される。
【0078】
このすすぎ工程において、第2供給配管54aのすすぎに使用される殺菌剤の体積は、第2供給配管54aにおける殺菌剤の流路の容積の少なくとも1倍以上5倍以下であることがこのましい。使用される殺菌剤の体積が、第2供給配管54aにおける殺菌剤の流路の容積の1倍以上であることにより、前回のSOPで使用し、第2供給配管54aに残存する水を効果的に除去することができる。また、使用される殺菌剤の体積が、第2供給配管54aにおける殺菌剤の流路の容積の5倍以下であることにより、殺菌剤の使用量を低減することができ、すすぎ工程のコストを低減することができる。
【0079】
このように、循環工程と殺菌工程との間にすすぎ工程を行うことにより、第2供給配管54a内に生残する菌が、充填チャンバー42等の内部に混入してしまうことを抑制することができる。また、循環工程と殺菌工程との間にすすぎ工程を行うことにより、ヒーターHで加熱された殺菌剤によって第2供給配管54aを加熱することもできる。これにより、殺菌工程において殺菌剤が第2供給配管54a内を通過する際に、第2供給配管54a内で殺菌剤の温度が低下してしまうことも抑制することができる。
【0080】
また、殺菌方法が、上述した殺菌工程の前に、アルカリ洗浄剤を充填チャンバー(主チャンバー)42に供給することにより、充填チャンバー42を洗浄する洗浄工程を更に備えていてもよい。
【0081】
この場合、
図6Bに示すように、殺菌システム50が、供給ライン54にアルカリ洗浄剤を供給するアルカリ洗浄剤供給部52Aを更に備えていてもよい。
【0082】
アルカリ洗浄剤供給部52Aから供給されるアルカリ洗浄剤は、水酸化ナトリウムを0.5重量%以上5重量%以下程度含んだアルカリ性水溶液であってもよい。
【0083】
洗浄工程を行う場合、循環工程の間、または循環工程の前に、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、図示しないバルブが切り替えられ、第1供給配管53aと第2供給配管54aとが連通しないように、図示しないバルブ等が切り替えられる。次に、アルカリ洗浄剤供給部52Aから、供給ライン54の第2供給配管54aにアルカリ洗浄剤が供給される。
【0084】
次に、第2供給配管54aに供給されたアルカリ洗浄剤は、第2供給配管54aを通過し、無菌チャンバー40の充填チャンバー42に供給される。この際、アルカリ洗浄剤、充填チャンバー42内に設けられた噴射ノズル42aによって充填チャンバー42内に噴射される。アルカリ洗浄剤の供給量は、例えば充填チャンバー42の容積が10m3以上170m3以下程度である場合、10m3/h以上50m3/h以下程度であってもよく、好ましくは15m3/h以上40m3/h以下程度であってもよい。なお、この場合、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41および出口チャンバー43に対しても、アルカリ洗浄剤が供給されてもよい。
【0085】
また、充填チャンバー42にアルカリ洗浄剤を供給する際、アルカリ洗浄剤の温度は、15℃以上99℃以下であってもよく、好ましくは40℃以上80℃以下であってもよい。
【0086】
次いで、供給ライン54のポンプP2が駆動され、充填チャンバー42に供給されたアルカリ洗浄剤が第2帰還配管54bに供給される。そして、第2帰還配管54bに供給されたアルカリ洗浄剤は、第2帰還配管54bに設けられたドレン配管54cから排液として外部に排出される。
【0087】
このように、殺菌工程の前に、アルカリ洗浄剤を充填チャンバー(主チャンバー)42に供給することにより、充填チャンバー42を洗浄する洗浄工程を行うことにより、殺菌工程の前に充填チャンバー42を浄化できる。このため、殺菌剤による殺菌効果を向上させることができる。
【0088】
なお、殺菌システム50のアルカリ洗浄剤供給部52Aが、供給ライン54にアルカリ洗浄剤を供給する例について説明したが、これに限られない。例えば、
図6Cに示すように、アルカリ洗浄剤供給部52Aが、循環ライン53の第1供給配管53aにアルカリ洗浄剤を供給してもよい。なお、この場合、洗浄工程は、循環工程の前に行われることが好ましい。
【0089】
また、上述した実施の形態では、水供給部51から供給された水によって殺菌剤原液供給部52から供給された殺菌剤原液を希釈することにより、殺菌剤を新たに作製する例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、殺菌システム50を前回殺菌した際の殺菌剤を排出することなく、タンクTや他の回収タンク内に貯留することにより、再利用(マルチユース)してもよい。
【0090】
さらに、上述した実施の形態では、内容物充填システム10が、ボトル供給部21と、ボトル殺菌装置11と、エアリンス装置14と、無菌水リンス装置15と、充填装置20と、キャップ装着装置16と、製品ボトル搬出部22とを備えている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、内容物充填システム10が、無菌水リンス装置15を備えていなくてもよい。
【0091】
第2の実施の形態
次に、
