(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160721
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ネギ属植物抽出組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20221013BHJP
【FI】
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065076
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎五
(72)【発明者】
【氏名】栗林 修平
(72)【発明者】
【氏名】小柳 淳
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG10
4B016LK10
4B016LK18
4B016LP02
4B016LP13
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、ネギ属植物に由来する苦みや辛み、鼻にツンとくる刺激臭といった異味・異臭の改善されたネギ属植物抽出組成物、その製造方法、およびネギ属植物抽出物の異味・異臭を改善する方法を提供することである。
【解決手段】ネギ属植物抽出物に、添加または発酵により乳酸とD-アミノ酸とを含有させる。これにより、異味・異臭の改善されたネギ属植物抽出組成物、該抽出組成物の製造方法、およびネギ属植物抽出物の異味・異臭の改善方法を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸0.3~3重量%と、D-チロシン(D-Tyr)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-アルギニン(D-Arg)、D-アラニン(D-Ala)、D-バリン(D-Val)およびD-イソロイシン(D-Ile)からなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸0.003~0.1重量%とを含有することを特徴とする、ネギ属植物抽出組成物。
【請求項2】
前記D-アミノ酸がD-Alaである、請求項1に記載のネギ属植物抽出組成物。
【請求項3】
ネギ属植物抽出組成物が、ネギ属植物の乳酸発酵物である、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のネギ属抽出組成物を含む飲食品。
【請求項5】
ネギ属植物抽出物中に、乳酸を0.3~3重量%となるよう含有させる工程と、D-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Ala、D-ValおよびD-Ileからなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸を0.003~0.1重量%となるよう含有させる工程とを含むことを特徴とするネギ属抽出組成物の製造方法。
【請求項6】
前記D-アミノ酸がD-Alaであることを特徴とする、請求項5に記載のネギ属抽出組成物の製造方法。
【請求項7】
乳酸またはD-Alaを含有させる工程が、ラクトバチルス属またはロイコノストック属に属する乳酸菌によるネギ属植物抽出物の発酵工程であることを特徴とする、請求項5または6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
ネギ属植物抽出組成物中に、乳酸を0.3~3重量%と、D-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Ala、D-ValおよびD-Ileからなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸を0.003~0.1重量%とを共存させることを特徴とする、該ネギ属植物抽出組成物の風味改良方法。
【請求項9】
前記D-アミノ酸がD-Alaであることを特徴とする、請求項8に記載のネギ属抽出組成物の風味改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネギ属植物抽出組成物およびその製造方法、ネギ属植物抽出物の風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会の実現に向け、食品製造工程において発生する未利用資源の活用が望まれている。
【0003】
ネギ属の植物は、生食または加工品の原料として広く利用される植物であり、鱗茎や鱗片、葉、偽茎など、種類に応じた可食部位が好適に用いられる。ネギ属植物を用いた飲食品の製造の現場において、ネギ属植物の破砕や細断、搾汁の際に発生する液状またはスラリー状の組成物、すなわちネギ属植物抽出物はほとんど廃棄されており、有効に利用されているとは言い難い。しかしながら、飲食品の製造の現場において処理されるネギ属植物の量は非常に多く、未利用資源としてのネギ属植物抽出物も多量に発生している。
【0004】
そこで、多量に発生するネギ属植物抽出物を有効利用する簡便な方法として、飲食品としての用途が挙げられるが、ネギ属植物に含まれる含硫化合物と酵素の反応による、ネギ属植物抽出物の異味・異臭、すなわち苦みや辛み、鼻にツンとくる刺激臭が課題となっており、そのままでは飲食品として不適であることから、種々の検討がなされている。
【0005】
