(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022160724
(43)【公開日】2022-10-20
(54)【発明の名称】消火設備の安全装置
(51)【国際特許分類】
A62C 37/00 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
A62C37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021065081
(22)【出願日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】米田 裕策
(72)【発明者】
【氏名】藪下 真大
(72)【発明者】
【氏名】畑中 広和
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和徳
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EC01
(57)【要約】
【課題】種々の要因によって発生するヒューマンエラーに対して、起動用操作ボタンの誤操作等による消火設備の起動を多方面から規制するようにした消火設備の安全装置を提供すること。
【解決手段】開閉用の扉11と、開閉用の扉11を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン12及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタン13とを有する操作箱1を備えてなる二酸化炭素等のガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置に関するもので、起動用操作ボタン12が、2度押し又は長押しした場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにする作動規制手段を設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記起動用操作ボタンが、2度押し又は長押しした場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにする作動規制手段が設けられていることを特徴とする消火設備の安全装置。
【請求項2】
前記起動用操作ボタンが押されたときに、起動用操作ボタンが操作されていることを操作者に報知する報知手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の消火設備の安全装置。
【請求項3】
前記作動規制手段が、報知手段によって起動用操作ボタンが操作されていることを操作者に報知した後に、起動用操作ボタンが押し操作されている場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにしてなることを特徴とする請求項2に記載の消火設備の安全装置。
【請求項4】
開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記防護区画内の人の存在の有無を判定する判定手段を設け、該判定手段の判定が「有」の場合に、防護区画内の人の存在を報知する報知手段が設けられていることを特徴とする消火設備の安全装置。
【請求項5】
前記判定手段の判定が「有」の場合に、起動用操作ボタンの操作を無効化する機能をON・OFFする切替手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の消火設備の安全装置。
【請求項6】
開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記開閉用の扉を開けた場合に、予め設定された遅延時間の後に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発する操作装置であることを報知する報知手段が設けられていることを特徴とする消火設備の安全装置。
【請求項7】
開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記開閉用の扉を開けた状態のときに、消火設備の作動状態を報知する報知手段が設けられていることを特徴とする消火設備の安全装置。
【請求項8】
開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記起動用操作ボタンを、非常停止用操作ボタンより低位置に配置してなることを特徴とする消火設備の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備の安全装置に関し、特に、防護区画内で火災が発生したときに、消火設備を起動させて、二酸化炭素等のガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置に関するもので、さらに詳しくは、防護区画内又はその近傍に設置されている操作箱に設けられている消火設備の起動用操作ボタンの誤操作による起動を規制するようにした消火設備の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、防護区画内又はその近傍に設置されている操作箱に設けられている消火設備起動用操作ボタンの誤操作によって、二酸化炭素等のガス系消火剤が防護区画内に放出され、防護区画内に人がいる場合には、人身事故にまで発展するケースがあった。
【0003】
このようなヒューマンエラー(人の誤認識や誤動作によって引き起こされるミス)は、完全にはなくすことができないことから、消火設備側で事故を防ぐための防止対策を施すことが重要であるといえる。
【0004】
ところで、この防止対策の一例として、消火設備の安全装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この消火設備の安全装置は、操作箱の開閉用の扉を開放してから所定の時間が経過するまでは消火設備の起動用操作ボタンを操作しても起動装置への起動指令信号の伝送を規制するタイマを含む消火作動規制手段を設けるようにしたもので、これにより、火災でないときに、他の設備の操作箱との間違いにより、あるいは、いたずらによって操作箱の開閉用の扉を開いて操作箱の起動用操作ボタンを押圧操作したとしても、タイマを含む消火作動規制手段の作動規制作用により、瞬時に起動装置に起動指令信号が伝送されることがない等の効果を奏するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の消火設備の安全装置は、消火設備の起動用操作ボタンの誤操作による起動を規制するために一定の効果があると認められるが、種々の要因によって発生するヒューマンエラーを完全には防止することはできない。
【0007】
本発明は、上記従来の消火設備の安全装置では防止することができない種々の要因によって発生するヒューマンエラーに対して、起動用操作ボタンの誤操作等による消火設備の起動を多方面から規制するようにした消火設備の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の消火設備の安全装置は、開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記起動用操作ボタンが、2度押し又は長押しした場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにする作動規制手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記起動用操作ボタンが押されたとき(プレ起動)に、起動用操作ボタンが操作されていることを操作者に報知する報知手段(注意表示、音声表示)を設けるようにすることができる。
【0010】
また、前記作動規制手段が、報知手段によって起動用操作ボタンが操作されていることを操作者に報知した後に、起動用操作ボタンが押し操作されている場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにしてなるようにすることができる。