図7乃至
図10を参照して第2の実施の形態について説明する。
図7乃至
図10に示す第2の実施の形態は、主として、循環工程において、殺菌チャンバー41や出口チャンバー43を介して、タンクT中の殺菌剤を循環させる点が第1の実施の形態と異なるものである。
図7乃至
図10において、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0092】
(殺菌システム)
まず、
図7により本実施の形態による殺菌方法を行う殺菌システムについて説明する。
【0093】
図7に示すように、殺菌システム50は、循環ライン55に連結され、殺菌剤を貯留するタンクTと、タンクTに水を供給する水供給部51と、タンクTに殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部52と、を備えている。
【0094】
循環ライン55は、タンクT内に貯留された殺菌剤を循環させるとともに、当該殺菌剤を所望の温度まで加熱するためのものである。この循環ライン55には、殺菌剤を加熱するヒーターHと、無菌チャンバー40とが順次介在されている。具体的には、循環ライン55は、タンクTに連結され、無菌チャンバー40の上流側に設けられた供給配管55aと、無菌チャンバー40に連結されるとともに、無菌チャンバー40の下流側に設けられた帰還配管55bと、帰還配管55bに連結されたドレン配管55cを含んでいる。このうち供給配管55aは、無菌チャンバー40の上流側において、複数の配管に分岐しており、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41(副チャンバー)、充填チャンバー42(主チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)に対して、それぞれ独立して殺菌剤を供給することができるように構成されている。帰還配管55bは、無菌チャンバー40から殺菌剤を排出するとともに、無菌チャンバー40を通過した殺菌剤をタンクTに戻すための配管である。この帰還配管55bは、タンクTに連結されている。また、帰還配管55bには、殺菌剤をタンクTに戻すためのポンプP2が介在されている。ドレン配管55cは、無菌チャンバー40を殺菌後に、殺菌剤を排出するためのものである。
【0095】
なお、図示しないが、循環ライン55にも、流路の切り換えを行うためのバルブや温度計、あるいはアクチュエータのほか、流量計若しくは濃度計といった各種計器、各種切換え弁、およびフィルター等が設けられており、これらも制御装置50Aからの信号によって制御されようになっている。
【0096】
(殺菌方法)
次に、本実施の形態による殺菌方法について、
図8乃至
図10により説明する。
【0097】
まず、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、水供給部51からタンクTに水が供給される。また、殺菌剤原液供給部52からタンクTに殺菌剤原液が供給される。これにより、タンクT内において殺菌剤原液が希釈され、殺菌剤が作製される。
【0098】
(循環工程)
次に、殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら循環ライン55により循環させる。この際、タンクT中の殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)を介して、循環ライン55により循環させる。この場合、循環ライン55のポンプP1およびポンプP2が駆動され、タンクTに供給された殺菌剤が循環ライン55を循環する(
図8参照)。この際、図示しないバルブにより、供給配管55aと、殺菌チャンバー41および出口チャンバー43とが連通する。そして、循環ライン55の供給配管55aに供給された殺菌剤は、供給配管55aを通過し、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)に供給される。この際、殺菌剤は、殺菌チャンバー41および出口チャンバー43内に設けられた噴射ノズル41a、43aによって、それぞれ殺菌チャンバー41および出口チャンバー43内に噴射される。一方、供給配管55aと充填チャンバー42とは連通しない。このようにして、殺菌剤が所望の温度に加熱されるまで、充填チャンバー42には殺菌剤が供給されないようになっている。このため、タンクT内で作製された殺菌剤内に菌が生残していた場合であっても、当該菌が生残する殺菌剤が充填チャンバー42に供給されてしまうことが抑制される。
【0099】
(殺菌工程)
次に、ヒーターHで加熱された殺菌剤を充填チャンバー(主チャンバー)42に供給することにより、充填チャンバー(主チャンバー)42を殺菌する。この際、ヒーターHで加熱された殺菌剤を循環ライン55により充填チャンバー42(主チャンバー)に供給する。この場合、まず、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、図示しないバルブが切り替えられ、循環ライン55の供給配管55aと充填チャンバー42とが連通する。
【0100】
次に、