ネギ属植物抽出物のうち、タマネギ抽出物を活用した例として、タマネギ鱗茎部を加熱処理して酵素を失活させた後、該鱗茎部を粉砕し、得られた粉砕物の液状部分を濃縮する工程を含み、シクロアリインを含有し、かつアスコルビン酸を飲料全量に対して0.5~2.0重量%含有するタマネギ飲料組成物が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、ここで開示されているタマネギ飲料組成物は、加熱処理されたタマネギを搾汁していることから、加熱による酵素の失活の工程を経る必要が生じるため、処理の手間が増える。また、加熱工程を経ることから、生のネギ属植物の加工時に発生するタマネギ汁の処理方法としては適さない。
【0006】
同じく、タマネギ抽出物の辛みを低減するため、辛みと催涙性の極めて弱いタマネギの作出方法が開示されている(特許文献2参照)が、遺伝子組み換え技術を用いアリイナーゼ遺伝子の発現を従来品種の1/50未満に抑制したタマネギであり、該遺伝子発現が抑制されたタマネギから発生するタマネギ抽出物以外に適用できる方法ではない。
【0007】
さらにタマネギ抽出物の異味・異臭を低減する別の方法として、タマネギ抽出物と、柑橘類、ココア類、ワサビ類、魚節類およびハーブ野菜から選択される1以上とを含む、タマネギ組成物が開示されている(特許文献3参照)が、これはタマネギに含まれる含硫化合物を効率よく摂取する際に生じる含硫化合物そのものの異味・異臭を低減することを目的としたものであって、タマネギに含まれる酵素による含硫化合物の代謝・分解や揮発による減少を好ましくないものとしている。このため生のタマネギではなく、加熱し代謝酵素を失活させたタマネギの方が原料として好ましく用いられることから、特許文献1記載の方法と同様の課題を有している。
【0008】
一方、味質改良のために酸味料として酢酸や乳酸、クエン酸などを用いる方法が広く知られているが、味質に影響が出るため、これらの酸を多量に使用することは好ましくない。
【0009】
さらに、D-アミノ酸のうち、D-Alaを0.005ミリモル/リットル~0.025ミリモル/リットル添加することを特徴とする日本酒の製造方法が開示されており、容易にうま味の強い日本酒が製造できる(特許文献4参照)。しかしながら、ネギ属植物抽出組成物に関することは何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-143162号公報
【特許文献2】国際公開第2014/178420号パンフレット
【特許文献3】特開2018-085936号公報
【特許文献4】特開2012-005425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ネギ属植物に由来する苦みや辛み、鼻にツンとくる刺激臭といった異味・異臭の改善されたネギ属植物抽出組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討したところ、驚くべきことに、ネギ属植物抽出物に乳酸とD-アミノ酸を含ませることで、苦みや刺激臭が抑制された、果汁感のあるネギ属植物抽出組成物を作出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の解決手段は下記のとおりである。
第一に、乳酸0.3~3重量%と、D-チロシン(以下、D-Tyrと表記)、D-メチオニン(以下、D-Metと表記)、D-アスパラギン酸(以下、D-Aspと表記)、D-アスパラギン(以下、D-Asnと表記)、D-アルギニン(以下、D-Argと表記)、D-アラニン(以下、D-Alaと表記)、D-バリン(以下、D-Valと表記)およびD-イソロイシン(以下、D-Ileと表記)からなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸0.003~0.1重量%とを含有することを特徴とする、ネギ属植物抽出組成物である。
第二に、前記D-アミノ酸がD-Alaである、上記第一に記載のネギ属植物抽出組成物である。
第三に、ネギ属植物抽出組成物が、ネギ属植物の乳酸発酵物である、上記第一または第二のいずれかに記載の組成物である。
第四に、上記第一から第三のいずれかに記載のネギ属抽出組成物を含む飲食品である。
第五に、ネギ属植物抽出物中に、乳酸を0.3~3重量%となるよう含有させる工程と、D-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Ala、D-ValおよびD-Ileからなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸を0.003~0.1重量%となるよう含有させる工程とを含むことを特徴とするネギ属抽出組成物の製造方法である。
第六に、前記D-アミノ酸がD-Alaであることを特徴とする、上記第五に記載のネギ属抽出組成物の製造方法である。
第七に、乳酸またはD-Alaを含有させる工程が、ラクトバチルス属またはロイコノストック属に属する乳酸菌によるネギ属植物抽出物の発酵工程であることを特徴とする、上記第五または第六のいずれかに記載の製造方法である。
第八に、ネギ属植物抽出組成物中に、乳酸を0.3~3重量%と、D-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Ala、D-ValおよびD-Ileからなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸を0.003~0.1重量%とを共存させることを特徴とする、該ネギ属植物抽出組成物の風味改良方法である。