【0011】
また、同じ目的を達成するため、本発明の消火設備の安全装置は、開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記防護区画内の人の存在の有無を判定する判定手段(人感センサ、カメラ等の人検知手段、入退出記録等)を設け、該判定手段の判定が「有」の場合に、防護区画内の人の存在を報知する報知手段(注意表示)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この場合において、前記判定手段の判定が「有」の場合に、起動用操作ボタンの操作を無効化する機能をON・OFFする切替手段が設けるようにすることができる。
【0013】
また、同じ目的を達成するため、本発明の消火設備の安全装置は、開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記開閉用の扉を開けた場合に、予め設定された遅延時間の後に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発する操作装置であることを報知する報知手段(注意表示、音声表示)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、同じ目的を達成するため、本発明の消火設備の安全装置は、開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記開閉用の扉を開けた状態のときに、消火設備の作動状態を報知する報知手段(注意表示、音声表示)が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、同じ目的を達成するため、本発明の消火設備の安全装置は、開閉用の扉と、該開閉用の扉を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタンとを有する操作箱を備えてなるガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置であって、前記起動用操作ボタンを、非常停止用操作ボタンより低位置に配置してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の消火設備の安全装置によれば、種々の要因によって発生するヒューマンエラーに対して、起動用操作ボタンの誤操作等による消火設備の起動を多方面から規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の消火設備の安全装置の操作箱の外観を示す説明図である。
【
図2】本発明の消火設備の安全装置の操作箱の開閉用の扉を開けた状態の一例を示す説明図である。
【
図3】本発明の消火設備の安全装置を備えた消火設備を手動によって起動させる場合の動作フロー図である。
【
図4】本発明の消火設備の安全装置の操作箱の開閉用の扉を開けた状態の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の消火設備の安全装置の操作箱の開閉用の扉を開けた状態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の消火設備の安全装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例0019】
本発明の消火設備の安全装置の第1実施例を説明する。
この消火設備の安全装置は、
図1~
図2に示すように、開閉用の扉11と、開閉用の扉11を開けた内部に消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン(「放出」ボタン)12及び起動指令を解除する非常停止用操作ボタン(「停止」ボタン)13とを有する操作箱1を備えてなる二酸化炭素等のガス系消火剤を防護区画内に放出させることにより消火を行う消火設備の安全装置に関するもので、起動用操作ボタン12が、2度押し又は長押しした場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにする作動規制手段を設けるようにしている。
【0020】
この場合において、起動用操作ボタン12が押されたとき(プレ起動時。2度押し又は長押しされた場合のほか、短い時間1度押しされた場合も同様。)に、起動用操作ボタン12が操作されていることを操作者に報知する報知手段(「消火設備の起動装置に対して起動指令が発せられる起動用操作ボタンを操作しています。」等の注意表示や音声表示を行う手段。)を設けるようにすることができる。
【0021】
また、作動規制手段が、報知手段によって起動用操作ボタン12が操作されていることを操作者に報知した後に、起動用操作ボタン12が押し操作されている場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにすることができる。
【0022】
図3に、この消火設備の安全装置を備えた消火設備を手動によって起動させる場合の動作フローを示す。
まず、火災を発見し確認(ステップS0)した操作者が、操作箱1の開閉用の扉11を開き(ステップS1)、これに伴って、音声警報などの退避警報が出力される(ステップS2)とともに、報知手段が作動して、例えば、「これは消火設備の起動装置です。防護区画内の状況を確認してから起動用操作ボタン12を2度押し又は長押しして下さい。」などの音声メッセージがスピーカを通して出力される(ステップS3)。
そして、操作箱1の開閉用の扉11を開けた内部の適宜箇所には、必要に応じて、「起動用操作ボタンを2度押し又は長押しした場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令が発せられます。」などの表示を行うようにする。
【0023】
操作者は、消火設備の起動装置に対して起動指令を発する起動用操作ボタン12を押圧操作するが(ステップS4)、起動用操作ボタン12が2度押し又は長押しされた場合に、消火設備の起動装置に対して起動指令を発するようにする作動規制手段を設けるようにしているため、起動用操作ボタン12の誤操作による消火設備の起動を規制することができる。
起動用操作ボタン12が押されたとき(プレ起動時。2度押し又は長押しされた場合のほか、短い時間1度押しされた場合も同様。)に、起動用操作ボタン12が操作されていることを操作者に報知する報知手段から「消火設備の起動装置に対して起動指令が発せられる起動用操作ボタンを操作しています。」などの音声メッセージがスピーカを通して出
力される(ステップS5)。
そして、作動規制手段によって、起動用操作ボタン12が、2度押し又は長押しされたか否かを判定し(ステップS6)、2度押し又は長押しされた場合(より具体的には、ステップS5の後、2度押し又は長押しされた場合)に、起動準備完了メッセージとして、「消火設備の起動準備が完了しました。」などの音声メッセージがスピーカを通して出力される(ステップS7)。
一方、起動用操作ボタン12が、短い時間1度押しされた場合は、作動規制手段が、起動用操作ボタン12の誤操作と判断し、消火設備の起動装置に対して起動指令を発することなく、ステップS3に戻るようにしている。
【0024】
起動用操作ボタン12が2度押し又は長押しされた場合に、押圧操作と同時に、遅延タイマが計時動作をスタートする(ステップS8)。
この遅延タイマがタイムアップするまでの間(通常数十秒程度)において、非常停止用操作ボタン13が押圧操作されたか否かが判定され(ステップS9)、操作「有」のときは、消火設備の起動装置に対して起動指令が取り消され、起動が停止される(ステップS10)。
一方、操作「無」のときは、遅延タイマがタイムアップした後(ステップS11)、制御部から消火設備の起動装置に対して起動指令を発せられて、容器弁が開放され、二酸化炭素等のガス系消火剤が防護区画内に放出される(ステップS12)。