図9に示すように、タンクTから循環ライン55の供給配管55aに供給された殺菌剤は、無菌チャンバー40の充填チャンバー42(主チャンバー)に供給される。なお、この場合、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41および出口チャンバー43に対しても、殺菌剤が供給されてもよい。
【0101】
(回収工程)
次いで、充填チャンバー42に供給された殺菌剤をタンクTに戻す。この際、循環ライン55のポンプP2が駆動され、
図9に示すように、充填チャンバー42に供給された殺菌剤が帰還配管55bに供給される。そして、帰還配管55bに供給された殺菌剤が、帰還配管55bを通過してタンクTに戻される。このようにして、加熱された殺菌剤が、所定の時間、充填チャンバー42を介して循環ライン55を循環する。
【0102】
その後、
図10に示すように、殺菌剤は、循環ライン55の帰還配管55bに設けられたドレン配管55cから排液として外部に排出される。なお、上述した回収工程を行うことなく、充填チャンバー42から帰還配管55bに供給された殺菌剤が、ドレン配管55cから排液として外部に排出されてもよい。すなわち、充填チャンバー42から帰還配管55bに供給された殺菌剤が、タンクTに戻されなくてもよい。
【0103】
以上のように本実施の形態によれば、循環工程において、タンクT中の殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)を介して、循環ライン55により循環させ、殺菌工程において、ヒーターHで加熱された殺菌剤を循環ライン55により充填チャンバー42(主チャンバー)に供給する。この場合においても、所望の温度に加熱された殺菌剤を、充填チャンバー42に供給することができる。このため、タンクTに供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、当該菌を死滅させることができる。この結果、タンクTに供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【0104】
なお、上述した実施の形態では、殺菌システム50が循環ライン55を備えている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、
図2に示す形態と同様に、殺菌システム50が、循環ライン53と供給ライン54とを備えるように構成されていてもよい。この場合、例えば、上述した循環工程において、タンクTの殺菌剤が、循環ライン53(
図2参照)の第1供給配管53a、供給ライン54の第2供給配管54a、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および/または出口チャンバー43(副チャンバー)並びに供給ライン54の第2帰還配管54bにより循環されてもよい。すなわち、循環工程において、循環ライン53の第1帰還配管53bが使用されなくてもよい。
【0105】
また、上述した実施の形態では、循環工程において、タンクT中の殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)を介して、循環ライン55により循環させる例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、循環工程において、タンクT中の殺菌剤を、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)のうちの一方のみを介して、循環ライン55により循環させてもよい。
【0106】
また、循環工程において、キャップ殺菌装置17を介してタンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させてもよい。この場合、キャップ殺菌装置17が循環ライン55に介在されるように構成することにより、キャップ殺菌装置17を介して、タンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させることができる。
【0107】
さらに、内容物充填システム10にボトル成形部100が設けられている場合(
図1B参照)、循環工程において、例えば、ボトル成形部100の成形部チャンバー120および雰囲気遮断チャンバー131のうちの少なくとも一方を介して、タンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させてもよい。この場合、成形部チャンバー120および雰囲気遮断チャンバー131が循環ライン55に介在されるように構成することにより、成形部チャンバー120および雰囲気遮断チャンバー131のうちの少なくとも一方を介して、タンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させることができる。
【0108】
第3の実施の形態
次に、
図11乃至
図14を参照して第3の実施の形態について説明する。
図11乃至
図14に示す第3の実施の形態は、主として、殺菌システム50がタンクTを備えていない点が第1の実施の形態と異なるものである。
図11乃至