第九に、前記D-アミノ酸がD-Alaであることを特徴とする、請求項8に記載のネギ属抽出組成物の風味改良方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、ネギ属植物抽出物に、乳酸と、D-アミノ酸とを含有させることで、苦みや刺激臭の抑制された、果汁感のあるネギ属植物抽出組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】D-Alaまたは乳酸を添加したタマネギ抽出物の官能評価の結果である。
【
図2】乳酸発酵物及び未発酵物の官能評価の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、ネギ属植物とは、アリウム属に属する植物のうち一般的に飲食用として入手可能なものであれば特に制限されないが、例えば、タマネギ、ネギ、ニンニク、ラッキョウなどが挙げられ、好ましいものとして、タマネギ、ネギ、ニンニクが挙げられ、タマネギがより好ましく挙げられる。
【0017】
本発明におけるネギ属植物抽出物とは、ネギ属植物を水性溶媒で抽出した抽出物が挙げられる。抽出に用いられるネギ属植物の部位としては鱗茎部、鱗片、葉、偽茎が挙げられ、このうち可食部位がさらに好ましい。ネギ属植物の切断や細断、磨砕、搾汁などの加工時に発生する液状またはスラリー状のものも用いてもよい。ネギ属植物抽出物は、市販のものも利用することができる。
【0018】
本発明に用いられるネギ属植物は、あらかじめ加熱処理したものであってもよいが、加熱処理していないものであってもよい。
【0019】
抽出操作を行う際に用いられる水性溶媒は、水や水と任意の割合で混ざり合う溶媒であれば特に限定されないが、水、エタノール、水とエタノールを任意の割合で混合したものが好ましい。通常、ネギ属植物の水性溶媒による抽出物は、苦味、辛味、刺激臭等の異味・異臭を有するが、本発明を適用することにより、これら異味・異臭は緩和され、さらに、リンゴやモモのような甘味(本発明においては果汁感ともいう)を感じることができるようになる場合もあるため、抽出時の方法や条件は、本発明のネギ属植物抽出組成物の使用目的等に応じて適宜選択すればよく、抽出が達成されれば抽出時に加熱してもしなくてもいずれでもよい。
【0020】
ネギ属植物抽出物中に、乳酸およびD-アミノ酸を含有させて共存させたものは、本発明のネギ属植物抽出組成物として用いることができる。
【0021】
乳酸の含有量は、0.1~4重量%が好ましく、0.3~3重量%がさらに好ましい。
【0022】
D-アミノ酸としては、D-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Ala、D-ValおよびD-Ileからなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸が好ましく、より好ましいD-アミノ酸としてはD-Alaが挙げられる。含有量は、ネギ属植物抽出組成物中に、0.0025~0.2重量%であることが好ましく、0.003~0.1重量%であることがより好ましい。
【0023】
本発明のネギ属植物抽出物中に、乳酸およびD-アミノ酸を含有させる方法としては、上記ネギ属植物抽出物に、乳酸またはD-アミノ酸を必要量添加してもよく、ネギ属植物抽出物を培地としてこれらの成分を産生可能な微生物を培養して産生させることで含有させてもよい。
【0024】
ネギ属植物抽出物に乳酸またはD-アミノ酸を必要量添加する場合、一般的な飲食品に用いられるものであれば、その由来や製造方法に特に制限はなく、D-体とL-体の混合物でもよく、塩として添加してもよい。
【0025】
乳酸またはD-アミノ酸を含有させるために微生物を用いる場合、飲食品の製造のため一般的に用いられる微生物であれば特に制限されないが、一般的に乳酸菌と呼ばれる微生物を用いることが好ましく、なかでもラクトバチルス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属の乳酸菌がより好ましく、ラクトバチルス属、ロイコノストック属の乳酸菌がさらに好ましい。また、先に挙げた乳酸菌のうち1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
スターターとなる乳酸菌は、酵母エキスやペプトン等を含む公知の培地を用いて常法どおりに培養し、調製することができる。乳酸菌による発酵では、スターターとなる乳酸菌を、単回、または複数回に分けて、ネギ属植物抽出物の体積に対して0.1~2%接種してもよい。
【0027】
乳酸菌の発酵に用いられるネギ属植物抽出物には、必要に応じて、発明の効果を阻害しない限り、ほかの成分を添加してもよく、酵母エキスや蛋白質酵素分解物、無機塩類、糖類、ビタミン類、ミネラル類を添加してもよい。
【0028】
ネギ属植物抽出物の発酵条件は、ネギ属植物抽出物中の乳酸またはD-アミノ酸を所望の濃度とすることのできる条件であれば特に制限されず、適宜設定することができる。例えば静置培養で、発酵の温度として、15~40℃、好ましくは35~38℃が挙げられる。また、発酵時間としては、12時間~96時間が挙げられ、好ましくは16時間~72時間、より好ましくは24時間~48時間が挙げられる。
【0029】
乳酸は、一般的な定量分析方法に従って分析すればよいが、公知の定量分析方法の一つとして、キャピラリー電気泳動法による分析が挙げられる。
【0030】