図14において、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0109】
(殺菌システム)
まず、
図11により本実施の形態による殺菌方法を行う殺菌システムについて説明する。
【0110】
図11に示すように、本実施の形態による殺菌システム50は、タンクTを備えていない。本実施の形態では、殺菌システム50は、殺菌剤を加熱するヒーターHと無菌チャンバー40とが順次介在され、殺菌剤を循環させる循環ライン56を備えている。また、殺菌システム50は、循環ライン56に水を供給する水供給部51と、循環ライン56に殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部52と、を備えている。すなわち、本実施の形態では、水供給部51および殺菌剤原液供給部52が、それぞれ水および殺菌剤原液を循環ライン56に供給するように構成されている。
【0111】
循環ライン56は、殺菌剤を循環させるとともに、当該殺菌剤を所望の温度まで加熱するためのものである。この循環ライン56には、上述したように、殺菌剤を加熱するヒーターHと無菌チャンバー40とが順次介在されている。具体的には、循環ライン56は、無菌チャンバー40の上流側に設けられた供給配管56aと、無菌チャンバー40に連結されるとともに、無菌チャンバー40の下流側に設けられた帰還配管56bと、帰還配管56bに連結されたドレン配管56cを含んでいる。このうち供給配管56aには、水供給部51から水が供給されるとともに、殺菌剤原液供給部52から殺菌剤原液が供給されるようになっている。また、供給配管56aは、無菌チャンバー40の上流側において、複数の配管に分岐しており、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41(副チャンバー)、充填チャンバー42(主チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)に対して、それぞれ独立して殺菌剤を供給することができるように構成されている。帰還配管56bは、無菌チャンバー40から殺菌剤を排出するとともに、無菌チャンバー40を通過した殺菌剤を供給配管56aに供給するための配管である。この帰還配管56bは、供給配管56aに連結されている。また、帰還配管56bには、殺菌剤を循環させるためのポンプP2が介在されている。ドレン配管56cは、無菌チャンバー40を殺菌後に、殺菌剤を排出するためのものである。
【0112】
なお、図示しないが、循環ライン56にも、流路の切り換えを行うためのバルブや温度計、あるいはアクチュエータのほか、流量計若しくは濃度計といった各種計器、各種切換え弁、およびフィルター等が設けられており、これらも制御装置50Aからの信号によって制御されようになっている。
【0113】
(殺菌方法)
次に、本実施の形態による殺菌方法について、
図12乃至
図14により説明する。
【0114】
まず、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、水供給部51および殺菌剤原液供給部52から、循環ライン56に水および殺菌剤原液が供給される。これにより、循環ライン56内において殺菌剤原液が希釈され、殺菌剤が作製される。なお、この場合、図示しない流量計により、水および殺菌剤原液の流量が測定される。そして、制御装置50Aからの信号により、作製される殺菌剤が、所定の濃度になるように、水および殺菌剤原液の流量が調整される。
【0115】
(循環工程)
次に、殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら循環ライン56により循環させる。この際、循環ライン56内の殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)を介して、循環ライン56により循環させる。この場合、循環ライン56のポンプP1およびポンプP2が駆動され、殺菌剤が循環ライン56を循環する(
図12参照)。この際、図示しないバルブにより、供給配管56aと、殺菌チャンバー41および出口チャンバー43とが連通する。そして、循環ライン56の供給配管56a内の殺菌剤は、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)に供給される。一方、供給配管56aと充填チャンバー42とは連通しない。これにより、殺菌剤が所望の温度に加熱されるまで、充填チャンバー42には殺菌剤が供給されないようになっている。このため、タンクT内で作製された殺菌剤内に菌が生残していた場合であっても、当該菌が生残する殺菌剤が充填チャンバー42に供給されてしまうことが抑制される。
【0116】
ここで、充填チャンバー42(主チャンバー)の容積をx1とし、循環ライン56における殺菌剤の流路の容積をx2とし、循環工程における循環ライン56による殺菌剤の循環量をyとしたとき、
2×(x1+x2)≦y≦100×(x1+x2)
という関係を満たしていることが好ましく、
3×(x1+x2)≦y≦50×(x1+x2)
という関係を満たしていることがより好ましい。これにより、充填チャンバー42を殺菌する際に、殺菌剤が不足してしまうことを抑制することができる。このため、不足した殺菌剤を再度作製するために、充填チャンバー42の殺菌が中断されることを抑制することができる。この結果、充填チャンバー42の殺菌時間を短縮させることができる。また、必要以上の殺菌剤が作製されることを抑制することができる。このため、省エネルギー化を図ることができる。
【0117】
(殺菌工程)
次に、ヒーターHで加熱された殺菌剤を充填チャンバー(主チャンバー)42に供給することにより、充填チャンバー(主チャンバー)42を殺菌する。この際、ヒーターHで加熱された殺菌剤を循環ライン56により充填チャンバー42(主チャンバー)に供給する。この場合、まず、制御装置50Aの操作ボタンを操作する。これにより、図示しないバルブが切り替えられ、循環ライン56の供給配管56aと充填チャンバー42とが連通する。
【0118】
次に、
図13に示すように、循環ライン56の供給配管56aを通過した殺菌剤は、無菌チャンバー40の充填チャンバー42(主チャンバー)に供給される。なお、この場合、無菌チャンバー40の殺菌チャンバー41および出口チャンバー43に対しても、殺菌剤が供給されてもよい。
【0119】
次いで、所定の時間、充填チャンバー42を介して殺菌剤を循環ライン56により循環させる。
【0120】
その後、
図14に示すように、殺菌剤は、循環ライン56の帰還配管56bに設けられたドレン配管56cから排液として外部に排出される。なお、充填チャンバー42から帰還配管56bに供給された殺菌剤が、充填チャンバー42を介して循環ライン56を循環することなく、ドレン配管56cから排液として外部に排出されてもよい。
【0121】
以上のように本実施の形態においても、所望の温度に加熱された殺菌剤を、充填チャンバー42に供給することができる。このため、循環ライン56に供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、当該菌を死滅させることができる。この結果、循環ライン56に供給された水内に、殺菌剤の成分に対する耐性を有する菌が予め生残していた場合であっても、殺菌剤による殺菌効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【0122】
なお、上述した実施の形態では、循環工程において、殺菌剤を、ヒーターHで加熱しながら、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)を介して、循環ライン56により循環させる例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、循環工程において、殺菌剤を、殺菌チャンバー41(副チャンバー)および出口チャンバー43(副チャンバー)のうちの一方のみを介して、循環ライン56により循環させてもよい。
【0123】
また、循環工程において、キャップ殺菌装置17を介してタンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させてもよい。この場合、キャップ殺菌装置17が循環ライン55に介在されるように構成することにより、キャップ殺菌装置17を介して、タンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させることができる。
【0124】
さらに、内容物充填システム10にボトル成形部100が設けられている場合(
図1B参照)、循環工程において、例えば、ボトル成形部100の成形部チャンバー120および雰囲気遮断チャンバー131のうちの少なくとも一方を介して、タンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させてもよい。この場合、成形部チャンバー120および雰囲気遮断チャンバー131が循環ライン55に介在されるように構成することにより、成形部チャンバー120および雰囲気遮断チャンバー131のうちの少なくとも一方を介して、タンクT中の殺菌剤を循環ライン55により循環させることができる。
【0125】
上記各実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤を加熱するヒーターが介在された循環ラインと、
前記循環ラインに連結された主チャンバーとを備える殺菌システムにおける殺菌方法において、
前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させる循環工程と、
前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤によって、前記循環ラインをすすぐ工程と、
前記循環ラインをすすぐ工程の後に、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記主チャンバーに供給することにより、前記主チャンバーを殺菌する殺菌工程と、を備える殺菌方法。
【請求項2】
前記殺菌システムは、
前記循環ラインに連結され、水と殺菌剤原液とによって作製される殺菌剤を貯留するタンクと、
前記タンクに前記水を供給する水供給部と、