また、D-アミノ酸の定量分析方法はいくつか知られており、D-アミノ酸を定量することができればいずれの方法でもよいが、例えば公知の方法の一つである、OPA-IPLC法に従い定量することができる。本発明おけるD-アミノ酸の含量は、特に断りのない限り、OPA-IPLC法での定量値を指す。
【0031】
発酵の終点は、乳酸またはD-アミノ酸の含量、pH、生菌数などを目安として設定することができる。
【0032】
ネギ属植物抽出物は発酵後、本発明のネギ属植物抽出組成物として、そのまま飲食品に利用してもよく、ろ過などの一般的な手法によって菌体を分離してもよい。また、濃縮・希釈・乾燥や殺菌工程を経て飲食品に利用してもよい。
【0033】
また、含有量を調整するため、必要に応じて乳酸およびD-アミノ酸を添加してもよい。
【0034】
本発明のネギ属植物抽出組成物を使用できる飲食品としては、通常の飲食品であればいずれの飲食品であってもよい。例えば、飲料、調味料や惣菜などネギ属植物やネギ属植物抽出物を原料として用い得る一般的な料理が挙げられる。使用方法にも制限はなく、使用する時期や使用量等において、一般的な調理におけるネギ属植物抽出物と同様の使い方ができる。
【0035】
上記のとおり、ネギ属植物抽出組成物中に、乳酸を0.3~3重量%と、D-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Ala、D-ValおよびD-Ileからなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸を0.003~0.1重量%とを含有させることで、ネギ属植物抽出組成物の風味を改良することができる。すなわち、ネギ属植物抽出組成物中に、乳酸が0.3~3重量%、ならびにD-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Ala、D-ValおよびD-Ileからなる群より選ばれる1種以上のD-アミノ酸が0.003~0.1重量%となるように含有させる方法は、ネギ属植物抽出組成物の風味改良方法、好ましくはネギ属植物抽出組成物の刺激臭の低減方法または果汁感の向上方法として用いることができる。
【実施例0036】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0037】
実施例、比較例におけるネギ属植物抽出物として、市販のタマネギジュースを用いた。また、乳酸およびD-アミノ酸は市販のものを使用した。
【0038】
[外添による効果の確認試験]
市販のタマネギジュースを水で10倍に希釈することでタマネギ抽出物(比較例1)を調製した。次に、タマネギ抽出物中にD-Alaを0.05重量%となるよう添加することで、比較例2のサンプルとした。また、タマネギ抽出物中に乳酸を0.6重量%となるよう添加することで比較例3のサンプルとした。タマネギ抽出物中にD-Alaを0.05重量%、乳酸を0.6重量%となるよう添加し、実施例1のサンプルとした。それぞれの試験区と乳酸およびD-Alaの含有量の対応は表1のとおりである。なお、表中の数値はタマネギ抽出物中に占めるD-Alaおよび乳酸の含有量を重量%で示したものである。
【0039】
【0040】
[評価方法]
調製したサンプルの評価を、「果汁感」、「苦み」、「刺激臭」の各項目について行った。具体的には、8名のパネルにより、比較例1を基準(4点)として、実施例1、比較例2および3について、1:非常に弱い、2:弱い、3:わずかに弱い、4:同等、5:わずかに強い、6:強い、7:非常に強い、の7段階の点数をつけてそれらの平均をとることで行った。また、評価の平均値について、標準偏差を求め、t検定(両側)によって有意差の判定を行った。実施例1と比較例1~3を比較して有意差があったものについて「*(:p<0.005)」を付記した。
【0041】
[結果]
図1に評価結果を示した。実施例1のサンプルは比較例1~3のサンプルと比較して有意に刺激臭および苦みが低減されていた。特に、刺激臭の項目において、乳酸およびD-アミノ酸の相乗的な効果が見られた。
【0042】
[発酵による効果の確認試験]
タマネギ抽出物に、ラクトバチルス属に属する乳酸菌スターターを、タマネギ抽出物の液量の0.1%播種し、24時間静置培養し、85℃で10分間加熱殺菌したものをタマネギ抽出物の乳酸発酵物(実施例2)とした。また、乳酸菌の接種を除き同様の操作を行ったものを未発酵物(比較例4)とした。実施例2および比較例4のサンプルを分析に供し、乳酸およびD-アミノ酸の定量を行った。
【0043】
[評価方法]
調製したサンプルの評価を、「刺激臭」、「苦み」、「果汁感」の各項目について行った。具体的には、3名のパネルにより、比較例4を基準(4点)として、実施例2について、1:非常に弱い、2:弱い、3:わずかに弱い、4:同等、5:わずかに強い、6:強い、7:非常に強い、の7段階の点数をつけてそれらの平均をとることで行った。また、評価の平均値について、標準誤差を求め、t検定(両側)によって有意差の判定を行った。比較例4と比較して有意差があったものについて「$(:p<0.05)」を付記した。
【0044】
[結果]
表2に乳酸およびD-アミノ酸の定量結果を示した。なお、それぞれの数値はサンプル中に占める各成分を重量%で示したものである。また、表中の「n.d.」は定量下限未満を示している。実施例2に含まれるD-アミノ酸として、D-Tyr、D-Met、D-Asp、D-Asn、D-Arg、D-Alaが検出され、その総量は0.0125%であった。
【0045】
【0046】
図2に評価結果を示した。比較例4と比べると、実施例2は有意に刺激臭および苦みを低減し、さらに果汁感を有意に増加させることが明らかとなった。