前記タンクに前記殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部と、
前記循環ラインに連結された供給ラインと、を更に備え、
前記供給ラインに、前記主チャンバーが介在され、
前記主チャンバーに、ボトルに内容物を充填するための充填装置が配置され、
前記循環工程において、前記タンク中の前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させ、
前記循環ラインをすすぐ工程において、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤によって、前記供給ラインをすすぎ、
前記殺菌工程において、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記供給ラインにより前記主チャンバーに供給する、請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項3】
前記殺菌システムは、
前記循環ラインに連結され、水と殺菌剤原液とによって作製される殺菌剤を貯留するタンクと、
前記タンクに前記水を供給する水供給部と、
前記タンクに前記殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部と、を更に備え、
前記循環ラインに、前記ヒーターと無菌チャンバーとが順次介在され、
前記無菌チャンバーは、前記主チャンバーと、前記主チャンバーの入口側および出口側の少なくとも一方に設けられた副チャンバーとを有し、
前記主チャンバーに、ボトルに内容物を充填するための充填装置が配置され、
前記循環工程において、前記タンク中の前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら、前記副チャンバーを介して、前記循環ラインにより循環させ、
前記殺菌工程において、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記循環ラインにより前記主チャンバーに供給する、請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項4】
前記殺菌システムは、
前記循環ラインに水を供給する水供給部と、
前記循環ラインに殺菌剤原液を供給する殺菌剤原液供給部と、を更に備え、
前記循環ラインに、前記ヒーターと無菌チャンバーとが順次介在され、
前記殺菌剤は、前記水と前記殺菌剤原液とによって作製され、
前記無菌チャンバーは、前記主チャンバーと、前記主チャンバーの入口側または出口側の少なくとも一方に設けられた副チャンバーとを有し、
前記主チャンバーに、ボトルに内容物を充填するための充填装置が配置され、
前記循環工程において、前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら、前記副チャンバーを介して、前記循環ラインにより循環させ、
前記殺菌工程において、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記循環ラインにより前記主チャンバーに供給する、請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項5】
前記殺菌剤は、前記殺菌システムを前回殺菌した際に使用した殺菌剤である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の殺菌方法。
【請求項6】
殺菌剤を加熱するヒーターが介在された循環ラインと、
前記循環ラインに連結された主チャンバーとを備える殺菌システムにおける殺菌方法において、
前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させる循環工程と、
前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記主チャンバーに供給することにより、前記主チャンバーを殺菌する殺菌工程と、を備え、
前記殺菌剤は、前記殺菌システムを前回殺菌した際に使用した殺菌剤である殺菌方法。
【請求項7】
殺菌剤を加熱するヒーターが介在された循環ラインと、
前記循環ラインに連結された主チャンバーと、
前記循環ラインに接続された制御装置と、を備える殺菌システムにおいて、
前記制御装置は、前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させるとともに、ヒーターで加熱された前記殺菌剤によって、前記循環ラインをすすぎ、かつ、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記主チャンバーに供給する殺菌システム。
【請求項8】
殺菌剤を加熱するヒーターが介在された循環ラインと、
前記循環ラインに連結された主チャンバーと、
前記循環ラインに接続された制御装置と、を備える殺菌システムにおいて、
前記制御装置は、前記殺菌剤を、前記ヒーターで加熱しながら前記循環ラインにより循環させ、前記ヒーターで加熱された前記殺菌剤を前記主チャンバーに供給し、
前記殺菌剤は、前記殺菌システムを前回殺菌した際に使用した殺菌剤である殺菌システム。